説明

パイプ状複合材料、パイプ状プリプレグ、及びそれらの製造法

【目的】 任意の長尺のパイプ状の複合材料、パイプ状複合プリプレグ、およびそれらの製造方法を提供すること。
【構成】 長さ方向に連続した強化フィルムまたは/および強化繊維層と、それにらせん状に互いに重なり合って巻き付けられた強化フィルム層またはそれと強化繊維からなる層と、それら強化フィルムまたは/および強化繊維を接着するための未硬化状態の樹脂からなる長尺のパイプ状複合プリプレグの内部に、流体により外気圧以上の圧を加えつつ該複合プリプレグを構成する樹脂を硬化することにより、長尺のパイプ状複合材料を製造する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、強化材料とそれを接着する樹脂よりなるパイプ状複合プリプレグ及び複合材料、及びその製造法に関するものであり、さらに詳しくは、任意の経路に沿って敷設されたパイプ状複合材料、それを可能にするパイプ状複合プリプレグ、及びそれらの製造法に関するものである。
【0002】
【従来技術およびその問題点】近年、金属材料に代わる材料として強化繊維と樹脂よりなる複合材料が、主としてその軽量性の故に重用されている。複合材料の製造方法も、その形状、必要とされる特性などからいろいろ提案され、実用化されている。
【0003】パイプ状の複合材料を製造する方法としては、中芯の上に樹脂を含浸した強化繊維を巻き付けた後、さらに必要あればプラスチックテープを重ねて巻き付けて圧搾し、またはその熱収縮力を利用して締め付けながら、樹脂を硬化させる、いわゆるフィラメントワインディング法が著名である。しかし、この方法の欠点は、中芯の長さに限界があり、従って製造できるパイプ状複合材料の長さにも限界があることである。また、複合材料成形後中芯を引き抜く必要があるため、直線状または緩やかな一律な曲線状の物しか製造できないことも問題である。
【0004】この欠点のない方法として、汎用のプラスチックの押し出し成形による長尺のパイプ上に、樹脂を含浸させた強化繊維を巻き付けて硬化する方法も実施されているが、強度上ほとんど寄与しない汎用プラスチック層を含有しており、軽量を目指す複合材料としては、問題のある構造であり、また、強化繊維を巻き付け加工する方法も手作業で実施されることが多く、工業的実施が困難な一面がある。
【0005】他方、長尺の複合材料を成形する方法として、樹脂を含浸した強化繊維を束状に引き揃えて、成形型の中を貫通して引き通し、その型の中で加熱硬化させつつ成形された複合材料を連続して型から引き出す、いわゆるプルトルージョン法も著名である。しかし、この方法では、強化繊維が長尺方向のみに配列しているため、パイプ状の複合材料では、パイプの内圧に耐える構造の物は製造できない欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、所定の経路に沿って成形されてなる連続したパイプ状の複合材料を提供することであり、その複合材料を製造するためのパイプ状複合プリプレグおよびそのプリプレグの製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記従来の技術の欠点を克服するために鋭意検討した結果、本発明をなすに至った。即ち、本発明は長さ方向に連続した強化フィルムまたは/および強化繊維層と、それにらせん状に互いに重なり合って巻き付けられた強化フィルム層または強化フィルムと強化繊維からなる層と、それら強化フィルムまたは/および強化繊維を接着するための未硬化状態の樹脂からなるパイプ状複合プリプレグ及び該プリプレグより得られるパイプ状複合材料及びそれらの製造法である。
【0008】本発明のパイプ状複合プリプレグは、マンドレルに沿って、該マンドレルの軸方向に強化フィルムまたは/および未硬化の樹脂を付与された強化繊維を供給し、その上に未硬化の樹脂を付与された強化フィルムまたはそれと未硬化の樹脂を付与された強化繊維を巻き付け、マンドレル上に形成されるパイプ状複合構造をマンドレル軸方向に連続的に引き抜くことにより製造することができる。
