説明

バーリング加工方法及び金型

【課題】下穴の加工が難しい場合であっても、下穴を加工することなくバーリング加工を行うことのできるバーリング加工方法を提供する。
【解決手段】板状のワークにバーリング加工を行う方法であって、雌型3に備えたバーリング部成形凹部19内へ、雄型5に備えた加圧突出部35によって前記ワークWの一部を押圧挿入してワークWに突出部を形成し、当該加圧突出部の先端面と前記バーリング部成形凹部19の底部、又は前記雌型3に上下動自在に備えた昇降体25に備えられ、前記バーリング部成形凹部19内へ挿入した加圧突出部23の先端面23Fとの間によって前記突出部の先端部を押し潰して前記突出部の筒状部よりも薄肉の薄肉部WAを前記突出部の先端部に形成し、この先端部の薄肉部WAの打抜き加工を行う。前記薄肉部WAの打抜き加工は、パンチ金型とダイ金型とによって前記突出部を挟み込んだ状態、又はパンチ金型とダイ金型とによって前記突出部の周囲部分を挟み込んだ状態で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属性の板状のワークにバーリング加工を行う方法及びバーリング加工を行うためにワークに突出部を形成するための突出部形成金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板状のワークにバーリング加工を行う場合には、ワークに予め下穴を加工した後にバーリング加工を行っている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
また、ワークに下穴を予め加工することなくバーリング加工を行うことも行われている(例えば特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−160727号公報
【特許文献2】特開2002−346682号公報
【特許文献3】特開平10−225729号公報
【特許文献4】特開2005−28373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1,2に記載のように、ワークに予め下穴を加工した後、バーリング加工を行う場合、次工程のタッピング加工時に必要なネジ山数が得られるようにバーリングの突出高さ寸法を大きくしようとすると、成形加工されたバーリングの先端側が薄肉になると共に先端面が粗面になり、ひび割れ等を生じることがある。
【0006】
そこで、特許文献2に記載されているように、内部に備えたスリーブパンチによって前記バーリングの先端面をサイジング加工する必要があるものであり、金型の構成がより複雑になるという問題がある。
【0007】
ワークに予め下穴を加工することなくバーリング加工を行う特許文献3に記載の方法は、板状のワークの上面に凸部を形成するとき(第1工程)、上記凸部の外径とほぼ等しい凹部をワークの下面に形成し、上記凸部の中央に凹部を形成することによって当該凹部の周囲に後方押し出しによって環状の凸部を形成した後(第2工程)、前記凹部の底を打抜いて穴を形成し(第3工程)、その後にバーリング加工(第4工程)を行うものである(特許文献3の図1(a)〜(e)参照)。したがって、特許文献3に記載のバーリング加工を行うには、4工程毎に金型が必要であり、金型数が多くなるという問題があると共に、ワークの下面に凹部が存在することにより、バーリング加工を行った部分により多くのネジ山を形成することが難しいという問題がある。
【0008】
特許文献4に記載の方法は、板状のワークに凹部を形成し、この凹部の底部を打抜く方法であるから、使用する金型は2種類でよいこととなり、使用する金型数が少なくなるものの、バーリング高さが板厚の3倍以下の場合を対象とするものであり、バーリング加工部分にネジを形成するとき、より多くのネジ山数を得ようとする上において問題がある。
【0009】
