説明

バラスト水処理システム及びバラスト水処理方法

【課題】新たなバラスト水処理システムの提供。
【解決手段】バラストタンク103に供給される液体中の水生微生物の殺菌処理をするための第1の殺菌処理装置101と、バラストタンク103内におけるバラスト水中の水生微生物の殺菌処理をするための第2の殺菌処理装置102とを含み、第1の殺菌処理装置101は液体をシーチェスト104からバラストタンク103に供給するためのバラスト水供給ライン105と接続し、第2の殺菌処理装置102は塩化ナトリウムを含む液体の電気分解により次亜塩素酸ナトリウムを発生させるための電解槽を備えるバラスト水処理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラスト水処理システム及びバラスト水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンカーや大型貨物船等といった船舶においては、オイルや貨物を搭載しない又はそれらの搭載量が少ない状態で航行する場合、船舶の安定性やバランスの確保のために、通常、バラストタンク内にバラスト水を収容して航行している。このバラスト水は、通常、荷揚げした港において海水などを汲み上げて注入し、荷積みした港において排出される。このように、バラスト水は荷揚げした港の海水などを使用することから、バラスト水には荷揚げした港周辺に生息する水生微生物等が含まれ、この水生微生物が荷積みした港においてバラスト水とともに排出される。
【0003】
近年、この水生微生物を含むバラスト水の排出による生態系の乱れが国際的な問題となっている。このため、国際海事機関(IMO)は、2004年にバラスト水管理条約を採択し、その中で、排出するバラスト水に生息する生物の排出基準が厳しく定められている。
【0004】
バラスト水の処理方法としては様々な方法が提案されている。具体的には、ろ過及び遠心分離等により水生微生物を除去する方法、物理的・機械的に水生微生物を殺滅する方法、熱により水生微生物を殺滅する方法、化学薬品をバラストタンク中に注入したり、塩素系物質等を生成させることにより水生微生物を殺滅する方法(例えば、特許文献1)、これらの方法を組み合わせた方法等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007−515289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、バラスト水管理条約が採択され、バラスト水処理装置の設置が義務付けられることになった。これにより、バラスト水を処理可能となる新たな技術がいっそう求められることとなった。そこで、本発明は、バラスト水を処理可能となる新たな処理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、バラストタンクに供給される液体中の水生微生物の殺菌処理をするための第1の殺菌処理装置と、バラストタンク内におけるバラスト水中の水生微生物の殺菌処理をするための第2の殺菌処理装置とを含み、前記第1の殺菌処理装置は、前記液体をシーチェストからバラストタンクに供給するためのバラスト水供給ラインと接続し、前記第2の殺菌処理装置は、塩化ナトリウムを含む液体の電気分解により次亜塩素酸ナトリウムを発生させるための電解槽を備えるバラスト水処理システムに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バラストタンク内のバラスト水における水生微生物の増殖抑制可能な新たなバラスト水処理システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施の形態1におけるバラスト水処理システムの一例を示す概略構成図である。
【図2A】図2Aは、第1の殺菌処理装置の構成の一例を示す概略構成図である。
【図2B】図2Bは、第1の殺菌処理装置の構成のその他の例を示す概略構成図である。
【図2C】図2Cは、第1の殺菌処理装置の構成のさらにその他の例を示す概略構成図である。
【図2D】図2Dは、第1の殺菌処理装置の構成のさらにその他の例を示す概略構成図である。
【図3】図3は、第2の殺菌処理装置の構成及び配置の一例を示す概略構成図である。
【図4】図4は、実施の形態1のバラスト水処理システムにおける第1の殺菌処理装置を用いたバラスト水処理方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】図5は、実施の形態1のバラスト水処理システムにおける第2の殺菌処理装置を用いたバラスト水の処理方法の一例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、実施の形態1のバラスト水処理システムにおけるバラスト水の排出方法の一例を示すフローチャートである。
【図7】図7は、実施の形態2におけるバラスト水処理システムの一例を示す概略構成図である。
【図8A】図8Aは、実施の形態3におけるバラスト水処理システムの一例を示す概略構成図である。
【図8B】図8Bは、実施の形態3における第2の殺菌処理装置の構成及び配置の一例を示す概略構成図である。
【図9】図9は、実施の形態4におけるバラスト水処理システムのその他の例を示す概略構成図である。
【図10】図10は、実施の形態5におけるバラスト水処理システムのその他の例を示す概略構成図である。
【図11】図11は、実施の形態6におけるバラスト水処理システムのその他の例を示す概略構成図である。
【図12】図12は、実施の形態6のバラスト水処理システムにおける第1の殺菌処理装置を用いたバラスト水の処理方法の一例を示すフローチャートである。
【図13】図13は、実施の形態7におけるバラスト水処理システムの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、シーチェストからバラストタンクに供給される海水等の液体の殺菌処理を行うための第1の殺菌処理装置と、バラストタンク内におけるバラスト水中の水生微生物の殺菌処理を行うための第2の殺菌処理装置とを用いることにより、バラスト水を効率よく処理できるという知見に基づく。また、本発明は、バラスト水処理システムを小型化できるという知見に基づく。
【0011】
本発明によれば、例えば、バラスト水の殺菌を維持し、またバラスト水中において水生微生物の増殖を抑制でき、好ましくはバラストタンク内においてバラスト水中の水生微生物がほぼ完全に死滅した状態を維持することができる。また、本発明によれば、次亜塩素酸ナトリウムを発生させる第2の殺菌処理装置を用いることから、例えば、低公害であり、また、殺菌処理時における微生物の変異を抑制することができる。
【0012】
本明細書において「バラストタンクに供給される液体(単に「液体」という場合も含む)」とは、船外から取水されバラストタンクに貯留されてバラスト水として用いるものであって、海水、汽水及び淡水を含みうる。液体は、例えば、海水などのような塩化ナトリウムを含む液体であってもよいし、含んでいなくてもよい。また、液体が取水される領域は特に制限されず、海水域であってもよいし、淡水域でも、汽水域であってもよい。
【0013】
本明細書において「水生微生物の殺菌処理」とは、処理対象である液体/バラスト水に含まれる水生微生物の少なくとも一部を殺菌処理すること及び/又は水生微生物の増殖を抑制することを含む。また、本明細書において「水生微生物の殺菌処理」とは、少なくとも水生微生物を殺菌処理すればよく、水生微生物の殺菌処理とあわせて、水生微生物よりも大きな生物やその他の生物等を殺菌処理してもよい。水生微生物の殺菌処理としては、好ましくはバラスト水の排出時において下記表1に示すバラスト水排出基準を満たすようにバラストタンク内の次亜塩素酸ナトリウム濃度を管理することを含み、より好ましくは、バラスト水の排出時において下記表1に示すバラスト水排出基準を満たすように殺菌処理を行うことを含む。
【0014】
【表1】

【0015】
本明細書において「水生微生物」とは、海、川、湖等に生息する微生物を含み、海とつながっている河口、河川、運河等に生息し得る微生物を含みうる。水生微生物としては、例えば、酵母、カビ、植物性又は動物性プランクトン、プランクトンの卵や胞子、細菌類、菌類、ウイルス、藻類などの比較的微小サイズの水生生物等を含む。
【0016】
[バラスト水処理システム]
本発明は、一態様において、バラストタンクに供給される液体中の水生微生物の殺菌処理をするための第1の殺菌処理装置と、バラストタンク内におけるバラスト水中の水生微生物の殺菌処理をするための第2の殺菌処理装置とを含み、第1の殺菌処理装置は、前記液体をシーチェストからバラストタンクに供給するためのバラスト水供給ラインと接続し、第2の殺菌処理装置は塩化ナトリウムを含む液体の電気分解により次亜塩素酸ナトリウムを発生させるための電解槽を備えるバラスト水処理システムに関する。本発明のバラスト水処理システムによれば、例えば、バラスト水の処理効率を向上させることができる。また、本発明のバラスト水処理システムによれば、2種類の殺菌処理装置を備えるため、例えば、船舶に搭載する殺菌処理装置を小型化することができる。
【0017】
本発明のバラスト水処理システムにおいて、第2の殺菌処理装置は、例えば、循環処理可能なようにバラストタンクに接続していてもよい。循環処理可能なように第2の殺菌処理装置をバラストタンクに接続することにより、例えば、バラストタンク内における水生微生物の再増殖をさらに抑制でき、排出時における殺菌処理に要する負荷を低減できる。
