説明

バレルメッキ装置

【課題】陰極棒のそれぞれの電流の流れを把握してメッキ厚さ偏差の発生を予防するバレルメッキ装置を提供する。
【解決手段】電解液が満たされたバレルメッキ槽;前記バレルメッキ槽の前記電解液に浸漬され、チップ部品と媒体が満たされるバレル容器;前記バレル容器と前記バレルメッキ槽の前記電解液に電流を伝達する陽極部と陰極部に前記電流を供給する電源部;前記バレル容器を回転させる駆動モーター;及び前記陰極部の中で前記チップ部品と直接接触する陰極棒の内部に形成され、前記電流を測定するホール電流センサーを含んでなる。ホール電流センサーでそれぞれの陰極棒の電流を測定してメッキ厚さの偏差を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバレルメッキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、バリスタ(Varistor)、チップインダクタ(Chip Inductor)、積層セラミックキャパシター(Multi Layer Ceramic Capacitor;MLCC)のようなチップ部品を製造する工程は次のようである。
1)セラミックキャパシターの主原料と添加剤の負原料を均一に反応させて合成し、2)合成されたセラミック原料と高分子バインダー及び溶剤を混合し、3)混合されたスラリーを安定した状態で熟成させ、4)熟成されたセラミックスラリーを高分子フィルム(PET)上に一定厚さにコートし、5)成形されたテープを乾燥炉にかけて乾燥させ、6)これに、シルクスクリーン(Silk Screen)を使用して所望の容量設計値パターンに印刷して内部電極を形成し、7)印刷された内部電極のペースト形状を維持するために、セラミックシートを乾燥炉で乾燥し、8)前記セラミックシートを所望の容量値を得るために多層に積層し、9)積層された状態を維持するために、外部から高圧力で圧搾し、10)積層された状態のセラミックバーを一定の大きさのチップ状に切断し、11)切断されたセラミックチップに含まれたバインダーだけ除去するために、脱バインダーを行い、12)脱バインダーが済んだチップを高温電気炉で熱処理して塑性させ、13)塑性されたチップの鋭いエッジを研磨処理し、14)チップの内部に形成された内部電極との連結のために、チップの外部に外部電極を形成し、15)内外部の電極がターミネーションされたチップを熱処理してセラミック表面に固定させ、16)チップの外部電極に半田付け性を付与するために、チップの外面にニッケル、スズメッキを実施し、17)メッキされたチップ部品を要領偏差別(J、K、M、Z)に選別し、絶縁抵抗(IR)不良を選別した後、18)表面実装ができるように、チップ部品をテープでテーピングして包装する。
【0003】
前記のように、チップ部品を製造する工程において、ターミネーションが済んだ外部電極にはすぐ半田付けができないので、半田付けが円滑にできるように、最外側電極にニッケル(Ni)とスズ(Sn)を順次メッキすることになる。この際に使用されるメッキ法がバレルメッキである。
このようなバレルメッキは形体及び大きさの小さなチップ部品のような物品を一度に多量メッキする方法で、バレルメッキ槽に浸漬されたバレル容器が回転するにつれて物品同士接触しながら摩擦研磨され、電流の断続によって陰極棒に接触してメッキされるので、製品に相当な光沢を与えるメッキである。
【0004】
しかし、従来のようなバレルメッキ装置の場合、バレル容器の回転が長期間にわたって行われるうち、バレル容器内でチップ部品と媒体がそれぞれ偏ることにより、混入性が落ちて密度差が生じ、多数の陰極棒そのものの内部抵抗が変わって電流偏差が発生するため、メッキ偏差が発生する問題点があった。
また、チップ部品と直接接触する多数の陰極棒のいずれか一陰極棒に異常が発生したとき、これを気づくことが難しく、これを放置する場合、メッキ偏差がひどくなる問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は前記のような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、陰極棒のそれぞれの電流の流れを把握してメッキ厚さ偏差の発生を予防するバレルメッキ装置を提供することである。
本発明の他の目的は、問題が生じた陰極棒を易しく感知して陰極棒を入れ替ることができるバレルメッキ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記のような目的を達成するために、本発明の一面によれば、電解液が満たされたバレルメッキ槽;前記バレルメッキ槽の前記電解液に浸漬され、チップ部品と媒体が満たされるバレル容器;前記バレル容器と前記バレルメッキ槽の前記電解液に電流を伝達する陽極部と陰極部に前記電流を供給する電源部;前記バレル容器を回転させる駆動モーター;及び前記陰極部の中で前記チップ部品と直接接触する陰極棒の内部に形成され、前記電流を測定するホール電流センサーを含んでなる、バレルメッキ装置が提供される。
