説明

バルク含水爆薬等の装填装置及び装填方法

【課題】本発明は、小型かつ簡便な装置で、バルク含水爆薬等と管内壁との摩擦抵抗を低減させることにより、ポンプの吸引効率を高め、さらにポンプの吐出圧力の低減が可能なバルク含水爆薬またはその中間体の装填装置及び装填方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るバルク含水爆薬またはその中間体の装填装置の第一の構成は、バルク含水爆薬またはその中間体を装填する装填装置であって、バルク含水爆薬またはその中間体を吸引して送り出すポンプ2と、ポンプ2の吸引側と吐出側に配置され、ポンプ2の吸引側と吐出側に潤滑液を供給する潤滑液供給部3、4と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砕石、採掘、トンネル掘削などの産業発破に用いられるバルク含水爆薬又はその中間体を穿孔へ装填するための装填装置及び装填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流動性を有するバルク含水爆薬又はその中間体の装填装置においては、バルク含水爆薬またはその中間体(以下、バルク含水爆薬等と略す)を穿孔に装填する際に、バルク含水爆薬等と装填ホースや装填パイプの内壁との摩擦抵抗により、ポンプの吐出圧力が高くなるため、ポンプの排出能力が低下することや、排出能力の低下を補うために大型のポンプを使用しなければならないという問題があった。
【0003】
そこで、現在使用されているバルク含水爆薬等の装填装置は、例えば特許文献1や特許文献2のように、吐出圧力の増大を抑えるため、バルク含水爆薬等と装填ホースや装填パイプの内壁との間に、水や硝酸アンモニウム等を含む酸化剤水溶液、亜硝酸ナトリウム等を含む発泡剤水溶液などの潤滑液を介在させて吐出圧力を低下させるための潤滑液供給部が設置されている(特許文献1、2参照)。
【0004】
また、ポンプの吐出圧力が高い場合、装填の際に1つの穿孔への装填が終了すると、装填ホースや装填パイプ内残圧の影響で、装填ホースや装填パイプ先端からバルク含水爆薬等が垂れることがある。このため、垂れを防止することや装填パイプ先端に親ダイを設置するスペースを確保することを目的とし、ポンプを一定時間もしくは一定回転逆回転させ、バルク含水爆薬等を吸引する工夫が行われている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−4900号公報
【特許文献2】特開2005−133983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記されているように、潤滑水供給部がポンプの吐出側のみに設置されている場合、バルク含水爆薬等の収容部とポンプの間では、バルク含水爆薬等と管の内壁との抵抗が大きいため、ポンプの吸引効率が低下し、充分な量のバルク含水爆薬等がポンプに供給されない。このため、オーガー等の装置を用い収容部からポンプへ強制的にバルク含水爆薬等を送り出す必要があった。このため、装填装置の大型化や複雑化といった問題や、故障をし易くなったりするといった問題があった。また、ポンプの回転数を高くすることにより、ポンプの吸引効率が低下した分を補う方法も考えられるが、装填装置の大型化や複雑化といった問題がある。また、バルク含水爆薬等に過度の衝撃、摩擦が加わる可能性があるため、安全上好ましくない。
【0007】
また、特許文献2に記されているように、潤滑水供給部がバルク含水爆薬等のポンプの吸引側のみに設置されている場合、ポンプを通過する際にバルク含水爆薬等と潤滑液が攪拌されやすいため、バルク含水爆薬等と潤滑液が混合しやすく、潤滑効果が低下しやすい。その結果吐出圧力が増大し、装填ホースや装填パイプ内残圧の影響で、1つの穿孔への装填が終了した後にポンプを一定時間もしくは一定回転逆回転させても、装填ホースや装填パイプ先端からバルク含水爆薬等が垂れたり、装填パイプ先端に親ダイを設置するスペースを確保出来ないという問題があった。
