説明

パイプの局所拡管成形方法、及び拡管部を有するパイプ

【課題】簡単な装置、方法で、座屈あるいは減肉、割れの不具合を生じさせることなく、パイプに局所的に拡管部を形成することが可能なパイプの局所拡管成形方法を提供する。さらに座屈あるいは減肉、割れを伴わない張り出し量の大きい拡管部を有するパイプを提供する。
【解決手段】パイプ1を局所的に拡管し拡管部2を形成するパイプの局所拡管成形方法であって、該パイプ1の軸方向に圧縮荷重を加えながら、該パイプ全体に半径方向の荷重を加えることなく、該拡管部2を形成する少なくとも一部分に、該パイプの内周面3から該パイプの外周面4に向かう半径方向の荷重を加え、パイプに局所的に拡管部2を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプを局所的に拡管し拡管部を形成する方法、及びその方法により製造された拡管部を有するパイプに関し、特に、座屈あるいは減肉、割れなどの不具合を生じることなく、パイプに拡管部を形成可能なパイプの局所拡管成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの輸送用機器では燃費向上を目的とし軽量化が強く望まれている。特に駆動軸部品では、ねじり荷重が支配的であり、軸中心部には大きな応力が発生しないことから、中実材ではなく中空パイプから希望する形状に成形すること、例えば拡管成形が望まれる。しかし、パイプに軸方向の力を加えることにより拡管しようとすると、座屈あるいは減肉、割れの不具合が生じ、困難である。
【0003】
この問題を解決する成形方法として、チューブ・ハイドロフォーミング(THF)がある。これは、パイプ内部に気体や液体を満たし、これに荷重を加えることによりパイプ内部表面から外側に圧力を加えた状態で成形することにより、座屈・減肉・割れなどの成形不具合を生じさせない方法である。しかしながら、この方法は成形装置が特殊となり生産コストが高いこと、そして、成形中にパイプ内部に液体や気体を充填させるため密閉する必要があり、金型構造が複雑になるという課題がある。さらに、パイプの肉厚が減少するという減肉を防ぐことは困難である。
【0004】
この問題を解決するもう一つの方法として、成形前にパイプ内部にバックアップ材を充填したのちに成形する方法があり、その一つがロストコア法である(例えば特許文献1参照)。これは、低融点合金を加熱しパイプ内部に充填したのちに冷却し凝固させる。これをパイプ内部のバックアップ材として用いることにより成形中の座屈を防ぐ。成形後にはパイプを加熱し低融点合金を取り除く方法である。しかし、この方法は充填・除去作業や加熱・冷却作業が必要となり、工程が複雑になるという問題がある。
【0005】
また、ベローズ管の膨拡部を形成する方法として、割型ポンチを使用する方法が開示されている(例えば特許文献2参照)。従来ベローズ管の膨拡部の形成には、ゴムバルジ成形法が用いられていたが、ここで使用するウレタンゴムの消耗が激しく、またウレタンゴム交換に時間を要していた。これに対して特許文献2に記載の手法は、割型ポンチの予備膨拡形成部を、押圧部材で拡径させることによって、管を内周面から外周方向に押圧変更させるとするものである。
【特許文献1】特開2001−334317号公報
【特許文献2】特開2001−113318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、チューブ・ハイドロフォーミングは、座屈、割れなどの成形不具合を生じさせない方法であるが、成形装置が特殊となり生産コストが高いこと、そして、成形中にパイプ内部に液体や気体を充填させるため密閉する必要があり、金型構造が複雑になる。またロストコア法は、成形中の座屈を防ぐことは可能であるが、バックアップ材の充填・除去作業や加熱・冷却作業が必要となり、工程が複雑になる。
【0007】
また特許文献2に記載の割型ポンチを用いる手段は、チューブ・ハイドロフォーミング、ロストコア法のようにパイプの内部に充填物を充填する必要がないものの、拡管量が小さく、減肉を十分に抑制することができない。以上のことから、簡単な装置、工程で、座屈あるいは減肉、割れの不具合を生じさせることなく、中空パイプに局所的に拡管部を形成することが可能な技術の開発が待たれている。特に張り出し量の大きい拡管部を形成しようとすると、座屈あるいは減肉、割れが生じやすく、座屈あるいは減肉、割れを生じさせることなく、張り出し量の大きい拡管部を形成することができれば、利用先が大いに広がる。
【0008】
本発明の目的は、簡単な装置、方法で、座屈あるいは減肉、割れの不具合を生じさせることなく、パイプに局所的に拡管部を形成することが可能なパイプの局所拡管成形方法を提供することにある。さらに座屈あるいは減肉、割れを伴わない張り出し量の大きい拡管部を有するパイプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、パイプを局所的に拡管し拡管部を形成するパイプの局所拡管成形方法であって、
該パイプの軸方向に圧縮荷重を加えながら、該パイプ全体に半径方向の荷重を加えることなく、該拡管部を形成する少なくとも一部分に、該パイプの内周面から該パイプの外周面に向かう半径方向の荷重を加え、パイプに局所的に拡管部を形成することを特徴とするパイプの局所拡管成形方法である。
【0010】
また本発明は、パイプを局所的に拡管し拡管部を形成するパイプの局所拡管成形方法であって、
