説明

パイプラインミルカーの洗浄方法

【課題】畜舎におけるミルク輸送ラインの配管内の状況をリアルタイムで正確に監視できる監視装置を用い、配管内の洗浄を適切且つ最低限の機器運転時間で行うことができるようにするパイプラインミルカーの洗浄方法を提供すること。
【解決手段】搾乳ユニットで搾乳したミルクを収集するために、ミルクを一時的に貯留するレシーバージャー17に両端が接続されたミルク輸送ライン10について、ミルク輸送ライン10の一方の端近傍に設けられた仕切弁を閉じ、大気開放用開閉弁31を操作することで洗浄液を送るパイプラインミルカーの洗浄方法であって、ミルク輸送ライン10の畜舎40内に巡らされた任意の位置に配置された真空圧センサー21による検出値によって、大気開放用開閉弁31の開閉を制御することで、ミルク輸送ライン10の配管内の真空圧を任意の設定範囲で変動させて洗浄液を間欠的に送ることで洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搾乳ユニットで搾乳したミルクを収集するために、ステンレススチール製のパイプで構成されて搾乳の現場となる畜舎内に巡らされ、ミルクを一時的に貯留するレシーバージャーに両端が接続されたミルク輸送ラインを備える真空配管式搾乳機(パイプラインミルカー)の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプラインミルカーでは、例えば図6に示した従来の形態例のように、畜舎(乳牛の場合は牛舎)内に一対の真空ライン(ミルク輸送ライン101、真空供給ライン102)が配設され、これにディストリビューションタンク104を介して真空ポンプ103が接続されて真空圧が供給される。一対の真空ライン101、102内の圧力は、真空圧調整器105、106により、所定の一定圧に調整されて、ミルク輸送ライン101(例えば、60kPa)と、真空供給ライン102(例えば、47kPa前後)とになる。
【0003】
109は搾乳ユニットの接続口であって、一対の真空ライン101、102に亘って設けられている。ティ−トカップ111、ミルククロー112、パルセータ113などから成る搾乳ユニットが搾ったミルクは、ミルククロー112で生じる真空圧と大気圧との差圧により、ミルク輸送ライン101に輸送される。ミルク輸送ライン101は、搾ったミルクを一時的に貯留するレシーバージャー107に対して最も遠い位置が一番高く配置され、レシーバージャー107に接続する入り口が最も低い位置に配置されている。搾乳ユニットから輸送されたミルクは、ミルク輸送ライン101に送り込まれた後、ミルク輸送ライン101の高低差によってレシーバージャー107に送り込まれる。レシーバージャー107に溜められたミルクは、レシーバージャー107の底部からミルクポンプ108によって、そのポンプの吐出側配管121に接続したチューブ123を通って、バルククーラー120に送られて貯蔵される。124はフィルターであって吐出側配管121に設けられている。
【0004】
このようなパイプラインミルカーには、搾乳開始前の搾乳ユニットやミルク輸送ライン102を殺菌する予備洗浄や、搾乳後にミルクの通過域を洗浄する目的で洗浄装置が付設されている。この洗浄装置は、上面が開放された洗浄槽80と、洗浄液供給装置90とから成り、洗浄液供給装置90は、給湯管91、給水管92、殺菌剤供給器93、酸洗剤供給器94、アルカリ洗剤供給器95を有し、夫々の洗浄液の供給口が、洗浄槽80に臨むように配設されている。又洗浄槽80には、底部に排水口81が開口しており、これに、排水管82が連結している。83は排水口を開閉する排水バルブである。一方、ミルクポンプ108の吐出側配管121には洗浄液の排出管122の一端も接続可能であり、その排出管122の他端は、洗浄槽80に至り、その槽内に開口している。また、洗浄槽80の近傍上部にも、一対の真空ライン101、102に亘る搾乳ユニットの接続口109が配設されている。
【0005】
このような構成から成る洗浄装置では、先ず、洗浄水の排出管122をミルクポンプの吐出側配管121に接続し、同時に洗浄槽80に洗浄水を満たし、搾乳ユニットの接続口109に搾乳ユニットを連結する。そして、仕切弁130を閉じ、搾乳ユニットのティ−トカップ111から洗浄水を吸引して、ミルククロー112、搾乳ユニットのミルクチューブを経由してミルク輸送ライン101に送り込む。ミルク輸送ライン101を通過してレシーバージャー107に流入した洗浄水は、ミルクポンプ108により排出管122を経由して再び洗浄槽80に戻される。