【0008】
本発明は、小型かつ簡便な装置で、バルク含水爆薬等と管内壁との摩擦抵抗を低減させることにより、ポンプの吸引効率を高め、さらにポンプの吐出圧力の低減が可能なバルク含水爆薬またはその中間体の装填装置及び装填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するために本発明に係るバルク含水爆薬またはその中間体の装填装置の第一の構成は、バルク含水爆薬またはその中間体を装填する装填装置であって、前記バルク含水爆薬またはその中間体を吸引して送り出すポンプと、前記ポンプの吸引側と吐出側に配置され、前記ポンプの吸引側と吐出側に潤滑液を供給する潤滑液供給部と、を有することを特徴とする。
【0010】
(2)本発明に係るバルク含水爆薬またはその中間体の装填装置の第二の構成は、上記第一の構成において、前記ポンプから吐出された前記バルク含水爆薬またはその中間体が通過する装填管、を有し、前記吐出側の潤滑液供給部の内径と前記装填管の内径との比(前記装填管の内径/前記吐出側の潤滑液供給部の内径)が4/5〜5/3であることを特徴とする。
【0011】
(3)本発明に係るバルク含水爆薬またはその中間体の装填装置の第三の構成は、上記第一又は第二の構成において、前記ポンプがチューブポンプであることを特徴とする。
【0012】
(4)本発明に係るバルク含水爆薬またはその中間体の装填装置の第四の構成は、上記第三の構成において、前記チューブポンプのチューブ内径と前記吐出側の潤滑液供給部の内径との比(前記吐出側の潤滑液供給部の内径/前記チューブ内径)が4/5〜5/4であることを特徴とする。
【0013】
(5)本発明に係るバルク含水爆薬またはその中間体の装填装置の第五の構成は、上記第一〜第四のいずれかの構成において、前記バルク含水爆薬またはその中間体と、バルク含水爆薬又はその中間体に対して2〜15重量%の潤滑液と、を穿孔へ装填することを特徴とする。
【0014】
(6)本発明に係るバルク含水爆薬またはその中間体の装填装置の第六の構成は、上記第五の構成において、前記ポンプの吸引側と吐出側に配置された前記潤滑液供給部から供給される潤滑液の重量比(前記吸引側の前記潤滑液供給部から供給される潤滑液の重量/前記吐出側の前記潤滑液供給部から供給される潤滑液の重量)が、1/20〜10/1であることを特徴とする。
【0015】
(7)本発明に係るバルク含水爆薬またはその中間体の装填方法の第一の構成は、上記第一〜第四のいずれかに記載の装填装置を用いて、バルク含水爆薬またはその中間体と、前記バルク含水爆薬又はその中間体に対して2〜15重量%の潤滑液と、を穿孔へ装填することを特徴とする。
【0016】
(8)本発明に係るバルク含水爆薬またはその中間体の装填方法の第二の構成は、上記第一装填方法において、前記ポンプの吸引側と吐出側に配置された前記潤滑液供給部から供給される潤滑液の重量比(前記吸引側の前記潤滑液供給部から供給される潤滑液の重量/前記吐出側の前記潤滑液供給部から供給される潤滑液の重量)が、1/20〜10/1であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
(1)本発明の第一の構成の装填装置によれば、小型かつ簡便な装置で、バルク含水爆薬等と管内壁との摩擦抵抗を低減させることにより、ポンプの吸引効率を高め、さらにポンプの吐出圧力を低減できる。
【0018】
(2)第二の構成の装填装置によれば、バルク含水爆薬等と潤滑液が混合することを抑制でき、潤滑効果を維持して吐出圧力を低減できるとともに、ポンプを逆回転させた際に効果的にバルク含水爆薬等を吸引できる。
【0019】
(3)第三の構成の装填装置によれば、バルク含水爆薬等と潤滑液の攪拌を抑制でき、潤滑効果を維持して吐出圧力を低減できる。