該パイプの軸方向に圧縮荷重を加えながら、該パイプ全体に半径方向の荷重を加えることなく、該拡管部を形成する少なくとも一部分に、該パイプの内周面から該パイプの外周面に向かう半径方向の荷重を加え、パイプに局所的に拡管部を形成する第一工程と、
該第一工程に続き、該パイプの半径方向に荷重を加えることなく、該パイプの軸方向に圧縮荷重を加え、該第一工程で形成した該拡管部の張り出し量を大きくする第二工程と、
を含むことを特徴とするパイプの局所拡管成形方法である。
【0011】
また本発明は、パイプを局所的に拡管し拡管部を形成するパイプの局所拡管成形方法であって、
該パイプの軸方向に圧縮荷重を加えながら、該パイプ全体に半径方向の荷重を加えることなく、該拡管部を形成する少なくとも一部分に、該パイプの内周面から該パイプの外周面に向かう半径方向の荷重を加え、パイプに局所的に拡管部を形成する第一工程と、
該第一工程に続き、該パイプの半径方向に荷重を加えることなく、該第一工程で形成された該拡管部に対し、該パイプの軸方向と平行な圧縮荷重を加え、該第一工程で形成した該拡管部の張り出し量を大きくする第二工程と、
を含むことを特徴とするパイプの局所拡管成形方法である。
【0012】
また本発明で、前記パイプの半径方向に加える荷重は、前記拡管部を形成する部分が前記パイプの軸線に平行になるように行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載のパイプの局所拡管成形方法である。
【0013】
また本発明は、前記拡管部を形成する部分であって、前記パイプの半径方向に荷重を加えることなく前記パイプの軸方向に圧縮荷重を加えると、座屈の屈曲が生じると予測される部分を算出し、
前記パイプの半径方向に荷重を加える操作は、該座屈の屈曲が生じると予測される部分に行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1に記載のパイプの局所拡管成形方法である。
【0014】
また本発明は、パイプを局所的に拡管し拡管部を形成するパイプの局所拡管成形方法であって、
該パイプの該拡管部を形成する部分であり該パイプの内側に円柱体を設置し、
該パイプの軸方向に圧縮荷重を加えながら、該円柱体に軸方向の圧縮荷重を加えて該円柱体を変形させ、変形する該円柱体により該パイプに対し該パイプの内周面から外周面に向かう力を与え、パイプに局所的に拡管部を形成することを特徴とするパイプの局所拡管成形方法である。
【0015】
また本発明は、パイプを局所的に拡管し拡管部を形成するパイプの局所拡管成形方法であって、
該パイプの該拡管部を形成する部分であり該パイプの内側に円柱体を設置し、
該パイプの軸方向に圧縮荷重を加えながら、該円柱体に軸方向の圧縮荷重を加えて該円柱体を変形させ、変形する該円柱体により該パイプに対し該パイプの内周面から外周面に向かう力を与え、パイプに局所的に拡管部を形成する第一工程と、
該第一工程に続き、該パイプの半径方向に荷重を加えることなく、該第一工程で形成された拡管部に対し該パイプの軸方向と平行な圧縮荷重を加え、該第一工程で形成した該拡管部の張り出し量を大きくする第二工程と、
を含むことを特徴とするパイプの局所拡管成形方法である。
【0016】
また本発明は、パイプを局所的に拡管し拡管部を形成するパイプの局所拡管成形方法であって、
該パイプの該拡管部を形成する部分であり該パイプの内側に円柱体を設置し、
該パイプの軸方向に圧縮荷重を加えながら、該円柱体に軸方向の圧縮荷重を加えて該円柱体を変形させ、変形する該円柱体により該パイプに対し該パイプの内周面から外周面に向かう力を与え、パイプに局所的に拡管部を形成する第一工程と、
該第一工程に続き、該パイプの半径方向に荷重を加えることなく、該第一工程で形成された該拡管部に対し該パイプの軸方向と平行な圧縮荷重を加えながら、該パイプの軸方向にも圧縮荷重を加え、該第一工程で形成した該拡管部の張り出し量を大きくする第二工程と、
を含むことを特徴とするパイプの局所拡管成形方法である。
【0017】
また本発明で、前記円柱体は、軸方向の圧縮荷重を加えられ変形した後は、前記パイプの拡管部に挟持され、前記拡管部と一体となることを特徴とする請求項6から8のいずれか1に記載のパイプの局所拡管成形方法である。
【0018】
また本発明で、前記円柱体は、中空材又は中実材であることを特徴とする請求項6から9のいずれか1に記載のパイプの局所拡管成形方法である。
【0019】
また本発明は、前記請求項1から10のいずれか1に記載の方法により局所的に形成された拡管部を有するパイプである。
【0020】
また本発明は、前記請求項1から10のいずれか1に記載の方法により局所的に形成された拡管部を有するパイプであって、前記拡管部は、成形前のパイプの外径Dに対する拡管部の外径Dの比D/Dが、1.8〜2.0であることを特徴とする拡管部を有するパイプである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、パイプの軸方向に圧縮荷重を加えながら、拡管部を形成する少なくとも一部分に、パイプの内周面からパイプの外周面に向かう半径方向の荷重を加え、パイプに局所的に拡管部を形成するので、膨出による材料の不足を補うことが可能となり、座屈、減肉、割れなどの不具合を生じさせることなく、パイプに局所的拡管を形成することができる。
【0022】