【0018】
本発明のバラスト水処理システムにおいて、第2の殺菌処理装置は、塩化ナトリウムを含む液体を電気分解して次亜塩素酸ナトリウムを発生させるための電解槽を備える。第2の殺菌処理装置は、発生させた次亜塩素酸ナトリウムを用いてバラスト水中の水生微生物の殺菌処理を行うことができる。このように電解処理を用いることによって、例えば、船外から持ち込まれた殺菌剤等の特殊な化学薬品等を使用することなく、水生微生物の殺菌処理を行うことができる。塩化ナトリウムを含む液体としては、例えば、バラストタンク内のバラスト水、船外から取水した海水等が挙げられる。
【0019】
本発明のバラスト水処理システムにおいて、第2の殺菌処理装置は、処理効率向上の点から、塩化ナトリウム水溶液貯留タンク及び/又は塩化ナトリウム貯蔵タンクを備えることが好ましい。塩化ナトリウム水溶液貯留タンク及び/又は塩化ナトリウム貯蔵タンクを備えることにより、タンク内に塩化ナトリウム水溶液/塩化ナトリウムを貯留でき、必要に応じて塩化ナトリウム水溶液/塩化ナトリウムを電解槽に供給できる。これにより、例えば、淡水域を航行及び又は淡水域でバラスト水を取水する船舶であっても、次亜塩素酸ナトリウムを発生させて次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌処理を行うことができる。また、例えば、次亜塩素酸ナトリウムの発生効率を向上させ、殺菌処理効率を向上させることができる。塩化ナトリウム水溶液貯留タンクは、海上航行中に海水を適宜取水可能なように取水ポンプと接続していてもよい。これにより、塩化ナトリウム水溶液貯留タンクをより小型化することができる。また、第2の殺菌処理装置は、塩化ナトリウム水溶液貯留タンク及び/又は塩化ナトリウム貯蔵タンクに替えて、取水ポンプを備えていてもよい。これにより、例えば、取水ポンプを通じて取水した海水を電解槽に適宜供給することが可能になり、第2の殺菌処理装置をより小型化することが可能になる。
【0020】
本発明のバラスト水処理システムにおいて、第2の殺菌処理装置は、処理前のバラスト水及び処理後の次亜塩素酸ナトリウムを含むバラスト水を貯留可能な貯留槽を備えていてもよい。貯留槽を備えることにより、バラスト水を電解槽と貯留槽との間を循環させて貯留槽の次亜塩素酸ナトリウム濃度を上昇させることができ、処理効率を向上させることができる。
【0021】
本発明のバラスト水処理システムにおいて、第2の殺菌処理装置は、適正な処理を行い、かつ、処理効率を向上させる点から、次亜塩素酸ナトリウム濃度計を備えることが好ましい。
【0022】
本発明のバラスト水処理システムは、処理効率の向上及び装置の小型化の点から、第2の殺菌処理装置を複数個備えることが好ましい。第2の殺菌処理装置の数は、例えば、バラストタンクの数、容量等に応じて適宜設定できる。
【0023】
本発明のバラスト水処理システムにおいて、装置の小型化の点から、第2の殺菌処理装置は、第1の殺菌処理装置よりも処理容量が小さい装置であることが好ましい。本発明のバラスト水処理システムによれば、まず、第1の殺菌処理装置において取水した液体の殺菌処理(第1の殺菌処理)を行った後、その液体をバラスト水供給ライン及び/又はバラストタンクに注入し、その後、第2の殺菌処理装置においてバラストタンク内のバラスト水の殺菌処理(第2の殺菌処理)を行うことが可能となる。このため、本発明のバラスト水処理システムによれば、例えば、第2の殺菌処理装置が第1の殺菌処理装置よりも処理容量が小さい装置であっても十分な殺菌処理を行うことができ、またバラストタンク内の水生微生物の増殖を抑制できる。「処理容量」としては、例えば、単位時間あたりに殺菌処理可能な量、一回の処理で殺菌処理可能な量等を含む。
【0024】
本発明のバラスト水処理システムにおいて、第1の殺菌処理装置は、特に制限されず、バラスト水を殺菌処理するための装置が使用できる。第1の殺菌処理装置としては、例えば、機械的又は物理的に殺菌処理可能な装置、熱を用いた殺菌処理装置、化学薬品を用いた殺菌処理装置、塩素系物質等の生成を用いた殺菌処理装置等が使用でき、中でも、環境への影響を低減する点から、光触媒を用いて水生微生物を殺菌処理可能な装置、電気分解を用いて水生微生物を殺菌処理可能な装置が好ましく、より好ましくは電気分解を用いて水生微生物を殺菌処理可能な装置である。
【0025】
第1の殺菌処理装置は、電気分解により次亜塩素酸ナトリウムを発生させるための電解槽を備えることが好ましい。第1の殺菌処理装置及び第2の殺菌処理装置として、それぞれ電解処理を用いた殺菌処理装置を使用することにより、例えば、船外から持ち込まれた殺菌剤等の特殊な化学薬品等を使用することなく、バラスト水の水生微生物の殺菌処理を行うことができる。
【0026】
第1の殺菌処理装置は、処理効率向上の点から、塩化ナトリウム水溶液貯留タンク及び/又は塩化ナトリウム貯蔵タンクを備えることが好ましい。塩化ナトリウム水溶液貯留タンク及び/又は塩化ナトリウム貯蔵タンクを備えることにより、タンク内に塩化ナトリウム水溶液/塩化ナトリウムを貯留し、必要に応じて塩化ナトリウム水溶液/塩化ナトリウムを電解槽に供給できる。これにより、例えば、バラスト水を淡水域で取水する船舶であっても、次亜塩素酸ナトリウムを発生させて次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌処理を行うことができる。塩化ナトリウム水溶液貯留タンクは、海水を適宜取水可能なように取水ポンプと接続していてもよい。これにより、例えば、塩化ナトリウム水溶液貯留タンクをより小型化することができ、また、次亜塩素酸ナトリウムの発生に用いる塩化ナトリウムを容易に取得することができる。
【0027】
本発明のバラスト水処理システムにおいて、バラストタンクは、複数の区画に分割されていてもよい。分割される個数は特に制限されないが、例えば、1、2、3、4、5、6又はそれ以上が挙げられる。また、本発明のバラスト水処理システムにおいて、分割された区画の少なくとも1つの区画に対して、第2の殺菌処理装置が1個の割合で配置されていることが好ましく、装置の小型化及び配置スペース等の点から、より好ましくは少なくとも2つの区画に対して1個の割合で配置されていることが好ましい。
【0028】
本発明のバラスト水処理システムにおいて、バラストタンクは、攪拌装置を備えていてもよい。攪拌装置によりバラストタンク内のバラスト水を攪拌することにより、例えば、バラストタンク内のバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度を容易に均一することができ、また均一な殺菌処理を行うことができる。
【0029】
本発明のバラスト水処理システムにおいて、処理効率の向上及びバラスト水の排出時における品質管理の点から、微生物検査装置を備えることが好ましい。微生物検査装置は、例えば、第1の殺菌処理装置、第2の殺菌処理装置、バラストタンク、バラスト水供給ラインに配置することができる。バラスト水の排出時における品質管理の点からは、微生物検査装置は、バラスト水供給ラインに配置されていることが好ましい。処理効率の向上の点からは、微生物検査装置は、例えば、第2の殺菌処理装置及び/又はバラストタンクに配置されていることが好ましい。
【0030】
本発明のバラスト水処理システムは、処理効率の向上の点から、第1の殺菌処理装置及び/又は第2の殺菌処理装置における殺菌処理の制御を行う制御部を備えることが好ましく、バラストタンク内のバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度を制御するために前記第2の殺菌処理装置の制御を行う制御部を含むことがより好ましい。
【0031】
[バラスト水処理方法]
本発明は、その他の態様において、本発明のバラスト水処理システムを用いてバラスト水を処理する方法であって、バラストタンク内のバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度を測定すること、第2の殺菌処理装置において、塩化ナトリウムを含む液体を電気分解して次亜塩素酸ナトリウムを発生させること、及び発生させた前記次亜塩素酸ナトリウムをバラストタンク内のバラスト水に供給することを含むバラスト水処理方法に関する。本発明のバラスト水処理方法によれば、例えば、バラスト水の処理効率を向上でき、またバラストタンク内における水生微生物の再増殖を抑制することができる。本発明のバラスト水処理方法によれば、処理に要する電力等のランニングコストを低減させることができる。本発明のバラスト水処理方法は、本発明のバラスト水処理システムを用いるため、例えば、バラスト水処理に必要な船舶に搭載する殺菌処理装置を小型化することができる。
【0032】
本態様のバラスト水処理方法において、航行中に取水した海水、又は、塩化ナトリウム水溶液貯留タンク及び/若しくは塩化ナトリウム貯蔵タンクの塩化ナトリウムを用い、前記第2の殺菌処理装置において次亜塩素酸ナトリウムを発生させることを含むことが好ましい。これにより、例えば、淡水域を航行及び又はバラスト水を淡水域で取水する船舶であっても、次亜塩素酸ナトリウムを発生させ、次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌処理を行うことができる。また、第2の殺菌処理装置において電気分解する液体は、バラストタンク内のバラスト水であってもよい。
