説明

パターン位相差板及びその製造方法、並びに液晶表示装置

【課題】液晶パネルとの位置合わせを精度良く行うことができるパターン位相差板を提供する。
【解決手段】パターン位相差板100に長尺の基材フィルム110と接着層120とパターン位相差フィルム層130とをこの順に設け、パターン位相差フィルム層130は、位相差又は遅相軸方向が異なる2種類以上の領域131,132を有し、領域131,132は基材フィルム110の長尺方向Xに対して平行に延在する帯状の領域であって、領域131,132の長尺方向Xにおける振れ幅ΔDと平均幅Dとの比ΔD/Dを0.02以上0.25以下にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン位相差板及びその製造方法、並びにそれを備える液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のある態様として、画素と位置合わせされた状態で設けられた、特定のパターンを有する位相差フィルムを備えるものが知られている。例えば、パッシブ形式の立体画像表示装置では、通常、同一画面内に右目用の画像と左目用の画像とを同時に表示させ、これらの画像を専用のメガネを用いて左右の目それぞれに振り分けるようにしている。そのため、パッシブ形式の立体画像表示装置には、左目用の画像及び右目用の画像のそれぞれを、異なる偏光状態で表示させることが求められる。そのような表示を達成するため、パッシブ形式の立体画像表示装置には、2種以上の異なる位相差(レターデーション)を有する複数種類の領域からなるパターンを有する位相差フィルムが設けられることがある(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−193014号公報
【特許文献2】特許第4363029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のようなパターンを有する位相差フィルムは、従来、ガラス板等の剛性の高い基材の表面に設けられることが多かった。しかし近年、製造効率の向上等の有利な効果を得るための改良として、上に述べたパターンを有する位相差フィルムを、可撓性の基材フィルムに設けることが考えられる。具体例を挙げると、このような可撓性の基材フィルムに設けたパターンを有する位相差フィルムを、斜め延伸された位相差フィルムに貼り合わせて長尺の位相差板を形成し、これを、液晶パネルに連続的に貼り合わせることが考えられる。このような製造が可能となれば、1/4波長板とパターンを有する位相差フィルムとを同時に簡単に設けることができ、製造効率を著しく高め、且つ製造コストを著しく低減させ、且つ得られる液晶表示装置を軽量化しうることが期待される。
【0005】
パターンを有する位相差フィルムと液晶パネルとの位置合わせは、当該位相差フィルムのパターンを構成する各領域が画素に精密に対応するよう行うことが求められる。具体的には、上で述べたパッシブ形式の立体画像表示装置の例では、右目用の画素と左目用の画素との境界のブラックマトリックス上に、前記のパターンを構成する領域間の境界が位置するような配置を、表示面全面において達成することが求められる。ところが、可撓性の基材フィルムを用いた場合には、ガラス板を基材として用いた場合と比べ、寸法安定性及び形状安定性が低いため、このような精密な位置合わせを、連続的な製造工程において行うことは非常に困難であった。
【0006】
本発明は上述した課題に鑑みて創案されたもので、液晶パネルとの位置合わせを精度良く行うことができるパターン位相差板及びその製造方法、並びに、それを備えた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、長尺基材に張力をかけた状態でパターン位相差フィルム層を製造し、張力をかけた状態を維持したままでパターン位相差フィルム層を別の基材フィルムに転写することにより、パターン位相差フィルム層が有する各領域の真直性を高め、パターン位相差フィルム層と液晶パネルとの位置合わせを精度良く行うことが可能となることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
〔1〕 長尺の基材フィルムと接着層とパターン位相差フィルム層とをこの順に備え、
前記パターン位相差フィルム層は、位相差又は遅相軸方向が異なる2種類以上の領域を有し、
前記の領域は、前記基材フィルムの長尺方向に対して平行に延在する帯状の領域であって、
前記領域の長尺方向における振れ幅ΔDと平均幅Dとの比ΔD/Dが0.02以上0.25以下である、パターン位相差板。
〔2〕 前記基材フィルムの厚みに対する前記パターン位相差フィルム層の厚みの比が、0.01以上0.5以下である、〔1〕記載のパターン位相差板。
〔3〕 前記基材フィルムが、面内において均一な位相差及び遅相軸方向を有する位相差フィルムである、〔1〕又は〔2〕記載のパターン位相差板。
〔4〕 前記パターン位相差フィルム層の、前記基材フィルムとは反対側に、保護層を備える、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のパターン位相差板。
〔5〕 面内において均一な位相差及び遅相軸方向を有する長尺の基材フィルムと、位相差が異なる2種類以上の領域を有するパターン位相差フィルム層とを備え、前記パターン位相差フィルム層の前記領域が長尺方向に対して平行に延在する帯状の領域であるパターン位相差板の製造方法であって、
長尺基材の表面に、重合性液晶化合物を含み活性エネルギー線の照射により硬化しうる液晶組成物の層を形成して、前記長尺基材と前記液晶組成物の層とを備える積層体を得る工程、
前記液晶組成物の層に含まれる前記重合性液晶化合物を配向させる工程、
前記長尺基材と前記液晶組成物の層とを備える前記積層体に対して長尺方向に張力をかけた状態で、前記長尺方向に対して平行に延在する帯状の遮光部及び透光部を有するマスクを介して、前記液晶組成物の層に活性エネルギー線を照射する工程、
前記液晶組成物の層を加熱して、前記液晶組成物の層の前記活性エネルギー線を照射されなかった領域の位相差を変化させて、前記長尺基材と前記パターン位相差フィルム層とを備える積層フィルムを得る工程、
前記長尺基材と前記パターン位相差フィルム層とを備える前記積層フィルムに対して、前記積層フィルムの引っ張り歪が0.002%以上0.2%以下となる張力を長尺方向にかけた状態で、前記パターン位相差フィルム層と前記基材フィルムとを接着層を介して貼り合せる工程、並びに、
前記長尺基材を剥がす工程を含む、パターン位相差板の製造方法。
〔6〕 位相差が10nm以下の長尺の基材フィルムと、遅相軸方向が異なる2種類以上の領域を有するパターン位相差フィルム層とを備え、前記パターン位相差フィルム層の前記領域が長尺方向に対して平行に延在する帯状の領域であるパターン位相差板の製造方法であって、
長尺基材の表面に、偏光を照射されることにより不可逆的に配向する光配向材料の層を形成して、前記長尺基材と前記光配向材料の層とを備える積層体を得る工程、
前記長尺基材と前記光配向材料の層とを備える前記積層体に対して長尺方向に張力をかけた状態で、前記光配向材料の層の長尺方向に対して平行に延在する帯状の領域に、偏光を照射する工程、
前記光配向材料の層の全体に、前記の偏光とは偏光方向が90°±3°異なる偏光を照射して、配向膜を得る工程、
前記配向膜の表面に、重合性液晶化合物を含み活性エネルギー線の照射により硬化しうる液晶組成物の層を形成する工程、
前記液晶組成物の層に活性エネルギー線を照射して、前記長尺基材と前記パターン位相差フィルム層とを備える積層フィルムを得る工程、
前記長尺基材と前記パターン位相差フィルム層とを備える前記積層フィルムに対して、前記積層フィルムの引っ張り歪が0.002%以上0.2%以下となる張力を長尺方向にかけた状態で、前記パターン位相差フィルム層と前記基材フィルムとを接着層を介して貼り合せる工程、並びに、
前記長尺基材を剥がす工程を含む、パターン位相差板の製造方法。
〔7〕 前記基材フィルムの厚みに対する前記パターン位相差フィルム層の厚みの比が、0.01以上0.5以下である、〔5〕又は〔6〕記載のパターン位相差板の製造方法。
〔8〕 前記パターン位相差フィルム層と前記基材フィルムとを貼り合わせる際の前記積層フィルムの引っ張り歪が、0.01%以上0.15%以下である、〔5〕〜〔7〕のいずれか一項に記載のパターン位相差板の製造方法。
〔9〕 前記基材フィルムに、前記基材フィルムの引っ張り歪みが0.2%以下となる張力を長尺方向にかけた状態で、前記パターン位相差フィルム層と前記基材フィルムとを貼り合わせる、〔5〕〜〔8〕のいずれか一項に記載のパターン位相差板の製造方法。
〔10〕 ブラックマトリックスを有する液晶パネルと、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のパターン位相差板又は〔5〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたパターン位相差板とを備え、
前記液晶パネルと前記パターン位相差板とは、前記パターン位相差板に5N/1600mm以上の張力をかけた状態で、前記パターン位相差板の前記パターン位相差フィルム層の前記2種類以上の領域の境界線と前記液晶パネルの前記ブラックマトリックスとの相対的な位置関係が位置合わせされ、貼り合わせられている、液晶表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パターン位相差フィルム層と液晶パネルとの位置合わせを精度良く行うことができるパターン位相差板及びその製造方法、並びに、それを備えた液晶表示装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るパターン位相差板の一部を模式的に示す斜視図である。
【図2】図2は、パターン位相差フィルム層が有しうるパターンの一例を概略的に示す上面図である。
【図3】図3は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る配向膜の形成工程を模式的に示す図である。
【図4】図4は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係るマスク層の形成工程を模式的に示す図である。
【図5】図5は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る液晶組成物層の形成工程を模式的に示す図である。
【図6】図6は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る配向工程を模式的に示す図である。
【図7】図7は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る第一の硬化工程を模式的に示す図である。
【図8】図8は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る配向変化工程を模式的に示す図である。
【図9】図9は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る第二の硬化工程を模式的に示す図である。
【図10】図10は、本発明のパターン位相差板の製造方法において使用しうる製造装置の一例を示す図である。
【図11】図11は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る光配向材料層の形成工程を模式的に示す図である。
【図12】図12は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る第一の偏光照射工程を模式的に示す図である。
【図13】図13は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る第二の偏光照射工程を模式的に示す図である。
【図14】図14は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る液晶組成物層の形成工程を模式的に示す図である。
【図15】図15は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る配向工程を模式的に示す図である。
【図16】図16は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る硬化工程を模式的に示す図である。
【図17】図17は、パターン境界線とブラックマトリックスの相対的な位置関係の例を概略的に示す上面図である。
【図18】図18は、液晶パネル及びその他の層の観察の態様の例を概略的に示す斜視図である。
【図19】図19は、液晶表示装置を製造するための一連の装置及びその操作の一例を概略的に示す立面図である。
【図20】図20は、XY平面上の位置合わせを行う点の好ましい例を概略的に示す平面図である。
【図21】図21は、本発明の製造方法における貼付の態様の具体的な一例を概略的に示す立面図である。
【図22】図22は、本発明の製造方法における紫外線の照射の態様の具体的な一例を概略的に示す立面図である。
【図23】図23は、図22に示した紫外線の照射の態様の例を別の角度から概略的に示す上面図である。
【図24】図24は、本発明の製造方法における紫外線の照射の態様の具体的な別の一例を概略的に示す立面図である。
【図25】図25は、本発明の製造方法における基材の剥離の態様の具体的な一例を概略的に示す立面図である。
【図26】図26は、本発明の製造方法を実施するための一連の装置及びその操作の別の一例を概略的に示す立面図である。
【図27】図27は、図26に示した操作の例の一部の工程を概略的に示す部分立面図である。
【図28】図28は、図26に示した操作の例の別の一部の工程を概略的に示す部分立面図である。
【図29】図29は、図26に示した操作の例のさらに別の一部の工程を概略的に示す部分立面図である。
【図30】図30は、図26に示した操作の例のさらに別の一部の工程を概略的に示す部分立面図である。
【図31】図31は、図26に示した操作の例のさらに別の一部の工程を概略的に示す部分立面図である。
【図32】図32は、液晶表示装置を製造するための一連の装置及びその操作のさらに別の一例を概略的に示す立面図である。
【図33】図33は、液晶表示装置を製造するための一連の装置及びその操作のさらに別の一例を概略的に示す立面図である。
【図34】図34は、図33に示した操作の例の一部の工程を概略的に示す部分立面図である。
【図35】図35は、図33に示した操作の例の別の一部の工程を概略的に示す部分立面図である。
【図36】図36は、立体画像表示装置として使用しうる液晶表示装置の例を概略的に示す分解上面図である。
【図37】図37は、立体画像表示装置として使用しうる液晶表示装置の例を概略的に示す分解上面図である。
【図38】図38は、実施例1〜3及び5並びに比較例1及び2において、パターン位相差板のパターン位相差フィルム層の領域の振れ幅ΔD及び平均幅Dを測定する際のサンプルの様子を模式的に示す図である。
【図39】図39は、実施例及び比較例においてΔD/Dの測定のためにパターン位相差板を撮影した場合に撮影される画像を模式的に示す図である。
【図40】図40に、図39に示す画像の一部を拡大した様子を模式的に示す図である。
【図41】図41は、パターン位相差フィルム層の領域の触れ幅ΔDの測定方法を説明するため、パターン位相差板を撮影して得られる画像における規格化されたY値を表すグラフの一例を示す図である。
【図42】図42は、実施例4において、パターン位相差板のパターン位相差フィルム層の領域の振れ幅ΔD及び平均幅Dを測定する際のサンプルの様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
【0012】
以下の説明において、「長尺」とは、幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。
また、「位相差板」及び「偏光板」とは、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0013】
また、「位相差」とは、別に断らない限り、面内位相差(面内レターデーション)のことを意味する。フィルムの面内位相差は、(nx−ny)×dで表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。dは、フィルムの膜厚を表す。面内位相差は、市販の位相差測定装置(例えば、王子計測機器社製、「KOBRA−21ADH」、フォトニックラティス社製、「WPA−micro」)あるいはセナルモン法を用いて測定できる。
【0014】
また、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及び「メタクリレート」のことを意味し、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び「メタクリル」のことを意味する。
また、「紫外線」とは、波長が1nm以上400nm以下の光のことを意味する。
【0015】
また、構成要素の方向が「平行」又は「垂直」とは、特に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。さらに、ある方向に「沿って」とは、ある方向に「平行に」との意味である。
【0016】
[1.パターン位相差板]
図1は、本発明の一実施形態に係るパターン位相差板の一部を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、本発明の一実施形態に係るパターン位相差板100は、長尺の基材フィルム110と接着層120とパターン位相差フィルム層130とをこの順に備える。パターン位相差フィルム層130は、位相差又は遅相軸方向が異なる2種類以上の領域131及び132を有する。前記の領域131及び132は、基材フィルム110の長尺方向Xに対して平行に延在する帯状の領域である。また、パターン位相差板100に張力をかけない状態において、前記の領域131及び132の長尺方向Xにおける振れ幅ΔDと平均幅Dとの比ΔD/Dは、0.02以上0.25以下である。なお、「長尺方向」とは、別に断らない限り、基材フィルムの長尺方向を意味する。
【0017】
〔1−1.基材フィルム〕
基材フィルムとしては、通常、樹脂フィルムを用いる。通常、樹脂はポリマー(重合体)を含む。樹脂フィルムの材料となる樹脂が含むポリマーの例を挙げると、鎖状オレフィンポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、鎖状オレフィンポリマー及びシクロオレフィンポリマーが好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、シクロオレフィンポリマーが特に好ましい。
【0018】
樹脂は、1種類のポリマーを単独で含むものを用いてもよく、2種類以上のポリマーを任意の比率で組み合わせて含むものを用いてもよい。また、樹脂には、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の配合剤を含ませてもよい。好適な樹脂の具体例を挙げると、日本ゼオン社製「ゼオノア1420」を挙げることができる。
【0019】
基材フィルムとしては、単層構造のフィルムを用いてもよく、複層構造のフィルムを用いてもよい。
また、基材フィルムとしては、延伸フィルムを用いてもよく、未延伸フィルムを用いてもよい。
【0020】
基材フィルムは、面内において均一な位相差及び遅相軸方向を有することが好ましい。液晶表示装置における画質を向上させるためである。
ここで、面内において位相差が均一であるとは、パターン位相差フィルム層とは異なり、異なる位相差を有する2種類以上の領域からなるパターンを有しないという意味である。具体的には、面内において位相差が均一であるとは、基材フィルムの面内の位相差のばらつきが、好ましくは±20nm以内、より好ましくは±10nm以内である。
さらに、面内において遅相軸方向が均一であるとは、パターン位相差フィルム層とは異なり、異なる遅相軸方向を有する2種類以上の領域からなるパターンを有しないという意味である。具体的には、面内において遅相軸方向が均一であるとは、基材フィルムの面内の遅相軸方向のばらつきが、好ましくは±5°以内、より好ましくは±1°以内である。
【0021】
例えばパターン位相差フィルム層が位相差が異なる2種類以上の領域を有する場合には、基材フィルムとして位相差フィルムを用いてもよい。この場合、長尺のパターン位相差板をその長尺方向に対して平行及び垂直な方向に切断して、矩形に切り出し、液晶表示装置に設けることにより、パターン位相差フィルム層と位相差フィルムとを備える複層フィルムを、容易に製造することができる。
【0022】
基材フィルムとして位相差フィルムを用いる場合、その位相差フィルムの具体的な位相差は液晶表示装置の構成に応じて設定してもよい。例えば、位相差フィルムとしては1/4波長板として機能しうるものを用いてもよい。1/4波長板として機能しうる位相差フィルムの位相差は、透過光の波長範囲の中心値の1/4の値から、通常±65nm、好ましくは±30nm、より好ましくは±10nmの範囲であるか、または、中心値の3/4の値から通常±65nm、好ましくは±30nm、より好ましくは±10nmの範囲である。前記の透過光は通常は可視光であるため、透過光の波長範囲の中心値としては、通常、透過光の波長範囲の中心値である550nmを適用する。
【0023】
基材フィルムが位相差フィルムである場合、当該位相差フィルムの長尺方向と、位相差フィルムの遅相軸方向とがなす角は、液晶表示装置の態様に応じて設定してもよい。例えば、位相差フィルムとして、幅方向又は長尺方向に延伸した延伸フィルムを用いることにより、当該位相差フィルムの遅相軸方向を、長尺方向と平行な方向又は垂直な方向にしてもよい。また、例えば、位相差フィルムとして斜め延伸した延伸フィルムを用いることにより、当該位相差フィルムの遅相軸方向を、長尺方向と45°程度(例えば45°±5°、好ましくは45°±1°)の角度をなす方向としてもよい。
【0024】
また、基材フィルムの厚みT110は、基材フィルムの厚みT110に対するパターン位相差フィルム層の厚みT130の比T130/T110が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、特に好ましくは0.1以上であり、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.2以下となる厚みにする(図1参照)。基材フィルムの厚みT110をパターン位相差フィルム層の厚みT130よりも十分に厚くすることにより、基材フィルムの剛性を高めることができる。このため、製造時の張力によって張力開放時(即ち、張力をかけていない時)にパターン位相差フィルム層が縮もうとする応力を有していても、パターン位相差板が撓んだり反ったりすることを防止できる。ひいては、パターン位相差フィルム層と液晶パネルとの位置合わせを精度良く行うことができる。また、基材フィルムの厚みを前記範囲の上限値以下とすることにより、液晶表示装置の更なる薄型化を実現できる。
【0025】
好適な基材フィルムの例を挙げると、市販の長尺の斜め延伸フィルムなどが挙げられる。例えば、位相差フィルムとして、日本ゼオン社製、製品名「斜め延伸ゼオノアフィルム」を挙げることができる。
【0026】
〔1−2.接着層〕
接着層は、接着剤によって形成された層である。接着層により、基材フィルムとパターン位相差フィルム層とが剥がれないように固定することができる。
ここで接着剤とは、別に断らない限り、狭義の接着剤(エネルギー線照射後、あるいは加熱処理後、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa〜500MPaである接着剤、例えば後述する後硬化型接着剤等)のみならず、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤をも包含する。
【0027】
接着剤としては、例えば、後硬化接着剤を用いてもよい。後硬化接着剤とは、接着対象の2つの界面のうちの一方又は両方に塗布し、必要であれば適宜乾燥させて、接着剤の未硬化層(以下、「未硬化接着剤層」ということがある。)を形成し、その後でかかる未硬化接着剤層を介して接着対象を貼り合わせた後に、未硬化接着剤層に活性エネルギー線を照射することにより、硬化し、最終的な接着能を発現する接着剤である。ここで、接着能とは、界面での密着性、及び接着層自体の凝集性を意味する。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線(UV)、X線及び電子線等を挙げることができる。安価な装置を使用することができるため、後硬化接着剤は紫外線ないし電子線で硬化するものであることが好ましい。
【0028】
説明の便宜上、以下の後硬化接着剤の説明においては、液体である後硬化接着剤を塗布してなる層(乾燥の工程を経る前のもの)を単に接着剤の「塗膜」と呼び、塗膜を乾燥させる工程を経た接着剤の層であって活性エネルギー線の照射に供されていない層を「未硬化接着剤層」と呼び、かかる未硬化接着剤層を活性エネルギー線の照射により硬化させた層を、「硬化接着剤層」と呼ぶ。
【0029】
かかる後硬化接着剤としては、1種類以上のオリゴマー及びモノマーを含む樹脂成分並びに重合開始剤を含有し、さらに、必要に応じて粒子を樹脂成分100重量部に対して3重量部〜20重量部含有するものを用いてもよい。このような後硬化接着剤を用いることにより、貼り合せ時にニップロールにて未硬化接着剤層に圧力をかける際に、ロールに押されて、ロールの進行方向に後硬化接着剤が移動し、未硬化接着剤層の厚みが不均一になったり、接着剤がはみ出したりする現象を低減することができる。
【0030】
また、上記の効果を得る観点からは、未硬化接着剤層の粘度は、温度20±1.0℃において、好ましくは50mPa・s以上、より好ましくは60mPa・s以上であり、好ましくは6000mPa・s以下、より好ましくは4000mPa・s以下である。
【0031】
後硬化接着剤が含有しうるオリゴマー及びモノマーは、それぞれ、下記(A)及び(B)としてもよい。
(A)1分子あたりの官能基数が3以下のオリゴマー型多官能(メタ)アクリレート(以下「(メタ)アクリレート(A)」ということがある。)。
