説明

パイロアクチュエータ

【課題】シールリングの耐久性を向上させることのできるパイロアクチュエータを得る。
【解決手段】点火器5を設けたガスハウジング部4と、ピストン3を収納したハウジング本体部2と、を連通する連通路41に、通常時は連通路41を閉塞するとともに、点火器5で発生したガス圧で底壁12aを破断させて連通路41を開放する有底筒状の隔壁部材12を設ける。これにより、点火器5で発生した高温ガスが隔壁部材12で閉塞したガスハウジング部4内に一時的に封止される間に温度が低下し、比較的低温のガスを作動室21に供給でき、ピストン3のOリング6が高熱の影響により劣化してしまうのを抑制してパイロアクチュエータ1の耐久性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火器で発生するガスによってピストンを作動させるパイロアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクチュエータのピストンを、火工式(パイロテクニック)の点火器を用いて作動(移動)させるようにしたパイロアクチュエータとして、ピストンを摺動可能に収納したハウジングの作動室内に点火器で発生したガスを供給し、そのガス圧でピストンを迅速に作動させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−163971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる従来のパイロアクチュエータのように、点火器で発生したガスが直接に作動室内に供給されるような構造では、点火器で火薬の燃焼により発生するガスが高温となっているため、ピストンの外周に装着されるシールリングに直接に供給されるガスの熱が大きく影響して耐久性が低下してしまう。したがって、耐久性を向上するためには、シールリングとして耐熱性に優れた材質を選択する必要があり、製品のコストアップが来される。
【0004】
そこで、本発明は、シールリングの耐久性を向上させることのできるパイロアクチュエータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、内部に作動室を設けたハウジング本体部と、前記ハウジング本体部の作動室内に摺動可能に収納され、ピストンロッドの一端部をハウジング本体部から出没可能に突出させたピストンと、前記ハウジング本体部の側壁に設けられ、前記作動室に通ずる連通路を有するガスハウジング部と、前記ガスハウジング部内に設置され、高圧ガスを前記連通路を介して前記作動室に供給する点火器と、を備えるパイロアクチュエータにおいて、前記連通路に、通常時は当該連通路を閉塞するとともに、前記点火器で発生したガス圧によって開放される遮蔽体を設けたことを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1のパイロアクチュエータにおいて、前記遮蔽体のガス圧で開放する部分には、他の部分よりも容易に破断する開裂線が設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1のパイロアクチュエータにおいて、前記遮蔽体は、前記連通路を閉塞する底壁と、当該底壁の周囲から前記連通路の内面に沿って前記点火器の配置方向に一体に延在する筒状側壁と、を備え、当該筒状側壁の周方向に開裂線を設けるとともに、当該開裂線を前記ピストンロッドの前記一端側に向かうにつれて前記底壁から遠ざかる方向に傾斜させたことを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1のパイロアクチュエータにおいて、前記遮蔽体は、前記点火器で発生したガスの熱で溶融する材質で形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1または請求項2のパイロアクチュエータにおいて、前記遮蔽体は、前記連通路の内周に一体に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、ガスハウジング部からハウジング本体部の作動室に通ずる連通路に、通常時は当該連通路を閉塞するとともに、ガスハウジング部に設けた点火器で発生したガス圧により開放される遮蔽体を設けたので、点火器で発生した高温ガスが遮蔽体で閉塞したガスハウジング部内に一時的に封止され、その後、ガス圧の高まりによって遮蔽体を開放して作動室に供給されることになる。したがって、ガスが一時的にガスハウジング部内に封止される間に温度が低下し、比較的低温のガスを作動室に供給することができるため、ピストンのシールリングが高熱の影響により劣化してしまうのが抑制され、パイロアクチュエータの耐久性を向上させることができる。
【0011】