【0033】
本態様のバラスト水処理方法において、処理効率の向上及びランニングコストの低減の点から、測定したバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度が所定の基準値に至っている場合は、第2の殺菌処理装置の運転を停止させ、所定の基準値未満の場合は、第2の殺菌処理装置の運転を開始させることが好ましい。所定の基準値としては、例えば、水生微生物が増殖しない濃度、水生微生物の増殖を十分抑制可能な濃度等が挙げられる。
【0034】
本態様のバラスト水処理方法において、例えば、航行中における水生微生物の増殖の抑制、殺菌状態の維持及びバラスト水排出時における殺菌処理負荷の低減の点から、第2の殺菌処理装置における処理を航行中に行うことが好ましい。
【0035】
本態様のバラスト水処理方法において、処理効率の向上及びランニングコストの低減の点から、バラストタンク内のバラスト水中の水生微生物の生細胞数を測定すること及び/又は第2の殺菌処理装置においてバラストタンクから供給されたバラスト水中の水生微生物の生細胞数を測定することをさらに含んでいてもよい。生細胞数は、例えば、微生物検査装置を用いて測定することができる。
【0036】
本態様のバラスト水処理方法において、船舶内に液体を取水すること、第1の殺菌処理装置において取水した液体中の水生微生物の殺菌処理を行うこと、及び殺菌処理した液体をバラストタンクに導入することを含むことが好ましい。
【0037】
本態様のバラスト水処理方法において、バラスト水の排出時に、例えば、排出するバラスト水に含まれる水生微生物の生細胞数を測定することをさらに含んでいてもよい。また、測定結果に応じて、排出するバラスト水の殺菌処理を行うか否かを判断してもよい。生細胞数は、例えば、微生物検査装置を用いて測定することができる。
【0038】
本発明は、さらにその他の態様において、本発明のバラスト水処理システムを用いてバラスト水を処理する方法であって、船舶内に液体を取水すること、第1の殺菌処理装置において取水した液体中の水生微生物の殺菌処理を行うこと、及び殺菌処理した液体をバラストタンクに導入することを含むバラスト水処理方法に関する。本態様のバラスト水処理方法によれば、例えば、バラスト水の処理効率を向上させ、また処理に要するランニングコストを低減させることができる。また、本態様のバラスト水処理方法は、本発明のバラスト水処理システムを用いるため、例えば、バラスト水処理に必要な船舶に搭載する殺菌処理装置を小型化することができる。
【0039】
本態様のバラスト水処理方法において、処理効率の向上及びランニングコストの低減の点から、バラスト水の処理が第1の殺菌処理装置による処理のみであってもよい。バラスト水の処理を第1の殺菌処理装置による処理のみにするか否かの判断は、例えば、航行時間、バラスト水の量及びバラスト水の水質状態等に応じて決定することができる。バラスト水の水質状態は、例えば、目視によって判断してもよいし、測定装置によって得られた測定結果によって判断してもよい。
【0040】
本態様のバラスト水処理方法において、第1の殺菌処理装置は、塩化ナトリウムを含む液体の電気分解により次亜塩素酸ナトリウムを発生させるための電解槽と、塩化ナトリウム水溶液貯留タンク及び/若しくは塩化ナトリウム貯蔵タンクとを備える装置であって、前記タンクの塩化ナトリウムを用いて、前記第1の殺菌処理装置において次亜塩素酸ナトリウムを発生させることを含むことが好ましい。これにより、例えば、バラスト水を淡水域で取水する船舶であっても、次亜塩素酸ナトリウムを発生させて次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌処理を行うことができる。
【0041】
本態様のバラスト水処理方法において、処理効率の向上及びランニングコストの低減の点から、バラストタンク内のバラスト水中の水生微生物の生細胞数を測定することをさらに含んでいてもよい。生細胞数は、例えば、微生物検査装置を用いて測定することができる。
【0042】
本態様のバラスト水処理方法において、バラスト水の排出時に、例えば、排出するバラスト水に含まれる水生微生物の生細胞数を測定することをさらに含んでいてもよい。また、測定結果に応じて、排出するバラスト水の殺菌処理を行うか否かを判断してもよい。生細胞数は、例えば、微生物検査装置を用いて測定することができる。
【0043】
本発明は、さらにその他の態様において、バラスト水を処理する方法であって、船舶内に液体を取水すること、取水した液体中の水生微生物の殺菌処理を行うこと、及び殺菌処理した液体をバラストタンクに導入することを含む第1の殺菌処理工程と、バラストタンク内のバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度を測定すること、塩化ナトリウムを含む液体を電気分解して次亜塩素酸ナトリウムを発生させること、及び発生させた次亜塩素酸ナトリウムをバラストタンクに導入することを含む第2の殺菌処理工程とを含むバラスト水処理方法に関する。
【0044】
本態様のバラスト水処理方法において、処理効率の向上及びランニングコストの低減の点から、第2の殺菌処理工程は、バラストタンク内のバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度が所定の基準値に至っているか否かを判断すること、所定の基準値に至っている場合は、電気分解による次亜塩素酸ナトリウムの発生を停止させ、所定の基準値に至っていない場合は、電気分解による次亜塩素酸ナトリウムの発生を開始することを含むことが好ましい。
【0045】
本態様のバラスト水処理方法において、処理効率の向上及びランニングコストの低減の点から、第2の殺菌処理工程は、排出するバラスト水に含まれる水生微生物の生細胞数を測定する工程をさらに含んでいてもよい。生細胞数は、例えば、微生物検査装置を用いて測定することができる。
【0046】
また、本態様のバラスト水処理方法において、殺菌処理工程は、例えば、バラストタンク内のバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度、液体/バラスト水の水質、及び航行時間等に応じて、第1の殺菌処理工程のみであってもよい。
【0047】
本態様のバラスト水処理方法において、例えば、航行中における水生微生物の増殖の抑制、殺菌状態の維持及びバラスト水排出時における処理の低減の点から、第2の殺菌処理工程を航行中に行うことを含むことが好ましい。
【0048】
本態様のバラスト水処理方法において、例えば、バラスト水の排出時にバラスト水の殺菌処理を行うバラスト水殺菌処理工程をさらに含んでいてもよい。
【0049】
本態様のバラスト水処理方法において、バラスト水の排出時に、例えば、排出するバラスト水に含まれる水生微生物の生細胞数を測定する工程をさらに含んでいてもよい。また、測定結果に応じて、排出するバラスト水の殺菌処理を行うか否かを判断してもよい。生細胞数は、例えば、微生物検査装置を用いて測定することができる。
【0050】
本態様のバラスト水処理方法は、例えば、本発明のバラスト水処理システムを用いて行ってもよい。
【0051】
以下に、本発明を好適な実施の形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下に示す実施の形態に限定されない。
【0052】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるバラスト水処理システムの構成を示す概略構成図である。
【0053】
図1に示すように、本実施の形態1のバラスト水処理システムは、第1の殺菌処理装置101と、第2の殺菌処理装置102とを含む。第1の殺菌処理装置101は、シーチェスト104を通じてバラストタンク103にバラスト水を供給するためのバラスト水供給ライン105と、シーチェスト104とそれぞれ接続している。第2の殺菌処理装置102は、ライン106,107を有する循環ラインによってバラストタンク103と接続している。ライン106は、バラストタンク103のバラスト水を第2の殺菌処理装置102に供給するためのラインであり、ライン107は第2の殺菌処理装置102での処理後のバラスト水をバラストタンク103に供給するためのラインである。
【0054】
[第1の殺菌処理装置]
第1の殺菌処理装置101は、バラストタンクに供給される液体中の水生微生物の殺菌処理をするための装置である。本実施の形態1のバラスト水処理システムにおいて、バラストポンプ108によりシーチェスト104を通じて船舶内に供給された液体は、バラスト水供給ライン105及びライン110を通じて第1の殺菌処理装置101に搬送される。第1の殺菌処理装置101への液体の搬送は、例えば、ライン110に配置されたポンプによって行うことができる。搬送された液体は、第1の殺菌処理装置101において殺菌処理された後、ライン111を通じてシーチェスト104に供給される。第1の殺菌処理装置101からシーチェスト104への液体の供給は、例えば、ライン111に配置されたポンプによって行うことができる。このように第1の殺菌処理装置101を接続させた本実施の形態1のバラスト水処理システムによれば、例えば、シーチェスト104において殺菌処理後の液体と未処理の液体とを混合できることから、液体中の水生微生物の殺菌処理効率を向上できる。また、ライン110,111を用いることによって液体を繰り返し殺菌処理することができることから、液体中の水生微生物の殺菌処理効率を向上できる。