また本発明は、パイプ全体に半径方向の荷重を加えることなく、拡管部を形成する少なくとも一部分に、例えば半径方向パンチを用いて、パイプの内周面からパイプの外周面に向かう半径方向の荷重を加えるので、チューブ・ハイドロフォーミング、又はロストコア法のように、パイプの内部全体を加圧し半径方向に荷重を加える必要がない。このためチューブ・ハイドロフォーミング、又はロストコア法などに比較して簡単に拡管部を形成することができる。またパイプ内部に気体、液体、又は低溶融金属を充填する必要がなく、後処理も簡単である。
【0023】
また本発明のパイプの局所拡管成形方法は、パイプの軸方向に圧縮荷重を加えながら、パイプ全体に半径方向の荷重を加えることなく、拡管部を形成する少なくとも一部分に、パイプの内周面からパイプの外周面に向かう半径方向の荷重を加え、パイプに局所的に拡管部を形成する第一工程と、第一工程に続き、パイプに半径方向の荷重を加えることなく、パイプに軸方向の圧縮荷重を加え、第一工程で形成した拡管部の張り出し量を大きくする第二工程と、を含むので、膨出による材料の不足を補うことが可能となり、座屈、減肉、割れなどの不具合を生じさせることなく、パイプに局所的拡管を形成することができる。また、張り出し量の大きい拡管部を形成することができる。
【0024】
また本発明のパイプの局所拡管成形方法は、パイプの軸方向に圧縮荷重を加えながら、パイプ全体に半径方向の荷重を加えることなく、拡管部を形成する少なくとも一部分に、パイプの内周面からパイプの外周面に向かう半径方向の荷重を加え、パイプに局所的に拡管部を形成する第一工程と、第一工程に続き、パイプに半径方向の荷重を加えることなく、第一工程で形成された拡管部に対し、パイプの軸方向と平行な圧縮荷重を加え、第一工程で形成した拡管部の張り出し量を大きくする第二工程と、を含むので、膨出による材料の不足を補うことが可能となり、座屈、減肉、割れなどの不具合を生じさせることなく、パイプに局所的拡管を形成することができる。また、張り出し量の大きい拡管部を形成することができる。
【0025】
また本発明によれば、パイプの半径方向に加える荷重は、拡管部を形成する部分がパイプの軸線に平行になるように行うので、座屈、減肉、割れなどの不具合を生じさせることなく、パイプに局所的に拡管部を形成することができる。また簡単にパイプに局所的拡管を形成することができる。
【0026】
また本発明のパイプの局所拡管成形方法は、拡管部を形成する部分であって、パイプに半径方向の荷重を加えることなく、パイプの軸方向に圧縮荷重を加えると、座屈の屈曲が生じると予測される部分を算出し、パイプの半径方向に荷重を加える操作は、座屈の屈曲が生じると予測される部分に行うので、確実に座屈を防止することができる。
【0027】
また本発明のパイプの局所拡管成形方法は、パイプの拡管部を形成する部分でありパイプの内側に円柱体を設置し、パイプの軸方向に圧縮荷重を加えながら、円柱体に軸方向の圧縮荷重を加え円柱体を変形させ、変形する円柱体によりパイプに対し、パイプの内周面から外周面に向かう力を与え、パイプに局所的に拡管部を形成するので、膨出による材料の不足を補うことが可能となり、座屈、減肉、割れなどの不具合を生じさせることなく、パイプに局所的拡管を形成することができる。
【0028】
また本発明は、チューブ・ハイドロフォーミング、又はロストコア法のように、パイプ内部に気体、液体、又は低溶融金属を充填し、パイプの内部全体を加圧し半径方向に荷重を加える必要がないので、簡単にパイプに局所的拡管を形成することができる。さらに、チューブ・ハイドロフォーミング、又はロストコア法のように、パイプ内部に気体、液体、又は低溶融金属を充填する必要がないので、後処理が簡単である。
【0029】
また本発明は、パイプの拡管部を形成する部分でありパイプの内側に円柱体を設置し、パイプの軸方向に圧縮荷重を加えながら、円柱体に軸方向の圧縮荷重を加えて円柱体を変形させ、変形する円柱体によりパイプに対しパイプの内周面から外周面に向かう力を与え、パイプに局所的に拡管部を形成する第一工程と、第一工程に続き、パイプに半径方向の荷重を加えることなく、第一工程で形成された拡管部に対しパイプの軸方向と平行な圧縮荷重を加え、第一工程で形成した拡管部の張り出し量を大きくする第二工程と、を含むので、膨出による材料の不足を補うことが可能となり、座屈、減肉、割れなどの不具合を生じさせることなく、パイプに局所的拡管を形成することができる。また、張り出し量の大きい拡管部を形成することができる。
【0030】
また本発明は、パイプの拡管部を形成する部分でありパイプの内側に円柱体を設置し、パイプの軸方向に圧縮荷重を加えながら、円柱体に軸方向の圧縮荷重を加えて円柱体を変形させ、変形する円柱体によりパイプに対しパイプの内周面から外周面に向かう力を与え、パイプに局所的に拡管部を形成する第一工程と、第一工程に続き、パイプの半径方向に荷重を加えることなく、第一工程で形成された拡管部に対しパイプの軸方向と平行な圧縮荷重を加えながら、パイプの軸方向にも圧縮荷重を加え、第一工程で形成した拡管部の張り出し量を大きくする第二工程と、を含むので、膨出による材料の不足を補うことが可能となり、座屈、減肉、割れなどの不具合を生じさせることなく、パイプに局所的拡管を形成することができる。また、張り出し量の大きい拡管部を形成することができる。
【0031】
また本発明によれば、円柱体は、軸方向の圧縮荷重を加えられ変形した後は、パイプの拡管部に挟持され、拡管部と一体となるので、拡管部の剛性が向上し、変形量を小さくすることができる。