【0009】また、このパイプ状複合プリプレグの内部に、流体により外気圧以上の圧を加えつつ該複合プリプレグを構成する樹脂を硬化することにより、長尺のパイプ状複合材料を製造することができる。さらに、本発明においてはこのパイプ状複合プリプレグを所定の形状に拘束し、そのプリプレグの内部に外気圧以上の流体圧を加えつつ、そのプリプレグを構成する樹脂を硬化することにより、任意の経路に沿って敷設されるパイプ状複合材料を製造することができる。
【0010】この方法を実施するに当たり、マンドレル上で複合構造を構成する樹脂を硬化させた後、形成されたパイプ状複合材料を引き抜く方法によれば、既に硬化処理まで完了した長尺のパイプ状複合材料を連続して製造することも可能であり、本発明の好ましい実施態様の一つである。この方法を実施するに当たり、マンドレルを中空状とし、該中空部を通じマンドレル上に形成されるパイプ状複合構造の内部に外気圧以上の流体圧を加えつつ、マンドレル上でまたは/およびマンドレルから引き抜かれた後に複合材料を構成する樹脂を硬化させつつ実施することも好ましい方法である。
【0011】本発明の詳細を図面を参照しつつ具体的に説明する。図1は、本発明のパイプ状複合プリプレグを製造する方法を示すものであり、2aおよび2bは強化フィルムのロールであり、それらから引き出された第1の強化フィルム3aおよび3bは、押えロール4aおよび4bを経て、マンドレル1aの軸方向に沿って供給され、図示されない引取り装置により連続的に該マンドレルの軸方向に引取られて、該マンドレル上を移動している。
【0012】次いで、予め未硬化状態の樹脂をコーティングされた第2の強化フィルム(以下第2の強化フィルムのプリプレグと称する)のロール5を、該マンドレル1の周囲を周回させて、マンドレル上の第1の強化フィルム3aおよび3bの上に第2の強化フィルムのプリプレグ6を連続して巻き付ける。さらに望むならば、先のロール5とは逆に回転するロール7から、予め未硬化状態の樹脂をコーティングされた第3の強化フィルム(以下第3の強化フィルムのプリプレグと称する)8を連続して巻き付けることも、好ましく行われてもよい。
【0013】これらのフィルムプリプレグを巻き付けるに当たり、図3の如く、マンドレル上を回転する押えロール12および13を設置して、フィルムプリプレグをマンドレルに押し付けつつ巻き付けることも好ましい実施態様である。この様にマンドレル上でパイプ状に積層された複合構造を、連続して図示されない引取り装置によりマンドレルから引き抜くことで、長尺のパイプ状複合プリプレグ9が製造されるが、本発明の他の実施態様においては、引取りに先立って図2の如く加熱炉10により連続的に加熱され、樹脂の硬化処理が施され、長尺のパイプ状複合材料11を直接、連続的に製造することも可能である。
【0014】本発明の他の実施態様として、図3の如く、図1のマンドレルに代えて中空のマンドレル1bを用い、マンドレル先端14の空気供給口15から加圧空気を供給し、形成されたパイプ状複合構造の中空部を加圧することも行われてよい。この方法では、パイプ状複合プリプレグのマンドレルからの引き抜きを容易にすると共に、未硬化のパイプ状複合プリプレグとして引取りに当たっても、本発明の複合プリプレグの中空部が加圧空気により充満されているため、未硬化状態であっても硬化されたと同様に把持でき、取扱い性に問題がないなどの利便性に富む。
【0015】また、図4の如く加熱炉10bを設置して、引取りに先だって樹脂を加熱硬化させて、連続的に長尺のパイプ状複合材料を製造するに当たっても、積層されたフィルムなどの強化材料と未硬化の樹脂からなる複合構造に圧迫力が加わるため、ボイドなどの欠陥の発生を防ぎまたは緻密な複合層を実現するなどの利点を生み出す上で好ましい実施態様を提供する。
