説明

パチンコ球の製造方法

【課題】製造履歴情報や遊技店情報等の多くの情報を記録できるパチンコ球を提供する。
【解決手段】球体表面に、球体の赤道線Rに沿って延びる所定幅の情報記録領域2が形成され、上記赤道線Rに沿って延びる細長い単位刻印予定領域が、上記赤道線Rに沿って列をなすよう複数設けられて線状刻印予定領域が形成され、上記線状刻印予定領域が上記赤道線Rと平行に複数設けられることにより上記情報記録領域2が構成され、上記各単位刻印予定領域における上記赤道線Rに沿って延びる細長い刻印の有無により、上記情報記録領域2に所定の情報を記録することにより、製造履歴情報や遊技店情報等の多くの情報を記録できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技装置に用いるパチンコ球およびその製造方法ならびにパチンコ球梱包体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、パチンコ等の遊技店では、金銭と引き替えにパチンコ機に用いるパチンコ球やパチスロ機に用いる遊技メダルなどの遊技媒体を貸し出し、遊技者は、この貸し出されたパチンコ球等をパチンコ機などの遊技機に投入して遊技を行う。通常、各遊技店で使用される遊技媒体は、ほぼ同一の形状を有している一方で、遊技機に投入された遊技媒体の真偽の判定は、遊技媒体の形状により行われている。したがって、他の遊技店の遊技媒体が持ち込まれた場合に、その遊技店は損害を被るという問題があった。
【0003】
そこで、他の遊技店の遊技媒体が持ち込まれた場合や、偽造された不正の遊技媒体が持ち込まれた場合に、その不正行為を防止できるものとして、表面に二次元コードを記録した遊技メダルが開示されている(下記の特許文献1)。
また、パチンコ球に複数の異なる玉価値を設定し、その玉価値を球表面に形成した1本線や2本線の刻印で識別するパチンコ球が開示されている(下記の特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−144739号公報
【特許文献2】特開2003−181104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、パチンコ球等の遊技媒体は、遊技店の店内では景品と交換可能な貨幣的な価値を有するものであるが、一歩店を出ると、貨幣的な価値を有するものとの認識が薄れて単なる金属球として扱われてしまっている。その結果、製造段階や流通段階等の遊技店に至るまでの過程や、遊技店が閉店した以降において、パチンコ球に関して厳重な管理が行われているとは言えないのが実情である。
【0005】
そのため、流通過程でトラックが事故にあって散乱・紛失したパチンコ球等や、閉店した遊技店から持ち出されたパチンコ球等が、他の遊技店に持ち込まれて使用されたとしてもわからず、遊技店は損害を被るし、業界全体の信用も向上させるのに限界があるのが実情である。
【0006】
一方、パチンコ球自体が直径11mm程度の金属球に過ぎず、真偽や履歴の判定が極めて行いにくいという問題がある。
【0007】
すなわち、上記特許文献1の方法は、ある程度の面積の平面が存在する遊技メダルの上記平面に二次元コードを形成するのであり、当然のことながら、この手法をそのまま直径11mmのパチンコ球に適用することはできない。
【0008】
また、上記特許文献2の方法は、1本線や2本線等の単純な刻印で玉価値を識別するものであり、せいぜい2〜3種類の玉価値を判定できるに過ぎず、製造所・製造年月日等の履歴情報や、遊技店自身の情報等の多くの情報をパチンコ球自体に到底記録できるものではない。
【0009】
さらに、パチンコ球の表面に遊技店の店名の刻印が施される場合はあるにしても、パチンコホールの名称自体似たようなものが多いし、刻印のないパチンコ球も普通に存在しているため、結局、パチンコ球を見てもそのパチンコ球から遊技店を特定したり履歴情報を得ることは不可能である。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、製造所・製造年月日等の履歴情報や、遊技店自身の情報等の多くの情報をパチンコ球自体に記録できるパチンコ球およびその製造方法ならびにパチンコ球梱包体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のパチンコ球は、
球体表面に、球体の赤道線に沿って延びる所定幅の情報記録領域が形成され、
上記赤道線に沿って延びる細長い単位刻印予定領域が、上記赤道線に沿って列をなすよう複数設けられて線状刻印予定領域が形成され、
