説明

パイロットリレー

【課題】ダイアフラムの耐久性を向上させることができ、かつ、スプール(移動体)を分割構造として生産性を向上させることが可能なパイロットリレーを提供する。
【解決手段】スプール10に、第1の開口10aを第1の排気室7−1に連通させる第1の排気通路10c1と、第2開口10bを第2の排気室7−2に連通させる第2の排気通路10c2とを設け、第1の排気通路と第2の排気通路とを非通路部分10dによって分断した構造とする。第1の出力空気圧室5を第1のダイアフラム9−1を介して第1の排気室と隣接させ、第1の排気室を第2のダイアフラム9−2を介してバイアス室8と隣接させ、バイアス室を第3のダイアフラム9−3を介して入力空気圧室2と隣接させ、入力空気圧室を第4のダイアフラム9−4を介して第2の排気室と隣接させ、第2の排気室をダイアフラム9−5を介して第2の出力空気圧室6と隣接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気作動型の調節弁(バルブ)の開度制御を行うポジショナなどに用いられるパイロットリレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、バルブ駆動制御、プロセスオートメーション、その他一般産業用機器の駆動制御に際してはポジショナが用いられており、このポジショナをバルブに取り付けることにより、バルブの開度制御を可能としている。
【0003】
図3にこのバルブの開度制御を可能とするポジショナの要部の構成を示す。同図において、100はポジショナであり、このポジショナ100は上位コントローラ200から電気信号で送られてくるバルブ開度信号を空気圧信号Pnに変換する電空変換部101と、この電空変換部101によって変換された空気圧信号(入力空気圧)Pnを増幅してバルブ300に出力空気圧信号(出力空気圧)Poとして出力するパイロットリレー(圧力信号増幅器)102とから構成されている。
【0004】
このようなポジショナ100に用いられるパイロットリレー102には、1つの入力空気圧Pnに対して1つの出力空気圧Poを出力する単動型と、1つの入力空気圧Pnに対して2つの出力空気圧Po1,Po2を出力する複動型とが存在する。複動型のパイロットリレー102は、2つの出力ポートを有し、バルブ300を正動作させる場合には第1のポートの出力空気圧Po1を第2のポートの出力空気圧Po2よりも高くし、逆動作させる場合には第2のポートの出力空気圧Po2を第1のポートの出力空気圧Po1よりも高くする。
【0005】
図4に特許文献1に示された複動型のパイロットリレーの構造を示す。同図において、401はハウジングであり、ハウジング401内には入力空気圧室402,第1の供給空気圧室403,第2の供給空気圧室404,第1の出力空気圧室405,第2の出力空気圧室406,排気室407およびバイアス室408が設けられている。
【0006】
また、ハウジング401内には、入力空気圧室402に導かれる入力空気圧(ノズル背圧)Pnによって変位するダイアフラム409が設けられており、このダイアフラム409にスプール(移動体)410が矢印A方向およびB方向へ移動可能に支持されている。スプール410は、第1の出力空気圧室405に位置する第1の開口410aと、第2の出力空気圧室406に位置する第2の開口410bと、第1の開口410aおよび第2の開口410bを排気室407に連通させる排気通路410cとを有している。
【0007】
第1の供給空気圧室403と第1の出力空気圧室405との間にはハウジング401の内壁にリング壁411が形成されている。このリング壁411は第1の供給空気圧室403と第1の出力空気圧室405とを画成する第1の隔壁の役割を果たす。第2の供給空気圧室404と第2の出力空気圧室406との間にはハウジング401の内壁にリング壁412が形成されている。このリング壁412は第2の供給空気圧室404と第2の出力空気圧室406とを画成する第2の隔壁の役割を果たす。
【0008】
また、第1の供給空気圧室403と第1の出力空気圧室405との間には、リング壁411の中心孔411aを貫通して、左右に移動可能に第1のポペット弁413が設けられている。第1のポペット弁413は、スプール410の第1の開口410aを開閉する排気弁413aと、シートリング411の中心孔(第1の連通孔)411aを開閉する給気弁413bとを一体的に有している。
【0009】
第2の供給空気圧室404と第2の出力空気圧室406との間には、リング壁412の中心孔412aを貫通して、左右に移動可能に第2のポペット弁414が設けられている。第2のポペット弁414は、スプール410の第2の開口410bを開閉する排気弁414aと、リング壁412の中心孔(第2の連通孔)412aを開閉する給気弁414bとを一体的に有している。
【0010】
