パイナップル植物、その育成方法及び果実
【課題】より甘い(高ブリックス)、安定な酸味を生じ、寄生虫による果実病になりにくく、内部褐変と呼ばれる生理障害に対してより寛容性、または耐性であり、均一な黄色を有し、冷蔵保存後、良好な果実外観を有する新種のパイナップルを提供すること。
【解決手段】フィトフトーラにより引き起されるフィトフトーラ心腐れに対し高耐性であり、セラトシスチスにより引き起される苗まくら地腐れに対し高耐性であり、エルウィニア細菌性陥没に対して高耐性であるパイナップル植物;この植物を茎挿し増殖又は無性生殖的に増殖することを特徴とするパイナップル植物の育成方法:及びこのパイナップル植物の果実。
【解決手段】フィトフトーラにより引き起されるフィトフトーラ心腐れに対し高耐性であり、セラトシスチスにより引き起される苗まくら地腐れに対し高耐性であり、エルウィニア細菌性陥没に対して高耐性であるパイナップル植物;この植物を茎挿し増殖又は無性生殖的に増殖することを特徴とするパイナップル植物の育成方法:及びこのパイナップル植物の果実。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイナップル植物、その育成方法及び果実に関する。さらに詳細には、本発明は、ブロメリアセアエ(Bromeliaceae)すなわちパイナップル科の新規で独特な品種に関するものであり、これは、スムースカイエン(smooth cayenne)に属する種々のパイナップルハイブリッドの混植において生じる自然交配およびクローン選択から誘導された混合種個体群から選択されたパイナップル植物、その育成方法及び果実に関する。故に、この新規なハイブリッドの真の交配母本を確認することはできない。パイナップル類は自家不和合性であり、これは、1種の別個の品種が単一個体群として植付けられた場合、通常、交配または自己受粉せず、したがって種子を生じないことを意味する。パイナップル類は、2種の異なる品種間の育種または自然交配受粉からのみ種子を生じ、異なる栽培品種またはハイブリッドに成長する生存可能な種子の生産がもたらされる。
【背景技術】
【0002】
自然交配の後代から選択された標本は、発見者または発明者であるファウスチノP.オブレロ(Faustino P.Obrero)博士の発見時期に苗床において栽培されており、それ以来、新規な品種は、前記標本から採取された植物の茎挿し増殖および無性部分の使用により、同じ苗床で無性生殖的に再生された。
【0003】
スムースカイエン・パイナップル(アナナス・コモサス(Ananas comosus))は、フィリピン、ハワイおよび世界中の他のパイナップル生育領域において生育された主要な商業的パイナップルの品種である。ハイブリッドクローンは、50パーセントを超えるスムースカイエン遺伝子を含有しているが、交配受粉法を用いて変えられたスムースカイエン・パイナップルに関連している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一般的な目的は、より甘い(高ブリックス)、安定な酸味を生じ、寄生虫による果実病になりにくく、内部褐変と呼ばれる生理障害に対してより寛容性、または耐性であり、均一な黄色を有し、冷蔵保存後、良好な果実外観を有する新種のパイナップルを提供することである。
本発明の他の目的は、パイナップル植物病、特にフィトフトーラ(Phytophtora)心腐れおよび根腐れ(heart and root rot)、根元腐れ、葉柄の基部腐れ、セラトシスチス(Ceratocystis)苗まくら地腐れおよび果実腐れ(seedling butt rot and fruit rot)、エルウィナ(Erwina)細菌性陥没(bacterial collapse)に対して耐性であり、販売可能な最新パイナップルの許容できる収穫量を生じる新種を提供することである。
デルモンテ・ゴールド(Del Monte Gold)またはPRI73114(別名:スウィーチオ(Sweetio)、ハニー(Honey))として知られている新規な商業的に最新のパイナップルハイブリッドは、上記の病気に罹りやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のパイナップル植物、その育成方法及び果実を提供するものである。
1.下記の特性を有するブロメリアセアエ、アナナス属のパイナップル植物。
植物病耐性:フィトフトーラにより引き起されるフィトフトーラ心腐れに対し高耐性であり、セラトシスチスにより引き起される苗まくら地腐れに対し高耐性であり、エルウィニア細菌性陥没に対して高耐性である。
2.上記1記載の植物を茎挿し増殖又は無性生殖的に増殖することを特徴とする上記1記載のパイナップル植物の育成方法。
3.上記1記載のパイナップル植物又は上記2記載の方法により産生されたパイナップル植物の果実。
4.上記1記載のパイナップル植物又は上記2記載の方法により産生されたパイナップル植物のハパス。
5.上記1記載のパイナップル植物又は上記2記載の方法により産生されたパイナップル植物の吸根。
6.上記1記載のパイナップル植物又は上記2記載の方法により産生されたパイナップル植物の冠部。
7.上記1記載のパイナップル植物又は上記2記載の方法により産生されたパイナップル植物の挿し枝。
【0006】
本発明の新パイナップル植物は、より高い糖含量、特有の混合トロピカル風味、食用果肉の顔料着色の少なさ、厚く直立した葉、および果実外皮(shell)の目がより小さく、高密度でよりテクスチャー(きめ)の細かい食用果肉を有する点で、従来のパイナップル植物とは異なる。すなわち、本発明のパイナップル植物は、缶詰および新鮮市場の双方に使用されるカイエンクローン、および本発明者にとってはハワイパイナップル研究所(PRI)ハイブリッド73−50(ハワイCO−2)および73−114として特に知られ、商業市場ではデルモンテ・ゴールドとして、または一時期MD2として知られていた他のパイナップルハイブリッドとは明白に異なっていることを、本発明者は連続増殖を通して確認した。