また、従来において、板状のワークに下穴を加工してバーリング加工を行うに際し、例えば、板厚が約2mmのステンレス板に、例えばM3のネジ穴を加工するために、下穴を加工してバーリング加工を行なおうとすると、下穴の打抜き加工を行うための直径が約1mmの小径になる。このようにパンチ径がワークの板厚よりも小径になると、下穴の打抜き加工が極めて難しくなる。したがって、下穴加工にドリルを利用した加工や、レーザ光を利用した加工とならざるを得ず、板状のワークに対して打抜き加工を行うためのパンチプレスとは別個の加工機械を必要とするという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述のごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、板状のワークにバーリング加工を行う方法であって、雌型に備えたバーリング部成形凹部内へ、雄型に備えた加圧突出部によって前記ワークの一部を押圧挿入してワークに突出部を形成し、当該加圧突出部の先端面と前記バーリング部成形凹部の底部、又は前記雌型に上下動自在に備えた昇降体に備えられ、前記バーリング部成形凹部内へ挿入した加圧突出部の先端面との間によって前記突出部の先端部を押し潰して前記突出部の筒状部よりも薄肉の薄肉部を前記突出部の先端部に形成し、この先端部の薄肉部の打抜き加工を行うことを特徴とするものである。
【0011】
また、前記バーリング加工方法において、前記薄肉部の打抜き加工は、パンチ金型とダイ金型とによって前記突出部を挟み込んだ状態で行うことを特徴とするものである。
【0012】
また、前記バーリング加工方法において、前記薄肉部の打抜き加工は、パンチ金型とダイ金型とによって前記突出部の周囲部分を挟み込んだ状態で行うことを特徴とするものである。
【0013】
また、前記突出部を形成するための突出部形成金型であって、雌型に備えたバーリング部成形凹部の底面、又は前記雌型に上下動自在に備えた昇降体に備えられ、前記バーリング部成形凹部内へ挿入した加圧突出部の先端面に、前記バーリング部成形凹部の軸心に対して直交する方向の平面部を備え、前記雌型の前記バーリング部成形凹部内へワークの一部を押圧挿入して突出部を形成するために雄型に備えられた加圧突出部の先端面を、前記バーリング成形凹部内方向へ突出した凸曲面に形成してあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、板状のワークに小径の下穴の加工を行うことなくバーリング加工を行うことができる。そして、バーリング加工を行うために形成した突出部の先端部に、当該突出部の筒状部の厚さよりも薄い薄肉部を形成し、この薄肉部を打抜き加工するものであるから、予め下穴を加工してバーリング加工を行う場合に比較して突出部の長さをより長くできるものである。また、薄肉部を打抜き加工するものであるから、突出部を貫通するための打抜き加工をより容易に行い得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のバーリング加工方法に使用する第1の実施形態に係る金型の構成を示す断面説明図である。
【図2】バーリング加工時の金属の流動状態を示す作用説明図である。
【図3】本発明のバーリング加工方法に使用する第2の実施形態に係る金型の構成を示す断面説明図である。
【図4】突出部に残った薄肉部を打抜き加工する場合の説明図である。
【図5】ダイ金型における加圧突出部の変形形態を示す説明図である。
【図6】パンチ金型における加圧突出部の変形形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照するに、図1には、板状のワークWに予め下穴を形成することなくバーリング加工を行うバーリング加工方法に使用する金型1が示されている。上記金型1は、上下に対向した雌型としてのパンチ金型3と雄型としてのダイ金型5とを備えた構成であり、図1は、上記パンチ金型3とダイ金型5によってワークWの上面にバーリング部(筒状の突出部)BUを成形した状態を示している。
【0017】
上記パンチ金型3は、例えばタレットパンチプレスにおける上部タレットなどのごときパンチホルダ7に備えたパンチ装着孔内に上下動自在に備えられており、上記パンチホルダ7に備えた複数のリフタースプリング9によって上下動自在に支持されている。より詳細には、前記パンチ金型3は前記パンチ装着孔に上下動自在に嵌入した筒状のパンチガイド11を備えており、このパンチガイド11の上部には、上端部にパンチヘッド13を上下位置調節可能に螺着したパンチドライバ15がボルト等のごとき固定具でもって着脱可能かつ一体的に固定してある。
【0018】
なお、前記パンチガイド11とパンチドライバ15は、予め一体として構成することも可能である。したがって、前記パンチガイド11の上端部にはパンチドライバ15を介してパンチヘッド13が一体的に備えられているものである。
