説明

バルコニーユニット及び建物

【課題】バルコニーユニットに作用する応力を分散する。
【解決手段】建物(1)のテラス(10)上に円弧上に配置され、下端を固定された複数の支持柱(支持柱21a〜21g)と、複数の支持柱の上端を接続する環状の上側枠(61)と、複数の支持柱の高さ方向の中央部分を接続する環状の下側枠(40)と、下側枠により支持されるデッキ床(30)と、を備えることを特徴とするバルコニーユニット(20)である。支持柱と、上側枠と、下側枠と、デッキ床とからなるバルコニーなので、風通しや日当たりを良好とすることができる。また、上側枠や下側枠が環状であるので、上側枠や下側枠に作用する応力を円周に沿って分散させることができる。また、デッキ床を支持柱と下側枠とにより支持するため、建物の壁にデッキ床を支持する耐力を要求せず、後施工や移設が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルコニーユニット、及びバルコニーユニットを有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1階以上の階にバルコニーを設けたものが知られている。バルコニーは、設置される階の床とほぼ等しい高さに設けられたデッキ床と、デッキ床を囲むように設けられた手摺壁とから構成される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−047722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のようなバルコニーでは、手摺壁があるために風通しが悪く、また、日照が遮られるという問題があった。
【0004】
本発明の課題は、バルコニーの風通しや日当たりが良好とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、図1〜7に示すように、建物(1)のテラス(10)上に円弧上に配置され、下端を固定された複数の支持柱(支持柱21a〜21g)と、前記複数の支持柱の上端を接続する環状の上側枠(61)と、前記複数の支持柱の高さ方向の中央部分を接続する環状の下側枠(40)と、前記下側枠により支持されるデッキ床(30)と、を備えることを特徴とするバルコニーユニット(20)である。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、バルコニーユニットが、支持柱と、上側枠と、下側枠と、デッキ床とからなるので、風通しや日当たりを良好とすることができる。また、上側枠や下側枠が環状であるので、上側枠や下側枠に作用する応力を円周に沿って分散させることができる。また、デッキ床を支持柱と下側枠とにより支持するため、建物の壁にデッキ床を支持する耐力を要求せず、後施工や移設が可能となる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のバルコニーユニットにおいて、前記デッキ床は建物の2階床と接続されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、デッキ床が建物の2階床と接続されているので、建物の2階からデッキ床の上に出入りすることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のバルコニーユニットにおいて、前記複数の支持柱には前記上側枠と前記下側枠との間に円弧状の手摺部材(50)が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、上側枠と下側枠との間に手摺部材が設けられているので、デッキ床の上から人や物が落下することを防止することができる。また、手摺部材が円弧状であるので、手摺部材に作用する応力を円周に沿って分散させることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、1階に設けられた略円形のテラスと、前記テラス上の外周部に配置され、下端を固定された複数の支持柱と、前記複数の支持柱の上端を接続する環状の上側枠と、前記複数の支持柱の高さ方向の中央部分を接続する環状の下側枠と、前記下側枠により支持されるデッキ床と、を備えることを特徴とする建物(1)である。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、支持柱と、上側枠と、下側枠と、デッキ床とからなるバルコニーなので、風通しや日当たりを良好とすることができる。また、上側枠や下側枠が環状であるので、上側枠や下側枠に作用する応力を円周に沿って分散させることができる。また、略円形のテラス上に環状の下側枠を有するデッキ床が設けられているので、デッキ床をテラスの形状に合致した屋根とすることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の建物において、前記デッキ床は建物の2階床と接続されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、デッキ床が建物の2階床と接続されているので、建物の2階からデッキ床の上に出入りすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、支持柱と、上側枠と、下側枠と、デッキ床とからなるバルコニーなので、風通しや日当たりを良好とすることができる。また、パーゴラやデッキ床が環状の上側枠や下側枠を有しているので、上側枠や下側枠に作用する応力を円周に沿って分散させることができ、バルコニーユニットの施工を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明に係るバルコニーユニット20が設けられた建物1を南側から見た立面図である。なお、この建物は、枠材に面材を貼り付けて形成され、必要に応じて図示しない桟材で補強された木質パネル(壁パネル、屋根パネル等)を組み合わせて建物躯体を形成するパネル工法によって建設されている。
