説明

バンパリインホース及び車両用バンパ装置

【課題】部品点数の増大を抑制しつつ、車両の意匠に対する汎用性に優れ、且つ、十分な曲げ剛性を確保することができるバンパリインホース及び車両用バンパ装置を提供する。
【解決手段】バンパリインホース16は、アルミニウム合金の押出材からなり、車両幅方向に延在する。バンパリインホース16は、断面形状において、上下方向に延在する本体壁部21と、該本体壁部21の上端及び下端から車両後側にそれぞれ突出する上壁部22及び下壁部23と、上壁部22の車両後側端及び下壁部23の車両後側端から互いの対向する上下方向にそれぞれ突出するフランジ24とを一体的に備える。上壁部22及び下壁部23の車両幅方向端部には、車両後側への突出長が車両幅方向先端に向かって漸減する徐変部22b,23bがそれぞれ形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両に搭載されるバンパリインホース及び車両用バンパ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、こうしたバンパリインホースとしては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。図7(a)(b)に示すように、このバンパリインホース91は、車両の幅方向に延びる押出材からなるバンパリインホース本体92の車体側に曲げ加工された両端部を斜めに切り落とすとともに、切断面に前面側から溝型の補強部材93を接合してなる。これにより、バンパリインホース本体92の両端部を過剰に曲げ加工しなくても、車両の意匠性に対応した斜面を得ることができる。また、バンパリインホース本体92の両端部の一部切除に伴う強度等の低下は、補強部材93により補償されることで、例えば斜め方向からの車両衝突時においても一定の耐衝撃性を発揮することができる。
【0003】
一方、特許文献2に記載されたバンパリインホースは、プレス加工等により一体的に構成されたもので、フルラップ衝突(いわゆる正面衝突)時に乗員に加わる衝撃を低減すべく、その車両幅方向両端部から中央部にかけて断面幅が徐々に小さくされている。これにより、乗員に加わる衝撃を大きくすることなく、衝撃エネルギーをより多く吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−151095号公報
【特許文献2】特開平11−222547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のバンパリインホース91では、バンパリインホース本体92の切断面に、溶接又は機械的接合にて所要の強度を有する補強部材93を接合する必要があり、部品点数及び製造工数が増大してコストの増大を余儀なくされる。
【0006】
一方、特許文献2のバンパリインホースでは、車両幅方向中央部に1点集中荷重が加わるいわゆるポール衝突の際に、断面幅が最小であることで当該中央部に容易に折れ(いわゆるカモメ折れ)が発生する可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、部品点数の増大を抑制しつつ、車両の意匠に対する汎用性に優れ、且つ、十分な曲げ剛性を確保することができるバンパリインホース及び車両用バンパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、アルミニウム合金の押出材からなり、車両幅方向に延在するとともに両端部において車両前後方向に延びる一対の結合部材に結合されるバンパリインホースにおいて、断面形状において、上下方向に延在する本体壁部と、該本体壁部の上端及び下端から車両前後方向内側にそれぞれ突出する上壁部及び下壁部と、前記上壁部の車両前後方向内側端及び前記下壁部の車両前後方向内側端から互いの対向する上下方向にそれぞれ突出するフランジとを一体的に備え、前記上壁部及び前記下壁部の少なくとも車両幅方向端部には、車両前後方向内側への突出長が車両幅方向先端に向かって漸減する徐変部がそれぞれ形成されていることを要旨とする。
【0009】