【0032】
また本発明によれば、円柱体は、中空材又は中実材であるので、安価でまた容易に入手することができる。これにより、簡単にパイプに局所的に拡管を形成することができる。
【0033】
また本発明によれば、請求項1から10のいずれか1に記載の方法により局所的に形成された拡管部は、成形前のパイプの外径Dに対する拡管部の外径Dの比D/Dが1.8〜2.0であるので、従来の拡管成形方法を用いて形成した拡管部に比較して張り出し量が大きい。
【0034】
パイプの軸方向に加える加圧力と、パイプの半径方向に力を加える加圧力又はパイプの内側に設置された円柱体に軸方向の力を加える加圧力とを、互いに独立して制御することにより、成形性が向上する。よって素材に複数の荷重を加えることが可能な多軸成形加工機を用いることで、より効率的に局所的拡管部を有するパイプを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明のパイプに局所的に拡管部を形成する方法の一例として、張り出し量の大きな拡管部を形成する方法を、図1(a)〜(c)を用いて説明する。図1(a)〜図1(c)は、パイプの一部を示した部分断面図である。第一ステップとして、パイプの軸方向に圧縮荷重を加えながら、パイプの拡管しようとする部分に対して、パイプの内周面から外周面に向かって半径方向の荷重を加える。図1(a)は、第一ステップであるパイプ1の軸方向に圧縮荷重を加えながら、パイプ1の拡管しようとする部分2に対して、半径方向パンチでパイプの内周面3から外周面4に向かって半径方向の荷重を加えている様子を示す図である。パイプの内周面から外周面に向かって半径方向の荷重を加えることで、座屈を抑制することが可能となり、パイプの軸方向に圧縮荷重を加えることで、減肉を抑制することができる。これにより座屈、減肉を生じることなく、パイプに拡管部を形成することができる。
【0036】
上記第一ステップは、パイプ全体に半径方向の荷重を加える必要がなく、拡管部を形成する部分に、パイプの内周面からパイプの外周面に向かう半径方向の荷重を加えるので、従来のチューブ・ハイドロフォーミング、又はロストコア法のように、パイプ内部に気体、液体、又は低溶融金属を充填し、パイプの内部全体を加圧し半径方向に荷重を加える必要がない。このため簡単にパイプに局所的に拡管部を形成することができる。さらに、チューブ・ハイドロフォーミング、又はロストコア法のように、パイプ内部に気体、液体、又は低溶融金属を充填する必要がないので、後処理が簡単である。
【0037】
上記第一ステップにより拡管部を形成することはできるが、この段階では拡管部の張り出し量は小さいので、張り出し量の大きい拡管を得るには、続いて第二ステップとして、パイプの半径方向に荷重を加えることなく、パイプの軸線方向に圧縮荷重を加える操作、及び/又は第一ステップで形成された拡管部に対しパイプの軸方向と平行な圧縮荷重を加える操作が必要となる。パイプの軸線方向に圧縮荷重を加える操作は、パイプの両端5、6からパイプの軸線に平行に圧縮荷重を加えることで実現できる。また、拡管部に対しパイプの軸方向と平行な圧縮荷重を加える操作は、拡管の両側部7、8にパイプの軸方向と平行な圧縮荷重を加えることで実現できる。
【0038】
第二ステップでは、パイプの半径方向に荷重を加えることなく、パイプの軸線方向に圧縮荷重を加える操作、又はパイプの半径方向に荷重を加えることなく、第一ステップで形成された拡管部に対しパイプの軸方向と平行な圧縮荷重を加える操作のいずれか1方の操作を行えばよい。パイプの半径方向に荷重を加えることなく、パイプの軸線方向に圧縮荷重を加える操作、及び第一ステップで形成された拡管部に対しパイプの軸方向と平行な圧縮荷重を加える操作の両方を同時に行えば、より効率的に所望の拡管を形成することができる。
【0039】
図1(b)は、第二ステップであるパイプ1の半径方向に荷重を加えることなく、第一ステップで形成された拡管部に対し、パイプの軸方向と平行な圧縮荷重を加えるために、サイドパンチでパイプの拡管部2の両側面7、8に荷重を加えながら、半径方向パンチを引き抜いている様子を示す図である。図1(c)も第二ステップであるパイプ1の半径方向に荷重を加えることなく、第一ステップで形成された拡管部に対しパイプの軸方向と平行な圧縮荷重を加えている様子を示す図である。なお、図1(a)〜図1(c)中、一点鎖線は、パイプ1の中心線9であり、パイプ1、半径方向パンチは、パイプの中心線9を中心に軸対称である。
【0040】
第二ステップにより、第一ステップで形成された張り出し量の少ない拡管部がさらに半径方向(外側)に張り出す。第二ステップでは、半径方向に荷重を加えないけれども、第一ステップにおいて、すでに張り出し量が少ないながらも拡管部が形成されているので、パイプの軸線方向にのみ圧縮荷重を加える操作、及び/又は第一ステップで形成された拡管部に対しパイプの軸方向と平行な圧縮荷重を加える操作により、座屈を生じることなく張り出し量の大きい拡管部を形成することができる。
【0041】
以上の二つのステップにより、座屈、減肉、割れなどの不具合がなく、張り出し量の大きい局所的な拡管部を有するパイプを製造することができる。なお、張り出し量の少ない拡管部を形成する場合にあっては、第一ステップのみでよいことは上記の通りである。本発明における成形法で用いるパイプとは、内部が中空で,材料は金属であり,その断面は円形であるものを基本とし,材料は塑性変形を可能とするものであればよい。
