説明

バブル型爪白癬治療具

【課題】内臓疾患など基礎疾患がある患者や妊婦および授乳中の患者に対しても制限なく治療が可能であるとともに、治療における個体差を解決し短期間で副作用がなく、しかも安価で安全に抗真菌外用剤を爪表面から爪の深部にまで効率的に経皮吸収させることができる携帯可能な爪白癬治療具を提供する。
【解決手段】抗真菌外用剤が注入されて押圧で密封が簡単に解除される構造のカプセルを開口周辺部に縁部を備えた弾力性のあるアプリケータ内に挿入し、該アプリケータを白癬菌に侵された爪の表面に密封接着した後、アプリケータの外側から押圧してカプセルの密封を解除し内部の抗真菌外用剤を漏出させて爪の深部に浸透させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は白癬菌に侵された爪を治療する治療具に好適に使用することができる爪白癬治療具に関するものである。特に、本願発明は白癬菌に侵された爪の表面に密封接着することができるアプリケータと該アプリケータの内に簡単に密封が解除でき、且つ内部に抗真菌外用剤が注入されているカプセルが挿入されたバブル型爪白癬治療具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、溺物や湿疹等の治療方法として、皮膚の表面に湿布剤や膏薬を貼り付けたり、液状の薬剤を噴霧して患者の皮膚から薬剤を直接浸透させる治療法は普通に行われている。
また、患者の皮膚に取り付けて携帯可能な流体源として機能する器具や外部流体源に接続したまま長期間に亘り制御された流速で大量の流体を患者に送達できる様にした器具等も知られている(特許文献1)。しかしながら、爪白癬等の爪の深部に係わる病気については、皮膚の治療に使用されている器具をそのまま利用するのは不可能と考えられている。
その大きな理由としては、爪はケラチンという蛋白質がレンガ壁状に幾重にも重なってできた硬い組織であるだけでなく、皮脂腺や汗腺を有しておらず溶媒となり得る汗や皮脂が分泌されることがない。しかも、爪は3層構造で最表層が硬いため、例え爪の表面に溶媒に溶解した液状の抗真菌外用剤を塗布しても該抗真菌外用剤が爪の表面から爪の深部にまで浸透するのに時間がかかってしまうため、その間に溶媒が揮発してしまい抗真菌剤が爪の深部にまで浸透することが極めて困難になるからである。
【0003】
爪白癬治療用として、喘息や心臓疾患の人に用いられている経皮吸収テープのようなドライタイプのテープ剤を用いる方法もないわけではないが、経皮吸収テープに用いられる適当な溶媒がないため抗真菌外用剤は溶解した状態にならず爪の深部にまで浸透しない。
また、従来から、爪に塗布されたマニキュアが最初に表面から乾燥し始め最後に爪に接する部分が乾燥するという性質を利用して、乾燥するまでの間に抗真菌外用剤を爪に浸透させるネイルラッカータイプの方法、及びこのネイルラッカータイプに好適な抗真菌外用剤も知られているが、これらの方法も溶媒として使用する溶剤が速やかに揮発してしまうので抗真菌外用剤を爪の深部にまで浸透させる方法としては有効な方法とは言えない。
さらに、液状の抗真菌外用剤を含浸させたガーゼ等を爪の上に載せたあと指サック等で指全体を覆って密封する方法も知られているが、ガーゼ等に含浸された有機溶媒や抗真菌外用剤が爪以外の皮膚部分に長時間付着することになり皮膚かぶれの原因となる。
【0004】
しかも、これらの治療方法に用いられている従来の治療具は完全な密封型ではないため抗真菌外用剤の液剤が周囲に漏れることがあり、爪の深部に抗真菌外用剤が有効量注入されているか否かの正確な判断ができず効果にバラツキが生じるという問題がある。
このような爪の表面に抗真菌外用剤を塗布する方法に替えて、内服抗真菌薬を服用する方法も知られているが、薬剤の性質上、吸収率が非常に低いので内服しても爪の中への浸透率が低く、症例によっては抗真菌剤が爪中に全く浸透していないこともあり十分な効果が得られないという問題がある。しかも、この内服抗真菌薬による爪白癬の治療は効果において個体差があるだけでなく、爪が完治するまで治療を続ける必要があり、通常1年前後と長期にわたるため、薬剤の副作用で基礎疾患がある患者や妊婦等に対して治療が制限されるだけでなく、治療費が嵩むなどの問題がある。
【0005】
