説明

バーナーの火花点火装置

【課題】着火ミスを防止するバーナー3の火花点火装置4を提供する。
【解決手段】バーナーの火花点火装置4は、バーナー本体31と、スパークロッド41と、ロッド保持管42と、スパークロッド41の中間部を絶縁状態で支持するインシュレータ43と、を備える。インシュレータ43には、スパークロッド41が内挿される挿入孔431が形成されている。ロッド保持管42には、挿入孔431の下端開口の外周囲を囲むように配置されかつ、ロッド保持管42の外周面に連続すると共に、挿入孔431の下端開口の高さ位置よりも下方の位置まで下向きに延びる延設部423が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、バーナーの火花点火装置に関し、特に結露が発生しやすく、それに起因する絶縁不良によって着火ミスが生じやすい環境下にあるバーナーの火花点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガスといった低温液化ガスの気化装置の一つとして、水中燃焼式気化装置(Submerged Combustion Vaporizer)が知られている(例えば特許文献1参照)。こうした水中燃焼式気化装置は、急激な需要増加をカバーするためのエマージェンシー用としても使用されており、急速起動が要求される。一方で、水中燃焼式気化装置に用いられる水中燃焼バーナーは、水槽中に浸漬されたダウンカマーに配設されているため、内部の湿度が極めて高い。そのため、水中燃焼式気化装置の停止中には、水中燃焼バーナーの火花点火装置にも結露が生じやすい。尚、ここで言う火花点火装置は、より正確には、水中燃焼バーナーのメインバーナーは熱容量が極めて大きいため、水中燃焼バーナーはメインバーナーの他にパイロットバーナーを備えることが一般的であるが、そのパイロットバーナーに点火するための火花点火装置である。結露は、火花点火装置の絶縁不良を引き起こし着火ミスの原因となる。そこで、こうした水中燃焼式気化装置では、水中燃焼バーナーの火花点火装置に乾燥した計装空気を常時供給することによって、結露を防止する対策が施されている。
【0003】
また、例えば特許文献2には、ガス切断トーチに設けられた点火装置の結露を防止する技術として、その点火装置を、使用時には高温となるガス切断トーチの内部に配設することが記載されている。これにより、切断トーチによって切断する切断物には散水を行うが、その水が点火装置に付着して結露の原因となることを防止する。
【0004】
さらに、例えば特許文献3には、温風暖房機のオイルバーナーの点火装置において、高圧ケーブルと電極とを接続する接続部の電極碍子に、付着した結露水の排出を促進する凸部を形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−75599号公報
【特許文献2】特開平9−285863号公報
【特許文献3】特開2002−333134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、水中燃焼式気化装置における水中燃焼バーナーの火花点火装置においては、乾燥した計装空気を常時供給することによって結露を防止する対策が施されているものの、本願発明者は、外気温が極めて低いとき等には、そうした対策を施していても着火ミスが発生し、水中燃焼バーナーの起動時間、ひいては水中燃焼式気化装置の起動時間が長くなってしまう場合があることを確認した。
【0007】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、着火ミスを防止するバーナーの火花点火装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者が検討した結果、低外気温時には結露の量が大量になることで、火花点火装置の特定位置における絶縁不良を招くことが判明した。具体的に、本願発明者の検討対象
であるパイロットバーナーは、ほぼ垂直方向に延びるよう配設されかつ、その下端部にバーナーチップが設けられたバーナー本体と、バーナー本体に並行となるようにほぼ垂直方向に延びるように配設されると共に、その先端部がバーナーチップに近接して配設されたスパークロッドと、スパークロッドの先端部を除く中間部を収容すると共に、その下端部にスパークロッドの中間部を絶縁状態で支持するインシュレータが内挿されたロッド保持管と、を備えている。ここで、インシュレータの下端面は、ロッド保持管の下端開口を通じて下向きに露出していると共に、このインシュレータにはスパークロッドが貫通配置される挿入孔が形成されている。このため、この挿入孔は、下向きに露出しているインシュレータの下端面に開口している。
