説明

パチンコ玉発射装置用ロータリソレノイドおよびパチンコ玉発射装置

【課題】 簡単な構成でありながらも、パチンコ玉を常に一定の発射速度で発射させることが可能なパチンコ玉発射装置用ロータリソレノイドおよびパチンコ玉発射装置を提供すること。
【解決手段】 打撃用ハンマ20を回転させることによりパチンコ玉30をパチンコ盤のゲームエリアに発射させるパチンコ玉発射装置100に用いられるロータリソレノイド10において、ロータ18の極幅が、ステータ16の極幅より幅狭に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパチンコ玉発射装置用ロータリソレノイドおよびパチンコ玉発射装置に関し、より詳細には、パチンコ台のゲームエリアに打ち出すパチンコ玉の発射速度を常に一定に維持することが可能なパチンコ玉発射装置用ロータリソレノイドおよびパチンコ玉発射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ玉をパチンコ台のゲームエリアに打ち込むためのパチンコ玉発射装置にはロータリソレノイドが用いられている。このような用途に用いられるロータリソレノイドは、常に一定の力でパチンコ玉を発射させることが強く望まれている。
従来においては、ロータリソレノイドの組み立て精度を高めることによりパチンコ玉の発射力を一定にしていた。
【0003】
近年においては、パチンコ玉の発射速度をさらに高精度で一定に制御することが望まれており、パチンコ玉を発射させるための打撃用ハンマの角度を計測し、発射されるパチンコ玉の速度を一定周期で計算し、実際に発射されているパチンコ玉の発射速度が所望の発射速度に適合しているか否かを判断すると共に、パチンコ玉の発射速度の状況に応じてロータリソレノイドに供給する駆動電流を調整する回路を有するパチンコ玉発射装置が提供されている。
このような発明として、例えば特許文献1に記載されているようなものが提案されている。
【特許文献1】特開2001−269444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のパチンコ機の弾球発射装置は、打撃用ハンマの角度を一定周期で計測し、計測された打撃用ハンマの角度から打撃用ハンマの回転速度を算出することによりパチンコ玉の発射速度を求め、算出された発射速度と目標発射速度とを比較している。ここで、実際の発射速度が目標発射速度と異なる場合には、ロータリソレノイドに供給される駆動電流が演算処理装置により調整されるため、常に一定の発射速度でパチンコ玉を発射することが可能になっている。しかしながら、このようなデジタル演算処理機能を具備するパチンコ玉の発射装置は、製造コストがかさみ、パチンコ玉の発射装置が高騰してしまうといった課題がある。
【0005】
また、このような高価なパチンコ玉の発射装置を用いても、ロータリソレノイド自体の機械的な誤差により一発一発のパチンコ玉の発射速度が微妙に異なってしまうという課題もある。
【0006】
本発明は、安価で、しかも簡単な構成でありながらも、パチンコ玉を常に一定の発射速度で発射させることが可能なパチンコ玉発射装置用ロータリソレノイドの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上に列挙した課題を解決するために鋭意研究を進めたところ、本願発明者は、ロータリソレノイドのロータの極幅とステータの極幅がほぼ等しく形成されていることが、パチンコ玉の打ち出し速度を一定にする際の障壁となっていることを見出し、本願発明を完成させた。
すなわち本願発明は、打撃用ハンマを回転させることによりパチンコ玉をパチンコ盤のゲームエリアに発射させるパチンコ玉発射装置に用いられるロータリソレノイドにおいて、ロータの極幅が、ステータの極幅より幅狭に形成されていることを特徴とするパチンコ玉発射装置用ロータリソレノイドである。
【0008】
また、他の発明は、打撃用ハンマを回転させることによりパチンコ玉をパチンコ盤のゲームエリアに発射させるパチンコ玉発射装置に用いられるロータリソレノイドにおいて、ステータの極幅が、ロータの極幅より幅狭に形成されていることを特徴とするパチンコ玉発射装置用ロータリソレノイドである。
このような構成であっても同様の作用効果を得ることができる。
【0009】