このような方法に変えて、爪の深部にまで抗真菌剤を浸透させる手段として、抗真菌外用剤を爪表面に必要量塗布した後、超音波発生素子から発生した超音波で爪表面に接触させた超音波伝達媒体を直接照射して抗真菌剤の爪深層への浸透を促進させる装置(特許文献2)、ギガヘルツ帯の電磁波を発振する電磁波発信器とギガヘルツ帯電磁波を出射する出射部を備え、該出射部を患部に向けて照射して角質層内の白癬菌や爪の内部や裏側の白癬菌を加熱殺菌するようにした水虫の治療装置(特許文献3)、さらには、患部を液体に浸漬させるための容器と、液体を加熱する加熱手段と、液体を強制循環させる強制循環手段と、液体の温度を計測する温度センサと、温度センサにより測定された温度に基づいて加熱手段を制御する制御手段とを備え、設定された治療温度に制御された液体に患部を浸漬させて深部体温を昇温し、皮膚内層部に温熱浸潤効果を生じさせることができる水虫治療装置(特許文献4)等の装置も知られているが、これら装置は大型であるとともに高価である。
【0006】
上述のように、従来から知られている爪白癬の外用治療手段はあまり効果的ではなく、現時点においては、厚生労働省より承認されている爪白癬治療用の外用薬はなく、厚生労働省より承認されている爪白癬の治療方法としては、数種類の内服薬が臨床現場で使用されているに過ぎない。そこで、本出願人はこのような従来の種々の課題を解決するために、白癬菌に侵された爪の表面のみに溶媒に溶解した液状の抗真菌外用剤を適用して、抗真菌外用剤を効率的に爪の深部にまで含浸させることができる簡便な爪白癬治療具を開発して、既に特許出願している(PCT/JP2009/005808)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2007−505702号公報
【特許文献2】特開2004−135954号公報
【特許文献3】特開2006−075357号公報
【特許文献4】特開2003−126136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、内臓疾患など基礎疾患がある患者や妊婦および授乳中の患者や他の薬剤を内服している患者に対しても格別の注意を要する必要がなく、爪白癬の治療を行うことができるだけでなく、家庭での治療や長期の旅行にも好適な小型で携帯可能なカプセルとアプリケータからなるバブル型爪白癬治療具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は上記の課題を解決するものとして、第1の発明によれば、開口周辺部に縁部を備えたアプリケータと該アプリケータ内に外部からの押圧により密封性が解除されるカプセルが装填されていることを特徴とするバブル型爪白癬治療具を提供する。
第2の発明によれば、外部からの押圧により密封性が解除されるカプセルの構造が接合強度の弱い部分を有するカプセルであることを特徴とする、本願第1の発明に記載のバブル型爪白癬治療具を提供する。
第3の発明によれば、外部からの押圧によりカプセルの密封性が解除される構造が側壁に突起を備えたアプリケータを用いるものであることを特徴とする本願第1の発明に記載のバブル型爪白癬治療具を提供する。
第4の発明によれば、外部からの押圧によりカプセルの密封性が解除される構造が側壁に尖体を突き刺す孔が設けられたアプリケータを用いるものであることを特徴とする本願第1の発明に記載のバブル型爪白癬治療具を提供する。
第5の発明によれば、外部からの押圧により密封性が解除されるカプセルの構造がカプセルの内壁に突起を有するとともに該突起に対向する面が薄層のシール部材で成形されていることを特徴とする本願第1の発明に記載のバブル型爪白癬治療具を提供する。
第6の発明によれば、薄層のシール部材にクッション性と多孔性を有する部材が裏打ちされていることを特徴とする本願第5の発明に記載のバブル型爪白癬治療具を提供する。
第7の発明によれば、アプリケータが弾性および可撓性に優れたゴム系高分子で成形されたものであることを特徴とする本願第1〜6の発明のいずれかに記載のバブル型爪白癬治療具を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本願発明のバブル型爪白癬治療具は、内臓疾患など基礎疾患がある患者や妊婦および授乳中の患者などにも制限なく使用可能であるだけでなく、単に抗真菌外用剤が注入されたカプセルをアプリケータ内に挿入し、該アプリケータを爪の表面に密封接着させた後、アプリケータを押圧するという簡単な操作だけで高い濃度の抗真菌外用剤を白癬菌に侵された爪の深部にまで浸透させることができる。このように本願発明のバブル型爪白癬治療具は小型で操作が簡単なため旅行等にも持参できるという優れた特徴を有するものである。