【0020】
(4)第四の構成の装填装置によれば、吐出圧力を低減できるとともに、ポンプを逆回転させた際に効果的にバルク含水爆薬等を吸引できる。
【0021】
(5)第五の構成の装填装置及び、第一の装填方法によれば、ポンプの吸引能力を維持でき、吐出圧力を低減できるとともに、バルク含水爆薬等の威力低下を防止できる。
【0022】
(6)第六の構成の装填装置及び、第二の装填方法によれば、十分な潤滑効果が得られ、吸引効率の低下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係るバルク含水爆薬またはその中間体の装填装置及び装填方法の実施形態について、図を用いて説明する。
【0024】
(用語の定義)
本発明で言うバルク含水爆薬とは、エマルション爆薬やスラリー爆薬などの含水爆薬であり、消費現場においてポンプ等を用いて発破孔へ装填可能な流動性を持つ爆薬のことである。また、その中間体とは、含水爆薬が鋭感化されていない中間製品で、爆発性が無く、消費現場において化学発泡による気泡を中間体中に発生させたり、あるいはガラスマイクロバルーンや樹脂バルーン等の中空粒子等を中間体に添加したりして鋭感化され爆薬になるものを言う。
【0025】
また、本発明で言う潤滑液とは、バルク含水爆薬またはその中間体(以下、バルク含水爆薬等と略す)と管や装填ホース、装填パイプの内壁との間の摩擦抵抗を低下させるためのものであり、例えば水や油類、硝酸アンモニウム等を含む酸化剤水溶液、バルク含水爆薬と反応して気泡を発生する亜硝酸ナトリウム等を含む水溶液などが用いられる。
【0026】
(バルク含水爆薬等の装填装置1)
図1に示すように、バルク含水爆薬等の装填装置1は、バルク含水爆薬等のポンプ2、潤滑液供給部3、4、収容部5、装填ホース6(装填管)、装填パイプ7(装填管)、潤滑液収容部8、潤滑液ポンプ9、管10、流量制御弁11a、11bを有している。
【0027】
ポンプ2は、収容部5に収容されたバルク含水爆薬等を吸引し、装填ホース6、装填パイプ7通して、穿孔(不図示)へ送り出す。潤滑液ポンプ9は、潤滑液収容部8から潤滑液を吸引し、管10a、潤滑液供給部3を通してポンプ2の吸引側に潤滑液を供給し、管10b、潤滑液供給部4を通してポンプ2の吐出側に潤滑液を供給する。
【0028】
ポンプ2は、ポンプ内でバルク含水爆薬等と潤滑液が混合し難いものが良い。例えばチューブポンプは、弾性のあるチューブを押出ローラーで押しつぶし、押出ローラーをそのまま移動させてチューブ内のバルク含水爆薬等及び潤滑液を押出すため、径の変化も少なく、攪拌を受けにくく、潤滑効果を維持して吐出圧力を低減できるので好ましい。
【0029】
潤滑液供給部3、4は、ポンプ2の吸引側、吐出側に設けられている。潤滑液供給部3は、例えばバルク含水爆薬等の収容部5とポンプ2の間に設けられる。潤滑液供給部4は、例えばポンプ2と装填ホース6の間に設けられる。
【0030】
このように配置することにより、ポンプ2の吸引側に設けられた潤滑液供給部3から供給される潤滑液は、主にバルク含水爆薬等の吸引時の潤滑効果を持たせ、管内壁との摩擦抵抗を低下させ、ポンプ2の吸引効率を高める。ポンプ2の吐出側に設けられた潤滑液供給部4から供給される潤滑液は、ポンプ吐出側の潤滑効果を持たせ、管や装填ホース6、装填パイプ7の内壁との摩擦抵抗を低減させ、吐出圧力の上昇を抑える。
【0031】
潤滑液供給部3、4の材質は、ステンレス製などの金属、塩化ビニール、アクリル樹脂やポリカーボネートなどのプラスチックが好ましい。潤滑液供給部3、4の材質は、装填装置1の使用条件や環境により選定される。劣悪な環境下や特に機械的強度が必要な場合は、金属製が好ましい。比較的良好な使用条件や環境下であればプラスチック製でも良く、特に潤滑液供給部内部のチェックが必要な場合は、透明プラスチックが好ましい。
【0032】