【0009】
この構成のパイロットバーナーにおいて、ロッド保持管内には、その上端から乾燥した計装空気が常時供給されており、計装空気はインシュレータの挿入孔を通じてロッド保持管の外に吐き出されるように構成されている。通常であれば、この計装空気によってスパークロッドの周囲が乾燥するため、絶縁状態が維持されて着火ミスは生じないものの、外気温が極めて低いときには、ロッド保持管の外周面に大量の結露が付着する結果、その結露が、重力によって垂直方向に延びるように配設されたロッド保持管を伝ってその下端に移動し、ロッド保持管の下端部に大量の水が溜まるようになる。
【0010】
ここで、ロッド保持管の下端開口から下向きに露出したインシュレータの下端面は、従来は平坦面であったことから、ロッド保持管の下端部に溜まった水が、インシュレータの平坦な下端面にも溜まるようになり、特にスパークロッドが貫通配置される挿入孔の下端開口付近に水が付着することで、この部分においてスパークロッドの絶縁不良を引き起こしていたのである。
【0011】
そこで、本願発明者は、仮にロッド保持管の外周面に大量の結露が付着し、そのロッド保持管の下端に水が溜まったとしても、スパークロッドが貫通配置される挿入孔の下端開口付近には水が付着することを防止する対策を施すことによって、スパークロッドの絶縁状態を良好に保ち、着火ミスを回避するようにした。
【0012】
具体的に、ここに開示するバーナーの火花点火装置は、その基端に燃料ガスの供給口が設けられると共に、その先端にバーナーチップが設けられたバーナー本体と、垂直方向に延びるように配設されると共に、その先端部が当該バーナーチップに近接して配設されたスパークロッドと、前記スパークロッドの先端部を除く中間部を少なくとも収容するロッド保持管と、前記ロッド保持管の下端部に内挿されかつ、前記スパークロッドの中間部を絶縁状態で支持するインシュレータと、を備える。
【0013】
そして、前記インシュレータには、前記スパークロッドが貫通配置される挿入孔が形成されていて、当該挿入孔は、前記ロッド保持管の下端開口を通じて下向きに露出したインシュレータの下端面に開口しており、前記ロッド保持管には、前記挿入孔の下端開口の外周囲を囲むように配置されかつ、当該ロッド保持管の外周面に連続すると共に、前記挿入孔の下端開口の高さ位置よりも下方の位置まで下向きに延びる延設部が設けられている。
【0014】
ここで、「垂直方向に延びるように配設される」とは、スパークロッド及びそれを収容するロッド保持管がそれぞれ、垂直方向に配設されること、及び、垂直方向に対し若干傾いて配設されることの双方を含む。より具体的には、ロッド保持管の外周面に付着した結露が、重力によって下方に移動し得る限度において、スパークロッド及びロッド保持管を傾けて配設する場合を含む。
【0015】
この構成によると、スパークロッド及びそれの中間部を収容するロッド保持管はそれぞれ、垂直方向に延びるように配設され、前述したように、例えば外気温が極めて低いとき
のようにロッド保持管の外周面に大量の結露が付着した場合は、その結露は、重力によってロッド保持管を伝ってその長手方向の下方に移動する結果、ロッド保持管の下端部に大量の水が溜まるようになる。
【0016】
ここで、前記の構成では、ロッド保持管には、挿入孔の下端開口の外周囲を囲むように配置されかつ、当該ロッド保持管の外周面に連続すると共に、前記挿入孔の下端開口の高さ位置よりも下方の位置まで下向きに延びる延設部が設けられている。これにより、ロッド保持管の外周面を伝って移動してきた水は、延設部を伝ってさらに下方位置まで移動するようになる。つまり、「延設部がロッド保持管の外周面に連続する」とは、ロッド保持管の外周面を伝って移動してきた水が、延設部に伝わるように連続していることを意味する。これに対し、インシュレータに形成された挿入孔の下端開口は、延設部の下端よりも上方に位置しているから、ロッド保持管の外周面を伝って水が下方に移動してきても、この挿入孔の下端開口付近に水が付着することは回避乃至抑制される。その結果、スパークロッドの絶縁状態を良好に保つことが可能になる。つまり、結露が大量に発生するような環境下においても着火ミスを回避して、バーナーを早期に起動することが実現する。
