説明

バッファ機構部及び画像形成装置

【課題】簡易な構成及び制御により装置の小型化を妨げることなく、連続画像形成動作中においても連続紙の蛇行を補正することが可能なバッファ機構部及びこれを用いる画像形成装置を提供する。
【解決手段】連続紙31の全幅と接触するバッファ部材1と、バッファ部材1の両端にその一端を固定された一対のアーム部材2と、各アーム部材2の他端を支持する回転自在な支軸3と、バッファ部材1と連続紙31とが接触する向きの付勢力をバッファ部材1に付与する付勢手段4とを有し、画像形成動作中に搬送される連続紙31に対して張力を付与するバッファ機構部25において、バッファ部材1を連続紙31と平行な面内において揺動させ、連続紙31の蛇行を補正する蛇行補正機構部を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続紙を用いる画像形成装置におけるバッファ機構部の用紙蛇行補正機構に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、一般的な電子写真方式の連続紙画像形成装置48の一例を示している。用紙ホッパ部30にセットされた連続紙31は、用紙搬送機構部32,33によって搬送される。用紙搬送方向下流側に設けられた用紙搬送機構部33には連続紙31の側縁部を検出する用紙位置検出センサ34が設けられており、これにより連続紙31の幅方向における動きが検出される。
【0003】
感光体36はその表面を帯電器35により一様に帯電され、この表面に光学装置37から発せられるレーザ光38が照射されることにより静電潜像が形成される。形成された静電潜像には現像装置39よりトナーが供給され、静電潜像は供給されたトナーにより可視像化される。感光体36の表面に形成されたトナー像は転写装置40の作用により連続紙31に転写され、トナー像が転写された連続紙31は張力付与手段として機能するバッファ機構部41を経由して定着装置42へと送られる。定着装置42は加熱ローラ43と加圧ローラ44とを有しており、加圧ローラ44が連続紙31を加熱ローラ43に押圧することにより、連続紙31上のトナー像が熱と圧力とによって定着される。画像が定着された連続紙31は駆動ローラ45とこれに圧接する従動ローラ46とにより挟持搬送され、用紙排出部47に排出される。
【0004】
上述の構成において、連続紙31は用紙搬送機構部32,33、定着装置42等によって搬送されるが、この搬送時において用紙の種類、連量の違い等により連続紙31が蛇行してしまう場合がある。そこで、定着装置内において加圧ローラを加熱ローラに圧接させる際に、加圧ローラの軸方向における左右の荷重を変化させて用紙幅方向における搬送力を変化させることにより用紙の蛇行を補正する技術が、例えば「特許文献1」に開示されている。また、用紙を搬送する搬送ベルトを張架するローラを偏心させることにより用紙の蛇行を補正する技術が、例えば「特許文献2」、「特許文献3」に開示されている。さらに、ターンテーブル上にウェブを通過させてターンテーブルを回動させることにより用紙の蛇行を補正する技術が、例えば「特許文献4」に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
「特許文献1」に開示された技術では、用紙幅方向のニップ部における荷重が変化することにより用紙の左右において定着強度が変化するため、定着強度との関係を考慮しつつ左右の荷重を変化させ搬送力を変更する必要があり、制御が非常に面倒であるという問題点がある。「特許文献2」に開示された技術では、構成は簡易であるもののベルトや連続紙が逆転するときにのみ補正がかかるため、連続画像形成中に発生する蛇行補正には適用できず、「特許文献3」に開示された技術では、ベルトの連続回転中に蛇行補正は可能であるものの、ベルトに張力を付与するばねが変化することによりベルトにかかる張力が不均一となるという問題点がある。「特許文献4」に開示された技術では、テーブル等を設ける必要がありバッファ機構部が高さ方向に大きくなってしまい装置の小型化を妨げるという問題点がある。
【0006】
本発明は上述の問題点を解決し、簡易な構成及び制御により装置の小型化を妨げることなく、連続画像形成動作中においても連続紙の蛇行を補正することが可能なバッファ機構部及びこれを用いる画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、連続紙の全幅と接触するバッファ部材と、前記バッファ部材の両端にその一端を固定された一対のアーム部材と、前記各アーム部材の他端を支持する回転自在な支軸と、前記バッファ部材と連続紙とが接触する向きの付勢力を前記バッファ部材に付与する付勢手段とを有し、画像形成動作中に搬送される連続紙に対して張力を付与するバッファ機構部において、前記バッファ部材を連続紙と平行な面内において揺動させ、連続紙の蛇行を補正する蛇行補正機構部を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のバッファ機構部において、さらに連続紙の蛇行を検知する蛇行検知手段を有し、前記蛇行検知手段の検知結果に基づいて前記バッファ部材を揺動させることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のバッファ機構部において、さらに前記支軸を回転自在に支持する一対の支持部材を有し、前記蛇行補正機構部は、前記支持部材の一方を回動自在に支持する回動軸と、前記回動軸を中心として前記支持部材の他方を変位させる変位手段とを有し、前記変位手段により前記支持部材の他方を変位させることにより前記バッファ部材を揺動させることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載のバッファ機構部において、さらに連続紙に付与される張力を変更する張力変更手段を有することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか1つに記載のバッファ機構部において、さらに前記蛇行補正機構部は画像形成動作停止後においても直前の状態を保持することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか1つに記載のバッファ機構部を有する画像形成装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成及び制御により装置の小型化を妨げることなく、連続画像形成動作中においても連続紙の蛇行を補正することができ、良好な画像形成を連続して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に用いられるバッファ機構部の概略平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に用いられるバッファ機構部の概略右側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に用いられるバッファ機構部の概略左側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に用いられる蛇行検知手段を説明する概略図である。
【図5】本発明の一実施形態における揺動後のバッファ機構部を示す概略正面図である。
【図6】従来のバッファ機構部を有する画像形成装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態を採用したバッファ機構部の平面図を示しており、このバッファ機構部25は図6に示したバッファ機構部41に代えて用いられる。バッファ機構部25は、連続紙31の全幅と接触するバッファ部材としてのバッファシャフト1を有しており、バッファシャフト1の両端にはアーム部材である一対のバッファアーム2の一端がそれぞれ固定され、各バッファアーム2の他端は支軸としてのアームシャフト3にそれぞれ固定されている。アームシャフト3は、一端側を支持部材としてのバッファホルダ6に他端側を支持部材としてのバッファホルダ7にそれぞれ回転自在に支持されており、各バッファアーム2と各バッファホルダ6,7との間のアームシャフト3上にはそれぞれ付勢手段としてのねじりコイルばね4が配設されている。各ねじりコイルばね4はそれぞれ2本のアームを有しており、各アームは各バッファアーム2と各バッファホルダ6,7とにそれぞれ設けられたストッパピン5にそれぞれ係合されている。各ねじりコイルばね4の付勢力により、バッファシャフト1には連続紙31に接する向きの付勢力が付与されている。
【0016】
バッファホルダ6の外側(ねじりコイルばね4取付側とは逆側)にはバッファ位置検出センサ9を有するセンサホルダ8が、アームシャフト3のバッファホルダ6より突出した一端には位置検出エンコーダ10がそれぞれ取り付けられており、バッファ位置検出センサ9によって位置検出エンコーダ10が検出されることによりバッファシャフト1の位置が検出される。バッファホルダ7の内側(ねじりコイルばね4取付側)には張力変更手段としてのモータ11が取り付けられており、バッファホルダ7の外側に至るモータ11の出力軸先端にはギヤ12が取り付けられている。アームシャフト3のバッファホルダ7より突出した他端には扇形ギヤ13が取り付けられており、この扇形ギヤ13はギヤ12に噛合している。
【0017】
バッファホルダ7は不動部材(図3参照)によって図1の上下方向に移動可能に支持されており、図1においてバッファホルダ7の下方には変位手段としてのポジションモータ14の出力軸に取り付けられたカム15が配設されている。バッファホルダ7にはスプリングピン16が植設され、これには一端を上述の不動部材に設けられたスプリングピン16に係合された引張ばね17の他端が係合しており、バッファホルダ7には常時カム15と接する向きの引張ばね17による付勢力が作用している。ポジションモータ14は上述の不動部材に固設されたモータホルダ18に取り付けられており、モータホルダ18に取り付けられたポジションセンサ19がポジションモータ14の回転軸に取り付けられているエンコーダ20を検出することによりカム15の位置が認識される。
【0018】
バッファ機構部25の右側面図を示す図2において、バッファホルダ6はその上下に同一軸芯を有する2本の回動軸21を有しており、各回動軸21が上述の不動部材に設けられたベアリング22によって支持されることによりバッファホルダ6は不動部材に回動自在に支持されている。また、上述したようにねじりコイルばね4の付勢力によりバッファアーム2には上方への力がかかっており、バッファアーム2の回動経路には上方への回動を阻止するストッパシャフト23が設けられている。バッファシャフト1の位置はバッファアーム2を介してアームシャフト3の回動と連動する位置検出エンコーダ10及びバッファ位置検出センサ9により認識され、認識されたバッファシャフト1の位置に基づいて図6に示す加熱ローラ43の回転速度を制御している。これにより定着装置42と用紙搬送機構部33との間で連続紙31の弛みを一定に保ち、画像形成中の連続紙31には常に任意の張力がかかる構成となっている。
【0019】
バッファ機構部25の左側面図を示す図2において、上述したようにモータ11を作動させてギヤ12及び扇形ギヤ13を介してアームシャフト3を回動させるが、通常画像形成動作中にはモータ11が非励磁状態であるため連続紙31の張力とねじりコイルばね4の付勢力との作用によりバッファシャフト1は中間的な位置を占めている。しかし、連続紙31を用紙搬送機構部32,33により自動装填させる場合にはバッファシャフト1を下方に退避させる必要があり、この場合にはモータ11を作動させてバッファシャフト1を下方へと押し下げる。
【0020】
