説明

バルブアクチュエータ運搬治具

【課題】簡易な構成で、バルブブロックに設けられるバルブのアクチュエータを作業者が安全に着脱及び運搬できるバルブアクチュエータ運搬治具を提供する。
【解決手段】複数のバルブ2が互いに組み合わされて配管されているバルブブロック3からバルブ2の上部に設けられたアクチュエータ4の着脱及び運搬をするためのバルブアクチュエータ運搬治具1であって、アクチュエータ4に取り付けるための開閉部11aを有し、アクチュエータ4の外周面4aを保持する保持部11と、保持部11から下方に延びてアクチュエータ4の下面4bを支持する支持部12と、保持部11に設けられ、互いに対向して位置する一対の取手部13と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバルブが互いに組み合わされて配管されたバルブブロックからバルブのアクチュエータを取り出して運搬する際に使用するバルブアクチュエータ運搬治具に関する。
【背景技術】
【0002】
持ち手を有していないために扱いにくい物品を運搬するための治具として、例えば、ガス容器のバルブ部を保護するプロテクターに取手を設けたバルブプロテクター(特許文献1参照。)や、坩堝に把持部を取り付ける運搬用治具(特許文献2参照。)が知られている。
【特許文献1】特開2002−61799号公報
【特許文献2】特開平9−208020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
複数のバルブが互いに組み合わされて配管されたバルブブロックからバルブのアクチュエータを取り出す際、各バルブが密集して配管されているため配管の上方に足元が位置し、作業者はしゃがんでからバルブを持ち上げるようにして取り出している。バルブのアクチュエータは重く、このような状態で重量物を持ち上げると腰痛の危険も生じ、また、持ち手ではないところを掴むために怪我のおそれもある。上述した特許文献1のプロテクターでは構成部品が多く取り扱いが複雑となるし、特許文献2の治具では底面が支持されていないため重量物を扱うには不向きである。
【0004】
そこで、本発明は簡易な構成で、バルブブロックに設けられるバルブのアクチュエータを作業者が安全に着脱及び運搬できるバルブアクチュエータ運搬治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のバルブアクチュエータ運搬治具は、複数のバルブ(2)が互いに組み合わされて配管されているバルブブロック(3)から前記バルブの上部に設けられたアクチュエータ(4)の着脱及び運搬をするためのバルブアクチュエータ運搬治具(1)であって、前記アクチュエータに取り付けるための開閉部(11a)を有し、前記アクチュエータの外周面(4a)を保持する保持部(11)と、前記保持部から下方に延びて前記アクチュエータの下面(4b)を支持する支持部(12)と、前記保持部に設けられ、互いに対向して位置する一対の取手部(13)と、を備えたことにより上記課題を解決する。
【0006】
本発明のバルブアクチュエータ運搬治具によれば、バルブブロックに設けられるバルブのアクチュエータの下面を支持部で支持しつつ保持部で外周面を保持することにより、アクチュエータにバルブアクチュエータ運搬治具が固定される。一対の取手部が保持部に設けられているのでそれぞれの持ち手を別々の作業者が掴むことができ、二人の作業者でアクチュエータを持ち上げて運搬することができる。従って、個々の作業者への負担を軽減でき、専用の持ち手も有するので、怪我のおそれがなく安全にアクチュエータの着脱及び運搬をすることができる。
【0007】
本発明のバルブアクチュエータ運搬治具の一形態において、前記アクチュエータの外周面と接触する前記保持部の内周面には、保護部材(15)が設けられていてもよい。この形態によれば、保持部の内周面に保護部材が設けられているので、取り付けられるアクチュエータの外周面との間に滑り止め効果を奏する。さらに、運搬治具の取付け時に外周面の破損を防止することができる。
【0008】
本発明のバルブアクチュエータ運搬治具の一形態において、前記開閉部には、前記アクチュエータの外周面に前記保持部を固定するロック機構(14)が設けられていてもよい。この形態によれば、保持部を確実にアクチュエータに固定することができ、作業者が安全にアクチュエータの着脱及び運搬をすることができる。
【0009】