また、第1の供給空気圧室403には、第1のポペット弁413を矢印B方向、すなわち給気弁413bが第1の連通孔411aを閉じる方向に付勢する第1のバネ415が設けられている。第2の供給空気圧室404には、第2のポペット弁414を矢印A方向、すなわち給気弁414bが第2の連通孔412aを閉じる方向に付勢する第2のバネ416が設けられている。
【0011】
この複動型のパイロットリレーでは、第1の供給空気圧室403および第2の供給空気圧室404にエアー供給管417を通して供給空気圧Psが供給され、入力空気圧室402にノズル背圧導入管418を通して入力空気圧Pnが導かれる。また、第1の出力空気圧室405から第1のエアー出力管419を通して出力空気圧Po1がバルブ300に出力され、第2の出力空気圧室406から第2のエアー出力管420を通して出力空気圧Po2がバルブ300に出力される。なお、バイアス室408はスプール410に支持されたダイアフラム409と421との間に形成されており、このバイアス室408にはエアー供給管417を通して供給空気圧Psが供給される。また、排気室407は大気と連通している。
【0012】
この複動型のパイロットリレーにおいて、入力空気圧Pnを減少させると、ダイアフラム409が矢印A側に移動し、それに伴って、ダイアフラム409に支持されているスプール410も矢印A側に移動する。すると、スプール410は、その移動に伴って第1のポペット弁413を第1のバネ415の付勢力に抗して押し下げ、それに伴って、第1のポペット弁413の給気弁413bが第1の連通孔411aを開く。この時、スプール410の第1の開口410aは、第1のポペット弁413の排気弁413aによって閉じられる。一方、第2のポペット弁414は、第2のバネ416の付勢力によって押し上げられ、それに伴って、第2のポペット弁414の給気弁414bが第2の連通孔412aを閉じる。この時、スプール410の第2の開口410bは、第2のポペット弁414の排気弁414aによって開かれる。
【0013】
これにより、エアー供給管417を通して第1の供給空気圧室403に供給されたエアーは、第1の連通路411aを通って第1の出力空気圧室405内に導入された後に、第1のエアー出力管419を通ってバルブ300に供給される。一方、バルブ300からのエアーは、第2のエアー出力管420を通って第2の出力空気圧室406内に戻った後、スプール410の第2の開口410bより排気通路410cに入り、排気室407に排出される。
【0014】
一方、入力空気圧Pnを増加させると、ダイアフラム409が矢印B側に移動し、それに伴って、ダイアフラム409に支持されているスプール410も矢印B側に移動する。すると、スプール410は、その移動に伴って第2のポペット弁414を第2のバネ416の付勢力に抗して押し下げ、それに伴って、第2のポペット弁414の給気弁414bが第2の連通孔412aを開く。この時、スプール410の第2の開口410bは、第2のポペット弁414の排気弁414aによって閉じられる。一方、第1のポペット弁413は、第1のバネ415の付勢力によって押し上げられ、それに伴って、第1のポペット弁413の給気弁413bが第1の連通孔411aを閉じる。この時、スプール410の第1の開口410aは、第1のポペット弁413の排気弁413aによって開かれる。
【0015】
これにより、エアー供給管417を介して第2の供給空気圧室404に供給されたエアーは、第2の連通路412aを通って第2の出力空気圧室406内に導入された後に、第2のエアー出力管420を通ってバルブ300に供給される。一方、バルブ300からのエアーは、第1のエアー出力管419を通って第1の出力空気圧室405内に戻った後、スプール410の第1の開口410aより排気通路410cに入り、排気室407に排出される。
【0016】
このようにして、入力空気圧室402に導かれる入力空気圧Pnによって、スプール410および一対のポペット弁412,413が動作し、その動作によって、増幅された出力空気圧Po1およびPo2がエア出力管419および420を通してバルブ300へ出力されるものとなる。この場合、入力空気圧Pnの減少方向の圧力を調整することによって、バルブ300を正動作させる場合の出力空気圧Po1が調整されるものとなり、入力空気圧Pnの増加方向の圧力を調整することによって、バルブ300を逆動作させる場合の出力空気圧Po2が調整されるものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2005−282718号公報
【特許文献2】特開2008−95847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上述した特許文献1に示されたパイロットリレーによると、第1の出力空気圧室405と入力空気圧室402とが隣接しており、この第1の出力空気圧室405と入力空気圧室402との間をOリング422でシールしているので、入出力特性のヒステリシスが大きくなるという問題があった。