【0016】この例を実施するにおいては、パイプ状複合材料の末端部は、押し潰して接着する方法、栓をする方法などの手段により封じられており、パイプ内に加えられる圧力の逃げるのを防ぐ工夫がなされる。また、製造されたパイプ状複合材料の切断に当っても、未硬化状態の複合材料を挟んで押し潰すなどしてパイプ状の中空部を閉塞させることにより、中空部の内部圧力を逃がすことなく、連続して本発明の複合材料が製造できる。
【0017】本発明を実施する上で、マンドレルと第1の強化フィルムの滑りを良くするために、第1のフィルムの供給に先立って、シリコン処理した離型紙や弗素樹脂フィルムなどを、第1のフィルムと同様の方法でマンドレルの軸方向に供給し、その上に第1の強化フィルムを供給し、それらを重ね合わせたままマンドレル軸方向に引き取ることも許される。
【0018】本発明を実施する上で、上記の第1の強化フィルムは、予め未硬化の樹脂がコーティングされたプリプレグであっても良い。また、第1の強化フィルムに代えて、ガラス繊維、炭素繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンビス−ベンヅオキサゾールまたは−イミダゾールまたは−チアゾール繊維などの、長繊維を引き揃えまたは織物として、予め未硬化の樹脂を含浸させた状態のプリプレグ(以下、強化繊維プリプレグと称する)として用いることも可能であり、また、強化フィルムまたは強化フィルムプリプレグと共に強化繊維プリプレグを併用することも本発明の好ましい実施態様である。(以下これらの実施態様を総称して「第1の強化フィルムなど」と称する。)
第1の強化フィルムなどは、単一の層であっても、複数の層であってもよく、また、マンドレルの全周(即ち、製造されたパイプ状複合プリプレグまたは複合材料ではその内層の全周)を覆っているのが通常であるが、必ずしも全周を覆う必要はなく、目的とするパイプ状複合材料の必要とする材料強度、または、本発明の方法を実施する上で、マンドレルから本発明のパイプ状複合材料を引き抜く上で必要な引っ張り強度の、いずれをも満足できるように選択されるべきである。従って、各図における第1の強化フィルムなどを供給するロールの数も、図の如く2個である必要はなく、1個または2個以上の任意の数用いられてよい。
【0019】第2の強化フィルムのプリプレグについても、単一のロールから供給されて互いに重なり合いながら巻き付けられても、同方向に同じ速度または異なる速度でマンドレルの周囲を周回する複数のロールから、複数のフィルムプリプレグが供給され、重ねて巻き付けられてもよい。いずれにせよ、この方法により製造されるパイプ状複合プリプレグの内部に流体圧が加えられた際にそれが流出せぬように、フィルム同志が重なり合って構成される必要がある。
【0020】本発明において、第3の強化フィルムは必ずしも必要ではなく、第2の強化フィルムのらせん構造によるパイプ状複合材料の不均一性が問題となる場合に実施されればよい。従って、第3の強化フィルムの巻き付けに当たっては、第2の強化フィルムと逆方向にフィルムロールを周回させるべきこと以外は、第2の強化フィルムを巻き付けると同様の条件であっても、異なる条件であってもよく、目的とするパイプ状複合材料の要求性能から任意に設定されてよい。
【0021】第2または/および第3の強化フィルムのプリプレグは、強化繊維プリプレグなどと併用されてもよいが、上記の如く、それによってパイプ状複合材料に加工されるときの流体圧の流出が発生せぬように構成することが肝要である。第2または/および第3の強化フィルムの重ね合せ率や層数については、目的のパイプ状複合材料に要求される材料強度や、パイプ状複合プリプレグが硬化される際に加えられる内圧に耐えるだけの強度を勘案して決定されてよい。
