説明

パターン化されたポストを有するマイクロチャネルを用いた細胞分離

【課題】供給された液体からの標的生体分子の分離又は単離方法および装置を提供する。
【解決手段】直線的な流れが横断ポスト81のパターンによって妨げられる流路を用いるマイクロフローデバイスおよび該デバイスを用いる細胞などの生体分子の分離方法であって、ポストは流路内の拡大した収集チャンバー領域75の幅いっぱいに間隔をあけて置かれ、その上面と下面との間に延び、それらは直線的表面を有し、横断面は曲線状、例えば円形または涙滴形であり、層流を乱すためにランダムに配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給された液体からの標的生体分子の分離または単離に関し、より詳細には、所望の標的ヒト細胞を体液などから分離するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
異種混交的な細胞集団からの希少な細胞の有効な単離および収集は、疾患の診断および治療、例えば遺伝子治療に用いるため、ならびに基礎科学研究のための、単離された細胞集団に対する需要の高まりを理由として、未だに大きな関心を集めている。例えば、癌細胞のように病的に変化した細胞を、より多数の正常細胞集団から分離することができ、続いて、浄化された細胞集団を患者に移植して戻すこともできる。
【0003】
細胞分離は生物医学的および臨床的な開発の点で急速に発展中の分野であり、複合集団から所望の細胞サブセットを分離する改良された方法は、比較的均一で規定された特徴を有する細胞のより広範囲にわたる研究および使用を可能にすると考えられる。細胞分離はまた、例えば、標的とする細胞集団に対する薬物または治療法の効果を判定するため、生物学的経路を調べるため、形質転換されたまたは他の様式で改変された細胞集団を単離および研究するため、などのために、研究においても広く用いられている。現在の臨床的な用途には、例えば、特に除去的な化学療法および放射線療法と組み合わせた、血液細胞の再構成のための造血幹細胞の単離が含まれる。
【0004】
公開された米国特許出願第2004/038315号(特許文献1)は、毛細管の内腔面に対して放出可能なリンカーを付着させ、所望の結合細胞はその後、切断試薬によって放出されて回収される。米国公開特許出願第2002/132316号(特許文献2)は、移動性光学勾配場の使用によって細胞集団を分離するために、マイクロチャネルデバイスを使用する。米国特許第6,074,827号(特許文献3)は、特定の核酸を試料から分離して同定するために、電気泳動が用いられる「濃縮チャネル」を有するように構築されたマイクロ流体デバイスの使用法を開示する。所望の標的生体材料を保持するための抗体または他の結合断片の光学的使用法も同じく言及されている。米国特許第6,432,630号(特許文献4)は、選択的偏向を利用したチャネルによって生体粒子を含む流体の流れを導くためのマイクロフローシステムを開示しており、それは、胎児細胞を母体血液試料から分離するために、このようなシステムを用いることができることを示す。
【0005】
米国特許第6,454,924号(特許文献5)は、分析物を含む液体が、捕捉剤が表面に付着した直立した柱の頂上に配置された試料表面を通り越して概ね下向きに流されていき、このような柱の側面がそれらが範囲を定めるチャネル内での流れを容易にするために疎水性にされている、マイクロ流体デバイスを開示している。
【0006】
K. Takahashi et al., J. Nanobiotechnology, 2, 5(13 June 2004)(6pp)(非特許文献1)は、多数のマイクロ流体流入口通路が、ガラスプレートと結合させたPDMSプレート(光硬化性エポキシ樹脂中に造られた種型の中で製造)として作られた、中央の細胞選別領域に通じているオンチップ細胞選別システムを開示している。PDMSプレートには、合流点である短い細胞選別領域を通る最中にこれらの細胞を緩衝液の平行した連続的な廃棄流へと導く静電力の印加によって、望ましくない細胞の分離を容易にするための寒天ゲル電極が設けられている。大きな塵粒を物理的に捕らえるためのポストを用いるプレフィルターも示される。公開された国際特許出願WO 2004/029221号(特許文献6)は、母体RBCの選択的溶解によって胎児RBCを母体血液から分離するといった細胞分離のために用いうる、同じように構築されたマイクロ流体デバイスを開示している。細胞を含む試料を、全細胞を分離するマイクロ流体チャネルデバイスに導入することができる;これは複数の円筒形障害物を含み、障害物の表面には抗体などの結合部分が適切に連結されており、それらの部分は試料中の細胞と結合すると考えられる。米国特許第5,637,469号(特許文献7)は、インサイチューで分析できる関心対象の生体分子を捕捉するために、抗体などの結合部分が表面に固定化された、深さが100ミクロンまたはそれ未満である複数のチャネルを有するマイクロ流体デバイスを開示している。米国特許第5,147,607号(特許文献8)は、抗体をマイクロチャネル内に固定化する、サンドイッチアッセイなどのイムノアッセイを実行するためのデバイスの使用法を教示している。マイクロチャネル内には、チャネルの底面から上向きに延びそれらに対して抗体が固定化される、一群の突起を含む陥凹部を設けることができる。
【0007】
前述の、簡単に説明してきた参考文献は、細胞または他の生体材料を体液などから単離するための改良された分離方法が引き続き探索されているという証拠を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願第2004/038315号
【特許文献2】米国公開特許出願第2002/132316号
【特許文献3】米国特許第6,074,827号
【特許文献4】米国特許第6,432,630号
【特許文献5】米国特許第6,454,924号
【特許文献6】国際特許出願WO 2004/029221号
【特許文献7】米国特許第5,637,469号
【特許文献8】米国特許第5,147,607号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】K. Takahashi et al., J. Nanobiotechnology, 2, 5(13 June 2004)(6pp)
【発明の概要】
【0010】
本発明は、少なくとも1つの特別に構築されたマイクロチャネルデバイスを組み込んだ、希少な細胞または他の標的生体分子を比較的少量の体液などから回収するためのマイクロフロー装置を提供する。このようなデバイスは、複数の横断固定ポストを収集領域に組み込んだ、チャネル様の流路を備えて形成された基板を用いて構築される;これらのポストは基板と一体化しており、チャネルの上面と下面との間に延びている。ポストは、そこを通る直線的な流れを乱し、かつ重要なことに、アレイを通る規則的な層流を分割して、それによってポストとの衝突を確実にし、かつ収集領域を通ってこの流路に沿って流される体液または他の液体における渦および乱流を促進するために、特定の不規則なアレイパターンで配置される。ポストは、サイズ、例えば横断直径について多様である。所望の標的生体分子を捕捉し、それによってそれらをマイクロチャネルの収集領域内に収集するために選択される隔離剤は、横断ポストの表面および収集領域全体にわたる全ての他の表面に対して適切に付着される。好ましくは、収集領域につながるマイクロチャネルの上流の位置に供給ウェルが設けられる。マイクロフロー装置を水平面に対して傾斜した向きに置くことにより、重力によって作り出される力ベクトルの結果として、より十分な細胞分離を実現することができる。
【0011】
1つの特定の局面において、本発明は、以下の段階を含む、細胞などの生体分子を体液または他の液体の試料から分離するための方法を提供する:標的生体分子を含むこのような試料をマイクロフローデバイス内の流路に沿って流入口から流出口まで下流へと流す段階であって、流路が断面積の拡大した収集領域を含むマイクロチャネル配列を含み、その間、デバイスを前記流路収集領域が水平面に対して約30゜〜約60゜の角度に整列するような向きに置く段階;(a)前記領域内に位置する複数の分離ポストによってこのような流れが遮断される結果として、前記収集領域を通る液体の直線的な流れを妨げる段階であって、ポストが前記マイクロチャネルの上面または下面と一体化されてそこからその反対面へ延び、前記ポストが前記流路を横断して延び、かつ前記収集領域をまたいで側方に延びてそこを通る直線的な流れおよび層流を妨害する不規則なパターンで配置されており、前記ポストを含む前記収集領域の全ての表面が隔離剤を表面に担持している段階、および(b)前記不規則なポストによる流れの乱れおよび重力に起因する力ベクトルの結果として、流れている液体試料中に見出される標的生体分子を、標的分子を隔離剤と結合させることによって、収集領域内の表面上に捕捉する段階であって、ベクトルが前記収集領域の前記下面に対して鋭角に整列する段階、によって流れている試料から標的生体分子を分離する段階;ならびに液体試料の残りを流出口を通して排出する段階。
【0012】
もう1つの特定の局面において、本発明は、細胞などの生体分子を体液または他の液体試料から分離するためのマイクロフロー装置であって、標的生体分子を含むこのような試料を通して流すことができる流路が内部に定められている主要部分を含むデバイスを含み、主要部分が前記流路に対する流入口通路、そこからの流出口通路、前記流入口と流出口通路との間に延びたマイクロチャネル配列および閉鎖板を有し、前記マイクロチャネル配列が、その一方が前記閉鎖板によって提供される上面および下面を有する収集領域ならびに複数の横断分離ポストを有し、前記ポストが前記収集領域の前記上面および下面の一つと一体化され、前記閉鎖板によって提供されるもう一方の前記表面に対して前記流路をまたいで側方に延びており、前記ポストが前記領域を通る流体の直線的な流れおよび層流を妨害するように不規則なパターンで配置されており、前記ポストを含む前記収集領域の前記表面が標的生体分子と結合すると考えられる隔離剤を担持しており、前記流入口が前記収集領域を通る前記流路に対して約120゜〜約150゜の角度で整列しており、それによって該主要部分が該流路とともに水平面に対して30゜〜60゜の角度で整列している間に試料を前記流入口を通して実質的に垂直に下向きに供給することができ、かつそれによって前記ポストの前記不規則なパターンおよび重力に起因する力ベクトルが前記収集領域内の、特にその下面上にある標的生体分子の有効な捕捉を引き起こす、装置を提供する。
