説明

バルブユニット、液体供給装置および液体噴射装置

【課題】バルブユニットにおける負圧特性をより安定化させる。
【解決手段】バルブユニット23であって、液体流路と連通孔を介して連通する圧力室46と、閉弁状態となることにより前記連通孔を閉鎖する弁体51と、圧力室51の一面を構成し、圧力室内の圧力変動に応じて撓み変位する受圧部と、該受圧部の圧力室側に設けられた受圧板57と、を備え、受圧板57がさらに軸部57cを有し、前記変位する受圧部が受圧板57に押し付けられて受圧板が57移動する際に軸部57cが回転する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブユニット、液体供給装置および液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッド(記録ヘッド)から液体(インク)をターゲットに対して噴射する液体噴射装置として、例えば、インクジェット式プリンターが知られている。こうしたプリンターにあっては、記録ヘッドにインクを安定して供給することが望ましいため、従来、インク流路の途中にインクの流動圧を調整するためのバルブユニットを備えたプリンターが提案されている。また、バルブユニットとして、インク流路とインク供給室及び連通孔を介して連通する圧力室と、閉弁状態となることにより連通孔を閉鎖する弁体と、圧力室の一壁面を構成し、圧力室内の圧力変動に基づいて撓み変位する受圧部と、受圧部に対して中心位置が一方側に偏心した状態で受圧部の一面側に固定された受圧板とを備える構成が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010‐228238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献1においては、受圧板は、受圧部の中心付近が圧力室の内側へ変位するのに伴い、変位して(傾いて)弁体を開状態とする。ただしこのような構成では、傾動する受圧板の支点位置が受圧部自体のたるみ等に起因して明確に定まらず、結果、受圧板の負圧特性(圧力室内に一定の負圧が発生したときの該負圧に応じた受圧板の変位量)にばらつきが生じ得る。このような負圧特性のばらつきは、インク流路中のインク量に影響を与え、ひいては記録ヘッドから噴射されるインク量にばらつきが生じ得る。そのため、製品(液体噴射装置)の品質向上のためには、当該負圧特性のばらつきを抑えるための一層の工夫が求められていた。
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、従来よりも安定した負圧特性を実現可能なバルブユニット、液体供給装置および液体噴射装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様の一つは、バルブユニットは、液体流路と連通孔を介して連通する圧力室と、閉弁状態となることにより前記連通孔を閉鎖する弁体と、前記圧力室の一面を構成し、該圧力室内の圧力変動に応じて撓み変位する受圧部と、該受圧部の圧力室側に設けられた受圧板と、を備え、該受圧板がさらに軸部を有し、前記変位する受圧部が受圧板に押し付けられて受圧板が移動する際に該軸部が回転する構成としてある。
【0007】
当該構成によれば、受圧板は軸部で回転するため、受圧部にたるみ等がある場合でも、傾動する受圧板の支点位置が定まり易く、負圧特性が安定する。
【0008】
本発明の態様の一つは、バルブユニットは、前記圧力室の壁面に固定されかつ前記受圧板の軸部と接する板材を有する構成としてもよい。
当該構成によれば、受圧部の軸部は、板材によってその位置が規制されるため、受圧部にたるみ等がある場合でも、傾動する受圧板の支点位置が定まり、負圧特性がより一層安定する。
【0009】
本発明の態様の一つは、バルブユニットは、前記受圧部の圧力室外側かつ前記受圧板の軸部に対応する位置に配設された板材を有する構成としてもよい。
当該構成によっても、受圧部の軸部は、板材によってその位置が規制されるため、受圧部にたるみ等がある場合でも、傾動する受圧板の支点位置が定まり、負圧特性がより一層安定する。
【0010】