【0022】第2または第3の強化フィルムを巻き付けるに先だって、または巻き付けた後に、上記の炭素繊維などの強化繊維プリプレグを巻き付けることも、好ましい実施態様であり、パイプ状複合材料に要求される性能に応じて採用されてよい。この様にして製造された本発明の長尺のパイプ状複合プリプレグは、例えば図1のように、長さ方向に連続した第1の強化フィルム層(3a、3b)と、それにらせん状に互いに重なり合って巻き付けられた、第2および望むならば第3の強化フィルム層(6、8)と、それら強化フィルムを接着するための未硬化の樹脂からなる構造を持つことを特徴とする。
【0023】本発明のパイプ状複合プリプレグを、硬化してパイプ状複合材料に加工するに当り、強化フィルムと樹脂を緻密に保つために、この複合プリプレグの内部に圧力を加えつつ行うが、この加圧においても、複合プリプレグを構成する、長尺方向に連続する第1の強化フィルムなどの層、およびその上にらせん上に巻き付けられた第2および第3の強化フィルムの層の、両強化フィルムの役割の重要性が同様に理解されるであろう。即ち、第1の強化フィルムなどは、らせん状に巻かれた第2および第3の強化フィルムが、加えられた圧力により長尺方向に分離することを防ぐ上で重要であり、らせん状に互いに重なり合って巻き付けられた第2および第3の強化フィルム層は、それが繊維状の強化層では実現不可能な、加圧のために加えられる流体を逃がすことなく保持し、且つ加えられた内圧で破壊や変形することなく、構成する各層が内圧により緻密に圧迫されつつ硬化が進められる上でも必須である。さらに、加工された複合材料がパイプとして流体輸送や圧力伝達に用いられた時に、その輸液圧力や伝達圧力による破壊に対し、それぞれ長尺方向、周方向への抗張力、および寸法変化を極小にするだけの強度および弾性率を持つことが必要である。
【0024】本発明に用いられる強化フィルムは、強度が20kg/mm2以上、弾性率が800kg/mm2以上であり、更に好ましくは、強度が30kg/mm2以上、弾性率が1200kg/mm2以上であることが好ましい。さらに好ましくは、パイプ状複合プリプレグを硬化するに際して、高い温度に加熱して硬化するタイプの樹脂が用いられることや、複合材料としてより高い環境温度で用い得る点で、200℃以上のガラス転移温度のフィルムが選ばれる。この様なフィルムとしては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)などのパラ配向性芳香族ポリアミド、液晶ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトンなどの芳香族ポリエーテルケトン類、一部のポリイミドなどのいわゆるスーパーエンプラのフィルムがあげられる。
【0025】本発明を実施する上で、用いられる樹脂については、一般の複合材料を製造する際に用いられる硬化型樹脂が広く用いられ、特に制限されるものではない。その様な硬化型の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂から選ばれることが多いが、光硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂など、種々の硬化性樹脂も目的に応じて用いられてよい。また、これらの樹脂に、紫外線吸収剤、難燃剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、熱安定剤、老化防止剤、補強短繊維、補強粉粒体、成形用薬剤、熱可塑性樹脂、エラストマー、ゴム状物およびその他通常の樹脂添加剤が添加されていてもよい。
【0026】本発明のパイプ状複合プリプレグは、所定の形状に拘束し、次いでパイプ状複合プリプレグ内に空気などの気体または油などの液体を導入して加圧し、プリプレグをパイプ状に膨らませると同時にそれを構成する強化フィルムなどを互いに圧密化しつつ、構成する未硬化の樹脂を硬化させることによって、所定形状の連続したパイプ状複合材料に加工できる。