【0019】
前記パンチガイド11の下端部には、ボルトや位置決めピンなどの固定具を介して板押え部材17が着脱可能かつ一体的に取付けてある。この板押え部材17の下面中央部には、ワークWの上面にバーリング部BUを形成するためのバーリング部成形凹部19が形成してあり、このバーリング部成形凹部19は上下方向に貫通した貫通孔21に形成してある。
【0020】
前記パンチガイド11内には、加圧突出部23を備えた昇降体25が上下動自在かつ下方向へ付勢して備えられている。より詳細には、前記パンチガイド11内で前記昇降体25の上側に上下動自在かつ最上昇したときに前記パンチドライバ15の下面に当接自在に内装した有低筒状のスペーサ27と前記パンチドライバ15の下面との間には、例えばコイルスプリング、ウレタンゴムなどのごとき弾性部材29が弾装してあり、前記スペーサ27を介して前記昇降体25を常に下方向へ付勢してある。
【0021】
前記昇降体25の下面に下方向へ突出して備えたロッド状の前記加圧突出部23は、前記板押え部材17の前記貫通孔21に上下動自在に挿入してある。そして、前記加圧突出部23の先端面23Fは、前記バーリング部成形凹部19すなわち前記貫通孔21の軸心に対して直交する方向の平面部を備えた構成である。
【0022】
ところで、パンチ金型3がリフタースプリング9によって上昇された状態にあるときには、前記昇降体25は前記板押え部材17の上面に当接した状態にあり、この昇降体25の下面に設けた前記加圧突出部23の下端面(先端面)の高さ位置は、前記板押え部材17の下面とほぼ同一高さ又は下面よりも上方位置に没入した状態にある。
【0023】
前記ダイ金型5は、例えばタレットパンチプレスにおける下部タレットなどのごときダイホルダ31に備えたダイ装着孔内に装着してある。上記ダイ金型5は、前記ダイ装着孔内に装着したダイ本体33を備えており、このダイ本体33の中央部には、前記パンチ金型3における前記加圧突出部23と対向した加圧突出部35が上方向へ突出して備えられている。この加圧突出部35の直径は、前記バーリング部成形凹部19の直径より小さく形成してある。そして、この加圧突出部35の先端面(上端面)35Fは、前記パンチ金型3における前記加圧突出部23の下端面23Fと平行な平面又は前記バーリング部成形凹部19内方向へ突出した凸状の曲面に形成してある。
【0024】
前記ダイ本体33の上面には、前記加圧突出部35を囲繞した環状のエジェクタプレート37が上下動自在かつ上方向へ付勢して備えられている。より詳細には、前記ダイ本体33の下面に備えた上下方向のガイドピン39に上下動自在に備えた昇降プレート41とガイドピン39の下端部に備えたスプリング座43との間に、例えばコイルスプリングなどのごとき弾性部材45が弾装してある。そして、前記ダイ本体33を上下動自在に貫通して上端部を前記エジェクタプレート37に取付けたピン47の下端部が前記昇降プレート41の上面に当接してある。
【0025】
したがって、前記エジェクタプレート37は、前記昇降プレート41、ピン47を介することにより、前記弾性部材45によって常に上方向へ付勢されているものである。そして、前記エジェクタプレート37の上昇を規制するために、前記エジェクタプレート37の下面には、前記ダイ本体33を上下動自在に貫通したストッパーボルト49の上端部が取付けてある。なお、前記弾性部材45の付勢力によって前記エジェクタプレート37が上昇され、かつ前記ストッパーボルト49によって上昇を規制された状態(ワークWにバーリング加工を行っていない状態)においては、前記エジェクタプレート37の上面は前記加圧突出部35の上端部より僅かに高位置、又は等しい高さ位置に位置するものである。
【0026】
以上のごとき構成において、ワークWのバーリング加工を行うべき位置をダイ金型5上に移動位置決めすると、ワークWは、弾性部材45によって上方向へ付勢され、かつストッパーボルト49によって上昇を規制された状態にあるエジェクタプレート37に支持された状態にある。この状態において、パンチプレスに上下動自在に備えたストライカ(ラム)STによってパンチ金型3のパンチヘッド13を打圧し、リフタースプリング9の付勢力に抗してパンチ金型3を下降すると、当該パンチ金型3に備えた板押え部材17の下面がワークWの上面に当接する。
【0027】