ロック機構が設けられている形態において、前記ロック機構には、前記保持部の内径を調節する調節手段が設けられていてもよい。この形態によれば、保持部の内径を調節することにより、大きさの異なるアクチュエータにも対応することができる。また、調節手段により保持部をアクチュエータに確固に取り付けることができる。
【0010】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0011】
以上、説明したように、本発明のバルブアクチュエータ運搬治具においては、バルブブロックに設けられるバルブのアクチュエータの下面を支持部で支持しつつ保持部で外周面を保持することにより、アクチュエータにバルブアクチュエータ運搬治具が固定される。一対の取手部が保持部に設けられているのでそれぞれの持ち手を別々の作業者が掴むことができ、二人の作業者でアクチュエータを持ち上げて運搬することができる。従って、個々の作業者への負担を軽減でき、専用の持ち手も有するので、怪我のおそれがなく安全にアクチュエータの着脱及び運搬をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の一形態に係るバルブアクチュエータ運搬治具の全体図である。バルブアクチュエータ運搬治具1(以下、運搬治具1と略記する。)は、複数のバルブ2が互いに組み合わされて配管されているバルブブロック3(図3参照のこと。)からバルブ2のアクチュエータ4を着脱及び運搬するための治具である。本形態では、バルブ2としてミックスプルーフバルブが用いられている。運搬治具1は、アクチュエータ4の外周面4aを保持する保持部11と、アクチュエータ4の下面4bを支持する支持部12と、保持部11に取り付けられた取手部13とを備えている。保持部11は、金属製で、一部が切断されたリング状に形成され、その切断された開閉部11aには、保持部11を締め付けて固定するロック機構14が設けられている。開閉部11aを利用して保持部11の内径を広げることができる。保持部11は、取手部13及びロック機構14が設けられる程度の適度な幅を有する。保持部11の内周面は、シート状の保護部材としてのゴム部材15で覆われている。これにより、取り付けられる外周面4aとの滑り止めの効果を奏し、さらに、保持部11によるアクチュエータ4の破損を防止する。なお、材料はゴムに限られず、各種弾性材料や樹脂等であってもよい。
【0013】
図2にロック機構14の拡大図を示す。ロック機構14は、開閉部11aによって分けられた保持部11の両側に設けられ、一端側には、保持部11を外周面4aに固定した状態の開閉部11aの幅を調整可能な調整ねじ21を有するフック22と、調整ねじ21がねじ込まれたナット23が回動可能に設けられた操作部24と、保持部11を閉じた状態の操作部24を固定するピン25及びピン受け部26とが設けられ、他端側には、フック22を引っ掛ける凸部27が設けられている。調整ねじ21を調節してフック22の長さを調整することで直径の異なるアクチュエータ4にも取付け可能となる。調整ねじ21及びナット23が調節手段として機能する。操作部24は、保持部11に設けられる軸28を中心に回動して、凸部27側へ近付くとフック22の解除を、遠ざかる方向へ倒すとフック22の固定を行う。ピン25は、保持部11に設けられたピン受け部26に差し込み可能で、フック22の固定する位置にある操作部24を固定してロックする。ピン25は紛失しないように取手部13にチェーン等でつながれている。このようなロック機構14は、周知技術を利用して構成してもよい。
【0014】
支持部12は、開閉部11aの対向に設けられ、上端が保持部11に固定された板状のL字形状の部材である。保持部11の中心側へ曲げられた支持面12aがアクチュエータ4の下面4bを支持する。取手部13は一対の持ち手13a、13bを有し、保持部11のそれぞれ対向する位置に設けられる。持ち手13a、13bは、端部が保持部11に取り付けられたコの字型で、作業者が二人で持ち手13a、13bをそれぞれつかめる程度に外側にせり出している。なお、本形態では、開閉部11a、支持部12及び持ち手13a、13bは、保持部11の四方に設けられているが、互いに干渉しない程度に設ける位置を適宜調整してよい。支持部12及び取手部13は、金属で形成され、保持部11に対して溶接されて取り付けられている。持ち手13a、13bの掴み部を樹脂やゴム等で覆ってもよい。
【0015】
