説明

バレル研磨用洗浄剤

【課題】金属物品の湿式バレル研磨に用いられる洗浄剤であって、表面に錆や変色が発生するなどの金属表面への悪影響が十分少なく、金属物品に付着した加工油やスケール等の汚れの除去性と金属表面の平滑性や光沢を向上させる仕上げ性の双方に優れるバレル研磨用洗浄剤を提供すること。
【解決手段】本発明のバレル研磨用洗浄剤は、N−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バレル研磨用洗浄剤に関し、より詳しくは、金属物品の湿式バレル研磨に用いられるバレル研磨用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、金属物品表面の研磨、バリ取り、面取り、研掃、金属加工油やスケールなどの付着物の除去等の作業は、研磨材を用いた機械的研磨により行われている。このような機械的研磨のひとつにバレル研磨がある。
【0003】
バレル研磨は、被研磨物とメディア(すなわち研磨材)とをバレル内に投入し、バレルを振動させたり回転させたりすることによって、被研磨物とメディアとの間にあるいは被研磨物同士に相互摩擦を発生させ、被研磨物表面を研磨するものである。そして、このバレル研磨には、バレル内に水を投入する湿式バレル研磨と、水を投入しない乾式バレル研磨とがある。
【0004】
湿式バレル研磨については、被研磨物、メディア及び水に加えて界面活性剤をバレル内に添加して研磨を行う方法が提案されている。例えば、下記特許文献1には、セラミック電子部品の湿式バレル研磨において、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤、脂肪酸塩などのアニオン界面活性剤又はベタインなどの両性界面活性剤を添加することが開示されている。また、下記特許文献2には、高級脂肪酸N−メチルタウリン塩とカチオン化セルロースとを含む組成物を、セラミックスの湿式バレル研磨に用いることが開示されている。
【特許文献1】特開平5−13261号公報
【特許文献2】特開2005−305624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
界面活性剤の添加により、金属加工油やスケールなどの付着物の除去が容易になることが期待できる。しかしながら、泡立ちが多いと、湿式バレル研磨装置から泡があふれ出るといった作業上の問題や、排水処理時での負荷が大きくなったりする等の問題がある。また、本発明者らの検討によると、上記特許文献1及び2に記載の界面活性剤では、被研磨物の表面、特には金属物品表面の平滑性や光沢などの仕上げ性が不十分となる場合や、汚れの除去性の向上効果が十分に得られない場合のあることが判明した。
【0006】
更に、金属物品の湿式バレル研磨においては、研磨された金属表面が研磨中にバレル内の水や酸素等と反応し、その結果、金属酸化物や金属水酸化物(いわゆる錆)が発生し、金属表面が特有の色に変色するという問題がある。
【0007】
上記特許文献1及び2の発明では研磨対象がセラミックスであるため、上記の問題についての検討がなされていない。そのため、金属物品の湿式バレル研磨に上記特許文献1及び2に記載の界面活性剤を適用すると、金属表面の錆や変色の問題がより一層増加することがある。このような場合、多量の防錆剤を併用する必要や、研磨後に残留した界面活性剤を清浄な水で洗浄する必要が生じて、バレル研磨における経済性の低下や工程の煩雑化を招いてしまう。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、金属物品の湿式バレル研磨に用いられる洗浄剤であって、表面に錆や変色が発生するなどの金属表面への悪影響が十分少なく、金属物品に付着した加工油やスケール等の汚れの除去性と金属表面の平滑性や光沢を向上させる仕上げ性の双方に優れるバレル研磨用洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、金属物品の湿式バレル研磨に特定の界面活性剤を用いると、被研磨物の表面に悪影響を及ぼすことなく、その表面に付着した汚れを十分除去することができるとともに、平滑性や光沢を向上させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のバレル研磨用洗浄剤は、N−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤を含有する。
【0011】
本発明のバレル研磨用洗浄剤によれば、金属物品の湿式バレル研磨に洗浄剤として用いた場合に、金属物品に付着した加工油やスケール等の汚れを十分除去し、金属表面の平滑性や光沢を十分向上させることができるとともに、表面に錆や変色が発生することを十分抑制することができる。
【0012】
本発明のバレル研磨用洗浄剤が上記の効果を有する理由は定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明のバレル研磨用洗浄剤に含まれるN−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤の長鎖アシル基とカルボキシル基とが金属表面に配向し、金属表面の酸化反応を抑制する防錆効果を発揮するためと本発明者らは推察する。また、N−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤は、破泡しにくくきめ細かな泡立ちを有するため金属物品とメディア(研磨材)との相互摩擦の適度な緩衝となるために、加工油やスケール等の汚れを円滑に除去できる除去性と、金属表面のバリ取りや、丸み付け、平滑仕上げ、光沢仕上げなどの仕上げ性とを高水準で両立できたものと推察する。
【0013】
また、本発明のバレル研磨用洗浄剤によれば、N−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤が適度な起泡性を有し、生分解性にも優れるので、上記の本発明の効果を得ながらも、本発明の構成を有していない界面活性剤含有洗浄剤に比べて、排水処理時の負荷の軽減や作業環境の改善を図ることができる。