【0019】
そこで、この問題を解決するために、Oリング422の代わりにダイアフラムを使用することが考えれるが、入力空気圧室402と第1の出力空気圧室405の圧力の大小関係が頻繁に変わるので、すなわちPo1>Pnとなったり、Po1<Pnとなったりして、いわゆる圧力の反転が起こるので、ダイアフラムにかかる圧力の正負の変化が激しく、ダイアフラムの耐久性を低下させる原因となる。
【0020】
また、上述した特許文献1に示されたパイロットリレーによると、スプール410にその軸心を貫通する排気通路410cを形成しているため、スプール410を分割構造としてネジ止めなどの簡易な方法で組み立てることができず、生産性が悪かった。
【0021】
なお、特許文献2には、圧力の変動が激しい、出力空気圧室、入力空気圧室(ノズル背圧室)、フィードバック室が互いに隣接されないように、これらの室の間にバイアス室、排気室、大気室を配置してダイアフラムかかかる圧力の正負の変化を抑えるようにした例が示されている。しかし、この特許文献2に示された構造において、スプールはその中心軸を貫通した1つの排気通路しか有しておらず、スプールを分割構造とすることができないために、生産性が悪いという問題が残されている。
【0022】
また、特許文献2に示された構造では、ケーシング内に設けられる室数が非常に増えて11室を必要とする。室数が増えると、ダイアフラムの枚数など構成部品も増え、パイロットリレーの容積も大きくなり、これを収容するポジショナの大型化・コストアップを招いてしまう。
【0023】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ダイアフラムの耐久性を向上させることができ、かつ、スプール(移動体)を分割構造として生産性を向上させることが可能なパイロットリレーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
このような目的を達成するために本発明は、ハウジング内に形成された入力空気圧室,第1の供給空気圧室,第2の供給空気圧室,第1の出力空気圧室,第2の出力空気圧室,第1の排気室,第2の排気室およびバイアス室と、入力空気圧室に導かれる入力空気圧によって変位するダイアフラムと、第1の出力空気圧室に位置する第1の開口と,第2の出力空気圧室に位置する第2の開口と,第1の開口を第1の排気室に連通させる第1の排気通路と,第2の開口を第2の排気室に連通させる第2の排気通路とを有し、ダイアフラムに支持されてハウジング内を移動する移動体と、第1の供給空気圧室と第1の出力空気圧室とを画成する第1の隔壁に形成された第1の連通孔を貫通して移動可能に設けられ、移動体の第1の開口を開閉する第1の排気弁および第1の連通孔を開閉する第1の給気弁とを一体的に有する第1のポペット弁と、第2の供給空気圧室と第2の出力空気圧室とを画成する第2の隔壁に形成された第2の連通孔を貫通して移動可能に設けられ、移動体の第2の開口を開閉する第2の排気弁および第2の連通孔を開閉する第2の給気弁とを一体的に有する第2のポペット弁と、第1のポペット弁を第1の給気弁が第1の連通孔を閉じる方向に付勢する第1のバネ部材と、第2のポペット弁を第2の給気弁が第2の連通孔を閉じる方向に付勢する第2のバネ部材とを備えたパイロットリレーであって、入力空気圧室は、第1の出力空気圧室にも第2の出力空気圧室にも隣接していないことを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、移動体(スプール)に、第1の出力空気圧室に位置する第1の開口を第1の排気室に連通させる第1の排気通路と、第2の出力空気圧室に位置する第2の開口を第2の排気室に連通させる第2の排気通路とが設けられる。これにより、移動体の中央に第1の排気通路と第2の排気通路とを分断する非通路部分を設けるようにし、この非通路部分で移動体を分割し、ネジ止めなどの簡易な方法で移動体を組み立てるようにすることが可能となる。
【0026】
また、この発明によれば、入力空気圧室が第1の出力空気圧室にも第2の出力空気圧室にも隣接していないので、入力空気圧室と出力空気圧室との間を仕切るダイアフラムが存在しない。このため、圧力の正負の変化が激しいダイアフラムがなくなり、ダイアフラムの耐久性を向上させることが可能となる。
【0027】
例えば、本発明の第1例として、第1の排気室を、第1のダイアフラムを介して第1の出力空気圧室と隣接させとともに第2のダイアフラムを介してバイアス室と隣接させ、入力空気圧室を、第3のダイアフラムを介してバイアス室と隣接させるとともに第4のダイアフラムを介して第2の排気室と隣接させ、第2の排気室を、第5のダイアフラムを介して第2の出力空気圧室と隣接させるようにする。この場合、第1の出力空気圧室は第1のダイアフラムを介して第1の排気室と隣接し、第1の排気室は第2のダイアフラムを介してバイアス室と隣接する。また、入力空気圧室は第3のダイアフラムを介してバイアス室と隣接し、第2の出力空気圧室は第5のダイアフラムを介して第2の排気室と隣接する。