(B)温度20±1.0℃における粘度が10mPa・s以上500mPa・s未満であり、1分子内に水酸基を少なくともひとつ有するモノ(メタ)アクリレート(以下「(メタ)アクリレート(B)」ということがある。)。
【0032】
(メタ)アクリレート(A)は、好ましくは1分子あたり2個又は3個の官能基を有する。(メタ)アクリレート(A)の具体例としては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどのラジカル重合性を示す各種の官能基数が3以下のアクリル系オリゴマーを挙げることができる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0033】
(メタ)アクリレート(A)としてのアクリル系オリゴマーの分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンの換算の重量平均分子量(Mw)で、500以上10000以下とすることが、良好な粘度を発現するなどの観点から好ましい。
【0034】
ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば、多塩基酸と多価アルコールから得られるポリエステルの末端水酸基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得られる。多塩基酸としては、例えば、フタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、及びテレフタル酸を挙げることができる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールを挙げることができる。なお、これらはそれぞれ、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0035】
ポリエステル(メタ)アクリレートの具体例としては、EBECRYL 851,852,853,884,885(ダイセルサイテック社製)、オレスター(三井化学社製)、及びアロニックスM−6100,6200,6250,6500(東亞合成社製)を挙げることができる。なお、これらはそれぞれ、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0036】
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を開環付加反応させた反応物である。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンからなるビスフェノールA型、フェノールノボラックとエピクロロヒドリンからなるノボラック型、脂肪族型、脂環型のものなどが挙げられる。脂肪族型エポキシ樹脂としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどを用いることができ、またブタジエン系エポキシ樹脂、イソプレン系エポキシ樹脂などの不飽和脂肪酸エポキシ樹脂も用いることができる。脂環型エポキシ樹脂は、例えば、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、1,2:8,9−ジエポキシシリモネン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどを用いることができる。なお、これらはそれぞれ、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0037】
エポキシ(メタ)アクリレートの具体例としては、EBECRYL600,860,3105,3420,3700,3701,3702,3703,3708,6040(ダイセルサイテック社製)、ネオポール8101,8250,8260,8270,8355,8351,8335,8414,8190,8195,8316,8317,8318,8319,8371(日本ユピカ社製)、デナコールアクリレート DA212,250,314,721,722,DM201(ナガセケムテックス社製)、バンビーム(ハリマ化成社製)、及びMiramer PE210,PE230,EA2280(東洋ケミカルズ社製)を挙げることができる。なお、これらはそれぞれ、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0038】
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー、多官能イソシアネート及び多価アルコールの反応により得られる、中心にウレタン骨格を有する反応物である。水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。多官能イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネートなどを挙げることができ、中でも耐候性の良好なヘキサメチレンジイソシアネートが好適に用いられる。多価アルコールとして、ポリエステル(メタ)アクリレートに使用できるものを使用することができる。なお、これらはそれぞれ、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0039】
ウレタン(メタ)アクリレートの具体例としては、EBECRYL204,210,220,230,270,4858,8200,8201,8402,8804,8807,9260,9270,KRM8098,7735,8296(ダイセルサイテック社製)、UX2201,2301,3204,3301,4101,6101,7101,8101,0937(日本化薬社製)、UV6640B,6100B,3700B,3500BA,3520TL,3200B,3000B,3310B,3210EA,7000B,6630B,7461TE(日本合成化学社製)、ユピカ8921,8932,8940,8936,8937,8980,8975,8976(日本ユピカ社製)、及びMiramer PU240,PU340(東洋ケミカルズ社製)などを挙げることができる。なお、これらはそれぞれ、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0040】
ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸との反応物である。例えば、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、EBECRYL81(ダイセルサイテック社製)を挙げることができる。なお、これらはそれぞれ、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0041】
これらのアクリル系オリゴマーのうち、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。1分子あたりの官能基数が3個以下であることによって、未硬化接着剤層を活性エネルギー線で硬化し硬化接着剤層とする際の硬化収縮を小さくでき、かつ硬化接着剤層のガラス転移温度を低くすることができ、且つ、接着させる界面との接着性を良好に保持できる。
【0042】
後硬化接着剤中の(メタ)アクリレート(A)の含有割合は、全固形分中10重量%〜60重量%であることが好ましい。接着力を発現し、高温、高湿環境下に放置した場合にも接着力を良好に保持できるためである。
【0043】
(メタ)アクリレート(B)の具体例としては、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(10.9mPa・s)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(17mPa・s)、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(373mPa・s)、グリセリンモノメタクリレート:ブレンマーGLM(150mPa・s、日油社製)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート:ブレンマーPE−90(15mPa・s、日油社製)、PE−200(30mPa・s、日油社製)、PE−350(45mPa・s、日油社製)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート:ブレンマーPP−1000(50mPa・s、日油社製)、PP−500(75mPa・s、日油社製)、ポリ(エチレン・プロピレングリコール)モノメタクリレート:ブレンマー50PEP−300(55mPa・s、日油社製)、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノメタクリレート:ブレンマー70PEP−350B(79mPa・s、日油社製)、プロピレングリコール・ポリブチレングリコールモノメタクリレート:ブレンマー10PPB−500B(48mPa・s、日油社製)、ポリエチレングリコールモノアクリレート:ブレンマーAE−200(15mPa・s、日油社製)、ポリプロピレングリコールモノアクリレート:ブレンマーAP−400(48mPa・s、日油社製)脂肪族エポキシアクリレート:EBECRYL112(55mPa・s、ダイセルサイテック)、PA500(71.8mPa・s、東邦化学社製)等が挙げられる。上記の(メタ)アクリレート(B)の例示において、括弧内の粘度の記載は、温度20±1.0℃における粘度である。なお、これらはそれぞれ、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0044】
(メタ)アクリレート(B)を使用することで、未硬化接着剤層の粘度を前述の温度20±1.0℃において50mPa・s〜6000mPa・sとすることができ、かつ硬化接着剤層がより強い接着力を示すので好ましい。粘度範囲はより好ましくは50mPa・s以上、さらに好ましくは70mPa・s以上であり、より好ましくは400mPa・s以下、更に好ましくは350mPa・s以下である。
【0045】
後硬化接着剤中の(メタ)アクリレート(B)の含有割合は、後硬化接着剤の全固形分中5重量%〜90重量%であることが好ましい。この範囲内であることにより、より強固な接着力を得ることができる。
【0046】
後硬化接着剤が含有しうる重合開始剤は、活性エネルギー線の種類に応じて適宜選択可能である。後硬化接着剤を光硬化により硬化させる場合、光重合開始剤を1種類以上含有していてもよい。また、任意に光増感剤を用いることができる。
【0047】
光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、β−アイオノン、β−ブロモスチレン、ジアゾアミノベンゼン、α−アミルシンナックアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p′−ジクロロベンゾフェノン、p,p′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ジフェニルスルフィド、ビス(2,6−メトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、アントラセンベンゾフェノン、α−クロロアントラキノン、ジフェニルジスルフィド、ヘキサクロルブタジエン、ペンタクロルブタジエン、オクタクロロブテン、1−クロルメチルナフタリン、1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−,2−(o−ベンゾイル)]オキシム、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(o−アセチルオキシム)、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−2−ブチニルテトラメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−(p−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0048】
光重合開始剤の量は、後硬化接着剤の全固形分中、0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、また、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。
また、後硬化接着剤に光増感剤として例えば、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィンなどを含ませて、硬化性をコントロールしてもよい。
【0049】
後硬化接着剤が粒子を含む場合、その粒子の数平均粒子径は、好ましくは3μm〜20μmである。粒子の形状が真球でない場合には、粒子の長径の粒子間平均の値を、数平均粒子径とする。ここで真球でない形状とは、例えば楕円回転体、円柱、角柱、円錐、角錐、及びこれらのいずれかの一部が欠けた形状、並びにこれらに類する形状などが挙げられる。また、粒子の長径とは、最も長い径を意味する。長径の数平均粒子径が上記要件を満たすことにより、硬化接着剤層の膜厚を均一にする効果を良好に発現することができる。
【0050】
粒子を構成する材料は、有機材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリシロキサン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などを挙げることができる。無機材料としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、マグネシウムシリケートなどを挙げることができる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリシロキサン樹脂およびこれらの架橋物からなる粒子が、高分散性、高耐熱性、成形時の着色がない点で好ましい。
【0051】
さらに、後硬化接着剤は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の成分を含んでいてもよい。また、そのような成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0052】
例えば、後硬化接着剤は、接着力を向上させるための成分を含んでいてもよい。接着力を向上させる成分としては、例えば、イソシアネート基を分子中に含むモノマー(具体的にはカレンズMOI、AOI、BEI(いずれも商品名、昭和電工社製);Laromer LR9000(商品名、BASF製));並びにメルカプト基を分子中に含むモノマー(具体的にはTEMPIC、PEMP、DPMP(いずれも商品名、SC有機化学社製);カレンズMTBD1、IS1、PE1(いずれも商品名、昭和電工社製))などを挙げることができる。このような、接着力を向上させる成分の全固形分中の含有割合は、5重量%〜20重量%であることが好ましい。
【0053】
例えば、後硬化接着剤は、光照射後の暗反応を促進するためのカチオン重合硬化性の成分を含んでいてもよい。その例を挙げると、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物およびカチオン重合開始剤などが挙げられる。
【0054】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物を用いてもよく、脂環式エポキシ化合物を用いてもよく、脂肪族エポキシ化合物を用いてもよい。
芳香族エポキシ化合物の例としては、フェニルグリシジルエーテルなどの単官能エポキシ化合物;少なくとも1個の芳香族環を有する多価フェノールまたはそのアルキレンオキサイド付加体のポリグリシジルエーテルであって、例えばビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール化合物またはビスフェノール化合物のアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル類、ノボラック型エポキシ樹脂類(例えば、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂等)、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテルなどがあげられる。
【0055】
脂環式エポキシ化合物としては、例えば、4−ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド、ノルボルネンモノエポキサイド、リモネンモノエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、2,2−ビス〔4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル〕ヘキサフルオロプロパン、BHPE−3150(ダイセル化学工業(株)製、脂環式エポキシ樹脂(軟化点71℃))などがあげられる。
【0056】
脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールモノグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールモノグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンモノグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグルシジルエーテル、アリルグルシジルエーテル、2−エチルヘキシルグルシジルエーテルなどがあげられる。
【0057】
ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0058】
オキセタン化合物としては、例えば、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ノルマルブチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ベンジルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシブチル−3−メチルオキセタン、AUB−1004、CRB−1103、KAB−1014(商品名 東洋インキ製)などを挙げることができる。
【0059】
カチオン重合開始剤としては、例えば、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、などが挙げられる。
【0060】
ヨードニウム塩系の酸発生型カチオン重合開始剤としては、例えば、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウム テトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム テトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、などが挙げられる。
【0061】
例えば、後硬化接着剤は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、塗膜を乾燥する工程で揮発するものとしうるが、溶媒の一部が乾燥の工程後に未硬化接着剤層及び硬化接着剤層に残存してもよい。
溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチルグリコールモノエチルエーテルなどのグリコール類等の有機溶媒を好ましく用いることができる。後硬化接着剤中の溶媒の好ましい含有割合は、接着剤液中30重量%〜80重量%とすることができる。
【0062】
例えば、後硬化接着剤は、架橋剤、無機フィラー、重合禁止剤、着色顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、分散剤、光拡散剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、非反応性ポリマー(不活性重合体)、粘度調整剤、近赤外線吸収材等の任意成分を含んでいてもよい。
【0063】
接着層の厚みは、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、通常50μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下である。接着層の厚みを前記範囲の下限値以上とすることにより基材フィルムとパターン位相差フィルム層との接着力を十分に高めることができ、上限値以下とすることにより基材フィルム、接着層、パターン位相差フィルム層の積層構成を薄くすることができる。
【0064】
〔1−3.パターン位相差フィルム〕
パターン位相差フィルム層は、位相差又は遅相軸方向が異なる2種類以上の領域を有する。これらの領域は、位相差のみが異なっていてもよく、遅相軸方向のみが異なっていてもよく、位相差及び遅相軸方向の両方が異なっていてもよい。通常、これらの2種類以上の領域は所定のパターンを形成するようになっていて、このため、パターン位相差フィルム層の名称には「パターン」との用語が付されている。
【0065】
パターン位相差フィルム層の領域の好適な組み合わせの例としては、第一に、等方な領域(以下、「等方性領域」ということがある。)及び異方性を有する領域(以下、「異方性領域」ということがある。)との組み合わせが挙げられる。このような領域を有するパターン位相差フィルム層は、位相差フィルム(特に、1/4波長板として機能しうる位相差フィルム)を基材フィルムとして用いることが好ましい。
【0066】
異方性領域は、例えば、1/2波長板として機能しうる領域としてもよい。1/2波長板として機能しうる領域は、測定波長550nmで測定した面内位相差の値が、225nm以上が好ましく、245nm以上がより好ましく、また、285nm以下が好ましく、265nm以下がより好ましい。
他方、等方性領域は、測定波長550nmで測定した面内位相差がほぼゼロであることが好ましい。具体的には、測定波長550nmで測定した面内位相差の値が、1nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましく、また、10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましい。
【0067】
パターン位相差フィルム層の領域の好適な組み合わせの例としては、第二に、遅相軸方向が略90°異なる2種類の領域の組み合わせが挙げられる。ここで遅相軸方向が略90°異なるとは、これらの遅相軸方向がなす角度が、通常90°±5°以内、好ましくは90°±1°以内であることをいう。
【0068】
図2は、パターン位相差フィルム層130が有しうるパターンの一例を概略的に示す上面図である。図2に示す例では、パターン位相差フィルム層130は、複数の領域131及び132を交互に有し、したがってこれらからなるストライプ状のパターンを有している。また、領域131及び132は、いずれも長尺方向(座標軸Xで示す方向)に対して平行に延在する帯状の形状を有している。したがって、パターン位相差フィルム層130は、領域131と領域132との境界線133を、長尺方向に延長する線として有する。このように、パターン位相差フィルム層130が有する複数種類の領域131及び132の境界線133を、以下において「パターン境界線」ということがある。
【0069】
前記のストライプ状のパターンは、液晶表示装置においてパターン位相差板と組み合わせる液晶パネルの画素の位置に応じて設定される。例えば、液晶表示装置がパッシブ型の立体表示装置である場合、液晶パネルは通常2組の画素群(即ち、右目で観察されるための画素群及び左目で観察されるための画素群)を有する。この場合、パターン位相差フィルム層が有するパターンは、これらの画素群のうちの一方に対応する領域を等方性領域とし、他方に対応する領域を異方性領域としてもよい。
【0070】
領域131及び132の幅W131及びW132は、組み合わせる液晶パネルの画素の寸法に合わせて設定してもよい。通常、液晶パネルの画素の寸法は均一であるため、いずれの領域131及び132の幅W131及びW132も同程度になる。また、異なる種類の領域131と領域132とのパターン境界は液晶パネルの画素間にあるブラックマトリックスに対応する位置に位置合わせすることになり、そのブラックマトリックスはある程度の幅を有している。このため、当該ブラックマトリックスの幅の分は、領域131の幅W131と領域132の幅W132とに差があってもよいので、異なる種類の領域131及び132の幅W131及びW132は必ずしも同じでなくても構わない。
【0071】
パターン位相差板に張力をかけていない状態において、前記の領域の長尺方向における触れ幅ΔDと平均幅Dとの比ΔD/Dが、通常0.02以上であり、通常0.25以下、好ましくは0.20以下、より好ましくは0.15以下である。これは、パターン位相差板に張力をかけていない状態においても、前記の領域が真直性に優れることを意味する。すなわち、前記の領域の幅が長尺方向において不均一となったり前記領域が湾曲したりすること無く、より直線に近い形状となることを意味する。このように各領域が真直性に優れることにより、パターン位相差板のパターン位相差フィルム層と液晶パネルとの位置合わせを精度良く行うことができる。このような利点は、パターン位相差板が長尺のフィルムであるときも、当該長尺のフィルムから必要な形状に切り出した後でも、同様に奏される。
【0072】
ここで、前記の長尺方向における振れ幅ΔDは、前記の領域の幅方向の位置の、長尺方向における変動を表す指標値である。すなわち、前記の領域の湾曲の程度を表す指標値である。この触れ幅ΔDは、以下のようにして求める。
パターン位相差フィルム層が有する領域から任意に選んだ複数(通常、10本)の領域の、それぞれの幅方向中央の地点(以下、「中点」ということがある。)に着目する。この中点の幅方向の位置を、各領域について長尺方向における複数個所で測定する。各領域の測定結果について、測定を開始した地点の中点の位置を基準として規格化を行う。選んだ全ての領域の測定結果の中から、規格化した中点の位置のうち、最も一端寄りとなった位置と最も他端寄りとなった位置との幅方向における距離を算出し、この距離を触れ幅ΔDとする。
【0073】
