説明

バレルめっき装置

【課題】高電流密度部分の発生の原因となる、ドラム内に収容された被めっき物と棒状の導電性部材との間のすきまの発生を防止することで、被めっき物の表面に形成されるめっき皮膜のこげの発生を防止することができるバレルめっき装置を提供する。
【解決手段】めっき液中に水平状態で浸漬され、被めっき物を収容する筒状のドラム2と、ドラム2を回転可能に支持する支持部材6と、ドラム2を回転駆動させる駆動機構5と、ドラム2と同軸に配置され、ドラム2と一体に回転する軸棒26Bに接続されたセンタバー3と、を備えたことを特徴とするバレルめっき装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小物部品をめっきするのに好適なバレルめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小物部品をめっきするバレルめっき装置としては、内部に被めっき物を収容して水平状態で回転可能に支持されたドラムと、このドラムを浸漬させるめっき液を貯留しためっき槽と、ドラム内に被めっき物とともに収容される陰極と、陰極とはドラムを間に挟むようにしてめっき槽内のめっき液中に配置された陽極とを備えたバレルめっき装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9に示すように、支持部材106によって水平状態で回転可能に支持され、側壁部123に通液部124aを形成した多角形筒状のドラム102と、ドラム102と同軸に配置される回転しないセンタバー103とを備えたバレルめっき装置101がある。
このバレルめっき装置101は、ドラム102の内部に被めっき物(図示せず)を収容し、支持部材106ごと図示しないめっき槽内に浸漬して、支持部材106の上部に配置されたモータ150によりギア151,152,153および128を介してドラム102に回転を付与させながら、図示しないめっき槽内に配置された図示しない陽極とセンタバー103(陰極)との間を通電してめっきを行うものである。
【特許文献1】特開平10−102297号公報(段落0002、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記したバレルめっき装置101では、センタバー103が回転しないため、ドラム102を回転させると、図10に示すように、センタバー103と被めっき物Pとの間にすきまVが生じ、高電流密度部分Cが発生する。これにより、高電流密度部分Cに面した被めっき物Pの表面に形成されるめっき皮膜にこげが発生するという問題が生じる。
【0005】
また、前記したバレルめっき装置101では、図9に示すように、センタバー103がドラム102の内部を貫通して配置されているので、ドラム102の取り外し(交換)が容易でない構成となっている。このような、バレルめっき装置101では、例えば、ドラム102の側壁部123の一つの面またはその一部を着脱自在に形成して(図示せず)被めっき物の収容・取り出しを行っているため、その作業性がよくないという問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、高電流密度部分の発生の原因となる、ドラム内に収容された被めっき物と棒状の導電性部材との間のすきまの発生を防止することで、被めっき物の表面に形成されるめっき皮膜のこげの発生を防止することができるバレルめっき装置を提供することを課題とする。
また、本発明は、ドラムの交換や被めっき物の収容・取り出しを容易にしてその作業性を向上させながら、バレルめっき装置の運転中はドラムが容易に外れたりせず安定して運転(回転)することができるバレルめっき装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係るバレルめっき装置は、めっき液中に水平状態で浸漬され、被めっき物を収容する筒状のドラムと、ドラムを回転可能に支持する支持部材と、ドラムを回転駆動させる駆動機構と、ドラムと同軸に配置され、ドラムと一体に回転する棒状の導電性部材と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