【0028】
例えば、本発明の第2例として、バイアス室を、第1のダイアフラムを介して第1の出力空気圧室と隣接させるとともに第2のダイアフラムを介して第1の排気室と隣接させ、入力空気圧室を、第3のダイアフラムを介して第1の排気室と隣接させるとともに第4のダイアフラムを介して第2の排気室と隣接させ、第2の排気室を、第5のダイアフラムを介して第2の出力空気圧室と隣接させるようにする。この場合、第1の出力空気圧室は第1のダイアフラムを介してバイアス室と隣接し、入力空気圧室は第3のダイアフラムを介して第1の排気室と隣接する。また、入力空気圧室は第4のダイアフラムを介して第2の排気室と隣接し、第2の出力空気圧室は第5のダイアフラムを介して第2の排気室と隣接する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、移動体(スプール)に、第1の出力空気圧室に位置する第1の開口を第1の排気室に連通させる第1の排気通路と第2の開口を第2の排気室に連通させる第2の排気通路とを設けるようにしたので、移動体の中央に第1の排気通路と第2の排気通路とを分断する非通路部分を設けるようにし、この非通路部分で移動体を分割し、ネジ止めなどの簡易な方法で移動体を組み立てるようにして、生産性を向上させることが可能となる。
また、本発明によれば、入力空気圧室が第1の出力空気圧室にも第2の出力空気圧室にも隣接していないので、入力空気圧室と出力空気圧室との間を仕切るダイアフラムが存在せず、圧力の正負の変化が激しいダイアフラムをなくして、ダイアフラムの耐久性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るパイロットリレー(複動型のパイロットリレー)の一実施の形態(実施の形態1)の構造を示す図である。
【図2】本発明に係るパイロットリレー(複動型のパイロットリレー)の他の実施の形態(実施の形態2)の構造を示す図である。
【図3】パイロットリレーを用いたポジショナの要部の構成図である。
【図4】特許文献1に示された複動型のパイロットリレーの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
〔実施の形態1〕
図1はこの発明に係るパイロットリレー(複動型のパイロットリレー)の一実施の形態の構造を示す図である。
【0032】
同図において、1はハウジングであり、ハウジング1内には入力空気圧室2,第1の供給空気圧室3,第2の供給空気圧室4,第1の出力空気圧室5,第2の出力空気圧室6,第1の排気室7−1,第2の排気室7−2およびバイアス室8が形成されている。
【0033】
このハウジング1において、第1の排気室7−1は、第1のダイアフラム9−1を介して第1の出力空気圧室5と隣接するとともに第2のダイアフラム9−2を介してバイアス室8と隣接している。また、入力空気圧室2は、第3のダイアフラム9−3を介してバイアス室8と隣接するとともに第4のダイアフラム9−4を介して第2の排気室7−2と隣接している。また、第2の排気室7−2は、第5のダイアフラム9−5を介して第2の出力空気圧室6と隣接している。第1〜第5のダイアフラム9−1〜9−5は、ハウジング1とスプール(移動体)10との間に設けられており、この第1〜第5のダイアフラム9−1〜9−5によってスプール10が矢印A方向およびB方向へ移動可能に支持されている。
【0034】
スプール10は、第1の出力空気圧室5に位置する第1の開口10aと、第2の出力空気圧室6に位置する第2の開口10bと、第1の開口10aを第1の排気室7−1に連通させる第1の排気通路10c1と、第2開口10bを第2の排気室7−2に連通させる第2の排気通路10c2とを有している。スプール10において、第1の排気通路10c1と第2の排気通路10c2とは、非通路部分10dによって分断されている。
【0035】
また、ハウジング1の一方側の端部には、ハウジング1の外側にその開口部11aが臨む通路11が第1のポペット弁組立体装着部12として設けられており、ハウジング1の他方側の端部には、ハウジング1の外側にその開口部13aが臨む通路13が第2のポペット弁組立体装着部14として設けられている。
【0036】
第1のポペット弁組立体装着部12には、ハウジング1の外側に臨む通路11の開口部11aから、その通路11の内壁面に沿って、第1のポペット弁組立体15が摺動可能に装着され、その通路11の底部に残された空間が第1の出力空気圧室5とされている。また、第2のポペット弁組立体装着部14には、ハウジング1の外側に臨む通路13の開口部13aから、その通路13の内壁面に沿って、第2のポペット弁組立体16が摺動可能に装着され、その通路13の底部に残された空間が第2の出力空気圧室6とされている。