潤滑液ポンプ9には、ポンプや、エアーの圧力などが使用できるが、ギアポンプやモーノポンプ、ピストンポンプ、ダイアフラムポンプ等の定量性の高いポンプを使用することが好ましい。小型であることから、ギアポンプやダイアフラムポンプがより好ましい。
【0033】
潤滑液を潤滑液供給部3、4へ送り込む圧力は、潤滑液供給部3、4におけるバルク含水爆薬等の圧力よりも0.001MPa〜0.5MPa高い圧力に設定されていることが好ましい。圧力が低すぎるとバルク含水爆薬等の吐出圧力の変動により、潤滑液量が変動しやすいし、圧力が高すぎるとバルク含水爆薬等と潤滑液が混合しやすくなる。
【0034】
潤滑液供給用のポンプ9は、バルク含水爆薬等用のポンプ2の動きと同期させる必要がある。例えば電気的な方法で同期させても良い。また、バルク含水爆薬等用のポンプ2がエアー駆動式の場合は、潤滑液用のポンプ9もダイアフラムポンプ等のエアー駆動式のポンプを使用し、バルク含水爆薬等用のポンプ2の動力エアーから分岐して潤滑液供給用のポンプ9の動力とすることにより同期させても良い。また、バルク含水爆薬等のポンプ2の回転部等から動力を取り出して、潤滑液供給用のポンプ9の動力として用いることにより同期させても良い。
【0035】
ポンプ9から潤滑液供給部3、4へ潤滑液を移動する管10には、流量制御弁11a、11bを設置することが好ましい。流量制御弁11a、11bとしては、例えば精度が高いニードルバルブが好ましい。また、ニードルバルブに異物が詰まらないように、潤滑液が移動する管10にはフィルター(不図示)を設置することが好ましい。
【0036】
潤滑液が移動する管10には、バルク含水爆薬等のポンプ2を逆回転させた際に、潤滑液が移動する管10にバルク含水爆薬等が逆流しないように、逆止弁やバルク含水爆薬等のポンプ2の動きと同期させたボールバルブ等(不図示)を設置することが好ましい。
【0037】
(潤滑液供給部4の内径と、装填ホース6及び/または装填パイプ7の内径の比)
装填装置1においてポンプ2の吐出側に設けられた潤滑液供給部4の内径と、装填ホース6及び/または装填パイプ7の内径の比(装填ホース6の内径/潤滑液供給部4の内径、装填パイプ7の内径/潤滑液供給部4の内径)は4/5〜5/3であることが好ましい。
【0038】
4/5より小さいとバルク含水爆薬等と潤滑液が、潤滑液供給部から装填ホース6及び/または装填パイプ7へと移動する際に、内径が小さくなりすぎるため流れが乱れやすく、バルク含水爆薬等と潤滑液が混合しやすい。
【0039】
5/3より大きいとバルク含水爆薬等と潤滑液が、潤滑液供給部4から装填ホース6及び/または装填パイプ7へと移動した際にバルク含水爆薬等と装填ホース6及び/または装填パイプ7の内壁との間に空隙が出来やすいため、ポンプ2を逆回転させても、空気を吸引してしまい、効果的にバルク含水爆薬等を吸引できない。より好ましい潤滑液供給部4と装填ホース6及び/または装填パイプ7の内径の比は9/10〜3/2であり、さらに好ましくは9/10〜10/9である。要するにバルク含水爆薬等と潤滑液が流れる経路は、極力内径の差が小さいことが好ましい。
【0040】
(チューブポンプ内のチューブ内径と、潤滑液供給部4の内径の比)
チューブポンプ内のチューブ内径と、ポンプ2の吐出側に設けられた潤滑液供給部4の内径の比(潤滑液供給部4の内径/チューブ内径)は4/5〜5/4であること好ましい。
【0041】
4/5より小さいとバルク含水爆薬等が、チューブポンプ2から潤滑液供給部4へと移動する際に、内径が小さくなりすぎるため、吐出圧力が上昇し易い。また、ポンプ2を一定時間もしくは一定回転逆回転させた場合、バルク含水爆薬等と潤滑液がポンプ2に逆流することがあるため、内径差が大きいと流れが乱れやすく、バルク含水爆薬等と潤滑液が混合し易い。
【0042】