本発明にかかる技術的思想はバルブユニットという形態のみで実現されるものではなく、例えば、上流側から下流側へ向けて液体を供給するための液体流路と、上述したいずれかのバルブユニットとを備えた液体供給装置も、一つの発明として把握することができる。また、液体を収容した液体収容体と、前記液体を噴射可能な液体噴射ヘッドと、前記液体収容体から前記液体噴射ヘッドへ向けて前記液体を供給するための液体流路と、上述したいずれかのバルブユニットとを備えた液体噴射装置も、一つの発明として把握することができる。さらには、上述したバルブユニットの製造方法等、様々なカテゴリーの発明も把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態におけるインクジェット式プリンターの平面図。
【図2】一実施形態におけるバルブユニットの構成を説明するための分解斜視図。
【図3】一実施形態におけるバルブユニットの側面図。
【図4】一実施形態におけるバルブユニット(閉弁状態)の一部断面図。
【図5】一実施形態におけるバルブユニット(開弁状態)の一部断面図。
【図6】他の実施形態におけるバルブユニットの一部断面図。
【図7】他の実施形態におけるバルブユニットの一部範囲の側面図。
【図8】他の実施形態におけるバルブユニットの一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながら、本発明の液体噴射装置をインクジェット式プリンター(以下、プリンターという)に具体化した実施形態を説明する。なお以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、図中に矢印で示した方向を基準として示すものとする。
【0013】
図1は、一実施形態におけるプリンター11の平面図である。図1に示すように、プリンター11は、略矩形箱状をなす本体ケース12を備えるとともに、この本体ケース12内の前方下部には、プラテン13が主走査方向となる本体ケース12の長手方向(図1において左右方向)に沿って配設されている。プラテン13は、記録用紙などの記録媒体Pを支持する支持台であって、このプラテン13上には、図示しない紙送り機構により記録媒体Pが主走査方向と直交する副走査方向(前方向)に給送されるようになっている。
【0014】
本体ケース12内においてプラテン13の後部上方には、主走査方向に延びる棒状のガイド軸14が架設され、このガイド軸14にはキャリッジ15が主走査方向へ移動可能な状態で支持されている。また、本体ケース12内の後方側面においてガイド軸14の両端部と対応する位置には、駆動プーリ16及び従動プーリ17が回転自在に支持されている。駆動プーリ16にはキャリッジモーター18が連結されているとともに、対をなすプーリ16,17間には無端状のタイミングベルト19が掛装されている。そして、キャリッジ15の後端側はタイミングベルト19に接続されているので、キャリッジモーター18の駆動により、キャリッジ15はガイド軸14に沿って主走査方向に往復移動するようになっている。
【0015】
本体ケース12内の一端側(図1では右端側)には箱形のカートリッジホルダー20が設けられている。カートリッジホルダー20には、液体としてのインクを収容した液体収容体としてのインクカートリッジ21が、インクの色毎に複数個(本実施形態においては4個)、着脱可能に装着されている。
【0016】
各インクカートリッジ21はカートリッジホルダー20に装着されることで、インク供給チューブ22の上流端に接続されるようになっている。また、各インク供給チューブ22の下流端は、キャリッジ15上に搭載されたバルブユニット23の上流側と接続されるとともに、バルブユニット23の下流側はキャリッジ15の下面側に設けられた液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド24に接続されている。そして、記録ヘッド24の下面にて構成されるノズル形成面(図示略)には、複数のノズル開口(図示略)が形成されている。
【0017】
バルブユニット23は、記録ヘッド24に各色のインクを安定して供給するための流動圧調整機構を備えたもので、ノズル開口からインクが噴射されて、バルブユニット23の下流側に負圧が生じた場合には、その負圧を解消する分量のインクを記録ヘッド24側に供給することで、インクの流動圧を調整する。なお、本実施形態においては、各バルブユニット23で2色分のインクの流動圧を調整することができるように、1つのバルブユニット23内に2系統の流動圧調整機構が内蔵されている。