【0014】
本発明のバレル研磨用洗浄剤において、N−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤が、N−長鎖アシルグルタミン酸、N−長鎖アシルアスパラギン酸、N−長鎖アシルサルコシン、N−長鎖アシル−β−アラニン、N−長鎖アシル−N−メチル−β−アラニン及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
また、N−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤が、N−長鎖アシルグルタミン酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0016】
また、本発明のバレル研磨用洗浄剤は、ノニオン界面活性剤を更に含有することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、金属物品の湿式バレル研磨に用いられる洗浄剤であって、表面に錆や変色が発生するなどの金属表面への悪影響が十分少なく、金属物品に付着した加工油やスケール等の汚れの除去性と金属表面の平滑性や光沢を向上させる仕上げ性の双方に優れるバレル研磨用洗浄剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のバレル研磨用洗浄剤は、N−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤を含有することを特徴とする。
【0019】
N−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤としては、N−長鎖アシルグルタミン酸、N−長鎖アシルアスパラギン酸、N−長鎖アシルサルコシン、N−長鎖アシル−β−アラニン、N−長鎖アシル−N−メチル−β−アラニン及びこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましい。上記塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アルカノールアミン塩が挙げられる。
【0020】
ここで、長鎖アシル基は、炭素数が8〜36であることが好ましく、炭素数が12〜18であることが好ましい。長鎖アシル基の炭素数がこの範囲内であると、金属表面の錆や変色を十分に抑制することができ、また、金属表面の汚れの除去性、平滑性や光沢といった仕上げ性に更に優れたバレル研磨用洗浄剤が実現可能となる。
【0021】
本発明のバレル研磨用洗浄剤においては、界面活性剤の生分解性、金属表面の汚れの除去性、平滑性や光沢といった仕上げ性が特に良好となる点から、N−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤として、N−長鎖アシルグルタミン酸及びその塩から選ばれる1種以上を含有することが特に好ましい。
【0022】
本発明のバレル研磨用洗浄剤におけるN−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤の含有量は、特に制限はないが、洗浄剤全量基準で2質量%以上とすることが好ましく、5質量%以上とすることがより好ましい。N−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤の含有量が上記範囲より少ない場合は、本発明の効果が十分に発揮されないおそれがある。N−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤の含有量の上限は、特に制限されないが、バレル研磨用洗浄剤の水への希釈性を良好なものとするために、上限値を70質量%までとすることが好ましく、50質量%までとすることがより好ましい。
【0023】
また、本発明のバレル研磨用洗浄剤は、上記N−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤に加えて、ノニオン界面活性剤を更に含有することが好ましい。ノニオン界面活性剤を併用することにより、金属物品に付着した加工油やスケール等の汚れの除去性、及び、除去した汚れの金属物品への再付着を抑制する再付着防止性を更に向上させることができる。また、ノニオン界面活性剤を併用することにより、平滑性や光沢といった金属物品の仕上がりを更に向上させることができる。
【0024】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、グリコール類やアルコールのアルキレンオキサイド付加物及びそれらのエステル化物、脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物、アミン類又はアミド類のアルキレンオキサイド付加物及びそれらのエステル化物、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミドが好適なものとして挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
上記のノニオン界面活性剤のなかでも、汚れの除去性と再付着防止性が良好となるという観点からは、グリコール類やアルコールのアルキレンオキサイド付加物及びそれらのエステル化物を用いることが好ましく、金属物品の仕上げ性や防錆効果の観点からは、脂肪酸アルカノールアミドを用いることが好ましい。
【0026】
グリコール類やアルコールのアルキレンオキサイド付加物及びそれらのエステル化物としては、下記一般式(1)で表される化合物がより好ましい。
O(AO) …(1)