また、前記の長尺方向における平均幅Dは、前記の領域の幅(図2の幅W131及びW132参照)の平均値を表す指標値である。この平均幅Dは、以下のようにして求める。
パターン位相差フィルム層が有する領域から任意に選んだ複数(通常、10本)の領域の、それぞれの幅を、各領域について長尺方向における複数個所で測定する。選んだ全ての領域の全ての測定結果の平均値を算出し、この平均値を平均幅Dとする。
【0074】
パターン位相差フィルム層の厚みは、前記の領域それぞれで所望の面内位相差が得られるように適切な厚みに設定しうる。通常は、パターン位相差フィルム層の厚みは、0.5μm以上50μm以下の範囲である。
【0075】
〔1−4.その他の層〕
パターン位相差板は、本発明の効果を著しく損なわない限り、基材フィルム、接着層及びパターン位相差フィルム層以外の構成要素を備えていてもよい。
【0076】
例えば、パターン位相差板は、パターン位相差フィルム層の基材フィルムとは反対側に、保護層を備えていてもよい。保護層は、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性等に優れるポリマーにより形成することが好ましい。このようなポリマーとしては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、鎖状ポリオレフィン樹脂、脂環式オレフィン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂等が挙げられる。また、これらポリマーにより形成された層上に、例えばハードコート層、アンチグレア層、低反射層、反射防止層等を設けてもよい。また、例えば粘着層付きのポリエチレンテレフタレートフィルム等の、再剥離可能なフィルムを保護層として用いてもよい。中でも、トリアセチルセルロース層、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどは、パターン位相差板と液晶パネルとの貼り合せ時に張力をかけてもよいため、好ましい。
保護層の厚みは任意であるが、通常5μm以上であり、通常500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは150μm以下である。
【0077】
また、例えば、パターン位相差フィルム層を製造する際に配向膜を用いた場合、パターン位相差板は前記の配向膜を有していても構わない。
さらに、パターン位相差板は、例えば液晶表示装置の製造時にパターン位相差板を支持しうる支持基材を備えていてもよい。
【0078】
〔1−5.パターン位相差板の物性〕
パターン位相差板に張力をかけない状態において、パターン位相差板は、通常、反りを生じ難い。このように反りを生じにくいため、本発明のパターン位相差板は、パターン位相差フィルム層と液晶パネルとの位置合わせを精度良く行うことができる。また、パターン位相差板と液晶パネルとを貼り合わせた場合にパターン位相板の反りに合わせて液晶パネルが反る現象を防止できる。このように反りを生じ難い理由は、パターン位相差フィルム層が縮もうとする応力を有していても、通常は基材フィルムがパターン位相差フィルム層よりも十分に厚く、剛性が高いため、応力に抗して反りを防止できるからである。
【0079】
パターン位相差板は、通常、高い透明性を有する。具体的には、パターン位相差板の全光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。なお、上限は理想的には100%である。ここで、全光線透過率は、JIS K7361−1997に準拠して測定する。
【0080】
パターン位相差板は、通常、ヘイズが小さい。具体的には、パターン位相差板のヘイズは、通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下である。なお、下限値は理想的にはゼロであるが、通常は0.1%以上である。ここで、ヘイズは、JIS K7361−1997に準拠して測定する。
【0081】
[2.パターン位相差板の第一の製造方法]
パターン位相差フィルム層が、位相差の異なる2種類以上の領域を有する場合、本発明のパターン位相差板は、例えば、以下に説明する方法によって製造してもよい。
【0082】
すなわち、この製造方法は、
i.長尺基材を用意する工程と、
ii.長尺基材の表面に、重合性液晶化合物を含み活性エネルギー線の照射により硬化しうる液晶組成物の層(以下、「液晶組成物層」ということがある。)を形成して、前記長尺基材と前記液晶組成物層とを備える積層体(以下、「未硬化積層体」ということがある。)を得る工程と、
iii.前記液晶組成物層に含まれる前記重合性液晶化合物を配向させる工程と、
iv.前記長尺基材と前記液晶組成物層とを備える前記未硬化積層体に対して長尺方向に張力をかけた状態で、前記長尺方向に対して平行に延在する帯状の遮光部及び透光部を有するマスクを介して、前記液晶組成物層に活性エネルギー線を照射する工程と、
v.前記液晶組成物層を加熱して、前記液晶組成物層の前記活性エネルギー線を照射されなかった領域の位相差を変化させて、前記長尺基材と前記パターン位相差フィルム層とを備える積層フィルムを得る工程と、
vi.前記長尺基材と前記パターン位相差フィルム層とを備える前記積層フィルムに対して、前記積層フィルムの引っ張り歪が0.002%以上0.2%以下となる張力を長尺方向にかけた状態で、前記パターン位相差フィルム層と前記基材フィルムとを接着層を介して貼り合せる工程と、
vii.前記長尺基材を剥がす工程とを含む。
【0083】
また、必要に応じて、上述した工程以外の工程を行ってもよい。例えば、
viii.長尺基材の表面に配向膜を形成する工程、
ix.マスクとして、長尺基材の表面にマスク層を形成する工程、
x.液晶組成物層を乾燥させる工程、
xi.パターン位相差フィルム層に活性エネルギー線を照射して、位相差を変化させた領域を硬化させる工程、
などを行ってもよい。
【0084】
なお、所望のパターン位相差板が得られる限り、各工程の順番は任意である。また、パターン位相差板の製造方法において、通常は長尺基材の長尺方向と長尺の基材フィルムの長尺方向とは一致するので、特に断らない限り、「長尺方向」とはこれらの長尺方向のことを指すものとする。さらに、ここで説明する製造方法では、通常、基材フィルムとして、面内において均一な位相差及び遅相軸方向を有する基材フィルムを用いる。
【0085】
〔2−1.長尺基材の用意〕
長尺基材は、パターン位相差フィルム層を製造する際に使用される長尺の基材である。通常、パターン位相差板は長尺基材を剥がした後で使用されるので、パターン位相差板には長尺基材は残らない。このような長尺基材としては、通常、長尺のフィルムを用いる。
【0086】
長尺基材の材料としては、通常は樹脂を用いる。未硬化状態の液晶組成物層を硬化させる工程において長尺基材を介して液晶組成物層にエネルギー線を照射する場合は、液晶組成物を硬化させられる程度に紫外線等のエネルギー線を透過させられる材料を用いることが好ましい。通常は、1mm厚で全光線透過率(JIS K7361−1997に準拠して、濁度計(日本電色工業社製、NDH−300A)を用いて測定)が80%以上である材料が好適である。
【0087】
さらに、長尺基材の材料としては、熱及び張力に強く、ライン搬送時の揺れの小さくする観点から、弾性率の高い材料を用いることが好ましい。
【0088】
長尺基材の材料の例を挙げると、鎖状オレフィンポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、鎖状オレフィンポリマー及びシクロオレフィンポリマーが好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、シクロオレフィンポリマーが特に好ましい。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、長尺基材の材料には、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の配合剤を含ませてもよい。好適な材料の具体例を挙げると、日本ゼオン社製「ゼオノア1420」を挙げることができる。
【0089】
長尺基材の厚みは、製造時のハンドリング性、材料のコストの観点からは薄くしてもよいが、熱及び張力に強く、ライン搬送時の揺れの小さくする観点から厚くしてもよい。特に、長尺基材はパターン位相差板には残らないので、長尺基材の厚みを厚くしても液晶表示装置の薄膜化の実現を妨げないことは、この製造方法の利点の一つである。具体的な範囲としては、好ましくは50μm以上、より好ましくは80μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下である。
【0090】
長尺基材がフィルムである場合、延伸されていない未延伸フィルムであってもよく、延伸された延伸フィルムであってもよい。また、等方なフィルムであっても、異方性を有するフィルムであってもよい。さらに、長尺基材は、一層のみからなる単層構造のフィルムであってもよく、二層以上の層からなる複層構造のフィルムであってもよい。通常は、生産性及びコストの観点から、単層構造のフィルムを用いる。
【0091】
長尺基材の液晶組成物層を形成する面には、ラビング処理を施してもよい。ラビング処理を施すことにより、後述する配向膜を形成しなくても、液晶組成物層において重合性液晶化合物を配向させることができる。通常、長尺基材の搬送方向とラビング方向は平行になる。
長尺基材の表面のラビング処理は、長尺基材の表面に未硬化状態の液晶組成物層を設ける工程の前に行う。
【0092】
長尺基材は、その片面又は両面に表面処理が施されたものであってもよい。表面処理を施すことにより、長尺基材の表面に直接形成される他の層と長尺基材との密着性を向上させることができる。表面処理としては、例えば、エネルギー線照射処理や薬品処理などが挙げられる。
【0093】
エネルギー線照射処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理などが挙げられる。中でも、処理効率の点から、コロナ放電処理およびプラズマ処理が好ましく、コロナ放電処理が特に好ましい。
薬品処理としては、例えば、重クロム酸カリウム溶液、濃硫酸などの酸化剤水溶液中に、浸漬し、その後、充分に水で洗浄する処理が挙げられる。浸漬した状態で振盪すると効果的であるが、長期間浸漬したままにしておくと表面が溶解したり、透明性が低下したりすることがあるので、処理に用いる薬品の反応性、濃度などに応じて、浸漬時間、温度などの処理条件を調整することが好ましい。
【0094】
〔2−2.配向膜の形成工程〕
図3は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る配向膜の形成工程を模式的に示す図である。図3に示すように、液晶組成物層は、長尺基材210の表面に直接に形成してもよいが、長尺基材210の表面に例えば配向膜220等を介して間接的に塗布してもよい。配向膜220を用いれば、液晶組成物層において重合性液晶化合物を容易に配向させることができる。配向膜220の形成工程は、長尺基材210の表面に未硬化状態の液晶組成物層を設ける工程の前に行う。
【0095】
配向膜220は、例えば、セルロース、シランカップリング剤、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エポキシアクリレート、シラノールオリゴマー、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、ポリオキサゾール、環化ポリイソプレンなどを用いて形成してもよい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0096】
配向膜220の厚みは、所望する液晶組成物層の配向均一性が得られる厚みであればよく、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。さらに、例えば、特開平6−289374号公報、特表2002−507782号公報、特許4022985号公報、特許4267080号公報、特許4647782号公報、米国特許5389698号明細書などに示されるような光配向膜と偏光UVを用いる方法によって、重合性液晶化合物を配向させるようにしてもよい。
【0097】
〔2−3.マスク層の形成工程〕
図4は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係るマスク層の形成工程を模式的に示す図である。図4に示すように、長尺基材210の液晶組成物層を形成する面211とは反対側の面212には、必要に応じて、マスク層230を形成してもよい。マスク層230は、エネルギー線を遮光する遮光部231と、前記エネルギー線を透光する透光部232とを有する。マスク層230の遮光部231及び透光部232は、それぞれパターン位相差フィルム層の異なる位相差を有する領域に対応していて、いずれも長尺方向に対して平行に延在する帯状の形状を有している。また、これらの遮光部231及び透光部232は幅方向において交互に並ぶことにより、全体としてストライプ状のパターンを形成している。
【0098】
マスク層230の材料としては、エネルギー線、特に紫外線を遮光することができ、且つパターンの形成が容易なマスク用組成物を適宜選択して用いてもよい。
【0099】
通常、マスク用組成物としては、樹脂を用いる。前記の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ウレタンアクリレート硬化樹脂、エポキシアクリレート硬化樹脂およびポリエステルアクリレート硬化樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類の樹脂が好ましい。これらの樹脂を含むことにより、紫外線を遮光する材料を高温環境下においても保持し、安定した遮光部を作製することができる。前記の樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0100】
マスク用組成物に含まれる樹脂のガラス転移温度は、通常80℃以上、好ましくは100℃以上であり、通常400℃以下、好ましくは350℃以下である。ガラス転移温度を80℃以上にすることによりマスク層230の耐熱性を高めることができ、例えば液晶組成物層の加熱時にマスク層230が変形することを防止できる。また、ガラス転移温度を400℃以下にすることにより、樹脂の溶解性を高めてマスク用組成物の印刷を簡単にできる。印刷前の状態とマスク層230を形成した後の状態とで樹脂のガラス転移温度が変化する場合には、マスク層230を形成した後の状態においてガラス転移温度が前記の範囲に収まることが好ましい。
【0101】
マスク用組成物は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。これによりマスク層230の遮光部231が紫外線吸収剤を含むことになり、遮光部231において紫外線を安定して遮光することができるようになる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤およびトリアジン系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種類の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。紫外線吸収剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。紫外線吸収剤の使用量は、マスク層230中のモノマー、オリゴマー及びポリマー100重量部に対して、通常5重量部以上、好ましくは8重量部以上、より好ましくは10重量部以上であり、通常20重量部以下、好ましくは18重量部以下、より好ましくは15重量部以下である。
【0102】
マスク用組成物は、さらに、着色剤、金属粒子、溶媒、光重合開始剤、架橋剤、その他の成分を含んでいてもよい。
【0103】
長尺基材210及びマスク用組成物を用意した後で、長尺基材210の一方の表面212にマスク層230を形成する。マスク用組成物を用いてマスク層230を形成する方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、ロータリースクリーン印刷法、グラビアオフセット印刷法、インクジェット印刷法、又はこれらの組み合わせである印刷法を好ましく挙げることができる。透光部232と遮光部231は、例えば、マスク層230の厚さが薄い層と厚い層とを形成することにより設けてもよい。
【0104】
ただし、マスク層230は、長尺基材210に対して長尺方向に張力をかけた状態で形成することが好ましい。張力をかけることにより、長尺基材210のたわみ、変形、湾曲、長尺基材搬送時のフレなどを防止して、遮光部231及び透光部232の寸法及び形状を安定させることができる。このため、遮光部231及び透光部232の寸法、形状及び延在方向の精度を高め、真直性に優れた遮光部231及び透光部232を形成することが可能となる。
【0105】
〔2−4.液晶組成物層の形成工程〕
図5は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る液晶組成物層の形成工程を模式的に示す図である。図5に示すように、長尺基材210を用意し、必要に応じて配向膜220を形成した後で、長尺基材210の表面211に、直接又は配向膜220等を介して、液晶組成物層240を形成する。
【0106】
パターン位相差フィルム層の形成に用いる液晶組成物は、重合性液晶化合物を含み、活性エネルギー線の照射により硬化しうる。前記の重合性液晶化合物としては、重合可能な液晶化合物を用い、例えば、重合性基を有する棒状液晶化合物及び側鎖型液晶ポリマー化合物などが挙げられる。
【0107】
棒状液晶化合物としては、例えば、特開2002−030042号公報、特開2004−204190号公報、特開2005−263789号公報、特開2007−119415号公報、特開2007−186430号公報などに記載された重合性基を有する棒状液晶化合物などが挙げられる。
また、側鎖型液晶ポリマー化合物としては、例えば、特開2003−177242号公報などに記載の側鎖型液晶ポリマー化合物などが挙げられる。
また、好ましい重合性液晶化合物の例を製品名で挙げると、BASF社製「LC242」等が挙げられる。重合性液晶化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0108】
重合性液晶化合物の屈折率異方性Δnは、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上であり、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.25以下である。屈折率異方性Δnが0.05未満では所望の光学的機能を得るために液晶組成物層240の厚さが厚くなって配向均一性が低下する可能性があり、また経済コスト的にも不利である。屈折率異方性Δnが0.30より大きいと所望の光学的機能を得るために液晶組成物層240の厚さが薄くなり、厚さ精度に対して不利である。屈折率異方性Δnが大きい場合、液晶組成物層240の紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合がありえるが、該スペクトルの吸収端が可視域に及んでも所望する光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。液晶組成物が重合性液晶化合物を1種類だけ含む場合には、当該重合性液晶化合物の屈折率異方性を、そのまま液晶組成物における重合性液晶化合物の屈折率異方性としうる。また、液晶組成物が重合性液晶化合物を2種類以上含む場合には、各重合性液晶化合物それぞれの屈折率異方性Δnの値と各重合性液晶化合物の含有比率とから求めた加重平均値屈折率異方性Δnの値を、液晶組成物における重合性液晶化合物の屈折率異方性とする。屈折率異方性Δnの値は、セナルモン法により測定しうる。
【0109】
さらに、液晶組成物は、製造方法や最終的な性能に対して適正な物性を付与するために、重合性液晶化合物以外にその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例を挙げると、有機溶媒、界面活性剤、キラル剤、重合開始剤、紫外線吸収剤、架橋剤、酸化防止剤などが挙げられる。その他の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0110】
有機溶媒のうち好適な例を挙げると、ケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、およびエーテル類等が挙げられる。これらの中でも、環状ケトン類、環状エーテル類が、重合性液晶化合物を溶解させやすいために好ましい。環状ケトン溶媒としては、例えば、シクロプロパノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられ、中でもシクロペンタノンが好ましい。環状エーテル溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン等が挙げられ、中でも1,3−ジオキソランが好ましい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよく、液晶組成物としての相溶性や粘性、表面張力の観点などから最適化されることが好ましい。
有機溶媒の含有割合は、有機溶媒以外の固形分全量に対する割合として、通常は30重量%以上95重量%以下としうる。
【0111】
界面活性剤としては、配向を阻害しないものを適宜選択して使用することが好ましい。好ましい界面活性剤の例を挙げると、疎水基部分にシロキサン及びフッ化アルキル基等を含有するノニオン系界面活性剤などが挙げられる。中でも、1分子中に2個以上の疎水基部分を持つオリゴマーが特に好適である。これらの界面活性剤の例を製品名で挙げると、OMNOVA社PolyFoxのPF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−3320、PF−651、PF−652;ネオス社フタージェントのFTX−209F、FTX−208G、FTX−204D;セイミケミカル社サーフロンのKH−40等が挙げられる。界面活性剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0112】
界面活性剤の配合割合は、硬化後の液晶組成物層240における界面活性剤の濃度が0.05重量%以上3重量%以下となるようにすることが好ましい。界面活性剤の配合割合が0.05重量%より少ないと空気界面における配向規制力が低下して配向欠陥が生じる可能性がある。逆に3重量%より多い場合には、過剰の界面活性剤が液晶化合物の分子間に入り込み、配向均一性を低下させる可能性がある。
【0113】
キラル剤は、重合性化合物であってもよく、非重合性化合物であってもよい。キラル剤としては、通常、分子内にキラルな炭素原子を有し、重合性液晶化合物の配向を乱さない化合物を使用する。キラル剤の例を挙げると、重合性のキラル剤としてはBASF社製「LC756」等が挙げられる。また、例えば、特開平11−193287号公報、特開2003−137887号公報などに記載されているものも挙げられる。キラル剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。キラル剤は、通常、ツイステッドネマチック相を有する領域を形成する場合に、重合性を有する液晶化合物と併用して用いられる。
【0114】
重合開始剤は、例えば熱重合開始剤を用いてもよいが、通常は光重合開始剤を用いる。光重合開始剤としては、例えば、紫外線又は可視光線によってラジカル又は酸を発生させる化合物を使用しうる。光重合開始剤の例を挙げると、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、ビアセチル、アセトフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンジルイソブチルエーテル、テトラメチルチウラムモノ(ジ)スルフィド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、β−アイオノン、β−ブロモスチレン、ジアゾアミノベンゼン、α−アミルシンナックアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、pp′−ジクロロベンゾフェノン、pp′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ジフェニルスルフィド、ビス(2,6−メトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、アントラセンベンゾフェノン、α−クロロアントラキノン、ジフェニルジスルフィド、ヘキサクロルブタジエン、ペンタクロルブタジエン、オクタクロロブテン、1−クロルメチルナフタリン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]や1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(o−アセチルオキシム)などのカルバゾールオキシム化合物、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−2−ブチニルテトラメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−(p−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。重合開始剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、必要に応じて液晶組成物に、例えば三級アミン化合物等の光増感剤又は重合促進剤を含ませて、液晶組成物の硬化性をコントロールしてもよい。光重合効率を向上させるためには、重合性液晶化合物及び光重合開始剤などの平均モル吸光係数を適切に選定することが好ましい。
【0115】