このように構成されたバレルめっき装置は、ドラムと棒状の導電性部材とが一体に回転するので、ドラム内に収容された被めっき物と棒状の導電性部材との間にすきまが生じることがなく、高電流密度部分の発生を防止することができる。これにより、被めっき物の表面に形成されるめっき皮膜のこげの発生を防止することができる。
【0009】
また、本発明に係るバレルめっき装置は、請求項1に記載されたバレルめっき装置であって、導電性部材に電気的に接続される電極と、電極を収容するとともに導電性部材の端部が挿入されるハウジングと、ハウジング内へのめっき液の浸入を防止する止水部と、から構成される電極シールド部品をさらに備えたことを特徴とする。
【0010】
このように構成されたバレルめっき装置は、ドラム(導電性部材)を回転させた状態であっても、ハウジング内へのめっき液の浸入を防止することができるので、導電性部材と電極との電気的な接続部分がめっき液に接触することがなくなる。これにより、前記した電気的な接続部分にめっき皮膜が形成されることによって発生するドラムの回転不良を防止することができる。
また、前記した電気的な接続部分、或いは、電極にめっき皮膜が形成されることがないので、めっき液が無駄に消費されることがなく、導電性部材や電極を何度でも使用することが可能となり経済的である。
【0011】
また、本発明に係るバレルめっき装置は、請求項2に記載されたバレルめっき装置であって、電極は、電極棒と、導電性部材に電気的に接続される導電体と、電極棒と導電体とを電気的に接続し、導電体を導電性部材に付勢する弾性部材と、から構成されることを特徴とする。
【0012】
このように構成されたバレルめっき装置は、弾性部材によって導電体が導電性部材に付勢されているので、ドラムの回転を良好に保ちつつ、導電性部材に通電することができる。
また、電極を電極棒、導電体および弾性部材で構成したことによって、それぞれの機能を果たす上で最も好適な材料を、それぞれについて選択することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係るバレルめっき装置は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたバレルめっき装置であって、ドラムは、支持部材から着脱自在であることを特徴とする。
【0014】
このように構成されたバレルめっき装置は、ドラムを容易に取り外すことができるので、ドラムの交換や、被めっき物の収容・取り出しが容易にでき、作業性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明に係るバレルめっき装置は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載されたバレルめっき装置であって、ドラムは、内部にテーパ部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
このように構成されたバレルめっき装置は、テーパ部を設けないドラムと比較して、内部の鋭利な角部が減少するので、めっき後の被めっき物が角部に接触・衝突することによって生じるめっき表面の傷を減少させることができる。
また、テーパ部を設けたことによってドラムの内部が滑らかに形成され被めっき物が引っ掛かりにくくなるので、被めっき物の表面のめっき皮膜の形成を良好にすることができ品質を向上させることができるとともに、めっき後の被めっき物を容易に取り出すことができ作業性を向上させることができる。
【0017】
また、本発明に係るバレルめっき装置は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載されたバレルめっき装置であって、ドラムは両端に蓋部を有し、蓋部の内側には複数の溝が設けられていることを特徴とする。
【0018】
このように構成されたバレルめっき装置は、溝を形成しない場合と比較して、被めっき物が蓋部の内側に付着しにくいので、被めっき物の表面のめっき皮膜の形成を良好にすることができ品質を向上させることができるとともに、めっき後の被めっき物を容易に取り出すことができ作業性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明に係るバレルめっき装置は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載されたバレルめっき装置であって、ドラムは両端に回転軸を有し、回転軸は、支持部材に設けられた固定手段によって回転可能に固定されることを特徴とする。