【0055】
なお、図1では、ライン110,111がそれぞれポンプを備えた形態を示しているが、本発明はこの形態に限られるものではなく、例えば、これらのポンプに替えて、第1の殺菌処理装置101に内蔵されたポンプ(図示せず)によって、第1の殺菌処理装置101への液体の搬送や、第1の殺菌処理装置101からシーチェスト104への液体の供給を行ってもよい。
【0056】
第1の殺菌処理装置101としては、特に制限されず、バラスト水を殺菌処理するための公知の装置が使用できる。第1の殺菌処理装置101としては、例えば、機械的又は物理的に殺菌処理可能な装置、熱を用いた殺菌処理装置、化学薬品を用いた殺菌処理装置、塩素系物質等の生成を用いた殺菌処理装置等が使用でき、中でも、環境への影響を低減する点から、光触媒を用いて水生微生物を殺菌処理可能な装置、電気分解を用いて水生微生物を殺菌処理可能な装置が好ましく、より好ましくは電気分解を用いて水生微生物を殺菌処理可能な装置である。
【0057】
電気分解を用いて水生微生物を殺菌処理可能な装置としては、電解槽を備える装置が挙げられ、例えば、図2Aに示す装置が使用できる。図2Aは、電気分解を用いて水生微生物を殺菌処理可能な装置の構成の一例を示す概略構成図である。図2Aに示すように、第1の殺菌処理装置201は、貯留槽211と電解槽212とを備える。貯留槽211と電解槽212とはライン215,216によって接続されている。貯留槽211の液体はライン215を通じて電解槽212に搬送され、電解槽212において電解処理による殺菌処理が行われる。ついで、電解槽212で処理された液体はライン216を通じて貯留槽211に搬送される。
【0058】
このような第1の殺菌処理装置201では、電解処理を用いるため、例えば、船外から持ち込まれた殺菌剤等の特殊な化学薬品等を使用することなく、液体中の水生微生物の殺菌処理を行うことができる。電解槽212では、液体に含まれる塩化ナトリウムを電解処理することよって次亜塩素酸ナトリウムを発生させ、発生させた次亜塩素酸ナトリウムを用いて液体中の水生微生物を殺菌処理することが好ましい。
【0059】
第1の殺菌処理装置201において、貯留槽211は、未処理及び/又は処理後の液体を貯留するためのタンクであって、貯留槽211は、殺菌処理を行う液体を導入するライン213と処理後の液体を排出するためのライン214とそれぞれ接続している。ライン213は、バラスト水供給ライン105に接続したライン110と接続する。ライン214は、シーチェスト104に接続したライン111と接続する。シーチェスト104を通じて船舶内に導入された液体を、バラスト水供給ライン105、ライン110及びライン213を通じて貯留槽211に供給可能である。供給された貯留槽211内の液体は、ライン215を通じて電解槽212に搬送可能であり、またライン214を通じてシーチェスト(図示せず)にそれぞれ搬送可能である。
【0060】
貯留槽211は、次亜塩素酸ナトリウムの濃度計を備えることが好ましい。これにより、貯留槽211内の次亜塩素酸ナトリウム濃度を管理できるとともに、貯留槽211内の次亜塩素酸ナトリウム濃度に応じて、例えば、貯留槽211に供給する液体の量、電解槽212及び/又はシーチェストに搬送する液体の量等といった第1の殺菌処理装置201におけるバラスト水の処理を制御できる。また、貯留槽211内の次亜塩素酸ナトリウム濃度に応じて、貯留槽211において、ライン213から供給された未処理の液体と電解槽212にて処理された次亜塩素酸ナトリウムを含む処理後の液体とを混合してもよい。
【0061】
貯留槽211は、電解槽212に処理前の液体を搬送するためのポンプを備えていてもよい。貯留槽211及び/又は電解槽212は、例えば、バラストポンプとは異なる海水取水用ポンプ(図示せず)と接続していてもよい。これにより、適宜貯留槽211及び/又は電解槽212に海水を供給することができる。
【0062】
第1の殺菌処理装置201は、塩化ナトリウム水溶液貯留タンク及び/又は塩化ナトリウム貯蔵タンクを備えていてもよい。図2Bに、第1の殺菌処理装置の構成のその他の例を示す。図2Bに示すように、塩化ナトリウム水溶液貯留タンク及び/又は塩化ナトリウム貯蔵タンク218を備えることにより、例えば、タンク218内に塩化ナトリウム水溶液/塩化ナトリウムを適宜貯留することができる。貯留した塩化ナトリウム水溶液/塩化ナトリウムを必要に応じて電解槽212に供給することによって、例えば、淡水域でバラストランクに供給する液体を取水する場合であっても、次亜塩素酸ナトリウムを発生させることができるため、次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌処理を行うことができる。また、例えば、次亜塩素酸ナトリウムの発生効率を向上させることができ、殺菌処理効率を向上させることができる。塩化ナトリウム水溶液貯留タンクは、例えば、バラストポンプとは異なる海水取水用ポンプと接続していてもよい。これにより、塩化ナトリウム水溶液貯留タンクを小型化できる。なお、図2Bにおいて、図2Aに示す構成要素と同じ構成要素には同一の符号を付しており、それらの説明は省略する。
【0063】
第1の殺菌処理装置201は、ストレーナを備えていてもよい。図2Cに、第1の殺菌処理装置の構成のさらにその他の例を示す。図2Cに示すように、ストレーナ209は、第1の殺菌処理装置201とバラスト水供給ライン(図示せず)とを結ぶライン213に配置することが好ましい、これにより、第1の殺菌処理装置に供給される海水等の液体に含まれるゴミ等を濾過等により除去することができる。なお、図2Cにおいて、図2Aに示す構成要素と同じ構成要素には同一の符号を付しており、それらの説明は省略する。
【0064】
なお、図2AからCでは、貯留槽211と電解槽212とが2本のライン215,216によって接続した形態を例にとり説明したが、本発明はこれに限られるものではない。貯留槽211と電解槽212とが、例えば、1本のラインによって接続されており、その一本のラインによって、貯留槽211から電解槽212への液体の供給と、電解槽212から貯留槽211への液体の供給とを行ってもよい。
【0065】
図2AからCでは、第1の殺菌処理装置201が、貯留槽211と電解槽212とを備える形態を例にとり説明したが本発明はこれに限られるものではなく、例えば、1つの処理槽によって電解処理と液体の貯留とを行ってもよい。図2Dに、第1の殺菌処理装置の構成のさらにその他の例を示す。なお、図2Dにおいて、図2Aに示す構成要素と同じ構成要素には同一の符号を付しており、それらの説明は省略する。
【0066】
図2Dに示すように、第1の殺菌処理装置201は、1つの処理槽219のみを備える装置であってもよい。処理槽219において、未処理及び/又は処理後の液体の貯留と、液体の電気分解処理とを行う。このように1つの処理槽219で貯留と電解処理を行う装置であれば、例えば、第1の殺菌処理装置をさらに小型化することができる。
【0067】
本形態の第1の殺菌処理装置201は、塩化ナトリウム水溶液貯留タンク及び/又は塩化ナトリウム貯蔵タンク218を備えていてもよい。タンク218に塩化ナトリウム水溶液/塩化ナトリウムを適宜貯留し、必要に応じて塩化ナトリウム水溶液/塩化ナトリウムを処理槽219に供給することによって、例えば、次亜塩素酸ナトリウムの発生効率や殺菌処理効率を向上させることができる。
【0068】
第1の殺菌処理装置201は、さらに、第1の殺菌処理装置201における処理を制御するための制御部(図示せず)を備えることが好ましい。制御部は、例えば、貯留槽211内の次亜塩素酸ナトリウム濃度及び/又はバラスト水供給ライン105内の次亜塩素酸ナトリウム濃度等に応じて、バラスト水供給ライン105から第1の殺菌処理装置101に供給する液体の量、電解槽212に供給するバラスト水(処理水)の量、及び電解槽212における処理時間等の制御を行うことが好ましい。
【0069】
[第2の殺菌処理装置]
本実施の形態1におけるバラスト水処理システムは、上記の通り、第2の殺菌処理装置102を備える。第2の殺菌処理装置102は、バラストタンクに供給される液体中の水生微生物の殺菌処理をするための装置であって、バラスト水を電気分解して次亜塩素酸ナトリウムを発生させるための電解槽を備える装置である。このように電解処理によって発生させた次亜塩素酸ナトリウムを用いて殺菌処理を行うことによって、例えば、船外から持ち込まれた殺菌剤等の特殊な化学薬品等を使用することなく、水生微生物の殺菌処理を行うことができる。
【0070】
第2の殺菌処理装置102は、図1に示すように、ポンプをそれぞれ備えるライン106,107によってバラストタンク103と接続し、このライン106,107によってバラストタンク103内のバラスト水を循環処理可能なようにバラストタンク103に配置されている。すなわち、ライン106を通じてバラストタンク103内のバラスト水を第2の殺菌処理装置102に供給可能であり、また、ライン107を通じて第2の殺菌処理装置102内のバラスト水をバラストタンク103に供給可能である。バラストタンク103から第2の殺菌処理装置102へのバラスト水の供給は、例えば、ライン106に配置されたポンプによって行うことができる。第2の殺菌処理装置102からバラストタンク103へのバラスト水の供給は、例えば、ライン107に配置されたポンプによって行うことができる。