【0037】
第1のポペット弁組立体15は、円筒状のシート部17と、このシート部17がその前面に着脱可能に取り付けられた円柱状のシート保持部18との分割構造とされており 、シート部17とシート保持部18との間に内部空間19が形成されている。シート部17の上面17aには内部空間19と第1の出力空気圧室5とを連通させる第1の連通孔17bが形成されている。このシート17の上面17aが第1の供給空気圧室3と第1の出力空気圧室5とを画成する第1の隔壁の役割を果たす。
【0038】
シート部17とシート保持部18との間の内部空間19には第1のバネ20が収容されており、この第1のバネ20に付勢された状態で第1のポペット弁21がシート部17とシート保持部18との間に保持されている。内部空間20は第1の供給空気圧室3と連通している。第1のポペット弁21は、その先端部に排気弁21aを有し、排気弁21aの後方に給気弁21bを有している。また、第1のポペット弁21は、その軸心を貫通する貫通孔21cを有している。
【0039】
この保持状態において、第1のポペット弁21は、シート部17に形成された第1の連通孔17bを貫通して、左右に移動可能に第1のバネ20によって付勢されている。また、給気弁21bが第1の連通孔17bを閉じる方向に付勢され、排気弁21aが第1の連通孔17bから突出している。なお、第1のポペット弁21の排気弁21aと給気弁21bとの間には、その内部に形成された貫通孔21cに連通する微細連通路21dが形成されている。この第1のポペット弁組立体15では、シート部17とシート保持部18との分割構造とされているので、第1のバネ20および第1のポペット弁21の組み込み作業が容易である。
【0040】
第2のポペット弁組立体16も第1のポペット弁組立体15と同様の構成とされている。すなわち、第2のポペット弁組立体16は、円筒状のシート部22と、このシート部22がその前面に着脱可能に取り付けられた円柱状のシート保持部23との分割構造とされており、シート部22とシート保持部23との間に内部空間24が形成されている。シート部22の上面22aには内部空間24と第2の出力空気圧室6とを連通させる第2の連通孔22bが形成されている。このシート22の上面22aが第2の供給空気圧室4と第2の出力空気圧室6とを画成する第2の隔壁の役割を果たす。
【0041】
シート部22とシート保持部23との間の内部空間24には第2のバネ25が収容されており、この第2のバネ25に付勢された状態で第2のポペット弁26がシート部22とシート保持部23との間に保持されている。内部空間24は第2の供給空気圧室4と連通している。第2のポペット弁26は、その先端部に排気弁26aを有し、排気弁26aの後方に給気弁26bを有している。また、第2のポペット弁26は、その軸心を貫通する貫通孔26cを有している。
【0042】
この保持状態において、第2のポペット弁26は、シート部22に形成された第2の連通孔22bを貫通して、左右に移動可能に第2のバネ25によって付勢されている。また、給気弁26bが第2の貫通孔22bを閉じる方向に付勢され、排気弁26aが第2の貫通孔22bから突出している。なお、第2のポペット弁26の排気弁26aと給気弁26bとの間には、その内部に形成された貫通孔26cに連通する微細連通路26dが形成されている。この第2のポペット弁組立体26でも、シート部22とシート保持部23との分割構造とされているので、第2のバネ25および第2のポペット弁26の組み込み作業が容易である。
【0043】
第1のポペット弁組立体15に対しては、この第1のポペット弁組立体15を第1のポペット弁組立体装着部12に装着した後、すなわちハウジング1の外側に臨む開口部11aから第1のポペット弁組立体15を通路11内に押し込んだ後、その通路11の開口部11aにリング状の止板27を取り付けている。すなわち、止板27のリング面を第1のポペット弁組立体15のハウジング1の外側に臨む面(シート保持部18の底面18a)に面接触させ、第1のポペット弁組立体装着部12における第1のポペット弁組立体15の位置を規制している。
【0044】
第2のポペット弁組立体16に対しても同様に、この第2のポペット弁組立体16を第2のポペット弁組立体装着部14に装着した後、すなわちハウジング1の外側に臨む開口部13aから第2のポペット弁組立体16を通路13内に押し込んだ後、その通路13の開口部13aにリング状の止板28を取り付けている。すなわち、止板28のリング面を第2のポペット弁組立体16のハウジング1の外側に臨む面(シート保持部23の底面23a)に面接触させ、第2のポペット弁組立体装着部14における第2のポペット弁組立体16の位置を規制している。
【0045】