5/4より大きい場合、バルク含水爆薬等がチューブポンプ2から潤滑液供給部4へと移動した際に、バルク含水爆薬等と潤滑液供給部内壁との間に空隙が出来やすく、潤滑液が均一にバルク含水爆薬等の周囲に回り込まないために吐出圧力が増大したり、ポンプ逆転時に空気を吸引してしまい、効果的にバルク含水爆薬等を吸引できなかったりすることがある。より好ましいチューブポンプ内のチューブ内径と潤滑液供給部の内径の比は9/10〜10/9である。
【0043】
(バルク含水爆薬等の排出量に対する潤滑液量)
装填装置1を用いて、バルク含水爆薬等と潤滑液を穿孔へ装填する際には、潤滑液量はバルク含水爆薬等の排出量に対して、2〜15重量%であることが好ましい。
【0044】
2重量%より少ないと、バルク含水爆薬等に対して潤滑液量が少なすぎるため、潤滑効果が充分に得られない。このため、バルク含水爆薬等のポンプ2の吸引能力が低下したり、バルク含水爆薬等の吐出圧力が上昇し、装填ホース6や装填パイプ7の先端からの垂れが発生したり、ポンプ2を逆回転させてもバルク含水爆薬等の吸引が不十分になることがある。
【0045】
15重量%より多いと、バルク含水爆薬等に対して潤滑液量が多すぎるため、バルク含水爆薬等の威力低下が著しく、発破効果が低下したり、穿孔が上向きの場合、穿孔から流れ出てきたりすることがある。より好ましい潤滑液量は、バルク含水爆薬等に対し3〜10%であり、さらに好ましくは3〜7%である。
【0046】
(潤滑液供給部3、4から供給される潤滑液量の比)
バルク含水爆薬等のポンプ2の吸引側、吐出側の潤滑液供給部3、4から供給される潤滑液量の比(潤滑液供給部3から供給される潤滑液量/潤滑液供給部4から供給される潤滑液量)は1/20〜10/1であることが好ましい。
【0047】
1/20より小さいと、バルク含水爆薬等のポンプ2の吸引側に設けられた潤滑液供給部3から供給される潤滑液が少なすぎて、充分な潤滑効果が得られず、ポンプ2の吸引効率が低下する。
【0048】
10/1より大きいと、ポンプ2の吐出側に設けられた潤滑液供給部4から供給される潤滑液が少なすぎて、充分な潤滑効果が得られない。このため、バルク含水爆薬等の吐出圧力が上昇し、装填ホース6や装填パイプ7の先端からの垂れが発生したり、ポンプ2を逆回転させてもバルク含水爆薬等の吸引が出来なくなったりすることがある。より好ましい潤滑液量の比は1/15〜5/1であり、さらに好ましくは1/10〜3/1である。
【0049】
以下、実施例で本発明を詳細に説明する。実施例及び比較例で行った試験は以下の通りである。
【0050】
(排出試験)
実施例1から4の装填装置1と、比較例1から8の装填装置と、スラリー爆薬と、を使用して、スラリー爆薬を約1kg排出後にチューブポンプを2回転逆回転させて、装填パイプ先端から何cmスラリー爆薬が吸引されるか吸引長さを測定、もしくは装填ホース及び装填ホース内残圧によりスラリー爆薬が垂れるか観察した。また、バルク含水爆薬排出時の圧力を計測した。
【0051】
(透明塩ビパイプ装填試験)
片端が開放、もう片端が閉塞した内径45mm、長さ2mの透明塩ビパイプを、開放した端が下向きになるように水平から15°傾けて設置し、実施例1と比較例5の装填装置とスラリー爆薬を使用して、透明塩ビパイプにスラリー爆薬を潤滑液と共に約1mの長さ装填し、装填終了後にポンプを2回逆回転させ、塩ビパイプからバルク含水爆薬が流れ出ないか、目視で観察した。
【0052】
(ポンプ1回転あたり排出量)
次式によりポンプ1回転あたりの排出量を算出した。ポンプ1回転当たりの排出量(g/rev)=スラリー爆薬排出量(g)/ポンプ回転数(rpm)。
【0053】
[実施例1]
図1に示すような装填装置1を用いて試験を行った。バルク含水爆薬等のポンプには、チューブ内径19mmのチューブポンプを使用し、潤滑液用のポンプにはダイアフラムポンプを使用した。ポンプの吸引側に設けられた潤滑液供給部の内径は25mm、ポンプの吐出側に設けられた潤滑液供給部の内径は19mmのものを用いた。装填ホースは、内径19mm、長さ6mのものを使用し、その先端に内径18mm、長さ2mの装填パイプを接続した。バルク含水爆薬等にはスラリー爆薬を、潤滑液には水を用いた。
