説明

パターン形成方法

【課題】描画線幅の微細化と厚膜化を実現して高アスペクト比のパターンを可能とするパターン形成方法を提供する。
【解決手段】着弾した第3の液滴は硬化せず、硬化した第1の液滴2の間で架橋するように濡れ広がり、第1の液滴2の間を埋める。これによって、高さのバラツキが小さく、描画線幅の微細化と高アスペクト比の線を形成することができるパターン形成方法が得られる。また、第1の液滴、第2の液滴、第3の液滴、第4の液滴がいずれも同じピッチで着弾配置されているので、液滴の凝集等が同じように起こり、線幅が均一なパターンが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法を用いて液滴を基板上に吐出することにより、所定のパターンを形成するパターン形成方法に関し、特に高アスペクト比のパターンを可能とするパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット法を用いて液滴を吐出して、基板にパターンを形成するパターン形成方法が知られている。従来のリソグラフィを用いたパターン形成方法は、真空成膜工程、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程、レジスト剥離工程といったコストのかかる工程が必要になる。
しかしながら、パターンの形成にインクジェット法を用いることにより、上記の工程を省略することができるため、安価にパターンを形成することができる。
特に、基板に配線パターンを描画するような場合には、配線抵抗を下げるために、配線パターンの断面積を大きくする必要がある。その一方で、回路の微細化に伴い、配線幅は小さいことが好まれる。それゆえ、回路基板の配線作成技術においては、高アスペクト比厚膜細線形状のパターンを形成する技術が求められている。
【0003】
インクジェット法を用いて基板にパターンを形成する場合、流動状のインクからなる液滴を吐出し、基板上の所定の位置に着弾させて配線を形成している。ここで、表面張力によりインク液滴同士が集まり、基板上に瘤状のインク溜まり(バルジ)からなる凝集体が形成されてしまう虞がある。着弾するインク液滴の大部分が、このバルジに集中してしまうと、形成されるパターンにおいて、パターン幅やパターン厚に極端な差異が生じてしまい、好ましくない。このため、着弾したインク液滴が拡がり過ぎる、あるいは、インク液滴が互いに分離することを極力抑え、基板上に所望するパターンを形成することのできる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された樹脂膜形成方法は、複数の第1樹脂液の液滴が互いに接触しないように基板上に離間配置する第1樹脂液配置工程と、基板上に配置された第1樹脂液の少なくとも表面を硬化させる第1樹脂液硬化工程と、第1樹脂液の液滴の少なくとも表面が硬化した後、基板上の第1樹脂液の液滴間の略中央に第2樹脂液の液滴を配置する第2樹脂液滴配置工程と、基板上に配置された第2樹脂液の液滴を硬化させる第2液滴硬化工程と、を含むことを特徴としたものである。
【0005】
この樹脂膜形成方法によれば、基板上に第1樹脂液の液滴を離間配置することで第1樹脂液の液滴は互いに合一することがなく、その表面が少なくとも硬化した状態で、第1樹脂液の液滴間に第2樹脂液の液滴を配置することで、第2樹脂液の液滴は隣接する第1樹脂液の液滴間をブリッジするように濡れ広がり、第1樹脂液の液滴間の隙間を埋めることが可能となる結果、バルジ等が発生することなく、樹脂膜パターンの幅や膜厚を均一にすることを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−253859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のパターン形成方法である樹脂膜形成方法では、インクジェット法にて描画線幅の微細化と厚膜化を図った場合、単に重ね塗りしただけでは描画線幅の微細化と高アスペクト比の線を描画することは難しいという問題がある。