【0006】
洗浄工程は、通常、先ず、牛乳蛋白などを変性させない程度のぬるま湯で乳成分を洗い流し、次いで、熱アルカリ水で脂肪分の分解洗浄を行い、更に、必要に応じて、酸洗浄によって、カルシウム塩などの無機塩類を除去し、ぬるま湯で、すすぎ洗いをして終了する。 なお、搾乳ユニットは、通常の乳牛用の場合、1個のミルククロー112と、乳牛の各分房に対応する4個のティートカップ111を有する。このティートカップ111では、ティートカップシェルに筒状ゴム製のライナーが内装されることにより、ティートカップ内部をライナーの内側の乳汁流路と外側の空気室とに区分する。内側の乳汁流路はミルク輸送ライン101に接続され、外側の空気室はティートカップ側面の接続口に接続した真空チューブ及びパルセータ113を介して真空供給ライン102に接続されている。
【0007】
このような真空配管式搾乳機について、本出願人は、そのパイプライン洗浄機構にかかる発明を先に提案してある(特許文献1参照)。それによれば、乳搬送用のパイプライン後部に溜まった洗浄液を、ON動作状態にある大気開放用開閉弁(エアーインジェクタ)からパイプライン後端に供給される空気の持つ気圧を用いて、スラグ流にして、パイプライン後部よりも前方の気圧が低い状態にあるパイプラインを循環させて、パイプライン先端が連結されたレシーバに排出する搾乳装置のパイプライン洗浄機構において、前記エアーインジェクタがOFF動作されて、洗浄槽内の洗浄液が真空ポンプの気体吸引力が働いて気圧が低い状態となったパイプラインに吸い込まれ、前記パイプライン後部にパイプライン内側の一部を満杯状態とする洗浄液の団塊からなるスラグ流がパイプライン内側に形成されるのに必要な量の洗浄液が溜まった際に、それを検知するセンサーと、該センサーが前記パイプライン後部に洗浄液が必要量溜まったのを検知した直後に、前記OFF動作状態にあるエアーインジェクタをON動作させる動作手段とが備えられている。このパイプライン洗浄機構では、スラグ流を好適に発生させて洗浄効果をより向上できる。
【0008】
また、搾乳機については、真空ポンプと、搾乳を行う動物に装着させられる少なくとも1つの搾乳手段を備えている搾乳装置と、流れを送り、かつ前記搾乳装置を前記真空ポンプの吸引側に連結する導管とを有する搾乳機の真空レベル調節方法において、前記真空ポンプはダイナミック型のものであることと、前記導管内における実際の真空レベルを検出することと、前記導管を通る前記流れの量を、前記真空レベルを目標値に調節するために、検出された前記真空レベルに応答して調節する搾乳機の真空レベル調節方法が提案されている(特許文献2参照)。なお、この発明では、真空ポンプと搾乳装置の容器(レシーバージャー)とを接続する導管内の真空レベルを検出するものであって、前述のミルク輸送ライン101(図6参照)の真空レベルを検出するものではない。
【0009】
さらに、搾乳機については、ミルク管系統の1箇所または複数箇所にミルク導電率センサーを設けて洗浄液の導電率を測定し、コンピュータで規準液の所定値と比較し、その後洗浄液の純度を確定することによって、ミルク管系統を洗浄液で洗浄する度合を決定する方法および装置であって、ミルク管系統において洗浄液が届きにくい場所および/または障害に対し敏感な場所で、導電率を測定することにより、最適な濃度の洗浄液が得られるミルク管系統を自動的に洗浄する方法および装置の発明が提案されている。(特許文献3参照)。なお、この発明は搾乳ロボットに関するものであり、前述のミルク輸送ライン101(図6参照)を備えるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3942096号公報(請求項1、第2図)
【特許文献2】特許第3660688号公報(請求項1、第1図)
【特許文献3】特開平09−117731号公報(第1頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