また、点火器で発生したガスが炎を伴う場合であっても、ガスがガスハウジング部内に一時的に封止されることにより、炎が直接に作動室に供給されるのを抑制することができるため、ピストンのシールリングの耐久性を向上させることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、遮蔽体のガス圧で開放する部分の周囲に開裂線を設け、開裂線が他の部分よりも容易に破断されるようにしたので、点火器でガスを発生させた際に開裂線から集中的に破断でき、遮蔽体をより確実に開放して作動信頼性を向上することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、遮蔽体を、底壁と筒状側壁とで形成し、当該筒状側壁の周方向に開裂線を設けたので、点火器でガスを発生させた際に、開裂線から底壁側の筒状側壁と底壁とが一体となって分離して連通路が開放される。このとき、開裂線をピストンロッドの一端側に向かうにつれて底壁から遠ざかる方向に傾斜させたので、分離した筒状側壁は、ピストンロッドの一端側に向かうにつれて高さが高くなる、そのため、供給されるガスがピストンロッドの一端側と反対側へと積極的に流れることになり、作動室内に供給されるガスをピストンの受圧面に効率よく作用させることができ、ピストンをより迅速に作動させることができるようになる。
【0014】
請求項4の発明によれば、遮蔽体を、点火器で発生したガス熱で溶融する材質で形成したので、点火器でガスが発生されることにより遮蔽体が溶融し、連通路が開放されて作動室にガスが供給される。このとき、点火器で発生した高温ガスの熱エネルギーが遮蔽体を溶融するために費やされるため、ガスの温度を低下させることができる。これにより、ガスが一時的にガスハウジング部内に封止されることによる温度低下と相俟って、作動室に供給されるガスの温度をさらに低下させることができ、ピストンのシールリングの耐久性を向上させ、ひいては、パイロアクチュエータの耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0015】
請求項5の発明にれば、遮蔽体を、連通路の内周に一体に形成したので、部品点数を削減して組み付け性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、パイロアクチュエータとしてエアバッグのテザーベルトを離脱可能に支持する装置を例示する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態にかかるパイロアクチュエータの断面図、図2は、パイロアクチュエータの点火器および遮蔽体を示す分解斜視図、図3は、パイロアクチュエータの遮蔽体の平面図である。
【0018】
図1、図2に示すように、本実施形態にかかるパイロアクチュエータ1は、内部に作動室21を設けたハウジング本体部2と、ハウジング本体部2の作動室21内に摺動可能に収納され、ピストンロッド31の一端部31aをハウジング本体部2から出没可能に突出したピストン3と、ハウジング本体部2の側壁22に設けられ、作動室21に通ずる連通路41を有するガスハウジング部4と、ガスハウジング部4内に設置され、必要に応じて発生させた高圧ガスを連通路41を介して作動室21に供給する点火器5と、を備えている。
【0019】
ハウジング本体部2は、アルミニウムやアルミ合金などの金属を用いて鋳造により成形しており、一端部2aを閉止し、他端部2bを開放した有底筒状に形成している。そして、ハウジング本体部2の側壁22に筒状のガスハウジング部4を一体成形し、ガスハウジング部4の内方とハウジング本体部2内の作動室21とを連通路41で連通している。
【0020】
このとき、ピストン3は、ハウジング本体部2の連通路41よりも一端部2a側に配置しており、また、ピストン3と後述する軸受部7との間の空間部が作動室21になっている。
【0021】
ピストン3は、ハウジング本体部2の内面にほぼ密接する形状をしており、ピストン3の外周に形成した周溝32に耐熱シリコンで形成したシールリングとしてのOリング6を嵌着し、Oリング6によってピストン3とハウジング本体部2の内周との間の気密性を確保している。そして、ピストン3はハウジング本体部2の連通路41よりも一端部2a側に配置している。
【0022】
ピストン3には、ハウジング本体部2の他端部2b側に面する一側面3aの中心部からピストンロッド31が一体に突設されており、ピストンロッド31の一端部31a側をハウジング本体部2の開放された他端部2bに嵌着した軸受部7に摺動可能に挿通している。
【0023】
軸受部7は、内周に形成した周溝71に嵌着したOリング8によりピストンロッド31との間の気密性を確保している。また、軸受部7のハウジング本体部2への固定は、ハウジング本体部2の他端部2bの内周に形成した拡径部23に、拡径部23の段差部23aに軸受部7を当接させつつ嵌合するとともに、ハウジング本体部2の他端部2bに設けた加締め片24を加締めることにより気密性をもって結合している。
【0024】
また、ピストンロッド31が軸受部7に挿通される部分には、一端部31a側に向かって第1縮径部33と第2縮径部34とが順に形成されている。そして、点火器5が作動しない状態では、第1縮径部33が軸受部7の内周に摺動可能に嵌挿されており、第1縮径部33とピストンロッド31の一般軸部35との間の段差部33aが軸受部7の内側面7aに当接した状態になっている。
【0025】
また、第2縮径部34は、軸受部7の外側面7bから所定距離aだけ離した部分から先端部31a側に形成されており、所定距離a部分にスピードナット9を軸受部7の外側面7bに当接させて圧入させている。
【0026】