【0020】
このように構成されたバレルめっき装置は、回転軸がバレルめっき装置の運転中(ドラムの回転駆動中)に支持部材から脱落することを防止することができる。これにより、バレルめっき装置の運転中(ドラムの回転駆動中)はドラムが容易に外れたりせず安定して運転(回転)することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高電流密度部分の発生の原因となる、ドラム内に収容された被めっき物と棒状の導電性部材との間のすきまの発生を防止することで、被めっき物の表面に形成されるめっき皮膜のこげの発生を防止することができるバレルめっき装置を提供することができる。
また、本発明によれば、ドラムの交換や被めっき物の収容・取り出しを容易にしてその作業性を向上させながら、バレルめっき装置の運転中はドラムが容易に外れたりせず安定して運転(回転)することができるバレルめっき装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態の一例を、適宜図面を参照して詳細に説明する。
なお、図1は本実施形態に係るバレルめっき装置の構成を示す斜視図、図2は本実施形態に係るバレルめっき装置の構成を示す正面図、図3は本実施形態に係るバレルめっき装置を構成するドラムの分解斜視図、図4は本実施形態に係るバレルめっき装置を構成するドラムの内部に設けられたテーパ部を説明するための断面図、図5は本実施形態に係るバレルめっき装置を構成するドラムとセンタバーの取付構造および電極シールド部品の構成を説明するための部分断面図、図6は本実施形態に係るバレルめっき装置を構成する電極シールド部品の分解斜視図、図7は本実施形態に係るバレルめっき装置を構成する支持部材およびドラムの着脱方法・固定方法を説明するための部分斜視図、図8は本実施形態に係るバレルめっき装置を運転した場合のドラムの内部の様子を表す模式図である。
【0023】
[バレルめっき装置1]
本発明の実施形態に係るバレルめっき装置1は、小物部品をめっきするための装置であり、図1,図2に示すように、被めっき物を収容するドラム2と、ドラム2の内部にドラム2と同軸に配置されるセンタバー3と(図2参照)、センタバー3が接続される軸棒26Bと電極41との電気的な接続部分をめっき液から保護する電極シールド部品4と、ドラム2をその軸心線回りに回転駆動させる駆動機構5と、ドラム2を回転可能に支持する支持部材6とから構成されている。
【0024】
バレルめっき装置1は、めっき液を貯留し、図示しない陽極が配置される図示しないめっき槽内に浸漬して運転される。ドラム2は、支持部材6の下部に回転可能に支持されている。ドラム2の一端(ギア28)は、駆動機構5に連結され、支持部材6の上部に配置されたモータ50の回転が、駆動機構5(ギア51〜53)を介して伝達されるようになっている。ドラム2の他端(軸棒26B)は、電源装置の負極に接続される電極41を収容する電極シールド部品4(止水部43)に挿入されて、電極41と電気的に接続されている。ドラム2の内部にはセンタバー3(図2参照)が配置され、被めっき物(図示せず)が収容される。
以下、バレルめっき装置1の各部について詳細に説明する。
【0025】
[ドラム2]
ドラム2は、被めっき物を収容する筒状の容器であり、図3に示すように、端部22を両端に有し、多角形筒状に形成された側壁部23を有するアクリル樹脂製のドラム本体20と、端部22に着脱自在に取り付けられるドラム蓋21A,21Bとから構成され、支持部材6の下部に回転可能に支持されている(図1,図2参照)。
なお、本実施形態では、ドラム本体20(側壁部23)は多角形筒状(六角形筒状)に形成されているが、円筒状であってもよい。
【0026】
ドラム本体20の端部22には、円形状の試料投入口22aが形成されている。試料投入口22aは、めっき前の被めっき物をドラム2の内部に収容する際、および、めっき後の被めっき物をドラム2の内部から取り出す際に使用される。ドラム2の内部に収容される被めっき物としては、例えば、ICチップ,抵抗,コンデンサ等の電子部品、セラミック,ガラス繊維,樹脂等からなる微細機械部品、微小な粉体等があげられる。