パイプラインミルカーの洗浄方法に関して解決しようとする問題点は、現在主流となっているパイプラインミルカーでは、ミルク輸送ラインの全体がステンレススチールの配管になっており、洗浄工程におけるその配管内の洗浄液の状況をセンサーなどで確認することができないことにある。このため、安全率を考えて実際に必要な配管内の洗浄時間以上に機器を運転させることになっていた。
また、従来のパイプラインミルカーでは、真空圧、洗剤濃度、酸度(PH)、洗浄温度等の情報は、処理室でしか測定できず、畜舎における実際のミルク輸送ラインの配管内の状況をリアルタイムで確認する手段がなかった。
【0012】
そこで本発明の目的は、搾乳の現場となる畜舎におけるミルク輸送ラインの配管内の状況をリアルタイムで正確に監視できる監視装置を用い、配管内の洗浄を適切且つ最低限の機器運転時間で行うことができるようにするパイプラインミルカーの洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係るパイプラインミルカーの洗浄方法の一形態によれば、真空ポンプの真空圧によって作動する搾乳ユニットで搾乳したミルクを収集するために、ステンレススチール製の配管で構成されていると共に搾乳の現場となる畜舎内に巡らされ、前記ミルクを一時的に貯留するレシーバージャーに両端が接続されたミルク輸送ラインについて、該ミルク輸送ラインの一方の端近傍に設けられた仕切弁を閉じ、該ミルク輸送ラインの一方の端側から他方の端側へ洗浄液を流すことによって前記レシーバージャーへ前記洗浄液が送られるように、該ミルク輸送ラインの一方の端側で前記仕切弁の取付位置よりもレシーバージャーから離れた位置に接続されて設けられた大気開放用開閉弁を操作することで前記洗浄液を送るパイプラインミルカーの洗浄方法であって、前記ミルク輸送ラインの前記畜舎内に巡らされた部分であって任意の位置に配置された真空圧センサーによる検出値によって、前記大気開放用開閉弁の開閉を制御することで、前記ミルク輸送ラインの配管内の真空圧を任意の設定範囲で変動させて前記洗浄液を間欠的に送ることで該配管内の洗浄をする。
【0014】
また、本発明に係るパイプラインミルカーの洗浄方法の一形態によれば、前記ミルク輸送ラインの前記畜舎内に巡らされた部分であって任意の位置に、プラスチックで形成された透明な監視パイプ部が接続され、該監視パイプ部に前記真空圧センサーが配置され、目視によっても洗浄液の状況を監視することを特徴とすることができる。
また、本発明に係るパイプラインミルカーの洗浄方法の一形態によれば、前記真空圧センサーが2箇所に配置され、洗浄液の流速を監視することを特徴とすることができる。
【0015】
また、本発明に係るパイプラインミルカーの洗浄方法の一形態によれば、前記ミルク輸送ラインの前記畜舎内に巡らされた部分であって任意の位置に、酸度センサー又は電気伝導度センサーが配置され、該酸度センサー又は電気伝導度センサーによって洗浄水を含む洗浄液の有無や水質を含む液質を監視することを特徴とすることができる。
また、本発明に係るパイプラインミルカーの洗浄方法の一形態によれば、前記ミルク輸送ラインの前記畜舎内に巡らされた部分であって任意の位置に、温度センサーが配置され、該温度センサーによって洗浄水の温度を監視することを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るパイプラインミルカーの洗浄方法によれば、畜舎におけるミルク輸送ラインの配管内の状況をリアルタイムで正確に監視できるため、配管内の洗浄を適切且つ最低限の機器運転時間で行うことが可能になるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るパイプラインミルカーの洗浄方法に用いる監視装置の形態例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るパイプラインミルカーの洗浄方法に用いる監視装置の他の形態例を示す斜視図である。
【図3】監視パイプ部の形態例を示す断面図である。
【図4】監視パイプ部の他の形態例を示す断面図である。
【図5】監視パイプ部の他の形態例を示す断面図である。
【図6】従来技術の形態例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るパイプラインミルカーの洗浄方法に用いる監視装置の形態例を添付図面(図1〜図5)に基づいて詳細に説明する。