【0054】
ニードルバルブで、ポンプの吸引側から供給される潤滑液を0.1kg/分、ポンプの吐出側から供給される潤滑液を0.4kg/分に調整した。スラリー爆薬の排出量は10kg/分に調整した。チューブポンプの回転数は110回転/分であった。
【0055】
この装填機とスラリー爆薬を用いて、上記排出試験、透明塩ビパイプ装填試験を実施した。結果を表1に示す。
【0056】
[実施例2]
図1に示すような装填装置1を用いて試験を行った。実施例2は、潤滑液供給部4の内径を25mm、装填ホース6を内径25mm、装填パイプ7の内径を22mmとした以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0057】
チューブポンプの回転数は107回転/分であった。この装填機とスラリー爆薬を用いて、上記排出試験を実施した。結果を表1に示す。
【0058】
[実施例3]
図1に示すような装填装置1を用いて試験を行った。実施例3は、ニードルバルブで、ポンプの吸引側から供給される潤滑液を0.05kg/分、ポンプの吐出側から供給される潤滑液を0.45kg/分とした以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0059】
チューブポンプの回転数は140回転/分であった。この装填機とスラリー爆薬を用いて、上記排出試験を実施した。結果を表1に示す。
【0060】
[実施例4]
図1に示すような装填装置1を用いて試験を行った。実施例4は、ニードルバルブで、ポンプの吸引側から供給される潤滑液を0.3kg/分、ポンプの吐出側から供給される潤滑液を0.2kg/分とした以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0061】
チューブポンプの回転数は105回転/分であった。この装填機とスラリー爆薬を用いて、上記排出試験を実施した。結果を表1に示す。
【0062】
[比較例1]
比較例1は、図2に示すような装填装置を用いて試験を行い、ニードルバルブで、ポンプの吸引側から供給される潤滑液を0.5kg/分とした以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0063】
チューブポンプの回転数は105回転/分であった。この装填機とスラリー爆薬を用いて、上記排出試験を実施した。結果を表1に示す。
【0064】
[比較例2]
比較例2は、図3に示すような装填装置を用いて試験を行い、ニードルバルブで、ポンプの吐出側から供給される潤滑液を0.5kg/分とした以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0065】
チューブポンプの回転数は242回転/分であった。この装填機とスラリー爆薬を用いて、上記排出試験を実施した。結果を表1に示す。
【0066】
[比較例3]
図1に示すような装填装置1を用いて試験を行った。比較例3は、装填ホース6の内径を12mm、装填パイプ7の内径を9mmとした以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0067】
チューブポンプの回転数は111回転/分であった。この装填機とスラリー爆薬を用いて、上記排出試験を実施した。結果を表1に示す。
【0068】
[比較例4]
図1に示すような装填装置1を用いて試験を行った。比較例4は、潤滑液供給部4の内径を12mm、装填ホース6の内径を12mm、装填パイプ7の内径を9mmとした以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0069】
チューブポンプの回転数は111回転/分であった。この装填機とスラリー爆薬を用いて、上記排出試験を実施した。結果を表1に示す。