同構成によれば、前記徐変部により前記上壁部及び前記下壁部の少なくとも車両幅方向端部の車両前後方向内側への突出長が車両幅方向先端に向かって漸減されることで、バンパリインホースの車両幅方向端部をより小型化することができ、ひいては車両の意匠に対する汎用性を向上することができる。一方、バンパリインホースの両端支持梁構造として脆弱な車両幅方向中央部は、前記上壁部及び前記下壁部の車両前後方向内側への突出長が最大になることで十分な曲げ剛性を確保することができ、例えばポール衝突時の折れを抑制することができる。特に、バンパリインホースは、前記本体壁部、前記上壁部、前記下壁部及び前記両フランジを一体的に備えて構成されるため、部品点数の増大を抑制することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のバンパリインホースにおいて、前記各フランジの上下方向への突出長は、前記徐変部の車両前後方向内側への突出長が短くなるほど長くなるように設定されていることを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、バンパリインホースの車両幅方向端部における断面形状は、前記徐変部の車両前後方向内側への突出長が短くなるほど、前記各フランジの上下方向への突出長が長くなって、即ち前記両フランジの上下方向で対向する先端間の距離が短くなって、いわゆる閉断面形状に近くなる。従って、バンパリインホースの車両幅方向端部の曲げ剛性は、前記徐変部による漸減が前記両フランジによる漸増で補完されることで、車両の意匠に対する汎用性を向上しながらも、その強度低下を抑えることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のバンパリインホースにおいて、前記本体壁部の上下方向中央部に車両前後方向内側に向かって凹設され、車両幅方向全長に亘って延在する第1ビードと、前記第1ビードの上側及び下側で前記本体壁部にそれぞれ車両前後方向内側に向かって凹設され、車両幅方向全長に亘って延在する第2ビードとを備えたことを要旨とする。
【0013】
同構成によれば、前記第1ビード及び前記第2ビードにより、前記本体壁部の曲げ剛性を向上することができる。また、前記第2ビードにより、車両衝突時に前記上壁部及び前記下壁部が前記本体壁部との接続部位を支点に上下方向に開こうとするいわゆる断面開きを抑制でき、バンパリインホースの強度低下を抑えることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、車両幅方向に延在するとともに両端部において車両前後方向に延びる一対の結合部材に結合されるバンパリインホースにおいて、アルミニウム合金材が押出成形され、断面形状において、上下方向に延在する本体壁部と、該本体壁部の上端及び下端から車両前後方向内側にそれぞれ突出する上壁部及び下壁部と、前記上壁部の車両前後方向内側端及び前記下壁部の車両前後方向内側端から互いの対向する上下方向にそれぞれ突出するフランジとを一体的に備え、少なくとも車両幅方向端部において、前記上壁部及び前記フランジのなす角部並びに前記下壁部及び前記フランジのなす角部がプレス成形されて、前記上壁部及び前記下壁部の車両前後方向内側への突出長が車両幅方向先端に向かって漸減されるとともに、前記上壁部及び前記下壁部の前記突出長の漸減に伴って前記各フランジの上下方向への突出長が漸増されていることを要旨とする。
【0015】
同構成によれば、前記上壁部及び前記下壁部の少なくとも車両幅方向端部の車両前後方向内側への突出長が車両幅方向先端に向かって漸減されることで、バンパリインホースの車両幅方向端部をより小型化することができ、ひいては車両の意匠に対する汎用性を向上することができる。一方、バンパリインホースの両端支持梁構造として脆弱な車両幅方向中央部は、前記上壁部及び前記下壁部の車両前後方向内側への突出長が最大になることで十分な曲げ剛性を確保することができ、例えばポール衝突時の折れを抑制することができる。また、バンパリインホースの車両幅方向端部における断面形状は、前記上壁部及び前記下壁部の車両前後方向内側への突出長が短くなるほど、前記各フランジの上下方向への突出長が長くなって、即ち前記両フランジの上下方向で対向する先端間の距離が短くなって、いわゆる閉断面形状に近くなる。従って、バンパリインホースの車両幅方向端部の曲げ剛性は、前記上壁部及び前記下壁部の前記突出長の漸減に伴う漸減が前記両フランジの前記突出長の漸増に伴う漸増で補完されることで、車両の意匠に対する汎用性を向上しながらも、その強度低下を抑えることができる。特に、バンパリインホースは、前記本体壁部、前記上壁部、前記下壁部及び前記両フランジを一体的に備えて構成されるため、部品点数の増大を抑制することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のバンパリインホースと、前記一対の結合部材とを備えた車両用バンパ装置であることを要旨とする。