この監視装置は、真空ポンプ13の真空圧によって作動する搾乳ユニット(図6参照)で搾乳したミルクを収集するために、ステンレススチール製の配管で構成されていると共に搾乳の現場となる畜舎40内に巡らされ、前記ミルクを一時的に貯留するレシーバージャー17に両端が接続されたミルク輸送ライン10を備えるパイプラインミルカーに設けられる。なお、レシーバージャー17や真空ポンプ13などの構成は処理室50に設置されている。また、11は真空供給ラインであり、60はバルククーラーである。
【0019】
このパイプラインミルカーの監視装置は、ミルク輸送ライン10の畜舎40内に巡らされた部分であって任意の位置に、プラスチックで形成された透明な監視パイプ部20が接続され、その監視パイプ部20に少なくとも一種の監視用センサーが配置されていることを特徴とする。
このように、ステンレススチールの配管で構成されたパイプラインミルカーの配管(ミルク輸送ライン10)の一部分にプラスチック製の透明な配管(監視パイプ部20)を設置することにより、実際の畜舎40内における搾乳終了後の残乳量や洗浄時の配管内の状況を目視で直に確認することができる。また、監視用センサーが配置されていることで、実際の畜舎40内における搾乳終了後の残乳量や洗浄時の配管内の状況を測定値として客観的に確認することができる。
【0020】
監視用センサーとしては、真空圧センサー21、電気伝導度センサー22、酸度センサー23、温度センサー24等を、監視パイプ部20に取り付けて配置することができる(図3〜5参照)。各センサーの取付部25については周壁の部分を補強するように厚く形成されており、各センサーのセンシング部が管内に臨むように取り付けられている。26はシール接続用のネジ環であり、監視パイプ部20を構成する配管の両端には、ネジ環26と噛み合うネジが一体的に形成されている。このネジ環26を締め付けることで、監視パイプ部20を構成するプラスチック製の透明な配管とステンレススチールの配管とが、パッキン27によって確実にシールされて接続されている。
監視パイプ部20は配管の円周方向の任意の位置で接続できるため、センサーの取付部25を監視に最適な円周方向の位置に配置することができる。例えば、真空圧を監視するために真空圧センサー21を取り付けた場合は、ミルクや洗浄液の影響を受けにくい最頂部近傍に配置すると良い。また、ミルクや洗浄液の有無や状態を監視するために電気伝導度センサー22、酸度センサー23、または温度センサー24を取り付けた場合には、ミルクや洗浄液に確実に接触できる最底部近傍に配置すると良い。
さらに、監視パイプ部20はプラスチック製の透明な配管で構成されているため、センサー取付部近傍の汚れの状態を目視で確認することができる。汚れを確認した場合は、ネジ環26を緩めることによって監視パイプ部20だけを取り外して洗浄することができるため、常に清浄な状態で使用できるとともに、監視用センサーの誤差を小さくすることができる。
なお、図4に示す電気伝導度センサー22は、電極のため一対のセンシング部を有する。図5に示す監視パイプ部20の形態によれば、酸度センサー23及び温度センサー24に替えて電気伝導度センサー22を装着することが可能であり、共用化を図ることができる。
【0021】
このように、監視パイプ部20に各種センサー(真空圧センサー21、電気伝導度センサー22、酸度センサー23、温度センサー24等の監視用センサー)を取り付けることにより、畜舎40におけるミルク輸送ライン10の配管内の状況について、真空圧、洗剤濃度、酸度(PH)、洗浄温度等の情報に関するデータを収集することが可能になる。
そして、このようにデータを収集できることで、以下の作用効果を得ることができる。
残乳の有無を適切に確認できるため、最低限の機器運転時間で残乳の回収を適切に行うことができる。また、洗浄の状況を適切に確認できるため、最低限の機器運転時間で洗浄を適切に行うことができる。このように運転時間を短縮することで、作業効率を向上でき、消費エネルギーを削減できる。
また、搾乳中の実際の配管内圧を測定できるため、その測定値に基づいて搾乳真空圧を適正に調整することが可能になる。また、洗浄中の実際の配管内状況を測定できるため、その測定値に基づいて配管内の洗浄を適正に行うことが可能になる。
【0022】
さらに、透明な管によって構成された監視パイプ部20と監視用センサーとが一体的に設けられているため、監視用センサーが配置されて測定されている部分の状況を目視と両方で好適に観測できる。