【0042】
図10(a)〜図10(d)は、本発明のパイプの局所拡管成形方法の比較例であって、パイプの半径方向に荷重を加えることなく、パイプの軸方向に荷重を加えると座屈が生じることを示すシミュレーション結果である。図10(a)〜図10(d)は、パイプ100の一部を示す部分断面図である。図10(a)〜図10(d)中、101がパイプの外周面、102が内周面、104が拡管部、105がパイプの中心線である。図10(a)は、軸方向に荷重を加える前の状態を示す図である。図10(b)〜図10(d)は、パイプの半径方向に荷重を加えることなく、パイプの軸方向に荷重を加えたときの様子を示す図であり、座屈が生じることが分かる。
【0043】
本発明のパイプの局所拡管成形方法にあっては、第一ステップでパイプの拡管しようとする部分に対して、パイプの内周面から外周面に向かって半径方向に加える荷重は、必ずしも拡管しようとする部分全体に加える必要はない。パイプの軸方向に荷重を加えたときに座屈の屈曲が生じると予測される位置にのみ、半径方向の荷重を加えてもよい。これにより座屈、減肉等を抑制することが可能なことは、有限要素法を用いたシミュレーションでも確認している。
【0044】
図2は、本発明のパイプの局所拡管成形方法において、拡管する部分の一部に半径方向の荷重を加える様子を示す図である。図2(a)〜図2(c)は、パイプの一部を示す部分断面図である。図1では、図1(a)に示すように、パイプ1の拡管する部分2の全体に、半径方向パンチで荷重を加えているが、図2(a)〜図2(c)では、パイプ1の拡管する部分2の一部に、半径方向パンチで半径方向の荷重を加えている。なお、軸線方向に荷重を加えながら、半径方向に荷重を加えていることは図1(a)と同様である。またパイプ1、半径方向パンチは、パイプの中心線9を中心に軸対称である。
【0045】
図2(a)は、荷重を加える前の状態を示す図である。図2(a)において、半径方向パンチが加える荷重の位置は、パイプの半径方向に荷重を加えることなく、パイプの軸方向に荷重を加えたときに座屈の屈曲が生じると予測される位置である。図2(b)、図2(c)は、軸線方向に荷重を加えながら、半径方向に荷重を加えている様子を示す図である。このように必ずしもパイプを拡管させる部分2の全体に荷重を加える必要はなく、座屈の屈曲が生じると予測される位置に半径方向パンチを配置し、パイプ1に軸線方向の荷重を加えながら、半径方向パンチを徐々に半径方向に拡大する方向に移動させることで、座屈、減肉などのない拡管部を形成することができる。パイプに軸方向のみの荷重を加えたときに座屈の屈曲が生じると予測される位置の推定は、有限要素法を用いたシミュレーションで行うことができる。
【0046】
図2で示した座屈の屈曲が生じる可能性がある箇所近傍に半径方向パンチを配置し、この半径方向パンチで拡管部を徐々に半径方向に拡大するとき、拡管部分が平行になるように拡管させていく必要がある。ここで拡管部分が平行になるように拡管させるとは、座屈のモードが発生していない状態、すなわち拡管部がパイプの軸線に対して波打っていない状態を言う。図11(a)、11(b)は、本発明のパイプの局所拡管成形方法の比較例であって、半径パンチで拡管部を拡管するとき、拡管部がパイプの軸線(中心線)に対して平行に拡管されないときのパイプの状況をシミュレーションした図である。図11(a)、図11(b)は、パイプ100の一部を示す部分断面図である。図11(a)、図11(b)中、101がパイプの外周面、102が内周面である。
【0047】
図11(a)は、半径方向パンチ103で拡管部104を半径方向に拡管するとき、荷重のタイミングが遅れて、拡管部103がパイプの軸線(中心線)105に対して平行になっていない状態を示す図である。図11(a)から分かるように、拡管部104がパイプの軸線105に対して波打った状態となっている。図11(a)に示すように、パイプ内周面102と半径方向パンチ103との間に隙間が生じた場合などに起こる、半径方向パンチ103で半径方向に加える荷重のタイミングが遅れると、拡管部104がパイプの軸線105に平行になるように拡管されないため、引き続き拡管操作を行うと図11(b)に示すように拡管部104に座屈あるいは割れが発生することを示している。
【0048】
次に本発明のパイプの局所拡管成形方法に利用可能な金型の一例を図3に示す。なお、図3に示す金型は、一例を示すだけでこれに限定されるものではない。
【0049】
図3(a)に示す第一可動金型は、パイプ1に対して軸方向の荷重を加える二つの可動型10a、10bと、パイプ1に対して半径方向の荷重を加えるパンチ11からなる。可動型10aは一端12aに、パイプ1の一端6を押圧可能な立設部14aを有し、他端15aは傾斜面となっている。可動型10bも同様に、一端12bに、パイプ1の一端5を押圧可能な立設部14bを有し、他端15bは傾斜面となっている。パンチ11は、パイプ1と当接する当接部16が断面円弧状であり、可動型の傾斜面と略同一の傾斜面17a、17bを有する。パンチ11は、可動型10aと10bとの間に配設され、割型となっている。
【0050】
