説明

パターン転写装置およびパターン転写方法

【課題】バネによって形成されたウェブ支持体などの簡便な機構によってバネによって形成されたウェブ支持体によって支持される密着/転移時のギャップと剥離ロールに支持される剥離時のギャップの2つのギャップを設定できるようにすることで、精密かつ良好なパターンの転写を可能とするギャップ調整機構を備えたパターン転写装置を提供する
【解決手段】被転写基材とウエブ間のギャップを、被転写基材の前後に設置したギャップ調整用の一対のバネによって形成されたウェブ支持体により一定に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブ上に形成したパターンを被転写基材に転写するパターン転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエブ上のパターンを被転写基材に転写する方法の一つとして図2に示すような転写・剥離法がある。この方法はウエブと均一なギャップで相対する被転写基材が載置されている状態で、ウエブを転写ロールを用いて基材に押圧することで、ウエブ上に形成されているパターンを被転写基材に密着/転移させ、その後、ウエブを支持する剥離ロールを水平方向に移動させることにより、ウエブのみ剥離し、被転写基材上にパターンを転写させるものである。
【0003】
良好なパターンを転写するためには、ガイドロールにより支持されるウエブと被転写基材間のギャップを密着/転移時に0.5〜1mm程度にする必要がある。また転写時にギャップを0.1〜0.3mm程度にすることで、良好な剥離をすることができる。
【0004】
ここで、密着/転移とはウェブ上に形成されているパターンと被転写基材を、密着ロールを用いて被転写基材に押圧して密着させ、且つウェブ上に形成されていたパターンを被転写基材に密着させ、パターンが被転写基材に強く密着するまでの工程を意味する。また転写とは、ウェブ上のパターンが密着/転移工程を経て、被転写基材表面に密着した後、剥離ロールを介してウェブを被転写基材から剥離させることにより、ウェブ上のパターンがウェブから剥離し、パターンが被転写基材上に転写されるまでの工程を意味する。
【0005】
従来、ウエブ−被転写基材間のギャップを変更する場合、図8に示すようにウェブに相対する被転写基材を載置するステージを上下させることにより行う。この方法では、ステージを上下させ、且つ、設定した位置に精度良くステージを配置させることができる駆動機構が必要である。
【0006】
そのような駆動機構をステージに使用すると、設置スペースの大型化、装置コストの増大などの問題の他に、技術的な問題としてステージを上下させる場合の繰り返し位置精度、平行度の再現性、ギャップの均一性や再現性の維持などがある。
【特許文献1】特願昭54−89434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はウエブ上に形成されたパターンを被転写基材上に密着/転移し、その後ウエブのみ剥離するのに際し、精密かつ良好なパターンの転写を可能とするギャップ調整機構を備えたパターン転写装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に係る発明は、一対のガイドロールと剥離ローラ間を搬送されるウエブ上に形成されたパターンを被転写基材上に転写する装置において、被転写基材とウエブ間のギャップを、被転写基材の搬送方向の前後に設置したギャップ調整用の一対のバネにより形成されたウェブ支持体により、一定に保持することを特徴とするパターン転写装置である。
【0009】
また請求項2に係る発明は、一対のガイドロールと剥離ローラ間を搬送されるウエブ上
に形成されたパターンを被転写基材上に転写する装置において、被転写基材とウエブ間のギャップを、被転写基材の搬送方向の前後に設置した一対のウェブ支持体で、そのバネ力を発生する部分が弾性体から形成され、且つ、ウェブと接する部分がローラであるウェブ支持体により、一定に保持することを特徴とするパターン転写装置である。
【0010】