同構成によれば、部品点数の増大を抑制しつつ、車両の意匠に対する汎用性に優れ、且つ、十分な曲げ剛性を確保することができる車両用バンパ装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、部品点数の増大を抑制しつつ、車両の意匠に対する汎用性に優れ、且つ、十分な曲げ剛性を確保することができるバンパリインホース及び車両用バンパ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す斜視図。
【図2】(a)(b)は、図3のA−A線及びB−B線に沿った断面図。
【図3】同実施形態を示す平面図。
【図4】同実施形態の製造方法を示す断面図。
【図5】(a)(b)は、本発明の第2の実施形態を示す断面図。
【図6】(a)〜(d)は、同実施形態の製造方法を示す模式図。
【図7】(a)(b)は、従来例を示す正面図及び平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図3は、自動車などの車両のフロント部分に適用される本実施形態に係る車両用バンパ装置を示す平面図である。同図に示されるように、車両幅方向両側には、例えば金属板からなり、断面略四角形の中空構造を有して車両前後方向に延びる一対のサイドメンバ11が配設されている。これらサイドメンバ11は、ボデーの一部を構成する。なお、各サイドメンバ11の前端には、該サイドメンバ11の開口部を閉塞する態様で、例えば金属板からなる略四角形のブラケット12が溶接にて固着されている。
【0020】
各ブラケット12の前面には、例えばアルミニウム合金の押出材からなり、断面略四角形の中空構造を有して車両前後方向に延びる結合部材としてのクラッシュボックス13が取着されている。このクラッシュボックス13は、前後方向の中心線が前記サイドメンバ11の前後方向の中心線と一致するように配置されており、その後端に固着されたブラケット14において、前記ブラケット12にボルト及びナット(図示略)にて締結されている。一対のクラッシュボックス13は、例えば車両衝突時の荷重を軸線方向の塑性変形で吸収して衝撃エネルギーを吸収する。
【0021】
各クラッシュボックス13の前端には、該クラッシュボックス13の開口部を閉塞する態様で、例えば金属板からなるプレート15が固着されるとともに、該プレート15には、車両幅方向に延在するバンパリインホース16の各端部が結合されている。このバンパリインホース16は、アルミニウム合金の押出材からなり、車両幅方向に直線状に延びる直線部17を有するとともに、該直線部17の各先端に連続して車両幅方向外側に向かうに従い車両後側に向かうように傾斜された傾斜部18を有する。直線部17及び傾斜部18の境界位置が車両幅方向で対称に配置されることはいうまでもない。各傾斜部18は、クラッシュボックス13の車両前側に対向配置されており、そのボデー側となる車両後側(車両前後方向内側)面の傾斜角度は、これに当接するプレート15の前側面の傾斜角度に合致するように設定されている。従って、バンパリインホース16の端部及びクラッシュボックス13は、これら傾斜部18及びプレート15の当接位置で結合されている。
【0022】
図1は、バンパリインホース16を示す斜視図であり、図2(a)(b)は、図3のA−A線及びB−B線に沿った断面図である。図2に示されるように、本実施形態のバンパリインホース16は、断面形状において、上下方向に延在する本体壁部21と、該本体壁部21の上端及び下端から車両後側(車両前後方向内側)にそれぞれ突出する上壁部22及び下壁部23と、上壁部22の車両後側端及び下壁部23の車両後側端から互いの対向する上下方向にそれぞれ突出するフランジ24とを一体的に備える。つまり、バンパリインホース16の断面は、略C字のいわゆる開き断面の形状を呈する。
【0023】
本体壁部21は、車両幅方向全長に亘って略一定断面形状を有しており、その上下方向中央部に車両後側に向かって凹設された略U字状の第1ビード26を有するとともに、該第1ビード26上側及び下側で車両後側に向かって凹設された略U字状の一対の第2ビード27を有する。これら第1及び第2ビード26,27がバンパリインホース16(本体壁部21)の車両幅方向全長に亘って延在することはいうまでもない(図1参照)。第1及び第2ビード26,27は、本体壁部21の曲げ剛性を増加するためのものである。特に、両第2ビード27は、車両衝突時に上壁部22及び下壁部23が本体壁部21との接続部位を支点に上下方向に開こうとするいわゆる断面開きを抑制する。
【0024】
上壁部22及び下壁部23は、直線部17において、車両後側への突出長が一定となる壁部22a,23aを形成する。また、上壁部22及び下壁部23は、傾斜部18において、車両後側への突出長が車両幅方向先端に向かって漸減する徐変部22b,23bを形成する。