【0071】
なお、図1では、ライン106,107がそれぞれポンプを備えた形態を示しているが、本発明はこの形態に限られるものではなく、例えば、これらのポンプに替えて、第2の殺菌処理装置102に内蔵されたポンプ(図示せず)によって、第2の殺菌処理装置102からバラストタンク103へのバラスト水の供給や、第2の殺菌処理装置102からバラストタンク103へのバラスト水の供給を行ってもよい。
【0072】
なお、本実施の形態1では、図1に示すように、第2の殺菌処理装置102とバラストタンク103とが2本のライン106,107によって接続した形態を例にとり説明したが、本発明のバラスト水処理システムはこれに限られるものではない。第2の殺菌処理装置102とバラストタンク103とが1本のラインによって接続し、そのラインによって、バラストタンク103から第2の殺菌処理装置102へのバラスト水の供給と、第2の殺菌処理装置102からバラストタンク103へのバラスト水の供給とを行ってもよい。
【0073】
第2の殺菌処理装置としては、例えば、上記第1の殺菌処理装置の例で示した電解槽と貯留槽とを備える装置が使用できる。第2の殺菌処理装置の構成の一例を、図3を用いて説明する。
【0074】
図3は、第2の殺菌処理装置102の構成及び配置の一例を示す概略構成図である。図3に示すように、第2の殺菌処理装置102は、貯留槽311と電解槽312とを備え、貯留槽311と電解槽312とはライン315,316によって接続し、貯留槽311と電解槽312との間で循環処理を行うことが可能である。
【0075】
第2の殺菌処理装置102において、貯留槽311は、処理前のバラスト水及び/又は処理後のバラスト水を貯留するためのタンクである。貯留槽311は、ライン306,307とそれぞれ接続し、ライン306を通じてバラストタンク103のバラスト水を導入可能であり、ライン307を通じて処理後のバラスト水をバラストタンク103に供給可能である。バラストタンク103から貯留槽311(第2の殺菌処理装置102)へのバラスト水への供給は、例えば、バラストタンク103に設けられたポンプ(図示せず)等を用いて行うことができる。
【0076】
貯留槽311は、次亜塩素酸ナトリウムの濃度計を備えることが好ましい。これにより、貯留槽311の次亜塩素酸ナトリウム濃度を管理できるとともに、貯留槽311の次亜塩素酸ナトリウム濃度に応じて、例えば、第2の殺菌処理装置102(電解槽312)におけるバラスト水の処理を制御できる。第2の殺菌処理装置102におけるバラスト水の処理の制御としては、バラストタンク103から第2の殺菌処理装置102へのバラスト水の流量、貯留槽311に供給するバラスト水の量、貯留槽311から電解槽312に搬送するバラスト水の量等が挙げられる。
【0077】
バラストタンク103と第2の殺菌処理装置102とを接続するライン106は、次亜塩素酸ナトリウムの濃度計を備えてもよい。これにより、バラストタンク103の次亜塩素酸ナトリウム濃度を管理できるとともに、バラストタンク103の次亜塩素酸ナトリウム濃度に応じて、例えば、第2の殺菌処理装置102におけるバラスト水の処理を制御できる。
【0078】
貯留槽311は、電解槽312に処理水を搬送するためのポンプ(図示せず)を備えていてもよい。貯留槽311及び/又は電解槽312は、例えば、バラストポンプとは異なる海水取水用ポンプ(図示せず)と接続していてもよい。これにより、貯留槽311及び/又は電解槽312に海水を適宜供給することができる。
【0079】
第2の殺菌処理装置102は、さらに、塩化ナトリウム水溶液貯留タンク及び/又は塩化ナトリウム貯蔵タンク(図示せず)を備えていてもよい。塩化ナトリウム水溶液貯留タンク及び/又は塩化ナトリウム貯蔵タンクは、例えば、貯留槽311と電解槽312とをつなぐライン315に取り付けることが好ましい。これにより、必要に応じて塩化ナトリウム水溶液/塩化ナトリウムを電解槽312に供給することができ、例えば、淡水域でバラストランクに供給する液体を取水する場合や、淡水域を航行する船舶であっても、次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌処理を行うことができる。また、例えば、次亜塩素酸ナトリウムの発生効率を向上させることができる。塩化ナトリウム水溶液貯留タンクは、例えば、バラストポンプとは異なる海水取水用ポンプ(図示せず)と接続していてもよい。これにより、塩化ナトリウム水溶液貯留タンクを小型化できる。
【0080】
第2の殺菌処理装置102は、さらに、第2の殺菌処理装置102における処理を制御するための制御部(図示せず)を備えることが好ましい。制御部は、例えば、貯留槽311の次亜塩素酸ナトリウム濃度及び/又はバラストタンク103の次亜塩素酸ナトリウム濃度等に応じて、ライン306から第2の殺菌処理装置102に供給するバラスト水の量又は流量、電解槽312に供給するバラスト水の量又は流量、電解槽312におけるバラスト水の電解処理時間等の制御を行うことが好ましい。
【0081】
本実施の形態1のバラスト水処理システムにおいて、処理効率の向上及びランニングコストの低減の点から、バラスト水供給ライン105は、次亜塩素酸ナトリウム濃度計を備えることが好ましい。これにより、例えば、バラストタンクに供給されるバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度や排出時のバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度の測定、第1の殺菌処理装置101及び/又は第2の殺菌処理装置102における処理の制御、バラストポンプによる取水の制御等を行うことができる。
【0082】
本実施の形態1のバラスト水処理システムを用いたバラスト水の処理方法を、図4〜6を用いて説明する。図4は、実施の形態1のバラスト水処理システムにおける第1の殺菌処理装置を用いたバラスト水の処理方法の一例を示すフローチャートであり、図5は、実施の形態1のバラスト水処理システムにおける第2の殺菌処理装置を用いたバラスト水の処理方法の一例を示すフローチャートであり、図6は、実施の形態1のバラスト水処理システムにおけるバラスト水の排出方法の一例を示すフローチャートである。なお、下記の方法は、第1の殺菌処理装置として、電解処理により次亜塩素酸ナトリウムを発生させる殺菌装置を用いた場合を例にとり説明するが、本発明はこれに限定されるものではないことはいうまでもない。
【0083】
まず、第1の殺菌処理装置101を用いたバラスト水の殺菌処理を行う。第1の殺菌処理装置101を用いた殺菌処理は、海水等の液体を取水時に行う処理であって、通常、停泊時に行われる処理である。
【0084】
図4を用いて第1の殺菌処理装置による殺菌処理方法の一例を説明する。図4に示すように、まず、バラストポンプを始動させる(S402)。これによりシーチェスト104を通じて液体の取り込みが開始される。取り込まれた液体の少なくとも一部又は全部を、バラスト水供給ライン105、ライン110を通じて第1の殺菌処理装置101に流入する(S403)。第1の殺菌処理装置101の電解槽において電解処理を行うことにより次亜塩素酸ナトリウムを発生させる(S404)。この発生した次亜塩素酸ナトリウムにより、液体に含まれる水生微生物が殺菌処理される。
【0085】
ついで、次亜塩素酸ナトリウムを含む液体を、第1の殺菌処理装置101からシーチェスト104に注入する(S405)。この次亜塩素酸ナトリウムを含む液体をシーチェスト104に注入することにより、シーチェスト104における液体に含まれる水生微生物を次亜塩素酸ナトリウムにより殺菌処理することができる。S402〜S405の処理を繰り返し行うことにより、第1の殺菌処理装置によるバラスト水の殺菌処理を行う。
【0086】
バラスト水供給ライン105内の液体における次亜塩素酸ナトリウム及び/又は水生微生物の濃度の測定を行う(M402)。その濃度が所定の基準値を満たさない場合は、例えば、第1の殺菌処理装置101における処理量、液体供給量、次亜塩素酸ナトリウムの発生量、シーチェスト104に供給する液体の次亜塩素酸ナトリウムの濃度等の制御を行う(C402)。
【0087】
そして、バラストタンク103にバラスト水を供給し(S406)、バラストタンク103内に所定量の液体(バラスト水)を供給が完了したら(S407)、バラストポンプを停止する(S408)とともに、第1の殺菌処理装置101を停止させる。
【0088】
シーチェスト104から第1の殺菌処理装置101に液体を流入させるにあたり、第1の殺菌処理装置101に流入する液体中の塩化ナトリウムの濃度の測定を行い(M401)、第1の殺菌処理装置101に流入する液体の量又は流量、第1の殺菌処理装置101における処理量等の制御を行ってもよい(C401)。
【0089】
液体の取水前に、別途、第1の殺菌処理装置101に液体を供給し(B401)、その液体を電気分解処理して次亜塩素酸ナトリウムを発生させ、次亜塩素酸ナトリウムを含む液体を調製しておいてもよい(B402)。予め準備した次亜塩素酸ナトリウムを含む処理水を、液体の取水開始(S401)とともにシーチェスト104に導入することにより、処理効率を向上させることができる。予め発生させた次亜塩素酸ナトリウムを含む液体は、第1の殺菌処理装置101に海水を流入する前に、シーチェスト104に供給してもよい(図示せず)。これにより、処理効率をさらに向上させることができる。