【0013】
さらにもう1つの特定の局面において、本発明は、細胞などの生体分子を体液または他の液体の試料から分離するためのマイクロフロー装置であって、標的生体分子を含むこのような試料を通して流すことができる、腔として定められた流路をその平面内に有する主要部分、流入口手段、流出口手段、および前記流入口と流出口手段との間に延びたマイクロチャネル配列を有し、マイクロチャネル配列が、前記領域内に設置された複数の横断分離ポストを備えた収集領域、および前記主要部分平面に隣接して前記流路腔を閉鎖する平面を有する閉鎖板手段を有し、前記ポストが前記収集領域の基部面と一体化され、前記閉鎖板手段の表面へ延びるようにそこから突き出ており、前記ポストが前記領域を通る流体の直線的な流れおよび層流を妨害するように前記収集領域内で前記流路をまたいで側方に延びる不規則なパターンで配置されており、前記ポストを含む前記収集領域の全ての前記表面が親水性透過性ヒドロゲルでコーティングされ、標的生体分子と結合すると考えられる隔離剤を担持し、前記ポストの前記不規則なパターンの結果としての前記収集領域の全体を通した層流の乱れが前記収集領域内の前記表面上での標的生体分子の有効な捕捉を生み出す、装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】簡略化されたポストを含む収集領域がマイクロチャネル内に構成されている、マイクロフローデバイス用の基板の斜視図である。
【図2】パターン化されたポストが設置された、図1の収集領域の一部分を示す拡大部分図である。
【図3】その底面に取り付けられたカバープレートを伴う、線3-3に沿った図1の基板の正面断面図である。
【図4】図1で一般的に示された基板に、中板を含めることによって2つの弁を組み込んだ装置の概略斜視図である。
【図5】図4の線5-5に沿った断面図である。
【図6】ポンプがマイクロフロー装置の一部として構成されている、図1に示されたタイプの基板を示す概略平面図である。
【図7】マイクロ混合器が供給領域に組み込まれている基板の一部分の概略図である。
【図8】親水性コーティングの適用によって収集領域の全体にわたって付着された抗体の概略図である。
【図9】その後の所望の標的細胞の捕捉の描写を伴う、隔離剤、例えば抗体を、収集領域の全体にわたって共有結合させるために用いうる、化学反応の概略図である。
【図10】その後の所望の標的細胞の捕捉の描写を伴う、隔離剤、例えば抗体を、収集領域の全体にわたって共有結合させるために用いうる、化学反応の概略図である。
【図11】このようなパターン化されたポスト、細胞分離デバイスを利用する細胞回収操作の諸工程を図示した工程図である。
【図12】水平面に対する傾斜下での操作用に設計されたマイクロチャネルデバイス内にポストを含む収集領域が構成されている、マイクロフロー装置の代替的な態様の斜視図である。
【図13】図12のマイクロフローデバイスの主要部分の底面図である。
【図14】図12の線14-14に沿った、サイズを拡大した正面断面図である。
【図15】使用中の図12の装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましい態様の詳細な説明
基本的には、収集領域17を有する少なくとも1つのマイクロチャネル13を含む流路が内部に定められている主要部分または基板11を有するデバイスを含む装置であって、流路が試料流入口15および液体流出口19につながっている装置が提供される。本明細書で以下に述べるように、流路は、そのそれぞれが1つのこのような収集領域を有する、連続して配置されたいくつかのマイクロチャネルを含んでもよい。または、いずれも当技術分野で周知であるように、マイクロチャネルが、連続して配置された複数の収集領域を有してもよく、複数の流入口および複数の流出口があってもよい。さらに、それが、チップ、ディスクなどの上に構築された一体型マイクロ流体装置の一部であってもよい;このような装置においては、細胞回収および/または試料から単離された生体分子の診断を行うために必要なMEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)または構成要素の実質的に全てを、単一の小型で容易に取り扱える単位装置の一部として組み込んでもよい。
【0016】
図1は、試料液体が入口または流入口としての役割を果たす開口部またはウェル15を通して供給される、マイクロチャネル13および流出口としての役割を果たす開口部19を含む流路を伴って形成された、主要部分または基板11の斜視図である。収集領域17の断面積は、流入口開口部15からつながる流入口区域18のそれよりも大きい。流入口区域は、それが領域18の末端で広がって収集領域17に入るところのすぐ上流に、軸方向に配置された一対の仕切/支持体21を含む。これらの中央仕切は、流れを2つの行路に分けて、液体の流れをそれが収集領域17の入口末端に送達される際により均等に分配する役割を果たす。収集領域17は、液体流路を横断するように揃えられ、流路の収集領域部分の幅全体にわたって不規則な、一般的にはランダムなパターンに配置された、複数の直立したポスト23を含む。ポストのパターンは、収集領域を通る直線的な流れがなく、層流の流れが乱されて、流路に沿って流される液体とポストの表面との間に良好な接触が確保されるようなものである。ポストは収集領域17の平台22と一体化され、それに対して直角に延び、基板11の流路を通って流される流体の水平路に対して垂直な表面を呈する。好ましくは、本明細書の以下で述べるように、それらは、基部面22と並行であって流路を閉鎖する、対向する平坦閉鎖板27の面へ延びて、それとの結合によってその遊離端面で固定される。流入口および流出口の穴24aおよび24bを、このような閉鎖板を貫通させて開けてもよいが、それらは好ましくは基板11の内部に形成される。もう1つの流れ仕切/支持体21aは、収集領域からの出口に置かれる。
【0017】
当技術分野で周知であるように、それぞれが収集領域を有する一対の並行したマイクロチャネルを含む流路を伴って、基板を形成することができる。このようなものは直列流配置として用いることも可能であると考えられ、またはそれらを並列流操作に用いることも可能であると考えられる。流れは、例えばシリンジポンプなどを用いたポンプ輸送により、または直径の大きな流入口穴24aによって提供される流入口ウェルで、貯留槽から液体を引き出すと考えられる陰圧により、実現される。好ましくは、約50μl〜約500μlの液体試料を収容する能力を有する、このようなウェルが含まれる。
【0018】
流路のデザインは、適度な範囲にあるデバイスを通る流速で、例えば、収集領域内に1秒当たり約0.05〜5mmの速度の流れを生み出すような標準的なHarvard Apparatus社の注入シリンジポンプを用いた母体血液の注入で、乱流を生み出すことなく領域を通る層流の実質的な乱れがあるようなものである;これは収集領域の全体にわたる種々のサイズのポストのランダムな配置およびポストの相対的な間隔に起因する。死点を伴わない比較的平滑で非層流的な流れは、好ましくは液体流速が約0.1〜2mm/秒で実現され、より好ましくは平均流速は約0.2〜1mm/秒に維持され、規定されたサイズの流入口ウェルからの吸引によって実現される。
【0019】
一般的には基板11は、ケイ素、溶融シリカ、ガラスおよびポリマー材料などの任意の適した実験許容性材料で作ることができる。光透過性の材料を用いることが望ましいと考えられ、特に診断機能を任意で用いる場合にはそうである。その最も簡単な態様において、構成されたマイクロチャネルを担持する基板を、図3に描写されたように基板11の対向面に隣接すると考えられる平面を有する板27によって封止する。このような板は同じ材料から製造してもよく、または単にガラスでできた固体カバープレートであってもよい;しかし、本明細書の以下に説明するように中間流調節板25を含めてもよい。用いうる適した固体不透過性プラスチックには、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ならびに実験材料使用が許容されることが周知の他のポリマー樹脂が含まれる。このようなパターン化された基板は、従来の型成形法および注型成形法から選択されるもののような、任意の好都合な方法を用いて製造することができる。
【0020】
基板は、当技術分野で周知であって、その開示内容が参照により本明細書に組み入れられるJ. Nanobiotechnology誌の論文に記載されているように、光リソグラフィーを用いて、厚いネガ型フォトレジストで作り出すことができる種型または雌型構造を用いてポリマー材料から都合よく製造してもよい。例えば、構築層は、市販されている標準グレードのエポキシ樹脂(EPON SU-8)フォトレジストおよび硬化剤(SU-82025)の混合物から形成することができ、それらをシリコンウエハー基板上に2000rpmでスピン加工して、例えば、このようなフォトレジストの40または50μm厚の薄膜を得ることができる。その厚みが収集領域内の高さを決定する。薄膜を、全体にわたって均等な厚みを確保するために、正確な水準の熱板上で60℃で3分間、続いて95℃で7分間にわたる露光前ベーキングに供し、その結果得られたサンプルを室温まで冷却する。Karl Suss Contact Mask Alignerを用いて、最終的デバイスにおける流路のための所望のパターンで薄膜に露光させる。続いて薄膜を65℃で2分間、続いて95℃で5分間ポストベークし、その後それを、現像中は軽い攪拌を適用しながら市販のSU-8現像剤中で5分間現像した。これによってエポキシ樹脂フォトレジストの雌パターンの型が作り出され、それは続いてPDMSまたは他の適したポリマー樹脂でのパターン化されたポスト基板の複製のための種型として用いられる。