上記線状刻印予定領域が上記赤道線と平行に複数設けられることにより上記情報記録領域が構成され、
上記各単位刻印予定領域における上記赤道線に沿って延びる細長い刻印の有無により、上記情報記録領域に所定の情報が記録されていることを要旨とする。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明のパチンコ球の製造方法は、
金属球の球体表面の曲率に沿う凹曲面を有する凹溝が形成された転造型を用い、上記金属球の球体表面に転造により刻印を行うパチンコ球の製造方法であって、
上記転造型の凹溝の内面に、
上記凹溝の長手方向に沿って延びる細長い単位凸部形成予定領域が、上記長手方向に沿って列をなすよう複数設けられて線状凸部形成予定領域が形成され、上記単位凸部形成予定領域が凹溝の長手方向と平行に複数設けられて情報書込み領域が形成され、
上記各単位凸部形成予定領域における上記長手方向に沿って延びる細長い刻印凸部の有無により、上記情報書込み領域に所定の情報が記録され、
上記転造型を用いて金属球の球体表面に転造による刻印を行うことにより、球体表面に、球体の赤道線に沿って延びる所定幅の情報記録領域を形成することを要旨とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明のパチンコ球の梱包体は、
請求項1記載のパチンコ球が梱包され、当該梱包に、請求項1記載のパチンコ球の上記情報記録領域に記録された情報を少なくとも含む情報が記録されたラベルが貼付されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
すなわち、本発明のパチンコ球は、上記赤道線に沿って延びる細長い単位刻印予定領域が、上記赤道線に沿って列をなすよう複数設けられて線状刻印予定領域が形成され、上記線状刻印予定領域が上記赤道線と平行に複数設けられることにより上記情報記録領域が構成されている。これにより、上記情報記録領域が、単位刻印予定領域が赤道線方向とそれに交差する方向の二方向に並ぶことになる。そして、上記各単位刻印予定領域における上記赤道線に沿って延びる細長い刻印の有無により、上記情報記録領域に所定の情報が記録される。これにより、単位刻印予定領域が赤道線方向とそれに交差する方向の二方向に並んで形成された情報記録領域において、各単位刻印予定領域における刻印の有無により、例えば、製造履歴情報・遊技店情報・真偽情報等の多くの情報を記録することができる。
【0015】
そして、上記各単位刻印予定領域に形成される刻印は、上記赤道線に沿って延びる細長い刻印であることから、例えば、転造等の方法により、比較的容易に形成することができ、直径11mm程度の金属球であるパチンコ球に対して、多くの情報を容易かつ確実に記録することが可能になる。また、情報記録領域は、球体の赤道線に沿って延びる所定幅の領域であることから、球体であっても縦横二方向を利用した二次元の情報記録を行うことが可能で、記録できる情報量も多くできる。
【0016】
したがって、製造所・製造年月日等の製造履歴情報・遊技店情報・真偽情報等の多くの情報をパチンコ球自体に記録でき、パチンコ球によりそのパチンコ球から遊技店を特定したり製造履歴情報を遡って調査したりすることが可能となる。その結果、製造段階や流通段階等の遊技店に至るまでの過程や、遊技店が閉店した以降においても、パチンコ球に関して厳重な管理を行うことができ、遊技店の損害を減少させ、業界全体の信用も向上させることができるようになる。
【0017】
本発明において、上記情報記録領域の領域内および/または領域外に、上記情報記録領域に記録された情報の読取始点および読取方向を決定するための指標が設けられている場合には、単位刻印予定領域が赤道線方向とそれに交差する方向の二方向に並んで形成された情報記録領域は、球体の赤道線に沿って帯状に形成されることから、情報の読取始点および読取方向を容易に決定することで、確実かつ容易に情報を読み取って活用することができる。
【0018】
また、本発明のパチンコ球の製造方法は、上記転造型の凹溝の内面に、上記凹溝の長手方向に沿って延びる細長い単位凸部形成予定領域が、上記長手方向に沿って列をなすよう複数設けられて線状凸部形成予定領域が形成され、上記線状凸部形成予定領域が凹溝の長手方向と平行に複数設けられて情報書込み領域が形成されている。また、上記各単位凸部形成予定領域における上記長手方向に沿って延びる細長い刻印凸部の有無により、上記情報書込み領域に所定の情報が記録されている。