【0090】
つぎに、第2の殺菌処理装置102を用いたバラスト水の殺菌処理を行う。第2の殺菌処理装置102によるバラスト水の殺菌処理は、例えば、海水等の液体の取水時(停泊時)に第1の殺菌処理装置101による殺菌処理と並行して行ってもよいし、航行中に行ってもよいが、航行中における水生微生物の増殖を抑制する点から、航行中に行うことが好ましい。第2の殺菌処理装置102における殺菌処理は、例えば、バラストタンク103内のバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度に応じて行うことができ、その処理は、連続的であってもよいし、断続的であってもよく、また定期的であってもよいし、不定期であってもよい。
【0091】
図5を用いて第2の殺菌処理装置102を用いたバラスト水の殺菌処理方法の一例を説明する。図5に示すように、バラストタンク103への入水が完了したことを確認し(S501)、入水の完了が確認できたら、バラストタンク103内のバラスト水の検知を行う(S502)。バラストタンク103内にバラスト水が検知されなければ、バラストタンク103内のポンプを起動させず(S509)、検知された場合は、バラストタンク103内のポンプを起動させる(S503)。
【0092】
ついで、ポンプを用いて取水したバラストタンク103内のバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度を、次亜塩素酸ナトリウム濃度計を用いて測定する(S504)。バラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度が所定の基準値を満たしている場合は、第2の殺菌処理装置102を起動させず(S507)、取水したバラスト水はバイパスラインを用いてバラストタンク103に返送する(S508)。一方、バラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度が所定の基準値未満である場合は、第2の殺菌処理装置102を起動させるとともに、取水したバラスト水を第2の殺菌処理装置102に供給し、第2の殺菌処理装置102において電解処理によって次亜塩素酸ナトリウムを発生させる(S505)。この発生した次亜塩素酸ナトリウムにより、バラスト水に含まれる水生微生物が殺菌処理される。そして、発生させた次亜塩素酸ナトリウムを含むバラスト水をバラストタンク103に注入する(S506)。この操作を繰り返し行うことにより、バラストタンク103内のバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度を所定の範囲の濃度で維持することにより、バラストタンク103内のバラスト水中の水生微生物を殺菌処理し、その増殖を抑制できる。
【0093】
このバラスト水の次亜塩素酸ナトリウムの濃度測定及び第2の殺菌処理装置102を用いた処理を含むバラスト水の次亜塩素酸ナトリウムの濃度管理は、排出時まで継続的に行うことが好ましい。
【0094】
ついで、荷積み港に到着後、バラスト水の排出を行う。バラスト水の排出は、バラスト水排出口から行ってもよいし、シーチェスト104を通じて行ってもよい。バラスト水の排出は下記のようにして行うことができる。
【0095】
図6を用いて、シーチェスト104を通じたバラスト水の排出方法を例にとり説明する。図6に示すように、排出ポンプを起動させ、バラストタンク103からバラスト水の排出を開始する(S602)。本形態において排出は、バラストタンク103からバラスト水供給ライン105及びシーチェスト104を通じて行われる。排出ポンプとしては、例えば、バラストポンプ108が使用できる。この際、排出するバラスト水の流量及びバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度の測定を行う(S603)。次亜塩素酸ナトリウム濃度の測定は、例えば、バラスト水供給ライン105に配置された次亜塩素酸ナトリウム濃度計を用いて行うことができる。そして、バラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度等に応じて、必要であれば、還元剤を排出するバラスト水に注入する(S604)。還元剤としては、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等があげられる。再度、排出するバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度を測定し、その濃度が所定の範囲であれば、その濃度を記録するとともに(S605)、バラスト水を排出する(S606)。また、排出するバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度が所定の範囲を超えている場合は、排出するバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度が所定の範囲となるように注入する還元剤量を調整する(S608)。
【0096】
一方、バラストタンク103からバラスト水の排出を開始する際に(S602)、排出するバラスト水を別途取得し、濃縮装置を用いて濃縮する(S609)。ついで、微生物検査装置を用いて取得したバラスト水中の水生微生物の生細胞数を測定するとともに(S610)、それを記録する(S612)。得られた水生微生物の生細胞数等に応じて、必要であれば、第2の殺菌処理装置102又は第1の殺菌処理装置101を用いて殺菌処理を行ってもよい(S611)。濃縮装置へのライン(図示せず)は、例えば、排出部近傍であって、排出ラインに対して直線的な部分に取り付けられていることが好ましい。
【0097】
水生微生物の生細胞数の測定は、バラスト水の排出開始前に行ってもよい。これにより、例えば、バラスト水の排出開始前にバラストタンク内の水生微生物の生細胞数が、バラスト水管理条約で定められた排出基準を満たすか否かを早期に確認することができる。排出基準を満たさないことが確認された場合は、第2の殺菌処理装置102又は第1の殺菌処理装置101を用いて殺菌処理を行うことが好ましい。
【0098】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2におけるバラスト水処理システムの構成を示す概略構成図である。図7において、図1に示す構成要素と同じ構成要素には同一の符号を付しており、それらの説明は省略する。
【0099】
本実施の形態2のバラスト水処理システムは、隔壁により複数の区画に分割されたバラストタンクにおいて、バラストタンクの区画それぞれに第2の殺菌処理装置が配置された形態、すなわち、区画ごとに第2の殺菌処理装置が配置された形態を示す。図7に示すように、バラストタンク703は、隔壁により複数の区画703a,703b,703c,703dに分割されている。分割されたバラストタンク703の各区画703a,703b,703c,703dのそれぞれに対して第2の殺菌処理装置702a,702b,702c,702dが配置され、各区画703a,703b,703c,703dのそれぞれと第2の殺菌処理装置702a,702b,702c,702dとは、区画内のバラスト水を循環処理可能なようにライン(例えば、706a,707a)によって接続されている。
【0100】
図7に示すように、第2の殺菌処理装置を区画ごとに配置することにより、例えば、第2の殺菌処理装置を小型化することが可能になり、小スペースであっても第2の殺菌処理装置を配置可能になり、さらにはバラスト水処理システム全体を小型化できうる。また、本実施の形態2のバラスト水処理システムによれば、例えば、第2の殺菌処理装置を任意の自由な箇所に配置することが容易になる。
【0101】
(実施の形態3)
図8Aは、本発明の実施の形態3におけるバラスト水処理システムの構成を示す概略構成図である。図8Aにおいて、図1に示す構成要素と同じ構成要素には同一の符号を付しており、それらの説明は省略する。
【0102】
本実施の形態3のバラスト水処理システムは、隔壁により複数の区画に分割されたバラストタンクにおいて、2つの区画に対して1個の割合で第2の殺菌処理装置が配置された形態を示す。図8Aに示すように、バラストタンク803は、隔壁により複数の区画803a,803b,803c,803dに分割されている。分割されたバラストタンク803の区画803a,803bに対して1つの第2の殺菌処理装置802aが配置され、区画803c,803dに対して1つの第2の殺菌処理装置802bが配置されていている。また、区画803a,803bと第2の殺菌処理装置802aとは、区画内のバラスト水を循環処理可能なようにラインによって接続されており、区画803c,803dと第2の殺菌処理装置802bとは、区画内のバラスト水を循環処理可能なようにラインによって接続されている。
【0103】
図8Aに示すように、第2の殺菌処理装置を所定の数の区画に対して1個の割合で配置することにより、例えば、第2の殺菌処理装置を小型化することが可能になり、小スペースであっても第2の殺菌処理装置を配置可能になり、さらにはバラスト水処理システム全体を小型化できうる。また、本実施の形態3のバラスト水処理システムによれば、例えば、第2の殺菌処理装置を任意の自由な箇所に配置することが容易になる。