【0025】
各フランジ24は、直線部17において、上下方向への突出長が一定となるフランジ部24aを形成する。また、各フランジ24は、傾斜部18において、上下方向へのへの突出長が車両幅方向先端に向かって漸増するフランジ部24bを形成する。つまり、フランジ部24bの上下方向への突出長は、徐変部22b,23bの車両後側への突出長が短くなるほど長くなるように設定されている。
【0026】
以上により、バンパリインホース16は、直線部17において、車両前後方向に最も太くなる略一定断面形状を有する。また、バンパリインホース16は、傾斜部18において、車両幅方向先端に向かうに従い車両前後方向に徐々に細くなっている。
【0027】
各フランジ部24bには、クラッシュボックス13の車両前側に対向して、ボルト挿通孔24cが形成されている。バンパリインホース16は、プレート15ともども各ボルト挿通孔24cに挿通されるボルト(図示略)のねじ軸がナットに螺合することでプレート15(クラッシュボックス13)に締結される。
【0028】
なお、バンパリインホース16は、本体壁部21及び上壁部22の接続部位、並びに本体壁部21及び下壁部23の接続部位に、互いの相反する上下方向にそれぞれ突出する筋状の突片28を一体的に備える。各突片28は、バンパリインホース16の車両幅方向全長に亘って延在する。つまり、これら突片28は、上壁部22及び下壁部23の各々のフランジ24の突出方向とは反対の上下方向に突出している。これら突片28は、上壁部22及び下壁部23の前記断面開きを抑制するためのものである。特に、両フランジ24は、互いの対向する上下方向、即ち断面開きの方向に相反する方向にそれぞれ突出する、いわゆる内向きフランジであることで、前記断面開きがより一層抑制される。
【0029】
次に、本実施形態の動作について説明する。車両の衝突等により前方から衝撃が加えられると、この衝撃は、バンパリインホース16及び両クラッシュボックス13を介して両サイドメンバ11(ボデー)に伝達される。このとき、バンパリインホース16とともに各クラッシュボックス13が塑性変形することで、ボデー及び乗員へと伝達される衝撃を緩衝する。
【0030】
この際、バンパリインホース16には、フランジ24(内向きフランジ)、第2ビード27及び突片28が配設されていることで、これらの協働で前記断面開きが抑制される。一方、第1及び第2ビード26,27により本体壁部21の曲げ剛性が増加されている。さらに、バンパリインホース16は、両フランジ24でクラッシュボックス13(プレート15)に締結されることで、例えば本体壁部21で締結される場合に比べてその曲げ剛性が増加されている。以上により、バンパリインホース16は、車両衝突時の強度低下が抑制されて荷重を十分に受けることができ、衝撃エネルギーをより確実に吸収することができる。
【0031】
次に、バンパリインホース16の製造方法の概要について説明する。図4に示されるように、押出成形された当初の形状をなすバンパリインホース16の素材Wは、車両幅方向全長に亘って直線部17に一致する断面形状(略C字の断面形状)を有する棒材である。すなわち、素材Wは、前記壁部22a,23aと同様の断面形状を有する上壁部U及び下壁部Lと、前記各フランジ部24aと同様の断面形状を有するフランジF等を一体的に備える。
【0032】
その後、プレス加工において、素材W内に傾斜部18の内壁面に応じた外壁面を有する金型K1を装着するとともに、フランジFの外側からその板厚方向に傾斜部18の車両後側の外壁面に応じた外壁面を有する金型K2を押し付ける。これにより、上壁部U及びフランジFのなす角部並びに下壁部L及びフランジFのなす角部がプレス成形される。そして、上壁部U及び下壁部Lの突出長が短縮されて前記徐変部22b,23bが形成されるとともに、上壁部U及び下壁部Lの短縮分だけ各フランジFが伸長されてフランジ部24bが形成される。なお、各フランジ部24bは、プレート15(クラッシュボックス13)の結合位置よりも車両幅方向外側の範囲が切除されている(図1参照)。これは、前記したプレス加工後に、バンパリインホース16(素材W)内の金型K1を車両幅方向外側から円滑に抜き取るためである。
【0033】
そして、直線部17及び傾斜部18を区画する曲げ加工等がなされて、バンパリインホース16が完成する。この曲げ加工は、前記したプレス加工の工程に併せて行ってもよいし、別の工程で行ってもよい。