【0007】
以下は、サンミグエル(San Miguel)、マノロ・フォルティッチ(Manolo Fortich)、ブキドノン(Bukidnon)における本発明者の苗場、およびルルガン(Lurugan)、バレンシアシティー(Valencia City)、ブキドノン、フィリピンにおける商用農地(commercial field)で新規なパイナップル植物の無性部分から生育させた新種の一般的な個体群の記載であり、2004年2月、4月および6月において花序発育期間中になされたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
詳細な植物の説明
名称:アナナス・コモサス種、品種「プレシャス(Precious)」
親植物:
I.種子母本:未知
II.花粉母本:未知
カイエンクローンと種々のパイナップルハイブリッドの混植間交配
【0009】
起源:種々のパイナップルハイブリッド、73114(デルモンテ・ゴールド)および7350(ハワイCO2)およびカイエンクローン74、ドール(Dole)F200、チャンパカ(Champaka)153の混植自然交配。
【0010】
分類:
I.植物学:ブロメリアセアエすなわちパイナップル科
II.亜科:ブロメリアセアエ、アナナス属、コモサス種、品種プレシャス
III.商用:ブロメリアセアエ、アナナス属、コモサス種、品種プレシャス
【0011】
形態:複合花序(開花期中)を囲むロート形ロゼットから無柄葉が重なり、開花期中またはその後に開始する2本から5本の発根性分枝(かき苗および「ハパス(hapas)」)を形成し、最初の果実収穫後に続いて作物を生産する優性分枝(または果実形成台芽)を有する陸生(栽培において)。ハパスは、上方に成長した分枝であり、台芽よりも高く、花梗より下につく(図2)。
【0012】
茎:
I.概要:短く、直立し、葉の重なりによって包まれており、各葉の葉腋は休眠腋芽を有する。
II.茎テクスチャー(きめ):無毛、多肉質
III.茎サイズ:
A)長さ(地面より上):通常、開花期において20cmと29cmとの間、
B)直径:地面で5.8cmから8.0cmの間、開花期中は地面の5cm上で6.6cmから6.9cmの間。
IV.茎の形状:円柱形で、地面でより小さな直径へと幾らか先細りしている。
【0013】
葉:
I.概要:密着した無柄葉が重なって(求頂的に形成)高密度のロゼットを形成し、縦断切片におけるその外形は、凡そハート形である。30枚から50枚の数の葉が、5/10の葉序を有している。
II.葉のテクスチャー:
A)上部表皮領域:上部表皮領域(葉の先端部を除いて)において、無毛の半硬質で溝形成(または凹面)、
B)下部の表皮領域:微細横紋(縦に)があり、鱗様毛状突起からなる、白色ぬか状層で覆われているように見える。
III.葉序:交互のロゼット状。
IV.葉縁:葉の下部に通常位置する、不規則に間隙のある小三角形かぎ状毛棘が希に見られる面。
【0014】
V.葉脈:平行で不明瞭。
VI.葉形:葉は、均一な形状ではなく、茎上の葉の位置により変わる。基部または一番古い葉は、皮針形の形態であるが、基部はかなり広がっている。葉の非クロロフィル部(基部)とクロロフィル部(または主要部)との幅は明確な狭小化がある。最長の、または最も成熟した葉は、皮針形の形態であるが、基部は、先行の葉の弓状拡大がない。残りの葉(または植物ロゼットの中心葉)は、個別の基部への幅拡大のない皮針形の形態である。
VII.葉のサイズ(D−葉測定):
A)長さ:D−葉は、通常、97cmと121cmとの間であり、これらの葉は、77cmと110cmとの間の茎の中間部由来のものである。
B)幅:最長の葉の中間の葉領域において、通常4.8cmと5.8cmとの間であり、拡張足盤は、通常7.2cmから13.0cmの最大幅を有する。
C)厚さ:最長の葉において、中間葉領域において通常、2.0mmから3.0mmであり、縁では1.0mmから2.0mmと側方に先細りとなるが、先端近くでは1.0mmと僅かに、より薄くなる。
D−葉は、全ての葉が直立して保持されている場合、最大高さ、または最長の葉である。それは、パイナップル植物の高さの測定、また、その植物の栄養状態の決定に用いられる葉である。
【0015】
VIII.葉の色:
A)上部表皮表面:1.概要:色は、紫緑色、オリーブ緑色、および赤緑色の色相が、通常優位を占め、この色相は葉の先端部においては紫緑色から赤褐色が優位を占めている色相に色が同化している。足盤領域野の色は、緑黄色および明緑色の色相が優位を占めている。2.クロロフィル足盤領域:通常、明緑黄色。3.中間葉領域:通常、緑色、赤褐色、および赤紫色。4.葉先端領域:通常、緑がかったオリーブ、赤、およびまたは緑がかった紫色。
B)下部表皮表面:1.概要:通常、オリーブ緑色から赤みがかったオリーブ緑色で足盤領域は緑白色。2.低部表皮表面:通常、オリーブ緑色および/または灰色がかったオリーブ緑色である色をぼかしている、カサカサした表面。
【0016】
花序
I.概要:1花序当たり134個(8パック)から165個(6パック)の小果実を有する混成花につき、頂端分裂組織において凡そ21.6cmの長さの長い花梗についた。個々の両性花は、4枚のがく片、6枚のおしべ、1つの柱頭、および3枚の花弁からなる。この花序は自家不和合性であり、単為結実的に食用果実を生じる。
II.テクスチャー:無毛で肉質
III.形状:特有の赤緑色冠部の僅かに隆起した花を有する卵形。冠部領域は短く、開花時、直立している。