【0104】
第2の殺菌処理装置としては、例えば、実施の形態1において第1の殺菌処理装置の例で示した装置、具体的には、電解槽と貯留槽とを備え、必要に応じて塩化ナトリウム水溶液貯留タンク及び/又は塩化ナトリウム貯蔵タンクを備える装置が使用できる。
【0105】
第2の殺菌処理装置の一例としてバラストタンク803の区画2つ(803a,803b)に対して1個の割合で第2の殺菌処理装置802が配置された構成について、図面を用いて説明する。図8Bは、第2の殺菌処理装置802の構成及び配置の一例を示す概略構成図である。
【0106】
図8Bに示すように、第2の殺菌処理装置802は、貯留槽811と電解槽812とを備える。貯留槽811と電解槽812とはライン815,816によって接続し、これにより、貯留槽811と電解槽812との間で循環処理を行うことが可能である。
【0107】
第2の殺菌処理装置802において、貯留槽811は、処理前のバラスト水及び/又は処理後のバラスト水を貯留するためのタンクであって、貯留槽811は、バラストタンク803内のバラスト水を導入するためのライン806と処理後のバラスト水をバラストタンク803に供給するためのライン807とそれぞれ接続している。なお、バラストタンク803から貯留槽811(第2の殺菌処理装置802)へのバラスト水への供給は、例えば、各区画803a,803bに設けられたポンプ等を用いて行うことができる。
【0108】
貯留槽811は、次亜塩素酸ナトリウムの濃度計を備えることが好ましい。これにより、貯留槽811内の次亜塩素酸ナトリウム濃度を管理できるとともに、貯留槽811の次亜塩素酸ナトリウム濃度に応じて、例えば、第2の殺菌処理装置802におけるバラスト水の処理を制御できる。第2の殺菌処理装置802におけるバラスト水の処理の制御としては、各区画803a,803bから第2の殺菌処理装置802へのバラスト流量、貯留槽811に供給するバラスト水の量、貯留槽811から電解槽812に搬送するバラスト水の量等が挙げられる。また、貯留槽811内の次亜塩素酸ナトリウム濃度に応じて、貯留槽811において、ライン806から供給されたバラスト水と電解槽812にて処理された次亜塩素酸ナトリウムを含む処理後のバラスト水とを混合してもよい。
【0109】
バラストタンク803と第2の殺菌処理装置802とを接続するライン806は、次亜塩素酸ナトリウムの濃度計を備えてもよい。これにより、バラストタンク803内の次亜塩素酸ナトリウム濃度を管理できるとともに、バラストタンク803内の次亜塩素酸ナトリウム濃度に応じて、例えば、第2の殺菌処理装置802におけるバラスト水の処理を制御できる。
【0110】
貯留槽811は、電解槽812に処理水を搬送するためのポンプを備えていてもよい。
【0111】
第2の殺菌処理装置802は、さらに、第2の殺菌処理装置802における処理を制御するための制御部(図示せず)を備えることが好ましい。制御部は、例えば、貯留槽811内の次亜塩素酸ナトリウム濃度及び/又はバラストタンク803内の次亜塩素酸ナトリウム濃度等に応じて、ライン806から第2の殺菌処理装置802に供給するバラスト水の量又は流量、電解槽812に供給するバラスト水の量又は流量、電解槽812におけるバラスト水の電解処理時間等の制御を行うことができる。
【0112】
(実施の形態4)
図9は、本実施の形態4におけるバラスト水処理システムの構成を示す概略構成図である。本実施の形態4のバラスト水処理システムは、第1の殺菌処理装置101が、処理後の液体の搬送ラインとして、シーチェスト104と接続するライン111a、及びバラスト水供給ライン105と接続するライン111bを備える以外は実施の形態1の構成と同じである。なお、図9において、図1に示す構成要素と同じ構成要素には同一の符号を付しており、それらの説明は省略する。
【0113】
図9に示すように、本実施の形態4のバラスト水処理システムにおいて、シーチェスト104を通じて船舶内に供給された液体は、バラスト水供給ライン105及びライン110を通じて第1の殺菌処理装置101に搬送される。ついで、第1の殺菌処理装置101において液体が殺菌処理される。そして殺菌処理された液体は、ライン111aを通じてシーチェスト104に供給されるか、又はライン111bを通じてバラスト水供給ライン105に供給される。処理後の液体を、何れのライン111a,111bを通じて供給するかは、例えば、処理後の液体における次亜塩素酸ナトリウム濃度、水量、流量等に応じて適宜決定できる。
【0114】
(実施の形態5)
図10は、本実施の形態5におけるバラスト水処理システムの構成を示す概略構成図である。本実施の形態5のバラスト水処理システムは、第1の殺菌処理装置101への液体の供給ラインとして、バラストポンプ108によって取水された液体を供給可能なように接続するライン110に加えて、バラストポンプ108とは異なるポンプであって海水を取水可能なポンプ1011に接続したライン1010を備える以外は実施の形態4の構成と同じである。なお、図10において、図9に示す構成要素と同じ構成要素には同一の符号を付しており、それらの説明は省略する。
【0115】
図10に示すように、本実施の形態5のバラスト水処理システムにおいて、第1の殺菌処理装置101は、ライン1010によって海水を取水可能なポンプ1011と接続している。このため、本実施の形態5のバラスト水処理システムによれば、例えば、バラストポンプ108を駆動させることなく、第1の殺菌処理装置101に海水を直接供給でき、液体の殺菌処理を行うことができる。また、第1の殺菌処理装置101において発生された次亜塩素酸ナトリウムを含む液体を、ライン111bを通じてバラスト水供給ライン105に供給し、次亜塩素酸ナトリウムを含む処理水とバラストポンプ108により取水された液体とをバラスト水供給ライン105において混合させ、それにより殺菌処理を行うこともできる。
【0116】
(実施の形態6)
図11は、本発明の実施の形態6におけるバラスト水処理システムの構成を示す概略構成図である。図11において、図1に示す構成要素と同じ構成要素には同一の符号を付しており、それらの説明は省略する。
【0117】
図11に示すように、本実施の形態6のバラスト水処理システムは、第1の殺菌処理装置1101と、第2の殺菌処理装置102とを含み、第1の殺菌処理装置1101は、ライン1110,1111によってバラスト水供給ライン105と接続している。すなわち、本実施の形態6のバラスト水処理システムにおいて、バラストポンプ108によりシーチェスト104を通じて船舶内に供給された液体は、バラスト水供給ライン105及びライン1110を通じて第1の殺菌処理装置1001に搬送された後、第1の殺菌処理装置1101において殺菌処理され、処理後の液体はライン1111を通じてバラスト水供給ライン105に供給される。
【0118】
なお、本実施の形態6では、第1の殺菌処理装置1101とバラスト水供給ライン105とが2本のライン1110,1111によって接続した形態を例にとり説明したが、本実施の形態6のバラスト水処理システムはこれに限られるものではなく、例えば、1本のラインによって、バラスト水供給ライン105から第1の殺菌処理装置1101への未処理の液体の供給と、第1の殺菌処理装置1101からバラスト水供給ライン105への処理後の液体の供給とを行ってもよい。
【0119】
また、本実施の形態6のバラスト水処理システムは、上記第1の殺菌処理装置1101とバラスト水供給ライン105との接続が異なる以外は、その他の構成は実施の形態1のバラスト水処理システムと同じである。
【0120】
本実施の形態6のバラスト水処理システムを用いたバラスト水の処理は、例えば、下記のようにして行うことができる。図12は、実施の形態2のバラスト水処理システムにおける第1の殺菌処理装置を用いたバラスト水処理方法の一例を示すフローチャートである。
【0121】
図12に示すように、本実施の形態6における第1の殺菌処理装置1101を用いたバラスト水の処理は、第1の殺菌処理装置1101で発生させた次亜塩素酸ナトリウムを含む液体を、第1の殺菌処理装置1101からライン1111を通じてバラスト水供給ライン105に注入する(S415)以外は、実施の形態1と同様に行うことができる。
【0122】
(実施の形態7)
図13は、本発明の実施の形態7におけるバラスト水処理システムの構成を示す概略構成図である。図13において、図1に示す構成要素と同じ構成要素には同一の符号を付しており、それらの説明は省略する。
【0123】
本実施の形態7のバラスト水処理システムは、第1の殺菌処理装置1301がバラスト水供給ライン1305に、インライン処理可能なように配置されている以外は実施の形態1の構成と同じである。
【0124】
図13に示すように、本実施の形態7のバラスト水処理システムは、第1の殺菌処理装置1301と、第2の殺菌処理装置102とを含み、第1の殺菌処理装置1301はバラスト水供給ライン1305に配置されている。本実施の形態7によれば、第1の殺菌処理装置1301がバラスト水供給ライン1305に配置されていることから、インラインによる殺菌処理が可能となり、バラストタンク103へのバラスト水の供給と殺菌処理とを効率よく行うことができる。
【0125】
