説明

バネ式フィルター用濾過助線およびフィルターエレメント

【課題】消耗品が無くかつ恒久的に精密濾過を可能にするバネ式フィルター用濾過助線およびフィルターエレメントを提供すること。
【解決手段】断面積が0.03mm超え、2.0mm未満であり、5〜200μmの凹部及び凸部を有する靱性を備えた線材であるバネ式フィルター用濾過助線とする。また、このバネ式フィルター用濾過助線を、等ピッチに突部を形成した弾力性を有する線材を螺旋状に巻回した巻バネからなる筒状筐体の外周に沿って完全に覆うようにかつ各線材の凹凸部がランダムに位置するよう設置したフィルターエレメントとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中および気体中に存在する微細物等を濾過するフィルターエレメントに関し、特に液体中の微細な懸濁物の濾過や気体中の微小な粉塵の濾過を目詰まりすることなく長期安定に使用できるフィルターエレメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来液体や気体の濾過にはフィルターエレメントとして濾布や濾紙が用いられているが、濾布や濾紙は被濾過物による目詰まりが生じるため定期的な交換が必要でありランニングコストが掛かっている。目詰まりを起こさずかつ交換不要なフィルターエレメントが要望されている。
【0003】
目詰まりを起こさず交換不要なフィルターエレメントとして下記特許文献1および特許文献2がありコイルバネ型のものが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特許第1822317号公報
【特許文献2】特許第3124901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、予め略等ピッチに突部を形成した弾力性を有する線材を螺旋状に巻回したフィルターエレメントが開示されており、たしかに突起部による微少間隔で濾過でき、微少間隔を拡大することで目詰まりが解消されるが、突起物による微少間隔のみでは精密な濾過は出来ない。特許文献2には、コイル状のフィルターエレメントの間隙部にケイソウ土や活性炭粉末などの濾過助剤を付着させることで精密濾過を可能にしているが、濾過を行うと被濾過物と濾過助剤が混ざるため、これらを分離することが極めて困難なため、濾過助剤を被濾過物と伴に廃棄しなければならず、濾過助剤が消耗品となる欠点がある。
【0006】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、消耗品が無くかつ恒久的に精密濾過を可能にするバネ式フィルター用濾過助線およびフィルターエレメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について精意研究を重ねた結果、恒久的に精密濾過が行え、かつ被濾過物との分離が容易な濾過助線を新規に考案し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明では断面積が0.03mm超え、2.0mm未満であり、5〜200μmの凹部及び凸部を有する靱性を備えた線材であることを特徴とするバネ式フィルター用濾過助線が提供される。
【0009】
この線材では凹部と凸部が線材上の同じ箇所において正位又は位相90度でずれて存在することが好ましい。
【0010】
また本発明の他の一観点にかかるフィルターエレメントは、バネ式フィルター用濾過助線を、等ピッチに突部を形成した弾力性を有する線材を螺旋状に巻回した巻バネからなる筒状筐体の外周に沿って完全に覆うようにかつ各線材の凹凸部がランダムに位置するよう設置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上、本発明により、恒久的に使える濾過助線と消耗品がなく精密濾過が行えるバネ式フィルターエレメントが提供でき、目詰まりを起こさずかつ交換不要なフィルターエレメントが達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は多くの異なる形態が実施可能であり、以下に示す実施形態、実施例の記載のみに限定されるものではない。
【0013】
本実施形態は、バネ式フィルター用濾過助線およびフィルターエレメントに関するものである。
【0014】
(バネ式フィルター用濾過助線)
本実施形態に係るバネ式フィルター用濾過助線は、断面積が0.03mm超え、2.0mm未満であり、5〜200μmの凹凸部を有する靱性を備えた線材であることを特徴とする。
【0015】
線材の断面積が0.03mm以下であるとフィルターエレメントに使用する助線本数が多くなり高コストになると伴に後述する逆洗浄時の被濾過物との分離が困難になる。断面積が2.0mm以上であると、線材が重くなり、フィルターエレメントの重量が過大になると伴に逆洗浄時の洗浄圧力も大きくする必要があり、強力なポンプを使用することになりコスト高になる。
【0016】
より好ましい線材の断面積は0.1mm超え、1.0mm未満である。
【0017】
本発明における凹凸部とは、図1に示す線材基準表面からのへこみおよび盛り上がりを指し、その高さ(低さ)を5〜200μmとする。凹凸部が5μm以下では精密濾過は出来るが濾過量が小さくなるので好ましくない。凹凸部が200μm以上では十分な濾過ができないので好ましくない。
【0018】
より好ましい凹凸部は10〜100μmである。
【0019】
線材は濾過時に縮み(バネ式フィルターに密着し)、逆洗浄時に伸び(膨らみ)、かつ多少の衝撃では破壊しない靱性をもつ素材が好ましく、ステンレススチールやチタン等の金属、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の有機高分子、強化ガラスなどのセラミックを用いる事ができるが、特に素材を限定するものではない。
【0020】
本発明の助線では図1に示す様に、凹部と凸部が線材上の同じ箇所において正位又は位相90度でずれて存在することが好ましい。この形状は線材を圧延やプレス等の加工方法で凹部を形成させた場合に、質量保存の法則により凹部面から90度ずれた面が凸部となった状態であり、極めて低コストで凹部及び凸部を形成させたものなので特に好ましい。特に軸方向に平行に複数の溝を有するローラーを用い、線材を挟み込んで圧延する方法が好ましい。
【0021】
線材への凹凸部の形成は圧延やプレスに限らず任意の方法で行えば良い。凹部の形成は、切削やエッチング等でも行え、凸部の形成は肉盛り溶接や接合、接着などでも行うことができる、これら方法は加工工程が煩雑でコストが高い点が問題である。
【0022】
(フィルターエレメント)
本実施形態に係るフィルターエレメントは、等ピッチに突部を形成した弾力性を有する線材を螺旋状に巻回した巻バネからなる筒状筐体の外周に沿って完全に覆うようにかつ各線材の凹凸部がランダムに位置するよう設置したことを特徴とする。巻バネからなる筒状筐体を完全に覆うためには、フィルターエレメント濾過助線を100本以上、好ましくは200本以上設置することが好ましいが、特に本数を制限するものではない。
【0023】
従来のバネ式フィルターは、円弧状外面に突起部を有する素材がコイル状に巻回された表面が濾過面積となり、突起によって形成される間隙サイズが正確に決まる。バネ式フィルターの外周面に濾過助剤をプリコートすることで濾過空隙を微細にでき精密濾過が可能になる。被濾過物が多くなると目詰まりを生じるが、目詰まり状態になった時にはフィルターエレメントの内側中空部からコイル外側へ向けて逆流させるかあるいは圧縮空気等を流す、即ち逆洗浄を行うことで濾過助剤が被濾過物と伴に空隙から外れ目詰まりが解消され、濾過助剤と被濾過物の混合物は廃棄処理される。(図2)
【0024】
本発明の濾過助線を用いたフィルターエレメントは、巻バネからなる筒状筐体の外周に沿って設置され、筐体上下に線材端が固定されている。線材の凹凸部が濾過助剤と同じ作用を発揮するので濾過空隙を微細にでき精密濾過が可能になる。被濾過物が多くなり目詰まり状態になった時には逆洗浄により被濾過物が空隙から外れ目詰まりが容易に解消される。この際、助線は逆洗浄圧力により延びて(膨らみ)線間隔を開き被濾過物の離脱を容易にするが助線自体は筐体から外れることがなく、恒久的に繰り返し濾過を続けることが出来る。(図3)
【実施例】
【0025】
以下、上記実施形態において説明したバネ式フィルター用濾過助線およびフィルターエレメントについて実際に作成し、本発明の効果を確認した。以下に本発明の実施例について詳しく説明するが、本発明はこれらの範囲に限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)
ステンレススチール(SUS304)の直径1mmの線材(断面積0.79mm2)を、プレスによって間隔3mmで20μmの凹凸を連続的に形成させた助線を作成した。この助線を巻バネからなる筒状筐体の外周に沿って200本設置したフィルターエレメントを作成し、0.5〜30μmの固形物で懸濁した汚水を濾過した。
【0027】
(比較例1)
実施例と同じ巻バネからなる筒状筐体を用い、濾過助剤としてケイソウ土を用い、実施例と同じ汚水を濾過した。
【0028】
実施例1と比較例1の濾過処理結果を表1に示す。
【表1】

