説明

パクリタキセルの製造方法

【課題】
本発明の目的は、イチイ属植物の細胞培養によるパクリタキセルの製造をより効率的に行う方法を提供することにある。
【解決手段】
イチイ属植物の細胞培養によるパクリタキセルの製造において、培養槽にオクタノール/水分配係数(logP)が4未満の脂肪族トリグリセライドを添加し培養することによって、パクリタキセルの生産性を大幅に高めることができる。
なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イチイ属の細胞培養によるパクリタキセルの製造法において、培養生産性を高めるための改良された方法に関するものである。パクリタキセルは、卵巣癌、肺癌等に対する抗癌剤として、重要な物質である。
【背景技術】
【0002】
パクリタキセル(商品名タキソール等)は、イチイ属(Taxus属)の植物の樹皮や針葉から得られる物質で、真核生物微小管を安定化して脱重合を阻害することにより、細胞分裂を抑制するという特異な機構を有し、卵巣癌や肺癌を始めとする癌細胞に対して、強い抗腫瘍活性を有している。その需要量は年々増大しているが、イチイ属植物の植生や成長速度に依存する資源量との関係から、イチイ属植物より採取した樹皮や針葉から直接抽出して得られるパクリタキセル量は限られている。この為、増大する需要に応える大量、安価なパクリタキセルの製造方法の確立が望まれている。
【0003】
一般に、パクリタキセルの製造方法には前出のイチイ属植物体から直接抽出して得る方法の他に、完全化学合成による方法、baccatinなどの前駆体を化学的に修飾する方法、又はパクリタキセルを生産する細胞を培養する方法が挙げられる。従来、パクリタキセルの商業的な生産は、主としてイチイの針葉から抽出した前駆体を化学的に修飾してパクリタキセルを合成する半合成法で行われていた。この場合、パクリタキセルの生産量は、針葉を産する植物資源に左右され、気象条件や病害虫などの影響による供給変動が生じる問題があった。
【0004】
このような問題に対して、最近ではイチイ属植物の細胞(カルス)培養により大量、安価に生産するべく種々の検討がなされている(例えば、特許文献1,2参照)。カルス培養による方法は、カルスが植物のわずかな断片から簡単に誘導可能であること、また、季節変動や病害虫の発生等の自然要因に左右されないため安定かつ大量に培養できる利点を有している。さらには、生成物中に含まれる目的成分や挟雑成分の種類や量を安定化できるので、生産物の抽出、精製工程を簡略化できると言う特徴を有する。このように、カルスを用いた培養生産方法は、パクリタキセルの生産方法として期待される製造方法である。
【0005】
しかしながら、カルスによるパクリタキセルの培養生産上の問題として、培養液中に放出され蓄積したパクリタキセル自身による阻害作用によって、カルスの成長やパクリタキセルの生産が阻害されてしまう為、単位培養液あたりのパクリタキセル生産速度や細胞当たりのパクリタキセルの生産性が充分に上がらないと言う問題点があった。この問題点を解決する手段として、i.培地を連続的に供給及び抜き出して、これよりパクリタキセルを回収する方法(例えば、特許文献3参照)、ii.水(培地)と混じらずに2相となる有機溶媒を培養槽に添加し、培地中に分泌されたパクリタキセルを有機溶媒相に転溶させながら培養することで、パクリタキセルの生産性を向上させる方法が知られている(例えば、非特許文献1,2参照)。
【0006】
特に、培養液に有機溶媒を添加し2相系で培養を行う方法では、培養槽でパクリタキセルの生産と溶媒へのパクリタキセル転溶を同時に行うことで、パクリタキセル製造プロセスを簡略化することが出来る。これまでにトリカプリリン(例えば、非特許文献1参照)、ヘキサデカン、フタル酸ジブチル(例えば、非特許文献2参照)などの溶媒がパクリタキセルの生産性を向上させることが示されている。この方法で使用する有機溶媒に求められる条件としては、カルスに対する細胞毒性が出来る限り低いこと、パクリタキセル生産性の向上効果が大きいことがあげられる。