IV.サイズと色:アナナス・コモサスL.メール(L.mer.)の標本と同等。
【0017】
果実:
I.果実サイズ:通常、最初の収穫期に1.5kgの平均果実重量で0.6kgから2.2kgの重量。
II.果実形状:スムースカイエンおよびMD2またはCO2と比較して、小果実を有する卵形で僅かに先細り。スムースカイエンおよびMD2よりも硬く、厚い硬質葉を有する中等冠部。
III.つき方:果実は、通常、長さが18cmから21cmの長い花梗上の植物頂端分裂組織から発達する。
IV.植物病耐性:MD2またはデルモンテ・ゴールドと比較して、フィトフトーラ・シナモミ(Phytophtora cinamomi)およびフィトフトーラ・パラシチカ(Phytophtora parasitica)により引き起されるフィトフトーラ心腐れに対し高耐性であり、またセラトシスチス・パラドキサ(Ceratocystis paradoxa)により引き起される苗まくら地腐れ(butt-rot)に対し高耐性である。また、感受性のMD2(デルモンテ・ゴールド)に比較して、エルウィニア(Ervinia)細菌性陥没に対して耐性である。
V.味覚試験記録:苗場および農地における味覚試験により、MD2(デルモンテ・ゴールド)よりも果肉の外観およびテクスチャーを群のうち75パーセントが好み、および味覚を92.5パーセントが好んだ。それは、5種の他の最新選択果実の中で第一位にランク付けされ、一方、MD2は、第三位にランク付けされた。
VI.色:熟成した成熟期において黄橙色(外皮(shell)カラー5)。
VII.果実密度:MD2と比較して、より高密度の果肉または低多孔性。
VIII.ブリックスレベル:典型的には、18°から21°(16°の低さから23°の高さ)
IX.全酸味レベル:典型的に0.6から0.8/100ミリリットル。
X.ビタミンC含量:通常、5.6から8.6mg/100mlで低い(またはMD2よりも凡そ3倍から4倍低い)。
【0018】
以下の項目は、サンミグエル、マノロ・フォルティッチ、ブキドノンにおける苗場での新規な発育分枝から増殖させた新種植物の一般的説明である。
【0019】
A.12ヵ月齢における植物
植物の高さ :地面上107cm
茎の長さ :33cm
茎の直径 :基部で約8.0cm
葉:
数 :39枚
長さ :最長の葉で105cm
幅(最大の葉) :中間葉(最大)で;5.2cm;足盤領域(最
大):10.1cm
厚さ :軸に沿って約2.3mm
色 :淡い紫がかった緑
【0020】
B.果実全体
重さ(グラム単位) :1,500(660から2200)
長さ(ミリメートル単位) :195(140から250)
幅(ミリメートル単位) :115mmから220mm
厚さ(ミリメートル単位) :95mmから145mm
形状(卵形、球形、その他) :卵形で僅かに先細り
【0021】
果皮
外皮の色(黄色、橙色、赤色など) :完全成熟時に黄橙色
テクスチャー(滑らか、粗い) :僅かに粗い
厚さ(ミリメートル単位) :10
重さ(適用できるならば、グラム単位):760〜800
【0022】
果肉
厚さ(ミリメートル単位) :直径92(82〜150)
色(白色、黄色など) :淡黄色
テクスチャー(柔らかい、ふやけた、滑らか、硬い):硬い
ジューシーさ(ドライ、ジューシー) :ジューシー
繊維(なし、わずか、多量) :繊維は多く(多量)、テクスチャーは柔らかい
香気(なし、中等度、強度) :中等度
総溶解性固体または°ブリックス :16°から23°
風味(例えば、酸味、やや酸味、甘味):甘酸っぱい(甘味と酸味の良好な混合)
食用部分(%) :45%
【0023】
本発明の植物の一例を以下に示す。
植物齢:最初の増殖から12ヵ月。
植物の直径:中間点における向かい合う葉の先端間で約164cm。
植物の高さ:地面上107cm。
茎:
I.長さ:33cm
II.直径:基部で約8.0cm
葉:
I.数:39枚
II.長さ:最長の葉で105cm
III.幅(最大葉):中間葉(最大);5.2cm;足盤領域(最大):10.1cm
IV.厚さ:軸に沿って約2.3mm。
V.色:明紫緑色
花序:欠如
【0024】
図1〜図7は、開花期における本発明の新種のパイナップルの典型的な標本、および果実を示すものである。
【0025】
パイナップルの無性(栄養)生殖
図8に示す無性植え付け材料、すなわち、吸根(sucker)、冠部(crown)、挿し枝(slips)、ハパス(hapas)を用いて商業用パイナップル農園で植え付けを行う。これらの材料は図2に示す親植物から採集され、図9に示すように直接圃場に植え付ける。これを数年にわたり、新たな植え付けのたびに繰り返す。この植物は、典型的な、純種の(true-to-type)、本発明のハイブリッドの特性、例えば、果実の形状、外皮の、新鮮な色、及び食感等の品種の果実特性を満足する果実を常に産生する(図10)。
本発明の新規ハイブリッドの促成無性繁殖はマイクロ又はマクロ切断と呼ばれる。これは図11に示すように、冠部又は先端を切断して、冠部又は先端の大きさにより、12〜18個程度の切片とし、これを苗床に植え付け、10ヶ月ほど生育させてから、圃場に植え付ける。この方法により産生される植物も、吸根や冠部を用いた場合と同様に典型的な、純種の(true-to-type)、本発明のハイブリッドの特性を満足する果実を常に産生する。
【0026】
本発明のパイナップル植物「プレシャス」とデルモンテ・ゴールド(MD2)のフィトフトーラ心腐れ、細菌性陥没及び葉柄の基部腐れ(butt rot)に対する耐性の比較試験