【0018】
カートリッジホルダー20とプラテン13との間、すなわち、記録媒体Pが至らない非印刷領域には、プリンター11の電源オフ時や記録ヘッド24をメンテナンスする場合にキャリッジ15の待機場所となるホームポジションHPが設けられている。また、キャリッジ15がホームポジションHPに配置されたときの下方となる位置には、記録ヘッド24のメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット25が備えられている。
【0019】
メンテナンスユニット25はキャップ26及び吸引ポンプ27等を構成要素として備え、キャリッジ15がホームポジションHPに配置された場合には、キャップ26が記録ヘッド24に対してノズル開口を囲むように当接して、ノズル開口を保護するようになっている。また、キャップ26が記録ヘッド24に当接した状態で吸引ポンプ27を駆動することで、記録ヘッド24内にある増粘したインクや気泡などを排出させるクリーニングが行われるようになっている。
【0020】
カートリッジホルダー20の上側には、加圧ポンプ28が配置されている。加圧ポンプ28には空気供給路29の上流端が接続されているとともに、空気供給路29の途中位置には圧力検出器30及び大気開放弁31が接続されている。また、空気供給路29は大気開放弁31の下流側に配設された分配器32を境にインクカートリッジ21の個数と同数に分岐されている。
【0021】
分岐された各空気供給路29は、それぞれの下流端が各々対応するインクカートリッジ21に接続されている。加圧ポンプ28の駆動によって生成された加圧空気は空気供給路29を介してインクカートリッジ21内に圧送されるとともに、加圧空気の加圧力によって、インクカートリッジ21に収容されたインクが記録ヘッド24側に加圧供給されるようになっている。
【0022】
そして、副走査方向に記録媒体Pを所定距離搬送する搬送処理と、キャリッジ15とともに主走査方向に沿って移動する記録ヘッド24のノズル開口からインクを噴射する印刷処理とを交互に行うことにより、記録媒体Pに対する記録処理が実行されるようになっている。
【0023】
次に、バルブユニット23の構成について説明する。
図2は、一実施形態におけるバルブユニット23の構成を説明するための分解斜視図である。図2に示すように、バルブユニット23は樹脂材料からなる定形性の流路形成部材40を備えている。流路形成部材40の上面には、インク供給チューブ22の下流端が接続される接続部40aがインクの色毎に設けられている。そして、流路形成部材40の右面には、前側に位置する凹部41と、後側に位置する凹部42とが形成されている。また、図示は省略するが、流路形成部材40の左面には、右面側と前後方向における配置が反転された態様で、前側に凹部42が、後側に凹部41が形成されている。すなわち、流路形成部材40の左右の側面には、凹部41と凹部42とが前後方向及び左右方向に並ぶように形成されている。
【0024】
図3は、一実施形態におけるバルブユニット23の側面図である。図3に示すように、凹部41は、圧力室形成凹部41aと、圧力室形成凹部41aから凹部42に向かう方向に延びる流路形成凹部41bとから構成されている。凹部42は、凹部41の圧力室形成凹部41aよりも開口面積が小さくなっている。なお、本実施形態において、圧力室形成凹部41aは、円弧状の下壁、平面状の上壁、凹部41の底面にあたる側面視D形状の側壁41d、および、側壁41dと同形状の開口を有している。
【0025】
各凹部42の開口が封止部材43(図2)で封止されることでインク供給室44が囲み形成される。また、可撓性を有するフィルム部材45(図2)が流路形成部材40に熱溶着されることで、各凹部41の開口がフィルム部材45によって被覆され、圧力室46と液体流路としてのインク流路47とが囲み形成される。フィルム部材45は、受圧部に該当する。また、圧力室46内には、受圧板57が配設される。受圧板57は、概略、略円盤状の部材である本体部と、軸部と、本体部および軸部を接続する接続部とからなる。接続部は、その両側が、圧力室46の底面(側壁41d)から立設する壁部72,72で挟まれ、軸部は、壁部72,72と圧力室形成凹部41aの上記上壁とによって挟まれている。なお、図2においては受圧板57および壁部72,72の図示を省略しており、図3においてはフィルム部材45の図示を省略している。