【0027】これを実施する上で、パイプ状複合プリプレグは、敷設すべき場所で直接所定の形状に拘束されて加工されても、予め、加工場にて所定の形状に拘束されて加工され、次いで敷設すべき場所に運ばれても、いずれもが可能である。パイプ状複合プリプレグを拘束する方法についても、特に制限されるものではなく、所定の形状の溝を準備し、それにプリプレグをはめ込む方法、当て板や添え木を当てて形状を付与する方法、適当な間隔で杭を立てて形状を付与する方法など、任意の方法が適宜選ばれてよい。また、曲率半径の小さな曲り部分に対して、パイプ断面の真円度を保つために、当て板などをパイプの外周に合った円弧の凹面とすることも好ましい実施態様である。
【0028】パイプ状プリプレグを成形する上での特別な例として、所定の断面を形成するような成形型の中にはめ込み、その断面を円以外の、例えば正方形や長方形、偏平な円などにすることも可能であり、本発明の好ましい実施態様の一つである。パイプ状複合プリプレグ内部に圧力を加えるには、プリプレグの一端を押し潰すなどの手段で閉塞し、他端を加圧流体供給装置に接続することで行われる。また、プリプレグの両端を加圧流体供給装置に接続することも行われてよく、この方法で、加熱された流体を循環させつつ加圧すれば、プリプレグを加熱して樹脂を硬化することも同時に可能である。
【0029】加えられる圧力としては、パイプ状複合プリプレグが十分膨脹できて目的とするパイプ状複合材料の形状とするに足りる圧力であればよく、曲りの少ない直線に近い形状の物では一般に低い圧力で十分であるが、曲率半径の小さい曲り部分を含むときは、その部分を十分膨らませるために高い圧力が必要となる。これらの条件を満たす範囲であれば、特に加えるべき圧力は限定されるものではないが、通常、0.2kg/cm2G以上、さらに好ましくは1kg/cm2G以上に選ばれる。
【0030】一方、パイプ状複合プリプレグを構成する強化フィルムなどの各層を圧迫しつつ樹脂の硬化を進めることは、得られるパイプ状複合材料の性能を高める上で好ましいため、内部に加えられる圧力が高いことが望まれる場合もある。しかし、このような場合でも、過大な圧力を加えても得られる効果に限界があること、加圧流体供給装置が高価なものになること、プリプレグと圧力流体供給装置との接続部の耐圧構造が複雑となることなどの問題も多く、圧力の上限としては通常20kg/cm2G以下程度に選択されることが多い。
【0031】加圧のために用いられる流体についても、用いられる流体がプリプレグを変質させることがないかぎり、特に限定されるものではなく、通常は安価に得られる空気が好んで用いられるが、窒素、アルゴンなどの不活性気体、油や水などの液体も用いられてよい。樹脂の硬化の手段は、プリプレグを構成する樹脂の種類により、それに合った手段が適宜用いられるべきであり、一般的によく用いられる熱硬化樹脂においては、電熱加熱テープまたはシートをプリプレグに巻き付けたり、赤外線ランプなどで輻射電熱により加熱するなど、種々の方法により、プリプレグを加熱して硬化することが行われる。
【0032】硬化処理後、製造されたパイプ状複合材料は、閉塞部や加圧流体供給部との接続部は、必要に応じて切断される。また、長尺の複合材料として加工後、適宜切断されて使用に供されることも許される。本発明によれば、複雑な形状のパイプ状複合材料が提供でき、上述の如く、施設に敷設されて用いられる他に、架台などの構築物の構造材料、ロボットなどの可動部材、コイル状や円弧状他の形状でバネ材料、工具、スポーツ用具など種々の用途に供せられてよい。
【0033】また、エルボウ、リデューサ、3方または4方ジョイントなどの配管要素との接続も自由に行われてよいし、末端に配管接続のためのフランジやねじを設ける加工が施されることも任意に行われてよい。それらの接続加工方法も、通常の強化プラスチックに用いられる方法がそのまま用いられてよい。
【0034】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。パイプ状複合材料の物性測定は、次の条件によった。