【0021】
一例として、PDMS組成物を、PDMSプレポリマーおよび硬化剤の重量比で10:1の混合物(Sylgard 184キット、Dow Corning)から調製する。この混合物を、混合中に形成される可能性のある泡を排除するために減圧下に供し、その後所望の深さの腔の中に設置されたエポキシ樹脂種型に注ぎ入れ、所望の厚さの基板を作り出す。種型には任意で、硬化後のPDMSレプリカの離型を改善するために、適した金属(例えば金)の薄層(ほぼ50nm)をプレコーティングしてもよい。PDMS基板の硬化は80℃で90分間行うことができる;しかし、本明細書で以下に考察するように、PDMSをまず生硬化(undercuring)させることにより、ポスト表面を含む収集領域のその後の機能付与を容易にすることも可能である。
【0022】
マイクロチャネル13および収集領域17内のパターン化されたポスト23の割付および寸法は、種型の製造の露光段階で用いられるマスクによって決定される。マイクロチャネル13の深さは種型のSU-8層の厚さによって制御され、それはスピンコーティング条件によって決定される。図2は、好ましいおおむねランダムな配置にある収集領域17内のポスト23を拡大したものを示す、マイクロチャネル13の上面図を提示する。
【0023】
代替的な態様において、流入口および流出口の連絡を得るために、離型されたPDMSレプリカ基板の平坦で無傷の表面またはカバープレートに、穴24をドリルで開けること、または他の様式で作り出すことも可能と考えられる。前者の場合、それを、基板に対する無孔カバーまたは底板を提供すると考えられる、簡易な顕微鏡カバーガラスまたはPDMSの薄い平坦な小片などのような他の適した平板とかみ合わせることもできると考えられる。この2つの構成要素をプラズマクリーニングに2分間供した後、浄化された2つの表面を、対向する表面に触れることなく直ちに表面を密着させて置き、それを続いて当技術分野で周知であるような表面反応によって封着し、永続的な封を形成し、マイクロ流体流路を閉鎖する。
【0024】
オンチップでのフロー管理をこのような装置に一体化することが望ましい場合、空気弁などのフロー調節特徴要素のための腔を組み込んだ別個のSU-8母型を、同様に製造することもできる。このような種型から生成されたフロー調節板または層25をまずマイクロチャネル基板11に積層させ(図4および5参照)、続いてそれに平坦閉鎖板27を積層させることが考えられる。マイクロフロー装置におけるこのようなフロー調節構成要素および他のMEMSの使用は、米国特許第6,074,827号および第6,454,924号に示されており、それらの開示内容は参照により本明細書に組み入れられる。このようなフロー調節板25をマイクロチャネルを担持する基板11と慎重に揃えて置き、続いて80℃で一晩焼き入れして、複合構造を製造する。その後、フロー調節板25内の腔を、前述したものと同じ手法を用いて、平板またはスライドガラス27によって閉鎖する。さらなる選択肢として、さらにより精密な制御および随意選択的な加工処理を組み込むことが望ましい場合、第2のフロー調節板を同じ手法を用いて第1の板25に積層させてもよい。
【0025】
例えば、オンチップでのフロー調節機構を、基板に対して封着されるフロー調節層25をそれらに配置することにより、基板11中に形成された多チャネル系に提供することができる。簡単な系は図4および5に図示されており、そこでは通路24aおよび24bが流入口および出口につながっている。空気弁29に対する空気供給は、基板11を貫通して板25まで延びた、穿孔により、または他の様式により適切に形成された穴30を介したものであってよい。フロー調節板25または基板11は、任意で、液体を流入口15に送達しうる代替的な供給通路を含むことも可能であると考えられ、これはまた、当技術分野で周知であるような代替的な出口または排出通路を含んでもよい。
【0026】
前述したように、2つの直列連結された収集領域が備えられた配列は、様々な操作方法および使用方法に適する。例えば、関心対象の標的生体分子または細胞の2つの異なる部分集団を含む可能性のある試料液体を処理しようとする場合、1つの種類の隔離剤を1つの収集領域またはチャンバー内のポストに付着させ、異なる種類の隔離剤を下流収集チャンバーのポストに付着させることができる。または、標的細胞が極めて希少である状況では、液体試料中の細胞のほぼ100%を捕捉しうる尤度が高くなるように、同一の隔離剤を両方の収集チャンバー内のポストに付着させることが望ましいかもしれない。
【0027】
構築上の見地から、このような装置に任意で組み込んでもよいいくつかの追加的な構成要素が、図6および7に図示する。図6は、蠕動型ポンプ配列が、収集チャンバーに隣接する流入口通路領域および流出口通路領域に組み込まれている、図1に描写されたものに類似したマイクロチャネルを示す。図示されるのは、流入口15'、収集チャンバー17'および流出口19'を含むマイクロチャネル配列13'であり、これには収集チャンバーにつながる入口通路18'に設置された、特別に設計された3つの膜弁を組み入れることにより、一体型ポンプ輸送配列41が構築されている。概略図は図4および5に示されたものに類似した配列のものであり、そこではフロー調節層または調節板内のそれぞれの弁膜の圧迫側につながる通路30'に対する空気または他の高圧ガスの適用により、その膜が拡張させられ、それが結び付いているマイクロチャネルの隣接領域内の液体が圧搾される。3つの弁が左から右へと順々に作動するように制御ユニットをプログラムすることにより、マイクロチャネルの入口領域18'内の液体が右へとポンプ輸送されて収集デバイス17'を通るような波状の動きが設定される。所望であれば、同様の蠕動型ポンプ輸送配列43も、収集チャンバー17'から下流につながる出口通路領域45内に組み込まれる。
【0028】
もう1つの潜在的な代替物として、マイクロ混合配列が図7に図示される。供給通路55につながる環状経路53を含むマイクロ混合器51が図示されており、これは前述したような基板中の収集チャンバーにつながる入口通路であってもよい。液体を環状経路53に供給するために一対の流入口チャネル57aおよび57bが備えられ、経路55、57aおよび57bを通る液体流量は空気弁59を介して制御される。追加的な3つの空気弁61が通路それ自体の中に配置され、前述した種類の蠕動型ポンプ63を構成する。この構成は、収集チャンバーなどへの送達の前に、基板それ自体の中での2つの液体のマイクロ混合の効率的な方法を提供する。例えば、環状経路53を、1つの流入口チャネル57aからの何らかの液体および流入口チャネル57bからの何らかの緩衝液で満たすことにより、続いて環状経路に備えられた環の周りの液体をポンプ輸送するために3つの弁61を順々に作動させることによって混合を生じさせることができる;このようにして、送達通路55を通って排出される前に液体を十分に混合することができる。
【0029】
パターン化されたポスト領域のポリマー表面は、所望の標的細胞または他の生体分子に特異的な隔離剤の全ての表面への結合を可能にするために、様々な方法で誘導体化することができる。例えば、プラズマ処理およびマイクロチャネルを担持する基板の閉鎖の後、アミノ官能基含有シラン(例えば、Dow Corning Z-6020の10%溶液)またはチオ官能基含有シランのエタノールによる容積比1〜50%の溶液をマイクロチャネルに注入して開口部15と19との間の領域17を満たし、液が満ちたマイクロチャネル13を続いて室温で30分間インキュベートする。誘導体化は、不完全に硬化したPDMSなどのポリマーに対して、マイクロチャネル領域を板で閉鎖する前に行うことができる。このような場合、前述のように、代替的な方法は、PDMS基板をわすかに生硬化させ、続いて密着板を固定して置換シランまたは他の官能化試薬で処理した後、硬化を完了させることである。例えば、Z-6020で処理した後硬化を完了させるために、約50〜90℃で約90分間の最終加熱段階を用いてもよい。または、室温で1日または2日置いても硬化が完了すると考えられる。対向する表面の誘導体化は真の結果ではないため、このような誘導体化処理をマイクロチャネル領域の閉鎖の前に行うこともできる。続いて流路をエタノールで浄化すれば、マイクロチャネルに生体分子隔離剤を結合させる準備が整う。
【0030】