また請求項3に係る発明は、請求項1若しくは請求項2に記載のパターン転写装置を用いてパターンを転写する方法において、ウェブ支持体上のウェブと被転写基材間のギャップを設定してウェブ上に形成されたパターンを被転写基材に密着させる工程を実施し、ガイドロールに支持されたウェブと被転写基材間のギャップを設定してウェブだけを被転写基材から剥離させる工程を実施することを特徴とするパターン転写方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のギャップ調整機構はウエブ−基材間にギャップ調整用のバネによって形成された一対のウェブ支持体を用いることにより転写時ギャップを一定かつ均一に保つことができるようになり、また剥離時に剥離ロールでウエブを支持することにより、被転写基材とウェブのなす角度をほぼ一定に保つことができるように、転写ロール、剥離ロールの位置を調整できるようにすることにより、ウェブ上のパターンを被転写基材に良好に密着/転移させることができ、その後のウェブの剥離を均一かつ一定のギャップで行うことができる様になるため、良好なパターンの転写を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
まず図1を用いて本発明を説明する。本発明の中心的な役割を果たすバネによって形成されたウェブ支持体3がステージ11上に図1のようにウェブ6を支持するため、ウェブ6の被転写基材のウェブの搬送方向の前後に一対設置されている。このバネによって形成されたウェブ支持体3は、ウェブ6の巾より巾が広いものを使用する。このバネによって形成されたウェブ支持体3の役割は、剥離ロール2とガイドロール9によって張られたウェブ6が、ステージ11上に載置された被転写基材5と平行になるように、それぞれのロールの位置制御が実施されている状態で、同じステージ11上に設置されたバネによって形成されたウェブ支持体3にウェブ6の位置を平行を維持しながら被転写基材5に近づけると、ウェブ6がバネによって形成されたウェブ支持体3と接触するようになり、更にそれぞれのロールを被転写基材5に近づけることにより、ウェブ6と被転写基材5とのギャップは、バネによって形成されたウェブ支持体3の反発力とウェブ6を押し下げる力がバランスした位置でギャップが保持される。
【0014】
バネによって形成されたウェブ支持体3に使用するバネは市販されているものを使用することができる。また、バネではなく、コイル状のスプリングを用いて、ウェブと接する部分を板状の支持体やロールを使用することもできる。ここでは板バネを使用した場合について説明する。バネによって形成されたウェブ支持体3は隔離ロール2とガイドロール9のステージ11に対する高さの制御によって、ウェブ6と離れたり、逆にウェブ6により押し下げられたりする。この高さの制御は常にウェブ6と被転写基材5とのギャップが均一になるように制御する。ウェブ6と被転写基材5とのギャップが決まり、ガイドロール9の位置が決まると、ウェブ6と被転写基材5がなす角度を概ね一定にできる。このことにより、ウェブ6上に形成されたパターンを良好に被転写基材5に転写させることができる。
【0015】
具体的には、ウェブ6上に形成されたパターンと被転写基材11の位置が概ね合うように間欠的な動作によってウェブ6を送る。ウェブ6上に形成されたパターン4と被転写基材5の目合わせができるだけの距離を送る。ここで目合わせとは、被転写基材5とウェブ
上のパターン4の双方に形成されている合わせマークが、目合わせ装置(図示せず)が検知できる範囲に入っている程度に、目合わせができている状態を指す。ウェブ6を間欠的に送る時は、ウェブ6とバネによって形成されたウェブ支持体3は十分な距離を保っており、接触することはない。その後、隔離ロール2とガイドロール9をステージ11に近づけることによりバネによって形成されたウェブ支持体3とウェブ6が接触し、さらに押し下げて、パターン4と被転写基材5が接触しない範囲で両者を近接させてから、目合わせ装置が目合わせを行う。この時、パターン4と被転写基材5の間のギャップはバネによって形成されたウェブ支持体3と剥離ローラ2とガイドロール9のバランスによって均一に保持される。目合わせが完了すると、剥離ローラ2とガイドロール9とウェブのテンションコントローラ(図示せず)を制御して、ギャップを密着/転移に適した値に調整する。
【0016】
このギャップは経験的に0.5mm〜1.0mm程度に設定することにより良好な密着/転移を行うことができる。このギャップに調整した後、転写ロール1を被転写基材5のパターンが転写されるべき領域の端部の外側の領域から被転写基材5に押圧し、一定の速度にて図2に示した転写ロール移動方向14に移動させ、パターンが転写されるべき被転写基材5のもう一方の端部を越えた領域に達したときに転写ロール1を被転写基材5から離し、密着/転移工程を完了する。以上により、密着/転移が完了し、ウェブ6と被転写基材5がパターン4を介して密着した状態になる。図3にその概念を示した。
【0017】