この複動型のパイロットリレーでは、第1の供給空気圧室3,第2の供給空気圧室4およびバイアス室8にエアー供給管29を通して供給空気圧Psが供給され、入力空気圧室2にノズル背圧導入管30を通して入力空気圧Pnが導かれる。また、第1の出力空気圧室5から第1のエアー出力管31を通して出力空気圧Po1がバルブ300に出力され、第2の出力空気圧室6から第2のエアー出力管32を通して出力空気圧Po2がバルブ300に出力される。
【0046】
なお、第1の排気室7−1および第2の排気室7−2は大気と連通しており、第1のポペット弁組立体15のシート部17およびシート保持部18にはハウジング1との間にOリング33,34が装着されている。また、第2のポペット弁組立体16のシート部22およびシート保持部23にもハウジング1との間にOリング35,36が装着されている。また、第1のポペット弁組立体15において、第1のポペット弁21とシート保持部18との間にOリング37が装着されており、第2のポペット弁組立体16において、第2のポペット弁26とシート保持部23との間にOリング38が装着されている。
【0047】
この複動型のパイロットリレーにおいて、入力空気圧Pnを増加させると、ダイアフラム9−1〜9−5が矢印A側に移動し、それに伴って、ダイアフラム9−1〜9−5に支持されているスプール10も矢印A側に移動する。すると、スプール10は、その移動に伴って第1のポペット弁21を第1のバネ20の付勢力に抗して押し下げ、それに伴って、第1のポペット弁21の給気弁21bが第1の連通孔17bを開く。この時、スプール10の第1の開口10aは、第1のポペット弁21の排気弁21aによって閉じられる。一方、第2のポペット弁26は、第2のバネ25の付勢力によって押し上げられ、それに伴って、第2のポペット弁26の給気弁26bが第2の連通孔22bを閉じる。この時、スプール10の第2の開口10bは、第2のポペット弁26の排気弁26aによって開かれる。
【0048】
これにより、エアー供給管29を通して第1の供給空気圧室3に供給されたエアーは、第1のポペット弁組立体15の内部空間19に入り、第1の連通孔17bを通って第1の出力空気圧室5内に導入された後に、第1のエアー出力管31を通ってバルブ300に供給される。一方、バルブ300からのエアーは、第2のエアー出力管32を通って第2の出力空気圧室6内に戻った後、スプール10の第2の開口10bより排気通路10cに入り、排気室7に排出される。
【0049】
一方、入力空気圧Pnを減少させると、ダイアフラム9−1〜9−5が矢印B側に移動し、それに伴って、ダイアフラム9に支持されているスプール10も矢印B側に移動する。すると、スプール10は、その移動に伴って第2のポペット弁26を第2のバネ25の付勢力に抗して押し下げ、それに伴って、第2のポペット弁26の給気弁26bが第2の連通孔22bを開く。この時、スプール10の第2の開口10bは、第2のポペット弁26の排気弁26aによって閉じられる。一方、第1のポペット弁21は、第1のバネ20の付勢力によって押し上げられ、それに伴って、第1のポペット弁21の給気弁21bが第1の連通孔17bを閉じる。この時、スプール10の第1の開口10aは、第1のポペット弁21の排気弁21aによって開かれる。
【0050】
これにより、エアー供給管29を介して第2の供給空気圧室4に供給されたエアーは、第2のポペット弁組立体16の内部空間24に入り、第2の連通路22bを通って第2の出力空気圧室6内に導入された後に、第2のエアー出力管32を通ってバルブ300に供給される。一方、バルブ300からのエアーは、第1のエアー出力管31を通って第1の出力空気圧室5内に戻った後、スプール10の第1の開口10aより排気通路10cに入り、排気室7に排出される。
【0051】
このようにして、入力空気圧室2に導かれる入力空気圧Pnによって、スプール10および一対のポペット弁21,26が動作し、その動作によって、増幅された出力空気圧Po1およびPo2がエア出力管31および32を通してバルブ300へ出力されるものとなる。この場合、入力空気圧Pnの増加方向の圧力を調整することによって、バルブ300を正動作させる場合の出力空気圧Po1が調整されるものとなり、入力空気圧Pnの減少方向の圧力を調整することによって、バルブ300を逆動作させる場合の出力空気圧Po2が調整されるものとなる。
【0052】
なお、第1のポペット弁21に形成されている微細連通路21dは、この第1のポペット弁21の給気弁21bが第1の連通孔17bを閉じようとした場合、第1の出力空気圧室5の空気を第1のポペット弁21に形成されている貫通孔21cを通して、スプール10の第1の排気通路10c1へ導き、第1の排気室7−1に流出させて、また第1のバネ20が収容されているシート保持部18の室内に導いて、第1のポペット弁21にさらに付勢力を加えて、第1のポペット弁21の給気弁21bの第1の連通孔17bに対する閉塞を迅速に行わせる役割を果たす。第2のポペット弁26に形成されている微細連通路26dも同様の役割を果たす。