また、監視パイプ部20と監視用センサーとが一体的にユニット化されているため、ミルク輸送ライン10の所望の位置に設置し易い構造になっている。加えて、本形態例の監視パイプ部20は、真直ぐな区間の一部として接続される比較的に短い筒状体を呈しており、後付けでも容易且つ好適に設置できる構造になっている。
【0023】
図1の形態例では、監視用センサーを備える監視パイプ部20が、ミルク輸送ライン10のレシーバージャー17から最も離れた部分又はその近傍に設けられている。そして、その監視パイプ部20には、真空圧センサー21と、電気伝導度センサー22とが設置されている。ミルク輸送ライン10のレシーバージャー17から最も離れた部分は、一般的に真空度が低下し易い部分であり、その条件が悪い部分の状況を観測することによって、配管内の状況を適切に監視することができる。
【0024】
また、図2に示すように、監視用センサーを備える監視パイプ部20を、ミルク輸送ライン10の複数個所に設けることができる。さらに、図2の形態例では、監視用センサーを備える監視パイプ部20が、畜舎40内のミルク輸送ライン10の両端部分に設けられている。
これによれば、種々の測定情報をより好適且つ正確に収集できる。
例えば、ミルク輸送ライン10の配管内の洗浄は、スラグ流と呼ばれる洗浄液(洗浄水を含む)の塊でなされるが、そのスラグ流の大きさや流速を、専用の測定器具を使用しなくても容易に測定して確認することが可能になる。
【0025】
そして、各種センサーによる測定情報を利用して、搾乳装置の様々な自動制御を行うことができる。
例えば、ミルク輸送ライン10に設けられた真空圧センサー21によって検出された真空レベルに応答し、そのミルク輸送ライン10に係る真空圧を適正なレベルに調節するように、真空圧調節制御手段を設けるとよい。この真空圧調節制御手段としては、例えば、真空ポンプ13とレシーバージャー17とを接続する管路に設けられた真空圧調整器15の自動調整装置と、これを制御する制御装置35とによって構成できる。
【0026】
また、残乳回収の動作制御は、真空圧センサー21によって検出された真空レベルに応答し、そのミルク輸送ライン10にかかる真空圧を調節するように、大気開放用開放弁31の自動開閉装置と、これを制御する制御装置35とによって行うことができる。
さらに、洗浄装置の動作制御は、各洗浄液の供給口の開閉弁(図6参照)の自動開閉装置や、大気開放用開放弁31の自動開閉装置と、これらを各種センサーの測定値に基づいて制御する制御装置35とによって行うことができる。
なお、この制御装置35は、コンピュータ制御システムや、シーケンス制御システムによって構成できる。また、各種センサーの測定値を表示する表示手段を設け、その表示データに基づいて作業者が各種装置を手動で調整、制御してもよいのは勿論である。
【0027】
次に、図1及び図2に基づいて、以上に示したパイプラインミルカーの監視装置の形態例を用いて行うことができる、本発明に係るパイプラインミルカーの洗浄方法について説明する。
このパイプラインミルカーの洗浄方法は、真空ポンプ13の真空圧によって作動する搾乳ユニット(図6参照)で搾乳したミルクを収集するために、ステンレススチール製の配管で構成されていると共に搾乳の現場となる畜舎40内に巡らされ、前記ミルクを一時的に貯留するレシーバージャー17に両端が接続されたミルク輸送ライン10について、ミルク輸送ライン10の一方の端近傍に設けられた仕切弁30を閉じ、ミルク輸送ライン10の一方の端側10aから他方の端側10bへ洗浄液を流すことによってレシーバージャー17へ洗浄液が送られるように、ミルク輸送ライン10の一方の端側で仕切弁30の取付位置よりもレシーバージャー17から離れた位置に接続されて設けられた大気開放用開放弁31を操作することで前記洗浄液を送る際の方法であり、ミルク輸送ライン10の畜舎40内に巡らされた部分であって任意の位置に配置された真空圧センサー21による検出値によって、大気開放用開放弁31の開閉を制御することで、ミルク輸送ライン10の配管内の真空圧を任意の設定範囲で変動させて前記洗浄液を間欠的に送ることでその配管内の洗浄をすることを特徴とする。
【0028】
真空圧の任意の設定範囲としては、例えば、10kPaから60kPaの範囲とすることができる。これによれば、真空圧の変動範囲が適正であり、脈動流を利用して効率よく管路内を洗浄できる。