【0034】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、徐変部22b,23bにより上壁部22及び下壁部23の車両幅方向端部(傾斜部18)の車両後側への突出長が車両幅方向先端に向かって漸減されることで、バンパリインホース16の車両幅方向端部をより小型化することができ、ひいては車両の意匠に対する汎用性を向上することができる。また、徐変部22b,23bは、それ自身の塑性変形(即ち上壁部22及び下壁部23の圧縮による座屈変形)によって形成されたものでないため、小型化されながらも形状に応じた強度を維持することができる。これにより、例えば車両のオフセット衝突時であっても、傾斜部18において荷重を好適に支えることができる。一方、バンパリインホース16の両端支持梁構造として脆弱な車両幅方向中央部(直線部17)は、上壁部22及び下壁部23の車両後側への突出長が最大になることで十分な曲げ剛性を確保することができ、例えばポール衝突時の折れを抑制することができる。換言すれば、一定の断面形状のままのバンパリインホースにように、車両の意匠に合わせてバンパリインホースを小型化し、且つ、必要な強度を得るためにバンパリインホースの板厚の厚肉化・アルミニウム合金材の材料強度増加を図るといった対策が不要とされる。これにより、徒なバンパリインホース16の質量増加、材料消費量増加とこれに伴うコストの増大を抑制できる。特に、バンパリインホース16は、本体壁部21、上壁部22、下壁部23及び両フランジ24を一体的に備えて構成されるため、部品点数の増大を抑制することができる。
【0035】
(2)本実施形態では、バンパリインホース16の車両幅方向端部における断面形状は、徐変部22b,23bの車両後側への突出長が短くなるほど、各フランジ24(フランジ部24b)の上下方向への突出長が長くなって、即ち両フランジ24の上下方向で対向する先端間の距離が短くなって、いわゆる閉断面形状に近くなる。従って、バンパリインホース16の車両幅方向端部の曲げ剛性は、徐変部22b,23bによる漸減が両フランジ24による漸増で補完されることで、車両の意匠に対する汎用性を向上しながらも、その強度低下を抑えることができる。
【0036】
(3)本実施形態では、第1及び第2ビード26,27により、本体壁部21の曲げ剛性を向上することができる。また、第2ビード27により、車両衝突時における上壁部22及び下壁部23の断面開きを抑制でき、バンパリインホース16の強度低下を抑えることができる。
【0037】
(4)本実施形態では、プレス加工による徐変部22b,23bの形成に合わせて、フランジ部24bを形成することができる。
(5)本実施形態では、上壁部22及び下壁部23と本体壁部21との接続部位に突片28を形成したことで、車両衝突時における上壁部22及び下壁部23の断面開きを抑制できる。加えて、両フランジ24は、互いの対向する上下方向、即ち断面開きの方向に相反する方向にそれぞれ突出する内向きフランジであることで、前記断面開きをより一層抑制できる。
【0038】
(6)本実施形態では、バンパリインホース16は、両フランジ24(フランジ部24b)において各クラッシュボックス13(プレート15)に締結されることで、例えば車両衝突時の荷重を略箱形の断面形状で受けることができ、本体壁部21において締結される場合に比べてバンパリインホース16の曲げ剛性を増加することができる。
【0039】
(7)本実施形態では、両フランジ24は内向きフランジであることで、例えばこれら両フランジ24がラジエータへの空気の流れを阻害することがなく、冷却性能の悪化を回避することができる。
【0040】
(8)本実施形態では、特殊な工法を使用することなく、汎用の工法(押出加工、プレス加工等)を組み合わせるのみでバンパリインホース16を製造することができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。なお、第2の実施形態は、前記第1の実施形態におけるバンパリインホースの主に製造方法を変更した構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明は省略する。
【0041】
図5(a)(b)は、図2(a)(b)に相当する本実施形態のバンパリインホース40の断面図である。同図に示されるように、このバンパリインホース40の本体壁部41には、第2ビード27が割愛されている。そして、本体壁部41の上端及び下端から車両後側にそれぞれ突出する上壁部42及び下壁部43は、前記第1の実施形態と同様、直線部17において、車両後側への突出長が一定となる壁部42a,43aを形成するとともに、傾斜部18において、車両後側への突出長が車両幅方向先端に向かって漸減する徐変部42b,43bを形成する。また、上壁部42の車両後側端及び下壁部43の車両後側端から互いの対向する上下方向にそれぞれ突出するフランジ44は、車両幅方向全長に亘って上下方向への突出長が一定に設定されている。