【0017】
この建物1は、2階建てであり、南側の壁2に開口部(窓3,5及び出入り口4,6)が設けられている。1階には、窓3と、窓3と隣接して出入り口4が設けられており、この出入り口4の外側にテラス10が設けられている。また、2階には、窓5が1階の窓3の上方に設けられ、出入り口6が窓5と隣接して1階の出入り口4の上方に設けられており、この出入り口6の外側にバルコニーユニットのデッキ床30が設けられている。窓3,5には引き違いサッシが取り付けられている。
【0018】
出入り口4には、テラス10側に開く両開きドアが取り付けられている。また、出入り口6には、デッキ床30側に開く両開きドアが取り付けられている。出入り口4,6に両開きドアを用いることで、テラス10やデッキ床30を利用するときに両開きドアを全開にして開放的な空間にすることができる。
【0019】
テラス10は、図3に示すように、円形部10aと、通路部10bとからなる。通路部10bは出入り口4の開口幅にほぼ等しい幅に形成されており、円形部10aと出入り口4とを接続する。この円形部10aにバルコニーユニット20が取り付けられている。
【0020】
テラス10の高さは、1階床の床面の高さにほぼ等しく、出入り口4を通じで建物の1階からテラス10の上に出入りすることができる。また、出入り口4の下側端部の高さが1階床やテラス10の床面の高さにほぼ等しいので、車椅子を用いてテラス10の上に出入りすることができる。さらに、テラス10の円形部10aは車椅子で回転するのに充分な広さを有する。このため、車椅子で出入り口4からテラス10の上に出て、テラス10の円形部10aで回転して方向転換し、出入り口4から建物1内に入ることができる。
【0021】
バルコニーユニット20は、7本の支持柱21a〜21gと、デッキ床30と、下側枠40と、手摺部材50と、上側枠61等とから構成される。バルコニーユニット20には壁材が用いられていないため、窓3,5や出入り口4,6に差し込む日光を遮ることがない。
【0022】
7本の支持柱21a〜21gは、円形部10aの外周に沿って等間隔に配置される。ただし、テラス10の円形部10aと通路部10bとが接続される境界位置に設けられた2本の支持柱21a,21gは、通路部10bの幅に等しい間隔となるように配置されている。
【0023】
支持柱21a〜21gは鋼管であり、下端にベースプレート22が設けられている。ベースプレート22にはアンカー12が挿通されるアンカー孔23が設けられている。図2に示すように、アンカー孔23に挿通されたアンカー12がテラス10の基礎コンクリート11に打ち込まれることにより、支持柱21がテラス10上に鉛直に固定される。なお、アンカー12の上端及びベースプレート22は基礎コンクリート11上に打設される仕上げモルタル13により埋設される。
【0024】
デッキ床30は、壁側枠31と、下側枠40と、通路用枠44とにより囲まれ、木製根太45と、デッキ材46とから構成されている。
壁側枠31はC型鋼であり、出入り口6の下部の壁2にボルト34、ナット35及び座金36を用いて取り付けられている。壁側枠31の両端には、通路用枠44の端部が取り付けられるブラケット32が設けられている。また、壁側枠31の長さ方向に間隔を空けて、木製根太45の端部を支持する3つのアングルピース33が取り付けられている。
【0025】
下側枠40は環状に形成されたC型鋼であり、図4〜6に示すように、7本の支持柱21a〜21gに囲まれた内側に配置され、建物1の2階の床面とほぼ同じ高さに配置された状態で支持柱21に溶接されている。なお、下側枠40の2本の支持柱21A,Gの間部分には、後述するように木製根太45やデッキ床30を配置するために上側半分を切除された切り欠き41が設けられている。この切り欠き41の両端には、通路用枠44の一端が取り付けられている。
【0026】
下側枠40の内部には、図4に示すように、鋼製根太42が等間隔かつ建物1の南側の壁面と平行に設けられている。また、下側枠40の内周面には、木製根太45の端部を支持するアングルピース43が取り付けられている。図5に示すように、アングルピース43はアングルピース33とともに木製根太45の両端部を支持する。なお、アングルピース33,43は、木製根太45が図5に示すように、等間隔に配置されるように設けられている。
【0027】
通路用枠44はC型鋼であり、壁側枠31のブラケット32に一端を取り付けられ、他端を下側枠40の切り欠き41の両端に取り付けられ、建物1の南側の壁面と垂直に配置されている。
【0028】
木製根太45は、図5に示すように、アングルピース33,43に両端を固定される。デッキ材46は図6に示すように、木製根太45に直交するように木製根太45上に配置され、図示しない釘または木ネジ等により木製根太45に取り付けられている。