【0008】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、描画線幅の微細化と厚膜化を実現して高アスペクト比のパターンを可能とするパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するべく本発明に係るパターン形成方法は、インクジェット法で、インクを液滴として吐出して基板上にパターンを形成するパターン形成方法であって、少なくとも基板に着弾された液滴の直径よりも大きいピッチで液滴を吐出し、基板上に離間して複数の第1の液滴を配置する第1の液滴配置工程と、前記基板上に配置された前記第1の液滴を硬化させる第1の液滴硬化工程と、複数の第2の液滴を吐出し、前記離間した第1の液滴の中間に前記第2の液滴を着弾配置する第2の液滴配置工程と、前記第1の液滴の間に配置された前記第2の液滴を硬化させる第2の液滴硬化工程と、複数の第3の液滴を吐出し、前記第2の液滴の上に着弾配置し、硬化させずに濡れ広げる工程と、複数の第4の液滴を吐出し、前記第3の液滴と同じ位置に着弾配置する第4の液滴配置工程と、前記第4の液滴を硬化させる第の液滴硬化工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
着弾した第3の液滴は硬化せず、硬化した第1の液滴の間で架橋するように濡れ広がり、第1の液滴の間を埋める。これによって、高さのバラツキが小さく、描画線幅の微細化と高アスペクト比の線を形成することができるパターン形成方法が得られる。
【0011】
また、本発明に係るパターン形成方法は、前記第1の液滴、前記第2の液滴、前記第3の液滴、前記第4の液滴がいずれも同じピッチで着弾配置されてなることを特徴とする。
【0012】
第1の液滴、第2の液滴、第3の液滴、第4の液滴がいずれも同じピッチで着弾配置されているので、液滴の凝集等が同じように起こり、線幅が均一なパターンが得られる。
【0013】
また、本発明に係るパターン形成方法は、前記インクが光学材料からなることを特徴とする。
【0014】
インクを光学材料で構成して、パターンを形成した場合には、光学設計とのマッチングが良好となる結果、光学特性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
上記のパターン形成方法によれば、パターンの厚さを増加して高アスペクト比(パターンの厚み/パターンの幅)とすることで低抵抗の微細配線が可能となる。
また、光学材料からなるインクにてプリズムパターンを形成し、その厚さを増加して高アスペクト比(パターンの厚み/パターンの幅)とすることで光学設計とのマッチングが良好となる結果、光学特性が良くなるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態における基板上に第1の液滴と第2の液滴を着弾配置させた状態を示す模式図。(A)は第1の液滴を着弾配置した模式図、図1(B)は第2の液滴を第1の液滴の間に着弾配置した模式図。
【図2】第2の液滴の硬化時間を0.9秒、1.2秒、3.5秒、5.5秒、10秒と可変したときのパターンの硬化状態を示した図。
【図3】パターン形成の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のパターン形成方法は、撥液処理工程と、第1の液滴配置工程と、第1の液滴硬化工程と、第2の液滴配置工程と、第2の液滴硬化工程と、第3の液滴配置工程と、第4の液滴配置工程と、第4の液滴硬化工程とを含む。以下で、本発明のパターン形成方法を、実施形態を挙げて詳しく述べる。
図1は、実施形態における基板上に第1の液滴と第2の液滴を着弾配置させた状態を示す模式図である。(A)は第1の液滴2を着弾配置した模式図、(B)は第2の液滴3を第1の液滴2の間に着弾配置した模式図を表している。
【0018】
まず、インクジェットヘッドから吐出された液滴の紫外線硬化までの時間について調べた。
ここでは、撥液処理工程と、第1の液滴配置工程と、第1の液滴硬化工程と、第2の液滴配置工程と、第2の液滴硬化工程とを行って液滴の紫外線硬化までの時間について調べた。
【0019】
(撥液処理工程)
撥液処理工程では、アクリル基板1上に表面処理として撥液処理を施した。
まず、アクリル基板1の表面の異物除去洗浄を行い、アクリル基板1の表面から異物を除去する。次に異物除去洗浄を行なったアクリル板1の表面に公知の撥液性材料(例えば、紫外線硬化樹脂を含んだフッ素を含有するアクリル系樹脂材料)をスピンコート法により塗布した後、乾燥させ、その後、撥液性材料を紫外線硬化させた。
アクリル基板1の表面の撥液処理は、吐出したインクの液滴がアクリル基板1に着弾した際、インクに対する接触角が約25°〜約70°の範囲になるのが好ましい。