【0026】
本実施形態において、一色のインクに対応する流動圧調整機構は、上述した接続部40aに繋がるインク供給室44及び圧力室46を各1つ備えている。以下の説明においては、図1〜図3において左右方向となる流路形成部材40の厚さ方向をX方向、上方向をZ方向、X及びZ方向と直交する方向をY方向(図1〜図3において前後方向となる方向)として、流動圧調整機構等の構成を説明する。
【0027】
図4は、図3のA‐A線におけるバルブユニット23の一部断面を簡易的に示している。図4に示すように、接続部40aとインク供給室44は、液体流路としてのインク流路49によって接続されている。また、流路形成部材40の一面側に形成された一つの圧力室46は、連通孔50を通じて流路形成部材40の他面側に形成されたインク供給室44と連通している。すなわち、インク供給チューブ22を通じて供給されたインクは、流路形成部材40において上流側となるインク流路49から、インク供給室44、連通孔50、圧力室46、インク流路47を順次流れて、下流側となる記録ヘッド24側に供給される。本実施形態において、バルブユニット23は液体供給装置を構成している。
【0028】
インク供給室44と圧力室46の間には、閉弁状態となることにより連通孔50を閉鎖する弁体51が配設されている。弁体51は、インク供給室44側に配置される板状部52と、板状部52から突設されて、連通孔50を通じて先端側が圧力室46内に突出するロッド部53とを備えている。また、インク供給室44内には、弁体51を閉弁状態となる方向に付勢する付勢部材54(コイルばね)が配設されているとともに、板状部52の連通孔50と対向する一面側には、ロッド部53を囲むようにシール部材55が固定されている。
【0029】
圧力室46内(フィルム部材45の圧力室46側)には、受圧板57が収容されている。上述したよう受圧板57は、本体部57aと、軸部57cと、本体部57aおよび軸部57cを接続する接続部57bとからなる。本体部57aは、連通孔50の圧力室46側の開口を覆うように配設されており、本体部57aの連通孔50に相対する側の面には、ロッド部53の先端が接触している。円柱状の軸部57cは、壁部72と圧力室形成凹部41aの上記上壁とによって挟まれた空間に収容されており、当該空間も含めて圧力室46はフィルム部材45により封止されている。
【0030】
次に、以上のように構成されたバルブユニット23の作用について説明する。
プリンター11にインクカートリッジ21が装着されて加圧ポンプ28が駆動されると、インク供給チューブ22及びインク流路49を通じてインク供給室44内にインクが充填される。続いて、キャップ26が記録ヘッド24に当接した状態で吸引ポンプ27が駆動されると、圧力室46内に負圧が生じるため、受圧部45が大気圧に押されて圧力室46の内方へ撓んで変位する。当該変位する受圧部45が受圧板57に押し付けられ、受圧板57の軸部57cが回転して受圧板57が圧力室46の内方へ傾動する。すると、受圧板57の本体部57aは、付勢部材54の付勢力に抗して弁体51を開弁状態となる方向に押圧する。この結果、圧力室46とインク供給室44との間が連通された開弁状態となり、連通孔50、圧力室46及びインク流路47内にもインクが充填される。
図5は、図4と同様にA‐A線におけるバルブユニット23の一部断面であって、弁体51が開弁状態となった様子を示している。
【0031】
そして、吸引ポンプ27の駆動が停止されると、バルブユニット23内へのインクの充填が終了して、図4に示すように、弁体51は付勢部材54の付勢力によって閉弁状態とされる。その後、印刷が開始され、ノズル開口からインクが噴射されてインクが消費されると、図5に示すように、圧力室46内に生じた負圧によって受圧部45が圧力室46の内方へ変位するのに伴い、軸部57cが回転して受圧板57が圧力室46の内方へ傾動する。そして、受圧板57が付勢部材54の付勢力に抗して弁体51を押圧し、連通孔50から離間させる。
【0032】