【0017】
ここで、前記インシュレータの下端面は、前記挿入孔の下端開口から外周側に向かって下向きに傾斜するように形成されている、としてもよい。
【0018】
こうすることで、前述したように、ロッド保持管の外周面を伝って下方に移動してきた水が挿入孔の下端開口付近に付着することを防止可能であることは勿論のこと、インシュレータの下端面に結露が付着したときには、下端面が下向きに傾斜していることで、重力により、その結露をインシュレータ下端面の外周側へ移動させることが可能になる。従ってこの構成では、延設部による機能と傾斜した下端面による機能とが組み合わさって、挿入孔の下端開口付近に水が付着することがさらに確実に防止され、スパークロッドの絶縁状態を、より一層良好に維持することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、前述したバーナーの火花点火装置によると、延設部を設けることによって、ロッド保持管の外周面を伝って下方に移動してきた水を、その延設部に沿ってさらに下方にまで移動させることが可能になるため、延設部の下端よりも上方に位置する、挿入孔の下端開口付近に水が付着することが回避乃至抑制され、スパークロッドの絶縁状態を良好に保って、着火ミスを防止することができる。その結果、火花点火装置の信頼性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】水中燃焼式気化装置の構成を示す概略図である。
【図2】水中燃焼バーナーの構成を示す断面図である。
【図3】パイロットバーナーの構成を示す断面図である。
【図4】ロッド保持管のインシュレータ部分を拡大して示す断面図である。
【図5】(a)インシュレータ部分の別の構成例を示す図4対応図、(b)インシュレータ部分の別の構成例を示す底面図、(c)インシュレータ部分のさらに別の構成例を示す底面図である。
【図6】(a)ロッド保持管の下端部の別の構成例を示す図4対応図、(b)ロッド保持管の下端部の別の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、バーナーの火花点火装置の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は例示である。図1は、ここに開示するバーナーの火花点火装置が適用される水中燃焼バーナーを備えた、水中燃焼式気化装置1の概略を示している。この水中燃焼式気化装置1は、液化天然ガス(LNG)の気化装置であって、水槽11中に浸漬されると共に、LNGの流路となる多数の伝熱管が多段に曲げ成形されて構成された熱交換器12と、水槽11内に浸漬して配設されたダウンカマー13に設けられると共に、図外の燃料ガス供給源から供給された燃料ガスと、ブロワー14を通じて供給された空気とを、水面よりも下側となる位置で燃焼させる水中燃焼バーナー2と、水槽11の底部に配設されてダウンカマー13の下端に連通すると共に、水中燃焼バーナー2の燃焼ガスが噴出する多数の小孔が形成されたスパージパイプ15と、水槽11の上部に配設されかつ、燃焼排ガスを排気するスタック16と、を備えて構成されている。水中燃焼式気化装置1は、水中燃焼バーナー2の燃焼ガスをスパージパイプ15の小孔を通じて水槽11内に気泡として噴出させることによって、水槽11内の水を撹拌しつつ、熱交換器12内を通過するLNGを加熱する。このことによって、LNGを気化させて天然ガス(NG)とし、これを熱交換器12の出口から送り出すように構成されている。水中燃焼式気化装置1は、燃焼ガスを気泡として水槽11内に噴出して水槽11内の水を撹拌すること、及び、スタック16から排出する燃焼排ガスの温度を低くすることが可能であることから熱効率が極めて高いという特徴がある。
【0022】
図2は、水中燃焼バーナー2の全体構成を示している。水中燃焼バーナー2は、その上端が閉塞していると共に、その下端が開口しており、水中燃焼バーナー2の外側面には、ブロワー14から水中燃焼バーナー2に空気を供給するための供給口23が、外側方に向かって開口するように設けられている。
【0023】