【0020】
(第1の液滴配置工程)
次に、撥液処理を施したアクリル基板1上にインクジェット法で用いるインクジェットヘッドによりインク(紫外線照射により硬化する紫外線硬化樹脂を含んだインク)を液滴化し、アクリル基板1に向けて複数の第1の液滴2を吐出し、アクリル基板1上に着弾させる。
インクジェットヘッドから吐出された第1の液滴2のピッチは141μmで、液滴の直径よりも大きくなるように設定される。そして、隣接するラインパターンのピッチが70μmとなるようにした。このため、第1の液滴2は互いに離間してアクリル基板1上に配設されている。
第1の液滴2のインクは粘度(10.4mPa・s(at25℃))、表面張力(24mN/m)で、吐出時の温度は30℃にて使用した。
【0021】
(第1の液滴硬化工程)
第1の液滴2は、インクジェットヘッドから吐出し後、0.9秒後にインクジェットヘッド近傍に配設された紫外線ランプにて紫外線を照射して硬化させた。
【0022】
(第2の液滴配置工程)
第2の液滴3をインクジェットヘッドから複数の液滴として吐出し、アクリル基板1上に配置された第1の液滴2の間に着弾させて配置する。このとき、第2の液滴3は第1の液滴2と当接させる。インクジェットヘッドから吐出された第2の液滴3のピッチは第1の液滴2と同様、141μmで、液滴の直径よりも大きくなるように設定される。
【0023】
(第2の液滴硬化工程)
第2の液滴3は、インクジェットヘッドから吐出し後、インクジェットヘッド近傍に配設された紫外線ランプにて紫外線を照射して硬化させるが、紫外線照射による硬化までの時間を0.9秒、1.2秒、3.5秒、5.5秒、10秒と可変させてインクの硬化具合を観察した。
【0024】
図2にパターンの硬化状態を示した。(A)は0.9秒後、(B)は1.2秒後、(C)は3.5秒後、(D)は5.5秒後、(E)は10秒後の結果を示している。
この結果、紫外線照射による硬化までの時間が0.9秒を除いて、第1の液滴2に引っ張られるためか、部分的にバルジが生じた。この結果から、紫外線照射による硬化までの時間は0.9秒を選択した。
ここで、紫外線ランプの照射がインクジェットヘッドに及ぶとインクジェットヘッドの吐出し口にある樹脂が硬化して吐出し動作が阻害されるため、紫外線ランプは基板側に向けておくことが肝要である。
【0025】
図3には、比較例Aと実施例Bにおけるパターン形成の例を示した。
(比較例A)
第1の液滴〜第4の液滴を基板上に着弾配置した後、紫外線硬化した。
撥液処理工程と、第1の液滴配置工程と、第1の液滴硬化工程と、第2の液滴配置工程と、第2の液滴硬化工程とを前述の方法で行った。
【0026】
(第3の液滴配置工程)
インクジェットヘッドから第2の液滴3と同じ条件で複数の第3の液滴を吐出し、アクリル基板1上に配置された第2の液滴3と同じ箇所に着弾するように吐出した。これは第1の液滴2の間に着弾配置した第2の液滴3が第1の液滴2に引っ張られてしまい、第1の液滴2の間に着弾配置した第2の液滴3の量が減少するので、これを補充するためである。
【0027】
第3の液滴3は、インクジェットヘッドから吐出し後、第1の液滴2と同様、0.9秒後にインクジェットヘッド近傍に配設された紫外線ランプにて紫外線を照射して硬化させる。
【0028】
(第4の液滴配置工程)
インクジェットヘッドから第2の液滴3と同じ条件で第4の液滴を吐出し、アクリル基板1上に配置された第2の液滴3と同じ箇所に着弾配置した。
【0029】
(第4の液滴硬化工程)
第4の液滴も第2の液滴3同様、インクジェットヘッドから吐出し後、0.9秒後にインクジェットヘッド近傍に配設された紫外線ランプにて紫外線を照射して硬化させた。
図3に示すように、このときのラインパターンの幅は約66μm、接触角は約44°、図示しないが高さが約13μm、高さのバラツキは約0.8μmであった。得られたラインパターンは隣接するラインパターン同士の間でブリッジは生じていない。このときのアスペクト比は13μm/66μm=約0.2であった。
【0030】
(第5の液滴配置工程)
さらに、厚膜化するために、インクジェットヘッドから複数の第5の液滴を吐出し、アクリル基板1上に配置された第4の液滴と同じ箇所に着弾配置した。
【0031】
(第5の液滴硬化工程)
第5の液滴も第4の液滴同様、インクジェットヘッドから吐出し後、0.9秒後にインクジェットヘッド近傍に配設された紫外線ランプにて紫外線を照射して硬化させた。