可動型10a、10bにパイプ1を取付け、図示を省略したプレス機などで、可動型10a、10bがお互いに接近するように荷重を加えると、可動型10a、10bに取付けられたパイプ1には、可動型10aの立設部14a、可動型10bの立設部14bを通じて、軸線方向に圧縮荷重が加わる。同時に可動型10a、10bが近接することで、可動型10aと10bとの間に配設されているパンチ11は、可動型10a、10bによりパイプ1方向に押し出され、パンチ11の当接部16が、パイプ1に対しパイプ1の内周面3から外周面4に向かって荷重を加える。このように可動型10a、10bとパンチ11とで、パイプ1に対し軸線方向の圧縮荷重と半径方向の荷重とを同時に加えることができる。よって本金型を用いて、本発明のパイプの局所拡管成形方法の第一ステップを行うことができる。
【0051】
図3(b)に示す第二可動金型は、パイプ1に対して軸方向の荷重、及び拡管部に荷重を加える二つの可動型20a、20bからなる。可動型20a、20bは、パイプ1に対して軸方向の荷重を加えるとともに、拡管部2に対して拡管部2の幅が狭まる方向にも荷重を加える。可動型20aは、パイプの一端6を押圧可能な立設部21aを有するとともに、パイプの拡管部2に対し、拡管部2の側面8を押圧可能な押圧部22aを有する。可動型20bも可動型20aと同様に、パイプの一端5を押圧可能な立設部21bを有するとともに、パイプの拡管部2に対し、拡管部の側面7を押圧可能な押圧部22bを有する。
【0052】
図3(a)に示した第一可動金型を用いて、パイプ1に局所的に拡管部を形成した後、このパイプを図3(b)に示す第二可動金型に取付け、図示を省略したプレス機で、第二可動金型がお互いに接近するように荷重を加えると、第二可動金型に取付けられたパイプ1には、可動型20aの立設部21a、可動型20bの立設部21bを通じて、軸線方向に圧縮荷重が加わる。同時に可動型20a、20bが近接することで、可動型20aの押圧部22aと、可動型20bの押圧部22bとが、軸線方向(中心線)9に平行に、パイプの拡大部の距離を狭めるように、荷重を加えることができる。よって本金型を用いて本発明のパイプの局所的拡管成形方法の第二ステップを行うことができる。
【0053】
この他、パイプに荷重を加えるために使用する金型は、パイプの軸方向に荷重を加えるための金型と半径方向に荷重を加える金型が、別々の金型であってもよいことはもちろんである。パイプの半径方向に荷重を加える金型である半径方向パンチは、パイプの内部に挿入、抜き出し可能で、パイプの内周面からパイプの外周面に向かって荷重を加えることが可能なパンチであれば、特に種類は問われないけれども、円周方向に略均一に荷重を加えることが可能なパンチであることが望ましい。例えば、特開平7−32052号公報に示されるような割型、又は特開2001−113318号公報に示されるような割りポンチを使用することができる。
【0054】
図4(a)〜図4(c)は、本発明の実施の一形態としてのパイプの局所拡管成形方法を示す図である。この方法は、拡管部2を形成しようとするパイプ1内部に、成形すべきパイプより内径が小さく長さが短いパイプ30を配置し(図4(a))、二つのパイプ1、30に対して、軸方向の荷重を加えることにより、座屈を防ぎながら局所的に拡管部を形成する。この方法をここでは、便宜上2重管方式と呼ぶ。拡管部2を形成しようとするパイプ1に軸方向の荷重を加えると同時に、内側のパイプ30にも軸方向の荷重を加え、内側のパイプ30を圧縮変形させることで、拡管部2を形成しようとするパイプ1に対し、パイプ1の内周面から外周面方向に向かって荷重を加えることができる(図4(b))。
【0055】
このとき内部のパイプ30は、外部のパイプ1の座屈を抑制する働きをする。内部のパイプ30が、外部のパイプ1を内側から外側へ押していくタイミングは、外側のパイプ1の拡管部2が軸方向に平行となるようにすることが重要であり、これにより成形途中の座屈や減肉を抑制することができる。拡管部2を成形後は、内部に配置したパイプ30は、圧接され外部のパイプ1と一体となり(図4(c))、強度あるいは剛性を向上させる役割を持つ。
【0056】
図5は、拡管部全体に外圧荷重を加えたときの変位―耐荷重曲線をシミュレーションした結果を示す図である。図5(a)〜図5(d)は、パイプの一部を示す部分断面図である。なお図5(a)〜図5(d)中、パイプ1、パイプ30は、パイプの中心線9を中心に軸対称である。図5(a)は2重管方式を用いることなく拡管部2を成形した拡管部の断面図である。図5(b)は、図5(a)の拡管部2に荷重を加えているときの様子を示すシミュレーションの結果である。図5(c)は2重管方式を用いて拡管部2を成形した拡管部の断面図である。図5(d)は、図5(c)の拡管部2に荷重を加えているときの様子を示すシミュレーションの結果である。図5(a)と図5(c)との拡管部2の幅Lは、同じである。図5(e)は、変位量と耐荷重の関係をシミュレーションした結果を示す図であり、横軸は変位量、縦軸は耐荷重値を示す。図5(e)に示すように2重管方式で製造した拡管部は、2重管方式でない方式で製造した拡管部に比較して、同一の変位量を与えるに必要な荷重が約1.5MN大きくなっている。この結果から2重管方式で成形した拡管部は、剛性が向上していることが分かる。
【0057】