なお、洗浄液は、洗浄液槽18の洗浄液中に浸漬されるように垂下された搾乳ユニット(図6参照)を介して吸い上げられる。このとき、搾乳ユニットは、洗浄液槽18の上に設けられた搾乳ユニットの接続口12に接続された状態になっている。また、洗浄液が吸い上げられているときは、大気開放用開放弁31が閉じている。さらに、洗浄液が循環されるときは、その洗浄液がレシーバージャー17から戻し管路19を介して洗浄液槽18に戻されるようになっている。
【0029】
また、ミルク輸送ライン10の畜舎40内に巡らされた部分であって任意の位置に、プラスチックで形成された透明な監視パイプ部20が接続され、その監視パイプ部20に真空圧センサー21が配置され、目視によっても洗浄液の状況を監視するようにしてもよい。これによれば、洗浄の状況を直接的に確実に監察することができる。
【0030】
また、図2に示すように、真空圧センサー21を2箇所に配置することで、洗浄液の流速を監視するようにしてもよい。ミルク輸送ライン10における二つの真空圧センサー21距離と時間差とによって、スラグ流を含む洗浄液の流速を算定・検出することができる。
スラグ流の塊が通ったときは圧が下がるため、配管内の真空圧を真空圧センサー21によって測定することにより、スラグ流の大きさを検出できる。また、圧の下がっている時間が長いとスラグ流が大きくなるため、その時間を計測することで、スラグ流の大きさを検出するようにしてもよい。
【0031】
このように検出したスラグ流の大きさや流速に基づいて、大気開放用開閉弁31の制御をすることで、そのスラグ流が適正な大きさや流速となるように制御できる。これによれば、スラグ流が大きくなり過ぎて衝撃による装置の破壊や洩れが生じることを防止し、スラグ流が小さいことで洗浄が十分に行えなくなることを防止できる。
【0032】
さらに、図2に示すように、監視パイプ部20に酸度センサー23又は電気伝導度センサー22が配置され、その酸度センサー23又は電気伝導度センサー22によって洗浄水を含む洗浄液の有無や水質を含む液質を監視するようにしてもよい。液質の監視としては、例えば、ミルクの濃度や、洗剤の濃度を測定できる。また、監視パイプ部20に温度センサー24が配置され、その温度センサー24によって洗浄水の温度を監視するようにしてもよい。
【0033】
これらの各種センサーの測定値によれば、予め設定・記憶された基準値と比較して洗浄液の切り替えのタイミング等を適正に判断でき、各洗浄液の供給口の開閉弁(図6参照)を制御装置35によって適正に開閉できる。また、温度センサー24の測定値によれば、洗浄液の温度を適正に保持するように、加熱装置等の制御を行うことができる。これによれば、洗浄工程を適正に実行できるようになるため、洗浄効率を向上できる。
【0034】
次に、本発明の発展形態として図1に基づいて、以上に示したパイプラインミルカーの監視装置の形態例を用いて行うことができるパイプラインミルカーの残乳回収方法について説明する。
このパイプラインミルカーの残乳回収方法は、真空ポンプ13の真空圧によって作動する搾乳ユニット(図6参照)で搾乳したミルクを収集するために、ステンレススチール製の配管で構成されていると共に搾乳の現場となる畜舎40内に巡らされ、前記ミルクを一時的に貯留するレシーバージャー17に両端が接続されたミルク輸送ライン10について、ミルク輸送ライン10の一方の端近傍に設けられた仕切弁30を閉じ、ミルク輸送ライン10の一方の端側10aから他方の端側10bへミルクを流すことによってレシーバージャー17へ搾乳後の残乳が回収されるように、ミルク輸送ライン10の一方の端側10aで仕切弁30の取付位置よりもレシーバージャー17から離れた位置に接続されて設けられた大気開放用開放弁31を操作することで前記残乳を回収する際の方法であり、ミルク輸送ライン10の畜舎40内に巡らされた部分であって任意の位置に配置された真空圧センサー21による検出値によって、大気開放用開放弁31の開閉を制御することで、ミルク輸送ライン10の配管内の真空圧を任意の設定範囲で変動させて残乳を脈動流にして間欠的に送ることで回収することを特徴とする。
【0035】