隔離剤という用語は、標的生体分子と特異的な様式で相互作用して標的を物理的に封鎖することができる材料を指して用いられる。これらの隔離剤には、タンパク質と結合するDNA、RNAおよびPNAなどの核酸が含まれうる;一般的には、タンパク質などの生物材料を含む非ハイブリダイゼーション隔離剤、例えば、受容体、ペプチド、酵素、酵素阻害薬、酵素基質、免疫グロブリン(特に抗体)、抗原、レクチン、修飾タンパク質、修飾ペプチド、二本鎖DNA、生体アミンおよび複合糖質などが用いられる。合成分子、例えば、この種の特異的結合活性を有するように設計された薬物および合成リガンドを用いることもできる。「修飾」タンパク質またはポリペプチドとは、新たな化学部分の付加によって、既存の化学部分の除去によって、または除去および付加の何らかの組み合わせによって改変された、1つまたは複数のアミノ酸を分子内に有するタンパク質またはペプチドを意味する。この改変には、天然および合成性の修飾の両方が含まれる。天然の修飾には、リン酸化、硫酸化、グリコシル化、ヌクレオチド付加および脂質化が非限定的に含まれうる。合成修飾には、ヒドロゲルおよび微細構造、ナノ構造、例えば、量子ドットまたは他の合成材料に対する結合を促進するための化学リンカーが非限定的に含まれてもよい。さらに、修飾には、既存の官能部分、例えばヒドロキシル、スルフヒドリルまたはフェニル基の除去、または天然の側鎖もしくはポリペプチドアミド骨格の除去もしくは改変も含まれうる。複合糖質の例には、天然および合成性の直鎖状および分枝状のオリゴ糖、修飾多糖、例えば、糖脂質、ペプチドグリカン、グリコサミノグリカンまたはアセチル化種、さらには異種オリゴ糖、例えば、N-アセチルグルコサミンまたは硫酸化種が非限定的に含まれる。天然の複合炭水化物の例には、キチン、ヒアルロン酸、硫酸ケラタン、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、セルロース、ならびにアルブミンおよびIgGなどの修飾タンパク質上に認められる炭水化物部分がある。このような作用物質の2つ以上の組み合わせをポスト上に固定化することもでき、このような組み合わせは2つの部分の一混合物として固定化してもよく、または順番に加えてもよい。
【0031】
隔離剤はポスト上に直接的または間接的に固定化することができ、付着を促進するためにポストを前処理および/またはコーティングしてもよい。間接的な固定化が明らかに好ましく、これはポストと最初に連結される中間作用物質または物質を用いることを想定している;さらに、隔離剤を中間作用物質と連結させるためにはカップリング対を用いることが望ましいと考えられる。例えば、ストレプトアビジンまたは別の種の抗体を標的とする抗体を、中間作用物質と結合させることができ、それらにその後ビオチン化Abまたはこのような別の種のAbとカップリングさせることが考えられる。このような配置により、種々の試料から様々な細胞を捕捉するために、または除去的濃縮(negative enrichment)を行うために用いうる、このようなマイクロフローデバイスの一般的生産が可能になる。
【0032】
隔離剤としてのAbの使用は細胞分離のために好ましく、それらの付着は米国特許第5,646,404号および第4,675,286号ならびに先行技術全般にわたって記載されている。例えば、非共有結合的付着のための手順は米国特許第4,528,267号に記載されている。抗体を固体支持体に共有結合的に付着させるための手順も、Ichiro ChibataによりIMMOBILIZED ENZYMES;Halstead Press:New York (1978)、およびA. Cuatrecasas, J. Bio. Chem. 245:3059 (1970)に記載されており、両者の内容は参照により本明細書に組み入れられる。Kawata et al., J. Exp. Med., 160:653 (1984)は、細胞特異的Ab、例えばヒト栄養膜細胞に対するモノクローナル抗体(抗Trop-1および抗Trop-2)を用いて標的細胞を検出することによる、胎盤細胞集団を単離するための方法を開示している。米国特許第5,503,981号は、この目的に用いうる3つの他のモノクローナルAbを同定する。
【0033】
抗体は固体ポスト表面と、表面層の使用、または続いてそれにAbを付着させる長いリンカーのコーティングを介するように、間接的に結合させることが好ましい。例えば、表面を最初にタンパク質などの二官能性または多官能性作用物質でコーティングする;続いて作用物質をカップリング剤、例えばグルタールアルデヒドを用いて抗体とカップリングさせる。抗体はまた、水溶液中にある抗体を、遊離イソシアネート基またはポリエーテルイソシアネートなどの等価な基を有する層でコーティングされた表面に適用することによって有効に結合させることもでき、または抗体をシアン化臭素によってヒドロキシル化材料とカップリングさせてもよい。特に好ましいのは、本明細書で以下に図9に関連して述べる、遊離イソシアネート基を有する親水性ポリウレタンを基にしたヒドロゲル層の使用、または本明細書で以下に図10に関連して述べているような、PEGの1つ、ポリグリシンなどのようにかなりの長さのある親水性リンカーの使用である。
【0034】
選択される隔離剤は、関心対象の生体分子の特異的捕捉に向けられ、その標的生体分子は非常に様々な細胞の任意のもの、ならびにタンパク質、ウイルス、炭水化物などであってよい;しかし、本発明は細胞分離において特別な効率および特別な利点を示すと考えられている。「細胞」という用語は、本出願の全体を通じて用いられるが、それは隔離剤に特異的な表面リガンドを同じように担持する、細胞の断片および/または残渣を含むと解釈されるべきである。当技術分野で公知であるように、標的生体分子に対するこのような所望の特異性を得るために、高い特異的親和性を有すると考えられる適切な隔離剤が選択される。上述したように、このようなマイクロフローデバイスを、既知の混入細胞を標的とすることによる除去的濃縮のために用いることもできる。
【0035】
抗体(Ab)を用いる場合、当技術分野で周知の任意の機序を用いて、それらを、好ましくはこのような中間作用物質によって、適切に付着させる。例えば、Abを、それらをチオール化するために2-アミノチオランで処理し、その結果生じたチオール化Abを、PEG-マレイミドで処理したポストと結合させてもよい;または、Abを、反応性イソシアネート基またはチオシアネート基を有する適切な親水性コーティングと、直接的に共有結合させることもできる。
【0036】
抗体または他の隔離剤がパターン化されたポスト収集領域の全体にわたって配置されれば、マイクロチャネルデバイスは使用可能な状態である。血液試料または尿試料などの体液、または標的細胞集団を含む他の何らかの前処理された液体を、標準的なシリンジポンプからこのようなマイクロチャネルデバイスに対する流入口15につながる流入口通路24aへと注意深く放出させること、または所望の容量の検査用の試料を収容するためのウェルとしての役割を果たす相対的に直径の大きい流入口通路24aによって提供される試料貯留槽を通して真空ポンプなどによって吸引することなどによって、流路に沿って収集領域17を通して流す。開口部24aは、このようなシリンジポンプと接続された管とかみ合わせるために、このようなものを用いる場合、継手(示されていない)を含んでもよい。ポンプは、装置を通る約0.5〜10μl/分の流れを生じさせるように操作してもよい。処理および/または分析しようとする体液または他の細胞を含む液体によっては、当技術分野で公知であるように、その容積を減らすため、および/または望ましくない生体分子をそこから除去するために、前処理の段階を用いることもできる。
【0037】
細胞分離法の全体的な効率を潜在的に高めるためには、流出口19から出る試料を収集して、それを複数回マイクロチャネルデバイスを通して流すことが望ましい場合もある;このような反復処理は、細胞が特に希少であって、そのため試料中の数が極めて少ない可能性が高い場合に特に有用と思われる。しかし、本装置によって実現される捕捉効率が高いことからみて、このような反復的な流れが必要になることはめったにないと考えられる。または、前述したように、連続して連結された2つの収集チャンバーを用いることも考えられる。さらに、ある程度大量の体液試料を処理しようとする場合、2つまたはそれ以上のマイクロチャネルを基板上で並列的に用いることも可能と考えられる。
【0038】
隔離剤(例えば、Ab)は、マイクロチャネル内の基部、対向表面、ポストおよび収集領域の側壁に付着される;しかし、このような側壁表面は、基部、対向表面および流れを乱すポストほどには、細胞の捕捉に関して特に有効ではない。細胞または他の生体分子を含む液体の流れは、限定された管腔を通してであっても、結果として細胞は流動剪断力が最小である中央の流動領域に主として存在する;その結果として、隔離剤を担持する側壁上での捕捉は、横断ポストが層流を乱している中間領域における表面上での捕捉と比較して極めて乏しい。これらの領域内では、適正にカップリングすることの結果として本来の三次元コンフィギュレーションをとりうる隔離剤が驚くほどに有効である。
【0039】
デバイスを通した液体試料の流れの完了後、存在するならば、標的とした細胞が収集領域内に捕捉されていると考えられ、パージはまず、試料の一部であって収集領域内の抗体または他の隔離剤によって強く捕捉されない異質な生体材料の全てを除去するために、緩衝液を用いて行われる。有効な緩衝液を用いたこのようなパージにより、非特異的に結合した全ての材料が除去され、マイクロチャネルデバイス内の収集領域内に付着した標的細胞のみが残ると考えられる。
【0040】
緩衝液を用いたパージがひとたび完了したところで、処理方法の目的が細胞収集のみである場合、捕捉された細胞を続いて適切に遊離させる。本明細書で以下に述べるように、場合によっては、何らかの分析をインサイチューで行うことが望ましいと思われる。例えば、細胞を付着した状態で算定すること、またはそれらを溶解させてその後、収集チャンバーまたは下流のいずれかにおいてPCRに供してもよい。
【0041】
遊離を行わせる場合、力学的(例えば、高流量)、化学的(例えば、pHの変化)、または酵素的切断剤の使用のような、当技術分野で公知の任意の方法を用いることができる。例えば、標的細胞を収集領域から遊離させることを目的として、隔離剤を切断するため、または作用物質と細胞との間の結合を切断するために、試薬を適用することもできる。例えば、トリプシンまたは特異的に照準が合わされた酵素を、Abおよび/または細胞表面抗原を分解するために用いることもできる。Abなどを付着させ、かつ続いて捕捉されたリガンドを有効に取り出すための具体的な方法は、米国特許第5,378,624号で考察されている。例えば、希少な細胞の表面上の特徴に特異的な抗体の使用によって、細胞が隔離されている場合、遊離は、トリプシンまたはプロテイナーゼKなどの別の適したプロテアーゼを含む溶液を用いた処理によって行わせることができる。または、他の隔離剤からの遊離を行わせるためにコラゲナーゼを用いてもよく、または特異的に切断されうるリンカーを隔離剤と付着させるために用いてもよい。このような切断の際には、マイクロチャネルからの流出口を貯留槽または他の収集装置と接続し、遊離した希少な細胞を保有する排出流を、さらなる分析のために収集する。マイクロチャネルデバイスを、流出口に複数の出口通路、およびどの出口が開くかを調節するための弁を備えるように構成することもできる;これにより、1つの出口通路を予備段階における廃棄物の排出のために用い、続いて標的細胞の流れを収集容器に導くために異なる出口通路を用いることが可能になる。