フィトフトーラ(Phytophtora)により引き起こされる心腐れ、エルウィニアクリサンテミ(Erwinia chrysanthemi) により引き起こされる細菌性陥没及びセラトシスチス(Ceratocystis paradoxa) (Thielaviopsis paradoxa) により引き起こされる葉柄の基部腐れは世界的にパイナップルの三大病害である。デルモンテ・ゴールド(MD2)と呼ばれる現在流通している品種の果実は圃場においてこれらの病気に極めて感受性が高い。土壌のpHが5.3を超えていると、植え付けしてから3〜4ヶ月後の心腐れによる致死率は40〜60%であり、収穫時までには80〜90%に達する(図12)。圃場の温度が30℃を超えると、細菌性陥没は通常深刻なものとなり、病害を受けた領域では致死率は40〜60%に達する(図13)。葉柄の基部腐れ病は植え付け材料の基部の腐食を引き起こし、雨期の植え付けに重大な損害をもたらす(図14)。
これに対して、本発明の新種パイナップル「プレシャス」はこのような病害に対する耐性が極めて高い(図13の右下、及び図15)。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のパイナップル「プレシャス」の生育段階を示す写真であり、それぞれ、収穫前1ヶ月(左上)、収穫前2週間(右上)、収穫前1週間(左下)及び収穫時(右下)における典型的な果実の外観を示している。
【図2】本発明のパイナップル「プレシャス」の典型的な特徴である、茎の中間点についた3つから6つの「ハパス」(植え付け材料として使用)を示す写真である。
【図3】本発明のパイナップル「プレシャス」の果実をつけている植物群の写真である。
【図4】本発明の新規なパイナップル「プレシャス」の基部から先端までの葉の中心における紫色がかった着色を示す冠部または先端(上の写真)を、ハイブリッドMD2および標準的カイエン種と比較して示す写真(下の写真)である。
【図5】ルロガン、バレンシア、ブキドノン、フィリピンにおけるMD2商業的植栽に囲まれた本発明のパイナップル「プレシャス」(上の写真の枠内および下の写真の「1」のマークを付けた紫色がかった葉を有する)の写真である。
【図6】本発明のパイナップル「プレシャス」の未成熟(左)および熟成果実(中央)および現行の商業的ハイブリッドMD2の熟成果実(右)の外観を示す写真である。本発明の果実は卵形をしており、ハイブリッドMD2よりも目すなわち小果実がより小さい。
【図7】鱗様毛状突起からなる、ぬか状層で覆われた小さな目を有する滑らかな外皮(shell)を示す本発明のパイナップル「プレシャス」の写真である。
【図8】パイナップルの無性植え付け材料を示す写真であり、植え付け用の冠部(又は先端)を付けたパイナップル果実(上段)、冠部(又は先端)(左下)、及び吸根(右下)を示す。
【図9】パイナップルの冠部(又は先端)及び吸根を示し(左の写真)、冠部の植え付け1ヶ月後及び吸根の植え付け3ヶ月後の写真を示す(右の写真)。
【図10】吸根から再生された本発明のパイナップル「プレシャス」の果実(上段)、MD2又はデルモンテ・ゴールドの果実(中段)及び本発明のパイナップル「プレシャス」の果実とMD2又はデルモンテ・ゴールドの果実(下段)の写真である。
【図11】本発明のパイナップル「プレシャス」の促成無性繁殖を説明する写真であり、冠部(又は先端)を切断して小さな切片とし(上段)、これを苗床に植え付け(中段)、3ヶ月後の生育状態(下段)を示す写真である。
【図12】フィトフトーラ(Phytophtora parasitica)により引き起こされた心腐れ病に感染したデルモンテ・ゴールド(MD2)の写真であり、デルモンテ・ゴールド(MD2)がこの病気に非常に弱いこと(上段)、土壌のpHが高いとフィトフトーラ心腐れ病による影響が深刻なものとなること(下段)を示す写真である。
【図13】エルウィニアクリサンテミ(Erwinia chrysanthemi) により引き起こされる細菌性陥没を受けたデルモンテ・ゴールド(MD2)の写真であり、デルモンテ・ゴールド(MD2)がこの病気に非常に弱いこと(上段及び下段左)、これに対してこのデルモンテ・ゴールド(MD2)に近接して植え付けられた本発明のパイナップル「プレシャス」は全く病害の影響を受けないことを示している(下段右)。
【図14】セラトシスチスパラドキサ(Ceratocystis paradoxa) (Thielaviopsis paradoxa) により引き起こされたMD2の果実の基部腐れ(butt rot)(左)及び植え付け材料(冠部又は先端)の基部腐れ(butt rot)(右)を示す写真である。
【図15】本発明のパイナップル「プレシャス」の冠部がセラトシスチスパラドキサによる病害を受けていないことを示す写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイナップル植物、その育成方法及び果実に関する。さらに詳細には、本発明は、ブロメリアセアエ(Bromeliaceae)すなわちパイナップル科の新規で独特な品種に関するものであり、これは、スムースカイエン(smooth cayenne)に属する種々のパイナップルハイブリッドの混植において生じる自然交配およびクローン選択から誘導された混合種個体群から選択されたパイナップル植物、その育成方法及び果実に関する。故に、この新規なハイブリッドの真の交配母本を確認することはできない。パイナップル類は自家不和合性であり、これは、1種の別個の品種が単一個体群として植付けられた場合、通常、交配または自己受粉せず、したがって種子を生じないことを意味する。パイナップル類は、2種の異なる品種間の育種または自然交配受粉からのみ種子を生じ、異なる栽培品種またはハイブリッドに成長する生存可能な種子の生産がもたらされる。
【背景技術】
【0002】