また、他の発明は、ロータリソレノイドの回転軸に連結された打撃用ハンマを回動させることにより、パチンコ玉をパチンコ盤のゲームエリアに発射させるパチンコ玉発射装置において、前記ロータリソレノイドは、ロータの極幅が、ステータの極幅より幅狭に形成されていることを特徴とするパチンコ玉発射装置である。
【0010】
さらに、ロータリソレノイドの回転軸に連結された打撃用ハンマを回動させることにより、パチンコ玉をパチンコ盤のゲームエリアに発射させるパチンコ玉発射装置において、前記ロータリソレノイドは、ステータの極幅が、ロータの極幅より幅狭に形成されていることを特徴とするパチンコ玉発射装置である。
【0011】
また、前記ステータの極幅と前記ロータの極幅における極幅の比は、一方の極幅を11とした場合、他方の極幅が16であることを特徴とする。
これにより、パチンコ玉の発射速度を最も好適な状態にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるパチンコ玉発射装置に用いられるロータリソレノイドによれば、ロータの極幅とステータの極幅を大きく異ならせているため、起磁力が一定になる範囲(ロータの極とステータの極の重複幅に変化が生じない範囲)を拡げることができ、ロータリソレノイドの組み立て精度やロータリソレノイドの駆動電力の制御を厳密にすることなく、パチンコ玉の発射速度を常に一定にすることが可能になる。
また、イニシャルコストもランニングコストも高価であるデジタル演算処理装置を用いる必要がなく安価で高品質なパチンコ玉の発射装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本実施の形態におけるパチンコ玉発射装置に用いられるロータリソレノイドについて、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本実施の形態におけるパチンコ玉発射装置に用いられるロータリソレノイドのロータとステータの待機時の状態を示す説明図である。図2は、図1のロータリソレノイドのロータの打球時におけるロータとステータの状態を示す説明図である。図3は、本実施の形態におけるロータリソレノイドの起磁力が一定になる範囲を示す説明図である。
【0014】
本実施の形態におけるパチンコ玉発射装置に用いられるロータリソレノイド10は、コイル14と、コイル14の内周側に配設されたステータ16と、ステータ16の内周で回転軸Aを中心にして回動するロータ18を有する一般的な構成である。コイル14には組み立て時に用いる位置決め用の目印14zが設けられている。
図1,図2にはステータ16とロータ18にそれぞれ4つの極16a,18aが形成されたものがあらわれているが、ステータ16とロータ18の極16a,18aの数は4極に限定されるものではない。
本発明において特徴的な部分は、図1,図2に示すように、ロータ18の極18aの幅がステータ16の極16aの幅に比べて大幅に狭く形成されている点である。
【0015】
このように、ロータ18の極18aの幅を幅狭形状に形成することにより、ロータ18を軽量化することができる。また、ロータ18が軽量化されれば、ロータ18を回転させるために必要な電力を低減させることができるので、ロータリソレノイド10の省電力化にも貢献し好都合である。
【0016】
ところで、ロータリソレノイド10においては、ロータ18の極18aとステータ16の極16aが対向し、かつ、ロータ18の極18a全体がステータ16の極16aに収まった状態(ロータ18の極18aとステータ16の極16aの重複幅が一定)になると起磁力が一定になる。本実施の形態においては、図3に示す範囲Rにおいて起磁力が一定になり、図7,図8に示す従来技術におけるロータリソレノイドに比べて大幅に起磁力が一定になる範囲が広がっていることが分かる。すなわち、ロータリソレノイド10の出力軸である回転軸Aの最大回転速度が一定になる時間が増加するのである。
【0017】
一般に、起磁力が一定になる時間が長い(すなわち、ロータ18の極18aの幅とステータ16の極16aの幅の寸法差が大きい)と、ロータリソレノイド10の回転トルクが低下する。そこで、本実施の形態においては、ロータリソレノイド10の回転トルクの低下量と、ロータリソレノイド10の起磁力が一定になる範囲の拡大のバランスが最適となるようにしている。
最適バランスにおけるロータ18の極18aの幅と、ステータ16の極16aの幅の比率は、ロータ18の極18aの幅を11とした場合、ステータ16の極16aの幅が16となるような比率である。