上述のように、板押え部材17の下端面がワークWに当接すると、ワークWは、パンチ金型3における板押え部材17とダイ金型5におけるエジェクタプレート37によって挟圧されると共に、パンチ金型3における加圧突出部23とダイ金型5における加圧突出部35によって挟圧されることになる。その後、ストライカSTをさらに下降すると、ダイ金型5における弾性部材45の付勢力に抗してエジェクタプレート37及び板押え部材17は、ワークWを挟圧した状態において下降される。したがって、ダイ金型5における加圧突出部35が相対的に上昇することとなり、ワークWの一部を、バーリング成形凹部19内へ押圧挿入することになる。
【0028】
すなわち、ワークWにおいて、パンチ金型3における板押え部材17とダイ金型5におけるエジェクタプレート37によって挟圧されている部分は、パンチ金型3における加圧突出部23とダイ金型5における加圧突出部35によって挟圧されている部分に対して相対的に下降することになる。換言すれば、ワークWにおいて、パンチ金型3とダイ金型5の加圧突出部23,35によって挟圧された部分は、周辺部に対して相対的に上昇されることになる(図2(A)参照)。
【0029】
前述のように、ワークWにおいて、パンチ金型3における加圧突出部23とダイ金型5における加圧突出部35によって挟圧された部分が相対的に上昇されると、ワークWの前記挟圧された部分は、図2(A)に示すように、前記板押え部材17におけるバーリング部成形凹部19内へ僅かに突出されることになる。この際、前記挟圧された部分の周囲の金属は、図2(A)に矢印Aで示すように、前記挟圧された部分方向へ引張られ、同方向へ流動することになる。
【0030】
そして、スペーサ27の上部がパンチドライバ15の下面に当接すると、昇降体25の相対的な上昇は停止される。このように、昇降体25の相対的な上昇を停止した状態においては、前記加圧突出部23の先端面(下端面)23Fは、前記板押え部材17の下面よりも上昇した状態にあって、板押え部材17の下面に形成したバーリング部成形凹部19内に没入した状態にある。
【0031】
上述のように、ワークWにおいて、パンチ金型3における加圧突出部23とダイ金型5における加圧突出部35によって挟圧された部分が板押え部材17のバーリング部成形凹部19内へ僅かに突出された状態にあるとき(図2(A)に示す状態)、さらにストライカSTを下降すると、ワークWにおいて、板押え部材17とエジェクタプレート37に挟圧された部分はさらに下方向へ移動されると共に、ワークWにおいて、上下の加圧突出部23,35によって挟圧された部分は、肉厚が薄くなるように強力に加圧されることになる。したがって、上下の加圧突出部23,35によって挟圧された部分の金属は、強力に挟圧加圧されることにより、図2(C)に矢印Bで示すように、放射外方向へ流動されることになる。
【0032】
この際、パンチ金型3における加圧突出部23の下端面23Fが平面に形成してあり、またダイ金型5における加圧突出部35の上端面が凸状の曲面に形成してあることにより、前記挟圧された部分の金属は、図2(C)に矢印Bで示すように、パンチ金型3における加圧突出部23の下端面(先端面)23Fに沿って放射外方向へ効果的に指向されて流動されることになる。
【0033】
その後、ダイ金型5におけるエジェクタプレート37がダイ本体33に当接し下降を停止すると(図2(C)参照)、ワークWにおいて、前記板押え部材17とエジェクタプレート37に挟圧された部分もより強力に挟圧加圧されることになる。したがって、ワークWにおいて前記板押え部材17とエジェクタプレート37によって挟圧加圧された部分の1部の金属は放射内方向へ流動され(矢印A)、前記上下の加圧突出部23,35の間から放射外方向へ流動される金属と合流して前記バーリング部成形凹部19の上方向へ指向して流動される。
【0034】
そして、前記バーリング部成形凹部19内に金属が充填されると、ワークWの上面には、上方向へ突出した筒状のバーリング部BUが形成されることになる。この際、上記バーリング部BUの外表面は、前記バーリング部成形凹部19の内周面を転写された状態にあり、円滑な表面である。そして、前記バーリング部BUの上端部内部には、上下の前記加圧突出部23,35によって押し潰された薄肉部分WAが残ることになる(図2(D)参照)。
【0035】
前述のごとく、バーリング部BUを形成するとき、バーリング部BUの筒状部はワークWより薄肉に形成されるものであり、突出寸法を大きく形成することができるものである。そして、前記薄肉部WAは、バーリング部BUの筒状部よりも極めて薄く形成されるものである。