【0042】
次に、バンパリインホース40の製造方法の概要について説明する。
図6(a)に示すように、押出成形された当初の形状をなすアルミニウム合金からなるバンパリインホース40の素材(押出材)W1は、断面形状において、前記本体壁部41と、該本体壁部41の上端及び下端から車両後側にそれぞれ突出する上側壁部U1及び下側壁部L1とを一体的に備える。つまり、素材W1は、車両幅方向全長に亘って略U字のいわゆる開き断面形状を有する棒材である。
【0043】
その後、プレス加工において、図6(b)に示すように、上側壁部U1及び下側壁部L1の車両幅方向端部が切断線CLに沿って切断されて、当該車両幅方向端部において上側壁部U1及び下側壁部L1の車両後側への突出長が車両幅方向先端に向かって漸減される。
【0044】
続いて、プレス加工において、上側壁部U1及び下側壁部L1の車両後側端の外形に沿う当該外形に平行なフランジ曲げ線BLに沿って、図6(c)に示すように、上側壁部U1及び下側壁部L1を互いの対向する上下方向に曲げ成形する。これにより、上側壁部U1及び下側壁部L1から、上壁部42(壁部42a、徐変部42b)、下壁部43(壁部43a、徐変部43b)、及び両フランジ44が形成される。
【0045】
その後、曲げ加工において、図6(d)に示すように、壁部42a,43a及び徐変部42b,43bの境界位置で素材W1が曲成されることで、直線部17及び傾斜部18が形成されて、バンパリインホース40が完成する。
【0046】
以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)(6)〜(8)の効果に加えて以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、素材W1(押出材)の断面形状が簡易な分、押出工程の工数を低減することができる。
【0047】
(2)本実施形態では、プレス加工により、上側壁部U1及び下側壁部L1から、上壁部42(壁部42a、徐変部42b)、下壁部43(壁部43a、徐変部43b)、及び両フランジ44を同時に形成することができる。
【0048】
(3)本実施形態では、第1ビード26により、本体壁部21の曲げ剛性を向上することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0049】
・前記各実施形態において、徐変部22b,23b,42b,43bは、バンパリインホース16,40の傾斜部18の範囲に合わせて形成する必要はない。例えば徐変部22b,23b,42b,43bは、バンパリインホース16,40(上壁部22,42及び下壁部23,43)の車両幅方向中心に対しその両側に全長に亘って形成されていてもよい。
【0050】
・前記各実施形態において、本体壁部21,41は、断面形状において上下方向に延在するのであれば、例えば弓形状や山形状に曲成されていてもよい。
・前記各実施形態において、クラッシュボックス13(プレート15)は、上下方向に対向配置された両フランジ24,44間に挿入される態様で本体壁部21,41に結合されていてもよい。
【0051】
・前記各実施形態において、クラッシュボックス13を割愛して、バンパリインホース16をサイドメンバ11に直結してもよい。
・本発明は、車両のリヤ部分に適用してもよい。
【0052】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
・車両幅方向に延在するとともに両端部において車両前後方向に延びる一対の結合部材に結合されるバンパリインホースにおいて、
断面形状において、上下方向に延在する本体壁部と、該本体壁部の上端及び下端から車両前後方向内側にそれぞれ突出する上側壁部及び下側壁部とを一体的に備えるアルミニウム合金からなる押出材に対し、
少なくとも車両幅方向端部において、前記上側壁部及び前記下側壁部がプレス加工により切断されて、前記上側壁部及び前記下側壁部の車両前後方向内側への突出長が車両幅方向先端に向かって漸減され、