4点曲げ破壊強度;圧子間距離150mm、支点間距離500mm(圧子、支点共にR=50mm)、曲げ速さ30mm/分、資料長650mm。
【0035】
軸圧縮;圧縮速さ1mm/分、資料長13mm。
面圧縮;圧縮速さ1mm/分、資料長17mm。アイゾット衝撃強度;秤量150kg・cm(ハンマー重量3.874kg)、振り上げ角135度、資料長64mm。
(ポリパラフェニレンテレフタルアミドフィルムの製造)98%濃硫酸を溶剤とし、c=0.5g/100ml、温度30℃で定法により測定したηinhが5.5のポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)を、99.5%濃硫酸に12重量%の濃度に溶解し、このドープをタンタル性のエンドレスベルト上にキャストし、相対湿度40%の室温空気を90℃に加熱して吹き付けた後、20℃の30%硫酸水溶液中で凝固させた。次いで、凝固フィルムを水酸化ナトリウム水溶液で中和し、水洗の後、長手方向に1.15倍、次いで幅方向に1.3倍延伸し、定長を保ちつつ200℃で乾燥し、更に300℃で定長下に熱処理して16μmの厚みのPPTAフィルムを得た。
【0036】得られたフィルムは淡黄色透明で、500℃以下には融点は見られなかった。また、引張り強度および弾性率は、長尺方向でそれぞれ48kg/mm2、1490kg/mm2、幅方向でそれぞれ47kg/mm2、1420kg/mm2であった。PPTAフィルムプリプレグは、上記PPTAフィルムに、エポキシ樹脂(化成ファイバーライト社製品、#7714)を塗布し、100℃で15分間加熱して製造し、離型用ポリプロピレン(以下PPと略記する)と重ね合せた後、所定の幅にスリッティングして、ロール状に巻き取り使用に供した。フィルム上に塗工された樹脂層は8μmであった。
【0037】強化繊維プリプレグは、12000フィラメントからなる炭素繊維(以下CFと略記する)ハイカーボロン(新旭化成カーボンファイバー社商標)を平行に引揃えて、エポキシ樹脂をラミネートした、いわゆるUDプリプレグを用いた。
【0038】
【実施例1】図3の方法により、直径10mmの表面にクロームメッキを施した中空のマンドレル上に、ロール状に巻き取られた2本の幅15mmのPPTAフィルムを、マンドレルの両側からその軸方向に供給し、連続してマンドレルから引取った。そのPPTAフィルム上に、幅20mmの前記PPTAフィルムプリプレグロールを、マンドレルを周回させて巻き付けた。更に、他のPPTAプリプレグロールを先のそれとは逆方向に周回させて巻き付けた。
【0039】いずれのPPTAプリプレグも一巻きされる間にPPTAフィルムは2mm移動するようにらせん状に巻き付けられた。最後に離型用PPテープを同様にして巻き付けた後、つば付きドラム上に巻き取った。尚、マンドレルの中空部を通じて0.1kg/cm2Gの空気圧を加えつつ上記の作業を実施し、巻き取られたパイプ状複合プリプレグの中空部が押し潰されぬように配慮した。
【0040】
【実施例2】実施例1で製造したパイプ状複合プリプレグを50cm切り取り、一端をクランプで挟んで閉塞し、多端より5kg/cm2Gの空気圧を中空部に加えつつ、140℃の熱風循環式オーブン中で2時間硬化させ、次いで離型PPテープを除去してPPTAフィルムの積層複合パイプを製造した。
【0041】得られたパイプの外形は11.6mm、肉厚は0.8mmであった。パイプの4点曲げ強度試験において、たわみ量80mmでも破壊には至らず、この時の曲げ応力は18kg/mm2であった。また、軸圧縮強度は16kg/mm2、面圧縮強度は43kg/mm2、アイゾット衝撃吸収エネルギーは302kg・cm/cm2であった。また、内圧破壊試験では、320kg/cm2Gの破壊圧力を示し、面方向の破断強度としては30.4kg/mm2に相当するものであった。
【0042】