紫外線吸収剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、4−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)−1−(2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系;などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、所望する耐光性を付与するために、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0116】
紫外線吸収剤の配合割合は、重合性液晶化合物100重量部に対して、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上であり、通常5重量部以下、好ましくは1重量部以下である。紫外線吸収剤の配合割合が、0.001重量部未満の場合には紫外線吸収能が不十分となり所望する耐光性を得られない可能性があり、5重量部より多い場合には液晶組成物を紫外線等の活性エネルギー線で硬化させる際に硬化が不十分となり、液晶組成物層240の機械的強度が低くなったり耐熱性が低くなったりする可能性がある。
【0117】
液晶組成物には、所望する機械的強度に応じて架橋剤を含ませてもよい。架橋剤の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型イソシアネート、ビウレット型イソシアネート、アダクト型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のアルコキシシラン化合物;などが挙げられる。架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、液晶組成物には架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を含ませ、膜強度や耐久性向上に加えて生産性を向上させるようにしてもよい。
【0118】
前記架橋剤の配合割合は、硬化後の液晶組成物層中における架橋剤の濃度が0.1重量%以上20重量%以下となるようにすることが好ましい。架橋剤の配合割合が0.1重量%より少ないと架橋密度向上の効果が得られない可能性があり、逆に20重量%より多いと硬化後の液晶組成物層240の安定性を低下させる可能性がある。
【0119】
酸化防止剤としては、例えば、テトラキス(メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。酸化防止剤の配合量は、粘着層の透明性や粘着力が低下しない範囲としうる。
【0120】
液晶組成物層240を形成する場合、通常は、塗布法を用いる。液晶組成物の塗布方法としては、例えば、リバースグラビアコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法等の方法が挙げられる。
【0121】
図5に示すように、液晶組成物を長尺基材210に塗布することにより、塗膜として未硬化状態の液晶組成物層240が形成され、長尺基材210と未硬化状態の液晶組成物層240とを備え、更に必要に応じて配向膜220及びマスク層230を備える未硬化積層体250が得られる。
【0122】
〔2−5.配向工程〕
図6は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る配向工程を模式的に示す図である。図6に示すように、未硬化状態の液晶組成物層240を形成する工程を行った後で、液晶組成物層240に含まれる重合性液晶化合物を配向させる配向工程を行ってもよい。配向工程における具体的な操作としては、例えば、オーブン内で未硬化状態の液晶組成物層240を所定の温度に加熱する操作を挙げることができる。
【0123】
配向工程において液晶組成物層240を加熱する温度は、通常40℃以上、好ましくは50℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは140℃以下である。また、加熱処理における処理時間は、通常1秒以上、好ましくは5秒以上であり、通常3分以下、好ましくは120秒以下である。これにより、液晶組成物層中の重合性液晶化合物が配向しうる。
また、液晶組成物に溶媒が含まれていた場合、前記の加熱によって通常は溶媒が乾燥するので、液晶組成物層240から溶媒が除去される。したがって、配向工程を行うと、通常は液晶組成物層240を乾燥させる乾燥工程も同時に進行する。通常、液晶組成物層240の配向軸はラビング方向と平行となり、配向軸が遅相軸となる。
【0124】
〔2−6.第一の硬化工程〕
図7は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る第一の硬化工程を模式的に示す図である。図7に示すように、配向工程を行った後で、未硬化状態の液晶組成物層240の一部の領域241を硬化させる工程(第一の硬化工程)を行う。硬化させられる領域241では液晶組成物において重合反応が進行し、重合性液晶化合物が異方性の配向状態を維持したまま固定化される。
【0125】
第一の硬化工程では、マスクを介して未硬化状態の液晶組成物層240に活性エネルギー線を照射することにより、活性エネルギー線を照射された領域(以下、「露光領域」ということがある。)241を硬化させる。この際、マスクとしては、長尺方向に対して平行に延在する帯状の遮光部231及び透光部232を有するマスクを用いる。
【0126】
例えば、マスクとして長尺基材210にマスク層230を形成してある場合には、長尺基材210のマスク層側からマスク層230を介して液晶組成物層に活性エネルギー線を照射する。
また、例えば、長尺基材210とは別に、例えばストライプ状のパターンを構成する透光部及び遮光部をガラス上に設けたガラスマスクを介して、液晶組成物層に活性エネルギー線を照射してもよい。ガラスマスクは、例えば、ガラス表面にクロムスパッタを施し、さらにフォトレジストを塗布し、ストライプ状に露光してフォトレジストを感光させて、洗浄し、クロムをエッチングしたものを用いてもよい。あるいは、例えば感光性乳剤を塗布したPETフィルムをストライプ状にレーザー描画し、洗浄し、該PETフィルムをガラス上に接着層を介して貼り合わせたものを用いてもよい。
また、特開平4−299332号公報に示した方法を使用してもよい。
【0127】
ただし、活性エネルギー線の照射は、未硬化積層体250に対して長尺方向に張力をかけた状態で実施することが好ましい。張力をかけることにより、未硬化積層体250のたわみ、変形、湾曲などを防止して、露光領域241の寸法及び形状を安定させることができる。このため、露光領域241の寸法、形状及び延在方向の精度を高め、露光領域に対応したパターン位相差フィルム層の領域(本例では、異方性領域)の真直性を向上させることができる。
【0128】
未硬化積層体250に対して長尺方向にかける張力の大きさは、パターン位相差フィルム層の領域の真直性を高められる程度である。具体的には、未硬化積層体250の引っ張り歪が、通常0.01%以上、好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.05%以上であり、通常0.17%以下、好ましくは0.15%以下、より好ましくは0.13%以下となる大きさの張力をかける。張力の大きさを前記範囲の下限値以上とすることによってパターン位相差フィルム層の領域の真直性を高めることができ、上限値以下とすることにより過度の張力による意図しない変形を防止できる。
【0129】
第一の硬化工程では、活性エネルギー線として、液晶組成物を硬化させうる波長であって、マスクの遮光部で遮光されるが透光部を透光する波長の光を用いる。このような活性エネルギー線として、通常は紫外線を用いる。紫外線の照射時間、照射量、及びその他の条件は、液晶組成物の組成及び液晶組成物層240の厚みなどに応じて適切に設定しうる。照射時間は通常0.01秒から3分の範囲であり、照射量は通常0.01mJ/cmから50mJ/cmの範囲である。また、紫外線の照射は、例えば窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。
【0130】
〔2−7.配向変化工程〕
図8は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る配向変化工程を模式的に示す図である。図8に示すように、第一の硬化工程の後で、液晶組成物層240の活性エネルギー線を照射されなかった領域(即ち、液晶組成物層の未硬化状態の領域)242の位相差を変化させる工程を行う。
【0131】
この工程において、どのような配向状態に変化させるかはパターン位相差板の用途に応じて設定しうるが、例えば、ヒーターにより、液晶組成物層240を、液晶組成物のNI点以上に加熱してもよい。これにより、液晶化合物分子の配向状態が変化してランダムになるので、液晶組成物層240の未硬化状態の領域242は等方性領域となる。よって、液晶組成物層240は、位相差が異なる2種類以上の領域241及び242を有するパターン位相差フィルム層となるので、長尺基材210とパターン位相差フィルム層とを備え、必要に応じて配向膜220及びマスク層230を備える積層フィルム260が得られる。なお、本例においてパターン位相差フィルム層は、液晶組成物層240からなる層であるので、液晶組成物層240と同様の符号「240」を用いて示す。
【0132】
〔2−8.第二の硬化工程〕
図9は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る第二の硬化工程を模式的に示す図である。図9に示すように、通常、未硬化状態の領域242の配向状態を変化させた後で、その未硬化状態の領域242を硬化させる第二の硬化工程を行う。この際、硬化させられる領域242では液晶組成物において重合反応が進行し、重合性液晶化合物は配向状態を維持したまま固定化される。
【0133】
第二の硬化工程は、紫外線の照射により行ってもよい。紫外線の照射時間、照射量などは、液晶組成物の組成及び液晶組成物層240の厚みなどに応じて適切に設定しうるが、照射量は通常50mJ/cmから10,000mJ/cmの範囲である。また、紫外線の照射は、例えば窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。照射に際して、必要に応じてヒーターによる加熱を継続して、未硬化状態の液晶組成物層の配向状態(例えば、等方相)を維持した状態で照射を行ってもよい。
【0134】
上述した製造方法により得られるパターン位相差フィルム層240においては、異なる位相差を有する領域241及び242が、遮光部及び透光部により形成されるマスクのマスクパターンを精度よく写し取ったパターンを形成する。さらに、当該製造方法により得られたパターン位相差フィルム層240においては、異なる位相差を有する領域241及び242の間には、物質的な連続性がある。したがって、上述した製造方法は、領域241及び242間の空隙による反射及び散乱等を生じない点で光学的に有利であり、また、領域241及び242間の空隙を起点とした破損等を生じない点で機械的強度の点でも有利である。
【0135】
〔2−9.パターン位相差フィルム層と基材フィルムとの貼合工程〕
図10は、本発明のパターン位相差板の製造方法において使用しうる製造装置の一例を示す図である。図10に示すように、長尺基材210及びパターン位相差フィルム層(図10では図示せず)を備える積層フィルム260を得た後で、前記積層フィルム260と基材フィルム270とを貼り合わせる。
【0136】
積層フィルム260の貼り合せの向きは、積層フィルム260のパターン位相差フィルム層と基材フィルム270とが貼り合せられる向きにする。すなわち、パターン位相差フィルム層の長尺基材210とは反対側で積層フィルム260と基材フィルム270とが貼り合せられるようにする。
【0137】
貼り合せは、接着層(図10では図示せず)を介して行う。この際、予め基材フィルム270及び積層フィルム260の一方又は両方の表面に接着剤を塗布しておき、それから貼り合わせを行うと、操作が簡単であり、好ましい。
通常、貼り合せは、積層フィルム260及び基材フィルム270を長尺方向に搬送しながら、積層フィルム260及び基材フィルム270を一対のニップロール281及び282で挟み込むことにより行う。
【0138】
貼り合せの際、積層フィルム260には、矢印A260で示すように、所定の大きさの張力を長尺方向にかけた状態にすることが好ましい。この際の張力の大きさは、積層フィルム260の引っ張り歪が、通常0.002%以上、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.015%以上であり、通常0.2%以下、好ましくは0.15%以下、より好ましくは0.12%以下となる大きさである。前記範囲の下限値以上の張力をかけることにより、パターン位相差フィルム層における各領域を、当該領域の形成時(例えば、第一の硬化工程)と同様の真直性を保持した状態にすることができるので、それらの領域の真直性を高めることができる。また、張力の大きさを上限値以下とすることにより、過度の張力によりパターン位相差フィルム層が延伸されて各領域の寸法、位相差、遅相軸方向などが変化したり、パターン位相差フィルム層に縮もうとする過度に大きな応力が生じたりすることを防止できる。
【0139】
また、貼り合せの際、基材フィルム270にも、矢印A270で示すように、張力を長尺方向にかけた状態にすることが好ましい。基材フィルム270にしわ及びたわみが生じることを防止するためである。この際、基材フィルム270にかける張力の大きさは、積層フィルム260にかける張力よりも小さくすることが好ましい。具体的には、基材フィルム270の引っ張り歪が、通常0.2%以下、好ましくは0.15%以下、より好ましくは0.10%以下であり、通常0.01%以上、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.08%以上となる大きさである。このように基材フィルム270にかける張力を小さくすることにより、張力解放後の基材フィルム270に縮もうとする応力が生じることを防止できるので、貼り合せ後においてパターン位相差フィルム層の各領域の真直性を維持でき、また、得られるパターン位相差板290の反り等の変形を安定して防止することが可能である。
【0140】
〔2−10.接着層の硬化工程〕
積層フィルム260と基材フィルム270とを貼り合わせた後で、必要に応じて、接着層の硬化工程を行う。例えば、接着剤として後硬化接着剤を用いた場合、必要に応じて接着剤を乾燥させ、活性エネルギー線の照射などを行うことにより、接着層を硬化させてもよい。
図10に示す例では、光源283から活性エネルギー線を照射することにより、接着層を硬化させているものとする。
【0141】
〔2−11.剥離工程〕
上述した各工程を経たことにより、長尺基材210、パターン位相差フィルム層、接着層及び基材フィルム270をこの順に備えたフィルム291が得られる。このフィルム291から長尺基材210を剥がすことにより、パターン位相差板290が得られる。本例では、フィルム291が対向する搬送ロール284,285間を通過したとき、長尺基材210が剥がされているものとする。
【0142】
長尺基材210の表面にマスク層(図10では図示せず)が形成されている場合、当該マスク層は、長尺基材210を剥がしたときに長尺基材210と一緒に剥がれる。また、長尺基材210の表面に配向膜(図10では図示せず)が形成されている場合、当該配向膜は、長尺基材210を剥がしたときに長尺基材210と一緒にはがれてもよく、パターン位相差フィルム層の表面に残っていてもよい。
【0143】
上述したように、積層フィルム260と基材フィルム270とを貼り合わせる際、パターン位相差フィルム層の各領域の真直性を高めるために、積層フィルム260に大きな張力をかけた。また、得られたパターン位相差板290においては、パターン位相差フィルム層は張力をかけられた状態のままで固定されている。さらに、通常、貼り合せ時において基材フィルム270には、前記の真直性を低下させうるほどの張力はかけられていない。このため、パターン位相差フィルム層の各領域の真直性は高くなっており、この真直性は、パターン位相差板290に張力をかけていないときでも維持される。
【0144】
また、長尺基材210、パターン位相差フィルム層、接着層及び基材フィルム270にかけられた張力差により、これらを有するフィルム291の張力を開放した時には、張力が大きかった方が凹となるようにしてフィルム291が反ることがある。通常は、長尺基材210に特に大きな張力がかけられるので、長尺基材210側を凹としてフィルム291は反る傾向がある。しかし、得られたパターン位相差板290では、長尺基材210を剥がしたことにより、前記のような反りを防止できる。
【0145】
さらに、パターン位相差板290においては、通常はパターン位相差フィルム層に基材フィルム270よりも大きい張力がかけられるので、パターン位相差フィルム層に生じる応力によって反りが生じることも考えられる。しかし、パターン位相差フィルム層は、一般に基材フィルム270よりも薄いので、パターン位相差フィルム層に発現する応力では、基材フィルム270の剛性に抗してパターン位相差板290全体を変形させることは難しい。したがって、パターン位相差板290に張力をかけていないときでも、パターン位相差板290の反りを防止できる。
【0146】
〔2−12.その他の工程〕
必要に応じて、上述した工程以外の工程を行うようにしてもよい。
例えば、パターン位相差フィルム層の基材フィルム270とは反対側に、保護層を設ける工程を行ってもよい。保護層を設ける工程は、例えば、下記のようにして行いうる。まず、保護層を有するフィルム状の基材を用意する。この基材の保護層とは反対側の面に接着剤を設ける。その後、パターン位相差フィルム層と基材に設けた接着剤とを貼り合わせる。これにより、パターン位相差フィルム層上に保護層が設けられる。この場合、パターン位相差フィルム層及び基材フィルム270を備えるパターン位相差板290にかかる張力に対して、保護層を有する基材にかかる張力が、同等以下であることが好ましい。パターン位相差板290にかかる張力と保護層を有する基材にかかる張力との張力差は、具体的には、通常0N/フィルム幅以上、好ましくは50N/フィルム幅以上であり、通常500N/フィルム幅以下、好ましくは400N/フィルム幅以下である。
【0147】
さらに、例えば、基材フィルム270のパターン位相差フィルム層を貼り合わせた面とは反対側に、接着層を設けてもよい。接着層を設ける方法は、例えば、下記のようにして行いうる。まず、PET基材表面にシリコン系離型層を設けたフィルムを用意する。このフィルムのシリコン系離型層上に、接着層を塗工する。その後、基材フィルム270のパターン位相差フィルム層を貼り合わせた面とは反対側に、上記接着層を貼り合わせることで、基材フィルム270に接着層を設けることができる。この場合、パターン位相差フィルム層及び基材フィルム270を備えるパターン位相差板290にかかる張力に対して、接着層を塗工したフィルムにかかる張力が、同等以下であることが好ましい。パターン位相差板290にかかる張力と接着層を塗工したフィルムにかかる張力との張力差は、具体的には、通常0N/フィルム幅以上、好ましくは50N/フィルム幅以上であり、通常500N/フィルム幅以下、好ましくは400N/フィルム幅以下である。
【0148】
[3.パターン位相差板の第二の製造方法]
パターン位相差フィルム層が、遅相軸方向が異なる2種類以上の領域を有する場合、本発明のパターン位相差板は、例えば、以下に説明する方法によって製造してもよい。
【0149】
すなわち、この製造方法は、
xii.長尺基材を用意する工程と、
xiii.長尺基材の表面に、偏光を照射されることにより不可逆的に配向する光配向材料の層(以下、「光配向材料層」ということがある。)を形成して、長尺基材と光配向材料層とを備える積層体(以下、「配向材料積層体」ということがある。)を得る工程と、
xiv.長尺基材と光配向材料層とを備える配向材料積層体に対して長尺方向に張力をかけた状態で、光配向材料層の長尺方向に対して平行に延在する帯状の領域に、偏光を照射する工程と、
xv.光配向材料層の全体に、前記の偏光とは偏光方向が90°±3°異なる偏光を照射して、配向膜を得る工程と、
xvi.前記配向膜の表面に、重合性液晶化合物を含み活性エネルギー線の照射により硬化しうる液晶組成物の層(即ち、液晶組成物層)を形成する工程と、
xvii.前記液晶組成物層に活性エネルギー線を照射して、長尺基材とパターン位相差フィルム層とを備える積層フィルムを得る工程と、
xviii.前記長尺基材と前記パターン位相差フィルム層とを備える前記積層フィルムに対して、前記積層フィルムの引っ張り歪が0.002%以上0.2%以下となる張力を長尺方向にかけた状態で、前記パターン位相差フィルム層と前記基材フィルムとを接着層を介して貼り合せる工程と、
xix.前記長尺基材を剥がす工程とを含む。
【0150】
また、必要に応じて、上述した工程以外の工程を行ってもよい。例えば、
xx.前記液晶組成物層に含まれる前記重合性液晶化合物を配向させる工程、
xxi.液晶組成物層を乾燥させる工程、
などを行ってもよい。
【0151】
なお、所望のパターン位相差板が得られる限り、各工程の順番は任意である。また、パターン位相差板の製造方法において、通常は長尺基材の長尺方向と長尺の基材フィルムの長尺方向とは一致するので、特に断らない限り、「長尺方向」とはこれらの長尺方向のことを指すものとする。さらに、ここで説明する製造方法では、通常、基材フィルムとして、位相差が通常10nmの基材フィルムを用いる。
【0152】
〔3−1.長尺基材の用意〕
長尺基材は、[2.パターン位相差板の第一の製造方法]において説明したのと同様にしてもよい。
【0153】
〔3−2.光配向材料層の形成工程〕
図11は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る光配向材料層の形成工程を模式的に示す図である。図11に示すように、長尺基材310の表面311には、光配向材料層320を形成する。これにより、長尺基材310と光配向材料層320とを備える配向材料積層体330が得られる。
【0154】
光配向材料とは、偏光を照射されることにより不可逆的に配向する材料である。このような光配向材料の例としては、特許4267080号公報に記載のPPN層に使用されるPPN材料、特許4647782号公報に記載のLPP/LCP混合物、第2543666号公報に記載のPPN材料などが挙げられる。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0155】
光配向材料層320の厚みは、所望する液晶組成物層の配向均一性が得られる厚みであればよく、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。
【0156】
〔3−3.第一の偏光照射工程〕
図12は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る第一の偏光照射工程を模式的に示す図である。図12に示すように、光配向材料層320を形成した後で、光配向材料層320の一部の領域321に偏光を照射する工程(第一の変更照射工程)を行う。偏光を照射された領域321では、光配向材料層320において光配向材料が不可逆的に配向し、その配向状態を維持したまま固定化される。
【0157】
第一の偏光照射工程では、通常、マスクを介して光配向材料層320に偏光を照射する。この際、マスクとしては、長尺方向に対して平行に延在する帯状の遮光部及び透光部を有するマスクを用いる。これにより、光配向材料層320の、長尺方向に対して平行に延在する帯状の領域321に、偏光を照射することができる。このようなマスクとしては、例えば、[2.パターン位相差板の第一の製造方法]において説明したマスク層及びガラスマスクなどを用いてもよい。
【0158】
ただし、偏光の照射は、配向材料積層体330に対して長尺方向に張力をかけた状態で実施することが好ましい。張力をかけることにより、配向材料積層体330のたわみ、変形、湾曲などを防止して、偏光を照射される領域321の寸法及び形状を安定させることができる。このため、偏光を照射される領域321の寸法、形状及び延在方向の精度を高め、偏光を照射される領域321及び当該領域に対応したパターン位相差フィルム層の領域の真直性を向上させることができる。
【0159】
配向材料積層体330に対して長尺方向にかける張力の大きさは、偏光を照射される領域321の真直性を高められる程度である。具体的には、配向材料積層体330の引っ張り歪が、通常0.01%以上、好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.05%以上であり、通常0.17%以下、好ましくは0.15%以下、より好ましくは0.13%以下となる大きさの張力をかける。張力の大きさを前記範囲の下限値以上とすることによって偏光を照射される領域321の真直性を高めることができ、上限値以下とすることにより過度の張力による意図しない変形を防止できる。
【0160】
第一の偏光照射工程では、偏光として、光配向材料を配向させうる波長であって、マスクの遮光部で遮光されるが透光部を透光する波長の光を用いる。このような偏光として、通常は紫外線を用いる。紫外線の照射時間、照射量、及びその他の条件は、光配向材料の組成及び光配向材料層320の厚みなどに応じて適切に設定しうる。照射時間は通常0.001秒から1分の範囲であり、照射量は通常1mJ/cmから500mJ/cmの範囲である。また、偏光の照射は、例えば窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。
【0161】
〔3−4.第二の偏光照射工程〕
図13は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る第二の偏光照射工程を模式的に示す図である。図13に示すように、第一の偏光照射工程の後で、光配向材料層320の全体に、前記の偏光とは偏光方向が90°±3°異なる偏光を照射する第二の偏光照射工程を行う。これにより、第一の偏光照射工程において偏光が照射されていなかった領域322において、光配向材料が不可逆的に配向し、その配向状態を維持したまま固定化される。また、第一の偏光照射工程で照射した偏光と第二の偏光照射工程で照射した偏光とは偏光方向が90°±3°異なっているので、光配向材料層320において第二の偏光照射工程で配向した領域322の配向方向は、第一の偏光照射工程で配向した領域321の配向方向と90°±3°異なる。