バッファホルダ7は、上述したように引張ばね17によって常時R方向への付勢力を受けてカム15に当接する状態におかれている。このためバッファホルダ7はカム15の回転に伴い図3において左右方向に移動するが、カム15の位置はポジションセンサ19及びポジションエンコーダ20により制御されており、カム15を回転させるポジションモータ14の制御は図6に示す用紙位置検出センサ34からの信号に基づいて行われている。図4に示すように連続紙31の側縁が用紙位置検出センサ34により検知される構成となっており、連続紙31が用紙搬送機構部32,33により自動装填される際に用紙位置検出センサ34が連続紙31の側縁を検出する。このとき検出された位置を基準位置とし、画像形成動作中の連続紙31の側縁が用紙位置検出センサ34に対して左右にずれることで連続紙31の蛇行が検知され、これがポジションモータ14の制御に反映されてカム15の回転方向が決定され、これによりバッファシャフト1が揺動される。ここで、用紙位置検出センサ34はバッファ機構部の一部をなす蛇行検知手段として機能し、ポジションモータ14、カム15、ポジションセンサ19、ポジションエンコーダ20、回動軸21によって蛇行補正機構部が構成されている。
【0021】
図5は、連続紙31の蛇行を補正した状態のバッファ機構部25を示している。用紙位置検出センサ34が連続紙31の蛇行を検出すると、ポジションモータ14の作動によりカム15が回転してバッファホルダ7が変位する。これにより回動軸21を中心にバッファ機構部25の全体が変位することにより、用紙幅方向における定着装置42と用紙搬送機構部33との間の行路長が変化し、連続紙31の蛇行を修正することができる。連続紙31の走行位置が変化すると用紙位置検出センサ34における用紙の側縁位置が変化し、その結果ポジションモータ14が作動してカム15の回転位置を制御する。このように、常に用紙位置検出センサ34の基準位置に連続紙31の側縁が検出されるように制御されるため、連続画像形成動作中に蛇行した連続紙31は正規の位置に補正される。また、画像形成動作中にバッファ機構部25が変位することにより連続紙31の行路長が変化してもバッファシャフト1は任意の位置に保たれるように制御されるため、連続紙31には任意の張力が作用することとなる。
【0022】
上述の構成によれば、バッファシャフト1を連続紙31と平行な面内において揺動させることにより連続紙31の蛇行を補正することができるので、簡易な構成及び制御により装置の小型化を妨げることなく、連続画像形成動作中においても連続紙の蛇行を補正することができ、良好な画像形成を連続して行うことができる。
【0023】
上記実施形態において、ポジションモータ14の励磁状態を維持させることにより画像形成動作停止後においても画像形成動作停止前の状態を保持することができ、画像形成動作を一時停止させた後に再開する場合にもすぐに画像形成動作を行うことができることからファーストプリントタイムを短縮させることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 バッファ部材(バッファシャフト)
2 アーム部材(バッファアーム)
3 支軸(アームシャフト)
4 付勢手段(ねじりコイルばね)
6,7 支持部材(バッファホルダ)
11 張力変更手段(モータ)
14 変位手段(ポジションモータ)
21 回動軸
25 バッファ機構部
31 連続紙
34 蛇行検知手段(用紙位置検出センサ)
48 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特許第3738983号公報
【特許文献2】特開平6−56295号公報
【特許文献3】特開昭62−27209号公報
【特許文献4】特許第4328043号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続紙の全幅と接触するバッファ部材と、前記バッファ部材の両端にその一端を固定された一対のアーム部材と、前記各アーム部材の他端を支持する回転自在な支軸と、前記バッファ部材と連続紙とが接触する向きの付勢力を前記バッファ部材に付与する付勢手段とを有し、画像形成動作中に搬送される連続紙に対して張力を付与するバッファ機構部において、
前記バッファ部材を連続紙と平行な面内において揺動させ、連続紙の蛇行を補正する蛇行補正機構部を有することを特徴とするバッファ機構部。
【請求項2】
請求項1記載のバッファ機構部において、
連続紙の蛇行を検知する蛇行検知手段を有し、前記蛇行検知手段の検知結果に基づいて前記バッファ部材を揺動させることを特徴とするバッファ機構部。
【請求項3】
請求項1記載のバッファ機構部において、
前記支軸を回転自在に支持する一対の支持部材を有し、前記蛇行補正機構部は、前記支持部材の一方を回動自在に支持する回動軸と、前記回動軸を中心として前記支持部材の他方を変位させる変位手段とを有し、前記変位手段により前記支持部材の他方を変位させることにより前記バッファ部材を揺動させることを特徴とするバッファ機構部。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載のバッファ機構部において、
連続紙に付与される張力を変更する張力変更手段を有することを特徴とするバッファ機構部。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1つに記載のバッファ機構部において、
前記蛇行補正機構部は画像形成動作停止後においても直前の状態を保持することを特徴とするバッファ機構部。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つに記載のバッファ機構部を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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