なお、本実施形態では、試料投入口22aは円形状に形成されているが、多角形状であってもよい。また、試料投入口22aの大きさ(内径等)は特に限定されない。
【0027】
ドラム本体20の側壁部23には、一つ以上の側壁孔23aが設けられ、この側壁孔23aを覆うようにめっき液を通す通液部24aを有するアクリル樹脂製の孔蓋24がポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂製のネジ24bで着脱自在に取り付けられている。
通液部24aは、メッシュ、スリット、小孔のいずれであってもよく、それらの組合せであってもよい。また、通液部24aの大きさ、すなわち、メッシュの目の大きさ、スリットの幅、小孔の径は、めっき液を通し、被めっき物をドラム2の内部に保持する大きさであれば特に限定されない(本実施形態では、通液部24aをメッシュとしたバレルめっき装置1を例示する)。
なお、上記した通液部24aの大きさは、着脱自在の孔蓋24を、前記した通液部24aの大きさが異なる別の孔蓋24に交換することによって変化させることができるので、一つのドラム2を用いて、様々な大きさの被めっき物(小物部品)をめっきすることができるから、例えば、通液部124aを側壁部123に直接形成したドラム102(図9参照)を交換する場合と比較して作業が容易であり、経済的である。
【0028】
ドラム蓋21Aは、ドラム本体20の端部22に着脱自在に取り付けられるアクリル樹脂製の蓋部25Aと、蓋部25Aに接続されドラム2の回転軸となるテフロン(登録商標)製の軸棒26Aと、軸棒26Aが挿入され後記する支持部材6に支持されるテフロン(登録商標)製のすべり軸受27Aと、軸棒26Aに接続され駆動機構5(図2参照)に連結されるポリメチルペンテン(TPX(登録商標))樹脂製のギア28とから構成されている。なお、軸棒26Aは、テフロン(登録商標)以外の樹脂製であってもよいし、絶縁皮膜、例えば、テフロン(登録商標)コーティング等がなされたステンレス製であってもよい。
ドラム蓋21Bは、ドラム本体20の端部22に着脱自在に取り付けられるアクリル樹脂製の蓋部25Bと、センタバー3が接続されドラム2の回転軸となるステンレス製の軸棒26Bと、軸棒26Bが挿入され後記する支持部材6に支持されるテフロン(登録商標)製のすべり軸受27Bとから構成されている。なお、軸棒26Bのドラム2の内部側には、後記するセンタバー3を接続する取付孔29が設けられている。また、軸棒26Bには、めっき液と直接接触する部分に絶縁皮膜、例えば、テフロン(登録商標)コーティング等がなされている(図示せず)。
本実施形態では、後記するセンタバー3と軸棒26Bとが、請求項に記載した導電性部材に相当する。
【0029】
蓋部25Bの内側には、被めっき物より小さな溝Gが複数形成されている。これにより、溝Gを形成しない場合と比較して、被めっき物が蓋部25Bの内側に付着しにくいので、被めっき物の表面のめっき皮膜の形成を良好にすることができ品質を向上させることができるとともに、めっき後の被めっき物を容易に取り出すことができ作業性を向上させることができる。
なお、本実施形態では、センタバー3(または軸棒26B)に対して同心状に溝Gが形成されているが、被めっき物より小さな溝Gが複数形成されていれば溝Gの形状は特に限定されず、例えば、ダイヤカット状や碁盤の目状等であってもよい。同様に、溝Gの断面形状についても特に限定されず、例えば、V字形状等であってもよい。また、蓋部25Bの内側に溝Gを設ける範囲は、蓋部25Bの内側の試料投入口22aに対向する面以上の範囲(面積)であれば特に限定されない。
前記溝Gは、蓋部25Aの内側にも、蓋部25Bの内側と同様に形成されている(図示せず)。
【0030】