【0042】
パターン化されたポスト収集領域17におけるポスト23の位置および形状は、最適な流体力学、およびその特異的な表面上の特徴による標的細胞の捕捉の向上のために操作することができる。極めて一般的には、ほとんどの場合において、横断固定ポスト23の水平断面の好ましい形状は、ポストの横断表面に対する非特異的結合を促進する可能性のある鋭角を回避したものである。ポスト23は直線的な外面を有し、好ましくは一般的には環状断面形状または6つもしくはそれ以上の辺を有する正多角形である。用いうる代替的な形状には、先端が下流端にある涙滴形、および軽度に弯曲した形状または卵形がある;しかし、より強い衝突が望ましい場合、四角形を用いてもよい。ポストのパターンは、ポストの表面、基部および対向表面に付着された隔離剤による標的細胞の捕捉を向上させる液体の流れの流動パターンを生み出すべきである。この目的を達成するためには、ポストはさまざまに異なるサイズであって、ひと揃いのランダムなパターンで配置されているべきであることが見出されている。驚いたことに、例えば、高さが約100ミクロンで幅が約2〜4mmである収集領域内の、断面サイズがさまざまに異なるポスト23、例えば、直径約70〜約130ミクロンの少なくとも約3種または4種の異なるサイズである環状断面のポストのランダムなパターンは、ポスト間の最短の分離間隔が50〜70μm、好ましくは約60μmである場合に、液体試料の流れからの細胞の特に有効な捕捉を促進するようである。
【0043】
全てが基部に対して垂直である平行線によって形成された側壁を有するポストの断面積は、それらが収集領域の容積の約15〜25%を占めるようなものであることが特に好ましい。好ましくは、ポストのパターンは、それらが収集領域の容積の約20%を占め、液体の流れのための空隙容積が約80%残されるようなものであると考えられる。図2に示されたポスト位置の特定のランダムなパターンは、層流が有効に乱されるこれらの領域内で、隔離剤によって細胞が捕捉される傾向を高めるように見える。ポスト23は互いにかなりの間隔、例えば少なくとも約60ミクロンをあけており、異なるサイズのポストが互いの上流および下流に設置されることが好ましい。
【0044】
より小さなポストはより大きなポストの下流に渦領域を作り出すと思われ、生成される流動パターンの結果として、その近傍にある表面、特に収集領域の底面は、標的細胞の捕捉に特別な有効性を示すと考えられる。図2に示されるように、側壁から約100ミクロンを上回る位置にある、流路の長軸方向に延びる任意の直線は、複数のポストと交差すると考えられる。前述したように、ポストは基板の基部20の表面と一体化しており、好ましくは対向表面、すなわちフロー調節板25もしくは平坦閉鎖板27のいずれかに対する反対端または遊離端で固定される。
【0045】
前に示したように、抗体などの隔離剤は、(a)特定の親水性ヒドロゲル物質の薄層、または(b)分子量が少なくとも約1,000ダルトン、好ましくはMWが約2,000〜100,000ダルトン、より好ましくは約3,000〜50,000ダルトンである、PEG、ポリグリシンなどの親水性リンカーで表面をコーティングすることにより、それらがより有効に機能しうるような様式で、収集領域の全体にわたって付着させることができる。特に好ましいのは(a)、すなわちウレタン結合によって重合し、反応性イソシアネート基を含むPEG、PPG、またはそれらのコポリマーを含むイソシアネート官能基含有ポリマーである親水性透過性ヒドロゲルコーティングを用いることである。好ましいヒドロゲルは、グリセロールに対するエチレンオキシドの付加によって作り出される、分子量が約6,000である三枝PEG分子を利用する。その結果生じたポリオールを、イソホロンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパンと反応させてプレポリマーを調製する。プレポリマーと、特定の用途のための適切な緩衝液、溶媒、および他の構成要素との混合物を、マイクロフローデバイス内の収集領域の表面上でインサイチューで架橋させる。チャンバーを通る層流を乱すようにランダムに配置された様々な直径の複数のポスト61が存在し、ポスト61および対向する平面のそれぞれが外部コーティング63を担持している、マイクロチャネル内部の収集領域の図を、図8に概略的に示す。抗体の形態にある隔離剤65が、ポスト上の親水性透過性ヒドロゲルコーティングに付着されたものとして描写されている;その結果、主として水であり、したがって極めて変形性が高いヒドロゲルに対する付着によってそれらは変化せず、その本来の三次元コンフォメーションを保つ。
【0046】
図9は、図8のような、好ましい特徴を有する親水性透過性ヒドロゲルコーティング49を用いた場合に用いうる化学反応の概略図として提供する。隔離剤、すなわち抗体を、収集領域の全体にわたる全ての表面に対して付着させる、代表的な一連の流れを示す。図9の地点1は、アミノシランなどによる処理によるアミノ誘導体化の後の表面を示す。この段階の後、表面をカゼインコーティングするために脱脂乳を用いる;地点2を参照。地点3は、コーティングが行われた後のコーティングされた表面を表す。トルエンジイソシアネートによる末端キャッピングを受けた分子量が約3400のPEGを含むプレポリマーを、水混和性の有機溶媒、好ましくはNMPとCH3CNとの混合物のような非プロトン性溶媒中に溶解させる。ポリマーは好ましくは、三官能性またはそれを上回る官能性ポリオール、例えば、PEGおよびPPGを含み、三官能性イソシアネートも含みうる。続いて、重量比で約98.5パーセントの水を含む水溶液を調製し、その溶液をマイクロチャネルを通してポンプ輸送し、そのためアミン誘導体化された表面にある末端キャッピングを受けたイソシアネート基の一部の反応の結果として、ポストの表面および収集領域の対向表面が、この親水性ヒドロゲルコーティングと接触する。その最終結果は図9に地点3として表されており、それはここでは水との初期反応およびその後の尿素結合の形成の結果として作り出されるヒドロゲルである。
【0047】
地点4は、表面アミノ基を有すると考えられる抗体の付加を表している。それらは、地点5に示されるように、Abのアミンと親水性コーティングによって担持されるイソシアネート基またはチオシアネート基との共有結合によって、ポストのこのような親水性透過性ヒドロゲルコーティングに対して直接付着させることができる。または、図9の地点6に描写されているように抗体をまずチオール化して、続いてこれらのチオール化抗体を水溶液として、それらが次にコーティングされたポリマーのイソシアネート基と容易に共有結合すると考えられる場所である収集チャンバーに供給することもできる、地点7参照。
【0048】
図9中の地点8および9に描写されているように、収集チャンバーを通して流す液体試料中の細胞が、乱された層流の結果として、ポストおよび/または対向表面と接触するようになると、抗体に特異的な細胞表面上の抗原がそれに結合し、細胞を有効に捕捉する。
【0049】
図10は、隔離剤、特に抗体を収集領域内の表面に係留するために、ヒドロゲルの代わりに細長いPEGまたはPPGの直鎖状ポリマーを用いる場合に用いうる化学反応の概略図として提供される。直鎖状ポリマーは、抗体が、捕捉が行われる水性環境中でその本来の三次元構造であると想定されるような長さであるように選択される。図10の地点1は、アミノシランなどによる処理によるアミノ誘導体化後の表面を示す。この段階の後、再び上記のように、表面をカゼインコーティングするために脱脂乳を用いる。洗浄後、分子量が少なくとも約2000、好ましくは少なくとも約3000であって、NHS部分を一方の端に、マレイミジル部分を反対の端に有する、直鎖状のPEGまたはPPGで、全ての表面を処理する。N-ヒドロキシ-スクシニミジルエステル部分は表面上のアミノ基と容易に反応し、少なくとも約1ミクロン厚のコーティングを提供する。適したインキュベーション後、図10の地点3によって表されるように、マイクロチャネルを排液させ、適した緩衝液で洗浄し、マレイミド-PEGでコーティングされた表面を残す。地点4は、栄養膜細胞に特異的であって、表面アミノ基を元来有する抗体を表す。抗体は好ましくは、図10中の地点5に描写された地点に到達させるために、トラウト試薬などの適した試薬を用いてチオール化される。続いてチオール化された抗体を、緩衝液中にある精製チオール化抗体をマイクロチャネルに導入し、それを適切にインキュベートすることにより、マレイミド-PEGでコーティングされたポストと結合させる。続いてマイクロチャネルを適した緩衝液で洗浄し、地点6として描写される配列を得る。
【0050】
図10の概略図の地点7は、直鎖状PEGカップリング剤によって表面に係留された抗体による栄養膜細胞の捕捉を示す。
【0051】