【0162】
第二の偏光照射工程は、例えば、マスクを介さずに偏光を照射することにより行ってもよい。偏光の照射時間、照射量などは、光配向材料の組成及び光配向材料層320の厚みなどに応じて適切に設定しうるが、照射量は通常0.5mJ/cmから300mJ/cmの範囲である。また、偏光の照射は、例えば窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。
【0163】
上述した製造方法により、長尺基材310の表面311に光配向材料層320からなる配向膜が得られる。この配向膜においては、配向方向が90°±3°異なる領域321及び322が、遮光部及び透光部により形成されるマスクのマスクパターンを精度よく写し取ったパターンを形成する。すなわち、配向方向が90°±3°異なる領域321及び322が、いずれも長尺方向に対して平行に延在する帯状の形状を有して交互に並ぶことにより、全体としてストライプ状のパターンが形成される。なお、本例において配向膜は、光配向材料層320からなる層であるので、光配向材料層320と同様の符号「320」を用いて示す。
【0164】
〔3−5.液晶組成物層の形成工程〕
図14は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る液晶組成物層の形成工程を模式的に示す図である。図14に示すように、長尺基材310に配向膜320を形成した後で、その配向膜320の表面323に、液晶組成物層340を形成する。液晶組成物層340の形成工程については、[2.パターン位相差板の第一の製造方法]において説明したのと同様にしてもよい。液晶組成物を配向膜320の表面323に塗布することにより、塗膜として未硬化状態の液晶組成物層340が形成される。
【0165】
〔3−6.配向工程〕
図15は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る配向工程を模式的に示す図である。図15に示すように、未硬化状態の液晶組成物層340を形成する工程を行った後で、必要に応じて、液晶組成物層340に含まれる重合性液晶化合物を配向させる配向工程を行ってもよい。配向工程については、[2.パターン位相差板の第一の製造方法]において説明したのと同様にしてもよい。配向工程を行うことにより、配向膜320の各領域321及び322の配向方向に応じた方向へと重合性液晶化合物が配向する。また、配向工程を行うと、通常は液晶組成物層340を乾燥させる乾燥工程も同時に進行することも、同様である。
【0166】
〔3−7.硬化工程〕
図16は、本発明のパターン位相差板の製造方法の一例に係る硬化工程を模式的に示す図である。図16に示すように、必要に応じて配向工程を行った後で、未硬化状態の液晶組成物層340を硬化させる工程(硬化工程)を行う。硬化させられる液晶組成物層340の領域341及び342では液晶組成物において重合反応が進行し、重合性液晶化合物は配向状態を維持したまま固定化される。これにより、長尺基材310の表面311に、配向膜320を介して、液晶組成物層からなるパターン位相差フィルム層が形成されるので、長尺基材310と配向膜320とパターン位相差フィルム層とを備える積層フィルム350が得られる。なお、本例においてパターン位相差フィルム層は、液晶組成物層340からなる層であるので、液晶組成物層340と同様の符号「340」を用いて示す。
【0167】
この硬化工程では、[2.パターン位相差板の第一の製造方法]における第二の硬化工程と同様にして、液晶組成物層340に活性エネルギー線を照射してもよい。
【0168】
このパターン位相差フィルム層340においては、遅相軸方向が異なる2種類の領域341及び342が、配向膜320に形成された異なる配向方向を有する領域321及び322のパターンを精度よく写し取ったパターンを形成する。通常、配向膜320の各領域321及び322における配向方向と、その表面に形成されたパターン位相差フィルム層340の各領域341及び342の遅相軸方向とは、平行又は垂直となる。したがって、本例のように配向方向が90°±3°異なる領域321及び322を配向膜320に形成した場合、パターン位相差フィルム層340において各領域341及び342の遅相軸方向も、90°±3°異なるようになる。
【0169】
さらに、当該製造方法により得られたパターン位相差フィルム層340においては、遅相軸方向が異なる領域341及び342の間には、物質的な連続性がある。したがって、上述した製造方法は、領域341及び342間の空隙による反射及び散乱等を生じない点で光学的に有利であり、また、領域341及び342間の空隙を起点とした破損等を生じない点で機械的強度の点でも有利である。
【0170】
〔3−8.パターン位相差フィルム層と基材フィルムとの貼合工程〕
長尺基材及びパターン位相差フィルム層を備える積層フィルムを得た後で、前記積層フィルムと基材フィルムとを貼り合わせる。この貼り合わせは、[2.パターン位相差板の第一の製造方法]と同様にして行う(図10参照)。
【0171】
貼り合せの際、積層フィルムには、所定の大きさの張力を長尺方向にかけた状態にするので、パターン位相差フィルム層における各領域の真直性を高めることができる。また、過度の張力によりパターン位相差フィルム層が延伸されて各領域の寸法、位相差、遅相軸方向などが変化したり、パターン位相差フィルム層に縮もうとする過度に大きな応力が生じたりすることを防止できる。
【0172】
また、貼り合せの際、基材フィルムにも、張力を長尺方向にかけた状態にすることが好ましい。基材フィルムにしわ及びたわみが生じることを防止するためである。この際、基材フィルムにかける張力の大きさを小さくすることにより、パターン位相差フィルム層が縮もうとする応力に対して基材フィルムが抗することが可能となり、得られるパターン位相差板の反り等の変形を安定して防止することが可能である。
【0173】
〔3−9.接着層の硬化工程〕
積層フィルムと基材フィルムとを貼り合わせた後で、必要に応じて、接着層の硬化工程を行う(図10参照)。例えば、接着剤としては、後硬化接着剤を用いた場合、必要に応じて接着剤を乾燥させ、活性エネルギー線の照射などを行うことにより、接着層を硬化させてもよい。
【0174】
〔3−10.剥離工程〕
必要に応じて接着層を硬化させた後で、長尺基材を剥がすことにより、パターン位相差板が得られる。長尺基材は、[2.パターン位相差板の第一の製造方法]と同様にして剥がしてもよい(図10参照)。
【0175】
本例の製造方法においても、得られるパターン位相差板のパターン位相差フィルム層の各領域の真直性は高くなっており、このような状態は、パターン位相差板に張力をかけていないときでも維持される。
また、パターン位相差板に張力をかけていないときでも、パターン位相差板の反りを防止できる。
【0176】
〔3−11.その他の工程〕
必要に応じて、上述した工程以外の工程を行うようにしてもよい。
例えば、[2.パターン位相差板の第一の製造方法]と同様の工程を行ってもよい。
【0177】
[4.液晶表示装置の製造方法]
液晶表示装置の製造方法では、ブラックマトリックスを有する液晶パネルと、上述した本発明のパターン位相差板とを、パターン位相差板のパターン位相差フィルム層の2種類以上の領域のパターン境界線と液晶パネルのブラックマトリックスとの相対的な位置関係とを位置合わせし、貼り合わせる工程を行う。本発明のパターン位相差板は、張力をかけなくてもパターン位相差フィルム層の各領域の真直性に優れ、且つ、反らないので、液晶パネルとの位置合わせを精度良く行うことが容易である。また通常は、パターン位相差板は、液晶パネルの視認側の面に貼り合わせるようにする。
【0178】
通常、この製造方法では、
I.パターン位相差板を連続的に繰り出す工程(A)と、
II.前記パターン位相差板と液晶パネルとを対向させた状態で、これらを観察し、パターン位相差板のパターン位相差フィルム層の各領域のパターン境界線と、液晶パネルのブラックマトリックスとの相対的な位置関係を位置合わせする工程(B)と、
III.パターン位相差板と液晶パネルとを接着層を介して貼り合わせる工程(C)と
を行う。
【0179】
〔4−1.工程(A)〕
工程(A)では、パターン位相差板を連続的に繰り出す工程(A)を含む。かかる連続的な繰り出しは、通常、長尺のパターン位相差板、又はパターン位相差板とそれを支持する支持基材との複合フィルムを製造し、これを直接繰り出すか、または一旦巻回してロールとし、このロールから使用に際してパターン位相差板を繰り出すことにより行う。
【0180】
支持基材が後の工程における操作の妨げとならない場合は、パターン位相差板を、複合フィルムのまま繰り出し、後の工程に供してもよい。一方、支持基材が後の工程における操作の妨げとなる場合は、複合フィルムから支持基材を剥離して、パターン位相差板のみを繰り出し、後の工程に供してもよい。具体的には例えば、支持基材が透明でない場合、又は透明ではあるがレターデーションを有している場合は、位置決めの際に支持基材を透過しての観察が困難となる可能性がある。この場合、複合フィルムから支持基材を剥離し、パターン位相差板のみを後の工程(工程(B)等)に供してもよい。具体的には、支持基材が50nm以上のレターデーションを有する場合、このように後の工程に先立ち支持基材を剥離することが好ましい。
【0181】
このように長尺のパターン位相差板を用いた操作は、インラインで連続的に行うことができ、枚様処理で発生しやすいフィルムへのシワ、折れの発生を抑制し、製造効率を高めることができる。但し、長尺のパターン位相差板は、インラインでの製造工程において、工程(B)に供される前に切断されてもよい。
【0182】
パターン位相差板に、例えば偏光板など、必要に応じて任意の層を設けてもよい。
【0183】
工程(A)の終了後、工程(B)及び(C)に先立ち、前記パターン位相差板又は液晶パネルのどちらか一方又は両方の面上に、工程(C)での貼り合わせのための接着層を、予め設けることがこのましい。これにより、その後の貼り合わせの工程(C)を円滑に行うことができる。
【0184】
〔4−2.工程(B)〕
工程(B)では、パターン位相差板と、ブラックマトリックスを有する液晶パネルとを対向させた状態で、これらを観察し、パターン位相差板のパターン位相差フィルム相のパターン境界線と、液晶パネルのブラックマトリックスとの相対的な位置関係の位置合わせを行なう。
【0185】
液晶パネルとしては、既知の種々の表示モードの液晶パネルを用いることができる。例えばツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、バーティカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーティカルアラインメント(MVA)モード、インプレーンスイッチング(IPS)モード、オプティカリーコンペンセイテッドバイリフジエンス(OCB)モードなどの表示モードによるものとすることができる。
【0186】
パターン位相差板と液晶パネルとを対向させる際、液晶パネルの向きは、その表示面(液晶表示装置とした際に観察者に対面する側の面)がパターン位相差板と対面する向きとしてもよい。かかる向きとすることにより、立体画像表示装置とするのに適した液晶表示装置を容易に製造することができる。
一方、パターン位相差板の向きは、パターン位相差フィルム層側の面及び基材フィルム側の面のうち、どちらが液晶パネルに対面する向きとしてもよい。パターン位相差板が、支持基材と組み合わせて複合フィルムとして繰り出される場合、通常は、かかる複合フィルムの、パターン位相差板側の面が液晶パネルに対面する向きとする。
【0187】
パターン境界線とブラックマトリックスの相対的な位置関係とは、液晶パネルの表示面に垂直な方向から観察した場合における、これらの相対的な位置関係である。以下において、このような位置関係を、単に「XY平面上における」位置関係という場合がある。かかる位置合わせは、具体的には、液晶パネルの表示面に垂直な方向から観察した場合において、パターン境界線が、ブラックマトリックス上に位置するような位置合わせとしてもよい。より具体的には、表示面領域内に位置するパターン境界線が、ブラックマトリックスの、液晶パネル中の複数の組の画素の各組を分ける部分上に位置するような位置合わせとしてもよい。ここで表示面領域とは、表示面に垂直な方向から観察した場合における、液晶パネルの画素が配置されている領域を意味する。
【0188】
図17は、パターン境界線とブラックマトリックスの相対的な位置関係の例を概略的に示す上面図である。図17の例において、液晶パネル440は、パッシブ型の立体画像表示装置用の液晶パネルである。液晶パネル440は、2組の画素群、即ち右目で観察されるための画素群及び左目で観察されるための画素群を有している。画素R、画素G及び画素Bは2の画素群のうちの第1の画素群を構成し、画素R、画素G及び画素Bは第2の画素群を構成している。各画素群の画素は、図中座標軸X方向に整列し、第1の画素群の画素の列441及び第2の画素群の画素の列442を構成している。画素の列441及び442は、座標軸Y方向において、交互に配列されている。したがって、第1の画素群及び第2の画素群は、ブラックマトリックスの座標軸X方向に延長する部分445により分けられている。この例において、パターン位相差板は、パターン位相差フィルム層410の領域411及び412のパターン境界線415が、ブラックマトリックスの部分445上に位置するよう位置合わせされている。
【0189】
このように、矩形の表示面の一辺に平行な方向に沿って各画素群における画素が整列している態様において、長尺方向に平行なパターン境界線を有するパターン位相差板を用いると、位置合わせの精度が向上する。また、これに加えて、長尺のパターン位相差板の長尺方向に平行及び垂直な線に沿ってパターン位相差板を切断して切り出すことができ、パターン位相差板の利用効率が向上する。
【0190】
工程(B)において、パターン位相差フィルム層のパターン境界線及びブラックマトリックスの相対的な位置は、カメラ及び光源を含む装置を用いて観察してもよい。より具体的には、カメラ及び光源に加え、これらの一方又は両方に備えられた円偏光板を含む装置により観察してもよい。
【0191】
パターン位相差フィルム層のパターン境界線及びブラックマトリックスの相対的な位置の観察の例を、図18を参照して説明する。図18は、液晶パネル及びその他の層の観察の態様の例を概略的に示す斜視図である。この例では、パターン位相差フィルム層410、基材フィルム420、偏光板430、及び液晶パネル440が配置された状態において、液晶パネル440及びパターン位相差フィルム層410上のパターンを観察装置490により観察している。矢印A411〜A413は、観察の際の光路を示している。図18においては、図示のため、光路は斜めに示されているが、実際には、カメラ492に向かう光路は、実質的に液晶パネル440と垂直としてもよい。
【0192】
図18においては、パターン位相差フィルム層410、基材フィルム420、偏光板430、及び液晶パネル440は、図示のため離隔して示されているが、これらのうち一部又は全部は実際の態様においては接触した状態で工程(B)に供されうる。具体的には、パターン位相差フィルム層410及び基材フィルム420は、通常、パターン位相差板に含まれる部材として接着層(図18では図示せず)を介して貼り合わされた状態で工程(B)に供される。また、偏光板430は、直接又は必要に応じて接着層(図18では図示せず)を介して、基材フィルム420又は液晶パネル440に貼り合わされた状態で工程(B)に供されてもよい。接着層を形成する接着剤としては、基材フィルムとパターン位相差フィルム層とを貼り合わせる際に用いた接着剤と同様のものを用いてもよい。
【0193】
この例において、偏光板430は座標軸Y方向に透過軸を有する。基材フィルム420は偏光板430の透過軸と45°の角度をなす方向に遅相軸を有する1/4波長板である。パターン位相差フィルム層410は、図2を参照して説明した通り、1/2波長板として機能する異方性領域411と、等方性領域412とを有する。観察装置490は、光源491、カメラ492、及びカメラ492と観察対象との間に着脱可能に設けられた観察用の円偏光板493を含む。円偏光板493は左円偏光及び右円偏光のうち、一方を透過し他方を吸収または反射する機能を有する。
【0194】
光源491から液晶パネル440に到達した光(矢印A411)は、偏光板430、基材フィルム420及びパターン位相差フィルム層410を通って出射する。ここで、偏光板430は座標軸Y方向に透過軸を有し、且つ基材フィルム420は偏光板430の透過軸と45°の角度をなす方向に遅相軸を有する1/4波長板であるため、基材フィルム420から出射する光は、円偏光となる。当該円偏光がパターン位相差フィルム層410を透過する際、等方性領域412に入射した光は、入射した光と同じ回転方向の円偏光として出射する。一方、1/2波長板として機能する領域411に入射した光は、入射した光と反対の回転方向の円偏光として出射する。これをさらに、観察用の円偏光板493に通すと、かかる2種類の円偏光のうち一方(矢印A412)は透過し、他方(矢印A413)は吸収または反射される。したがって、2種類の円偏光のうち一方のみを観察することができる。したがって、円偏光板493を介した状態で、且つカメラ492をパターン位相差フィルム層410の表面に合焦した状態で観察を行うことにより、パターン位相差フィルム層410のパターン境界線を観察することができる。
【0195】
一方、カメラ492を液晶パネル440内部に配置されたブラックマトリックスの表面に合焦した状態で観察することにより、ブラックマトリックスを観察することができる。ここで、円偏光板493は装着したまま観察することもできるが、取り外した状態で観察したほうが、より鮮明で良好な観察を行うことができる。
【0196】
位置合わせの具体的な手順は、特に限定されないが、パターン位相差板及び液晶パネルのうち一方を固定し、他方を動かすことにより行ってもよい。より具体的には例えば、最初にパターン位相差板におけるパターン境界線を観察して、その位置をカメラに接続した記憶装置にて記憶し、その後液晶パネルのブラックマトリックスを観察し、記憶されたパターン境界線の位置と対比し、相対的な位置関係を把握してもよい。その結果、所望の位置からずれていた場合、相対的に位置を動かすことにより、所望の位置に調節できる。上記の如く先にパターン位相差板を観察し、その後液晶パネルを観察した場合は、パターン位相差板を固定した状態で、液晶パネルの観察を続け、同時に、記憶されているパターン境界線とブラックマトリックスが所望の状態に位置合わせされるよう液晶パネルを動かすことにより、効率的な位置合わせを行うことができる。
【0197】
位置合わせに際して観察する箇所は、特に限定されないが、パターン位相差板及び液晶パネル上の2点以上の観察点としてもよい。好ましくは、矩形の液晶パネルの辺に近い2点以上の観察点で観察を行いうる。具体的には、矩形の液晶パネルの四隅のうち2以上の隅の近傍の観察点で観察を行ってもよく、あるいは対向する2辺の中点である2つの観察点で観察を行ってもよい。好ましくは、四隅の4つの観察点で観察を行ってもよく、あるいは対向する2辺の中点および2隅の計4つの観察点で観察を行ってもよい。観察点の視野は、好ましくは2mm角以上、より好ましくは10mm角以上、上限値は好ましくは100mm角以下、より好ましくは50mm角以下である。観察する対象は、パターン境界線及びブラックマトリックスそのものであってもよいが、これらのうちのいずれか一方又は両方に代えて、これらの位置に対応した位置合わせ用マークを観察してもよい。例えば、液晶パネルの、表示面領域外に、ブラックマトリックスの位置に対応した位置合わせ用マークを設け、ブラックマトリックスそのものに代えて当該マークを観察することにより位置合わせを行ってもよい。また、パターン位相差フィルム層の、表示面領域外に対応する領域に、パターン境界線の位置に対応した位置合わせ用マークを設け、パターン境界線そのものに代えて当該マークを観察することにより位置合わせを行ってもよい。液晶パネルに位置合わせ用マークを設ける方法は、ブラックマトリックスの形成と同時に形成することが好ましいが、これに限られず液晶パネルの調製の任意の段階で適切な方法により設けてもよい。また、パターン位相差板の位置合わせ用マークについては、パターンが表示面領域外にはみ出ていれば、表示面領域外のパターン境界線を、表示面領域外の位置合わせマークとして用いうるが、これに限られずパターン位相差板の調製の任意の段階で適切な方法により設けてもよい。
【0198】
工程(B)においては、パターン位相差板に、好ましくは5N/1600mm以上、より好ましくは10N/1600mm以上、特に好ましくは50N/1600mm以上の張力をかけた状態で、パターン位相差板のパターン境界線と液晶パネルのブラックマトリックスとの相対的な位置関係を位置合わせすることが好ましい。この際、張力は、長尺方向にかけることが好ましい。これにより、パターン位相差板のシワを抑制して、精密な位置合わせを更に容易に行うことが可能となる。特に、本発明のパターン位相差板は張力によってパターン位相差フィルム層の各領域の真直性を高める必要がないので、このようにシワを抑制できる程度に小さい張力をかけるだけで位置合わせの精度を効果的に高めることができることは、貼り合せ後にパターン位相差板の応力緩和によって液晶パネルが反ることを防止するためには有用である。
【0199】
前記のように、かけられた張力に起因してパターン位相差板に生じる応力の緩和によって、貼り合わせ後の液晶パネルが反ることを防止するには、パターン位相差板にかける張力は小さいことが好ましい。パターン位相差板にかける張力の具体的な大きさは、好ましくは500N/1600mm以下、より好ましくは250N/1600mm以下、特に好ましくは100N/1600mm以下である。さらには、工程(B)をパターン位相差板に張力をかけて行い、その後工程(C)を行う場合は、工程(B)においてかけた張力をそのまま維持して工程(C)を行うことが好ましい。
【0200】
工程(B)において、パターン境界線とブラックマトリックスとの位置合わせは、パターン位相差板と液晶パネルとが、離隔した状態で行ってもよく、パターン位相差板と液晶パネルとが、接着層及び必要であればその他の任意の層を介して接触した状態で行ってもよい。さらには、パターン位相差板と液晶パネルとが離隔した状態で位置合わせを行い、さらにその後パターン位相差板と液晶パネルとが接触した状態でさらに位置合わせを行ってもよい。
【0201】
パターン位相差板と液晶パネルとが離隔した状態で位置合わせを行う場合において、パターン位相差板の液晶パネル側の面(またはパターン位相差板の液晶パネル側の面に任意の層が設けられている場合は当該任意の層の表面)と液晶パネルのパターン位相差板側の面(または液晶パネルのパターン位相差板側の面に任意の層が設けられている場合は当該任意の層の表面)との間隔は、偶発的な接触を防ぐのに十分遠い距離で、且つなるべく近い距離であることが好ましい。前記の間隔は、位置合わせの際に付加する張力、表示面領域の寸法、パターン位相差板の物性等により適宜定めうる。前記の間隔の具体的な大きさは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上であり、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。
【0202】
パターン位相差板と液晶パネルとが接着層等の層を介して接触した状態で位置合わせを行う場合において用いる接着層は、その厚み及び材質を適宜選択することにより、パターン位相差板と液晶パネルとが接触した状態で摺動しうる状態としてもよい。かかる摺動を行うことにより、パターン位相差板と液晶パネルとが接着層等の層を介して接触した状態で位置合わせを行うことができる。かかる摺動は、液晶パネルを適切なステージ上に固定し、一方パターン位相差板を吸着板等の適切な吸着装置に固定し、かかるステージと吸着装置との相対的な位置を動かすことにより行ってもよい。かかる摺動による工程(B)の後に工程(C)を行う場合は、工程(B)の終了後、パターン位相差板と液晶パネルとが接触した状態のまま圧接等の操作を行い工程(C)を行ってもよく、パターン位相差板を一旦液晶パネルから離隔させた後に、工程(C)を行ってもよい。
【0203】
パターン位相差板を吸着装置に固定して位置合わせを行う場合は、通常、パターン位相差板の表示面領域に相当する領域の全面が吸着されるため、表示面領域における観察を行うことが困難となり得る。したがって、パターン位相差板の外形(座標軸X及びY方向の寸法)を、液晶パネルの表示面領域より大きくし、表示面領域より外側において観察を行うことが、この場合特に好ましい。この場合、上で述べた、表示面領域外の位置合わせ用マークを適宜設けて、位置合わせを行ないうる。
【0204】
〔4−3.工程(C)〕
工程(C)では、パターン位相差板と液晶パネルとを、接着層を介して貼り合わせる。工程(C)は、通常、工程(B)の後に行う。
【0205】
工程(C)において、パターン位相差板と液晶パネルとの間には、接着層に加えて、必要に応じて任意の層が介在してもよい。例えば、1枚以上の偏光板を適宜介在させてもよい。偏光板を介在させる場合、偏光板は、工程(C)に先立ち、好ましくは工程(B)及び(C)の両方に先立ち、パターン位相差板又は液晶パネルに貼り合わせる。
【0206】
工程(C)において、パターン位相差板に張力をかけた状態で、パターン位相差板と液晶パネルとを貼り合わせることが好ましい。この際、張力は、長尺方向にかけることが好ましい。これにより、パターン位相差板のシワを抑制して、精密な位置合わせを更に容易に行うことが可能となる。この際の張力の大きさは、工程(B)で説明した張力の大きさと同様の範囲にすることが、工程(B)と同様の理由により、好ましい。さらに、パターン位相差板にかける張力によってパターン位相差フィルム層の各領域の真直性を向上させる必要がないので、張力をコントロールするための複雑な機構の無い簡素な枚様貼合機(例えば、後述する図29、図30参照)での貼り合せが可能となる。工程(A)において、パターン位相差板を、支持基材と組み合わせて複合フィルムとして繰り出し、それをそのまま工程(C)に供給した場合は、張力は、複合フィルムにかけるようにしてもよい。
【0207】