ドラム2の内部には、図4(a)に示すように、試料投入口22aからドラム2の側壁部23に向かって、テーパ部T1が設けられている。また、図4(b)に示すように、側壁部23に設けられた側壁孔23aの外周部にも、ドラム2の外部から内部に向かって広がるテーパ部T2が設けられている。これにより、テーパ部T1,T2を設けないドラムと比較して、内部の鋭利な角部が減少するので、めっき後の被めっき物が角部に接触・衝突することによって生じるめっき表面の傷を減少させることができる。また、テーパ部T1,T2を設けたことによってドラム2の内部が滑らかに形成され被めっき物が引っ掛かりにくくなるので、被めっき物の表面のめっき皮膜の形成を良好にすることができ品質を向上させることができるとともに、めっき後の被めっき物を容易に取り出すことができ作業性を向上させることができる。
なお、図4(a)は、図3に示したドラム2のX−X断面図であり、図4(b)は、図3に示したドラム2のY−Y断面図である。
【0031】
[センタバー3]
センタバー3は、例えば、黄銅や銅等で形成されたバレルめっき装置1の陰極となる部材であり、図3に示すように、ドラム2の内部に配置される電極部31と、軸棒26Bの取付孔29に着脱自在に取り付けられる取付部32とから構成され、少なくとも電極部31がドラム2の内部にあって、ドラム2と同軸に配置されている。
【0032】
取付部32には、例えば、雄ネジ部(ネジ山)が形成されているので、図5に示すように、軸棒26Bのドラム2の内部側に形成された取付孔29の雌ネジ部に螺合させることで、センタバー3と軸棒26Bとを接続することができる。
なお、PEEK樹脂製のセンタバー固定ネジ29aを設けて、取付部32の側面を押さえて固定することで、センタバー3と軸棒26Bとの接続をより強固にする構成としてもよい。
【0033】
このようにセンタバー3とドラム2(軸棒26B)とが接続されて、一体として構成されることで、ドラム2とセンタバー3とが一体に回転することができるので、ドラム2の内部に収容された被めっき物(図示せず)とセンタバー3との間にすきまが生じることがなくなり、高電流密度部分の発生を防止することができる。これにより、被めっき物の表面に形成されるめっき皮膜のこげの発生を防止することができる。
また、センタバー3とドラム2(軸棒26B)とを着脱自在に構成したことで、センタバー3の交換が容易になるため、使用不能となったセンタバー3を新たなセンタバー3に交換する場合だけでなく、被めっき物の材質やめっき液の組成に最適な材料で形成されたセンタバー3に容易に交換することができる。これにより、被めっき物の材質やめっき液の組成を問わず、一つのドラム2を使用してめっきをすることが可能になるので経済的である。
【0034】
[電極シールド部品4]
電極シールド部品4は、センタバー3が接続する軸棒26Bと電極41との電気的な接続部分を、めっき液から保護するための部品であり、図5,図6に示すように、軸棒26Bを介してセンタバー3に電気的に接続される電極41と、電極41を収容するとともに軸棒26Bが挿入されるハウジング42と、ハウジング42の内部へのめっき液の浸入を防止する止水部43とから構成され、支持部材6の側面(軸棒26Bの側)に取り付けられている(図1,図2参照)。
【0035】
電極41は、電極棒41aと、軸棒26Bに電気的に接続される導電体41bと、電極棒41aと導電体41bとを電気的に接続し、導電体41bを軸棒26Bに付勢する導電性の弾性部材41cとから構成されている。
電極棒41aは、電源装置の負極に電気的に接続され、弾性部材41c,導電体41bおよび軸棒26Bを介してセンタバー3に通電する黄銅や銅等で形成された部材である。
導電体41bは、軸棒26Bに電気的に接続して、摺動しながら通電する部材であり、例えば、カーボンブラシ等が使用される。カーボンブラシは、黒鉛を主成分とするブロック状の塊からなり、金属のように高い導電性を有するが錆びることがなく、摩擦が低く滑りがよいので、電気的に接続して、摺動しながら通電する部材として好適である。
弾性部材41cは、例えば、導電性のコイルバネ等であって、電極棒41aと導電体41bを電気的に接続するとともに、軸棒26B(ドラム2)の回転を妨げない程度に、導電体41bを軸棒26Bに付勢する部材である。
なお、軸棒26B(ドラム2)の回転を妨げなければ、電極棒41aと軸棒26Bとが直接電気的に接続して、摺動しながら通電する構成であってもよい。
【0036】
ハウジング42は、アクリル樹脂製であって、上端に電極41が挿入される電極挿通孔42aと、下部の一側面に後記する止水部43が取り付けられる取付凹部42bと、前記した取付凹部42bに軸棒26Bが挿入される軸棒挿通孔42cとが形成され、取付部材44,45によって支持部材6に取り付けられる。