【0018】
図4は、ロータリソレノイドが図1に示す状態におけるパチンコ玉発射装置の状態を示す説明図である。図5は、ロータリソレノイドが図2に示す状態におけるパチンコ玉発射装置の状態を示す説明図である。図6は、本実施の形態におけるロータリソレノイドの特性を示すグラフである。図6のグラフは、横軸が時間経過を示し、縦軸が出力軸の回転数(出力軸に接続された打撃用ハンマの回転速度)をあらわしているものである。
パチンコ玉の発射装置100は、打撃用ハンマ20の回転軸がロータリソレノイド10の回転軸Aに連結され、ロータリソレノイド10の回転軸Aを中心として、回転軸Aの回転と共に打撃用ハンマ20が回転してパチンコ玉30を発射させる構造になっている。打撃用ハンマ20は略L字型に形成されていて、一方の先端部分(弾球部)22には錘24が、他方の先端部26には磁性体(図示せず)がそれぞれセットされている。また、パチンコ玉30は、回転軸Aの回転速度が最高速度に到達する位置にセットされている。
【0019】
パチンコユーザがパチンコ台の発射装置(図示せず)の調整レバーを操作すると、パチンコ台の制御部は調整レバーの調整度合いに応じてロータリソレノイド10を駆動させる駆動電力のパルス波を発生させ、パルス波をロータリソレノイド10に供給する。ロータリソレノイド10のコイル14はパルス波に応じて磁界を生じ、発生した磁界によりロータ18を回転させる。
ロータ18の回転によりロータリソレノイド10の回転軸Aが回動し、回転軸Aの回動に伴って打撃用ハンマ20の回転軸が回動する。打撃用ハンマ20は、図4に示す位置から図5に示す位置の間で回動する。打撃用ハンマ20は、図5に示した状態のときに一方の先端部分(弾球部)22がパチンコ玉30に衝突し、パチンコ玉30を発射させるのである。打撃用ハンマ20は、パチンコ玉30を発射させた直後に、他方の先端部26がストッパ40に衝突し、打撃用ハンマ20の回動動作が停止する。そして、錘24の自重による作用に加え、ストッパ50に固定されているマグネット60が他方の先端部26にセットされている磁性体を吸引する力により、打撃用ハンマ20は逆方向に回動し、図4に示す位置に戻り、他方の先端部26がストッパ50により支えられた状態となる。これにより打撃用ハンマ20が待機位置にセットされることになる。
【0020】
図6に示すように、ロータリソレノイド10の回転軸Aが最高速度となる範囲(いわゆるスイートスポット)が広くなれば、パチンコ玉30のセット位置の精度、ロータリソレノイド10の組み立て精度、ロータリソレノイド10を駆動させる電力の供給パルスの精度等が低くなっても、打撃用ハンマ20が最高速度でパチンコ玉30に衝突する機会(タイミング)が増加する、すなわち、パチンコ玉30を一定の速度で発射させることができる機会(タイミング)が増えることになり、パチンコ玉30の発射速度のばらつきを抑えることができる。
【0021】
一方、従来技術におけるパチンコ玉発射装置用ロータリソレノイドは、図7に示すように、ロータリソレノイド10のロータ18の極幅とステータの極幅が等しい幅に形成されている。このようなロータリソレノイドにおいては、起磁力が一定になる状態(ロータの極とステータの極の重複幅に変化を生じない状態)が図8に示すようにほぼ一瞬になってしまう。すなわち、ロータリソレノイドが打撃用ハンマを回転させた場合の回転速度のピーク値をマークする時間が図9に示すように非常に短時間になってしまうため、ロータリソレノイドの組み立て誤差等により、パチンコ玉の発射速度にばらつきが生じやすくなるのである。
【0022】
以上に、実施例に基づいて本発明にかかるパチンコ発射装置用ロータリソレノイド10について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではないのはもちろんである。
例えば、本実施の形態におけるロータリソレノイド10は、ステータ16の極16aの幅に比べて、ロータ18の極18aの幅を大幅に狭くなるような形態を採用しているが、これは、ロータ18を省電力で回転させることを念頭においているためである。単に、パチンコ玉の発射速度を一定にすることのみを念頭におけば、ステータ16の極16aの幅をロータ18の極18aの幅に比べて大幅に狭くなるように形成してもよい。このようにすれば、ロータ18を回転させるために必要な電力は本実施の形態に比べて増加するものの、パチンコ玉30の発射速度の均一化については本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0023】