【0053】
この複動型のパイロットリレーでは、スプール10に、第1の開口10aを第1の排気室7−1に連通させる第1の排気通路10c1と、第2の開口10bを第2の排気室7−2に連通させる第2の排気通路10c2とが設けられ、第1の排気通路10c1と第2の排気通路10c2とが非通路部分10dによって分断されている。この構造において、スプール10は、非通路部分10dで上下あるいは左右に分割することが可能であり、ネジ止めなどの簡易な方法でスプール10を組み立てるようにして、生産性を向上させることができる。
【0054】
また、この複動型のパイロットリレーでは、第1の出力空気圧室5が第1のダイアフラム9−1を介して第1の排気室7−1と隣接し、第1の排気室7−1が第2のダイアフラム9−2を介してバイアス室8と隣接している。また、入力空気圧室2が第3のダイアフラム9−3を介してバイアス室8と隣接し、第2の出力空気圧室6が第5のダイアフラム9−5を介して第2の排気室7−2と隣接している。
【0055】
このような各室の配置から分かるように、入力空気圧室2は第1の出力空気圧室5にも第2の出力空気圧室6にも隣接していないので、入力空気圧室2と出力空気圧室5,6との間を仕切るダイアフラムは存在しない。したがって、ダイアフラム9−1〜9−5の中に圧力の正負の変化が激しいダイアフラムはなく、ダイアフラムの耐久性が向上する。
【0056】
〔実施の形態2〕
実施の形態1(図1)では、バイアス室8を入力空気圧室2と第1の排気室7−1との間に設けたが、第1の出力空気圧室5と第1の排気室7−1との間にバイアス室8を設けるようにしてもよい。
【0057】
図2に、実施の形態2として、第1の出力空気圧室5と第1の排気室7−1との間にバイアス室8を設けた例を示す。この例では、バイアス室8を、第1のダイアフラム9−1を介して第1の出力空気圧室5と隣接させるとともに第2のダイアフラム9−2を介して第1の排気室7−1と隣接させている。また、入力空気圧室2を、第3のダイアフラム9−3を介して第1の排気室7−1と隣接させるとともに第4のダイアフラム9−4を介して第2の排気室7−2と隣接させている。また、第2の排気室7−2を、第5のダイアフラム9−5を介して第2の出力空気圧室6と隣接させている。
【0058】
この実施の形態2でも、スプール10に、第1の出力空気圧室5に位置する第1の開口10aを第1の排気室7−1に連通させる第1の排気通路10c1と、第2の出力空気圧室6に位置する第2の開口10bを第2の排気室7−2に連通させる第2の排気通路10c2とが設けられ、第1の排気通路10c1と第2の排気通路10c2とが非通路部分10dによって分断されている。
【0059】
この構造において、第1の排気通路10c1はスプール10の中央部分で第1の排気室7−1に開口するが、実施の形態1と同様、スプール10を非通路部分10dで上下あるいは左右に分割することが可能であり、ネジ止めなどの簡易な方法でスプール10を組み立てるようにして、生産性を向上させることができる。
【0060】
また、この複動型のパイロットリレーでは、第1の出力空気圧室5が第1のダイアフラム9−1を介してバイアス室8と隣接し、入力空気圧室2が第3のダイアフラム9−3を介して第1の排気室7−1と隣接している。また、入力空気圧室2が第4のダイアフラム9−4を介して第2の排気室7−2と隣接し、第2の出力空気圧室6が第5のダイアフラム9−5を介して第2の排気室7−2と隣接している。
【0061】
このような各室の配置から分かるように、実施の形態2においても、入力空気圧室2は第1の出力空気圧室5にも第2の出力空気圧室6にも隣接していないので、入力空気圧室2と出力空気圧室5,6との間を仕切るダイアフラムは存在しない。したがって、ダイアフラム9−1〜9−5の中に圧力の正負の変化が激しいダイアフラムはなく、ダイアフラムの耐久性が向上する。
【0062】
また、前述したように、特許文献2に示された構造では、ケーシング内に設けられる室数が非常に増えて11室を必要とする。室数が増えると、ダイアフラムの枚数など構成部品も増え、パイロットリレーの容積も大きくなり、これを収容するポジショナの大型化・コストアップを招いてしまうという問題が生じる。
【0063】
これに対して、上述した実施の形態1,2に示された構造では、ケーシング1内に設けられる室が入力空気圧室2,第1の供給空気圧室3,第2の供給空気圧室4,第1の出力空気圧室5,第2の出力空気圧室6,第1の排気室7−1,第2の排気室7−2およびバイアス室8の8室であり、ダイアフラムの数も5つと少ない。このため、パイロットリレーの容積を小さくすることができ、これを収容するポジショナの小型化を促進することが可能である。
【0064】