マイクロフロー装置のより好ましい代替的な構築を、図12〜15に図示する。図1〜3に示すものに似ているが、均一な流れを作り出すため、処理される液体と収集領域内のデバイスの内部の表面との接触を改良するため、ならびに流入口および流出口などのような収集チャンバーの外側の領域における標的とした細胞の付着を最小限に抑えるために、重力を利用するように構築されているマイクロフローデバイス71を示す。この点に関して、本装置は、水平面に対して約30゜〜60゜の角度、好ましくは約45゜で傾斜させて用いるように設計されている。したがって本デバイスは、前と同じように、流入口通路77から流出口通路79まで延びたマイクロチャネル75を含む主要部分または基板73を含み、その間に設置さた入口領域83および出口領域85を含む収集領域81を伴う。収集領域81は、主要部分の平面87における凹みまたは腔として形成され、収集領域それ自体は主要部分の表面87と実質的に並行する平坦基部面89を有する。前述のように、複数のポスト91が、入口領域および出口領域における流れ仕切とともに、それに対して垂直な基部面89から主要部分平面87のレベルまで延びている。
【0052】
入口通路および出口通路83、85の向きを除いて、デバイス71の構築は、図1〜5に描写されたデバイスに関して、本明細書で前述したものと本質的に同じである。図12および14に示すように、マイクロチャネル75を構成する腔は、液体試料の処理および分析時における完成した装置の取り扱いを容易にするために、主要部分73よりも大きな寸法であることが好ましい固体平板93によって閉鎖されている。平坦閉鎖板93は、本明細書で前述したように、ガラスまたは適した不透過性ポリマー材料でできていてよい。板93は、主要部分が注型成形、型成形、または他の様式で適切に構築されるものと同じポリマー材料によってコーティングしてもよい。より好ましくは、PDMSポリマーが用いられ、約25mm×75mmの標準的なスライドガラスを用いる場合、図12に示す ように、それをPDMSの層または薄膜95によってコーティングすることができる。閉鎖板93の取り付けにより、本明細書で前述したように、その平面をポスト91の末端表面に対して固定でき、またはそれらを、実質的に隣接するように単にそのままに置いてもよい。
【0053】
図14に最も良く認められるように、流入口通路77は、そこを通る流路に並行するマイクロチャネルの平坦表面に対して、30゜および60゜という鋭角で整列する;より好ましくは、それに対して40゜〜50゜の角度、最も好ましくは約45゜である。この配置により、図15に概略的に示されるように、供給試料をマイクロフロー装置71内に垂直に下向きに供給することが可能となり、装置は、そこを通る流路が垂線に対して例えば約45゜で傾斜するように、その上縁に沿って板98によって基部96の斜面に対して固定される。これにより、供給試料は収集領域81に対する幅広い入口領域83を満たすと考えられ、重力は、ポストが設置されている収集領域を一杯に保ち、そこを通る所望の緩徐かつ均一な流れを推進するのを補助する。より重要なこととして、液体の流れは、上面および下面に並行した方向でチャンバーを通る直線的なものであると考えられ、かつ細胞はそれらを輸送する水性緩衝液よりも重いため、重力はこれらの細胞に対して、輸送液体の流れのベクトルとは異なる力ベクトルを作り出すと考えられる。その結果として、収集領域内の異なる様々なサイズのポストのランダムなパターンによって作り出される層流の乱れに加え、細胞を流れから逸脱させて隔離剤への付着によって表面に接着させるさらなるベクトルが生じる。この効果は、収集領域を通る流れが比較的遅い場合であっても、細胞収集を実質的に改善することが見出されている。
【0054】
流入口通路および流出口通路77、79は、好ましくは同じ垂直面に設置され、流出口通路の向きはそれに対して好ましくは約90゜にある。したがって、図15に示すように、流入口通路77を垂直にして、装置71を基部96に対して固定する場合、流出口通路79は水平である。これにより、Abによる結合を受けなかった細胞および他の生体材料を含む試料が水平に出ることが可能となり、それ故にそれらの除去を促進し、かつ流路内部での非特異的付着および流出口領域内での沈降を最小限に抑える。
【0055】
図15はまた、試料がマイクロフロー装置に対して流入口通路内に垂直に供給され、流出口通路79が適した管を介してシリンジポンプなどの吸込み側に接続され、それが続いて装置を所望の流速で通る試料の流れを促進するという処理を実行する、現時点で好ましい方法も描写する。流速は、収集領域内の液体の流れの平均速度が、ポストの流れの乱れおよび重力に起因する力ベクトルの結果、標的とした細胞の捕捉を最大化することが見出されている約0.1〜約1mm/秒、好ましくは約0.2〜約0.8mm/秒、より好ましくは約0.25〜約0.5mm/秒となるような速度で液体試料が吸引されるように注意深く制御される。より速い速度はそれよりも有効でないことが見出されており、探索の対象となりうる脆弱な細胞を損傷させる可能性がある。本装置はその最も簡単な形態で図示されるが、これらのMEMSデバイスにおいて公知であって本明細書で概論的に前述したように、様々な弁および付属的な構成要素を、マイクロフローデバイス71とともに組み込むことができる。
【0056】
以下の実施例は、子宮頸管粘液の抽出物から栄養膜細胞を隔離するための、このタイプのプロトタイプ的マイクロチャネルデバイスの有効な使用法を例示する。全体的な方法は、図11に添付された工程図に略述されている。これらの実施例は、当然ながら、本発明の特定の態様のみを単に例示するものであって、この説明の末尾に添付された特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲に対する制約をなすものではないことが理解される必要がある。
【実施例】
【0057】
実施例1
生体分子を分離するためのマイクロフローデバイスは、一般的には図1に図示したようなプロトタイプ基板を用いて構築される。基板はPDMSから形成され、流路を閉鎖するために平坦ガラスプレートと結合される。収集領域の全体にわたる内面は、Dow Corning Z-6020の容積百分率10パーセント溶液とともに室温で30分間インキュベートすることによって誘導体化される。エタノールで洗浄した後、それらを脱脂乳により室温で約1時間処理し、薄いカゼインコーティングを生じさせる。10%エタノール水溶液で洗浄した後、重量比でプレポリマー1に対して有機溶媒6、すなわちアセトニトリルおよびDMFを用い、それを水と混合し、それを図9に関連して記載したようにチャネルを通して流すことで、平均MWが6000であるイソシアネートによるキャッピングを受けたPEGトリオールのプレポリマーから形成された透過性ヒドロゲルによって内面をコーティングするための処理を行う。
【0058】
この試験のために、子宮頸管粘液の試料から栄養膜細胞を単離することが望ましく、胎児由来の栄養膜細胞の外表面に担持されているリガンドに特異的である、Trop-1およびTrop-2に対する抗体を選択する。抗体(0.1mg)を、5mM EDTA(pH 8.3)を含む、100μlの0.2Mホウ酸ナトリウム/0.15M NaCl中に溶解させ、チオール化を起こさせるために、5μlの40mMトラウト試薬とRTで1時間反応させた。過剰量のトラウト試薬を10μlの100mMグリシンと反応させ、続いてCentricon-30(商標)膜上でのチオール化抗体の精製を行った。チオール化は標準的な検査法によって確認した。
【0059】
合計約5μgのチオール化抗Trop-1および抗Trop-2を含む濃度約0.5mg/mlの水溶液を、前処理したマイクロフローデバイスに供給し、溶液をそのまま置いて25℃で2時間インキュベートする。このインキュベーション期間の後、1%PBS/BSAで流路を流し洗いして、抗体がコーティングされた表面を得た上で、それを用いて胎児栄養膜細胞を単離することを試みた。
【0060】
妊婦(妊娠8〜12週)から得た子宮頸管粘液を、HAM培地(InVitrogen)で10mlに希釈し、DNアーゼ(120単位)により37℃で30分間処理した。100μmの細胞濾過器を通した濾過の後、細胞を1500RPMで30分間遠心した。細胞ペレットをHAM培地(100μl)中に再懸濁させ、約50μlの子宮頸管粘液抽出物のこの細胞懸濁液が満たされたHarvard Apparatus社製シリンジポンプから流出口管までマイクロフロー分離デバイスをつなぐことにより、Trop-1およびTrop-2がコーティングされたマイクロチャネルを通過させた。シリンジポンプを作動させて、室温で約10μl/分の速度でマイクロフローデバイスを通る試料液体の緩徐な連続流を生じさせる。この期間中に、横断ポストのランダムなパターンが設置された収集領域内の表面に付着させたTrop-1およびTrop-2 Abは、試料中に存在する栄養膜細胞を捕捉する。全試料をシリンジポンプによって送達した後、1%PBS/BSA水性緩衝液によるゆっくりとした洗い流しを行う。約100μlのこの水性緩衝液を約10分間にわたってデバイスを通して供給し、それが非特異的に結合した全ての生体材料をデバイス内の流路から効率的に除去する。続いて、それぞれ約100μlの1%PBS+1%BSAにより、約10分間にわたってさらに2回の洗浄を行う。
【0061】
この時点で、デバイスが光透過性材料でできている限りは、顕微鏡写真機などを用いることにより、捕捉の効果について顕微鏡検査を行うことができる。結合した細胞を、栄養膜由来の捕捉された細胞に特異的なサイトケラチン7およびサイトケラチン17によって染色した。このような顕微鏡写真における細胞を算定することにより、試料中に存在すると推定される栄養膜細胞の実質的に97%が、パターン化されたポスト収集領域内に捕捉されることが推定されており、これは極めて優れた結果であると判断される。
【0062】
インサイチューで染色する代わりに、捕捉および洗浄の段階を介したこの手順の反復において、100μlの0.25%トリプシン溶液を27℃で20分間にわたって流路を通してゆっくりと流すことにより、捕捉された栄養膜細胞が遊離される。この試薬は、Abの消化を引き起こして、栄養膜細胞を水流中に遊離させ、それらが流出口を通過して収集される。収集された細胞の、PCRおよびFISHを基にした技術による分析により、それらが実際に、用いたAbによって標的とされた栄養膜細胞であることが示される。
【0063】
実施例2