【0037】
止水部43は、図6に示すように、ハウジング42の内部へのめっき液の浸入を防止する止水シール43aと、軸棒26Bが挿入される貫通孔43cが形成されたアクリル樹脂製の固定板43bと、固定板43bをハウジング42の取付凹部42bに固定するPEEK樹脂製のネジ43dとから構成されている。
止水部43をハウジング42に取り付けると、固定板43bの貫通孔43cと、止水シール43aと、軸棒挿通孔42cとが連通するように配置されることになる。そして、軸棒26Bが挿入されることで、止水シール43aによりハウジング42の内部へのめっき液の浸入が防止されるようになっている。
【0038】
このような電極シールド部品4を備えたことにより、ドラム2(軸棒26B)を回転させた状態であっても、ハウジング42の内部へのめっき液の浸入を防止することができるので、センタバー3が接続する軸棒26Bと電極41(導電体41b)との電気的な接続部分がめっき液に接触することがなくなる。これにより、前記した電気的な接続部分にめっき皮膜が形成されることによって発生するドラム2(軸棒26B)の回転不良を防止することができる。
また、前記した電気的な接続部分、或いは、電極41にめっき皮膜が形成されることがないので、めっき液が無駄に消費されることがなく、軸棒26Bや電極41を何度でも使用することが可能となり経済的である。
【0039】
[駆動機構5]
駆動機構5は、ドラム2を回転駆動させるための動力源と動力伝達手段であり、図2に示すように、モータ50と、モータ50の駆動軸50aに取り付けられたTPX(登録商標)樹脂製のギア51と、ギア51と噛み合うTPX(登録商標)樹脂製のギア52と、ギア52と噛み合うTPX(登録商標)樹脂製のギア53とから構成され、モータ50は支持部材6の上部に、ギア51,52,53は支持部材6の側面(軸棒26Aの側)に配置されている。
【0040】
このような駆動機構5によれば、モータ50を駆動し、モータ50の駆動軸50aの回転を、ギア51を介してギア52に伝達してギア52を回転させ、さらにギア52の回転を、ギア52を介してギア53に伝達してギア53を回転させることによって、ギア53に噛み合うギア28を回転させることができる。これにより、ギア28に接続された軸棒26Aを介してドラム2およびドラム2(軸棒26B)に接続されたセンタバー3をその軸心線回りに回転駆動させることができる。
なお、本実施形態では、ポリメチルペンテン(TPX(登録商標))樹脂製のギアを例示したが、耐薬品性(耐めっき液性)を有する他の材料、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂等で形成してもよい。また、本実施形態では、モータ50の回転を、ギア51,52,53および28を介してドラム2に伝達しているが、モータ50の回転がドラム2に伝達されればよく、例えば、耐薬品性の材料で形成されたベルト等を介してモータ50の回転をドラム2に伝達してもよい。
【0041】
[支持部材6]
支持部材6は、ドラム2、電極シールド部品4および駆動機構5を支持するバレルめっき装置1の筐体を構成するアクリル樹脂製の部材であり(図1,2参照)、図7に示すように、軸棒26A,26Bが挿入されたすべり軸受27A,27Bを摺動させて支持するガイド溝61が形成されている。
また、支持部材6には、バレルめっき装置1の運転中(ドラム2の回転駆動中)に、軸棒26A,26Bが挿入されたすべり軸受27A,27Bが、ガイド溝61から脱落しないように、固定手段である電極シールド部品4と固定部材62が取り付けられる。
【0042】
ガイド溝61は、軸棒26A,26Bが挿入されたすべり軸受27A,27Bを摺動させることで、ドラム2が支持部材6から着脱自在な構成となっている(図7(b)参照)。これにより、ドラム2を容易に取り外すことができるので、ドラム2の交換や、被めっき物の収容・取り出しが容易にでき、作業性を向上させることができる。
【0043】