なお、式(1)中、Rは、水素原子又は炭素数が1〜24の飽和若しくは不飽和の炭化水素基を示し、Rは、水素原子又は炭素数が2〜24のアシル基を示し、Aは炭素数が2〜4のアルキレン基を示し、nは1〜50、より好ましくは1〜20の整数(ただし、R及びRがともに水素原子の場合にはnは5〜50の整数)を示す。1分子中にAが複数存在する場合には、Aは同一でも異なっていてもよく、共重合体である場合にはブロック共重合体であってもランダム共重合体であってもよい。
【0027】
また、脂肪酸アルカノールアミドとしては、炭素数8〜36の飽和若しくは不飽和の脂肪酸のモノアルカノールアミド又はジアルカノールアミドが好ましく、ジエタノールアミドが特に好ましい。
【0028】
本発明のバレル研磨用洗浄剤において、N−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤に加えて上記ノニオン界面活性剤を併用する場合には、N−長鎖アシルアミノ酸型界面活性1質量部に対してノニオン界面活性剤1〜3質量部となるような配合比で使用することが好ましい。
【0029】
また、本発明のバレル研磨用洗浄剤には、上述した成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知のアニオン界面活性剤を配合することができる。アニオン界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪酸塩などのカルボン酸塩型;アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジエステルなどの硫酸塩型;高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化オレフィンなどの硫酸エステル塩型;高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩などのリン酸エステル塩型のアニオン界面活性剤が挙げられる。
【0030】
また、本発明のバレル研磨用洗浄剤には、必要に応じて金属加工薬剤に使用される成分、例えば、防錆剤、消泡剤、腐食防止剤、潤滑剤等の成分を適宜配合することができる。
【0031】
本発明のバレル研磨用洗浄剤は、被研磨物、メディア及び水とともにバレル装置内に添加して用いられる。
【0032】
被研磨物としては、鉄、アルミニウム、亜鉛、銅などの金属や、真鍮、ステンレスなどの合金を素材とする金属物品が挙げられる。本発明のバレル研磨用洗浄剤は、鋳造品、ダイカスト品、焼結品の湿式バレル研磨に特に好適である。
【0033】
メディアとしては、例えば、アルミナ微粒子などのセラミックメディア、金属メディア、プラスチックメディア、植物系メディア等が挙げられる。
【0034】
本発明のバレル研磨洗浄剤を適用できるバレル装置としては、湿式のものであれば特に制限されず、例えば、回転バレル装置、振動バレル装置、流動バレル装置、遠心バレル装置等が挙げられる。
【0035】
本発明のバレル研磨用洗浄剤の添加量は、金属物品表面に付着した加工油やスケール等の汚れの種類や量、要求される効果に応じて適宜調整することができ、例えば、バレル内においてN−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤の濃度が、水及びバレル研磨用洗浄剤の合計を基準として0.05〜5.0質量%となるように添加することが好ましい。
【0036】
本発明のバレル研磨用洗浄剤は、金属物品の湿式バレル研磨に際してバレル内に添加されることによって、金属物品表面に錆や変色等の悪影響を及ぼすことなく、金属物品に付着した加工油やスケール等の汚れを除去でき、金属物品の平滑性や光沢などの仕上げ性を向上させることができる。
【0037】
また、金属物品のバレル研磨に本発明のバレル研磨用洗浄剤を適用した場合、バレル研磨後の金属物品を清浄な水によって再洗浄する必要がなく、研磨工程を簡略化することができる。再洗浄工程を省略できることは、金属物品表面の防錆の観点からも好ましい。
【0038】
また、バレル装置自身の素材は金属であることが多いが、本発明のバレル研磨用洗浄剤によれば、バレルの錆の発生等の悪影響をも抑制することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
<バレル研磨用洗浄剤の調製>
(実施例1)
N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン塩30gと水70gとを均一に混合し、バレル研磨用洗浄剤を得た。
【0041】
(実施例2)
N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム塩30gと水70gとを均一に混合し、バレル研磨用洗浄剤を得た。
【0042】
(実施例3)
N−ステアロイル−L−グルタミン酸カリウム塩30gと水70gとを均一に混合し、バレル研磨用洗浄剤を得た。
【0043】
(実施例4)
N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン塩10g、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル20g及び水70gを均一に混合し、バレル研磨用洗浄剤を得た。
【0044】
(実施例5)
N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン塩10g、オレイン酸ジエタノールアミド(1:1モル型)20g及び水70gを均一に混合し、バレル研磨用洗浄剤を得た。
【0045】
(実施例6)
N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン塩10gと、オレイン酸ジエタノールアミド(1:1モル型)10g、炭素数12〜14の第一級アルコールのエチレンオキサイド4モル付加物10g及び水70gを均一に混合し、バレル研磨用洗浄剤を得た。
【0046】
(比較例1)
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル30gと水70gを均一に混合し、バレル研磨用洗浄剤を得た。