【0011】
そして、本願第1の発明によれば、白癬菌に侵された爪の表面に密封接着されたアプリケータを押圧するだけの簡単な操作だけでカプセルの密封性を解除して内部の抗真菌外用剤を溢出させて爪の深部に浸透させることができる。
また、第2の発明によれば、アプリケータの外側から押圧してカプセルにおける接合強度が弱い部分を破壊することにより密封が解除されて抗真菌外用剤が漏出される。
また、第3の発明によれば、側壁に突起を備えたアプリケータを用いることによりカプセルの密封性を簡単に解除することが可能となる。
また、第4の発明によれば、側壁に尖体を突き刺す孔が設けられたアプリケータを用いることにより、該孔から尖体を突き刺してカプセルの密封性を簡単に解除することが可能となる。
また、第5の発明によれば、内壁に突起を有するとともに、該突起に対向する面に薄層シール部材が設けられたカプセルを押圧することにより突起が該薄層シール部材を貫通して抗真菌外用剤を漏出させることができる。
また、第6の発明によれば、薄層シール部材にクッション性と多孔性を有する部材が裏打ちされていることにより緩衝性の支持体となり、突起によって簡単に薄層シール部材に孔を開けることが可能となる。
また、第7の発明によれば、アプリケータが弾性および可撓性に優れたゴム系高分子で成形されたものを利用することにより抗真菌外用剤の含浸の程度を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】爪の表面にバブル型爪白癬治療具を接合した状態を示した斜視図である。
【図2】アプリケータ内に横型カプセルが設けられたバブル型爪白癬治療具とその使用態様を示す断面図である。
【図3】アプリケータ内に縦型カプセルが設けられたバブル型爪白癬治療具とその使用態様を示す断面図である。
【図4】アプリケータ内に接合強度の弱い部分を有するカプセルが設けられたバブル型爪白癬治療具とその使用態様を示す斜視図である。
【図5】アプリケータの側面に尖体を突き刺すための孔が設けられたバブル型爪白癬治療具とその使用態様を示す斜視図である。
【図6】内面に尖部が設けられたアプリケータからなるバブル型爪白癬治療具とその使用態様を示す断面図である。
【図7】従来のキャップ型の爪白癬治療具の斜視図である。
【図8】従来の爪の形状に対応させた爪白癬治療具の斜視図である。
【図9】従来の抗真菌外用剤を吸収した多孔体を挿入した爪白癬治療具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願発明の爪白癬治療具におけるアプリケータとしては、図7および図8に示されている様な下方開口部に縁部が設けられた構造をした良好な弾性を有する部材からなるアプリケータが用いられるが、このアプリケータの構造自体は本出願人が先に特許出願したものと大差はない(上記のPCT出願)。ただ、本願発明はこのアプリケータの中に外部からの小さな圧力で密封性が解除されて内部の抗真菌外用剤が漏出するカプセルが設けられている点で異なっている。既に特許出願しているアプリケータを用いる爪白癬治療具は、アプリケータ内に注射器等の適当なインジェクターを用いて抗真菌外用剤を常圧で注入するか、或いは抗真菌外用剤を加圧下で圧入するかして爪の深部に浸透させるかの器具であるため、アプリケータ内に抗真菌外用剤を注入するための注射器等のインジェクターを絶えず携帯しなければならないという問題がある。そこで、本出願人は図9に見られるように、底部がシールされたアプリケータ内に抗真菌外用剤を含浸した多孔性部材を挿入し、使用時に該アプリケータの底部のシールを剥がすとともにアプリケータを爪の表面に密封接着する爪白癬治療具についても既に特許出願している(上記のPCT出願)。
ところが、アプリケータ内に予めスポンジ等に抗真菌外用剤を含浸させた爪白癬治療具を用いる器具は、アプリケータの底部を剥がして爪の表面に密封接着する間に抗真菌外用剤が漏出したり、抗真菌外用剤の溶剤が気化して粘度が高くなる等の問題が生じる。
【0014】