水中燃焼バーナー2の内部に構成される燃焼室25には、メインバーナー26が配設されている。メインバーナー26は、複数本の燃料ガスノズル261を備えており、ガスノズル261は、水中燃焼バーナー2の中心位置に配設された燃料ガス供給管262の下端部を取り囲むように、周方向に互いに等間隔を空けて配設されている。各ガスノズル261の下端は、図示を省略するノズルが下向きに開口するように配設されているのに対し、その上端部は径方向の内方に向かって屈曲しており、その屈曲端が燃料ガス供給管262に接続されている。燃料ガス供給管262は、閉塞された水中燃焼バーナー2の上端部を貫通して、その外部にまで延びており、燃料ガス供給管262の端部は、図外の燃料ガス供給源に接続されている。
【0024】
この水中燃焼バーナー2には、前述したメインバーナー26の他に、パイロットバーナー3を備えている。パイロットバーナー3は、水中燃焼バーナー2の上端部を貫通して燃焼室25内に挿入されるように、水中燃焼バーナー2の中心からずれた位置でかつ、垂直方向に対し若干傾いた姿勢で、この水中燃焼バーナー2に取り付けられている。パイロットバーナー3の下端に設けられたバーナーチップ33は、図2では明示されていないが、メインバーナー26における複数本の燃料ガスノズル261の内の、隣り合う特定の2本の燃料ガスノズル261の間に配置されている。
【0025】
図3は、パイロットバーナー3の構成を示す断面図であり、図4は、パイロットバーナー3のスパークロッド41を支持するインシュレータ43を拡大して示す断面図である。パイロットバーナー3は、バーナー本体31と、火花点火装置4とを備えている。この内、バーナー本体31は、その上端部が屈曲していると共に、実質的に垂直方向に延びて配設されるパイプ32を有しており、このパイプ32の上端開口は、図外の燃料ガス供給源に接続されて燃料ガスが流入する供給口321に構成されている。一方、パイプ32の下端には、バーナーチップ33が取り付けられている。バーナーチップ33は、パイプ32の下端に外挿される挿入部331と、円筒状のフード部332と、挿入部331とフード部332との間で両者を隔てる隔壁であるチップ部333と、を備えている。
【0026】
火花点火装置4は、スパークロッド41とロッド保持管42とを備えている。ロッド保持管42は、バーナー本体31のパイプ32に対し並行になるように、実質的に垂直方向に延びて配設されており、その上端部は、ケーシング45内に収容されている。このケーシング45は、水中燃焼バーナー2の上部に取り付け固定されるものであり、バーナー本体31の一部分もまた、このケーシング45内に収容されている。尚、ロッド保持管42及びスパークロッド41は、図3では垂直方向に延びるように描かれているが、水中燃焼バーナー2に対して取り付けた状態では、図2に示すように垂直方向に対して若干傾く。
【0027】
スパークロッド41は、その中間部がロッド保持管42に内挿されており、スパークロッド41の上端部及び下端部はそれぞれ、ロッド保持管42の上端及び下端から突出している。スパークロッド41は、ロッド保持管42の上端開口部に対しては、ブッシング421により支持され、ロッド保持管42の下端開口部に対しては、インシュレータ43によって支持されている。こうして、スパークロッド41は、ロッド保持管42に対し、絶縁状態で支持されている。
【0028】
スパークロッド41の上端部は、前述の通り、ケーシング45内に配設されており、この上端部には、ケーブル(図示省略)が接続されるコネクタ411が取り付けられている。一方、ロッド保持管42の下端開口から突出して配設されたスパークロッド41の下端部は概略L字状に折り曲げられ、その折曲先端は、バーナー本体31におけるバーナーチップ33のフード部332に貫通形成された所定形状の貫通孔335内に配設されている。この構成により、前記コネクタ411を通じてスパークロッド41に高電圧を印加したときには、スパークロッド41の折曲先端とフード部332の貫通孔335の縁部との間で火花放電が生じ、パイロットバーナー3が着火するようになる。
【0029】
ロッド保持管42の下端部においてスパークロッド41を支持するインシュレータ43は、例えばポリテトラフルオロエチレン(商品名:テフロン(登録商標))製であり、図4に拡大して示すように、スパークロッド41が内挿される挿入孔431を有している。インシュレータ43は、概略円筒状のインシュレータサポート44に内嵌されており、インシュレータサポート44の下端部には、インシュレータ43を保持するための段部441が設けられている。このインシュレータサポート44がロッド保持管42の下端に取り付け固定されることによって、インシュレータ43は、ロッド保持管42の下端部に配設されることに