前記陰極部は、前記電源部とクランクを介して連結され、前記バレル容器の内部の軸に沿って水平に形成されたセンターバー;及び前記センターバーから垂直に伸びて前記媒体と直接接触し、内部にホール電流センサーを備えた陰極棒を含むことができる。
【0007】
前記陰極棒は、最外側に形成された陰極棒絶縁カバー;前記陰極棒絶縁カバーの内部に形成され、前記電流が流れる陰極棒銅管;前記陰極棒の端部に形成され、前記媒体及び前記チップ部品と直接接触するダングラー;及び前記陰極棒絶縁カバーの内部に形成され、前記陰極棒銅管を取り囲むように形成されたホール電流センサーを含むことができる。
前記センターバーは、最外側に形成されたセンターバー絶縁カバー;前記センターバー絶縁カバーの内部に形成され、前記電流が流れるセンターバー銅管;及び前記センターバー絶縁カバーの内部に形成され、前記ホール電流センサーと連結されるセンサー線を含むことができる。
前記陰極棒は多数であってもよい。
前記センサー線は前記センターバー銅管を貫いて形成されることができる。
前記媒体は電気伝導性の鋼鉄球であってもよい。
【0008】
本発明の特徴及び利点は添付図面に基づいた以降の詳細な説明からより明らかになるであろう。
本発明の詳細な説明に先立ち、本明細書及び請求範囲に使用された用語や単語は通常的で辞書的な意味に解釈されてはいけなく、発明者がその自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則にしたがって本発明の技術的思想にかなう意味と概念に解釈されなければならない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるバレルメッキ装置は、それぞれの陰極棒の内部にホール電流センサーを設け、ホール電流センサーによって測定された電流をセンサー線で制御部に伝達し、陰極棒のそれぞれの電流の流れを把握してメッキ厚さ偏差を予防する利点がある。
また、本発明によれば、ホール電流センサーで問題が生じた陰極棒を易しく感知して容易に入れ替ることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の好適な実施例によるバレルメッキ装置を正面から見た断面図である。
【図2】図1に示すバレルメッキ装置を側面から見た断面図である。
【図3】図1に示すバレルメッキ装置の陰極棒とセンターバーを拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の目的、特定の利点及び新規の特徴は添付図面を参照する以下の詳細な説明及び好適な実施例から一層明らかに理解可能であろう。本明細書において、各図面の構成要素に参照番号を付け加えるにあたり、同じ構成要素がたとえ他の図面に図示されていても、できるだけ同じ符号を付けることにする。また、“上部”、“下部”などの用語はある構成要素を他の構成要素と区別するために使用したもので、構成要素が前記用語に制限されるものではない。本発明の説明において、本発明の要旨を不要にあいまいにすることができる関連の公知技術についての具体的な説明は省略する。
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
図1は本発明の好適な実施例によるバレルメッキ装置100を正面から見た断面図、図2は図1に示すバレルメッキ装置100を側面から見た断面図、図3は図1に示すバレルメッキ装置100の陰極棒165とセンターバー161を拡大した断面図である。以下、これら図を参照して本実施例によるバレルメッキ装置100について説明する。
【0013】
図1〜図3に示すように、本実施例によるバレルメッキ装置100は、バレルメッキ槽110、バレル容器120、電源部130、及び駆動モーター140で構成され、陰極部160のなかで、チップ部品121と直接接触する陰極棒165の内部にホール電流センサー166が形成されたことを特徴とする。
バレルメッキ槽110はバレルメッキ装置100の他の構成要素たちを収容する部材で、内部に電解液111が満たされる。
ここで、バレルメッキ槽110は、例えば一面が開放した六面体の形状であることができる。また、バレルメッキ槽110の内部には電解液111だけでなく、バレル容器120、陽極部150などが浸漬される。バレルメッキ槽110は十分な大きさを持つことが好ましい。
【0014】
バレル容器120は内部にチップ部品121と媒体122を含んでメッキが施される空間で、バレルメッキ槽110の電解液111に浸漬される部材である。