これにより、再びインク供給室44内から圧力室46内にインクが供給され、圧力室46内の負圧が解消される。すると、受圧部45が圧力室46の外方へ向かって変位するのに伴って、受圧板57も外方へ向かって変位する。プリンター11における印刷時には、このようにバルブユニット23が開弁状態及び閉弁状態を繰り返すことにより、ノズル開口から吐出されるインクの量に応じて、適切な量のインクが安定して記録ヘッド24に供給される。特に本実施形態によれば、受圧板57は、壁部72と圧力室形成凹部41aの上記上壁とによって挟まれた空間に収容され当該空間内で回転する軸部57cを有しているため、上記傾動の支点位置が安定し、負圧特性のばらつきが抑制される。その結果、圧力室46〜記録ヘッド24に供給されるインク量が安定し、記録ヘッド24から噴射されるインク量のばらつき(記録ヘッド24が備える圧電素子に一定の駆動電圧が印加されたときに実際に噴射されるインク量のばらつき)が抑制され、高品質な印刷結果を得ることができる。
【0033】
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば以下に述べるような実施形態も可能である。各実施形態を適宜組み合わせた内容も、本発明の開示範囲である。
以下では適宜、図1〜図5で説明した実施形態を第1実施形態と呼び、図6〜図8で説明する実施形態を第2実施形態と呼ぶ。ただし以下では、第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形態と共通する構成や作用は説明を省略する。
【0034】
図6は、第2実施形態にかかる構成を図4,5と同様にバルブユニット23の一部断面により簡易的に示しているが、図4,5の構成と比較したとき、受圧板57の軸部57cと接する板材73を備える点で異なる。板材73は、剛性を持った部材である。
図7は、バルブユニット23の一部範囲であって板材73を含む範囲を、図3と同じ視点から図示したものである。
図6,7から判るように、第2実施形態においては、板材73を、壁部72と圧力室形成凹部41aの上記上壁とに対して固定しており、板材73よりも外側から、フィルム部材45を流路形成部材40に対して熱溶着している(ただし図7では、フィルム部材45の図示を省略)。つまり、軸部57cは、壁部72と圧力室形成凹部41aの上記上壁と板材73とによって囲われた空間に収容され、板材73は、軸部57cに対する蓋として機能する。
【0035】
壁部72と圧力室形成凹部41aの上記上壁との夫々の先端部には、板材73の各端部を収容するための各凹部が予め形成されており、板材73を壁部72と圧力室形成凹部41aの上記上壁との間に架け渡したとき、板材73の各端部がこれら各凹部に嵌め込まれた状態となる。そして、このように板材73が嵌め込まれた状態で、フィルム部材45を流路形成部材40に熱溶着すると、当該溶着時の熱によって、流路形成部材40(例えば、ポリプロピレン樹脂製)におけるフィルム部材45と接する箇所(壁部72の先端部や、圧力室形成凹部41aの上記上壁の先端部など)が一部溶融する。そのため、この溶融した部材が冷えて固まったとき、フィルム部材45だけでなく、板材73も、壁部72の先端部および圧力室形成凹部41aの上記上壁の先端部に対して固着される。ただし、壁部72と圧力室形成凹部41aの上記上壁との夫々の先端部に、上述したような各凹部を形成することなく、単純に両先端部間に板材73を架け渡した状態で載置し、両先端部に対して板材73を溶着してもよい。
【0036】
ここで、板材73が存在しない場合を仮定する。そのような場合において、軸部57cに対してX方向に隣接するフィルム部材45の範囲にたるみがあると、軸部57cはX方向にある程度自由に動ける状態となる。このようにフィルム部材45のたるみに起因して軸部57cの位置が安定しないと、例えば、軸部57cはフィルム部材45に接触せず接続部57bがフィルム部材45に接触しているという状況が生じ得る(接続部57bに対してX方向に隣接するフィルム部材45の範囲は壁部72,72の先端部に溶着されており、たるみが無いため、軸部57cの位置が上記のように不安定であると接続部57bがフィルム部材45に接触し易い)。このようにフィルム部材45にたるみがあり、接続部57bがフィルム部材45に接触していると、この接触した位置が、傾動(回転)する受圧板57の支点(回転中心)となる。受圧板57の本来の支点位置は軸部57cであるが、このように支点位置が変ってしまうと受圧板57の回転半径も変り、その結果、負圧特性が安定しない。