従来のこのような検討例として、カルスに対する有機溶媒の細胞毒性について、有機溶媒の疎水性の指標となるオクタノール/水分配係数(logP)との関係を調べた例があり、分配係数が低くなるに従って細胞に対する毒性が強くなることが知られており、パクリタキセル生産に関する検討においてもイチイ属のカルスに対する細胞毒性を回避し生産性を向上させるためには分配係数が5以上の有機溶媒を用いる必要性があるとされている(例えば、非特許文献3参照)。しかしながら、従来のオクタノール/水分配係数(logP)が5以上の有機溶媒を用いたこの方法によるパクリタキセルの生産量は、有機溶媒を添加しない時の2〜5倍と少なく、実用化のためには更に生産性を向上させるような溶媒やその使用方法が求められている。
【0007】
【特許文献1】特許第2967034号公報
【特許文献2】特許第3169968号公報
【特許文献3】特開平7−255495号公報
【非特許文献1】M.Collins-Pavaoら、Journal of Biotechnology 49,95-100(1996)
【非特許文献2】Chuangui Wangら、Biotechnol. Prog. 17,89-94(2001)
【非特許文献3】Zhao-Liang Wuら、Biochemical Engineering Journal 5, 137-142 (2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術における上記したような課題を解決し、イチイ属植物の細胞培養によるパクリタキセルの製造をより効率的に行う方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、イチイ属植物のカルス培養によるパクリタキセル製造において、培養液に添加する有機溶媒の種類及び添加抜き取り方法について鋭意研究を重ねた結果、以外にもオクタノール/水分配係数(logP)が4未満の有機化合物である脂肪酸トリグリセライド、特にトリアセチン、トリプロピオニン、トリブチリンから選ばれる一種以上を有機溶媒として培養液に添加した後、この有機溶媒相を分取し抜き出すことによって、パクリタキセルの生産性を大幅に向上し得ることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、イチイ属植物の細胞培養によるパクリタキセルの製造において、培養槽にオクタノール/水分配係数(logP)が4未満の脂肪酸トリグリセライドを供給することを特徴とする(1)から(5)に示すパクリタキセルの製造方法に関するものである。
(1)イチイ属植物の細胞培養によるパクリタキセルの製造において、該細胞培養をオクタノール/水分配係数(logP)が4未満の脂肪族トリグリセライドを添加した培養液中で行うことを特徴とする、パクリタキセルの製造方法。
(2)オクタノール/水分配係数(logP)が4未満の脂肪酸トリグリセライドが、トリアセチン、トリプロピオニン、トリブチリンから選ばれる一種以上である、(1)に記載のパクリタキセルの製造方法。
(3)オクタノール/水分配係数(logP)が4未満の脂肪酸トリグリセライドを培養液中に飽和量以上添加し、該トリグリセライドと培養液が有機溶媒相と水相の2相を形成する状態で細胞培養を行う、(1)又は(2)に記載のパクリタキセルの製造方法。
(4)オクタノール/水分配係数(logP)が4未満の脂肪族トリグリセライドを培養液中に連続的又は間欠的に添加する、(1)から(3)の何れかに記載のパクリタキセルの製造方法。
(5)オクタノール/水分配係数(logP)が4未満のトリグリセライドを含む有機溶媒相を連続的又は間欠的に分取する、(1)から(4)の何れかに記載のパクリタキセルの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、培地に飽和濃度以上のトリグリセライドを添加して培養し、パクリタキセルを含むトリグリセライド相を連続的または間欠的に抜き出すことによって、パクリタキセルによる生成物阻害を回避できるため、カルスの生育速度を促進することができるばかりか、パクリタキセルそのものの生産速度も高めることができるため、効率的に大量のパクリタキセルを製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳しく説明する。本発明においてパクリタキセルの製造に用いられるイチイ属植物としてはイチイ(Taxus cuspidata)、セイヨウイチイ(Taxus baccata)、タイヘイヨウイチイ(Taxus brevifolia)、中国イチイ(Taxus chinensis)、タクスス メディア(Taxus media)などが例示される。