図3に示すように、このときのラインパターンの幅は約51μm、接触角は約54°、図示しないが高さが約15μm、高さのバラツキは約2.1μmであった。得られたラインパターンは隣接するラインパターン同士の間でブリッジは生じていない。このときのアスペクト比は15μm/51μm=約0.29である。この第5の液滴を着弾配置して得られたラインパターンはその幅も接触角も良好であるが、高さのバラツキが大きくなってしまい、良好なラインパターンを得られなかった。
【0032】
(実施例B)
比較例Aにおいて、第3の液滴硬化工程を行わず、紫外線硬化させなかった。
この場合、着弾した第3の液滴は硬化せず、硬化した第1の液滴2の間で架橋するように濡れ広がり、第1の液滴2の間を埋める。
実施例Bにおいて、第4の液滴の硬化後、図3に示すように、ラインパターンの幅は約50μm、接触角は約53°、図示しないが高さは約15μm、高さのバラツキは約0.4μmであった。このときのアスペクト比は15μm/50μm=0.3である。得られたラインパターンは隣接するラインパターン同士の間でブリッジは生じておらず、良好なラインパターンが得られた。
【0033】
実施例Bにおいて、第5の液滴の硬化後、図3に示すように、ラインパターンの幅は60μm以上となってしまい、隣接するラインパターン同士の間で結合が生じてしまった。このため、第5の液滴を着弾配置することは不適であることが分かった。
これによって、高さのバラツキが小さく、描画線幅の微細化と高アスペクト比の線を形成することができる。
【0034】
比較例Aおよび実施例Bにおいて、第1〜第5の液滴は同じインク材料を用い、1つのインクジェットヘッドから吐出した。
なお、インクジェットヘッドの吐出し条件、インク条件、硬化時間等々を最適化した場合には、第2の液滴と最後の液滴の間に複数の液滴を吐出して厚膜化を図ることも可能であるが、描画線幅の微細化と高アスペクト比を得るためには、少なくとも液滴を硬化させずに濡れ広げるための工程が必要である。
また、インク材料を光学材料(例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、など)で構成して、パターンを形成した場合には、光学設計とのマッチングが良好となる結果、光学特性を向上させることができる。
また、その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【符号の説明】
【0035】
1:アクリル基板、2:第1の液滴、3:第2の液滴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット法で、インクを液滴として吐出して基板上にパターンを形成するパターン形成方法であって、少なくとも
基板に着弾された液滴の直径よりも大きいピッチで液滴を吐出し、基板上に離間して複数の第1の液滴を配置する第1の液滴配置工程と、
前記基板上に配置された前記第1の液滴を硬化させる第1の液滴硬化工程と、
複数の第2の液滴を吐出し、前記離間した第1の液滴の中間に前記第2の液滴を着弾配置する第2の液滴配置工程と、
前記第1の液滴の間に配置された前記第2の液滴を硬化させる第2の液滴硬化工程と、
複数の第3の液滴を吐出し、前記第2の液滴の上に着弾配置し、硬化させずに濡れ広げる工程と、
複数の第4の液滴を吐出し、前記第3の液滴と同じ位置に着弾配置する第4の液滴配置工程と、
前記第4の液滴を硬化させる第の液滴硬化工程とを含む
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成方法において、
前記第1の液滴、前記第2の液滴、前記第3の液滴、前記第4の液滴がいずれも同じピッチで着弾配置されてなる
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のパターン形成方法において、
前記インクが光学材料からなる
ことを特徴とするパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−71084(P2013−71084A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213241(P2011−213241)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】