生体分子を分離するためのもう1つのマイクロフローデバイスは、実施例1に記載されたようなプロトタイプ基板を用いて構築される。実施例1と同様に基板の内面を誘導体化し、エタノールで洗浄して脱脂乳で処理する。10%エタノール水溶液で洗浄した後、プレポリマー、BSAならびに抗体Trop-1およびTrop-2を含むホウ酸緩衝液を用いて処理を行う。BSAを含む100mMホウ酸ナトリウム、pH 8.0中に1mg/mlの抗体を含む水溶液を用いる。具体的な製剤は、100mgの同じプレポリマーを含むAcn/DMF;350μLの0.25mg/ml抗体混合物を含むホウ酸緩衝液;および350μLの1mg/ml BSAを含むホウ酸緩衝液を含み、それはポリマーを重量比で約2%含む。
【0064】
抗体をチオール化せずに、合計約5μlのTrop-1および2のヒドロゲル水溶液を、前処理したマイクロフローデバイスに供給する。溶液をそのまま置いて25℃で約30分間インキュベートし、このインキュベーション期間の後、過剰なヒドロゲルを退去させて押し出すために流路内にゆっくりと押し込まれた鉱油で流路を洗い流す。これにより、PDMS材料から油を分離するヒドロゲルコーティングの薄層を有する、油が満たされた流路が得られる。3時間後ヒドロゲルは完全に硬化し、油を1×PBS/0.1%Tween溶液によって洗い流す。続いて、Abを保存するためにデバイスを1×PBS溶液で満たす。
【0065】
妊婦から得た子宮頸管粘液を希釈し、処理し、濾過し、遠心し、100μlのHAM培地中に再懸濁する。実施例1と同様に、液体の細胞懸濁液試料を、Harvard Apparatus社製シリンジポンプを用いて、Trop-1およびTrop-2がコーティングされたマイクロチャネルに通過させる。全試料をシリンジポンプによって送達した後、1%PBS/BSA水性緩衝液によるゆっくりとした洗い流しを行う。非特異的に結合した全ての生体材料をデバイス内の流路から有効に除去するために、この水性緩衝液の約100μlを約10分間にわたり、デバイスを通して供給する。続いて、それぞれ約100μlの1%PBS+1%BSAにより、約10分間にわたりさらに2回の洗浄を行う。
【0066】
この場合も、結合した細胞をサイトケラチン7およびサイトケラチン17で染色した後、捕捉の効果に関する顕微鏡検査を顕微鏡写真法を用いて行う。このような顕微鏡写真における細胞を算定することにより、試料中に存在すると推定される栄養膜細胞の優れた捕捉が達成されたことが明らかにされる。
【0067】
実施例3
生体分子を分離するためのもう1つのマイクロフローデバイスは、実施例1に記載したようなプロトタイプ基板を用いて構築される。実施例1と同様に基板の内面を誘導体化し、エタノールで洗浄して脱脂乳で処理する。
【0068】
10%エタノール水溶液で洗浄した後、2.5mM NHS-ポリグリシン(平均MWは約4500)を含む0.2 MOPS/0.5M NaCl、pH 7.0の10μlを用いて、攪拌を提供するためにチャネル内の溶液をポンプで穏やかに行き来させながらRTで2時間インキュベートすることにより、処理を行う。マレイミド-ポリGlyでコーティングされたチャネルを得るために、マイクロチャネルを500μlのpH 7.0 MOPS緩衝液で3回洗浄する。
【0069】
栄養膜細胞の外表面に担持されているリガンドに特異的である、抗体Trop-1およびTrop-2を実施例1と同様に処理し、それらをチオール化する。
【0070】
合計約5μgのチオール化抗Trop-1および抗Trop-2を含む濃度約0.25mg/mlの水溶液を、前処理したマイクロフローデバイスに供給し、溶液をそのまま置いて25℃で2時間インキュベートする。このインキュベーション期間の後、1%PBS/BSAで流路を流し洗いし(3回)、抗体がコーティングされた表面を得た上で、それを用いて胎児栄養膜細胞を単離することを試みる。
【0071】
妊婦から得た子宮頸管粘液を希釈し、処理し、濾過し、遠心し、100μlのHAM培地中に再懸濁する。液体の細胞懸濁液試料を、Harvard Apparatus社製シリンジポンプを用いて、Trop-1およびTrop-2がコーティングされたマイクロチャネルに通過させる。全試料をシリンジポンプによって送達した後、1%PBS/BSA水性緩衝液によるゆっくりとした洗い流しを行う。非特異的に結合した全ての生体材料をデバイス内の流路から有効に除去するため、この水性緩衝液の約100μlを約10分間にわたってデバイスを通して供給する。続いて、それぞれ約100μlの1%PBS+1%BSAにより、約10分間にわたりさらに2回の洗浄を行う。
【0072】
この場合も、結合した細胞をサイトケラチン7およびサイトケラチン17で染色した後、捕捉の効果に関する顕微鏡検査を顕微鏡写真法を用いて行う。このような顕微鏡写真における細胞を算定することにより、試料中に存在すると推定される栄養膜細胞の優れた捕捉が達成されたことが明らかにされる。
【0073】
実施例4
実施例1で用いたものと類似した、図3に示されるような複数のマイクロフローデバイスを、水平面に向かって45゜で操作することに起因する改善について試験するために構成する。このように角度を付けて配置されたマイクロフローデバイス71の有効性の改善を、BeWo細胞およびJurkat細胞の混合物を用いる供給液体を用いることによって試験する。BeWo細胞が選ばれた理由はそれらがTrop-1およびTrop-2抗原を発現するためであり、一方Jurkat細胞はそのいずれも発現せず、このため陰性対照細胞としての役割を果たす。マイクロフローデバイス71の内面を前処理し、続いて実施例2に記載された通りに、コーティング製剤中に抗Trop-1および抗Trop-2の水溶液を用いて、透過性ヒドロゲルによってコーティングする。マイクロフローデバイスの内部をAbコーティング溶液で満たし、25℃で約30分間インキュベートする。実施例2と同様に、鉱油および続いてPBS緩衝液を用いる洗い流しを行う。
【0074】
試験を6回実施するために十分な被験供給溶液を調製する;それは約3,000個のBeWo細胞および約3,000個のJurkat細胞を1%BSA/PBS緩衝液中に含む。供給溶液を、アリコートのそれぞれが約500個のBeWo細胞および約500個のJurkat細胞を含む、6つのアリコートに分ける。同一なマイクロフローデバイス71の3つを水平に配置し、混合した細胞供給液体の1つのアリコートを、真空ポンプによって供給される吸込みの結果としてそれぞれを通して流す。3通りの異なる流速:流速1μl/分、5μl/分および10μl/分を、3つの被験デバイスに対して用いる。
【0075】
これらの3つの被験デバイスを通して流した後、PBS緩衝液を用いて洗浄を行い、続いてそれぞれの個々のデバイスを顕微鏡により検査した。二群の捕捉細胞のそれぞれを顕微鏡により手作業で別々に算定した。標的としたBeWo細胞に関しては、最も低い流速ではBeWo細胞の約47%が流入口領域で捕捉され、収集チャネルには約32%のみが捕捉され、残りは流出口領域に存在することが見出された。流速5μl/分では、収集チャネル領域に捕捉されたBeWo細胞のパーセンテージは約27%と幾分低下し、より多くの細胞が依然として流入口領域に捕捉されたものの、収集された細胞のパーセンテージは流出口領域が最も高かった。水平の向きにあるデバイスを通る最も高い流速では、収集チャネル領域で捕捉されるのはBeWo細胞の10%のみであり、細胞の約65%は流出口領域で収集される。Jurkat細胞に関しては、最も低い流速では、細胞の約20〜25%は流入口領域およびチャネル領域のそれぞれで捕捉され、真ん中の流速では、Jurkat細胞の約10%のみが収集チャネル領域で捕捉された。予想された通り、流出口領域に集まるこれらの細胞の量は流速が高まる毎にそれぞれ増加し、一方、デバイス内に留まらなかった細胞は全て混合物として収集される。
【0076】
続いて、それぞれ鉛直線に対して45゜の向きに置かれたさらに3つの同一なマイクロフローデバイスを用いて実験を実施する。今回は流速1μl/分、3μl/分および5μl/分を用いる。収集チャネル領域におけるBeWo細胞の所望の細胞捕捉は際立ったものである。最も低い流速では、今度はBeWo細胞の約75%が収集チャネル領域に捕捉される。3μl/分という真ん中の流速ではこの値は約82%に高まり、試験した最も高い流速である5μl/分でも約60%に保たれる。これに対して、収集領域におけるJurkat細胞の非特異的結合は最も低い流速では比較的高く、すなわち約45%であるが、それは3μl/分では約15%のみへ低下し、最も高い流速では5%未満に低下する。したがって、水平と比較した45゜の向きでの成績の改善は、約3〜5μl/分という流速で作動させる場合、極めて大きく、細胞の約27%のみではなく80%超が収集される。計算により、収集チャンバー領域を通る速度が約0.27mm/秒に等しい流速で作動させることによって、標的とした細胞の優れた収集が得られ、非特異的に結合した細胞による混入は最小限であることが示される。
【0077】