なる。尚、以下の説明では、ロッド保持管42とインシュレータサポート44とが一体化されていることから、便宜上、「ロッド保持管42の下端部」や「ロッド保持管42の下端開口」と言う場合には、その部分が、実際はインシュレータサポート44に相当する場合がある。
【0030】
インシュレータ43の下端面432は、ロッド保持管42の下端開口を通じて下向きに露出しており、このインシュレータ43の下端面432は、挿入孔431の下端開口からその周縁部に向かって、言い換えると中心から下端面の外周側に向かって下向きに傾斜するように形成されている。つまり、インシュレータ43の下端面432は、上向きに凹陥するような、すり鉢状に形成されている。このため、インシュレータ43の下端面に開口する挿入孔431の下端開口に対して、ロッド保持管42の下端位置は、高さ方向に下方となるように構成されている。このことは、ロッド保持管42には、当該ロッド保持管42の外周面に連続すると共に、挿入孔431の下端開口の高さ位置よりも下方の位置まで下向きに延びる延設部423が設けられている、と言い換えることが可能である。
【0031】
前述したケーシング45には、図3に示すように、スパークロッド41を乾燥させる計装空気の導入口451が形成されていると共に、このケーシング45内に配設されている、ロッド保持管42の上端部には、このロッド保持管42内に計装空気が流入するための流入孔426が貫通形成されている。ここで、インシュレータ43の挿入孔431は、図4に示すように、スパークロッド41との間に若干の隙間が設けられるように、スパークロッド41の外径よりも大径に形成されており、これによって、ケーシング45内に導入された計装空気は、図3に矢印で示すように、流入孔426を通ってロッド保持管42内に流入すると共に、ロッド保持管42内を下向きに流れ、インシュレータ43の挿入孔431を通じて、ロッド保持管42の外部に流出する。この計装空気は、ロッド保持管42内を常時流れるように構成されており、これによってスパークロッド41の周囲を常時乾燥させて、高湿度環境下においても、スパークロッド41の絶縁状態を良好に保つようにしている。
【0032】
ここで、水中燃焼式気化装置1のバーナー起動について簡単に説明すると、水中燃焼式気化装置1を起動するときには先ず、ブロワー14のみを運転し、水中燃焼バーナー2を通じて、ダウンカマー13及びスパージパイプ15内に空気のみを送り込む。これによって、これらダウンカマー13及びスパージパイプ15内に貯留している水を排出する(つまり、パージ動作)。そうして、ダウンカマー13及びスパージパイプ15の容積に応じて予め設定された所定量の空気を送り込んだ後に、水中燃焼バーナー2のパイロットバーナー3に燃料ガスを供給すると共に、スパークロッド41に高電圧を印加する。これによって、前述したように、スパークロッド41の折曲先端とフード部332の貫通孔335の縁部との間で火花放電が生じ、パイロットバーナー3が点火する。その後、パイロットバーナー3によってメインバーナー26が点火して、水中燃焼式気化装置1のバーナー起動が完了する。
【0033】
水中燃焼式気化装置1の運転停止時には、水中燃焼バーナー2の内部は、高湿度の環境となるから、パイロットバーナー3の火花点火装置4に結露が付着しやすい。しかしながら、ロッド保持管42内に乾燥用の計装空気を常時流すことによって、このロッド保持管42に保持されているスパークロッド41の周囲が乾燥し、スパークロッド41の絶縁状態は良好に保たれる。このため、水中燃焼式気化装置1の起動時には火花点火装置の着火ミスを防止して、パイロットバーナー3を確実に点火することができる。これは、水中燃焼バーナー2の起動時間、ひいては水中燃焼式気化装置1の起動時間を短縮する。
【0034】
一方で、例えば外気温が極めて低いとき等には、ロッド保持管42の外周面に大量の結露が付着するようになる。ロッド保持管42は、図2に示すように、ほぼ垂直方向に延びるように配設されているため、ロッド保持管42の外周面に付着した結露は、重力によって下方に流れ落ち、ロッド保持管42の下端部に水が大量に溜まるようになる。
【0035】