さらに、ステータ16の極16aの幅と、ロータ18の極18aの幅の比は必ずしも一方を11とした場合に他方を16としなければならなくても良く、他の比であっても本願発明と同様の効果を得ることができるのは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施の形態におけるパチンコ玉発射装置に用いられるロータリソレノイドのロータとステータの待機時の状態を示す説明図である。
【図2】図1のロータリソレノイドのロータの打球時におけるロータとステータの状態を示す説明図である。
【図3】本実施の形態におけるロータリソレノイドの起磁力が一定になる範囲を示す説明図である。
【図4】ロータリソレノイドが図1に示す状態におけるパチンコ玉発射装置の状態を示す説明図である。
【図5】ロータリソレノイドが図2に示す状態におけるパチンコ玉発射装置の状態を示す説明図である。
【図6】本実施の形態におけるロータリソレノイドの特性を示すグラフである。
【図7】従来技術におけるパチンコ玉発射装置用ロータリソレノイドの構造を示す説明図である。
【図8】図7のロータリソレノイドにおいて、起磁力が一定になった状態を示す説明図である。
【図9】図7のロータリソレノイドの特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0025】
10 (パチンコ玉発射装置用)ロータリソレノイド
14 コイル
16 ステータ
16a ステータの極
18 ロータ
18a ロータの極
20 打撃用ハンマ
23 錘
30 パチンコ玉
40,50 ストッパ
60 マグネット
100 パチンコ玉発射装置
A 回転軸
R 起磁力(ロータの極とステータの極の重複幅)が一定になる範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
打撃用ハンマを回転させることによりパチンコ玉をパチンコ盤のゲームエリアに発射させるパチンコ玉発射装置に用いられるロータリソレノイドにおいて、
ロータの極幅が、ステータの極幅より幅狭に形成されていることを特徴とするパチンコ玉発射装置用ロータリソレノイド。
【請求項2】
打撃用ハンマを回転させることによりパチンコ玉をパチンコ盤のゲームエリアに発射させるパチンコ玉発射装置に用いられるロータリソレノイドにおいて、
ステータの極幅が、ロータの極幅より幅狭に形成されていることを特徴とするパチンコ玉発射装置用ロータリソレノイド。
【請求項3】
前記ステータの極幅と前記ロータの極幅における極幅の比は、一方の極幅を11とした場合、他方の極幅が16であることを特徴とする請求項1または2記載のパチンコ玉発射装置用ロータリソレノイド。
【請求項4】
ロータリソレノイドの回転軸に連結された打撃用ハンマを回動させることにより、パチンコ玉をパチンコ盤のゲームエリアに発射させるパチンコ玉発射装置において、
前記ロータリソレノイドは、
ロータの極幅が、ステータの極幅より幅狭に形成されていることを特徴とするパチンコ玉発射装置。
【請求項5】
ロータリソレノイドの回転軸に連結された打撃用ハンマを回動させることにより、パチンコ玉をパチンコ盤のゲームエリアに発射させるパチンコ玉発射装置において、
前記ロータリソレノイドは、
ステータの極幅が、ロータの極幅より幅狭に形成されていることを特徴とするパチンコ玉発射装置。
【請求項6】
前記ステータの極幅と前記ロータの極幅における極幅の比は、一方の極幅を11とした場合、他方の極幅が16であることを特徴とする請求項4または5記載のパチンコ玉発射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図6】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−229200(P2007−229200A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54436(P2006−54436)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(591145025)天竜丸澤株式会社 (6)
【Fターム(参考)】