ところで、軸受部7から外方に突出した第2縮径部34には、テザーベルト(図示せず)の一端部が係止される。このテザーベルトは、図示省略したエアバッグの内側に他端部を固定して、エアバッグの膨張形状を規制するための紐状部材である。
【0027】
ガスハウジング部4は、一体成形によりハウジング本体部2と一体に設けられており、ガスハウジング部4の先端部4a側内周に形成した大径部42に点火器5が取り付けられる。なお、点火器5の取り付け部分からハウジング本体部2に至る部分が連通路41となっている。
【0028】
本実施形態では、連通路41は、点火器5を取り付けた大径部42からハウジング本体部2に向かって第1〜第3段差部43a、44a、45aをもって段階的に縮径する第1通路部43、第2通路部44および第3通路部45となっている。
【0029】
そして、点火器5は、第1段差部43aに突き当てた状態で大径部42に嵌合するとともに、ガスハウジング部4の先端部4aに設けた加締め片46を加締めることにより気密性をもって固定している。
【0030】
点火器5は、火工式(パイロテクニック)であり、内部に燃焼薬剤が封入されている。そして、その点火器5に接続されるハーネス11のコネクタ11a(図2参照)を介して通電させることにより、燃料薬剤が爆発的に燃焼して瞬時に大量の不活性ガス(例えば窒素ガス)を、連通路41に面した図外の排出口から噴出するようになっている。このとき、排出口から噴出したガスは高温高圧状態となっている。
【0031】
そして、点火器5で発生したガスは連通路41を介してシリンダ本体部2内の作動室21に供給され、そのガス圧でピストン3をシリンダ本体部2の一端部2a側に移動させる。すると、ピストン3に伴ってピストンロッド31も同方向に移動することにより、ピストンロッド31の一端部31aがシリンダ本体部2の内方に向かって移動して、テザーベルトがピストンロッド31から抜脱するようになっている。
【0032】
ここで、本実施形態では、連通路41に、通常時は連通路41を閉塞するとともに、点火器5で発生したガス圧により開放される遮蔽体としての有底筒状の隔壁部材12を設けている。
【0033】
隔壁部材12は、アルミ合金板をプレス成形して形成されており、連通路41の第3段差部45aに当接する底壁12aと、この底壁12aの周囲から第2通路部44の内面に沿って点火器5の配置方向に一体に延在する第1筒状側壁12bと、第1通路部43の内面に沿った第2筒状側壁12cと、によって段付きカップ状に形成されている。このとき、第1筒状側壁12bと第2筒状側壁12cとの間に形成される段部12dは、連通路41の第2段差部44aに係止されるようになっている。そして、点火器5の作動によってガスが発生されると、隔壁部材12の底壁12aが破断して連通路41を開放するようになっている。
【0034】
図3に示すように、隔壁部材12のガス圧で開放する部分、すなわち、底壁12aには、他の部分よりも容易に破断する開裂線13が設けられている。
【0035】
すなわち、開裂線13は、底壁12aの点火器5に面した片面12eに断面V字状の細溝として形成しており、その開裂線13は、底壁12aの外周に沿う円弧部分13aと、底壁12aの中心を通る直径方向の直線部分13bと、で形成している。また、円弧部分13aは、直線部分13bを境にして線対称の部位に厚肉のヒンジ部13cを一対設け、図1中2点鎖線に示すように開裂線13が破断した際に、底壁12aがヒンジ部13cを支点として直線部分13bから観音開き状に開動するようになっている。勿論、開裂線21の形状は、上述の円弧部分13a、直線部分13bに限ることなく、底壁12aを効率良く破断できる限り任意の形状とすることができる。
【0036】
このとき、観音開き状に開動した底壁12aは、図1中2点鎖線に示すように、ガスハウジング部4の中心軸方向、すなわち、ガスの流れ方向に対して平行になるようにし、ガスの流れに抵抗を与えるのを極力低減するようにするのが好ましい。
【0037】
以上の本実施形態によれば、ガスハウジング部4からハウジング本体部2の作動室21に通ずる連通路41に、通常時は連通路41を閉塞するとともに、ガスハウジング部4に設けた点火器5で発生したガス圧でにより開放される隔壁部材(遮蔽体)12を設けた。これにより、点火器5で発生した高温ガスが隔壁部材12で閉塞したガスハウジング部4内に瞬間的ではあるが一時的に封止され、その後、ガス圧の高まりによって隔壁部材12の底壁12aを開放して作動室21に供給されることになる。したがって、ガスが一時的にガスハウジング部4内に封止される間に温度が低下し、比較的低温のガスを作動室21に供給することができるため、ピストン3のOリング6に高熱の影響により劣化してしまうのが抑制され、パイロアクチュエータ1の耐久性を向上させることができる。
【0038】
また、点火器5で発生したガスが炎を伴う場合であっても、ガスがガスハウジング部4内に一時的に封止されることにより、炎が直接に作動室21に供給されるのを抑制できる。この場合にあってもピストン3のシールリング6の耐久性を向上させることができる。
【0039】
さらに、本実施形態によれば、隔壁部材12に、ガス圧で開放する底壁12aの周囲に開裂線13を設け、他の部分よりも容易に破断できるようにしたので、点火器5でガスを発生させた際に開裂線13から集中的に破断させることができ、隔壁部材12をより確実に開放させて作動信頼性を向上することができる。