工程(C)における貼り合わせは、パターン位相差板及び前記液晶パネルを接着層等の層を介して接触させ、ニップロール等の適切な装置で挟むことにより行ってもよい。挟む際のニップ圧は、3MPa以下としてもよい。かかる低いニップ圧で挟むことにより、ニップロールの移動により接着層の厚みが不均一になる現象を低減することができる。また、ニップロールの移動により発生するパターン位相差板と接着層等との間のズリ応力によって、適切な貼り合わせ位置が不意にずれるのを防止することができる。
【0208】
ニップロールとしては、例えば、SUS製のコア表面にゴムを焼き付けたゴムロール、テフロン(登録商標)を焼き付けたテフロン(登録商標)ロール、SUS製ロールなどを用いてもよい。ゴムの材質としては、例えば、ニトリルブタジエンゴム、シリコンゴム、スチレンブタジエンゴムなどを好適に用いてもよい。
【0209】
ロール径は、通常10mm以上、好ましくは50mm以上であり、通常300mm以下、好ましくは200mm以下である。10mm以下では貼り合わせ時の圧力でロールの幅手でのたわみが発生しやすく、300mm以上では自重が大きく、貼り合わせ圧力の制御が困難となる。
ゴム硬度は、通常10度以上、好ましくは30度以上であり、通常100度以下、好ましくは90度以下である。10度未満では、貼り合わせ時に圧力が十分に負荷されない可能性があり、100度より大きいとゴム表面が貼り合わせるフィルムの表面に追随せず、泡噛みが起きやすくなる。
【0210】
〔4−4.他の工程〕
液晶表示装置を製造する際には、上に述べた工程以外に、任意の工程を行ってもよい。例えば、前記工程(B)及び(C)の後に、パターン位相差板又は前記液晶パネルに、引っ張り荷重をかけて、パターン境界線とブラックマトリックスの相対的な位置を調整する工程(D)を行ってもよい。
【0211】
工程(D)は、パターン位相差板又は前記液晶パネルのうち一方を固定し、他方に荷重をかけることにより行ってもよい。引っ張り荷重の大きさは、5N/1000mm以上としてもよい。引っ張り荷重の方向は、通常、液晶パネルの表示面と平行な面内の方向であって、位置のずれを低減しうる方向とする。かかる工程(D)を行うことにより、パターン境界線とブラックマトリックスとの相対的な位置を微調整することができる。例えば、工程(B)において精密に位置合わせをしたが工程(C)を行うときに位置がずれてしまった際の位置の微調整を行うことができる。
【0212】
前記工程(C)の後におけるパターン境界線とブラックマトリックスとの相対的な位置のずれは、前記工程(B)と同じ方法で観察することができる。このような観察と、工程(D)による位置の調整とを交互に繰り返し実施することで、位置の微小なずれを確実になくすことができる。
【0213】
他の任意の工程として、工程(B)及び(C)の後、接着層にエネルギー線を照射して、接着層を硬化させる工程(E)を行ってもよい。かかるエネルギー線としては、紫外線、可視光線、電子線等の、樹脂の硬化に用いうるエネルギー線を採用することができ、紫外線が特に好ましい。より具体的には、波長300nm〜400nmに発光波長を示す紫外線が好ましく、好ましい発光光源は、高圧水銀灯、及びメタルハライドランプである。
【0214】
工程(E)を行う場合、接着層の材料として、工程(E)を行うのに適した材料を選択することが好ましい。例えば、接着層が、工程(C)におけるニップ圧の付加による接着剤のパターン位相差板の端部からのはみ出しがなく、泡抜けが良好で、且つエネルギー線の照射により硬化して強い接着能を発現することができる材料であることが好ましい。具体的な接着力は、通常0.5N/25mm以上、好ましくは2N/25mm以上である。
【0215】
液晶表示装置は、液晶パネルの表示面側の偏光板(図18の例における偏光板430)に加えて、その反対側即ち液晶パネルの光源側の偏光板を有しうる。したがって、他の任意の工程として、このような光源側の偏光板を設ける工程を行ってもよい。当該工程は、液晶パネルの光源側の面に偏光板を、必要に応じて接着層を介して貼り合わせることにより行いうる。
【0216】
光源側の偏光板の貼り合わせは、何時行ってもよいが、工程(B)及び(C)の後に行うことが好ましい。また、製造方法が工程(D)、工程(E)又はこれらの両方を含む場合は、それらの工程の後に行うことが好ましい。その理由は以下の通りである。即ち、光源及びカメラを用いて工程(B)の位置合わせを行う際に、光源側の偏光板が既に設けられていると、入射した光が反射する際に、表示面側の偏光板によって吸収され、ブラックマトリックスの観察が困難となる。一方、光源側の偏光板が設けられる前に工程(B)及びその他の位置合わせの工程を行うと、位置合わせにおけるブラックマトリックスの観察が容易となる。この利点は、液晶パネルとしてノーマリーブラック型のパネルを用いている場合、特に顕著となる。
【0217】
さらに、必要に応じて、上記に述べたものの他の任意の工程を適宜行うことにより、液晶表示装置を製造してもよい。例えば、上記の工程により得られた、液晶パネル及びパターン位相差板を含む積層体に、さらに輝度および輝度均斉度を向上させるための追加の光学部材を適宜配置する工程を行ってもよい。このような追加の光学部材としては、例えば反射防止フィルム、ギラツキ防止フィルム、アンチグレアフィルム、ハードコートフィルムおよびプリズムシートを挙げることができる。これらの追加の光学部材は、例えば、上記工程により設けたパターン位相差板よりも視認側に設けてもよい。追加の光学部材の基材は、耐手脂性に優れたフィルムであることが好ましく、例えば、トリアセチルセルロース樹脂、変性アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。光学部材の厚みは、好ましくは80μm以上、より好ましくは150μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である。また例えば、液晶表示装置を構成するための筐体、通電装置等を適宜配設してもよい。
【0218】
〔4−5.製造方法の具体的実施形態;第1の実施形態〕
次に、本発明の製造方法を実施するより具体的な実施形態の一例を説明する。なお、以下に示す実施形態に係る図面においては、方向の関係を示すために座標軸XYZからなる座標を示し、水平面をXY平面とし、垂直面を座標軸Z方向とする。また、別に断らない限り、液晶パネルの表示面を水平(即ちXY平面に平行)且つ上向きにし、パターン位相差板の長尺方向を座標軸X方向とした状態で図示及び説明を行う。
図19は、液晶表示装置を製造するための一連の装置及びその操作の一例を概略的に示す立面図である。図19において、液晶パネル440は、図17を参照して説明した通りの、2画素群の画素の列を有している。
【0219】
液晶パネル440及び偏光板430の積層物は、液晶パネル440の表示面が上側に面するよう、搬送装置上に水平に載置され、コンベヤにより搬送される。搬送される過程で、まず塗布装置461により、接着剤が塗布され、接着層462が形成される。その後、液晶パネル440を含む積層物は、さらに矢印A1方向に搬送され、ステージ451上に載置される。液晶パネル440はさらに、ステージ451上に固定され、これにより、液晶パネル440の位置を、ステージ451を動かすことで調整しうる状態となる。
【0220】
一方、ロール481から、パターン位相差板408と支持基材409とを組み合わせた複合フィルム482が、矢印A2方向に繰り出される(工程(A))。ここで、複合フィルム482は、(支持基材)−(パターン位相差フィルム層)−(接着層)−(基材フィルム)の層構成を有するフィルムであり、複合フィルム482が有するパターン位相差フィルム層は、図2を参照して説明した通りの領域からなるパターンを有する。この例において、支持基材409としては、位置合わせの工程でのパターン位相差板408のパターンの観察を妨げないものが用いられる。このような支持基材409の例としては、面内レターデーションが10nm以下のものが挙げられる。また、接着層としては、紫外線の照射を受けることにより硬化し、最終的な接着能を発揮するものが用いられる。
【0221】
繰り出された複合フィルム482には、カッター刃452で支持基材409以外の層に切り込みを入れる。これにより、パターン位相差板408が幅方向に切断され、液晶パネル440の表示面領域に適合した寸法とされる。その後、複合フィルム482がさらに搬送され、ステージ451の上方に繰り出される(工程(A))。ここで、複合フィルム482は、支持基材側の面が上側となるよう繰り出される。この例では、複合フィルム482は、ロール483及び484及びその他の適切な手段(ニップロール、サクションロール、ダンサーロールなど、不図示)により、長尺方向(この例では座標軸X方向)に適切な張力をかけられ、そのままその後の工程に供される。
【0222】
次に、複合フィルム482中のパターン境界線と、液晶パネル440内のブラックマトリックスとの相対的な位置関係を位置合わせする(工程(B))。位置合わせは、光源491、カメラ492及び観察用の円偏光板(図19では図示せず)を含む観察装置により、複合フィルム482及び液晶パネル440を観察し、ステージ451を移動させることにより行う。ステージ451の移動は、座標軸X方向の移動、座標軸Y方向の移動、XY平面内での回転のうちの1以上により行うことができる。
この例では、位置合わせは、パターン位相差板408と、液晶パネル440とが離隔した状態で行われる。
【0223】
この例において、XY平面上における位置合わせのための観察をする位置は、表示面領域の端部とする。但し、この例では液晶パネル440とパターン位相差板408とが重なる任意の点において観察が可能であるので、必要に応じて、表示面領域の中心近傍等、任意の点において容易に観察を行ってもよい。また、観察する位置の数は、正確な位置合わせを行う観点から、通常2点以上とする。正確な位置合わせと工程の簡略化を両立する観点からは、通常、矩形の表示面領域の四隅において位置合わせを行うことが好ましい。
【0224】
図20は、XY平面上の位置合わせを行う点の好ましい例を概略的に示す平面図である。図20において、ステージ451上の液晶パネル440の内側に規定された表示面領域446の四隅に、観察点494A〜494Dが規定されている。これらの観察点のうち、2点以上、好ましくは4点において観察を行うことにより、正確かつ効率的な位置合わせを行うことができる。2点のみで観察を行う場合、画素の列に平行又は垂直な方向に並んだ2点において観察を行うことが好ましい。この例では、矩形の表示面領域446の一辺に沿った2点(例えば、点494Aと494B、又は点494Aと494C等)において観察を行うことが好ましい。
【0225】
この例では、パターン境界線とブラックマトリックスとを直接観察する。そのため、観察点は表示面領域内に収める。しかしながら、パターン位相差板及び液晶パネルの表示面領域外に、位置合わせ用のマークを予め設けていれば、観察点を表示面領域外とし、当該マークにより位置合わせをすることもできる。
【0226】
位置合わせ用マークとしては、カメラで検出して位置合わせをするのに好適な形状を適宜選択してもよい。このような形状の具体例としては、三角形、矩形、もしくはその他の多角形形状であってもよく、また、円形や楕円形であってもよく、3本のラインを平行配置した川の字形状、2本のラインが交差する十字形状のような複数の要素で構成するマークであってもよい。
【0227】
位置合わせが終了した後、光源491、カメラ492は上昇し、ニップロールが複合フィルム482上に配置される。さらに複合フィルム482にかけた張力を維持した状態で、ステージ451を垂直に上昇させることにより、パターン位相差板408と液晶パネル440とを、偏光板430及び接着層462を介して接触させる。この時点で、必要に応じて、パターン境界線とブラックマトリックスとを再度観察し、接触の操作によるずれが生じていれば、さらにもう一度位置合わせを行うようにしてもよい。その後、ニップロール485を用いて、複合フィルム482が液晶パネル440側に圧接するよう圧力を加え、パターン位相差板408と液晶パネル440との貼り合わせを達成することができる(工程(C))。
【0228】
ニップロール485を用いた貼り合わせのより具体的な態様を、図21に示す。図21に示す通り、ニップロール485を、ステージ451側に付勢しながら、矢印A3方向に転がすことにより、ニップロール485及びステージ451で、複合フィルム482を、液晶パネル440、偏光板430及び接着層462からなる積層体に圧接し、貼り合わせを達成することができる。ここで、複合フィルム482は、支持基材409と、パターン位相差板408とを含む。パターン位相差板408は、パターン位相差フィルム層410、接着層463、及び基材フィルム420を含む。
【0229】
続いて、複合フィルム482又は液晶パネル440に、必要に応じて引っ張り荷重をかけて、パターン境界線とブラックマトリックスの相対的な位置を調整する(工程(D))。かかる調整のための引っ張り荷重は、例えばXY平面内の任意の方向にかけてもよい。調整のための引っ張り荷重は、複合フィルム482側にかけてもよいが、複合フィルム482側に工程(B)よりかけていた張力はそのままとし、ステージ451側に荷重をかけて調整を行ってもよい。
【0230】
続いて、複合フィルム482にかけた張力を維持した状態で、接着層462に紫外線を照射し、複合フィルム482の固定を行う(工程(E))。かかる固定は、パターン位相差板408の面内の一部の箇所において行ってもよく、全面において行ってもよい。面内の一部において行う場合、図22に示すように、ランプ501により複合フィルム482の端部に紫外線の照射を行ってもよい。より具体的には、図23に示すように、液晶パネル440の面内であって且つ表示面領域446の四隅より外側にある点である点504A〜504Dの4点において紫外線の照射を行い、四隅において固定をしてもよい。かかる位置の固定により、迅速であり且つ表示面の品質を損ねない固定を達成することができる。一方、全面において固定を行う場合は、図24に示すように、全面への紫外線の照射が可能なランプ502を用いて固定を達成してもよい。
【0231】
固定が終了した後、複合フィルム482を支持する装置を上昇させるか、ステージ451を下降させるか、又はこれらの両方により、図25に示す通り、支持基材409を、パターン位相差板408から剥離させることができる。ここで、パターン位相差板408は、パターン位相差フィルム層410、接着層463、及び基材フィルム420を含む。その後、液晶パネル440、パターン位相差板408及びその他の層が積層された積層体を、図19の矢印A4で示す方向にさらに搬送し、必要に応じてランプ503にて接着層462の全体をさらに硬化させてもよい。一方、剥離した支持基材409は巻き取りロール486で巻き取りうる。これにより、多数の液晶表示装置の連続的な製造において、次に貼り合わせに供する複合フィルム482をステージ451上に円滑に搬送させることができる。
【0232】
〔4−6.製造方法の具体的実施形態;第2の実施形態〕
次に、本発明の製造方法を実施する具体的な実施形態の別の例を説明する。
図26は、液晶表示装置を製造するための一連の装置及びその操作の別の一例を概略的に示す立面図である。図26において、液晶パネル540は、図17を参照して説明した通りの、2画素群の画素の列を有している。
【0233】
液晶パネル540は、その表示面領域外に、ブラックマトリックスの位置に対応した位置合わせマーク(不図示)を有している。
液晶パネル540及び偏光板430の積層物は、液晶パネル540の表示面が上側に面するよう、搬送装置上に水平に載置され、コンベヤにより搬送される。搬送される過程で、まず塗布装置461により、接着剤が塗布され、接着層462が形成される。その後、液晶パネル540を含む積層物は、さらに矢印A1方向に搬送される。
【0234】
一方、ロール581から、パターン位相差板と支持基材とを組み合わせた複合フィルム582が、矢印A2方向に繰り出される。ここで、複合フィルム582は、(支持基材)−(パターン位相差フィルム層)−(接着層)−(基材フィルム)の層構成を有するフィルムであり、複合フィルム582が有するパターン位相差フィルム層は、図2を参照して説明した通りの領域からなるパターンを有する。この例において、支持基材409は、位置合わせに先立って剥離するので、必ずしも等方性の材料である必要は無い(即ち、面内レターデーションが50nmを超える材料であってもよい)。また、接着層としては、紫外線の照射を受けることにより硬化し、最終的な接着能を発揮するものが用いられる。繰り出された複合フィルム582は、ロール583及び584の間を通過した後、支持基材409がパターン位相差板510から剥離され、支持基材409のみが巻き取りロール585方向に導かれる。一方パターン位相差板510は、矢印A5方向に導かれる。
【0235】
ロール586を通過する時点で、パターン位相差板510は、搬送されて来た液晶パネル540を含む積層物と合流し、矢印A6方向に導かれ、図27に示す通り、2組のロール587U及び587L並びに588U及び588Lに把持された状態で、これらの間を通過する。ロール587L及び588Lは上下に動くことができ且つそれぞれ上方向に付勢されて設けられており、それにより積層物を把持することができる。これにより、パターン位相差板510は偏光板430上に、接着層462を介して接した状態で載置される。但し接着層462は未だ紫外線の照射を受けておらず、また貼り合わせが達成される程度の高い圧力も付されていないので、パターン位相差板510は偏光板430上に固定されてはおらず、XY面に平行な方向の力を受ければそれに応答して摺動可能であり、且つ必要に応じて剥離しうる状態となっている。
【0236】
液晶パネル540及びパターン位相差板510を含む積層体は、さらに、図28に示すように、矢印A7方向に搬送され、パターン位相差板510が、カッター刃554で所望の寸法に切断され、さらに搬送され、ステージ551及び吸着板552の間に導かれる。図29に示される通り、液晶パネル540及びパターン位相差板510を含む積層体はステージ551及び吸着板552の間に載置され、これらにより挟まれる。液晶パネル540はさらに、ステージ551上に固定され、これにより、液晶パネル540の位置を、ステージ551を動かすことで調整しうる状態となる。吸着板552は、その下側の面に適切な吸着装置(図示せず)を備え、これによりパターン位相差板510の上面を吸着する。パターン位相差板510を吸着した状態で、吸着板552を、ステージ551に対してXY平面に平行な方向、回転方向に摺動させることにより、位置合わせを行うことができる(工程(B))。
【0237】
ここで、吸着板552は、パターン位相差板の表示面領域全域を含む領域を吸着することが、得られる液晶表示装置の表示面の品質を向上させる観点から好ましい。しかしながら、そのような吸着を行った場合、位置合わせのための観察に際して、表示面領域内のパターン境界線及びブラックマトリックスは、吸着板552に遮られて直接観察できなくなる。したがってこの例においては、液晶パネル540の、表示面領域外の位置に設けられた位置合わせ用マークと、パターン位相差板510の、表示面領域外のパターン境界線との相対的な位置関係を観察することにより、位置関係の観察を行ってもよい。あるいは、吸着板552の光源491の光が照射される部分に直径10mm程度の観察穴を設けることで位置関係の観察を行ってもよい。このような観察は、吸着板552の周辺の領域に設けられた光源491、カメラ492及び観察用の円偏光板(図29では図示せず)により行うことができる。
【0238】
位置合わせが終了した後、光源491、カメラ492は上昇し、ニップロール589がパターン位相差板510上に配置される。図30に示す通り、吸着板552を一旦持ち上げ、ニップロール589を矢印A8方向に転がすことにより、パターン位相差板510に張力を加えながら、パターン位相差板510を接着層462に圧力を加えた状態で接触させる。これにより、パターン位相差板510と液晶パネル540とを、接着層462を介して貼り合わせることができる(工程(C))。
【0239】
貼り合わせが終了した後、図31に示す通り、液晶パネル540及びパターン位相差板510を含む積層体を、矢印A8方向に搬送し、さらにその際にランプ503を用いて紫外線の照射を行い、積層体を搬送しながら接着層462を硬化させることができる。
【0240】
〔4−7.製造方法の具体的実施形態;第3の実施形態〕
次に、本発明の製造方法を実施する具体的な実施形態のさらに別の例を説明する。
図32は、液晶表示装置を製造するための一連の装置及びその操作のさらに別の一例を概略的に示す立面図である。この実施形態は、複合フィルム582から支持基材409が剥離されたパターン位相差板510が液晶パネル540を含む積層物と合流する前に、搬送方向A5の方向に搬送される途中で保護層を貼りあわせた点で、第2の実施形態と異なっている。ここで保護層は、例えば、〔1−4.その他の層〕の項で説明したものを用いてもよい。
【0241】
ロール591から、ポリマーフィルムとハードコート層とを組み合わせた保護層592と、それを保護するための保護フィルム593が積層した状態の複層保護フィルム590が繰り出される。この例においては、保護層592は、ポリマーフィルムの一方の面にハードコート層を備え、他方の面に接着層を備えたフィルムである。したがって、複層保護フィルム590は、(ハードコート層)−(ポリマーフィルム)−(接着層)−(保護フィルム)の層構成を有する。また、保護フィルム593は、複合保護フィルム590がロールの状態とされている際に接着層を保護する機能を有する。さらに、接着層としては、通常、粘着剤により形成された粘着層を用いる。
【0242】
繰り出された複層保護フィルム590は、ロール594及び595の間を通過した後、保護フィルム593が保護層592から剥離され、保護フィルム593のみが巻き取りロール596方向に導かれる。一方、保護層592は、矢印A9方向に導かれる。
【0243】
保護層592は、ロール597及びロール598の間を通る際に、支持基材409を剥離されたパターン位相差板510に合流する。ロール597及びロール598間で挟圧されることにより、保護層592はパターン位相差板510に貼り合わせられる。これにより、(ハードコート層)−(ポリマーフィルム)−(接着層)−(パターン位相差フィルム層)−(接着層)−(基材フィルム)の層構成を有するフィルム599が得られる。このフィルム599はロール586へと導かれて、その後、第2の実施形態のパターン位相差板510と同様の要領で、液晶パネル540を含む積層物との位置合わせ及び貼り合せが行われる。
このように、パターン位相差板に保護層等の任意の層を貼り合わせる工程と、パターン位相差板と液晶パネルとの位置合わせ及び貼り合せを、同一の貼合装置において実施することも可能である。
【0244】
〔4−8.製造方法の具体的実施形態;第4の実施形態〕
次に、本発明の製造方法を実施する具体的な実施形態のさらに別の例を説明する。
図33は、液晶表示装置を製造するための一連の装置及びその操作のさらに別の一例を概略的に示す立面図である。この実施形態は、液晶パネル440及び偏光板430の積層物上に接着層462を設けず、代わりに、複合フィルム682の偏光板430に接する面上に接着層を設けた点で、第1の実施形態と異なっている。
【0245】
図33において、液晶パネル440及び偏光板430は、第1の実施形態において用いたものと同様であるが、接着層の塗布を経ずに、ステージ451上に搬送され載置される。
【0246】
一方、ロール681から、パターン位相差板408と支持基材409とを組み合わせた複合フィルム682と、それを保護するための保護フィルム689が積層した状態の複合フィルム690が、矢印A2方向に繰り出される(工程(A))。ここで、複合フィルム690は、(支持基材)−(パターン位相差フィルム層)−(接着層)−(基材フィルム)−(接着層)−(保護フィルム)の層構成を有するフィルムであり、保護フィルムは、複合フィルム690がロールの状態とされている際に接着層を保護する機能を有する。複合フィルム690が有するパターン位相差フィルム層は、図2を参照して説明した通りの領域からなるパターンを有する。この例において、支持基材409としては、位置合わせの工程でのパターン位相差板408のパターンの観察を妨げないものが用いられる。このような支持基材409としては、例えば、面内レターデーションが50nm以下のものが挙げられる。また、接着層としては、紫外線の照射を受けることにより硬化し、最終的な接着能を発揮するものを用いてもよい。
【0247】
繰り出された複合フィルム690は、ロール691に接する時点で、複合フィルム682と、保護フィルム689とに分離される。複合フィルム682は、複合フィルム690から保護フィルム689を剥離した残余であるので、(支持基材)−(パターン位相差フィルム層)−(接着層)−(基材フィルム)−(接着層)の層構成を有する。複合フィルム682には、カッター刃452で支持基材409以外の層に切り込みを入れる。これにより、パターン位相差板408及び接着層が幅方向に切断され、液晶パネル440の表示面領域に適合した寸法とされる。その後、複合フィルム682がさらに搬送され、ステージ451の上方に繰り出される(工程(A))。ここで、複合フィルム682は、支持基材409側の面が上側となるよう繰り出される。この例では、複合フィルム682は、ロール483及び484及びその他の適切な手段(ニップロール、サクションロール、ダンサーロールなど、不図示)により、長尺方向(この例では座標軸X方向)に適切な張力をかけられ、そのままその後の工程に供される。
【0248】
次に、複合フィルム682中のパターン境界線と、液晶パネル440内のブラックマトリックスとの相対的な位置関係を位置合わせする(工程(B))。位置合わせは、第1の実施形態と同様の操作で行いうる。
【0249】
位置合わせが終了した後、光源491、カメラ492は上昇し、ニップロール485が複合フィルム682上に配置される。さらに複合フィルム682にかけた張力を維持した状態で、ステージ451を垂直に上昇させることにより、パターン位相差板408と液晶パネル440とを、偏光板430及び接着層を介して接触させる。この時点で、必要に応じて、パターン境界線とブラックマトリックスとを再度観察し、接触の操作によるずれが生じていれば、さらにもう一度位置合わせを行うことができる。その後、ニップロール485を用いて、複合フィルム682が液晶パネル440側に圧接するよう圧力を加え、パターン位相差板と液晶パネルとの貼り合わせを達成することができる(工程(C))。