運搬治具1の使用方法を説明する。運搬治具1の運搬対象となるバルブ2のアクチュエータ4は、バルブブロック3に組み込まれている。バルブブロック3は、図3に示すように複数のバルブ2が密に連なって構成されており、作業者の足場5は配管の上方に組まれている。このため、バルブ2に関する作業をする場合は、作業者はしゃがんだ姿勢で作業することになる。まずは、運搬治具1の取付手順を説明する。アクチュエータ4は、バルブ2の上部に設けられている。運搬治具1のロック機構14を外し、アクチュエータ4の上方から支持部11を広げながら支持部11のリング内にアクチュエータ4をくぐらせる。支持部12の支持面12aをアクチュエータ4の下面4bに引っ掛けたことを確認して、調整ねじ21を調整しつつ保持部11のロック機構14をロックする。図4にアクチュエータ4に支持部12が取り付けられている様子を示す。このように、支持部12の支持面12aがアクチュエータ4を支えているので、アクチュエータ4の運搬治具1からの抜け落ちを防止することができる。ロック機構13には、調整ねじ21による保持部11の調節機能が設けられているので、直径の異なるアクチュエータ4S、4L(図3参照。)にも対応することができる。
【0016】
運搬治具1の取付け後、運搬する際には、取手部13の持ち手13a、13bのそれぞれをひとつずつ作業者が掴むことにより、二名の作業者でアクチュエータ4を運搬できる。取手部13は、二人で取り扱えるよう十分なゆとりを持って設けられているため、作業者同士の動作が干渉されることなくアクチュエータ4を運搬することができる。運搬治具1の取り外しは、逆の手順で行われる。
【0017】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、本形態では、足場5よりも下方で配管されているためしゃがんだ状態で作業者が運搬治具1をアクチュエータ4に取り付ける例で説明したが、これに限られない。作業台等に置かれたアクチュエータ4に取り付ける等、どのような状態であっても簡便に取り付けることができる。また、支持部12は、ひとつの支持部12が設けられた形態で説明したが、これに限られず、例えば、複数の支持部12が所定の間隔で設けられていてもよい。アクチュエータ4の重量や形状に応じて設ける形状や位置等を調整してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一形態に係るバルブアクチュエータ運搬治具の全体図。
【図2】ロック機構の拡大図。
【図3】バルブブロックを説明する図。
【図4】アクチュエータに支持部が取り付けられている様子を示す図。
【符号の説明】
【0019】
1 バルブアクチュエータ運搬治具
2 バルブ
3 バルブブロック
4 アクチュエータ
4a 外周面
4b 下面
11 保持部
11a 開閉部
12 支持部
13 取手部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバルブが互いに組み合わされて配管されているバルブブロックから前記バルブの上部に設けられたアクチュエータの着脱及び運搬をするためのバルブアクチュエータ運搬治具であって、
前記アクチュエータに取り付けるための開閉部を有し、前記アクチュエータの外周面を保持する保持部と、
前記保持部から下方に延びて前記アクチュエータの下面を支持する支持部と、
前記保持部に設けられ、互いに対向して位置する一対の取手部と、
を備えたことを特徴とするバルブアクチュエータ運搬治具。
【請求項2】
前記アクチュエータの外周面と接触する前記保持部の内周面には、保護部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のバルブアクチュエータ運搬治具。
【請求項3】
前記開閉部には、前記アクチュエータの外周面に前記保持部を固定するロック機構が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバルブアクチュエータ運搬治具。
【請求項4】
前記ロック機構には、前記保持部の内径を調節する調節手段が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のバルブアクチュエータ運搬治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−149999(P2010−149999A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330231(P2008−330231)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【出願人】(392032100)キリンエンジニアリング株式会社 (54)