【0029】
実施例1と比較例1の濾過結果を示した表1から分かるように、本発明のバネ式フィルター用濾過助線およびフィルターエレメントでは濾過能力、逆洗浄時間が同等で、補給助剤(消耗品)が不要で連続濾過できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、汚水処理や浄化処理などの公共的用途、および粉塵除去などの産業上用途において広く利用でき、特に、交換品や消耗品がなく恒久的に連続濾過できるものとして様々な用途に応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】助線の構造を示す図である。
【図2】濾過助剤を使ったバネ式フィルターの説明図である。
【図3】助線を使ったバネ式フィルターの説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1…バネフィルターエレメント
2…芯金
3…トップ金具
4…ボトム金具
5…濾過助剤
6…被濾過物
7…助線






【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面積が0.03mm超え、2.0mm未満であり、5〜200μmの凹部及び凸部を有する靱性を備えた線材であることを特徴とするバネ式フィルター用濾過助線。
【請求項2】
前記凹部と凸部が線材上の同じ箇所において正位又は位相90度でずれて存在する請求項1記載のバネ式フィルター用濾過助線。
【請求項3】
請求項1あるいは2に記載のバネ式フィルター用濾過助線を、等ピッチに突部を形成した弾力性を有する線材を螺旋状に巻回した巻バネからなる筒状筐体の外周に沿って完全に覆うようにかつ各線材の凹凸部がランダムに位置するよう設置したことを特徴とするフィルターエレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−207790(P2010−207790A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65524(P2009−65524)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(596002549)株式会社モノベエンジニアリング (7)
【Fターム(参考)】