【0250】
ニップロール485を用いた貼り合わせのより具体的な態様を、図34に示す。図34に示す通り、ニップロール485を、ステージ451側に付勢しながら、矢印A3方向に転がすことにより、ニップロール485及びステージ451で、複合フィルム682を、液晶パネル440及び偏光板430からなる積層体に圧接し、貼り合わせを達成することができる。ここで、複合フィルム682は、支持基材409と、パターン位相差板408と、接着層662とを含む。パターン位相差板408は、パターン位相差フィルム層410、接着層463、及び基材フィルム420を含む。
【0251】
続いて、複合フィルム682又は液晶パネル440に、必要に応じて引っ張り荷重をかけて、パターン境界線とブラックマトリックスの相対的な位置を調整し(工程(D))、その後複合フィルム682の固定を行う(工程(E))。位置の調整及び固定は、第1の実施形態と同様の操作で行うことができる。
【0252】
固定が終了した後、複合フィルム682を支持する装置を上昇させるか、ステージ451を下降させるか、又はこれらの両方により、図35に示す通り、支持基材409を、パターン位相差板408から剥離させることができる。ここでパターン位相差板408は、パターン位相差フィルム層410、接着層463、及び基材フィルム420を含む。その後、液晶パネル440、パターン位相差板408、接着層662及びその他の層が積層された積層体を、図33の矢印A4で示す方向にさらに搬送し、必要に応じてランプ503にて接着層662の全体をさらに硬化させうる。一方、剥離した支持基材409は巻き取りロール486で巻き取りうる。これにより、多数の液晶表示装置の連続的な製造において、次に貼り合わせに供する複合フィルム682をステージ451上に円滑に搬送させることができる。
【0253】
[5.液晶表示装置の使用態様]
本発明の液晶表示装置は、パターン境界線と、ブラックマトリックスとが精密に配置されたものとしうる。例えば、表示装置の中央部分を、装置の使用に際して装置を観察する最適な方向(例えば、テレビ受像機であれば表示面に垂直な方向)から観察した場合において、表示面内中央部分のパターン境界線が、ブラックマトリックス上に位置するよう配置されたものとしうる。具体的には、表示面内中央部分を表示面に垂直な方向から観察した場合において、表示面内中央部分におけるパターン境界線の全長のうち、好ましくは95%以上、より好ましくは100%が、ブラックマトリックス上に位置するよう配置されたものとしうる。また、パターン境界線とブラックマトリックスとのずれが存在していても、かかるずれが50μm以内の範囲内のものとしうる。ここで、「表示面内中央部分」とは、表示面の中央の、2mm角以上50mm角以下の正方形の領域としうる。
【0254】
上述したようにして製造された液晶表示装置は、例えば、立体画像表示装置として用いうる。以下、立体画像表示装置として使用しうる液晶表示装置の具体的な例について図面を示して説明する。
【0255】
〔5−1.第一の例〕
図36は、立体画像表示装置として使用しうる液晶表示装置の例を概略的に示す分解上面図である。図36は、観察者が、液晶表示装置700の表示面に対して垂直な方向から、右目及び左目により映像を視認する態様を上側から観察した例を示している。液晶表示装置700は、図中左側に縦置きされている。すなわち、液晶表示装置700は、表示面が鉛直方向に平行となるよう置かれている。従って、図中右側から観察する観察者の観察方向は、水平方向となる。図36に示すように、液晶表示装置700は、液晶パネル710と、1/4波長板である位相差フィルム720と、パターン位相差フィルム層730とを、この順に備える。使用の態様において、液晶パネル710、位相差フィルム720及びパターン位相差フィルム層730は、通常は貼付された状態とされるが、図36では図示のためこれらを分解して示している。また、位相差フィルム720とパターン位相差フィルム層730との間には接着層が設けられるが、この接着層は大きな位相差を有さないので、画像表示に影響を与えないため、本例においては図示を省略する。
【0256】
液晶パネル710は、光源側から順に、直線偏光板である光源側偏光板711と、液晶セル712と、直線偏光板である視認側偏光板713とを備える。これらにより、液晶パネル710を透過した光は、直線偏光となって出射する。視認側偏光板713の透過軸は、矢印A713で示す通り鉛直方向に平行であり、したがって視認側偏光板713から出射する光の偏光方向も矢印A713で示される鉛直方向となる。
【0257】
液晶パネル710には、厚み方向から見てそれぞれ異なる位置に、右目用画像を表示する画素領域と左目用画像を表示する画素領域とが設定されている。これらの画素領域はいずれも水平方向に延在する帯状の領域となっている。また、右目用画像を表示する画素領域及び左目用画像を表示する画素領域は幅が一定の領域となっていて、それらの配置は、右目用画像を表示する画素領域と左目用画像を表示する画素領域とが鉛直方向において交互となるように並んだストライプ状の配置となっている。
【0258】
位相差フィルム720は、透過光に対して1/4波長板として機能しうるフィルムであって、面内に一様な位相差を有する。位相差フィルム720の遅相軸は、矢印A720で示す通り、視認側偏光板713の偏光透過軸に対して45°の角度をなす方向である。視認側偏光板713から出射した直線偏光は、この位相差フィルム720を透過することにより、矢印A740で示す回転方向を有する円偏光に変換される。
【0259】
パターン位相差フィルム層730は、画面の長手方向に対して平行且つ均一に設けられた帯状の異方性領域731と帯状の等方性領域732とを有する。異方性領域731及び等方性領域732は、鉛直方向において交互に並んだストライプ状の配置となっている。また、厚み方向から見ると、異方性領域731は液晶パネル710の左目用画像を表示する画素領域に重なり、等方性領域732は液晶パネルの右目用画像を表示する画素領域に重なるようになっている。
【0260】
異方性領域731の位相差は透過光の1/2波長であり、異方性領域731の遅相軸は、矢印A731で示す通り、視認側偏光板713の偏光透過軸に対して垂直な方向(即ち水平方向)である。これにより、位相差フィルム720から出射した円偏光のうち、異方性領域731を透過した光は、矢印A751で示される、反転した回転方向を有する円偏光に変換される。他方、等方性領域732の位相差はゼロであり、したがって、位相差フィルム720から出射した円偏光のうち等方性領域732を透過した光は、矢印A752で示す通り、透過前と同じ回転方向を有する円偏光として出射する。
【0261】
この例において、観察者は、偏光メガネ800を通して液晶表示装置700の表示面を観察する。偏光メガネ800は、1/2波長板810、1/4波長板820及び直線偏光板830をこの順に備える。1/2波長板810の遅相軸は、矢印A810で示す通り、パターン位相差フィルム層730の異方性領域731の遅相軸に対して垂直である(即ち、鉛直方向に平行である。)。1/4波長板820の遅相軸は、矢印A820で示す通り、液晶表示装置700の位相差フィルム720の遅相軸に対して垂直である。直線偏光板830の偏光透過軸は、矢印A830で示す通り、液晶表示装置700の視認側偏光板713の偏光透過軸に対して垂直(即ち、水平方向)である。また、1/2波長板810は、偏光メガネ800の、右目に対応する部分に設けられているが、左目に対応する部分には設けられない。
【0262】
光源側偏光板711、液晶セル712及び視認側偏光板713を透過した光は、直線偏光となって出射する。視認側偏光板713の偏光透過軸の方向は、矢印A713で示す通り鉛直方向であるため、視認側偏光板713から出射する光の偏光方向は矢印A713で示される鉛直方向となる。位相差フィルム720の遅相軸は、矢印A720で示す通り、視認側偏光板713の偏光透過軸に対して45°の角度をなす方向であるため、視認側偏光板713から出射した直線偏光は、この位相差フィルム720を透過することにより、矢印A740で示す回転方向を有する円偏光に変換される。位相差フィルム720から出射した円偏光のうち、異方性領域731を透過した光は、矢印A751で示される、反転した回転方向を有する円偏光に変換される。他方、等方性領域732の面内レターデーションはゼロであり、したがって、位相差フィルム720から出射した円偏光のうち等方性領域732を透過した光は、矢印A752で示す通り、透過前と同じ回転方向を有する円偏光として出射する。
【0263】
異方性領域731から出射した光Lが、偏光メガネ800の左目に対応する部分に入射すると、光Lは、偏光を変換されることなく1/4波長板820に入射する。1/4波長板820を透過した光は、矢印A830と同じ方向に偏光軸を有する直線偏光に変換され、したがって直線偏光板830を透過することができる。したがって、異方性領域731を透過した光Lは、使用者の左目で視認される。
【0264】
一方、異方性領域731から出射した光Lが、偏光メガネ800の右目に対応する部分に入射し、1/2波長板810を透過すると、光Lは、反転した回転方向(即ち矢印A840とは反対方向)を有する円偏光に変換され、1/4波長板820に入射する。1/4波長板820を透過した光は、矢印A830に対して垂直な方向に偏光軸を有する直線偏光に変換され、したがって直線偏光板830を透過することができない。したがって、異方性領域731を透過した光Lは、使用者の右目で視認されない。
【0265】
また、等方性領域732から出射した光Rが、偏光メガネ800の右目に対応する部分に入射し、1/2波長板810を透過すると、光Rは、矢印A840で示される、反転した回転方向を有する円偏光に変換され、1/4波長板820に入射する。1/4波長板820を透過した光は、矢印A830と同じ方向に偏光軸を有する直線偏光に変換され、したがって直線偏光板830を透過することができる。したがって、等方性領域732を透過した光Rは、使用者の右目で視認される。
【0266】
一方、等方性領域732から出射した光Rが、偏光メガネ800の左目に対応する部分に入射すると、光Rは、偏光を変換されることなく1/4波長板820に入射する。1/4波長板820を透過した光は、矢印A830に対して垂直な方向に偏光軸を有する直線偏光に変換され、したがって直線偏光板830を透過することができない。したがって、等方性領域732を透過した光Rは、使用者の左目で視認されない。
【0267】
このように、使用者は、異方性領域731を透過した光を左目で視て、また、等方性領域732を透過した光を右目で視ることになる。したがって、異方性領域731に対応する画素領域で左目用の画像を表示し、等方性領域732に対応する画素領域で右目用の画像を表示することにより、使用者は、立体画像を視認できる。この際、液晶表示装置700では、液晶パネル710に対してパターン位相差フィルム層730を精密に位置合わせできているので、異方性領域731及び等方性領域732の位相差を精度よく発現させることが可能である。したがって、液晶表示装置700の画質を向上させることができる。
【0268】
なお、上記の液晶表示装置700は、更に変更して実施してもよい。
例えば、位相差フィルム720とパターン位相差フィルム層730との順番を入れ替えて、位相差フィルム720をパターン位相差フィルム層730よりも視認側に設けてもよい。
また、例えば、液晶表示装置700に、反射防止フィルム、ギラツキ防止フィルム、アンチグレアフィルム、ハードコートフィルム、輝度向上フィルム、接着層、粘着層、ハードコート層、反射防止膜、保護層などを設けてもよい。
また、偏光メガネ800の右目に対応する部分と左目に対応する部分の構成を入れ替えて、且つ、液晶パネル710の異方性領域731に対応する画素領域の画像と液晶パネル710の等方性領域732に対応する画素領域の画像とを入れ替えて実施してもよい。
さらに、立体画像を適切に表示できる限り、各光学要素の遅相軸、透過軸等の光軸の方向は変更して実施してもよい。
【0269】
〔5−2.第二の例〕
図37は、立体画像表示装置として使用しうる液晶表示装置の例を概略的に示す分解上面図である。図37は、観察者が、液晶表示装置900の表示面に対して垂直な方向から、右目及び左目により映像を視認する態様を上側から観察した例を示している。液晶表示装置900は、図中左側に縦置きされている。すなわち、液晶表示装置900は、表示面が鉛直方向に平行となるよう置かれている。従って、図中右側から観察する観察者の観察方向は、水平方向となる。図37に示すように、液晶表示装置900は、液晶パネル710と、基材フィルム920と、パターン位相差フィルム層930とを、この順に備える。使用の態様において、液晶パネル710、基材フィルム920及びパターン位相差フィルム層930は、通常は貼付された状態とされるが、図37では図示のためこれらを分解して示している。また、基材フィルム920とパターン位相差フィルム層930との間には接着層が設けられるが、この接着層は大きな位相差を有さないので、画像表示に影響を与えないため、本例においては図示を省略する。
【0270】
液晶パネル710は、第一の例において説明したものと同様である。
【0271】
基材フィルム920は、位相差が10nm以下のフィルムであり、実質的に位相差を有さないフィルムである。したがって、基材フィルム920を透過する光は、透過前の偏光状態を維持したままで基材フィルム920を透過する。
【0272】
パターン位相差フィルム層930は、画面の長手方向に対して平行且つ均一に設けられた帯状の領域931と帯状の領域932とを有する。領域931及び領域932は、鉛直方向において交互に並んだストライプ状の配置となっている。また、厚み方向から見ると、領域931は液晶パネル710の左目用画像を表示する画素領域に重なり、領域932は液晶パネル710の右目用画像を表示する画素領域に重なるようになっている。
【0273】
領域931の位相差は透過光の1/4波長である。また、領域931の遅相軸の方向は、矢印A931で示す通り、視認側偏光板713の偏光透過軸に対して−45°の角度をなす方向である。このため、視認側偏光板713から出射した直線偏光は、この領域931を透過することにより、矢印A751で示す回転方向を有する円偏光に変換される。
他方、領域932の位相差も透過光の1/4波長である。ただし、領域932の遅相軸の方向は、矢印A932で示す通り、視認側偏光板713の偏光透過軸に対して+45°の角度をなす方向であり、領域931の遅相軸と90°の角度をなしている。このため、視認側偏光板713から出射した直線偏光は、この領域932を透過することにより、領域931を透過した光とは反対に、矢印A752で示す回転方向を有する円偏光に変換される。
【0274】
この例において、観察者は、偏光メガネ1000を通して液晶表示装置900の表示面を観察する。偏光メガネ1000は、1/4波長板1010、1/4波長板1020及び直線偏光板1030を備える。1/4波長板1010の遅相軸A1010は、パターン位相差フィルム層930の領域931の遅相軸方向A931と平行である。1/4波長板1020の遅相軸A1020は、パターン位相差フィルム層930の領域932の遅相軸方向A932と平行である。直線偏光板1030の偏光透過軸は、矢印A1030で示す通り、液晶表示装置900の視認側偏光板713の偏光透過軸A713に対して垂直(即ち、水平方向)である。また、1/4波長板1010は偏光メガネ1000の左目に対応する部分に設けられ、1/4波長板1020は偏光メガネ1000の右目に対応する部分に設けられている。直線偏光板1030は、偏光メガネ1000の右目に対応する部分及び左目に対応する部分の両方に設けられている。
【0275】
光源側偏光板711、液晶セル712及び視認側偏光板713を透過した光は、直線偏光となって出射する。視認側偏光板713の偏光透過軸の方向は、矢印A713で示す通り鉛直方向であるため、視認側偏光板713から出射する光の偏光方向は矢印A713で示される鉛直方向となる。視認側偏光板713から出射した直線偏光は、その偏光状態を維持したままで基材フィルム920を透過する。
【0276】
基材フィルム920を透過した直線偏光のうち、領域931を透過した光は、矢印A751で示される回転方向を有する円偏光に変換される。他方、領域932を透過した光は、矢印A752で示す通り、領域931を透過した光とは反対の回転方向を有する円偏光に変換される。
【0277】
領域931から出射した光Lが、偏光メガネ1000の左目に対応する部分に入射すると、光Lは、1/4波長板1010に入射する。1/4波長板1010を透過した光は、直線偏光板1030の透過軸A1030と平行な偏光軸を有する直線偏光に変換され、したがって直線偏光板1030を透過することができる。したがって、領域931を透過した光Lは、使用者の左目で視認される。
一方、領域931から出射した光Lが、偏光メガネ1000の右目に対応する部分に入射すると、光Lは、1/4波長板1020に入射する。1/4波長板1020を透過した光は、直線偏光板1030の透過軸A1030に対して垂直な偏光軸を有する直線偏光に変換され、したがって直線偏光板1030を透過することができない。したがって、領域931を透過した光Lは、使用者の右目で視認されない。
【0278】
また、領域932から出射した光Rが、偏光メガネ1000の右目に対応する部分に入射すると、光Rは、1/4波長板1020に入射する。1/4波長板1020を透過した光は、直線偏光板1030の透過軸A1030と平行な偏光軸を有する直線偏光に変換され、したがって直線偏光板1030を透過することができる。したがって、領域932を透過した光Rは、使用者の右目で視認される。
一方、領域932から出射した光Rが、偏光メガネ1000の左目に対応する部分に入射すると、光Rは、1/4波長板1010に入射する。1/4波長板1010を透過した光は、直線偏光板1030の透過軸A1030に対して垂直な偏光軸を有する直線偏光に変換され、したがって直線偏光板1030を透過することができない。したがって、領域932を透過した光Rは、使用者の左目で視認されない。
【0279】
このように、使用者は、領域931に対応する画素領域で左目用の画像を表示し、領域932に対応する画素領域で右目用の画像を表示することにより、使用者は、立体画像を視認できる。この際、液晶表示装置900では、液晶パネル710に対してパターン位相差フィルム層930を精密に位置合わせできているので、領域931及び932の位相差を精度よく発現させることが可能である。したがって、液晶表示装置900の画質を向上させることができる。
【0280】
なお、上記の液晶表示装置900は、更に変更して実施してもよい。例えば、第一の例で説明した液晶表示装置と同様に変更して実施してもよい。
【実施例】
【0281】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。また、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下の説明において位相差Reの測定波長は、別に断らない限り550nmである。さらに、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0282】
[評価方法]
〔1.引っ張り歪の測定方法〕
引っ張りひずみは、JIS K7161に準拠して、応力−歪み曲線を測定して算出した。
【0283】
〔2.ΔD/Dの測定方法〕
(実施例1〜3及び5並びに比較例1及び2での測定方法)
図38は、実施例1〜3及び5並びに比較例1及び2において、パターン位相差板のパターン位相差フィルム層の領域の振れ幅ΔD及び平均幅Dを測定する際のサンプルの様子を模式的に示す図である。
図38に示すように、ガラス板に貼り合わせた直線偏光板10及び20を用意し、ガラス板が内側になるようにして配置した。この際、一方の直線偏光板10の透過軸A10と、他方の直線偏光板20の透過軸A20とは垂直にして、クロスニコル状態となるようにした。この直線偏光板10と直線偏光板20との間に、パターン位相差フィルム層31及び1/4波長板32を備えるパターン位相差板30を挿入した。このとき、パターン位相差板30の1/4波長板32の遅相軸A32が、直線偏光板10及び20の偏光板透過軸A10及びA20と直交あるいは平行となるようにした。
【0284】
こうして用意したサンプルを、二次元測定機(中村製作所社製「EXLONy99」)の定盤上に設置し、CCDカメラにて撮影し、観察した。前記の二次元測定器の仕様は、以下の通りである。
測定機の仕様
測定範囲:X軸=900mm、Y軸=900mm
最小読取量:0.001mm
各軸精度:U1=5+5L/1000
座標検出:光学式リニアエンコーダー
画像検出:CCDカメラ
照明装置:LED落射照明
【0285】
パターン位相差板30の異方性領域34に相当する部分は光が透過し、等方性領域35に相当する部分は光が遮光される。したがって、前記の撮影では、図39で示すように、透過部分と遮光部分とがストライプ状に形成された画像が撮影される。撮影された画像において、黒色の部分が延在する方向を長尺方向X、それに垂直な方向を幅方向Yとし、さらに二次元測定機に予め信頼性の高い基準点を設け、その基準点を原点(0,0)として、XY座標を設定した。
【0286】
図40に、撮影された画像の一部を拡大した様子を模式的に示す。図40で示すように、黒色の部分40の幅方向Yのエッジ41及び42を、画像処理により検出し、黒色の部分40の幅方向両端のエッジ41及び42のY座標を「Y値」として測定した。
X座標が同一の値(x)となる位置において、一端側のエッジ41のY値(y41)と他端側のエッジ42のY値(y42)の平均値((y41+y42)/2)を、当該X座標(x)における中点43のY値とした。また、一端側のエッジX41のY値(y41)と他端側のエッジX42のY値(y42)の差(y42−y41)を、当該X座標(x)における黒色の部分40の幅とした。このような計算を、その黒色の部分40について、長尺方向Xにおいて30mmピッチで1080mmまでの37箇所で行った。
【0287】
前記の測定を、図39に示すように、幅方向の端部から連続した5本の黒色の部分40A〜40E、並びに、20mmピッチで5本の黒色の部分40F〜40Jについて行い、黒色の部分40A〜40Jそれぞれの各X座標における幅及び中点のY値を求めた。
【0288】
上述したようにして求めた10本の黒色の部分40A〜40Jの幅の全測定結果の平均値を、このサンプルの領域の平均幅Dとした。
【0289】
10本の黒色の部分40A〜40Jそれぞれについて、X座標が0となる位置における中点のY値を「0」として、37箇所の中点のY値を規格化し、図41で示すようにグラフに表した。このグラフにおいて、長尺方向XでのY値の最大値と最小値との差を、領域の振れ幅ΔDとした。
【0290】
(実施例4での測定方法)
図42は、実施例4において、パターン位相差板のパターン位相差フィルム層の領域の振れ幅ΔD及び平均幅Dを測定する際のサンプルの様子を模式的に示す図である。
図42に示すように、ガラス板に直線偏光板71及び1/4波長板72を接着剤を介して貼り合わせた円偏光板70と、ガラス板に貼り合わせた直線偏光板50を用意し、ガラス板が内側になるようにして配置した。この際、円偏光板70の直線偏光板71の透過軸A71と、直線偏光板50の透過軸A50とは垂直となるようにした。また、直線偏光板71の透過軸A71と1/4波長板72の遅相軸A72とは45°の角度をなすようにした。この円偏光板70と直線偏光板50との間にパターン位相差板60を挿入した。この際、直線偏光板71の透過軸A71と、パターン位相差板60のパターン位相差フィルム層の帯状の各領域61及び62が延在する方向とが平行になるようにした。このような状態では、パターン位相差フィルム層の各領域61及び62の遅相軸方向A61及びA62は、直線偏光板71及び50の透過軸A71及びA50と45°の角度をなす。
【0291】
こうして用意したサンプルを、実施例1〜3及び5並びに比較例1及び2と同様にして観察する。パターン位相差フィルム層の各領域61及び62の遅相軸方向A61及びA62の相違により、領域61及び領域62のうち一方に相当する部分を光は透過しうるが、他方に相当する部分は光を遮断する。したがって、実施例4においても、図39で示すように、透過部分と遮光部分とがストライプ状に形成された画像が撮影される。この撮影された画像から、実施例1〜3及び5並びに比較例1及び2と同様にしてΔD/Dを測定した。
【0292】
[実施例1]
(1−1.(長尺基材)−(パターン位相差フィルム層)の積層フィルムの製造)
(1−1−1.液晶組成物の調製)
重合性液晶化合物(BASF社製、製品名「LC242」)25部と、重合開始剤(チバ・ジャパン社製、製品名「Irg 379」)1部と、液晶性を示さない化合物1(構造式は下記の通り)5部と、架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート3部と、界面活性剤としてフッ素系界面活性剤(ネオス社製、製品名「フタージェント209F」)0.03部と、溶媒としてメチルエチルケトン66部とを混合して、液晶組成物を調製した。
【0293】
【化1】

【0294】
(1−1−2.パターン位相差フィルム層の製造)
長尺基材として、長尺のノルボルネン樹脂のフィルム(日本ゼオン社製 ゼオノアフィルムZF14−100)を用意した。この長尺基材を、フィルム搬送装置の繰り出し部に取り付け、当該長尺基材を搬送しながらラビング処理を施し、ラビング処理を施した面に前記にて用意した液晶組成物をダイコーターを使用して塗布した。これにより、長尺基材の片面に、塗膜として未硬化状態の液晶組成物層を形成して、(長尺基材)−(液晶組成物層)の層構成を備える未硬化積層体を得た。
【0295】
前記の液晶組成物層を40℃で2分間配向処理して、液晶組成物層中の重合性液晶化合物を配向させた。
【0296】
その後、液晶組成物層に対して、長尺基材の液晶組成物層が形成されたのとは反対側からガラスマスクを介して0.1mJ/cm〜45mJ/cmの微弱な紫外線を照射した。前記のガラスマスクとしては、長尺基材の長尺方向に延在する透光部及び遮光部が互いに平行に並んでストライプ状に形成されたものを用いた。ガラスマスクの透光部の幅は624μm、遮光部の幅は637μmとした。また、紫外線を照射する際、(長尺基材)−(液晶組成物層)の層構成を備える未硬化積層体には長尺方向に張力をかけた。この張力は、前記の未硬化積層体の引っ張り歪が0.13%となる大きさとした。