【0047】
(比較例2)
オレイン酸ジエタノールアミド(1:1モル型)30gと水70gを均一に混合し、バレル研磨用洗浄剤を得た。
【0048】
(比較例3)
炭素数12〜14の第一級アルコールのエチレンオキサイド4モル付加物30gと水70gを均一に混合し、バレル研磨用洗浄剤を得た。
【0049】
(比較例4)
ヤシ脂肪酸N−メチルタウリンナトリウム塩10gと水90gとを均一に混合し、バレル研磨用洗浄剤を得た。
【0050】
(比較例5)
ポリオキシエチレン(10モル)ソルビタンオレイン酸モノエステル10gと水90gとを均一に混合し、バレル研磨用洗浄剤を得た。
【0051】
(比較例6)
ラウリルジメチルアミンオキサイド10gと水90gとを均一に混合し、バレル研磨用洗浄剤を得た。
【0052】
<バレル研磨用洗浄剤の評価>
実施例及び比較例で得られたバレル研磨用洗浄剤について、下記の方法にしたがって、バレル研磨用洗浄剤の起泡性、金属物品に付着した汚れの除去性及び再付着防止性、金属表面の光沢及び平滑性、並びに、金属の防錆性を評価した。なお、「水で100倍に希釈したバレル研磨用洗浄剤」とは、バレル研磨用洗浄剤1質量部に対して水99質量部を混合したものをいう。
【0053】
(1)バレル研磨用洗浄剤の起泡性
水で100倍に希釈したバレル研磨用洗浄剤50mLを、100mLのメスシリンダーに入れ、上下に50回激しく振とうした後に静置し、5分後の泡の高さ(mm)を測定した。
【0054】
(2)汚れの除去性及び再付着防止性
水で100倍に希釈したバレル研磨用洗浄剤100gに金属加工油「コスモクリーンプレスAK620」(コスモ石油ルブリカンツ(株)製、商品名)1gを混合した。清浄なSPCC−SB鋼板(縦50mm×横25mm×厚さ1mm)をピンセットで持ち上げ、上記の混合液の中に浸漬したまま左右に10回揺動させ、次いで、流水で30秒間水洗した。
【0055】
この操作を1回の処理とし、これを5回繰り返した。処理後のSPCC−SB剛板において、金属加工油が付着している面積比率(%)を観測した。金属加工油が付着している面積が少ないほど、汚れの除去性及び再付着防止性が良好であると評価する。
【0056】
(3)金属表面の光沢
水で100倍に希釈したバレル研磨用洗浄剤100g、超弾力鋼板(縦50mm×横25mm×厚さ3mm)1枚及びセラミックメディア(φ1mm)200gを250mLのポリ容器に入れ、振とう機「ペイントコンディショナー」(レッドデビル社製、商品名)で30分振とうした後に、鋼板を取り出して105℃で30分間乾燥した。乾燥後の鋼板の光沢を60°光沢度計(MINOLTA社製、CHROMA METER CR−200)で測定した。なお、測定値が高いほど光沢が良好であり、この評価において光沢が良好であるほど表面の平滑性が良好である。
【0057】
(4)金属表面の平滑性
(3)と同様の操作で得た鋼板の表面粗さ(十点平均粗さR(μm))を「フォームタリサーフS3C」(テーラーホブソン(株)製、商品名)を用いて、JIS B 0601(1994)に従って測定した。なお、R(μm)が小さいほど平滑性が良好である。
【0058】
(5)金属の防錆性
水で100倍に希釈したバレル研磨用洗浄剤100gに、清浄なSPCC−SB鋼板(縦50mm×横25mm×厚さ1mm)を浸漬し、45℃で1日間放置した。その後、鋼板を取り出して、表面の錆の発生を目視にて観測し、以下の3段階に評価した。錆の発生がないほど防錆性に優れている。
「○」:鋼板に錆の発生が全く見られない。
「△」:鋼板に錆の発生が一部見られる。
「×」:鋼板の全面に錆が発生している。
【0059】
【表1】



【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のバレル研磨用洗浄剤は、自動車部品、OA機器部品、家電部品、通信機器部品、精密機械部品等の金属部品の湿式バレル研磨に適用可能であり、湿式バレル装置に使用されている素材や金属部品表面に悪影響を与えることなく、金属部品に付着した汚れを除去し、金属表面の平滑性と光沢を向上させることができる。また、本発明のバレル研磨用洗浄剤は、防錆性に優れているので、防錆剤の併用や金属物品を研磨した後の水による再洗浄を特に必要とせず、研磨工程を簡略化することができる。
【0061】
さらに、本発明のバレル研磨用洗浄剤は、生分解性の高いN−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤を主成分とするので、排水処理時の環境負荷の軽減や作業環境の改善を図ることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤を含有する、バレル研磨用洗浄剤。
【請求項2】
前記N−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤が、N−長鎖アシルグルタミン酸、N−長鎖アシルアスパラギン酸、N−長鎖アシルサルコシン、N−長鎖アシル−β−アラニン、N−長鎖アシル−N−メチル−β−アラニン及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のバレル研磨用洗浄剤。
【請求項3】
前記N−長鎖アシルアミノ酸型界面活性剤が、N−長鎖アシルグルタミン酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のバレル研磨用洗浄剤。
【請求項4】
ノニオン界面活性剤を更に含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバレル研磨用洗浄剤。


【公開番号】特開2009−291890(P2009−291890A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148417(P2008−148417)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】