図4では、2重管方式として、拡管部を形成しようとするパイプ1の内側にパイプ30を挿入する例を示したけれども、拡管部を形成しようとするパイプ1の内側に挿入可能なものはパイプに限定されない。拡管部を形成しようとするパイプ1の内側に挿入可能な部材は、軸線方向に圧縮荷重が加えられると圧縮変形し、圧縮変形することで拡管部を形成しようとするパイプに対し、内周面から外周面に向かって荷重を加えることができるものであればよい。このとき、拡管部を形成しようとするパイプ1に対し、内周面から外周面に向かって加える荷重は、円周方向で略均一であることが好ましい。よってパイプ以外にも、円柱形状の中実材を使用することができる。
【0058】
パイプの軸方向に加える圧縮荷重と、パイプの半径方向に力を加える荷重又はパイプの内側に設置された円柱体に軸方向の力を加える加圧力とを、互いに独立して制御することにより、成形性が向上する。よって素材に複数の荷重を加えることが可能な多軸成形加工機を用いることで、より効率的に局所拡管部を有するパイプを製造することができる。
【0059】
(実施例)本発明の実施例を次ぎに示す。
図6(a)に示すように、外径20mm、厚さ2mm、長さ80mmの材質STKM11Aのパイプ1を供試パイプとした。また供試パイプ1の内側に外径14mm、厚さ2mm、長さ21mmの材質STKM11Aのパイプ30を、供試パイプ1の中心軸と中心軸が一致するように設置した。第一ステップとして、図6(b)に示すように、供試パイプ1と供試パイプ1の内部に設置したパイプ30に同時に軸方向の圧縮荷重を加えた。これにより内部に設置したパイプ30が圧縮変形し、供試パイプ1に対して内周面から外周面に向かって半径方向に荷重を加えることができる。
【0060】
次に、第二ステップとして図6(c)に示すように、半径方向の荷重を加えることなく、供試パイプ1の拡管部2に対して軸線(パイプ1の中心線)に平行に圧縮荷重を加えた。これにより座屈、減肉、割れのない局所的に拡管部を有するパイプを得た。
【0061】
図7(a)は、本実施例のパイプ1の外観を示す図であり、図7(a)は、供試パイプ1(素材)の外形を示す図である。図7(b)は、第一ステップ終了時の供試パイプ1の外観を示す図である。ここでは拡管部2の張り出し量があまり大きくないことが分かる。図7(c)は、第二ステップ終了後の供試パイプ1の外観を示す図である。図7(b)に比較して図7(c)では、拡管部2の張り出し量が大きくなっていることが分かる。また図8は、第二ステップ終了後、つまり供試パイプ1に張り出し量の大きい拡管部を形成した後、供試パイプ1を縦断面で切断した断面図である。図8は、2重管方式によるパイプ拡管成形法において成形された成形品には、拡管部2および内部のパイプ30に割れなどの不具合がなく、両者が一体となって圧着されていることを示している。
【0062】
図9は、本実施例で得られた拡管の形状を説明するための図である。パイプの外径をD、成形後の拡管部の外径をDとすると、本実施例で得られた拡管部の形状は、張り出し量D/Dが1.8〜2.0であった。またパイプの厚さをt、成形後の拡管部の幅をLとすると、張り出し幅L/L=L/(2×t)が2.15であった。これらの値は従来の製造方法で製造された拡管に比較して非常に大きな値となっている。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1(a)〜図1(c)は、本発明のパイプの局所拡管成形方法を説明するための図であって、パイプの一部を示した部分断面図である。
【図2】図2(a)〜図2(c)は、本発明のパイプの局所拡管成形方法において、拡管する部分の一部に半径方向の荷重を加える様子を示す図であって、パイプの一部を示す部分断面図である。
【図3】図3(a)、図3(b)は、本発明のパイプの局所拡管成形方法に利用可能な金型の概略的構成を示す図である。
【図4】図4(a)〜図4(c)は、本発明の実施の一形態としてのパイプの局所拡管成形方法を示す図である。
【図5】図5は、拡管部全体に外圧荷重を加えたときの変位―耐荷重曲線をシミュレーションした結果を示す図であり、図5(a)〜図5(e)は、パイプの一部を示す部分断面図である。
【図6】図6(a)〜図6(c)は、本発明の実施例であり、パイプに局所的に拡管を形成している状態を示す図である。
【図7】図7(a)〜図7(c)は、本発明の実施例で得られた局所的拡管を有するパイプの外観図である。
【図8】本発明の実施例で得られた供試パイプを縦断面で切断した断面図である。
【図9】本発明の実施例で得られた拡管の形状を説明するための図である。
【図10】図10(a)〜図10(d)は、本発明のパイプの局所拡管成形方法の比較例であって、パイプの半径方向に荷重を加えることなく、パイプの軸方向に荷重を加えるときのパイプの状況をシミュレーションした結果を示す図である。
【図11】図11(a)、11(b)は、本発明のパイプの局所拡管成形方法の比較例であって、半径パンチで拡管部を拡管するとき、拡管部がパイプの軸線に対して平行に拡管されないときのパイプに状況をシミュレーションした結果を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 パイプ
2 拡管部
3 内周面
4 外周面
5、6 パイプの一端
7、8 拡管部の側部
9 軸線(中心軸)
10、20 可動型
11 パンチ
30 他のパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプを局所的に拡管し拡管部を形成するパイプの局所拡管成形方法であって、