本願発明は従来のアプリケータを用いる爪白癬治療具が有する課題を解決するために工夫されたものであり、白癬菌に侵された爪の表面に密封接着可能な可撓性アプリケータと該アプリケータ内の小さな圧力で密封性が壊れる抗真菌外用剤が装填されたカプセルから構成されている。そして、この爪白癬治療具の使用に際しては、アプリケータを白癬菌に侵された爪の表面に密封接着するとともに、アプリケータ内に装填されたカプセルを、アプリケータの外部から押圧することにより、カプセルの密封性を破壊して内部の抗真菌外用剤を溢出させ白癬菌に侵された爪の深部に浸透させる形式のバブル型爪白癬治療具である。すなわち、本願発明のバブル型爪白癬治療具は従来のアプリケータの内部に抗真菌外用剤が装填された爪白癬治療具と比較して、アプリケータの内部に抗真菌外用剤が注入された小さな力で密封性が破壊されるカプセルが装填されている点で異なっている。
【0015】
以下、本願発明の爪白癬治療具の詳細を図1〜図6を用いて説明する。
図1は本願発明のバブル型爪白癬治療具(1)を白癬菌に侵された足の爪(7)に装着している状態を模式的に示したものである。図1のバブル型爪白癬治療具(1)は説明し易いように大きく描かれているが、実際の爪に対するバブル型爪白癬治療具(1)は小さく、このバブル型爪白癬治療具(1)を装着したまま靴を履いて日常生活を行うことが可能である。図1における(2)は本願発明のバブル型爪白癬治療具(1)を構成する主要な要素であるアプリケータ(2)であり、(3)はアプリケータ(2)の下方の開口部周辺に設けられた縁部である。この縁部(3)は白癬菌に侵された爪の表面にしっかりと密封接着するために設けられた広い面積の接合部である。(4)はアプリケータ(2)の内部に装填されているカプセルであり、このカプセル(4)の内部には抗真菌外用剤が注入されている。
そして、このカプセル(4)の内側には先の尖った突起(5)が設けられており、この突起(5)を軽く押圧することにより突起(5)の反対側のカプセル(4)の表面が破れ易く成形されている。本願発明のバブル型爪白癬治療具(1)は、単に小さいだけでなく、爪白癬菌に侵された爪だけに特定して設けることができるため極めて効率的に治療ができるという特徴を有するものである。
【0016】
図2の(イ)は、本願発明における典型的なバブル型爪白癬治療具(1)を白癬菌に侵された足の爪に装着している状態の断面図を模式的に示したものである。図2も図1と同様に本願発明の態様を分かり易く説明するために、足の指(6)や爪(7)に対してバブル型爪白癬治療具(1)が大きく描かれている。(2)はアプリケータであり、(3)はアプリケータ(2)の下方の開口部周辺に設けられた縁部である。本願発明のバブル型爪白癬治療具(1)はアプリケータ(2)と内側に突起(5)が設けられたカプセル(4)から構成されている。そして、このカプセル(4)の中には抗真菌外用剤(8)が注入されており、下部開放部にはクッション性を有する多孔体(10)で裏打ちされたアルミ箔や簡単に破れる薄いプラスチックシート等のシール部材(9)で密封されている。なお、カプセル(4)の内側に設けられている突起(5)は爪(7)に含浸させる抗真菌外用剤(8)の量や含浸速度に対応させて任意に設けることもできる。
また、多孔体(10)としてウレタン等の発泡体を使用する場合はカプセル(4)中の抗真菌外用剤(8)がカプセル(4)から漏出して爪(7)に浸透するように連通気泡のものを使用する必要がある。なお、本願発明で用いる裏打ち材としては、必ずしも連通気泡の発泡体でなくてもメッシュ構造、織布、不織布等の多孔性でクッション性があればどのようなものでも良い。要するに、カプセル(4)内に設けられた突起(5)がアルミ箔や薄いプラスチックシート等のシール部材(9)を突き刺せるようなものであればどのような材質であっても良い。
【0017】
図2の(ロ)は、本願発明のバブル型爪白癬治療具(1)の使用態様を示したものであり、アプリケータ(2)の外側から押圧してカプセル(4)の内側に設けられた突起(5)がアルミ箔や薄いプラスチックシート等のシール部材(9)を突き刺して孔を開け内部の抗真菌外用剤(8)を爪(7)の深部にまで浸透させるようにしたものである。