【0036】
前述のごとく、ワークWにバーリング加工を行った後、前記ストライカSTを元の上昇位置に復帰し、パンチ金型3とダイ金型5の間からワークWを取り外し、前記パンチ金型3,ダイ金型5とは別個の打抜き加工用のパンチ、ダイによって前記薄肉部分の打抜き加工を行うことにより、ワークWの上面に所望形状のバーリング部BUが形成されるものである(図2(E)参照)。
【0037】
以上のごとき説明より理解されるように、ワークWの上面にバーリング部BUを成形加工する金型としては、前述したパンチ金型3及びダイ金型5を備えた金型1と、成形されたバーリング部BU内の薄肉部分を打抜くための打抜き加工用のパンチ,ダイを備えた金型との2種類の金型でよいこととなり、金型数が少なくなるものである。また、前記構成によれば、バーリング部BUの穴は、ワークWの下面からバーリング部BUの先端(上端)まで同径とすることができ、ネジ山を形成するための穴の有効長をより長くすることができる。よってバーリング部BUにより多くのネジ山を形成することができることになり、前述したごとき従来の問題を解消し得るものである。
【0038】
ところで、前記説明は、ワークWの上面にバーリング部BUを形成する場合について説明したが、ワークWの下面にバーリング部BUを形成することも可能である。そこで、次に、ワークWの下面にバーリング部BUを形成するための金型について説明する。
【0039】
図3を参照するに、ワークWの下面にバーリング部BUを形成するための金型51は雄型としてのパンチ金型53と雌型としてのダイ金型55を備えている。
【0040】
上記パンチ金型53は、パンチプレスにおけるパンチホルダ(図3には図示省略)に上下動自在に支持される筒状のパンチガイド57を備えている。このパンチガイド57の下部には、ワークWを押圧するための板押え部57Aが備えられている。そして、前記パンチガイド57内に上下動自在に備えたパンチボディ59の上部には、前記パンチガイド57の上部に備えたリテーナカラー61を上下動自在に貫通したパンチドライバ63が一体的に備えられており、このパンチドライバ63の上端部に上下動可能に螺着したパンチヘッド65と前記リテーナカラー61との間には、例えば皿バネなどのごとき強力なストリッパースプリング67が弾装してある。そして、前記パンチボディ59の下部には、前記板押え部57Aを貫通して下方向へ突出自在な加圧突出部69が一体に備えられている。この加圧突出部69は、前記ダイ金型5における前記加圧突出部35に相当するものである。
【0041】
前記ダイ金型55はダイベース71を備えており、このダイベース71には、前記パンチ金型3における前記バーリング成形凹部19に相当するバーリング成形凹部(貫通孔)73を備えた筒状のダイ本体75が一体的に取付けてある。このダイ本体75内には、前記パンチ金型3における昇降体25に相当する昇降体77が上下動自在かつ前記ダイベース71に当接自在に備えられている。この昇降体77には、前記加圧突出部23に相当する加圧突出部79が備えられている。そして、前記昇降体77は、前記弾性部材29に相当する弾性部材81によって上方向へ付勢されている。
【0042】
上記構成において、ダイ金型55上にワークWを位置決めした後、パンチプレスに備えたストライカ(図3には図示省略)によってパンチヘッド65を打圧し、パンチ金型53を下降すると、前述した金型1の動作と同様に、ワークWの一部が加圧突出部69によってバーリング成形凹部73内へ押圧挿入される。そして、ワークWにおいて上下の加圧突出部69,79によって挟圧された部分が押し潰されると共にワークWの下面にバーリング部BUが形成されるものである。
【0043】
ところで、前述のごとく、ワークWにバーリング部BUを突出成形するとき、前述したように、バーリング部BUの先端部に薄肉部分WAが残ることになる。この薄肉部分WAは、上下の加圧突出部23,35によって強力に押し潰されるので、バーリング部BUの筒状部分に比較して極めて薄く形成されるものである。したがって、前記薄肉部分WAを打抜く加工は、バーリング部BUの内周面をシェービング加工することになるものである。よって、タッピング加工を行うバーリング部BUの内周面を高精度に仕上げ加工することができるものである。
【0044】