また、バレルめっき装置1の運転中(ドラム2の回転駆動中)には、軸棒26Bは、図1,図2に示すように、支持部材6の側面に支持される電極シールド部品4の止水部43に挿入されることで回転可能に固定され、軸棒26Aは、図1,図7(c)に示すように、固定部材62を取り付けることで回転可能に固定される構成になっている。
【0044】
固定部材62は、図7(b),(c)に示すように、ドラム2の回転駆動中に支持部材6(ガイド溝61)から軸棒26Aが脱落しないように、すべり軸受27Aを介して軸棒26Aを固定するアクリル樹脂製の部材である。
なお、すべり軸受27Aを介して軸棒26Aを固定している時には、固定部材62は、例えば、図示しないPEEK樹脂製のネジ等で支持部材6に固定されている。
【0045】
このような固定手段を設けたことにより、すべり軸受27A,27Bを介して軸棒26A,26Bが、ドラム2の回転駆動中に支持部材6(ガイド溝61)から脱落することを防止することができる。これにより、バレルめっき装置1の運転中(ドラム2の回転駆動中)はドラム2が容易に外れたりせず安定して運転(回転)することができる。
なお、本実施形態では、軸棒26A,26Bが挿入されたすべり軸受27A,27Bを摺動させたり、固定部材62によって固定したりしているが、ドラム2が回転自在に支持されるのであれば、すべり軸受27A,27Bを設けずに、軸棒26A,26Bをガイド溝61に直接摺動させて、支持部材6に回転可能に支持される構成としてもよい。さらに、この場合、軸棒26Aは、固定部材62によって直接、回転可能に固定されることになる。
【0046】
以上がバレルめっき装置1の各部についての詳細な説明であるが、本実施形態では、ドラム2(ドラム本体20、蓋部25A,25B等)、電極シールド部品4(ハウジング42、固定板43b等)、支持部材6および固定部材62をアクリル樹脂で形成しているが、耐薬品性・耐熱性を有し、アクリル樹脂程度の硬さがあれば、他の樹脂で当該部材を形成してもよい。
【0047】
続いて、バレルめっき装置1の動作の概要について説明する(適宜図1,図2参照)。
まず、センタバー3を軸棒26Bに接続して、ドラム2の内部に被めっき物(図示せず)を収容する。ドラム2の内部に収容される被めっき物の量は、ドラム2を水平状態にした時に被めっき物とセンタバー3とが電気的に接続しつつ、ドラム2を回転させた時に被めっき物が十分撹拌される量であり、例えば、図8に示すように、ドラム2の全容積に対して、その半分の量とするのが好適である。
次に、水平状態にしたドラム2の軸棒26A,26Bが挿入されたすべり軸受27A,27Bをガイド溝61に摺動させて(図7参照)、ドラム2を支持部材6に回転可能に支持させる。そして、ドラム2の軸棒26Aに接続されたギア28を駆動機構5のギア53に噛み合わせて、ドラム2と駆動機構5とを連結させるとともに、固定部材62を取り付けてすべり軸受27Aを介して軸棒26Aを回転可能に固定する。さらに、ドラム2の軸棒26Bを電極シールド部品4の止水部43に挿入して、軸棒26Bと電極41とを電気的に接続させるとともに、軸棒26Bを回転可能に固定する。
以上のように構成されたバレルめっき装置1を、めっき液を貯留した図示しないめっき槽内に、ドラム2の全体(少なくとも収容した被めっき物とセンタバー3)が、めっき液に完全に浸漬するように設置する。その後、駆動機構5のモータ50を駆動させ、その回転をギア51,52,53および28を介してドラム2に伝達し、ドラム2を回転させる。そして、めっき槽内に配置された図示しない陽極とセンタバー3(陰極)との間を通電して、被めっき物の表面にめっき皮膜を形成させる。
【0048】
本実施形態に係るバレルめっき装置1は、以上のような構成を備えたことで、センタバー3と電極41とを電気的に接続しながら、ドラム2とセンタバー3とを一体に回転させることができるので、図8に示すように、ドラム2の内部に収容された被めっき物Pとセンタバー3との間にすきまが生じることがなくなり、高電流密度部分の発生を防止することができる。これにより、被めっき物Pの表面に形成されるめっき皮膜のこげの発生を防止することができる。
【0049】
以上が本実施形態に係るバレルめっき装置1の構造および動作の概要である。