多孔体(10)として、通気性およびクッション性の部材を使用することにより突起(5)が容易にアルミ箔や薄いプラスチックシート等のシール部材(9)を突き刺すことができる。図2は突起(5)が三つのものを例示しているが、もちろん種々の治療処理に応じて任意の数の突起(5)が設けられて良いことは言うまでもない。なお、発泡体、メッシュ構造、織布、不織布等の多孔体(10)をアプリケータ(2)の底面を覆うように広く設けることにより均質に抗真菌外用剤(8)を爪(7)の中に含浸することが可能となる。
【0018】
図3の(イ)は、本願発明の異なった形態のバブル型爪白癬治療具(1)の断面図である。図2で示されるものと原理は同じであるが、図2で示されるバブル型爪白癬治療具(1)がアプリケータ(2)の上方から下方に向かって押圧する機構であるのに対して、この図3の(イ)で示されるバブル型爪白癬治療具(1)は縦型であり、アプリケータ(2)の横方向から押圧することによりアルミ箔や薄いプラスチックシート等のシール部材(9)を突き刺せるようにしたものである。図2や図3に示されているバブル型爪白癬治療具(1)の使用法について特に決められているわけではないが、図8に示されている様な底面積に対する高さが小さいアプリケータを用いる場合は図2に示される様なカプセル(4)が望ましく、図7に示される様な底面積に対する高さが大きいアプリケータを用いる場合は図3で示される様なカプセル(4)が望ましいものと考えられる。
図3の(ロ)は、この縦型のカプセル(4)を用いてアプリケータ(2)の横方向から押圧している態様を示したものである。この図3の(ロ)で示されるカプセル(4)の場合、アルミ箔や薄いプラスチックシート等のシール部材(9)を突き刺すために、特に通気性の多孔体(10)を裏打ち材として設ける必要はないが、アプリケータ(2)の底部全体を覆うように、発泡体、メッシュ構造、織布、不織布等を設けることにより、抗真菌外用剤(8)がゆっくりと均等に爪(7)の深部にまで浸透するため好ましい。
【0019】
図4の(イ)は、本願発明の異なった形態のバブル型爪白癬治療具(1)の斜視図である。図2で示されるものと原理は同じであるが、アプリケータ(2)を押圧した場合に、カプセル(4)の接合強度の弱い部分(11)を設け、軽い押圧で接合部を破壊させてカプセル(4)の密封性を解除して、内部の抗真菌外用剤(8)を漏出(バースト)させるものである。図4の(ロ)は、アプリケータ(2)を押圧してカプセル(4)内の抗真菌外用剤(8)を漏出(バースト)させた状態を示したものである。
【0020】
図5の(イ)は、本願発明の異なった形態のバブル型爪白癬治療具(1)の斜視図である。この図5で示されるバブル型爪白癬治療具(1)は、図1〜図4で示されているものとは異なり、カプセル(4)ではなく、側面に尖体を突き刺すための孔(12)が設けられたアプリケータ(2)を用いるものである。このアプリケータ(2)の側面に設けられた孔(12)は通常は成形材料の弾性によって閉じられているが、この孔(12)を経由して内部のカプセル(4)に尖体(13)を突き刺すことによりカプセル(4)内の抗真菌外用剤(8)を漏出(バースト)させるものである。このカプセル(4)は弱い力でも漏出(バースト)させることができるように一部を薄く成形してもよく、また、抗真菌外用剤(8)を圧入してカプセル(4)を膨張させて漏出(バースト)を容易にすることも好ましい態様として考えられる。図5の(ロ)は、尖体(13)を突き刺すことにより、内部の抗真菌外用剤(8)を漏出(バースト)させた状態を示したものである。
【0021】
図6の(イ)は、本願発明の異なった形態のバブル型爪白癬治療具(1)の断面図である。この図6(イ)で示されるバブル型爪白癬治療具(1)は、図2で示されているものと類似しているが、突起(5)がカプセル(4)ではなくアプリケータ(2)の内壁に設けられている点で異なっている。そして、アプリケータ(2)を押圧することにより内部に装填されているカプセル(4)の底面のアルミ箔や薄いプラスチックシート等のシール部材(9)を突き刺してカプセル(4)の密封性を解除するものである。この図6(イ)に示されるものも図2に示されているものと同じくカプセル(4)の底面にクッション性を有する多孔体(10)で裏打ちされたアルミ箔や薄いプラスチックシート等のシール部材(9)が設けられており、このクッション性を利用して突起(5)がアルミ箔や薄いプラスチックシート等のシール部材(9)を突き刺すものである。図6の(ロ)はアプリケータ(2)の内壁に設けられた突起(5)がカプセル(4)の底面に設けられたアルミ箔や薄いプラスチックシート等のシール部材(9)を突き刺した状態を示したものである。