その後、図4に示すように、剥離ロール2を剥離ロール移動方向15の方向に移動させながら、ウェブ6のテンションによってウェブ6が被転写基材5から引き剥がされるが、このときに、ウェブ6上のパターン4は、ウェブ6から剥離し、被転写基材5への転写が完了する。剥離ロール2は剥離ロール移動方向15に向かって一定速度で進むが、ウェブ6が被転写基材5がなす角度がほぼ一定となるように剥離ロール2の移動速度を調整する。この工程を実施する際、ガイドロール9が支持するウェブと被転写基材5のギャップを経験的に0.1mm〜0.3mmに設定することにより、この工程を良好に実施できる。
【0018】
また、図3から図4に至る過程で、図5に示すように剥離ロール2がバネによって形成されたウェブ支持体3を乗り越えるように移動させることができる。このことにより、剥離工程を実施する際の、ウェブ6と被転写基材5が成す角度を一定に制御できる。この角度は剥離工程で発生する様々な欠陥発生と関係していることが経験上、分かっている。その為、この角度を制御できることは、良好な生産条件を設定することを可能にする。
【0019】
以上は、ギャップ調整機構にバネによって形成されたウェブ支持体を用いた場合について説明した。バネによって形成されたウェブ支持体の代わりに図6と図7に示すように、バネ力を発生する部分が弾性体から形成され、且つ、ウェブと接する部分がローラであるウェブ支持体を使用することもできる。
【0020】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明には、微細パターンの形成の必要のある製造物一般に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ギャップ調整機構の概略側面図
【図2】密着/転移と剥離方法の概念を示す概略側面図
【図3】ギャップ調整機構を用いた密着/転移の概念を示す概略側面図
【図4】ギャップ調整機構を用いた剥離の概略側面図
【図5】剥離工程において剥離ロールがバネを乗り越える状況の概念を示す概略側面図
【図6】転写時ギャップの調整機構の概念を示す俯瞰図
【図7】図6に示すギャップ調整機構の主要部の拡大図
【図8】従来のテーブルの上下動によるギャップ調整機構の概念を示す概略側面図
【符号の説明】
【0023】
1…転写ロール
2…剥離ロール
3…バネによって形成されたウエブ支持体
4…パターン
5…被転写基材
6…ウエブ
7…転写ギャップ
8…剥離ギャップ
9…ガイドロール
10…吸着ステージ
11…ステージ
12…ウエブテンションによるバネの押し込み
13…転写ロール加圧
14…転写ロール移動方向
15…剥離ロール移動方向
16…剥離ロールによるバネの押し込み
17…ギャップ調整ロール
18…ギャップ調整ロールガイド
19…バネ
20…調整ねじ
21…ギャップ調整の上下動
22…ギャップ
23…ステージ上下駆動機構
24…ステージ上下動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のガイドロールと剥離ローラ間を搬送されるウエブ上に形成されたパターンを被転写基材上に転写する装置において、被転写基材とウエブ間のギャップを、被転写基材の搬送方向の前後に設置したギャップ調整用の一対のバネにより形成されたウェブ支持体により、一定に保持することを特徴とするパターン転写装置。
【請求項2】
一対のガイドロールと剥離ローラ間を搬送されるウエブ上に形成されたパターンを被転写基材上に転写する装置において、被転写基材とウエブ間のギャップを、被転写基材の搬送方向の前後に設置した一対のウェブ支持体で、そのバネ力を発生する部分が弾性体から形成され、且つ、ウェブと接する部分がローラであるウェブ支持体により、一定に保持することを特徴とするパターン転写装置。
【請求項3】
請求項1若しくは請求項2に記載のパターン転写装置を用いてパターンを転写する方法において、ウェブ支持体上のウェブと被転写基材間のギャップを設定してウェブ上に形成されたパターンを被転写基材に密着させる工程を実施し、ガイドロールに支持されたウェブと被転写基材間のギャップを設定してウェブだけを被転写基材から剥離させる工程を実施することを特徴とするパターン転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−58425(P2010−58425A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228147(P2008−228147)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】