なお、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、上記した実施形態では、センタバー3と軸棒26Bとを別個に形成して、それらを接続することで請求項に記載した導電性部材としているが、センタバー3と軸棒26Bとを一体に形成して導電性部材としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態に係るバレルめっき装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るバレルめっき装置の構成を示す正面図である。
【図3】本実施形態に係るバレルめっき装置を構成するドラムの分解斜視図である。
【図4】本実施形態に係るバレルめっき装置を構成するドラムの内部に設けられたテーパ部を説明するための断面図である。
【図5】本実施形態に係るバレルめっき装置を構成するドラムとセンタバーの取付構造および電極シールド部品の構成を説明するための部分断面図である。
【図6】本実施形態に係るバレルめっき装置を構成する電極シールド部品の分解斜視図である。
【図7】本実施形態に係るバレルめっき装置を構成する支持部材およびドラムの着脱方法・固定方法を説明するための部分斜視図である。
【図8】本実施形態に係るバレルめっき装置を運転した場合のドラムの内部の様子を表す模式図である。
【図9】従来のバレルめっき装置の構成を示す正面図である。
【図10】従来のバレルめっき装置を運転した場合のドラムの内部の様子を表す模式図である。
【符号の説明】
【0051】
1 バレルめっき装置
2 ドラム
3 センタバー
4 電極シールド部品
5 駆動機構
6 支持部材
25A,25B 蓋部
26A,26B 軸棒
41 電極
41a 電極棒
41b 導電体
41c 弾性部材
42 ハウジング
43 止水部
43a 止水シール
61 ガイド溝
62 固定部材
G 溝
T1,T2 テーパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液中に水平状態で浸漬され、被めっき物を収容する筒状のドラムと、
前記ドラムを回転可能に支持する支持部材と、
前記ドラムを回転駆動させる駆動機構と、
前記ドラムと同軸に配置され、前記ドラムと一体に回転する棒状の導電性部材と、を備えたことを特徴とするバレルめっき装置。
【請求項2】
前記導電性部材に電気的に接続される電極と、
前記電極を収容するとともに前記導電性部材の端部が挿入されるハウジングと、
前記ハウジング内への前記めっき液の浸入を防止する止水部と、から構成される電極シールド部品をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のバレルめっき装置。
【請求項3】
前記電極は、電極棒と、
前記導電性部材に電気的に接続される導電体と、
前記電極棒と前記導電体とを電気的に接続し、前記導電体を前記導電性部材に付勢する弾性部材と、から構成されることを特徴とする請求項2に記載のバレルめっき装置。
【請求項4】
前記ドラムは、前記支持部材から着脱自在であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のバレルめっき装置。
【請求項5】
前記ドラムは、内部にテーパ部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のバレルめっき装置。
【請求項6】
前記ドラムは両端に蓋部を有し、前記蓋部の内側には複数の溝が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のバレルめっき装置。
【請求項7】
前記ドラムは両端に回転軸を有し、前記回転軸は、前記支持部材に設けられた固定手段によって回転可能に固定されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のバレルめっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−291446(P2007−291446A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120392(P2006−120392)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(394016519)株式会社山本鍍金試験器 (13)