自然交配の後代から選択された標本は、発見者または発明者であるファウスチノP.オブレロ(Faustino P.Obrero)博士の発見時期に苗床において栽培されており、それ以来、新規な品種は、前記標本から採取された植物の茎挿し増殖および無性部分の使用により、同じ苗床で無性生殖的に再生された。
【0003】
スムースカイエン・パイナップル(アナナス・コモサス(Ananas comosus))は、フィリピン、ハワイおよび世界中の他のパイナップル生育領域において生育された主要な商業的パイナップルの品種である。ハイブリッドクローンは、50パーセントを超えるスムースカイエン遺伝子を含有しているが、交配受粉法を用いて変えられたスムースカイエン・パイナップルに関連している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一般的な目的は、より甘い(高ブリックス)、安定な酸味を生じ、寄生虫による果実病になりにくく、内部褐変と呼ばれる生理障害に対してより寛容性、または耐性であり、均一な黄色を有し、冷蔵保存後、良好な果実外観を有する新種のパイナップルを提供することである。
本発明の他の目的は、パイナップル植物病、特にフィトフトーラ(Phytophtora)心腐れおよび根腐れ(heart and root rot)、根元腐れ、葉柄の基部腐れ、セラトシスチス(Ceratocystis)苗まくら地腐れおよび果実腐れ(seedling butt rot and fruit rot)、エルウィナ(Erwina)細菌性陥没(bacterial collapse)に対して耐性であり、販売可能な最新パイナップルの許容できる収穫量を生じる新種を提供することである。
デルモンテ・ゴールド(Del Monte Gold)またはPRI73114(別名:スウィーチオ(Sweetio)、ハニー(Honey))として知られている新規な商業的に最新のパイナップルハイブリッドは、上記の病気に罹りやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のパイナップル植物、その育成方法及び果実を提供するものである。
1.下記の特性を有するブロメリアセアエ、アナナス属のパイナップル植物。
植物病耐性:フィトフトーラにより引き起されるフィトフトーラ心腐れに対し高耐性であり、セラトシスチスにより引き起される苗まくら地腐れに対し高耐性であり、エルウィニア細菌性陥没に対して高耐性である。
2.上記1記載の植物を茎挿し増殖又は無性生殖的に増殖することを特徴とする上記1記載のパイナップル植物の育成方法。
3.上記1記載のパイナップル植物又は上記2記載の方法により産生されたパイナップル植物の果実。
4.上記1記載のパイナップル植物又は上記2記載の方法により産生されたパイナップル植物のハパス。
5.上記1記載のパイナップル植物又は上記2記載の方法により産生されたパイナップル植物の吸根。
6.上記1記載のパイナップル植物又は上記2記載の方法により産生されたパイナップル植物の冠部。
7.上記1記載のパイナップル植物又は上記2記載の方法により産生されたパイナップル植物の挿し枝。
【0006】
本発明の新パイナップル植物は、より高い糖含量、特有の混合トロピカル風味、食用果肉の顔料着色の少なさ、厚く直立した葉、および果実外皮(shell)の目がより小さく、高密度でよりテクスチャー(きめ)の細かい食用果肉を有する点で、従来のパイナップル植物とは異なる。すなわち、本発明のパイナップル植物は、缶詰および新鮮市場の双方に使用されるカイエンクローン、および本発明者にとってはハワイパイナップル研究所(PRI)ハイブリッド73−50(ハワイCO−2)および73−114として特に知られ、商業市場ではデルモンテ・ゴールドとして、または一時期MD2として知られていた他のパイナップルハイブリッドとは明白に異なっていることを、本発明者は連続増殖を通して確認した。
【0007】
以下は、サンミグエル(San Miguel)、マノロ・フォルティッチ(Manolo Fortich)、ブキドノン(Bukidnon)における本発明者の苗場、およびルルガン(Lurugan)、バレンシアシティー(Valencia City)、ブキドノン、フィリピンにおける商用農地(commercial field)で新規なパイナップル植物の無性部分から生育させた新種の一般的な個体群の記載であり、2004年2月、4月および6月において花序発育期間中になされたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
詳細な植物の説明
名称:アナナス・コモサス種、品種「プレシャス(Precious)」
親植物:
I.種子母本:未知
II.花粉母本:未知
カイエンクローンと種々のパイナップルハイブリッドの混植間交配
【0009】
起源:種々のパイナップルハイブリッド、73114(デルモンテ・ゴールド)および7350(ハワイCO2)およびカイエンクローン74、ドール(Dole)F200、チャンパカ(Champaka)153の混植自然交配。
【0010】
分類:
I.植物学:ブロメリアセアエすなわちパイナップル科
II.亜科:ブロメリアセアエ、アナナス属、コモサス種、品種プレシャス
III.商用:ブロメリアセアエ、アナナス属、コモサス種、品種プレシャス
【0011】
形態:複合花序(開花期中)を囲むロート形ロゼットから無柄葉が重なり、開花期中またはその後に開始する2本から5本の発根性分枝(かき苗および「ハパス(hapas)」)を形成し、最初の果実収穫後に続いて作物を生産する優性分枝(または果実形成台芽)を有する陸生(栽培において)。ハパスは、上方に成長した分枝であり、台芽よりも高く、花梗より下につく(図2)。
【0012】
茎:
I.概要:短く、直立し、葉の重なりによって包まれており、各葉の葉腋は休眠腋芽を有する。
II.茎テクスチャー(きめ):無毛、多肉質
III.茎サイズ:
A)長さ(地面より上):通常、開花期において20cmと29cmとの間、
B)直径:地面で5.8cmから8.0cmの間、開花期中は地面の5cm上で6.6cmから6.9cmの間。
IV.茎の形状:円柱形で、地面でより小さな直径へと幾らか先細りしている。
【0013】
葉:
I.概要:密着した無柄葉が重なって(求頂的に形成)高密度のロゼットを形成し、縦断切片におけるその外形は、凡そハート形である。30枚から50枚の数の葉が、5/10の葉序を有している。
II.葉のテクスチャー:
A)上部表皮領域:上部表皮領域(葉の先端部を除いて)において、無毛の半硬質で溝形成(または凹面)、
B)下部の表皮領域:微細横紋(縦に)があり、鱗様毛状突起からなる、白色ぬか状層で覆われているように見える。
III.葉序:交互のロゼット状。
IV.葉縁:葉の下部に通常位置する、不規則に間隙のある小三角形かぎ状毛棘が希に見られる面。
【0014】
V.葉脈:平行で不明瞭。
VI.葉形:葉は、均一な形状ではなく、茎上の葉の位置により変わる。基部または一番古い葉は、皮針形の形態であるが、基部はかなり広がっている。葉の非クロロフィル部(基部)とクロロフィル部(または主要部)との幅は明確な狭小化がある。最長の、または最も成熟した葉は、皮針形の形態であるが、基部は、先行の葉の弓状拡大がない。残りの葉(または植物ロゼットの中心葉)は、個別の基部への幅拡大のない皮針形の形態である。
VII.葉のサイズ(D−葉測定):
A)長さ:D−葉は、通常、97cmと121cmとの間であり、これらの葉は、77cmと110cmとの間の茎の中間部由来のものである。
B)幅:最長の葉の中間の葉領域において、通常4.8cmと5.8cmとの間であり、拡張足盤は、通常7.2cmから13.0cmの最大幅を有する。
C)厚さ:最長の葉において、中間葉領域において通常、2.0mmから3.0mmであり、縁では1.0mmから2.0mmと側方に先細りとなるが、先端近くでは1.0mmと僅かに、より薄くなる。
D−葉は、全ての葉が直立して保持されている場合、最大高さ、または最長の葉である。それは、パイナップル植物の高さの測定、また、その植物の栄養状態の決定に用いられる葉である。
【0015】
VIII.葉の色:
A)上部表皮表面:1.概要:色は、紫緑色、オリーブ緑色、および赤緑色の色相が、通常優位を占め、この色相は葉の先端部においては紫緑色から赤褐色が優位を占めている色相に色が同化している。足盤領域野の色は、緑黄色および明緑色の色相が優位を占めている。2.クロロフィル足盤領域:通常、明緑黄色。3.中間葉領域:通常、緑色、赤褐色、および赤紫色。4.葉先端領域:通常、緑がかったオリーブ、赤、およびまたは緑がかった紫色。
B)下部表皮表面:1.概要:通常、オリーブ緑色から赤みがかったオリーブ緑色で足盤領域は緑白色。2.低部表皮表面:通常、オリーブ緑色および/または灰色がかったオリーブ緑色である色をぼかしている、カサカサした表面。
【0016】
花序
I.概要:1花序当たり134個(8パック)から165個(6パック)の小果実を有する混成花につき、頂端分裂組織において凡そ21.6cmの長さの長い花梗についた。個々の両性花は、4枚のがく片、6枚のおしべ、1つの柱頭、および3枚の花弁からなる。この花序は自家不和合性であり、単為結実的に食用果実を生じる。
II.テクスチャー:無毛で肉質
III.形状:特有の赤緑色冠部の僅かに隆起した花を有する卵形。冠部領域は短く、開花時、直立している。
IV.サイズと色:アナナス・コモサスL.メール(L.mer.)の標本と同等。
【0017】
果実:
I.果実サイズ:通常、最初の収穫期に1.5kgの平均果実重量で0.6kgから2.2kgの重量。
II.果実形状:スムースカイエンおよびMD2またはCO2と比較して、小果実を有する卵形で僅かに先細り。スムースカイエンおよびMD2よりも硬く、厚い硬質葉を有する中等冠部。
III.つき方:果実は、通常、長さが18cmから21cmの長い花梗上の植物頂端分裂組織から発達する。
IV.植物病耐性:MD2またはデルモンテ・ゴールドと比較して、フィトフトーラ・シナモミ(Phytophtora cinamomi)およびフィトフトーラ・パラシチカ(Phytophtora parasitica)により引き起されるフィトフトーラ心腐れに対し高耐性であり、またセラトシスチス・パラドキサ(Ceratocystis paradoxa)により引き起される苗まくら地腐れ(butt-rot)に対し高耐性である。また、感受性のMD2(デルモンテ・ゴールド)に比較して、エルウィニア(Ervinia)細菌性陥没に対して耐性である。
V.味覚試験記録:苗場および農地における味覚試験により、MD2(デルモンテ・ゴールド)よりも果肉の外観およびテクスチャーを群のうち75パーセントが好み、および味覚を92.5パーセントが好んだ。それは、5種の他の最新選択果実の中で第一位にランク付けされ、一方、MD2は、第三位にランク付けされた。
VI.色:熟成した成熟期において黄橙色(外皮(shell)カラー5)。
VII.果実密度:MD2と比較して、より高密度の果肉または低多孔性。
VIII.ブリックスレベル:典型的には、18°から21°(16°の低さから23°の高さ)
IX.全酸味レベル:典型的に0.6から0.8/100ミリリットル。
X.ビタミンC含量:通常、5.6から8.6mg/100mlで低い(またはMD2よりも凡そ3倍から4倍低い)。
【0018】
以下の項目は、サンミグエル、マノロ・フォルティッチ、ブキドノンにおける苗場での新規な発育分枝から増殖させた新種植物の一般的説明である。