ここで従来構造のロッド保持管42は、インシュレータ43の下端面とロッド保持管42の下端とが同じ高さ位置にあると共に、インシュレータ43の下端面は平坦面であったため、ロッド保持管42の下端部に水が大量に溜まった場合、インシュレータ43の挿入孔431の下端開口付近にも、水が付着するようになる。このことにより、計装空気を常時流して、挿入孔431の下端開口から計装空気を流出させていたとしても、スパークロッド41の絶縁不良を招く場合があった。
【0036】
これに対し、図4に示すように、前述したロッド保持管42は、挿入孔431の下端開口よりも高さ方向の下方位置まで延びる、延設部423を有している。このため、ロッド保持管42の外周面に大量の結露が付着して、ロッド保持管42の下端部、つまり延設部423の下端部に水が溜まったとしても、挿入孔431の下端開口付近に水が付着することは防止される。
【0037】
また、インシュレータ43の下端面がすり鉢状に形成されていることで、この下端面に結露が付着した場合、結露は、重力によって中心側から外周側に向かって流れ落ちるようになる。このことによっても、挿入孔431の下端開口付近に水が付着することが防止される。
【0038】
こうして、前述した延設部423を設けることや、インシュレータ43の下端面がすり鉢状であることにより、結露が大量であっても、挿入孔431の下端開口付近には、水がほとんど付着しない。また、仮に水が付着したとしても微量であることから、挿入孔431の下端開口から流出する計装空気によって、付着した微量の水は吹き飛ばされるようになる。
【0039】
こうしてこの構成では、結露が大量となる環境下においても、スパークロッド41の絶縁状態を良好に保つことが可能になり、着火ミスを回避乃至防止してパイロットバーナー3を確実に点火することで、水中燃焼式気化装置1の起動時間を短縮することが可能になる。
【0040】
尚、インシュレータ43の下端面の形状は、図4に示す形状に限定されるものではない。図5は、インシュレータ43の下端面の形状に関する変形例を示している。例えば図5(a)は、インシュレータ43の下端面432における中心部分のみを、下向きに傾斜する傾斜面としていて、外周縁部は平坦面としている。この構成でも、火花点火装置4は、ロッド保持管42の延設部423と、インシュレータ43の傾斜した下端面432とを有しているため、絶縁不良を防止する効果は、図4に示す形状と同等である。
【0041】
尚、図示は省略するが、インシュレータ43の下端面432を下向きに傾斜させなくても、インシュレータ43の下端面から凹陥する穴を設けることによって、挿入孔431の下端開口の高さ位置を相対的に上方に位置させ、そのことで、ロッド保持管42の延設部423が形成されるようにしてもよい。
【0042】
図5(b)(c)はそれぞれ、インシュレータ43の下端面を示す底面図であるが、同図(b)に示すように、下端面に付着した結露の排水を促進させるために、インシュレータ43の傾斜した下端面432に、挿入孔431の下端開口から外周縁まで延びる排水溝433を、放射状に複数個(図例は8個)、形成してもよい。また、図5(c)に示すように、インシュレータ43の傾斜した下端面432が波形となるように、周方向に交互に折り曲げた形状にすることによって、挿入孔431の下端開口から外周縁まで延びる排水溝を多数、設けるようにしてもよい。尚、図5(a)と、図5(b)又は(c)とを組み合わせてもよい。
【0043】
また、図6(a)(b)は、図4、5のインシュレータ43とは異なり、インシュレータ46の下端面461を平坦にする一方で、インシュレータサポート44の下端を下向きに延長することによって、挿入孔431の下端開口よりも下方位置となる延設部424、425を設けた構成例を示している。つまり、図6(a)では、インシュレータサポート44の中間部に、インシュレータ46の平坦な下端面461に当接して、インシュレータ46を保持する段部441を設けると共に、その段部441の下側に、インシュレータサポート44と同径の筒状延設部424を設けている。この構成においても、インシュレータ46の下端面に開口する挿入孔431の下端開口よりも、延設部424の下端が高さ方向の下方に位置しているため、ロッド保持管42の外周面を伝って下方に移動した水は、延設部424の下端へと導かれるようになり、挿入孔431の下端開口付近に水が付着することは、防止される。
【0044】