前記上側壁部及び前記下側壁部の車両前後方向内側端の外形に沿って前記上側壁部及び前記下側壁部が互いの対向する上下方向にプレス加工により曲げ成形されて、前記本体壁部の上端及び下端から車両前後方向内側にそれぞれ突出する上壁部及び下壁部と、前記上壁部の車両前後方向内側端及び前記下壁部の車両前後方向内側端から互いの対向する上下方向にそれぞれ突出するフランジとが形成されていることを特徴とするバンパリインホース。同構成によれば、少なくとも車両幅方向端部において、車両前後方向内側への突出長が車両幅方向先端に向かって漸減される前記上側壁部及び前記下側壁部が、前記上側壁部及び前記下側壁部の車両前後方向内側端の外形に沿って曲げ成形されることで、前記上壁部及び前記下壁部等が形成される。この場合、前記上壁部及び前記下壁部の少なくとも車両幅方向端部の車両前後方向内側への突出長が車両幅方向先端に向かって漸減されることで、バンパリインホースの車両幅方向端部をより小型化することができ、ひいては車両の意匠に対する汎用性を向上することができる。一方、バンパリインホースの両端支持梁構造として脆弱な車両幅方向中央部は、前記上壁部及び前記下壁部の車両前後方向内側への突出長が最大になることで十分な曲げ剛性を確保することができ、例えばポール衝突時の折れを抑制することができる。特に、バンパリインホースは、前記本体壁部、前記上壁部、前記下壁部及び前記両フランジを一体的に備えて構成されるため、部品点数の増大を抑制することができる。
【符号の説明】
【0053】
L1…下側壁部、U1…上側壁部、21,41…本体壁部、24,44…フランジ、23,43…下壁部、22,42…上壁部、16,40…バンパリインホース、22b,23b,42b,43b…徐変部、26…第1ビード、27…第2ビード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金の押出材からなり、車両幅方向に延在するとともに両端部において車両前後方向に延びる一対の結合部材に結合されるバンパリインホースにおいて、
断面形状において、上下方向に延在する本体壁部と、該本体壁部の上端及び下端から車両前後方向内側にそれぞれ突出する上壁部及び下壁部と、前記上壁部の車両前後方向内側端及び前記下壁部の車両前後方向内側端から互いの対向する上下方向にそれぞれ突出するフランジとを一体的に備え、
前記上壁部及び前記下壁部の少なくとも車両幅方向端部には、車両前後方向内側への突出長が車両幅方向先端に向かって漸減する徐変部がそれぞれ形成されていることを特徴とするバンパリインホース。
【請求項2】
請求項1に記載のバンパリインホースにおいて、
前記各フランジの上下方向への突出長は、前記徐変部の車両前後方向内側への突出長が短くなるほど長くなるように設定されていることを特徴とするバンパリインホース。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバンパリインホースにおいて、
前記本体壁部の上下方向中央部に車両前後方向内側に向かって凹設され、車両幅方向全長に亘って延在する第1ビードと、
前記第1ビードの上側及び下側で前記本体壁部にそれぞれ車両前後方向内側に向かって凹設され、車両幅方向全長に亘って延在する第2ビードとを備えたことを特徴とするバンパリインホース。
【請求項4】
車両幅方向に延在するとともに両端部において車両前後方向に延びる一対の結合部材に結合されるバンパリインホースにおいて、
アルミニウム合金材が押出成形され、断面形状において、上下方向に延在する本体壁部と、該本体壁部の上端及び下端から車両前後方向内側にそれぞれ突出する上壁部及び下壁部と、前記上壁部の車両前後方向内側端及び前記下壁部の車両前後方向内側端から互いの対向する上下方向にそれぞれ突出するフランジとを一体的に備え、
少なくとも車両幅方向端部において、前記上壁部及び前記フランジのなす角部並びに前記下壁部及び前記フランジのなす角部がプレス成形されて、前記上壁部及び前記下壁部の車両前後方向内側への突出長が車両幅方向先端に向かって漸減されるとともに、前記上壁部及び前記下壁部の前記突出長の漸減に伴って前記各フランジの上下方向への突出長が漸増されていることを特徴とするバンパリインホース。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のバンパリインホースと、
前記一対の結合部材とを備えたことを特徴とする車両用バンパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−30722(P2012−30722A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172980(P2010−172980)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000100791)アイシン軽金属株式会社 (137)