【0012】
イチイ植物体からカルスを得るには、公知の組織培養法が使用できる。植物体からカルスを誘導するのに用いる培地や植物ホルモンの種類と濃度は必要に応じて適宜選択してよい。例えば、イチイ植物の針葉の細胞からカルスを得る場合には、組織培養において通常使用される固体培地に、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸やナフタレン酢酸などのオーキシン、またはオーキシンとサイトカイニンとを添加した培地を用いて細胞を培養してカルスを得る。
【0013】
得られたカルスは、次に液体培地中で培養する。使用する液体培地は、組織培養において通常使用される液体培地を基本とし、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸やナフタレン酢酸などのオーキシンを0.1〜5mg/L添加して調製した液体培地などを培養液として用いる。
【0014】
オクタノール/水分配係数(logP)が4未満の脂肪族トリグリセライドを培養液中に添加する方法としては、上述の培地で培養して得た培養液を前培養液とし、その一部を該トリグリセライドが含まれる液体培地に移植するか、前培養液に直接トリグリセライドを添加してもよい。添加するトリグリセライドは培地に対して飽和濃度以上になるように添加し、培地と有機溶媒の2相に分離した状態で培養する。
【0015】
有機溶媒を培地に供給し、パクリタキセルの生産性を向上させる試みはこれまでにも行われていたが、一般に、オクタノール/水分配係数(logP)が4未満の有機溶媒は細胞に対する毒性が高く細胞の成長を阻害するためにパクリタキセルの生産には適さないと考えられていた。ここで言う、有機溶媒のオクタノール/水分配係数(logP)とは、一定量の被験物質を1―オクタノールに溶解し、1−オクタノールと水の二つの溶媒相中に加えて十分に混合した後、二相に分離し、各相中の被験物質濃度を測定し、次式から求めた分配係数のことである。
P=C/C
:1−オクタノール層中の被験物質濃度(mol/L)
:水層中の被験物質濃度(mol/L)
【0016】
培養液に添加するトリグリセライドとしては、例えば表1に示した化合物が挙げられるが、本発明の目的にかなうものであればこれらのグリセライドに限定されない。なお、比較として、トリグリセライド以外の物質の分配係数を併せて示した。
表1 有機溶媒の分配係数(オクタノール/水)の例(注)

化合物 分子式 logP
トリグリセライド
トリアセチン C14 0.36
トリプロピオニン C1220 1.8
トリブチリン C1526 3.3
トリカプロイン C2138 6.3
トリカプリリン C2750 9.2
脂肪酸アルコール
ラウリルアルコール CH(CH11OH 5.0
炭化水素
ヘキサン C14 3.6
ヘプタン C16 4.0
ノナン C20 5.1
デカン C1022 5.6
ドデカン C1226 6.6
ペンタデカン C1532 8.2
ヘキサデカン C1634 8.7
オクタデカン C1838 9.8
芳香族炭化水素
エチルベンゼン C11 3.1
ベンゼン C 2.0
トルエン C 2.5

(注)分配係数は文献値、または計算値(Syracuse Research
Corp. LogKow)
【0017】
イチイの細胞培養において、オクタノール/分配係数(logP)が4未満の有機溶媒、例えばヘキサンのような脂肪族炭化水素化合物を有機溶媒として培地に供給しその効果を検討したところ、有機溶媒無添加の場合と比べて細胞の成長が阻害され、パクリタキセルの生産性も低下した。これに対して、炭素数の多い高級脂肪族炭化水素化合物であるノナン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンでは分配係数が大きくなるにしたがって、細胞収量は向上する傾向を示し、分配係数6以上の炭化水素化合物の添加は、無添加の場合と比べて、明らかに細胞収量促進効果が見られた。しかしながら、分配係数が5以上の高級脂肪族炭化水素、トリアシルグリセライド、及び脂肪酸アルコールを添加した場合の促進効果は従来の知見の範囲に止まった。
【0018】