【0037】
そこで、第2実施形態では、板材73を設けることにより、軸部57cのX方向への移動を禁止し、上述したようなフィルム部材45のたるみの有無にかかわらず、傾動する受圧板57の支点位置を確実に一定としている。その結果、受圧板57の負圧特性のばらつきが極力少なくなり、印刷結果の高品質化に大きく貢献する。
【0038】
図8は、第2実施形態にかかる構成の他の例を、図4〜6と同様にバルブユニット23の一部断面により簡易的に示している。図8においては、板材73は、流路形成部材40に熱溶着されたフィルム部材45の外側において、軸部57cに対応する位置に配設(固定)されている。板材73の固定方法は特に問わない。つまり、軸部57cを、フィルム部材45の外側から板材73によって押さえ付ける構成としてもよい。なお、図8の構成を採用する場合であっても、バルブユニット23をX方向から見た場合の板材73と軸部57cとの位置関係は、図7に示した位置関係となる。
【0039】
その他、例えば付勢部材54は、インク供給室44内に配設されたコイルばねではなく、受圧板57自身によって実現されてもよい。つまり、受圧板57を板ばねとして構成し、かつ、受圧板57とロッド部53の先端とを接続する。このようにすれば、弁体51は、板ばね(受圧板57)によって連通孔50を閉じる方向に付勢され、圧力室46に負圧が生じたときに、撓み変位する受圧部45に押されて傾動する板ばね(受圧板57)とともに変位し、開弁状態となる。
【0040】
また、バルブユニット23は、インクの色毎に設けるようにしてもよい。また、フィルム部材45を流路形成部材40に対して固定する方法は熱溶着に限らず、例えば振動溶着など、任意の方法で固定することができる。
上記では、液体噴射装置をインクジェット式プリンターに具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよく、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
11…プリンター、21…インクカートリッジ、23…バルブユニット、24…記録ヘッド、40…流路形成部材、41a…圧力室形成凹部、44…インク供給室、45…フィルム部材(受圧部)、46…圧力室、47,49…インク流路、50…連通孔、51…弁体、54…付勢部材、57…受圧板、57a…本体部、57b…接続部、57c…軸部、72…壁部、73…板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体流路と連通孔を介して連通する圧力室と、
閉弁状態となることにより前記連通孔を閉鎖する弁体と、
前記圧力室の一面を構成し、該圧力室内の圧力変動に応じて撓み変位する受圧部と、
該受圧部の圧力室側に設けられた受圧板と、を備え、
該受圧板がさらに軸部を有し、前記変位する受圧部が受圧板に押し付けられて受圧板が移動する際に該軸部が回転することを特徴とするバルブユニット。
【請求項2】
前記圧力室の壁面に固定されかつ前記受圧板の軸部と接する板材を有することを特徴とする請求項1に記載のバルブユニット。
【請求項3】
前記受圧部の圧力室外側かつ前記受圧板の軸部に対応する位置に配設された板材を有することを特徴とする請求項1に記載のバルブユニット。
【請求項4】
上流側から下流側へ向けて液体を供給するための液体流路と、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のバルブユニットとを備えたことを特徴とする液体供給装置。
【請求項5】
液体を収容した液体収容体と、前記液体を噴射可能な液体噴射ヘッドと、前記液体収容体から前記液体噴射ヘッドへ向けて前記液体を供給するための液体流路と、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のバルブユニットとを備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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