【0297】
液晶組成物層の前記遮光部に相当する位置では露光されなかったために液晶組成物層は未硬化状態のままであるが、前記透光部に相当する位置では露光されたために液晶組成物層が硬化した。これにより、液晶組成物層の露光部分において、1/2波長板として機能しうる位相差Reを有する領域(異方性領域)を形成した。
【0298】
次に、液晶組成物層を90℃で10秒間加熱処理して、液晶組成物層の未硬化状態の部分(遮光部に相当する部分)の液晶相を等方相に転移させた。
この状態を維持しながら、長尺基材の液晶組成物層側から窒素雰囲気下で液晶組成物層に対して2000mJ/cmの紫外線を照射して、液晶組成物層の未硬化部分を硬化させた。これにより、位相差Reが小さい領域(等方性領域)が形成された。
【0299】
このようにして、1/2波長板として機能しうる位相差Reを有する異方性領域と、位相差Reが小さい等方性領域とを、同一面内に有する液晶組成物層を、パターン位相差フィルム層として得た。また、これにより、(長尺基材)−(パターン位相差フィルム層)の層構成を備える積層フィルムを得た。形成されたパターン位相差フィルム層の乾燥厚みは5.0μmであった。異方性領域の位相差Reは250nmであり、その面方向の遅相軸が積層フィルムの長尺方向と0°の角度をなしていた。一方、等方性領域の位相差Reは10nm以下であった。異方性領域及び等方性領域の配置は、それぞれの領域が長尺方向に帯状に延在する配置となっており、全体としてストライプ状のパターンを形成していた。それぞれの領域の幅は、630μmであった。
【0300】
(1−2.パターン位相差板の製造)
基材フィルムとして位相差フィルム(日本ゼオン社製、製品名「斜め延伸ゼオノアフィルム」;厚み41μm;長尺方向に対する配向角45°;測定波長550nmでの面内における位相差125nm;面内における位相差のばらつきは±10nm以下)を用意した。
【0301】
アクリル粘着剤(綜研化学社製、製品名「SKダイン2094」)に硬化剤(綜研化学社製、製品名「E−AX」)を、アクリル粘着剤中のポリマー100重量部に対して5重量部の割合で添加したものを用意した。以下、これを適宜「PSA」と略称する。
【0302】
基材フィルムを、PSAを介して、上記にて得られた(長尺基材)−(パターン位相差フィルム層)の層構成を備える積層フィルムのパターン位相差フィルム層に貼り合わせた。この際、(長尺基材)−(パターン位相差フィルム層)の層構成を備える積層フィルムには、長尺方向に張力をかけた。この張力は、前記の積層フィルムの引っ張り歪が0.083%となる大きさとした。また、接着層の厚さは25μmであった。
【0303】
次いで、長尺基材をパターン位相差フィルム層から剥がし、(パターン位相差フィルム層)−(接着層)−(基材フィルム)の層構成を備えるパターン位相差板を得た。
得られたパターン位相差板について、上述した要領でΔD/Dを求めた。結果を表1に示す。
【0304】
(1−3.パターン位相差板と液晶パネルとの貼り合わせ)
(1−3−1.液晶パネルの表面への接着層の形成)
紫外線硬化性樹脂(商品名「紫光UV6640B」、日本合成化学工業株式会社製、ウレタンアクリレート)30部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(商品名「HEA」、大阪有機化学工業株式会社製)70部、及びアクリル粒子(商品名「MBX−8」、数平均粒子径8μm、積水化成品工業株式会社製)10部を混合し、接着剤を調製した。
【0305】
市販のディスプレイ装置(SONY社製、BRAVIA EX700 32インチ)から液晶パネルを取り出し、その表示面上に、接着剤を塗布し、接着層を形成した。接着層の厚さは10μmとした。
【0306】
(1−3−2.位置合わせ)
前記の液晶パネルを、XY平面内で移動可能なステージに、接着層が上向きになるように置いた。また、このステージには、光源、カメラ及び観察用の円偏光板を含む観察装置を設けた。
前記のパターン位相差板を液晶パネルの表示面に合わせて切り取り、液晶パネルの上方に保持した。この際、パターン位相差板と液晶パネルとは、離隔した状態とした。また、パターン位相差板には、10N/1600mmの張力をかけ、その状態を保持した。
【0307】
前記の観察装置により、液晶パネルの矩形の表示面領域の四隅においてパターン位相差板のパターン境界線及び液晶パネルのブラックマトリックスを観察しながら、ステージを移動させることにより、位置合わせを行った(図29参照)。
【0308】
(1−3−3.貼り合わせ)
位置合わせ後、ニップロールをパターン位相差板の上方に配置し、パターン位相差板に張力をかけた状態を維持しながら、ステージを上昇させることにより、パターン位相差板と液晶パネルと接着層を介して接触させた。
【0309】
次いで、ニップロールをステージ側に付勢しながら転がすことにより、ニップロール及びステージでパターン位相差板を液晶パネルに圧接して、パターン位相差板と液晶パネルとを貼り合わせた(図30参照)。続いて、パターン位相差板に張力をかけた状態を維持しながら、接着層に紫外線を照射し、接着層を硬化させた。これにより、パターン位相差板、接着層及び液晶パネルをこの順に備える積層部材を得た。
この積層部材を、ディスプレイ装置の筐体に戻して実装し、評価用ディスプレイ装置を作製した。
【0310】
(1−4.偏光メガネの製造)
(1−4−1.偏光メガネ用1/2波長板の製造)
ノルボルネン樹脂の基材フィルム(日本ゼオン社製、「ゼオノアフィルムZF14−100」、上記(1−1−2)で使用したものと同一)のラビング処理を施した面に、上記(1−1−1)で調製した液晶組成物をダイコーターを使用して塗布し、塗膜を形成した。この塗膜を40℃で2分間配向処理し、塗膜面側より窒素雰囲気下で2000mJ/cmの紫外線を照射して硬化させ、乾燥膜厚が1.5μm、位相差が1/2波長の樹脂層を形成し、基材フィルム及び1/2波長樹脂層を有する偏光メガネ用1/2波長板を得た。
【0311】
(1−4−2.偏光メガネ用円偏光板1)
偏光板(サンリッツ社製、製品名「HLC2−5618」)上に、PSAを介して、1/4波長板として機能しうる位相差フィルム(日本ゼオン社製、製品名「斜め延伸ゼオノアフィルム」;パターン位相差板の基材フィルムとして上で用いたものと同じ)を貼合して、偏光メガネ用円偏光板1を得た。
【0312】
(1−4−3.偏光メガネ用円偏光板2)
円偏光板1の1/4波長板側の面上に、PSAを介して、偏光メガネ用1/2波長板を貼合して、偏光メガネ用円偏光板2を得た。
【0313】
(1−4−4.偏光メガネ1)
偏光メガネ用円偏光板1と、偏光メガネ用円偏光板2とが観察者の左右それぞれの視野上に並ぶように配置し、偏光メガネ1を得た。この際、偏光メガネ1における偏光メガネ用円偏光板1及び偏光メガネ用円偏光板2の配置は、図36に示すとおりにした。
【0314】
すなわち、偏光メガネ用円偏光板1を左目用とし、1/4波長板及び直線偏光板をこの順になるように取り付けた。偏光メガネ用円偏光板1の1/4波長板の遅相軸は評価用ディスプレイ装置の位相差フィルムの遅相軸に対して垂直とし、偏光メガネ用円偏光板1の偏光メガネ1の直線偏光板の偏光透過軸は評価用ディスプレイ装置の視認側偏光板の偏光透過軸に対して垂直とした。
また、偏光メガネ用円偏光板2を右眼用とし、1/2波長板、1/4波長板及び直線偏光板をこの順になるように取り付けた。偏光メガネ用円偏光板2の1/2波長板の遅相軸は評価用ディスプレイ装置のパターン位相差フィルム層の異方性領域の遅相軸に対して垂直とし、偏光メガネ用円偏光板2の1/4波長板の遅相軸は評価用ディスプレイ装置の位相差フィルムの遅相軸に対して垂直とし、偏光メガネ用円偏光板2の直線偏光板の偏光透過軸は評価用ディスプレイ装置の視認側偏光板の偏光透過軸に対して垂直とした。
【0315】
(1−5.評価用ディスプレイ装置の評価)
評価用ディスプレイ装置の液晶パネルに、画素の奇数列が黒表示、画素の偶数列が白表示となる信号を入力して、画素の奇数列を黒表示、偶数列を白表示とした。液晶パネルから1m離れた距離で、偏光メガネ1を使用して観察し、右目で液晶パネルの全画面のうち9/10以上の面積で黒表示である場合を「良」、光りヌケが全画面のうち1/10より大きい面積で見られる場合を「不良」とした。結果を表1に示す。
【0316】
[実施例2]
(長尺基材)−(パターン位相差フィルム層)の層構成を備える積層フィルムと基材フィルムとの貼り合せ時の積層フィルムの引っ張り歪が0.100%となるようにした。この事項以外は実施例1と同様にして、パターン位相差板を製造し、そのパターン位相差板を液晶パネルと位置合わせして貼り合せ、評価用ディスプレイ装置を製造して評価した。結果を表1に示す。
【0317】
[実施例3]
(長尺基材)−(パターン位相差フィルム層)の層構成を備える積層フィルムと基材フィルムとの貼り合せ時の積層フィルムの引っ張り歪が0.002%となるようにした。また、パターン位相差板と液晶パネルとの位置合わせ時にパターン位相差板にかける張力の大きさを156.8N/1600mmにした。これらの事項以外は実施例1と同様にして、パターン位相差板を製造し、そのパターン位相差板を液晶パネルと位置合わせして貼り合せ、評価用ディスプレイ装置を製造して評価した。結果を表1に示す。
【0318】
[実施例4]
(4−1.評価用ディスプレイ装置の用意)
長尺基材として、長尺のノルボルネン樹脂のフィルム(日本ゼオン社製 ゼオノアフィルムZF14−100)を用意した。この長尺基材の片面に、光配向材料として(DIC社製「LIA−02」;固形分率1重量%;溶媒として2−ブトキシエタノール99重量%)を#2バーにより塗布し、80℃2分間で乾燥させて、光配向材料層を形成した。これにより、長尺基材の片面に光配向材料層を備える配向材料積層体を得た。
【0319】
その後、光配向材料層に対して、ガラスマスクを介して、波長313nmの直線偏光紫外線を200mJ/cmの積算光量で照射した。前記のガラスマスクとしては、長尺基材の長尺方向に延在する透光部及び遮光部が互いに平行に並んでストライプ状に形成されたものを用いた。ガラスマスクの透光部の幅は624μm、遮光部の幅は637μmとした。また、紫外線を照射する際、(長尺基材)−(光配向材料層)の層構成を備える配向材料積層体には長尺方向に張力をかけた。この張力は、前記の配向材料積層体の引っ張り歪が0.13%となる大きさとした。これにより、光配向材料層の露光された領域において光配向材料を配向させた。
【0320】
次いで、ガラスマスクを外し、前記の直線偏光紫外線とは偏光方向が90°異なる波長313nmの直線偏光紫外線を10mJ/cmの積算光量で照射した。これにより、光配向材料層において未配向であった領域が配向し、配向膜が得られた。この配向膜では、配向方向が90°異なる領域がガラスマスクのマスクパターンを精度よく写し取ったパターンを形成していた。
【0321】
その後、配向膜の表面に、実施例1と同様の液晶組成物をダイコーターを使用して塗布した。前記の液晶組成物層を40℃で2分間配向処理して、液晶組成物層中の重合性液晶化合物を配向させた。
【0322】
次に、窒素雰囲気下で液晶組成物層に対して2000mJ/cmの紫外線を照射して、液晶組成物層を硬化させた。これにより、遅相軸方向が90°異なる2種類の領域を、同一面内に有する液晶組成物層を、パターン位相差フィルム層として得た。また、これにより、(長尺基材)−(配向膜)−(パターン位相差フィルム層)の層構成を備える積層フィルムを得た。形成されたパターン位相差フィルム層の乾燥厚みは2μmであった。パターン位相差フィルム層の位相差Reは125nmであり、その面方向の遅相軸が積層フィルムの長尺方向と+45°又は−45°の角度をなしていた。パターン位相差フィルム層の各領域の配置は、それぞれの領域が長尺方向に帯状に延在する配置となっており、全体としてストライプ状のパターンを形成していた。それぞれの領域の幅は、630μmであった。
【0323】
基材フィルム(日本ゼオン社製、製品名「ゼオノアフィルム」;厚み23μm;測定波長550nmでの面内における位相差5nm)を用意した。この基材フィルムを、PSAを介して、上記にて得られた(長尺基材)−(配向膜)−(パターン位相差フィルム層)の層構成を備える積層フィルムのパターン位相差フィルム層に貼り合わせた。この際、(長尺基材)−(配向膜)−(パターン位相差フィルム層)の層構成を備える積層フィルムには、長尺方向に張力をかけた。この張力は、前記の積層フィルムの引っ張り歪が0.083%となる大きさとした。また、接着層の厚さは25μmであった。
【0324】
次いで、長尺基材をパターン位相差フィルム層から剥がし、(パターン位相差フィルム層)−(接着層)−(基材フィルム)−(配向膜)の層構成を備えるパターン位相差板を得た。得られたパターン位相差板について、上述した要領でΔD/Dを求めた。結果を表1に示す。
【0325】
このようにして得たパターン位相差板を用い、パターン位相差板と液晶パネルとの位置合わせ及び貼り付けの際の張力の大きさを5N/1600mmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、パターン位相差板と液晶パネルとを接着層を介して貼り合せて、パターン位相差板、接着層及び液晶パネルをこの順に備える積層部材を得た。
この積層部材を、ディスプレイ装置の筐体に戻して実装し、評価用ディスプレイ装置を作製した。
【0326】
(4−2.偏光メガネの製造)
(4−2−1.偏光メガネ用円偏光板3)
偏光メガネ用円偏光板1と1/4波長板の遅相軸が直交するようにしたこと以外は偏光メガネ用円偏光板1と同様にして、偏光メガネ用円偏光板3を得た。
【0327】
(4−2−2.偏光メガネ2)
偏光メガネ用円偏光板1と偏光メガネ用円偏光板3とが観察者の左右それぞれの視野上に並ぶように配置し、偏光メガネ2を得た。その際、偏光メガネ2における偏光メガネ用円偏光板1及び偏光メガネ用円偏光板3の配置は、図37に示すとおりとした。
【0328】
すなわち、偏光メガネ用円偏光板1を左目用とし、1/4波長板及び直線偏光板をこの順になるように取り付けた。偏光メガネ用円偏光板1の1/4波長板の遅相軸は、評価用ディスプレイ装置のパターン位相差フィルム層の領域931の遅相軸A931と平行にした。偏光メガネ用円偏光板3の1/4波長板の遅相軸は、評価用ディスプレイ装置のパターン位相差フィルム層の領域932の遅相軸A932と平行にした。また、偏光メガネ用円偏光板1および偏光メガネ用円偏光板3の直線偏光板の偏光透過軸は、評価用ディスプレイ装置の視認側偏光板の偏光透過軸に対して垂直とした。
【0329】
(4−3.評価用ディスプレイ装置の評価)
評価用ディスプレイ装置について、偏光メガネ2を用いて評価を行った。この際、偏光メガネ2における偏光メガネ用円偏光板1及び偏光メガネ用円偏光板3の配置は、図37に示すとおりにした。結果を表1に示す。
【0330】
[実施例5]
基材フィルムとして位相差フィルム(日本ゼオン社製、製品名「斜め延伸ゼオノアフィルム」;厚み82μm(マスキングフィルム30μmを含む);長尺方向に対する配向角45°;測定波長550nmでの面内における位相差125nm;面内における位相差のばらつきは±10nm以下)を用いた。また、(長尺基材)−(パターン位相差フィルム層)の層構成を備える積層フィルムと基材フィルムとの貼り合せ時の積層フィルムの引っ張り歪が0.1%となるようにした。また、パターン位相差板と液晶パネルとの位置合わせ時にパターン位相差板にかける張力の大きさを156.8N/1600mmにした。また、位相差フィルム上のマスキングフィルムを、パターン位相差板と液晶パネルを位置合わせする前に剥離した。これらの事項以外は実施例1と同様にして、パターン位相差板を製造し、そのパターン位相差板を液晶パネルと位置合わせして貼り合せ、評価用ディスプレイ装置を製造して評価した。結果を表1に示す。
【0331】
[比較例1]
パターン位相差フィルム層を製造する工程において、ガラスマスクを介して液晶組成物層に紫外線を照射する際、(長尺基材)−(液晶組成物層)の層構成を備える未硬化積層体の長尺方向にかける張力を、前記の未硬化積層体の引っ張り歪が0.05%となる大きさとした。また、パターン位相差板と液晶パネルとの位置合わせ時にパターン位相差板にかける張力の大きさを313N/1600mmにした。これらの事項以外は実施例1と同様にして、パターン位相差板を製造し、そのパターン位相差板を液晶パネルと位置合わせして貼り合せ、評価用ディスプレイ装置を製造して評価した。結果を表1に示す。
【0332】
[比較例2]
長尺基材をパターン位相差フィルム層から剥がす操作を行わなかった。また、パターン位相差板と液晶パネルとの位置合わせ時にパターン位相差板にかける張力の大きさを313N/1600mmにした。これらの事項以外は実施例1と同様にして、パターン位相差板を製造し、そのパターン位相差板を液晶パネルと位置合わせして貼り合せ、評価用ディスプレイ装置を製造して評価した。結果を表1に示す。
【0333】
【表1】

【0334】
[検討]
表1から分かるように、実施例においては、いずれも評価用ディスプレイ装置の評価結果が良好であった。
これに対し、比較例1、2では、パターン位相差フィルム層の各領域の真直性が悪く、位置合わせが困難であった。このため、評価用ディスプレイ装置の評価結果が不良であった。これらの比較例のような場合、各領域が湾曲したり画素に対して位置がずれたりして、右目で左目用の画像が視認されたり左眼で右眼用の画像が認識されたりするクロストークという現象が生じ、立体画像を認識できなくなる。
以上より、本発明により、液晶パネルとの位置合わせを精度良く行うことができるパターン位相差板を実現しうることが確認された。
【符号の説明】
【0335】
10、20 直線偏光板
30 パターン位相差板
31 パターン位相差フィルム層
32 1/4波長板
33、34 パターン位相差板の領域
40 撮影された画像の黒色の部分
41、42 撮影された画像の黒色の部分の幅方向端部のエッジ
43 撮影された画像の黒色の部分の幅方向の中点
50 直線偏光板
60 パターン位相差板
61、62 パターン位相差板の領域
70 円偏光板
71 直線偏光板
72 1/4波長板
100 パターン位相差板
110 長尺の基材フィルム
120 接着層
130 パターン位相差フィルム層
131、132 パターン位相差フィルム層の領域
210 長尺基材
211、212 長尺基材の表面
220 配向膜
230 マスク層
231 遮光部
232 透光部
240 液晶組成物層(パターン位相差フィルム層)
241、242 液晶組成物層の領域
250 未硬化積層体
260 積層フィルム
270 基材フィルム
281、282 ニップロール
283 光源
284、285 搬送ロール
290 パターン位相差板
310 長尺基材
311 長尺基材の表面
320 光配向材料層(配向膜)
321、322 光配向材料層の領域
323 配向膜の表面
330 配向材料積層体
340 液晶組成物層(パターン位相差フィルム層)
341、342 液晶組成物層の領域
350 積層フィルム
408 パターン位相差板
409 支持基材
410 パターン位相差フィルム層
411、412 パターン位相差フィルム層の領域
415 パターン境界線
420 基材フィルム
430 偏光板
440 液晶パネル
441 第1の画素群の画素の列
442 第2の画素群の画素の列
445 ブラックマトリックスの座標軸X方向に延長する部分
446 表示面領域
451 ステージ
452 カッター刃
461 塗布装置
462 接着層
463 接着層
481 ロール
482 複合フィルム
483、484 ロール
485 ニップロール
486 巻き取りロール
490 観察装置
491 光源
492 カメラ
493 観察用の円偏光板
494A〜494D 観察点
501、502、503 ランプ
504A〜504D 紫外線照射点
510 パターン位相差板
540 液晶パネル
551 ステージ
552 吸着板
554 カッター刃
581 ロール
582 複合フィルム
583、584 ロール
585 巻き取りロール
586 ロール
587U、587L、588U、588L ロール
589 ニップロール
590 複層保護フィルム
591 ロール
592 保護層
593 保護フィルム
594、595 ロール
596 巻き取りロール
597、598 ロール
599 フィルム
662 接着層
681 ロール
682 複合フィルム
689 保護フィルム
690 複合フィルム
691 ロール
700 液晶表示装置
710 液晶パネル
711 光源側偏光板
712 液晶セル
713 視認側偏光板
720 位相差フィルム
730 パターン位相差フィルム層
731 異方性領域
732 等方性領域
800 偏光メガネ
810 1/2波長板
820 1/4波長板
830 直線偏光板
900 液晶表示装置
920 基材フィルム
930 パターン位相差フィルム層
931、932 パターン位相差フィルム層の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の基材フィルムと接着層とパターン位相差フィルム層とをこの順に備え、
前記パターン位相差フィルム層は、位相差又は遅相軸方向が異なる2種類以上の領域を有し、
前記の領域は、前記基材フィルムの長尺方向に対して平行に延在する帯状の領域であって、
前記領域の長尺方向における振れ幅ΔDと平均幅Dとの比ΔD/Dが0.02以上0.25以下である、パターン位相差板。
【請求項2】
前記基材フィルムの厚みに対する前記パターン位相差フィルム層の厚みの比が、0.01以上0.5以下である、請求項1記載のパターン位相差板。
【請求項3】
前記基材フィルムが、面内において均一な位相差及び遅相軸方向を有する位相差フィルムである、請求項1又は2記載のパターン位相差板。
【請求項4】
前記パターン位相差フィルム層の、前記基材フィルムとは反対側に、保護層を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載のパターン位相差板。
【請求項5】
面内において均一な位相差及び遅相軸方向を有する長尺の基材フィルムと、位相差が異なる2種類以上の領域を有するパターン位相差フィルム層とを備え、前記パターン位相差フィルム層の前記領域が長尺方向に対して平行に延在する帯状の領域であるパターン位相差板の製造方法であって、
長尺基材の表面に、重合性液晶化合物を含み活性エネルギー線の照射により硬化しうる液晶組成物の層を形成して、前記長尺基材と前記液晶組成物の層とを備える積層体を得る工程、
前記液晶組成物の層に含まれる前記重合性液晶化合物を配向させる工程、
前記長尺基材と前記液晶組成物の層とを備える前記積層体に対して長尺方向に張力をかけた状態で、前記長尺方向に対して平行に延在する帯状の遮光部及び透光部を有するマスクを介して、前記液晶組成物の層に活性エネルギー線を照射する工程、
前記液晶組成物の層を加熱して、前記液晶組成物の層の前記活性エネルギー線を照射されなかった領域の位相差を変化させて、前記長尺基材と前記パターン位相差フィルム層とを備える積層フィルムを得る工程、
前記長尺基材と前記パターン位相差フィルム層とを備える前記積層フィルムに対して、前記積層フィルムの引っ張り歪が0.002%以上0.2%以下となる張力を長尺方向にかけた状態で、前記パターン位相差フィルム層と前記基材フィルムとを接着層を介して貼り合せる工程、並びに、
前記長尺基材を剥がす工程を含む、パターン位相差板の製造方法。
【請求項6】
位相差が10nm以下の長尺の基材フィルムと、遅相軸方向が異なる2種類以上の領域を有するパターン位相差フィルム層とを備え、前記パターン位相差フィルム層の前記領域が長尺方向に対して平行に延在する帯状の領域であるパターン位相差板の製造方法であって、
長尺基材の表面に、偏光を照射されることにより不可逆的に配向する光配向材料の層を形成して、前記長尺基材と前記光配向材料の層とを備える積層体を得る工程、
前記長尺基材と前記光配向材料の層とを備える前記積層体に対して長尺方向に張力をかけた状態で、前記光配向材料の層の長尺方向に対して平行に延在する帯状の領域に、偏光を照射する工程、
前記光配向材料の層の全体に、前記の偏光とは偏光方向が90°±3°異なる偏光を照射して、配向膜を得る工程、
前記配向膜の表面に、重合性液晶化合物を含み活性エネルギー線の照射により硬化しうる液晶組成物の層を形成する工程、
前記液晶組成物の層に活性エネルギー線を照射して、前記長尺基材と前記パターン位相差フィルム層とを備える積層フィルムを得る工程、
前記長尺基材と前記パターン位相差フィルム層とを備える前記積層フィルムに対して、前記積層フィルムの引っ張り歪が0.002%以上0.2%以下となる張力を長尺方向にかけた状態で、前記パターン位相差フィルム層と前記基材フィルムとを接着層を介して貼り合せる工程、並びに、
前記長尺基材を剥がす工程を含む、パターン位相差板の製造方法。
【請求項7】
前記基材フィルムの厚みに対する前記パターン位相差フィルム層の厚みの比が、0.01以上0.5以下である、請求項5又は6記載のパターン位相差板の製造方法。
【請求項8】
前記パターン位相差フィルム層と前記基材フィルムとを貼り合わせる際の前記積層フィルムの引っ張り歪が、0.01%以上0.15%以下である、請求項5〜7のいずれか一項に記載のパターン位相差板の製造方法。
【請求項9】
前記基材フィルムに、前記基材フィルムの引っ張り歪みが0.2%以下となる張力を長尺方向にかけた状態で、前記パターン位相差フィルム層と前記基材フィルムとを貼り合わせる、請求項5〜8のいずれか一項に記載のパターン位相差板の製造方法。
【請求項10】
ブラックマトリックスを有する液晶パネルと、請求項1〜4のいずれか一項に記載のパターン位相差板又は請求項5〜9のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたパターン位相差板とを備え、
前記液晶パネルと前記パターン位相差板とは、前記パターン位相差板に5N/1600mm以上の張力をかけた状態で、前記パターン位相差板の前記パターン位相差フィルム層の前記2種類以上の領域の境界線と前記液晶パネルの前記ブラックマトリックスとの相対的な位置関係が位置合わせされ、貼り合わせられている、液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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