そして、上記転造型を用いて金属球の球体表面に転造による刻印を行うことにより、球体表面に、球体の赤道線に沿って延びる所定幅の情報記録領域を形成する。このように、情報記録領域を転造により比較的容易に形成することができ、直径11mm程度の金属球であるパチンコ球に対して、多くの情報を容易かつ確実に記録することが可能になる。また、単位凸部形成予定領域に形成された細長い刻印凸部は、長手方向に列をなし、それが幅方向に複数並んで情報書込み領域が形成され、上記刻印凸部、情報書込み領域は、転造方向に沿った方向に形成されているため、転造の際の型の破損を防止して、情報の欠落や破損を防止し、所定の情報を確実にパチンコ球に記録することができる。
【0019】
また、本発明のパチンコ球梱包体は、請求項1記載のパチンコ球が梱包され、当該梱包に、請求項1記載のパチンコ球の上記情報記録領域に記録された情報を少なくとも含む情報が記録されたラベルが貼付されている。これにより、パチンコ球に記録された情報を含む情報が梱包に貼付されることになることから、流通過程においても、製造履歴情報等の上記情報を利用することができ、トレーサビリティが可能になる。
上記ラベルは、パチンコ球の上記情報記録領域に記録された情報を少なくとも含む情報が記録された二次元コードが設けられたものとすることができる。
また、上記ラベルは、パチンコ球の上記情報記録領域に記録された情報を少なくとも含む情報が記録されたICが設けられたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0021】
図1〜図4は、本発明のパチンコ球の一実施例を示す。
【0022】
図1は本発明のパチンコ球1の外観を示す図である。このパチンコ球1は、例えば、炭素工具鋼等の鋼材を素材として球状に形成されたものであり、図1(A)に示すように、球体表面に、球体の赤道線Rに沿って延びる所定幅の情報記録領域2が形成されている。上記パチンコ球1は、この例では、直径略11mmの球体である。
【0023】
上記情報記録領域2は、図1(B)に示すように、上記赤道線Rに沿って球体を略半周するA領域と、このA領域の反対側において赤道線Rに沿って球体を略半周するB領域との2つの領域にそれぞれ形成され、全体でパチンコ球1の外周をほぼ一周するように設けられている。上記A領域とB領域の情報記録領域2は、それぞれ平面に展開すると、赤道線Rを長手方向の軸として対照に形成された略長方形状を呈する領域である。
【0024】
したがって、各情報記録領域2の長手方向の寸法は、平面に展開した状態で、球体の赤道線Rの円周長の半分以下である。直径略11mmの球体であれば、約17.2mm以下に設定されている。また、各情報記録領域2の幅寸法は、平面に展開した状態で、球体の直径の50%以下程度に設定するのが好ましく、より好ましいのは直径の40%以下である。直径略11mmの球体であれば、約5.5mm以下が好ましく、より好ましいのは、4.4mm以下である。
【0025】
上記幅寸法を大きくしすぎると、平面に展開した状態で、長方形状の領域にならないため、後述するように、赤道線R方向とそれに直交する方向の二方向での情報記録に適さなくなるからである。また、後述するように、情報記録を転造で行う際に、赤道線Rから離れた位置では刻印が困難になって、型寿命や刻印の鮮明性等の観点から好ましくないからである。
【0026】
上記A領域とB領域では、同じ情報を記録してもよいし、異なる情報を記録することもできる。A領域とB領域に異なる情報を記録した場合、単純に情報量が倍増するので、より多くの情報をパチンコ球1自体に記録することができる。また、A領域とB領域に同じ情報を記録した場合、何らかの事情で一方の領域の情報が読み取れなくなった場合でも、他方の領域から情報を読み取ることができ、1つのパチンコ球1に情報のバックアップをすることができる。
【0027】
図2は、上記情報記録領域2の詳細を示す図である。この情報記録領域2は、図2(A)に示すように、上記赤道線Rに沿って延びる細長い単位刻印予定領域3が、上記赤道線Rに沿って列をなすよう複数設けられて線状刻印予定領域4が形成され、上記線状刻印予定領域4が上記赤道線Rと平行に複数設けられることにより上記情報記録領域2が構成されている。
【0028】
より詳しく説明すると、上記単位刻印予定領域3は、赤道線Rに沿って延びる長方形の領域であり、各単位刻印予定領域3は、図2(B)に示す、上記赤道線Rに沿って延びる細長い刻印6が形成されうる領域として設けられている。
【0029】