【0040】
(第2実施形態)
図4は、本実施形態にかかる隔壁部材を示す一部破断させた正面図であって、(a)は、開放前を示す正面図、(b)は、開放後を示す正面図である。なお、本実施形態にかかるパイロアクチュエータは、上記第1実施形態にかかるパイロアクチュエータと同様の構成要素を備える。よって、それら同様の構成要素については共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0041】
本実施形態は、基本的に上記第1実施形態と同様に、連通路41に遮蔽体としての有底筒状の隔壁部材12Aを設け、その隔壁部材12Aによって点火器5で発生したガスを一時的にガスハウジング部4内に封止するようになっている。つまり、隔壁部材12Aは、図4(a)に示すように、連通路41(図1参照)を閉塞する底壁12aと、当該底壁12aの周囲から連通路41の内面に沿って点火器5の配置方向に一体に延在する第1筒状側壁12bと、を備えている。
【0042】
ここで、本実施形態が上記第1実施形態と主に異なる点は、図4に示すように、筒状側壁12bの周方向に開裂線13Aを設けるとともに、開裂線13Aをピストンロッド31の一端部31a側(図4中左方)に向かうにつれて底壁12aから遠ざかる方向に傾斜させた点である。
【0043】
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、隔壁部材12Aを、底壁12aと筒状側壁12bとを備えて形成し、当該筒状側壁12bの周方向に傾斜した開裂線13Aを設けたので、点火器5でガスを発生させた際に、開裂線13Aから底壁12a側の筒状側壁12bと底壁12aとが一体となって分離して連通路41を開放できる。
【0045】
このとき、開裂線13Aをピストンロッド31の一端部31a側(図4中左方)に向かうにつれて底壁12aから遠ざかる方向に傾斜させているため、図4(b)に示すように、分離した筒状側壁12bは、ピストン3の配置側の高さh1が低く、その反対側の高さh2が高くなる。これにより、供給されるガスは低くなったピストン3の配置側(図4中右方)へと積極的に流れることになるため、作動室21内に供給されるガスをピストン3の受圧面である一側面3aに効率よく作用させることができ、ピストン3をより迅速に作動させることができる。なお、分離した底壁12aは、一時的にピストンロッド31に押しつけられて静止し、その一時的な静止状態で上述したガスの流れが効率良く作り出されることになる。
【0046】
(第3実施形態)
図5は、本実施形態にかかる隔壁部材の断面図である。なお、本実施形態にかかるパイロアクチュエータは、上記第1実施形態にかかるパイロアクチュエータと同様の構成要素を備える。よって、それら同様の構成要素については共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0047】
本実施形態は、基本的に上記第1実施形態と同様に、遮蔽体を、底壁12aと、第1筒状側壁12bと、第2筒状側壁12cと、によって段付きカップ状に形成した隔壁部材12Bによって形成している。
【0048】
ここで、本実施形態が上記第1実施形態と主に異なる点は、隔壁部材12Bを、点火器5で発生したガスの熱で溶融する材質、例えば、ナイロン66などの合成樹脂で形成したことにある。この場合、隔壁部材12Bは射出成形により形成することができる。
【0049】
以上の本実施形態によっても、上記第1および第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、隔壁部材12Bを、点火器5で発生したガスの熱で溶融する材質で形成したので、点火器5でガスが発生されることにより隔壁部材12Bの底壁12aが溶融して連通路41が開放され、作動室21にガスを供給することができるようになる。
【0051】
このとき、点火器5で発生した高温ガスの熱エネルギーが隔壁部材12Bを溶融するために費やされてガスの温度が低下するため、ガスが一時的にガスハウジング部4内に封止されることによる温度低下と相俟って、作動室21に供給されるガスの温度をさらに低下させることができ、ピストン3のOリング6の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0052】
(第4実施形態)
図6は、本実施形態にかかる点火器を取り付けたガスハウジング部の断面図である。なお、本実施形態にかかるパイロアクチュエータは、上記第1実施形態にかかるパイロアクチュエータと同様の構成要素を備える。よって、それら同様の構成要素については共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0053】
本実施形態は、基本的に上記第1実施形態と同様に、ガスハウジング部4の先端部4a側内周に点火器5を取り付け、その点火器5で発生したガスを連通路41Aを介してハウジング本体部2の作動室21に供給するようになっており、連通路41Aには、遮蔽体としての隔壁20が設けられている。なお、本実施形態では、連通路41Aを軸方向全長に亘って同径に形成している。
【0054】