なお、上述した実施の形態1,2では、第1のポペット弁21の内部に貫通路21cを形成し、この貫通路21cと連通する微細連通路21dを形成しているが、必ずしもこのような貫通路21cや微細連通路21dを第1のポペット弁21に形成するようにしなくてもよい。第2のポペット弁26についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のパイロットリレーは、入力空気圧信号を増幅する圧力信号増幅器として、空気作動型の調節弁の開度制御を行うポジショナなどに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…ハウジング、2…入力空気圧室、3…第1の供給空気圧室、4…第2の供給空気圧室、5…第1の出力空気圧室、6…第2の出力空気圧室、7…排気室、8…バイアス室、9−1…第1のダイアフラム、9−2…第2のダイアフラム、9−3…第3のダイアフラム、9−4…第4のダイアフラム、9−5…第5のダイアフラム、10…スプール(移動体)、10a…第1の開口、10b…第2の開口、10c1…第1の排気通路、10c2…第2の排気通路、10d…非通路部分、11…通路、11a…開口部、12…第1のポペット弁組立体装着部、13…通路、13a…開口部、14…第2のポペット弁組立体装着部、15…第1のポペット弁組立体、16…第2のポペット弁組立体、17…シート部、17a…上面、17b…第1の連通路、18…シート保持部、18a…底面、19…内部空間、20…第1のバネ、21…第1のポペット弁、21a…排気弁、21b…給気弁、21c…貫通路、21d…微細連通路、22…シート部、22a…上面、22b…第2の連通路、23…シート保持部、23a…底面、24…内部空間、25…第2のバネ、26…第2のポペット弁、26a…排気弁、26b…給気弁、26c…貫通路、26d…微細連通路、27,28…止板、29…エア供給管、30…ノズル背圧導入管、31…第1のエア出力管、32…第2のエア出力管、33〜38…Oリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に形成された入力空気圧室,第1の供給空気圧室,第2の供給空気圧室,第1の出力空気圧室,第2の出力空気圧室,第1の排気室,第2の排気室およびバイアス室と、
前記入力空気圧室に導かれる入力空気圧によって変位するダイアフラムと、
前記第1の出力空気圧室に位置する第1の開口と,前記第2の出力空気圧室に位置する第2の開口と,前記第1の開口を前記第1の排気室に連通させる第1の排気通路と,前記第2の開口を前記第2の排気室に連通させる第2の排気通路とを有し、前記ダイアフラムに支持されて前記ハウジング内を移動する移動体と、
前記第1の供給空気圧室と前記第1の出力空気圧室とを画成する第1の隔壁に形成された第1の連通孔を貫通して移動可能に設けられ、前記移動体の第1の開口を開閉する第1の排気弁および前記第1の連通孔を開閉する第1の給気弁とを一体的に有する第1のポペット弁と、
前記第2の供給空気圧室と前記第2の出力空気圧室とを画成する第2の隔壁に形成された第2の連通孔を貫通して移動可能に設けられ、前記移動体の第2の開口を開閉する第2の排気弁および前記第2の連通孔を開閉する第2の給気弁とを一体的に有する第2のポペット弁と、
前記第1のポペット弁を前記第1の給気弁が前記第1の連通孔を閉じる方向に付勢する第1のバネ部材と、
前記第2のポペット弁を前記第2の給気弁が前記第2の連通孔を閉じる方向に付勢する第2のバネ部材とを備えたパイロットリレーであって、
前記入力空気圧室は、前記第1の出力空気圧室にも前記第2の出力空気圧室にも隣接していない
ことを特徴とするパイロットリレー。
【請求項2】
請求項1に記載されたパイロットリレーにおいて、
前記第1の排気室は、第1のダイアフラムを介して前記第1の出力空気圧室と隣接するとともに第2のダイアフラムを介して前記バイアス室と隣接し、
前記入力空気圧室は、第3のダイアフラムを介して前記バイアス室と隣接するとともに第4のダイアフラムを介して前記第2の排気室と隣接し、
前記第2の排気室は、第5のダイアフラムを介して前記第2の出力空気圧室と隣接している
ことを特徴とするパイロットリレー。
【請求項3】
請求項1に記載されたパイロットリレーにおいて、
前記バイアス室は、第1のダイアフラムを介して前記第1の出力空気圧室と隣接するとともに第2のダイアフラムを介して前記第1の排気室と隣接し、
前記入力空気圧室は、第3のダイアフラムを介して前記第1の排気室と隣接するとともに第4のダイアフラムを介して前記第2の排気室と隣接し、
前記第2の排気室は、第5のダイアフラムを介して前記第2の出力空気圧室と隣接している
ことを特徴とするパイロットリレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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