上記単位刻印予定領域3が赤道線R方向に複数列をなすよう配置されて線状刻印予定領域4が形成されている。この例では、10個の単位刻印予定領域3が列をなして線状刻印予定領域4が形成されている。
【0030】
一方、9個の単位刻印予定領域3が赤道線R方向に複数列をなして配置され、さらに、上記単位刻印予定領域3よりも長い指標刻印形成部7が端部配置されて予備線状刻印予定領域5が形成されている。この例では、指標刻印形成部7は、単位刻印予定領域3の2倍の長さに設定され、予備線状刻印予定領域5は、線状刻印予定領域4よりも単位刻印予定領域3ひとつ分だけ長くなっている。
【0031】
そして、この例では、上記線状刻印予定領域4が赤道線Rと平行に9列配置され、さらに予備線状刻印予定領域5が1列平行に配置され、これら10列で情報記録領域2が形成されている。
【0032】
上記予備線状刻印予定領域5の指標刻印形成部7には、各単位刻印予定領域3に形成される刻印6の約2倍長さで赤道線Rに沿って延びる細長い指標刻印が形成される。これにより、上記情報記録領域2の領域内と領域外に、上記情報記録領域2に記録された情報の読取始点および読取方向を決定するための指標が形成される。
【0033】
上記刻印6および指標刻印は、後述するように金属球に対する転造により球体表面に溝状の刻印として形成されるものである。上記刻印6は、図2(B)に示すように、幅方向に表面に向かって拡がり、長手方向が赤道線Rに沿って延びる細長い溝状を呈している。指標刻印は図示していないが、基本的に上記刻印6と同様の構成であり、長手方向の寸法だけが長く設定されている。
【0034】
そして、上記各単位刻印予定領域3における刻印6の有無により、上記情報記録領域2に所定の情報が記録される。すなわち、この例では、各単位刻印予定領域3における刻印6の有無により、二進法の「1」「0」を記録する。すなわち、1つの単位刻印予定領域3に1ビットの情報を記録することが可能である。
【0035】
そして、上記情報記録領域2は、単位刻印予定領域3が赤道線R方向とそれに直交する方向の二方向に並んで構成される。したがって、例えば、赤道線R方向に単位刻印予定領域3が10個列設された線状刻印予定領域4では10ビットの情報が記録できる。この場合、読取方向は赤道線R方向である。
【0036】
また、9列の線状刻印予定領域4が並んだ情報記録領域2における、赤道線Rと直交する方向に並んだ単位刻印予定領域3の1行では、9ビットの情報を記録することができる。この場合、読取方向は赤道線Rと直交する方向である。
【0037】
上記指標刻印形成部7の指標は、情報記録領域2に記録された情報の読取始点および読取方向を決定する。上述した実施例のように、単位刻印予定領域3の列と行から構成される情報記録領域2の角の部分に上記指標を設けておけば、読取始点および読取方向を決定するのに便利である。すなわち、例えば、上記指標の位置を基準とした所定の位置から、所定の方向に各列または各行を読むと決めておけば、容易に情報記録領域2に記録された情報を読み取ることができる。
【0038】
つぎに、上記情報記録領域2への情報記録の具体例について説明する。
【0039】
図3は、情報の読取方向を赤道線Rに沿った方向に設定した例であり、図4は、情報の読取方向を赤道線Rと直交する方向に設定した例である。
【0040】
なお、図3および図4において、塗りつぶされた単位刻印予定領域3は刻印6がなされた箇所であり、「1」のデータが入力されたこととして読み取る。反対に、塗り潰されていない単位刻印予定領域3は刻印6がなされいない箇所であり、「0」のデータが入力されたこととして読み取る。
【0041】
図3(A)は、情報の読取方向を赤道線Rに沿った方向に設定し、10個の単位刻印予定領域3が列設された各線状刻印予定領域4および予備線状刻印予定領域5のうち、指標刻印形成部7と重複する行以外の9個の単位刻印予定領域3に9ビットの情報を記録し、情報記録領域2に9ビット×10列の情報を記録した例である。
【0042】
また、この例は、指標刻印形成部7を基準として、指標刻印形成部7が存在する列における指標刻印形成部7と反対側の角に位置する単位刻印予定領域3を読取始点Sとして、当該読取始点Sからその列(図示の左端の列)を赤道線R方向に9ビット読み、ついで次の列を赤道線R方向に9ビット読むことを繰り返すように設定された情報記録がなされている。
【0043】
この例では、各線状刻印予定領域4にJISコード2進法により、0〜9の10個の数字と、A〜Zの26個のアルファベット文字、合計36文字を記録可能としている。
【0044】