【0070】
[比較例5]
図1に示すような装填装置1を用いて試験を行った。比較例5は、ニードルバルブで、ポンプの吸引側から供給される潤滑液を0.5kg/分、ポンプの吐出側から供給される潤滑液を1.3kg/分とした以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0071】
チューブポンプの回転数は105回転/分であった。この装填機とスラリー爆薬を用いて、上記排出試験、透明塩ビパイプ装填試験を実施した。結果を表1に示す。
【0072】
[比較例6]
図1に示すような装填装置1を用いて試験を行った。比較例6は、ニードルバルブで、ポンプの吸引側から供給される潤滑液を0.03kg/分、ポンプの吐出側から供給される潤滑液を0.12kg/分とした以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0073】
チューブポンプの回転数は161回転/分であった。この装填機とスラリー爆薬を用いて、上記排出試験を実施した。結果を表1に示す。
【0074】
[比較例7]
図1に示すような装填装置1を用いて試験を行った。比較例7は、ニードルバルブで、ポンプの吸引側から供給される潤滑液を0.02kg/分、ポンプの吐出側から供給される潤滑液を0.48kg/分とした以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0075】
チューブポンプの回転数は208回転/分であった。この装填機とスラリー爆薬を用いて、上記排出試験を実施した。結果を表1に示す。
【0076】
[比較例8]
図1に示すような装填装置1を用いて試験を行った。比較例7は、ニードルバルブで、ポンプの吸引側から供給される潤滑液を0.46kg/分、ポンプの吐出側から供給される潤滑液を0.04kg/分とした以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0077】
チューブポンプの回転数は109回転/分であった。この装填機とスラリー爆薬を用いて、上記排出試験を実施した。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
実施例1と比較例1、2に示す通り、ポンプの吸引側、吐出側から潤滑液を添加することにより、ポンプ1回転当たりの排出量、及び吐出圧力の低減が両立できることがわかる。すなわち、比較例1のように、ポンプの吸引側から潤滑液を添加しただけでは、吐出圧力が高くなってしまう。一方、比較例2のように、ポンプの吐出側から潤滑液を添加しただけでは、ポンプ1回転当たりの排出量が少なくなってしまう。
【0080】
実施例1と比較例3に示す通り、潤滑液供給部3、4、装填ホース6、装填パイプ7の内径を規定することも、吐出圧力の低減に効果があることがわかる。すなわち、比較例3では、装填ホース6の内径/潤滑液供給部4の内径、装填パイプ7の内径/潤滑液供給部4の内径の両方とも4/5より小さく、吐出圧力が高くなってしまう。
【0081】
実施例1と比較例4に示す通り、チューブ内径、潤滑液供給部4の内径を規定することも、吐出圧力の低減に効果があることがわかる。すなわち、比較例4では、チューブ内径/潤滑液供給部4の内径が4/5より小さく、吐出圧力が高くなってしまう。
【0082】
また、実施例1と比較例5、6に示すように、バルク含水爆薬等の排出量に対する潤滑液量を調整することで、穿孔からの垂れを抑制することがわかる。すなわち、比較例5では、潤滑液量がバルク含水爆薬等の排出量に対して、15重量%を超えてしまい、透明塩ビパイプ装填試験において穿孔からの垂れが発生してしまう。一方、比較例6では、潤滑液量がバルク含水爆薬等の排出量に対して、2重量%に満たないため、潤滑効果が充分に得られず、バルク含水爆薬等のポンプ2の吸引能力が低下したり、バルク含水爆薬等の吐出圧力が上昇してしまう。