【実施例3】実施例1で製造したパイプ状複合プリプレグ2mを、曲率半径1mの円弧を形成するように付形し、中空部に8kg/cm2Gの空気圧を加え、ヒーターにより140〜150℃に加熱し、2時間硬化させた。得られた曲管状のPPTAフィルム積層複合パイプから10cmを切出し、実施例2と同様の内圧破壊試験を実施したところ、315kg/cm2Gの破壊圧力を示した。
【0043】
【実施例4】実施例1のPPTAフィルムに代えて、CFのUDプリプレグを幅16mmとしたものを6本、それぞれマンドレル周上で60度ずらせて軸方向に供給した。次いで、同様に2本の10mm幅のPPTAフィルムプリプレグを、互いに逆方向に、3mmずつ送りつつ、らせん状に巻き付けた。
【0044】
【実施例5】実施例4で製造したパイプ状複合プリプレグを50cm切取り、実施例2と同様に硬化させてパイプを製造した。パイプは外径11.6mmで、肉厚は、CF層が0.7mm、PPTAフィルム層0.1mmであり、4点曲げ強度は20kg/mm2、軸圧縮強度56kg/mm2、面圧縮強度26kg/mm2、アイゾット衝撃吸収エネルギー210kg・cm/cm2であった。
【0045】
【実施例6】実施例4の方法を、図1bに代えて、マンドレル上でパイプ状複合プリプレグを、170℃の加熱炉に20分滞留するように連続して移動させて直接複合パイプを製造した。このパイプは、外径11.6mmで、肉厚は、CF層が0.7mm、PPTAフィルム層0.1mmであり、4点曲げ強度は20kg/mm2、軸圧縮強度57kg/mm2、面圧縮強度25kg/mm2、アイゾット衝撃吸収エネルギー200kg・cm/cm2を示した。
【0046】
【実施例7】この例では、PPTAフィルムに代えて、ユーピレックスS(宇部興産株式会社商標。公称強度40kg/mm2、弾性率900kg/mm2のポリイミドフィルム)の25μmフィルムを用い、PPTAフィルムに実施したと同様にしてプリプレグ化した他は同様にして、実施例6を繰返した。
【0047】得られたパイプは、外径11.6mmで、肉厚は、CF層が0.7mm、ポリイミドフィルム層が0.1mmであり、4点曲げ強度は17kg/mm2、軸圧縮強度50kg/mm2、面圧縮強度18kg/mm2、アイゾット衝撃吸収エネルギー165kg・cm/cm2を示した。
【0048】
【発明の効果】本発明のパイプ状複合プリプレグによれば、任意の長さで任意の経路に沿った長尺のパイプ状複合材料を提供できる。その利点は、短尺のパイプ状複合材料を接合し、その接合部分を手作業で補強繊維および樹脂を巻き付けて複合材料化して接続し、長尺のものとする手間が省けること、接合した上から実施される補強複合材料化による重量の増加やパイプ径の増加が避けられることである。
【0049】更に、接続部分の補強構造に欠陥が発生する危険性がなく、高度な信頼性を必要とする圧力伝送や加圧下の流体移送にも、安心して使用できる。また、本発明により得られるパイプ状複合材料は、その構成に強化フィルム層を含んでおり、従来の繊維強化複合材料に比べ、耐衝撃性に優れていることも特徴の一つであり、使用に当たっての信頼性を高めている。
【0050】本発明により得られるパイプ状複合材料は、耐蝕性を要求される化学系プラントなどの輸液配管、圧力伝送配管、軽量性と信頼性を要求される航空機、船舶、鉄道や自動車他の各種車両における燃料パイプ、油圧パイプ、加圧空気パイプなどに用いられる。また、自由に附形できる特徴を活かして、パイプフレームなどの構造材料、ロボットのアームなどの可動部材、コイルスプリング他のバネ材、工具、スポーツ用具などにおいても、新規な概念の設計を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の長尺のパイプ状プリプレグを製造する方法の一例を示すものである。
【図2】本発明の長尺のパイプ状複合材料を製造する方法の一例を示すものである。
【図3】本発明の長尺のパイプ状プリプレグを製造する方法の一例を示すものである。