【0022】
上記のように、本願発明のバブル型爪白癬治療具は小型で、しかも簡単な操作で装着が可能であり、白癬菌に侵されている多くの人々、特に内臓疾患のある人や妊婦等のニーズに適合するものと思われる。なお、本願発明のバブル型爪白癬治療具における好適なアプリケータの材質としては、可撓性および弾力性に優れた材質が好ましく、ポリブタジエン系、ブタジエンアクリロニトリル系、クロロプレン系、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリイソブチレンゴム等のゴム系部材を使用することができるが、種々の接着剤との相性がよいブチルゴムが最も好適である。また、本願発明のバブル型爪白癬治療具における好適なカプセルの材質としては、ポリプロピレンやポリエチレン等の汎用性の樹脂で良い。ただ、カプセル用部材は成形品の一部に突起を設ける必要があり、アルミ箔や薄いプラスチックシートを突き刺す程度の硬度を有することが必要である。
なお、本願発明において、アプリケータ内の底部全体を覆うように設ける多孔性材として、連通気泡の発泡体、メッシュ構造、織布、不織布等を例示したが、これらはいずれもアプリケータ内に設ける場合であり、該多孔性材をアプリケータの縁部にまで延長して設ける場合は抗真菌外用剤がアプリケータ外に漏れないように多孔性材の厚さ方向にのみ連通したものが好ましいことは言うまでもない。なお、この場合アプリケータの縁部と接触する部分は接着剤が含浸されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
抗真菌外用剤を爪表面から爪の深部にまで効率的に浸透させ得る簡便なバブル型爪白癬治療具を提供するものであり、内臓疾患など基礎疾患がある患者や妊婦さらには授乳中の患者に対しての制限ない治療が可能である。しかも、本願発明のバブル型爪白癬治療具は副作用がなく小型で簡単に装着ができるため、携帯可能な爪白癬治療具として今後広く使用されることが期待される。
【符号の説明】
【0024】
1 バブル型爪白癬治療具
2 アプリケータ
3 縁部
4 カプセル
5 突起
6 指
7 爪
8 抗真菌外用剤
9 シール部材
10 多孔体
11 接合強度の弱い部分
12 孔
13 尖体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口周辺部に縁部を備えたアプリケータと該アプリケータ内に外部からの押圧により密封性が解除されるカプセルが装填されていることを特徴とするバブル型爪白癬治療具。
【請求項2】
外部からの押圧により密封性が解除されるカプセルの構造が接合強度の弱い部分を有するカプセルであることを特徴とする請求項1に記載のバブル型爪白癬治療具。
【請求項3】
外部からの押圧によりカプセルの密封性が解除される構造が側壁に突起を備えたアプリケータを用いるものであることを特徴とする請求項1に記載のバブル型爪白癬治療具。
【請求項4】
外部からの押圧によりカプセルの密封性が解除される構造が側壁に尖体を突き刺す孔が設けられたアプリケータを用いるものであることを特徴とする請求項1に記載のバブル型爪白癬治療具。
【請求項5】
外部からの押圧により密封性が解除されるカプセルの構造がカプセルの内壁に突起を有するとともに該突起に対向する面が薄層のシール部材で成形されていることを特徴とする請求項1に記載のバブル型爪白癬治療具。
【請求項6】
薄層のシール部材にクッション性と多孔性を有する部材が裏打ちされていることを特徴とする請求項5に記載のバブル型爪白癬治療具。
【請求項7】
アプリケータが弾性および可撓性に優れたゴム系高分子で成形されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のバブル型爪白癬治療具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−115596(P2012−115596A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270402(P2010−270402)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(595028904)
【Fターム(参考)】