【0083】
また、実施例1と比較例7、8に示すように、ポンプ吸引側、吐出側から供給される潤滑液量比を調整することにより、ポンプ1回転当たりの排出量、及び吐出圧力の低減が両立できる。すなわち、比較例7では、潤滑液供給部3から供給される潤滑液量/潤滑液供給部4から供給される潤滑液量は、1/20より小さい。このため、潤滑液供給部3から供給される潤滑液が少なすぎて、充分な潤滑効果が得られず、ポンプ2の吸引効率が低下する。。一方、比較例8では、潤滑液供給部3から供給される潤滑液量/潤滑液供給部4から供給される潤滑液量は、10/1を超えている。このため、潤滑液供給部4から供給される潤滑液が少なすぎて、充分な潤滑効果が得られず、バルク含水爆薬等の吐出圧力が上昇してしまう。
【0084】
上述の如く、本実施形態の装填装置によれば、小型かつ簡便な装置で、バルク含水爆薬等と管内壁との摩擦抵抗を低減させることにより、ポンプの吸引効率を高め、さらにポンプの吐出圧力を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のバルク含水爆薬等用の容器は、砕石、採掘、トンネル掘削などの産業発破の分野で好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施例1から4、及び比較例3から8で使用したバルク含水爆薬等の装填装置の模式図。
【図2】比較例1で使用したバルク含水爆薬等の装填装置の模式図。
【図3】比較例2で使用したバルク含水爆薬等の装填装置の模式図。
【符号の説明】
【0087】
1…装填装置、2…ポンプ、3、4…潤滑液供給部、5…収容部、6…装填ホース(装填管)、7…装填パイプ(装填管)、8…潤滑液収容部、9…潤滑液ポンプ、10…管、11…流量制御弁、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルク含水爆薬またはその中間体を装填する装填装置であって、
前記バルク含水爆薬またはその中間体を吸引して送り出すポンプと、
前記ポンプの吸引側と吐出側に配置され、前記ポンプの吸引側と吐出側に潤滑液を供給する潤滑液供給部と、を有することを特徴とする装填装置。
【請求項2】
前記ポンプから吐出された前記バルク含水爆薬またはその中間体が通過する装填管、を有し、
前記吐出側の潤滑液供給部の内径と前記装填管の内径との比(前記装填管の内径/前記吐出側の潤滑液供給部の内径)が4/5〜5/3であることを特徴とする請求項1に記載の装填装置。
【請求項3】
前記ポンプがチューブポンプであることを特徴とする請求項1または2に記載の装填装置。
【請求項4】
前記チューブポンプのチューブ内径と前記吐出側の潤滑液供給部の内径との比(前記吐出側の潤滑液供給部の内径/前記チューブ内径)が4/5〜5/4であることを特徴とする請求項3に記載の装填装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の装填装置を用いて、バルク含水爆薬またはその中間体と、前記バルク含水爆薬又はその中間体に対して2〜15重量%の潤滑液と、を穿孔へ装填することを特徴とする装填方法。
【請求項6】
前記ポンプの吸引側と吐出側に配置された前記潤滑液供給部から供給される潤滑液の重量比(前記吸引側の前記潤滑液供給部から供給される潤滑液の重量/前記吐出側の前記潤滑液供給部から供給される潤滑液の重量)が、1/20〜10/1であることを特徴とする請求項5に記載の装填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−57797(P2008−57797A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231546(P2006−231546)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)