【0019】
A.12ヵ月齢における植物
植物の高さ :地面上107cm
茎の長さ :33cm
茎の直径 :基部で約8.0cm
葉:
数 :39枚
長さ :最長の葉で105cm
幅(最大の葉) :中間葉(最大)で;5.2cm;足盤領域(最
大):10.1cm
厚さ :軸に沿って約2.3mm
色 :淡い紫がかった緑
【0020】
B.果実全体
重さ(グラム単位) :1,500(660から2200)
長さ(ミリメートル単位) :195(140から250)
幅(ミリメートル単位) :115mmから220mm
厚さ(ミリメートル単位) :95mmから145mm
形状(卵形、球形、その他) :卵形で僅かに先細り
【0021】
果皮
外皮の色(黄色、橙色、赤色など) :完全成熟時に黄橙色
テクスチャー(滑らか、粗い) :僅かに粗い
厚さ(ミリメートル単位) :10
重さ(適用できるならば、グラム単位):760〜800
【0022】
果肉
厚さ(ミリメートル単位) :直径92(82〜150)
色(白色、黄色など) :淡黄色
テクスチャー(柔らかい、ふやけた、滑らか、硬い):硬い
ジューシーさ(ドライ、ジューシー) :ジューシー
繊維(なし、わずか、多量) :繊維は多く(多量)、テクスチャーは柔らかい
香気(なし、中等度、強度) :中等度
総溶解性固体または°ブリックス :16°から23°
風味(例えば、酸味、やや酸味、甘味):甘酸っぱい(甘味と酸味の良好な混合)
食用部分(%) :45%
【0023】
本発明の植物の一例を以下に示す。
植物齢:最初の増殖から12ヵ月。
植物の直径:中間点における向かい合う葉の先端間で約164cm。
植物の高さ:地面上107cm。
茎:
I.長さ:33cm
II.直径:基部で約8.0cm
葉:
I.数:39枚
II.長さ:最長の葉で105cm
III.幅(最大葉):中間葉(最大);5.2cm;足盤領域(最大):10.1cm
IV.厚さ:軸に沿って約2.3mm。
V.色:明紫緑色
花序:欠如
【0024】
図1〜図7は、開花期における本発明の新種のパイナップルの典型的な標本、および果実を示すものである。
【0025】
パイナップルの無性(栄養)生殖
図8に示す無性植え付け材料、すなわち、吸根(sucker)、冠部(crown)、挿し枝(slips)、ハパス(hapas)を用いて商業用パイナップル農園で植え付けを行う。これらの材料は図2に示す親植物から採集され、図9に示すように直接圃場に植え付ける。これを数年にわたり、新たな植え付けのたびに繰り返す。この植物は、典型的な、純種の(true-to-type)、本発明のハイブリッドの特性、例えば、果実の形状、外皮の、新鮮な色、及び食感等の品種の果実特性を満足する果実を常に産生する(図10)。
本発明の新規ハイブリッドの促成無性繁殖はマイクロ又はマクロ切断と呼ばれる。これは図11に示すように、冠部又は先端を切断して、冠部又は先端の大きさにより、12〜18個程度の切片とし、これを苗床に植え付け、10ヶ月ほど生育させてから、圃場に植え付ける。この方法により産生される植物も、吸根や冠部を用いた場合と同様に典型的な、純種の(true-to-type)、本発明のハイブリッドの特性を満足する果実を常に産生する。
【0026】
本発明のパイナップル植物「プレシャス」とデルモンテ・ゴールド(MD2)のフィトフトーラ心腐れ、細菌性陥没及び葉柄の基部腐れ(butt rot)に対する耐性の比較試験
フィトフトーラ(Phytophtora)により引き起こされる心腐れ、エルウィニアクリサンテミ(Erwinia chrysanthemi) により引き起こされる細菌性陥没及びセラトシスチス(Ceratocystis paradoxa) (Thielaviopsis paradoxa) により引き起こされる葉柄の基部腐れは世界的にパイナップルの三大病害である。デルモンテ・ゴールド(MD2)と呼ばれる現在流通している品種の果実は圃場においてこれらの病気に極めて感受性が高い。土壌のpHが5.3を超えていると、植え付けしてから3〜4ヶ月後の心腐れによる致死率は40〜60%であり、収穫時までには80〜90%に達する(図12)。圃場の温度が30℃を超えると、細菌性陥没は通常深刻なものとなり、病害を受けた領域では致死率は40〜60%に達する(図13)。葉柄の基部腐れ病は植え付け材料の基部の腐食を引き起こし、雨期の植え付けに重大な損害をもたらす(図14)。
これに対して、本発明の新種パイナップル「プレシャス」はこのような病害に対する耐性が極めて高い(図13の右下、及び図15)。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のパイナップル「プレシャス」の生育段階を示す写真であり、それぞれ、収穫前1ヶ月(左上)、収穫前2週間(右上)、収穫前1週間(左下)及び収穫時(右下)における典型的な果実の外観を示している。
【図2】本発明のパイナップル「プレシャス」の典型的な特徴である、茎の中間点についた3つから6つの「ハパス」(植え付け材料として使用)を示す写真である。
【図3】本発明のパイナップル「プレシャス」の果実をつけている植物群の写真である。
【図4】本発明の新規なパイナップル「プレシャス」の基部から先端までの葉の中心における紫色がかった着色を示す冠部または先端(上の写真)を、ハイブリッドMD2および標準的カイエン種と比較して示す写真(下の写真)である。
【図5】ルロガン、バレンシア、ブキドノン、フィリピンにおけるMD2商業的植栽に囲まれた本発明のパイナップル「プレシャス」(上の写真の枠内および下の写真の「1」のマークを付けた紫色がかった葉を有する)の写真である。