ここで、本実施形態が上記第1実施形態と主に異なる点は、隔壁20を連通路41Aの内周に一体に形成したことにある。この場合、隔壁20は、ガスハウジング部4を形成する材料、すなわち、アルミニウムやアルミ合金などの金属で形成される。勿論、隔壁20の肉厚は、点火器5のガス圧で破断されるように設定されている。
【0055】
また、本実施形態にあっても、上記第1実施形態と同様に隔壁20に開裂線21を設けることが好ましく、開裂線21は、隔壁20が効率良く破断される限り任意の形状とすることができる。
【0056】
なお、隔壁20を形成するにあたり、本実施形態では、ガスハウジング部4をハウジング本体部2と一体に鋳造により成形する際に、隔壁20を薄板状として同時に成形し、その後、機械加工して最終形状へと仕上げている。また、隔壁20に開裂線21を設ける場合は、開裂線21を成形と同時に、または、成型後の機械加工段階で形成するようにすればよい。
【0057】
以上の本実施形態によっても、上記第1〜第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、隔壁20を、連通路41Aの内周に一体に形成してあるので、部品点数を削減して組み付け性を向上させることができる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0060】
例えば、ハウジング本体部とガスハウジング部とを別体に形成し、それぞれを一体に組み付けることも可能である。
【0061】
また、パイロアクチュエータとして、エアバッグのテザーベルトを離脱させる装置を例示したが、これに限ることなく、ピストンの移動を利用した他の装置にあっても本発明を実施することができる。例えば、跳上げ式ボンネット装置の付勢機構に使用されるバネを、通常時に、圧縮状態で保持しておくための保持機構のストッパとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるパイロアクチュエータの断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかるパイロアクチュエータの点火器および遮蔽体を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかるパイロアクチュエータの遮蔽体の平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態にかかる隔壁部材を示す一部破断させた正面図であって、(a)は、開放前を示す正面図、(b)は、開放後を示す正面図である。
【図5】本発明の第3実施形態にかかるパイロアクチュエータの隔壁部材の断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態にかかるパイロアクチュエータの点火器を取り付けたガスハウジング部の断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 パイロアクチュエータ
2 ハウジング本体部
21 作動室
22 側壁
3 ピストン
31 ピストンロッド
31a ピストンロッドの一端部
4 ガスハウジング部
41 連通路
5 点火器
6 Oリング(シールリング)
12、12A、12B 隔壁部材(遮蔽体)
12a 底壁
12b 第1筒状側壁
13、13A 開裂線
20 隔壁(遮蔽体)
21 開裂線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に作動室を設けたハウジング本体部と、
前記ハウジング本体部の作動室内に摺動可能に収納され、ピストンロッドの一端部をハウジング本体部から出没可能に突出させたピストンと、
前記ハウジング本体部の側壁に設けられ、前記作動室に通ずる連通路を有するガスハウジング部と、
前記ガスハウジング部内に設置され、高圧ガスを前記連通路を介して前記作動室に供給する点火器と、を備えるパイロアクチュエータにおいて、
前記連通路に、通常時は当該連通路を閉塞するとともに、前記点火器で発生したガス圧によって開放される遮蔽体を設けたことを特徴とするパイロアクチュエータ。
【請求項2】
前記遮蔽体のガス圧で開放する部分には、他の部分よりも容易に破断する開裂線が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のパイロアクチュエータ。
【請求項3】
前記遮蔽体は、前記連通路を閉塞する底壁と、当該底壁の周囲から前記連通路の内面に沿って前記点火器の配置方向に一体に延在する筒状側壁と、を備え、当該筒状側壁の周方向に開裂線を設けるとともに、当該開裂線を前記ピストンロッドの前記一端側に向かうにつれて前記底壁から遠ざかる方向に傾斜させたことを特徴とする請求項1に記載のパイロアクチュエータ。
【請求項4】
前記遮蔽体は、前記点火器で発生したガスの熱で溶融する材質で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパイロアクチュエータ。
【請求項5】
前記遮蔽体は、前記連通路の内周に一体に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパイロアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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