【0029】
このように形成されたデッキ床30の床面の高さは、2階床の床面の高さにほぼ等しく、出入り口6を通じで建物の2階からデッキ床30の上に出入りすることができる。また、出入り口6の下側端部の高さが2階床やデッキ床30の床面の高さにほぼ等しいので、車椅子を用いてデッキ床30の上に出入りすることができる。さらに、デッキ床30の支持柱21a〜21gに囲まれた円形部分は車椅子で回転するのに充分な広さを有する。このため、車椅子で出入り口6からデッキ床30の上に出て、デッキ床30の上で回転して方向転換し、出入り口6から建物1内に入ることができる。
【0030】
下側枠40の切り欠き41部分を除く外周部および通路用枠44の上方には、図1,2に示すように、デッキ床30の上面から間隔を空けて手摺部材50が支持柱21に取り付けられている。手摺部材50はデッキ床30の上から人や物が落下することを防止する。手摺部材50としては、例えば円弧上に形成した鋼材を用いることができるが、ポリカーボネイトやガラス等その他の材料を用いてもよい。なお、手摺部材50は高さ方向に間隔を空けて複数設けられていてもよい。
【0031】
上側枠61は環状であり、7本の支持柱21a〜21gの上端に溶接されている。上側枠61の内部には、図7に示すように、パーゴラ梁62が等間隔に設けられている。なお、図7ではパーゴラ梁62は建物1の南側の壁面と平行に設けられているが、その方向は任意であり、例えば建物1の南側の壁面と垂直に設けられていてもよい。
上側枠61と、パーゴラ梁62と、支持柱21a〜21gとにより、パーゴラ60が構成されている。パーゴラ60には、必要に応じて日除け用のスクリーンを着脱することができる。
【0032】
本発明に係るバルコニーユニット20は、以上の構成のみからなるので、風通しや日当たりを良好とすることができる。また、下側枠40及び上側枠61が環状に形成されているため、風などにより外力を受けても、応力が集中する角部がないため、応力が下側枠40または上側枠61の外周に沿って分散する。したがって、支持柱21との接合部に応力が集中しないため、接合部を簡易な構造にして施工の手数を減らし、コストを削減することができる。
【0033】
また、デッキ床30を支持柱21a〜21gと下側枠40とにより支持するため、建物1の壁2にデッキ床30を支持する耐力を要求しない。このため、建物1の建築時に、壁2の耐力にデッキ床30を支持させるほどの余裕を持たせなかった場合でも、後施工が可能となる。さらに、設置後も建物1の任意の場所に移設することが可能である。
【0034】
以上の実施の形態においては、建物の2階の出入り口からデッキ床30の上に出入り可能としたが、例えば支持柱21a〜21gに囲まれた部分にテラス10からデッキ床30に上がる螺旋階段を設けてもよいし、あるいは、支持柱21a〜21gよりも外側に螺旋階段を設けてもよい。その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るバルコニーユニット20が設けられた建物1を南側から見た立面図である。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】図2のIII−III矢視図である。
【図4】図2のIV−IV矢視図である。
【図5】図2のV−V矢視図である。
【図6】図2のVI−VI矢視図である。
【図7】図2のVI−VI矢視図である。
【符号の説明】
【0036】
1 建物
10 テラス
20 バルコニーユニット
21a〜21g 支持柱
30 デッキ床
40 下側枠
60 パーゴラ
61 上側枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物のテラス上に円弧上に配置され、下端を固定された複数の支持柱と、
前記複数の支持柱の上端を接続する環状の上側枠と、
前記複数の支持柱の高さ方向の中央部分を接続する環状の下側枠と、
前記下側枠により支持されるデッキ床と、
を備えることを特徴とするバルコニーユニット。
【請求項2】
前記デッキ床は建物の2階床と接続されていることを特徴とする請求項1に記載のバルコニーユニット。
【請求項3】
前記複数の支持柱には前記上側枠と前記下側枠との間に円弧状の手摺部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のバルコニーユニット。
【請求項4】
1階に設けられた略円形のテラスと、
前記テラス上の外周部に配置され、下端を固定された複数の支持柱と、
前記複数の支持柱の上端を接続する環状の上側枠と、
前記複数の支持柱の高さ方向の中央部分を接続する環状の下側枠と、
前記下側枠により支持されるデッキ床と、
を備えることを特徴とする建物。
【請求項5】
前記デッキ床は建物の2階床と接続されていることを特徴とする請求項4に記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−299732(P2006−299732A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126201(P2005−126201)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000114086)ミサワホーム株式会社 (288)