第1の殺菌処理装置1301における殺菌処理としては、上記したとおり、例えば、機械的な殺菌処理、光触媒を用いた殺菌処理、化学薬品の注入による殺菌処理等が挙げられる。化学薬品としては、海洋微生物を殺菌するために使用される公知の殺菌剤が使用でき、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素、過酸化水素、オゾン、過酢酸等が挙げられる。第1の殺菌処理装置1301としては、その他の実施の形態と同様のものが使用できる。
【0126】
本実施の形態7のバラスト水処理システムにおいて、第2の殺菌処理装置102としては、その他の実施の形態と同様のものが使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明によれば、船舶におけるバラスト水の処理において有用である。
【符号の説明】
【0128】
101 第1の殺菌処理装置
102 第2の殺菌処理装置
103 バラストタンク
104 シーチェスト
105 バラスト水供給ライン
106,107,110,111 ライン
108 バラストポンプ
201 第1の殺菌処理装置
209 ストレーナ
211 貯留槽
212 電解槽
213,214,215,216 ライン
217 ポンプ
218 塩化ナトリウム水溶液/塩化ナトリウム貯留タンク
219 処理槽
311 貯留槽
312 電解槽
306,307,315,316 ライン
702a,702b、702c,702d 第2の殺菌処理装置
703, バラストタンク
703a,703b,703c,703d 区画
706a,707a ライン
802,802a,802b 第2の殺菌処理装置
803 バラストタンク
803a,803b,803c,803d 区画
806,806a,806b ライン
807,807a,807b ライン
811 貯留槽
812 電解槽
815,816 ライン
111a,111b,1010 ライン
1011 ポンプ
1101 第1の殺菌処理装置
1110,1111 ライン
1301 第1の殺菌処理装置
1305 バラスト水供給ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラスト水処理システムであって、
バラストタンクに供給される液体中の水生微生物の殺菌処理をするための第1の殺菌処理装置と、
バラストタンク内におけるバラスト水中の水生微生物の殺菌処理をするための第2の殺菌処理装置とを含み、
前記第1の殺菌処理装置は、前記液体をシーチェストからバラストタンクに供給するためのバラスト水供給ラインと接続し、
前記第2の殺菌処理装置は、塩化ナトリウムを含む液体の電気分解により次亜塩素酸ナトリウムを発生させるための電解槽を備える、バラスト水処理システム。
【請求項2】
前記塩化ナトリウムを含む液体は、前記バラストタンク内のバラスト水である、請求項1記載のバラスト水処理システム。
【請求項3】
前記第2の殺菌処理装置を複数個備える、請求項1又は2に記載のバラスト水処理システム。
【請求項4】
前記第1の殺菌処理装置は、塩化ナトリウムを含む液体の電気分解により次亜塩素酸ナトリウムを発生させるための電解槽を備える、請求項1から3のいずれかに記載のバラスト水処理システム。
【請求項5】
前記第1の殺菌処理装置は、塩化ナトリウム水溶液貯留タンク及び/又は塩化ナトリウム貯蔵タンクを備える、請求項4記載のバラスト水処理システム。
【請求項6】
前記第2の殺菌処理装置は、前記第1の殺菌処理装置よりも処理容量が小さい装置である、請求項1から5のいずれかに記載のバラスト水処理システム。
【請求項7】
前記バラストタンクは、複数の区画に分割されており、前記第2の殺菌処理装置は、前記区画の少なくとも1つの区画に対して1個の割合で配置されている、請求項1から6のいずれかに記載のバラスト水処理システム。
【請求項8】
前記第2の殺菌処理装置は、塩化ナトリウム水溶液貯留タンク及び/又は塩化ナトリウム貯蔵タンクを備える、請求項1から7のいずれかに記載のバラスト水処理システム。
【請求項9】
バラストタンク内のバラスト水を前記第2の殺菌処理装置に供給し、かつ前記第2の殺菌処理装置による処理後のバラスト水をバラストタンクに供給するための循環ラインを備える、請求項1から8のいずれかに記載のバラスト水処理システム。
【請求項10】
バラストタンク内のバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度を制御するために前記第2の殺菌処理装置の制御を行う制御部を含む、請求項1から9のいずれかに記載のバラスト水処理システム。
【請求項11】
微生物検査装置を備える、請求項1から10のいずれかに記載のバラスト水処理システム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載のバラスト水処理システムを用いてバラスト水を処理する方法であって、
バラストタンク内のバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度を測定すること、
第2の殺菌処理装置において、塩化ナトリウムを含む液体を電気分解して次亜塩素酸ナトリウムを発生させること、及び、
発生させた前記次亜塩素酸ナトリウムをバラストタンク内のバラスト水に供給することを含む、バラスト水処理方法。
【請求項13】
前記塩化ナトリウムを含む液体は、前記バラストタンク内のバラスト水である、請求項12記載のバラスト水処理方法。
【請求項14】
航行中に、前記第2の殺菌処理装置における処理を行うことを含む、請求項12又は13に記載のバラスト水処理方法。
【請求項15】
航行中に取水した海水、又は、塩化ナトリウム水溶液貯留タンク及び/若しくは塩化ナトリウム貯蔵タンクの塩化ナトリウムを用い、前記第2の殺菌処理装置において次亜塩素酸ナトリウムを発生させることを含む、請求項14記載のバラスト水処理方法。
【請求項16】
測定したバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度が、所定の基準値に至っている場合は、第2の殺菌処理装置の運転を停止させ、所定の基準値未満の場合は、前記第2の殺菌処理装置の運転を開始させることを含む、請求項12から15のいずれかに記載のバラスト水処理方法。
【請求項17】
前記第2の殺菌処理装置における殺菌処理時及び/又はバラスト水の排出時に、バラスト水中の水生微生物の生細胞数を測定することを含む、請求項12から16のいずれかに記載のバラスト水処理方法。
【請求項18】
船舶内に液体を取水すること、
第1の殺菌処理装置において、取水した液体中の水生微生物の殺菌処理を行うこと、及び、
殺菌処理した液体をバラストタンクに導入することを含む、請求項12から17のいずれかに記載のバラスト水処理方法。
【請求項19】
請求項1から11のいずれかに記載のバラスト水処理システムを用いてバラスト水を処理する方法であって、
船舶内に液体を取水すること、
第1の殺菌処理装置において、取水した液体中の水生微生物の殺菌処理を行うこと、及び、
殺菌処理した液体をバラストタンクに導入することを含む、バラスト水処理方法。
【請求項20】
前記第1の殺菌処理装置は、塩化ナトリウムを含む液体の電気分解により次亜塩素酸ナトリウムを発生させるための電解槽と、塩化ナトリウム水溶液貯留タンク及び/若しくは塩化ナトリウム貯蔵タンクとを備える装置であって、前記タンクの塩化ナトリウムを用いて、前記第1の殺菌処理装置において次亜塩素酸ナトリウムを発生させることを含む、請求項19記載のバラスト水処理方法。
【請求項21】
バラスト水を処理する方法であって、
船舶内に液体を取水すること、取水した液体中の水生微生物の殺菌処理を行うこと、及び殺菌処理した液体をバラストタンクに導入することを含む第1の殺菌処理工程と、
バラストタンク内のバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度を測定すること、塩化ナトリウムを含む液体を電気分解して次亜塩素酸ナトリウムを発生させること、及び発生させた次亜塩素酸ナトリウムをバラストタンクに導入することを含む第2の殺菌処理工程とを含む、バラスト水処理方法。
【請求項22】
前記第2の殺菌処理工程は、
バラストタンク内のバラスト水の次亜塩素酸ナトリウム濃度が所定の基準値に至っているか否かを判断すること、及び
所定の基準値に至っている場合は、電気分解による次亜塩素酸ナトリウムの発生を停止させ、所定の基準値に至っていない場合は、電気分解による次亜塩素酸ナトリウムの発生を開始することを含む、請求項21記載のバラスト水処理方法。
【請求項23】
前記第2の殺菌処理工程を航行中に行うことを含む、請求項21又は22に記載のバラスト水処理方法。
【請求項24】
前記第2の殺菌処理工程及び/又はバラスト水の排出時に、バラスト水中の水生微生物の生細胞数を測定することを含む、請求項21から23のいずれかに記載のバラスト水処理方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−20218(P2012−20218A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158994(P2010−158994)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】