これに対して、以外にも、分配係数が0.36のトリグリセライドであるトリアセチンは、上述の高級脂肪族炭化水素化合物を添加した場合よりも、さらに著しく高い細胞収量促進効果を示した。また、トリアセチンより分配係数が高いトリアシルグリセトリプロピオニン、トリブチリンの場合においても、トリカプロイン、トリカプリリンと比較しても細胞の増殖性をより向上させ、その効果は、従来、細胞増殖効果が知られていたラウリルアルコールよりも高いものであった。
【0019】
分配係数が低い有機化合物は水に比較的溶けやすいが、トリグリセライドの場合、培養液中にトリグリセライドが共存していても植物培養細胞に対する細胞毒性は認められないため、本発明にある飽和濃度以上の有機溶媒相を連続的、または間欠的に抜き出しながら、有機溶媒相として存在する2相分離したトリグリセライド中に溶解したパクリタキセルを回収する方法においては全く問題ない。
【0020】
培養液に添加するトリグリセライドの量は特に限定されないが、培養液に対して飽和以上となり、培養液とトリグリセライドが2相形成するように添加することが望ましい。また、カルスからパクリタキセルを培養液中に分泌させ、さらに、パクリタキセルを培養液中から有機溶媒相へ転用させた後、パクリタキセルを含有する該有機溶媒相を分取する行程を効率的に行い、パクリタキセルの生産性を高めるためには、培養槽中の培養液相と有機溶媒相の容量比が特定の範囲になるように、連続的或いは間欠的にトリグリセライドの添加量と有機溶媒相の抜き出し量を調節しながら培養することが、生産効率の面からより望ましい。
【0021】
培養槽から抜き出した有機溶媒相は、パクリタキセルや不純物の溶解性の差を利用した有機溶媒による抽出法、または分子篩、多孔性樹脂、イオン交換樹脂等を用いたカラム分離法を用いることによって分離回収することができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例及び比較例を以てより具体的に説明するが、これらの例によって本発明が限定されるものではない。なお、カルス細胞、培地、有機溶媒相中のパクリタキセル量は、逆相カラムを用いたHPLC法を用いて測定した。
実施例1
セイヨウイチイ(Taxus baccata)の針葉からカスル細胞を誘導し、改変ガンボーグB5寒天培地(硝酸カリ濃度を10mMに削減、硫酸アンモニウムは無添加とし、スクロース20g/L、カザミノ酸3g/L、ナフタレン酢酸2mg/Lとなるように添加した)を入れた100ml容三角フラスコに植え継ぎ、暗所、25℃で10〜14日間回転振とう培養し、カルス細胞の増殖をはかった。
このようにして調製したカルス細胞を無菌的に分離採取して、改変ガンボーグB5寒天培地とトリアセチンを仕込んだ35ml容のL型試験管に、生重量で10〜20g/L植え付けつけ、往復振とう培養器で、暗所25℃、55r/minの条件で10日間培養を行った。なお、培地に添加したトリアセチンは0.22μmのメンブランフィルターで無菌濾過したものを使用した。
培養終了後、全培養液をアスピレーターを用いて抜き出した後、メンブランフィルターを用いてカルス細胞とその他の液相を分離し、カルス生重量の測定とパクリタキセル量の測定に供した。
その他の液相として回収した培地相と添加したトリアセチンからなる有機溶媒相はガラスピペットで各々分取した。次いで、有機溶媒相にシクロヘキサン:アセトン=77:23(体積比)の溶媒と混合した後、下層の水相を分取した。さらに、上層のシクロヘキサンを同体積の水で洗浄抽出し、両水相を合わせ、これにジクロロメタンを添加して混合し、ジクロロメタン相を分離した。このジクロロメタン相を遠心真空乾燥器で乾燥し、メタノールに再溶解してHPLC分析用試料とした。
一方、有機溶媒相を除いた後の水相は、ジクロロメタンと混合した後、ジクロロメタン相を分離し、遠心真空乾燥器で乾燥し、同じくメタノールに再溶解してHPLC分析用試料とした。また、パクリタキセル生産量は培地中の総生産量で、水相と有機溶媒相のパクリタキセル生産量の合計である。本検討に用いたカルスでは、生産したパクリタキセルの大部分は培地中に存在したため、カルス中のパクリタキセルは無視できる程度であった。
その結果、カルス細胞の生重量は41.6g/L、培地中パクリタキセル濃度は4.4μg/L、トリアセチンからなる有機溶媒相中パクリタキセル濃度は160μg/Lであった。