【図6】本発明のパイナップル「プレシャス」の未成熟(左)および熟成果実(中央)および現行の商業的ハイブリッドMD2の熟成果実(右)の外観を示す写真である。本発明の果実は卵形をしており、ハイブリッドMD2よりも目すなわち小果実がより小さい。
【図7】鱗様毛状突起からなる、ぬか状層で覆われた小さな目を有する滑らかな外皮(shell)を示す本発明のパイナップル「プレシャス」の写真である。
【図8】パイナップルの無性植え付け材料を示す写真であり、植え付け用の冠部(又は先端)を付けたパイナップル果実(上段)、冠部(又は先端)(左下)、及び吸根(右下)を示す。
【図9】パイナップルの冠部(又は先端)及び吸根を示し(左の写真)、冠部の植え付け1ヶ月後及び吸根の植え付け3ヶ月後の写真を示す(右の写真)。
【図10】吸根から再生された本発明のパイナップル「プレシャス」の果実(上段)、MD2又はデルモンテ・ゴールドの果実(中段)及び本発明のパイナップル「プレシャス」の果実とMD2又はデルモンテ・ゴールドの果実(下段)の写真である。
【図11】本発明のパイナップル「プレシャス」の促成無性繁殖を説明する写真であり、冠部(又は先端)を切断して小さな切片とし(上段)、これを苗床に植え付け(中段)、3ヶ月後の生育状態(下段)を示す写真である。
【図12】フィトフトーラ(Phytophtora parasitica)により引き起こされた心腐れ病に感染したデルモンテ・ゴールド(MD2)の写真であり、デルモンテ・ゴールド(MD2)がこの病気に非常に弱いこと(上段)、土壌のpHが高いとフィトフトーラ心腐れ病による影響が深刻なものとなること(下段)を示す写真である。
【図13】エルウィニアクリサンテミ(Erwinia chrysanthemi) により引き起こされる細菌性陥没を受けたデルモンテ・ゴールド(MD2)の写真であり、デルモンテ・ゴールド(MD2)がこの病気に非常に弱いこと(上段及び下段左)、これに対してこのデルモンテ・ゴールド(MD2)に近接して植え付けられた本発明のパイナップル「プレシャス」は全く病害の影響を受けないことを示している(下段右)。
【図14】セラトシスチスパラドキサ(Ceratocystis paradoxa) (Thielaviopsis paradoxa) により引き起こされたMD2の果実の基部腐れ(butt rot)(左)及び植え付け材料(冠部又は先端)の基部腐れ(butt rot)(右)を示す写真である。
【図15】本発明のパイナップル「プレシャス」の冠部がセラトシスチスパラドキサによる病害を受けていないことを示す写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の特性を有するブロメリアセアエ、アナナス属のパイナップル植物。
植物病耐性:フィトフトーラにより引き起されるフィトフトーラ心腐れに対し高耐性であり、セラトシスチスにより引き起される苗まくら地腐れに対し高耐性であり、エルウィニア細菌性陥没に対して高耐性である。
【請求項2】
請求項1記載の植物を茎挿し増殖又は無性生殖的に増殖することを特徴とする請求項1記載のパイナップル植物の育成方法。
【請求項3】
請求項1記載のパイナップル植物又は請求項2記載の方法により産生されたパイナップル植物の果実。
【請求項4】
請求項1記載のパイナップル植物又は請求項2記載の方法により産生されたパイナップル植物のハパス。
【請求項5】
請求項1記載のパイナップル植物又は請求項2記載の方法により産生されたパイナップル植物の吸根。
【請求項6】
請求項1記載のパイナップル植物又は請求項2記載の方法により産生されたパイナップル植物の冠部。
【請求項7】
請求項1記載のパイナップル植物又は請求項2記載の方法により産生されたパイナップル植物の挿し枝。
【請求項1】
下記の特性を有するブロメリアセアエ、アナナス属のパイナップル植物。
植物病耐性:フィトフトーラにより引き起されるフィトフトーラ心腐れに対し高耐性であり、セラトシスチスにより引き起される苗まくら地腐れに対し高耐性であり、エルウィニア細菌性陥没に対して高耐性である。
【請求項2】
請求項1記載の植物を茎挿し増殖又は無性生殖的に増殖することを特徴とする請求項1記載のパイナップル植物の育成方法。
【請求項3】
請求項1記載のパイナップル植物又は請求項2記載の方法により産生されたパイナップル植物の果実。
【請求項4】
請求項1記載のパイナップル植物又は請求項2記載の方法により産生されたパイナップル植物のハパス。
【請求項5】
請求項1記載のパイナップル植物又は請求項2記載の方法により産生されたパイナップル植物の吸根。
【請求項6】
請求項1記載のパイナップル植物又は請求項2記載の方法により産生されたパイナップル植物の冠部。
【請求項7】
請求項1記載のパイナップル植物又は請求項2記載の方法により産生されたパイナップル植物の挿し枝。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−252305(P2007−252305A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82655(P2006−82655)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(506100233)マウント キタングラッド アグリ ディヴェロップメント コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(506100233)マウント キタングラッド アグリ ディヴェロップメント コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】
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