なお、前記バーリング部BUにおける前記薄肉部分WAを打抜く(シェービング加工する)場合は、軽負荷でもって行うことができる。したがって、金型としてはシェービング金型83におけるパンチ金型85によって、図4(A),(B)又は図4(C),(D)に示すように、ワークWのバーリング部BUをダイ金型87と間に直接挟み込んだ状態、又はバーリング部BUの周囲部分(周囲付近)を挟み込んだ状態、又はバーリング部BUの周囲部分をダイ金型87へ押圧した状態に保持して、パンチ刃部85Bを下降してシェービング加工を行うことができるものである。
【0045】
ところで、本発明は、前述したごとき実施形態に限ることなく、種々の形態でもって実施可能なものである。すなわち、ダイ金型(雄型)5における加圧突出部35の形態としては、例えば図5(A),(B),(C)に示すごとき形態とすることも可能であり、かつ加圧突出部35の先端面は、図6(D)の(a)に示すように、円錐形状とすることや、図6(D)の(b)に示すように、球状とすることも可能である。また、図6(D)の(c)に示すように、周縁をC面又はR面に面取りを行って端面を平面に形成することも可能である。この場合、面取り部分を含むことによって凸曲面となるものである。
【0046】
また、前記パンチ金型53における加圧突出部69の形態としては、図6(A),(B)に示すごとき形態とすることも可能である。そして、加圧突出部69の先端面は、図5(D)の(a),(b),(c)と同様に、図6(C)の(a),(b),(c)に示すように、円錐形状、球状、周縁に面取り部を含む形状とすることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 金型
3 パンチ金型(雌型)
5 ダイ金型(雄型)
17 板押え部材
19 バーリング成形凹部
21 貫通孔
23,35 加圧突出部
23F,35F 先端面
25 昇降体
29 弾性部材
33 ダイ本体
51 金型
53 パンチ金型(雄型)
55 ダイ金型(雌型)
59 パンチボディ
69 加圧突出部
73 バーリング成形凹部
75 ダイ本体
79 加圧突出部
83 シェービング金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークにバーリング加工を行う方法であって、雌型に備えたバーリング部成形凹部内へ、雄型に備えた加圧突出部によって前記ワークの一部を押圧挿入してワークに突出部を形成し、当該加圧突出部の先端面と前記バーリング部成形凹部の底部、又は前記雌型に上下動自在に備えた昇降体に備えられ、前記バーリング部成形凹部内へ挿入した加圧突出部の先端面との間によって前記突出部の先端部を押し潰して前記突出部の筒状部よりも薄肉の薄肉部を前記突出部の先端部に形成し、この先端部の薄肉部の打抜き加工を行うことを特徴とするバーリング加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のバーリング加工方法において、前記薄肉部の打抜き加工は、パンチ金型とダイ金型とによって前記突出部を挟み込んだ状態で行うことを特徴とするバーリング加工方法。
【請求項3】
請求項1に記載のバーリング加工方法において、前記薄肉部の打抜き加工は、パンチ金型とダイ金型とによって前記突出部の周囲部分を挟み込んだ状態で行うことを特徴とするバーリング加工方法。
【請求項4】
請求項1に記載の突出部を形成するための突出部形成金型であって、雌型に備えたバーリング部成形凹部の底面、又は前記雌型に上下動自在に備えた昇降体に備えられ、前記バーリング部成形凹部内へ挿入した加圧突出部の先端面に、前記バーリング部成形凹部の軸心に対して直交する方向の平面部を備え、前記雌型の前記バーリング部成形凹部内へワークの一部を押圧挿入して突出部を形成するために雄型に備えられた加圧突出部の先端面を、前記バーリング成形凹部内方向へ突出した凸曲面に形成してあることを特徴とする突出部形成金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−30240(P2012−30240A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170488(P2010−170488)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【Fターム(参考)】