【0023】
比較例1
トリアセチンを添加しない以外は実施例1と同様に行った。その結果、カルスの生重量は34.0g/L、培地中パクリタキセル濃度は14.2μg/Lであった。
【0024】
比較例2
トリアセチンの代わりにヘキサンを添加した以外は、実施例1と同様に行った。その結果、カルス細胞の生重量は31.6g/L、培地中パクリタキセル濃度は12.5μg/L、ヘキサンからなる有機溶媒相中のパクリタキセルは検出限界以下であった。
【0025】
比較例3
トリアセチンの代わりにラウリルアルコールを添加した以外は、実施例1と同様に行った。その結果、カルス細胞の生重量は40.5g/L、培地中パクリタキセル濃度は7.7μg/L、ラウリルアルコールからなる有機溶媒相中パクリタキセル濃度は32.4μg/Lであった。
【0026】
比較例4
トリアセチンの代わりにノナンを添加した以外は、実施例1と同様に行った。その結果、カルス細胞の生重量は32.4g/L、培地中パクリタキセル濃度は10.3μg/L、ノナンからなる有機溶媒相中パクリタキセル濃度は10.7μg/Lであった。
【0027】
比較例5
トリアセチンの代わりにデカンを添加した以外は、実施例1と同様に行った。その結果、カルス細胞の生重量は33.9g/L、培地中パクリタキセル濃度は3.9μg/L、デカンからなる有機溶媒相中パクリタキセル濃度は51.2μg/Lであった。
【0028】
比較例6
トリアセチンの代わりにドデカンを添加した以外は、実施例1と同様に行った。その結果、カルス細胞の生重量は37.3g/L、培地中パクリタキセル濃度は8.6μg/L、ドデカンからなる有機溶媒相中パクリタキセル濃度は18.4μg/Lであった。
【0029】
比較例7
トリアセチンの代わりにヘキサデカンを添加した以外は、実施例1と同様に行った。その結果、カルス細胞の生重量は40.5g/L、培地中パクリタキセル濃度は2.4μg/L、ヘキサデカンからなる有機溶媒相中パクリタキセル濃度は11.5μg/Lであった。
【0030】
比較例8
トリアセチンの代わりにトリカプリリンを添加した以外は、実施例1と同様に行った。その結果、カルス細胞の生重量は39.1g/L、培地中パクリタキセル濃度は6.3μg/L、トリカプリリンからなる有機溶媒相中パクリタキセル濃度は27.0μg/Lであった。
【0031】
比較例9
トリアセチンの代わりにオクタデカンを添加した以外は、実施例1と同様に行った。その結果、カルス細胞の生重量は39.9g/L、培地中パクリタキセル濃度は7.3μg/L、オクタデカンからなる有機溶媒相中パクリタキセル濃度は26.4μg/Lであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イチイ属植物の細胞培養によるパクリタキセルの製造において、該細胞培養をオクタノール/水分配係数(logP)が4未満の脂肪族トリグリセライドを添加した培養液中で行うことを特徴とする、パクリタキセルの製造方法。
【請求項2】
オクタノール/水分配係数(logP)が4未満の脂肪酸トリグリセライドが、トリアセチン、トリプロピオニン、トリブチリンから選ばれる一種以上である、請求項1に記載のパクリタキセルの製造方法。
【請求項3】
オクタノール/水分配係数(logP)が4未満の脂肪酸トリグリセライドを培養液中に飽和量以上添加し、該トリグリセライドと培養液が有機溶媒相と水相の2相を形成する状態で細胞培養を行う、請求項1又は2に記載のパクリタキセルの製造方法。
【請求項4】
オクタノール/水分配係数(logP)が4未満の脂肪族トリグリセライドを培養液中に連続的又は間欠的に添加する、請求項1から3の何れかに記載のパクリタキセルの製造方法。
【請求項5】
オクタノール/水分配係数(logP)が4未満のトリグリセライドを含む有機溶媒相を連続的又は間欠的に分取する、請求項1から4の何れかに記載のパクリタキセルの製造方法。

【公開番号】特開2006−109784(P2006−109784A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302151(P2004−302151)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】