ここで、バレル容器120は内部にチップ部品121と媒体122が収容されるので、内部空間が充分に大きな容器の形態を持つことが好ましい。また、バレル容器120には、以後に説明する陰極部160のなかでセンターバー161と陰極棒165が内部に収容され、バレルメッキ槽110の電解液111に浸漬された陽極部150と作用して、バレル容器120の内部のチップ部品121にメッキ層を形成する。
一方、バレル容器120は、以後に説明する駆動モーター140によって回転され、仕一方向にだけ回転することができる。
回転支持部123はバレル容器120の左右両端に備えられる部材で、バレル容器120の軸に相当する部分である。
【0015】
ここで、回転支持部123は、バレル容器120の左右両側に配置される固定部材の中空型ブッシング軸124を備え、前記中空型ブッシング軸124の外面にブッシュ125を備える。また、ブッシュ125はバレル容器120の左右の両側面に一体的に組み立てられ、中空ブッシング軸124の内部孔126を介してセンターバー161が挿入できる。
駆動モーター140はバレル容器120を回転させるために回転力を発生させる部材である。
ここで、駆動モーター140から発生した回転力は、駆動モーター140の駆動ギア141とバレル容器120の回転支持部123のいずれか一側に備えられた被動ギア142との噛み合いによる相互作用によってバレル容器120に伝達される。
電源部130は電流を発生して陽極部150と陰極部160に伝達する部材である。
ここで、陽極部150は電源部130に連結されてバレルメッキ槽110の電解液111に浸漬され、陰極部160は電源部130に連結されてバレル容器120の内部に電流を伝達する。
陰極部160はセンターバー161と陰極棒165を含む部材で、電源部130から(−)極を印加される。
ここで、センターバー161はクランク132を介して電源部130に連結された部材で、バレル容器120の中心軸に沿って長く形成される。具体的に、センターバー161は回転支持部123の中空型ブッシング軸124の内部孔126に水平に形成できる。
また、図3に示すように、センターバー161は、センターバー絶縁カバー162、センターバー銅管163、及びセンサー線164で構成できる。センターバー絶縁カバー162はセンターバー161の最外側に形成され、センターバー銅管163に流れる電流が外部に漏洩しないようにする。センターバー銅管163は導体でなって電流が流れることができる。また、センサー線164は陰極棒165のホール電流センサー166に連結され、センターバー銅管163の中空163aを貫くことができ、ホール電流センサー166が送る電気信号を受信し、これを外部の制御部170に伝達することができる。
【0016】
陰極棒165はセンターバー161に対して垂直にセンターバー161から伸びる部材で、バレル容器120の内部のチップ部品121または媒体122と直接接触する。陰極棒165は、陰極棒絶縁カバー167、陰極棒銅管168、ダングラー169、及びホール電流センサー166で構成できる。陰極棒銅管168はセンターバー銅管163から伝達された電流をダングラー169に流しだし、陰極棒絶縁カバー167はこれを外部から絶縁させる役目をすることができる。また、ダングラー169は陰極棒165のなかで唯一に外部に露出される導体部分で、陰極棒165の端部に形成されるものであり、陰極棒銅管168に流れる電流を媒体122またはチップ部品121に伝達する。一方、陰極棒165はセンターバー161に垂直に多数形成できる。
ホール電流センサー166は陰極棒165の内部に形成される部材で、陰極棒銅管168に流れる電流を測定する。
ここで、ホール電流センサー166は管状の永久磁石で形成できる。永久磁石のN極とS極の相互作用によって、ホール電流センサー166で電流を測定することができ、これを外部の制御部170にセンサー線164を通じて伝達して、制御部170でこれを分析することができる。
また、ホール電流センサー166は陰極棒銅管168を取り囲むように形成でき、ホール電流センサー166から出る電気的信号を増幅するための別の回路をさらに含むことができる。
【0017】
一方、ホール電流センサー166でそれぞれの陰極棒165に流れる電流を測定することによって、それぞれの陰極棒165に流れる電流の偏差が分かり、問題が生じた陰極棒165の位置が分かることになる。よって、不良が生じた陰極棒165の入れ替えが容易に行える。また、陰極棒165は電解液111に浸漬され、ホール電流センサー166は電解液111内の電流を測定することができる。また、制御部170は、ホール電流センサー166で測定した電流値をセンサー線164から受け、これをアンペア(Amphere)単位でディスプレイ装置に表示することができる。