大気開放用開放弁31が開くことで取り入れられる大気による圧が、残乳を押すように作用する圧力になって、残乳を、ミルク輸送ライン10の一方の端側10aから他方の端側10bへ向けて送ることができる。真空圧センサー21による検出値によって、大気開放用開放弁31の開閉を適正に制御できるようになるため、残乳を効率よく送ることが可能になる。
また、真空圧の任意の設定範囲としては、例えば、15kPaから30kPaの範囲とすることができる。これによれば、真空圧の変動範囲が適正であり、乳脂肪を壊さないように効率よく脈動流を利用して残乳を回収できる。
【0036】
また、ミルク輸送ライン10の畜舎40内に巡らされた部分であって任意の位置に、プラスチックで形成された透明な監視パイプ部20が接続され、その監視パイプ部20に真空圧センサー21が配置され、目視によっても残乳の状況を監視するようにしてもよい。これによれば、残乳の状況を直接的に確実に監察することができる。
【0037】
さらに、監視パイプ部20に電気伝導度センサー22が配置され、その電気伝導度センサー22によって残乳の有無を検出するようにしてもよい。ミルクは導体であり、電気伝導度センサー22によれば、その有無を適切に検知できる。
【0038】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0039】
10 ミルク輸送ライン
11 真空供給ライン
12 搾乳ユニット接続口
13 真空ポンプ
15 真空圧調整器
17 レシーバージャー
18 洗浄液槽
20 監視パイプ部
21 真空圧センサー
22 電気伝導度センサー
23 酸度センサー
24 温度センサー
30 仕切弁
31 大気開放用開閉弁
35 制御装置
40 畜舎
50 処理室
60 バルククーラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプの真空圧によって作動する搾乳ユニットで搾乳したミルクを収集するために、ステンレススチール製の配管で構成されていると共に搾乳の現場となる畜舎内に巡らされ、前記ミルクを一時的に貯留するレシーバージャーに両端が接続されたミルク輸送ラインについて、該ミルク輸送ラインの一方の端近傍に設けられた仕切弁を閉じ、該ミルク輸送ラインの一方の端側から他方の端側へ洗浄液を流すことによって前記レシーバージャーへ前記洗浄液が送られるように、該ミルク輸送ラインの一方の端側で前記仕切弁の取付位置よりもレシーバージャーから離れた位置に接続されて設けられた大気開放用開閉弁を操作することで前記洗浄液を送るパイプラインミルカーの洗浄方法であって、
前記ミルク輸送ラインの前記畜舎内に巡らされた部分であって任意の位置に配置された真空圧センサーによる検出値によって、前記大気開放用開閉弁の開閉を制御することで、前記ミルク輸送ラインの配管内の真空圧を任意の設定範囲で変動させて前記洗浄液を間欠的に送ることで該配管内の洗浄をすることを特徴とするパイプラインミルカーの洗浄方法。
【請求項2】
前記ミルク輸送ラインの前記畜舎内に巡らされた部分であって任意の位置に、プラスチックで形成された透明な監視パイプ部が接続され、該監視パイプ部に前記真空圧センサーが配置され、目視によっても洗浄液の状況を監視することを特徴とする請求項1記載のパイプラインミルカーの洗浄方法。
【請求項3】
前記真空圧センサーが2箇所に配置され、洗浄液の流速を監視することを特徴とする請求項1又は2記載のパイプラインミルカーの洗浄方法。
【請求項4】
前記ミルク輸送ラインの前記畜舎内に巡らされた部分であって任意の位置に、酸度センサー又は電気伝導度センサーが配置され、該酸度センサー又は電気伝導度センサーによって洗浄水を含む洗浄液の有無や水質を含む液質を監視することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパイプラインミルカーの洗浄方法。
【請求項5】
前記ミルク輸送ラインの前記畜舎内に巡らされた部分であって任意の位置に、温度センサーが配置され、該温度センサーによって洗浄水の温度を監視することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパイプラインミルカーの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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