【図4】本発明の長尺のパイプ状複合材料を製造する方法の一例を示すものである。
【符号の説明】
1a マンドレル
1b 中空状マンドレル
3a、3b 第1の強化フィルム
4a、4b 押さえロール
6 第2の強化フィルムのプリプレグ
8 第3の強化フィルムのプリプレグ
9 本発明の長尺のパイプ状プリプレグ
10a、10b 加熱炉
11 本発明の長尺のパイプ状複合材料
12、13 押さえロール
14 中空状マンドレルの先端部
15 空気供給口

【特許請求の範囲】
【請求項1】 長さ方向に連続した強化フィルムまたは/および強化繊維層と、それにらせん状に互いに重なり合って巻き付けられた強化フィルム層または強化フィルムと強化繊維からなる層と、それら強化フィルムまたは/および強化繊維を接着するための未硬化状態の樹脂からなるパイプ状複合プリプレグ。
【請求項2】 マンドレルに沿って、該マンドレルの軸方向に強化フィルムまたは/および未硬化の樹脂を付与された強化繊維を供給し、その上に未硬化の樹脂を付与された強化フィルムまたは強化フィルムと未硬化の樹脂を付与された強化繊維を巻き付け、マンドレル上に形成されるパイプ状複合構造をマンドレル軸方向に引き抜くことを特徴とする、パイプ状複合プリプレグの製造法。
【請求項3】 マンドレルを中空状とし、該中空部を通じてマンドレル上に形成されるパイプ状複合構造の内部に、外気圧以上の流体圧を加えつつ引き抜くことを特徴とする、請求項2記載のパイプ状複合プリプレグの製造法。
【請求項4】 長さ方向に連続した強化フィルムまたは/および強化繊維層と、それにらせん状に互いに重なり合って巻き付けられた強化フィルム層または強化フィルムと強化繊維からなる層と、それら強化フィルムまたは/および強化繊維を接着するための硬化型の樹脂からなり、所定の敷設経路に沿って成形されてなるパイプ状複合材料。
【請求項5】 長さ方向に連続した強化フィルムまたは/および強化繊維層と、それにらせん状に互いに重なり合って巻き付けられた強化フィルム層または強化フィルムと強化繊維からなる層と、それら強化フィルムまたは/および強化繊維を接着するための未硬化状態の樹脂からなるパイプ状複合プリプレグの内部に、外気圧以上の流体圧を加えつつ該複合プリプレグを構成する樹脂を硬化することを特徴とするパイプ状複合材料の製造法。
【請求項6】 パイプ状複合プリプレグを、所定の形状に拘束し、パイプ状複合プリプレグの内部に外気圧以上の流体圧を加えつつ該複合プリプレグを構成する樹脂を硬化することを特徴とする請求項5記載のパイプ状複合材料の製造法。
【請求項7】 マンドレルに沿って、該マンドレルの軸方向に強化フィルムまたは/および未硬化の樹脂を付与された強化繊維を供給し、その上に未硬化の樹脂を付与された強化フィルムまたは強化フィルムと未硬化の樹脂を付与された強化繊維を巻き付け、マンドレル上で複合プリプレグを構成する樹脂を硬化させた後、形成されたパイプ状複合材料を引き抜くことを特徴とするパイプ状複合材料の製造法。
【請求項8】 マンドレルに沿って、該マンドレルの軸方向に強化フィルムまたは/および未硬化の樹脂を付与された強化繊維を供給し、その上に未硬化の樹脂を付与された強化フィルムまたは強化フィルムと未硬化の樹脂を付与された強化繊維を巻き付け、複合プリプレグを構成する樹脂を硬化させた後、形成されたパイプ状複合材料を引き抜くに当たり、マンドレルを中空状とし、該中空部を通じてマンドレル上に形成されるパイプ状複合構造の内部に外気圧以上の流体圧を加え、マンドレル上でまたは/およびマンドレルから引き抜かれた後に複合構造を形成する樹脂を硬化させた後、形成されたパイプ状複合材料を引き取ることを特徴とするパイプ状複合材料の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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