前記のような構成を持つバレルメッキ装置100をもってメッキを実施する方法は次のようである。まず、バレル容器120の外面に備えられたドア(図示せず)を分解し、内部にチップ部品121と、例えば電気伝導性を有する鋼鉄球のような媒体122を投入する。ついで、バレル容器120をバレルメッキ槽110の電解液111に浸漬させ、駆動モーター140によってバレル容器120を回転させながら電源部130から電流を発生させる。これにより、陽極部150と陰極部160にそれぞれ電流が供給され、陰極棒165とチップ部品121が接触することにより、チップ部品121がメッキされる。この際、チップ部品121が陰極、媒体122が陽極になり、電解液111が電気分解されるにつれて電解液111中に含まれた金属イオンが分離されて陰極であるチップ部品121の表面に付着されてメッキ層が形成される。
一方、ホール電流センサー166でそれぞれの陰極棒165の電流を測定してそれぞれの陰極棒165の電流偏差を感知することで、チップ部品121のメッキ厚さの偏差を減らすことができる。また、問題が生じた陰極棒165を易しく感知して入れ替ることができる。また、それぞれの陰極棒165の電流偏差をホール電流センサー166に連結されたセンサー線164から受け、制御部170で分析し、これを別のディスプレイ装置に表示することができる。
【0018】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのもので、本発明によるバレルメッキ装置はこれに限定されなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を持った者によって多様な変形及び改良が可能であろう。本発明の単純な変形ないし変更はいずれも本発明の範疇内に属するもので、本発明の具体的な保護範囲は特許請求範囲によって明らかに決まるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、陰極棒のそれぞれの電流の流れを把握してメッキ厚さ偏差の発生を予防するバレルメッキ装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0020】
110 バレルメッキ槽
111 電解液
120 バレル容器
121 チップ部品
122 媒体
130 電源部
140 駆動モーター
150 陽極部
160 陰極部
161 センターバー
165 陰極棒
166 ホール電流センサー
170 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液が満たされたバレルメッキ槽;
前記バレルメッキ槽の前記電解液に浸漬され、チップ部品と媒体が満たされるバレル容器;
前記バレル容器と前記バレルメッキ槽の前記電解液に電流を伝達する陽極部と陰極部に前記電流を供給する電源部;
前記バレル容器を回転させる駆動モーター;及び
前記陰極部の中で前記チップ部品と直接接触する陰極棒の内部に形成され、前記電流を測定するホール電流センサー;
を含んでなることを特徴とする、バレルメッキ装置。
【請求項2】
前記陰極部は、
前記電源部とクランクを介して連結され、前記バレル容器の内部の軸に沿って水平に形成されたセンターバー;及び
前記センターバーから垂直に伸びて前記媒体と直接接触し、内部にホール電流センサーを備えた陰極棒;
を含むことを特徴とする、請求項1に記載のバレルメッキ装置。
【請求項3】
前記陰極棒は、
最外側に形成された陰極棒絶縁カバー;
前記陰極棒絶縁カバーの内部に形成され、前記電流が流れる陰極棒銅管;
前記陰極棒の端部に形成され、前記媒体及び前記チップ部品と直接接触するダングラー;及び
前記陰極棒絶縁カバーの内部に形成され、前記陰極棒銅管を取り囲むように形成されたホール電流センサー;
を含むことを特徴とする、請求項2に記載のバレルメッキ装置。
【請求項4】
前記センターバーは、
最外側に形成されたセンターバー絶縁カバー;
前記センターバー絶縁カバーの内部に形成され、前記電流が流れるセンターバー銅管;及び
前記センターバー絶縁カバーの内部に設けられ、前記ホール電流センサーと連結されるセンサー線;
を含むことを特徴とする、請求項2に記載のバレルメッキ装置。
【請求項5】
前記陰極棒は多数であることを特徴とする、請求項1に記載のバレルメッキ装置。
【請求項6】
前記センサー線は前記センターバー銅管を貫いて形成されたことを特徴とする、請求項4に記載のバレルメッキ装置。
【請求項7】
前記媒体は電気伝導性の鋼鉄球であることを特徴とする、請求項1に記載のバレルメッキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−106022(P2011−106022A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96584(P2010−96584)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)