こうした延設部は、挿入孔431の外周囲の全周を囲む筒状にすることに限定されない。例えば図6(b)に示すように、周方向の所定位置で、下方に延びる棒状や片状の延設部425を、ロッド保持管42(インシュレータサポート44)の下端部に取り付けてもよい。この場合でも、ロッド保持管42の外周面を伝って下方に移動した水を延設部425の下端へと導いて、挿入孔431の下端開口付近に水が付着することを防止することが可能である。こうした棒状や片状の延設部425は、既存の水中燃焼バーナーに後付けすることが可能である。図例では、棒状の延設部425を、ロッド保持管42の外周面に取り付けている。こうした後付け構造は、既存の水中燃焼バーナーに対して簡便かつ低コストで、着火ミスを回避する対策を施すことを可能にする。尚、延設部425の数は特に限定されるものではなく、適宜の数にすることが可能であるが、その数は多い方が、挿入孔431の下端開口付近に水が付着することを防止する効果は高くなる。
【0045】
また、延設部424の径は、インシュレータサポート44と同径でなくても、図示は省略するが、インシュレータサポート44よりも小径、又は、大径にしてもよい。さらに、延設部424の径を、下方に向かうに従って拡大するように形成してもよい。
【0046】
但し、加工性の観点からは、図4や図5に示すようにインシュレータ43の下端面を加工する方が容易である。
【0047】
また、ここでは、水中燃焼式気化装置1における水中燃焼バーナー2のパイロットバーナー3における火花点火装置を例に、ここに開示する特徴的な火花点火装置の構成について説明をしたが、この火花点火装置は、水中燃焼式気化装置1の水中燃焼バーナー2に適用されることに限定されず、その他の水中燃焼バーナーや、他の一般的なガスバーナーにも適用可能である。また、オイルバーナーの火花点火装置としても適用することが可能である。この火花点火装置は特に、結露が大量に付着することによって、絶縁不良を生じやすい環境下で使用されるバーナーの火花点火装置として有用である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、ここに開示したバーナーの火花点火装置は、大量の結露が生じた場合でも、絶縁状態を良好に保って着火ミスを防止することができるから、結露が発生しやすい環境下で使用される、例えば水中燃焼バーナーにおけるパイロットバーナーの火花点火装置として有用である。
【符号の説明】
【0049】
3 パイロットバーナー(バーナー)
31 バーナー本体
321 供給口
33 バーナーチップ
4 火花点火装置
41 スパークロッド
42 ロッド保持管
423 延設部
424 延設部
425 延設部
43 インシュレータ
431 挿入孔
432 インシュレータの下端面
46 インシュレータ
461 インシュレータの下端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その基端に燃料ガスの供給口が設けられると共に、その先端にバーナーチップが設けられたバーナー本体と、
垂直方向に延びるように配設されると共に、その先端部が当該バーナーチップに近接して配設されたスパークロッドと、
前記スパークロッドの先端部を除く中間部を少なくとも収容するロッド保持管と、
前記ロッド保持管の下端部に内挿されかつ、前記スパークロッドの中間部を絶縁状態で支持するインシュレータと、を備え、
前記インシュレータには、前記スパークロッドが貫通配置される挿入孔が形成されていて、当該挿入孔は、前記ロッド保持管の下端開口を通じて下向きに露出したインシュレータの下端面に開口しており、
前記ロッド保持管には、前記挿入孔の下端開口の外周囲を囲むように配置されかつ、当該ロッド保持管の外周面に連続すると共に、前記挿入孔の下端開口の高さ位置よりも下方の位置まで下向きに延びる延設部が設けられているバーナーの火花点火装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバーナーの火花点火装置において、
前記インシュレータの下端面は、前記挿入孔の下端開口から外周側に向かって下向きに傾斜するように形成されているバーナーの火花点火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−2733(P2013−2733A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134191(P2011−134191)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【出願人】(000220000)東京ガス・エンジニアリング株式会社 (15)