本発明を、現時点で発明者らが知りうる本発明を実施するための最良の実施形態を構成する、特定の好ましい態様に関して説明してきたが、本明細書に添付の特許請求の範囲に規定された発明の範囲を逸脱することなく、当業者には明らかであろう様々な変更および修正を加えることができることが理解されるべきである。例えば、ある種の好ましい材料を、内部にマイクロチャネルが定められた基板の製造用に記載してきたが、これのような検査デバイスに適するものとして用いうる、当技術分野で周知の広範囲にわたる構造材料が存在する。母体血液試料由来の胎児細胞または子宮頸管粘液抽出物由来の栄養膜細胞の分離に、全般的な強調が置かれているが、本発明は例えば有核赤血球、リンパ球といった非常に様々な血液細胞、転移性癌細胞、幹細胞その他を分離するために有用であることが理解される必要がある;さらに、他の生物材料、例えば、タンパク質、炭水化物、ウイルスその他を、液体試料から分離することも考えられる。試料が細胞の特定の部分集団を含む場合、捕捉しようとする標的細胞は、希少な細胞から分離しようとする望ましくない細胞の群などであってもよい。さらに、標的とした細胞がひとたび収集されれば、それらをインサイチューで溶解して細胞DNAを得て、それを下流での分析のために収集してもよく、または代替的には収集チャンバー内部でのPCRに供してもよい。米国公開出願第2003/0153028号は、遊離された核酸を得るためにこのような結合細胞を溶解することを教示している。試料中に標的細胞の2種の異なる部分集団が存在する場合、異なる隔離剤を、一対の上流および下流収集チャンバー内のポストに付着してもよい。もう1つの状況において、1つの属の細胞を最初に上流収集チャンバー内に収集し、遊離させ、続いて細胞の亜属を単離するために下流チャンバー内で再びスクリーニングしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、細胞などの生体分子を体液または他の液体の試料から分離するための方法:
標的生体分子を含むこのような試料をマイクロフローデバイス内の流路に沿って流入口から流出口まで下流へと流す段階であって、流路が断面積の拡大した収集領域を含むマイクロチャネル配列を含み、その間、デバイスを該流路収集領域が水平面に対して約30゜〜約60゜の角度に整列するような向きに置く段階、
流れている試料から標的生体分子を、
(a)該領域内に設置された複数の分離ポストによってこのような流れを遮断する結果として、該収集領域を通る液体の直線的な流れを妨げる段階であって、ポストが該マイクロチャネルの上面または下面と一体化されてそこからその反対面へ延びており、該ポストが該流路を横断して延び、かつ該収集領域をまたいで側方に延びてそこを通る直線的な流れおよび層流を妨害する不規則なパターンで設置されており、該ポストを含む該収集領域の全ての表面が隔離剤(sequestering agent)を表面に担持している段階、および
(b)該不規則なポストによる流れの乱れおよび重力に起因する力ベクトルの結果として、流れている液体試料中に見出される標的生体分子を標的分子を隔離剤と結合させることによって収集領域内の表面上に捕捉する段階であって、ベクトルが該収集領域の該下面に対して鋭角に整列する段階、
によって分離する段階、ならびに
液体試料の残りを流出口を通して排出する段階。
【請求項2】
試料が流入口でウェル内に供給され、陰圧によって該チャネルを通して吸引されて流出口から出る、請求項1記載の方法。
【請求項3】
試料が流出口を通って実質的に水平な方向でデバイスから出る、請求項1記載の方法。
【請求項4】
デバイスが、(a)収集領域が腔として形成されている平面を有する主要部分、および(b)該平面に隣接し底壁を形成する平板を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
平板が光透過性であり、その近くに配置された光学的検出手段が収集領域内に捕捉された生体分子のパラメーターをモニターして、モニターされたパラメーターに対応する出力シグナルを提供する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
流入口通路が収集領域を通る流路に対して約40゜〜50゜の角度に整列する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
流出口通路が流入口通路と実質的に同じ垂直面にあり、該垂直面において該流入口通路に対して約90゜の角度の向きに置かれ、そこを通る排出が実質的に水平な方向にある、請求項6記載の方法。
【請求項8】
試料が約0.2〜約1mm/秒の平均液体流速で収集領域を通って流される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
収集領域内の表面が親水性コーティングを有し、コーティングがPEG、PPGまたはそれらのコポリマーとポリイソシアネートとの反応産物であるイソシアネート官能基含有プレポリマーから形成された透過性ヒドロゲルであり、隔離剤がカップリング対によって該ヒドロゲルコーティングと間接的に結合している、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
収集領域内の表面が、それに対してプレポリマーを含む水性混合物を供給することによってインサイチューでコーティングされ、該プレポリマーが最終的な重合を起こす、請求項9記載の方法。
【請求項11】
細胞などの生体分子を体液または他の液体試料から分離するためのマイクロフロー装置であって、
標的生体分子を含むこのような試料を通して流すことができる流路が内部に定められている主要部分であって、該流路に対する流入口通路、そこからの流出口通路、および該流入口経路と流出口通路との間に延びたマイクロチャネル配列を有する主要部分、ならびに
閉鎖板、
を含み、
該マイクロチャネル配列が、その一方が該閉鎖板によって提供される上面および下面を有する収集領域、ならびに複数の横断分離ポストを含み、
該ポストが該収集領域の該上面および下面の一つと一体化され、該閉鎖板によって提供されるもう一方の該表面に対して該流路をまたいで側方に延びており、該ポストが該領域を通る流体の直線的な流れおよび層流を妨害するように不規則なパターンで設置されており、
該ポストを含む該収集領域の該表面が標的生体分子と結合すると考えられる隔離剤を担持しており、かつ
該流入口が該収集領域を通る該流路に対して約30゜〜約60゜の間の角度で整列し、
それによって該主要部分が該流路とともに水平面に対して30゜〜60゜の角度で整列している間に試料を該流入口を通して実質的に垂直に下向きに供給することができ、かつそれによって該ポストの該不規則なパターンおよび重力に起因する力ベクトルが該収集領域内の、特にその下面上にある標的生体分子の有効な捕捉を引き起こす、装置。
【請求項12】
主要部分が実質的に平坦であり、その中で流路が腔として形成される主要平面、およびそこからポストが延びている該腔内の実質的に平坦な基部面を有し、反対面が該主要平面に隣接して該流路を閉鎖する閉鎖板によって提供され、ポストの遊離端が該反対面と接触している、請求項11記載の装置。
【請求項13】
ポストおよび収集領域の表面が親水性透過性コーティングでコーティングされており、コーティングがPEG、PPGまたはそれらのコポリマーとポリイソシアネートとの反応産物であるイソシアネート官能基含有プレポリマーから形成された透過性ヒドロゲルであり、隔離剤がカップリング対によって該ヒドロゲルコーティングと間接的に結合している、請求項11記載の装置。
【請求項14】
流出口通路が流入口通路と実質的に同じ垂直面にあり、該面において該流入口通路に対して約90゜の角度の向きに置かれる、請求項11記載の装置。
【請求項15】
ポストが少なくとも約3種の異なる断面サイズを有し、該ポストが平坦基部面に対して実質的に垂直に整列する、請求項11〜14のいずれか一項記載の装置。
【請求項16】
細胞などの生体分子を体液または他の液体の試料から分離するためのマイクロフロー装置であって、
標的生体分子を含むこのような試料を通して流すことができる、腔として定められた流路をその平面内に有する主要部分であって、流路が流入口手段、流出口手段および該流入口と流出口手段との間に延びたマイクロチャネル配列を有し、マイクロチャネル配列が領域内に設置された複数の横断分離ポストを備えた収集領域を含む、主要部分、ならびに
該主要部分平面に隣接して該流路腔を閉鎖する平面を有する閉鎖板手段、
を含み、
該ポストが該収集領域の基部面と一体化され、該閉鎖板手段の表面へ延びるようにそこから突き出ており、
該ポストが該領域を通る流体の直線的な流れおよび層流を妨害するように該収集領域内で該流路をまたいで側方に延びる不規則なパターンで配置されており、かつ
該ポストを含む該収集領域の全ての該表面が親水性透過性ヒドロゲルでコーティングされ、標的生体分子と結合すると考えられる隔離剤を担持し、
それによって該ポストの該不規則なパターンの結果として、該収集領域の全体を通した層流の乱れが、該収集領域内の該表面上での標的生体分子の有効な捕捉を生み出す、装置。
【請求項17】
ポストが少なくとも約3種の異なる断面サイズを有し、該ポストが該マイクロチャネルの基部面に対して実質的に垂直に整列する、請求項16記載の装置。
【請求項18】
親水性透過性ヒドロゲルコーティングが少なくとも約1ミクロン厚であり、PEG、PPGまたはそれらのコポリマーとポリイソシアネートとの反応産物であるイソシアネート官能基含有プレポリマーから形成され、隔離剤が該ヒドロゲルのイソシアネート基に共有結合している、請求項16または17記載の装置。
【請求項19】
収集領域内の表面上の隔離剤がカップリング剤の対によってヒドロゲルコーティングとカップリングしている、請求項16記載の装置。
【請求項20】
親水性透過性ヒドロゲルコーティングが少なくとも約1ミクロン厚であり、PEG、PPGまたはそれらのコポリマーとポリイソシアネートとの反応産物であるイソシアネート官能基含有プレポリマーから形成され、カップリング剤の対の一方が該ヒドロゲルのイソシアネート基に共有結合している、請求項19記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−143237(P2012−143237A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−48659(P2012−48659)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【分割の表示】特願2007−551296(P2007−551296)の分割
【原出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(507240956)バイオセプト インコーポレイティッド (8)
【Fターム(参考)】