該パイプの軸方向に圧縮荷重を加えながら、該パイプ全体に半径方向の荷重を加えることなく、該拡管部を形成する少なくとも一部分に、該パイプの内周面から該パイプの外周面に向かう半径方向の荷重を加え、パイプに局所的に拡管部を形成することを特徴とするパイプの局所拡管成形方法。
【請求項2】
パイプを局所的に拡管し拡管部を形成するパイプの局所拡管成形方法であって、
該パイプの軸方向に圧縮荷重を加えながら、該パイプ全体に半径方向の荷重を加えることなく、該拡管部を形成する少なくとも一部分に、該パイプの内周面から該パイプの外周面に向かう半径方向の荷重を加え、パイプに局所的に拡管部を形成する第一工程と、
該第一工程に続き、該パイプの半径方向に荷重を加えることなく、該パイプの軸方向に圧縮荷重を加え、該第一工程で形成した該拡管部の張り出し量を大きくする第二工程と、
を含むことを特徴とするパイプの局所拡管成形方法。
【請求項3】
パイプを局所的に拡管し拡管部を形成するパイプの局所拡管成形方法であって、
該パイプの軸方向に圧縮荷重を加えながら、該パイプ全体に半径方向の荷重を加えることなく、該拡管部を形成する少なくとも一部分に、該パイプの内周面から該パイプの外周面に向かう半径方向の荷重を加え、パイプに局所的に拡管部を形成する第一工程と、
該第一工程に続き、該パイプの半径方向に荷重を加えることなく、該第一工程で形成された該拡管部に対し、該パイプの軸方向と平行な圧縮荷重を加え、該第一工程で形成した該拡管部の張り出し量を大きくする第二工程と、
を含むことを特徴とするパイプの局所拡管成形方法。
【請求項4】
前記パイプの半径方向に加える荷重は、前記拡管部を形成する部分が前記パイプの軸線に平行になるように行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載のパイプの局所拡管成形方法。
【請求項5】
前記拡管部を形成する部分であって、前記パイプの半径方向に荷重を加えることなく前記パイプの軸方向に圧縮荷重を加えると、座屈の屈曲が生じると予測される部分を算出し、
前記パイプの半径方向に荷重を加える操作は、該座屈の屈曲が生じると予測される部分に行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1に記載のパイプの局所拡管成形方法。
【請求項6】
パイプを局所的に拡管し拡管部を形成するパイプの局所拡管成形方法であって、
該パイプの該拡管部を形成する部分であり該パイプの内側に円柱体を設置し、
該パイプの軸方向に圧縮荷重を加えながら、該円柱体に軸方向の圧縮荷重を加えて該円柱体を変形させ、変形する該円柱体により該パイプに対し該パイプの内周面から外周面に向かう力を与え、パイプに局所的に拡管部を形成することを特徴とするパイプの局所拡管成形方法。
【請求項7】
パイプを局所的に拡管し拡管部を形成するパイプの局所拡管成形方法であって、
該パイプの該拡管部を形成する部分であり該パイプの内側に円柱体を設置し、
該パイプの軸方向に圧縮荷重を加えながら、該円柱体に軸方向の圧縮荷重を加えて該円柱体を変形させ、変形する該円柱体により該パイプに対し該パイプの内周面から外周面に向かう力を与え、パイプに局所的に拡管部を形成する第一工程と、
該第一工程に続き、該パイプの半径方向に荷重を加えることなく、該第一工程で形成された拡管部に対し該パイプの軸方向と平行な圧縮荷重を加え、該第一工程で形成した該拡管部の張り出し量を大きくする第二工程と、
を含むことを特徴とするパイプの局所拡管成形方法。
【請求項8】
パイプを局所的に拡管し拡管部を形成するパイプの局所拡管成形方法であって、
該パイプの該拡管部を形成する部分であり該パイプの内側に円柱体を設置し、
該パイプの軸方向に圧縮荷重を加えながら、該円柱体に軸方向の圧縮荷重を加えて該円柱体を変形させ、変形する該円柱体により該パイプに対し該パイプの内周面から外周面に向かう力を与え、パイプに局所的に拡管部を形成する第一工程と、
該第一工程に続き、該パイプの半径方向に荷重を加えることなく、該第一工程で形成された該拡管部に対し該パイプの軸方向と平行な圧縮荷重を加えながら、該パイプの軸方向にも圧縮荷重を加え、該第一工程で形成した該拡管部の張り出し量を大きくする第二工程と、
を含むことを特徴とするパイプの局所拡管成形方法。
【請求項9】
前記円柱体は、軸方向の圧縮荷重を加えられ変形した後は、前記パイプの拡管部に挟持され、前記拡管部と一体となることを特徴とする請求項6から8のいずれか1に記載のパイプの局所拡管成形方法。
【請求項10】
前記円柱体は、中空材又は中実材であることを特徴とする請求項6から9のいずれか1に記載のパイプの局所拡管成形方法。
【請求項11】
前記請求項1から10のいずれか1に記載の方法により局所的に形成された拡管部を有するパイプ。
【請求項12】
前記請求項1から10のいずれか1に記載の方法により局所的に形成された拡管部を有するパイプであって、前記拡管部は、成形前のパイプの外径Dに対する拡管部の外径Dの比D/Dが、1.8〜2.0であることを特徴とする拡管部を有するパイプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−326662(P2006−326662A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156652(P2005−156652)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(591079487)広島県 (101)