図示した例では、読取始点Sから1列目が「100000100」、2列目が「101011000」…の2進数が記録され、JISコード2進法で読解すると、それぞれ「A」「5」である。このようにして10列の記録が行われ、この例では「A56B45B7Z9」の文字列が情報として記録されている。
【0045】
図3(B)は、情報の読取方向を赤道線Rに沿った方向に設定し、10個の単位刻印予定領域3が列設された各線状刻印予定領域4に9ビットの情報を記録し、予備線状刻印予定領域5のうち指標刻印形成部7を除く9個の単位刻印予定領域3に9ビットの情報を記録した例である。
【0046】
また、この例は、指標刻印形成部7を基準として、指標刻印形成部7が存在する列における指標刻印形成部7と反対側の角に位置する単位刻印予定領域3を読取始点Sとして、当該読取始点Sからその列(図示の左端の列)を赤道線R方向に9ビット読み、ついで次の列を赤道線R方向に10ビット読み、以下それを繰り返すように設定された情報記録がなされている。
【0047】
この例では、各線状刻印予定領域4に2進法により0〜1023までの数値を記録し、予備線状刻印予定領域5に2進法により0〜511までの数値を記録可能としている。
【0048】
図示した例では、読取始点Sから1列目には「101101001」の2進数(十進数では301)が、2列目には「1110011111」の2進数(十進数では999)が記録されている。このようにして10列の記録が行われ、この例では「301,999,5,45,125,250,512,990,211,511」の10の数値が情報として記録されている。
【0049】
図4(A)は、情報の読取方向を赤道線Rと直交する方向に設定している。そして、並設された線状刻印予定領域4の各行(図示の横方向)に並ぶ9個の単位刻印予定領域3に9ビットの情報を記録し、情報記録領域2に9ビット×10行の情報を記録した例である。この例では、予備線状刻印予定領域5には情報を記録していない。
【0050】
また、この例は、指標刻印形成部7を基準として、指標刻印形成部7が存在する行における指標刻印形成部7と反対側の角に位置する単位刻印予定領域3を読取始点Sとして、当該読取始点Sからその行(図示の上端の行)を赤道線R方向に9ビット読み、ついで次の行を赤道線R方向に9ビット読むことを繰り返すように設定された情報記録がなされている。
【0051】
この例では、各線状刻印予定領域4にJISコード2進法により、0〜9の10個の数字と、A〜Zの26個のアルファベット文字、合計36文字を記録可能としている。
【0052】
図示した例では、読取始点Sから1行目が「100000100」、2行目が「101011000」…の2進数が記録され、JISコード2進法で読解すると、それぞれ「A」「5」である。このようにして10行の記録が行われ、この例では「A52X45B789」の文字列が情報として記録されている。
【0053】
図4(B)は、情報の読取方向を赤道線Rと直交する方向に設定している。そして、並設された線状刻印予定領域4の各行(図示の横方向)に並ぶ9個の単位刻印予定領域3に9ビットの情報を記録し、情報記録領域2に9ビット×10行の情報を記録した例である。この例では、予備線状刻印予定領域5には情報を記録していない。
【0054】
また、この例は、指標刻印形成部7を基準として、指標刻印形成部7が存在する行における指標刻印形成部7と反対側の角に位置する単位刻印予定領域3を読取始点Sとして、当該読取始点Sからその行(図示の上端の行)を赤道線R方向に9ビット読み、ついで次の行を赤道線R方向に9ビット読むことを繰り返すように設定された情報記録がなされている。
【0055】
この例では、各線状刻印予定領域4に2進法により0〜1023までの数値を記録し、予備線状刻印予定領域5に2進法により0〜511までの数値を記録可能としている。
【0056】
図示した例では、読取始点Sから1行目には「111100000」の2進数(十進数では15)が、2行目には「001000000」の2進数(十進数では4)が記録されている。このようにして10列の記録が行われ、この例では「15,4,25,45,125,250,350,455,211,511」の10の数値が情報として記録されている。
【0057】
このように、上述した各例では、指標刻印形成部7を基準として、指標刻印形成部7が存在する列または行を開始列または開始行とし、各列または各行は、指標刻印形成部7の反対側から指標刻印形成部7に向かって読むように設定しているが、これに限定するものではない。
【0058】
上記パチンコ球1では、情報記録部2に形成された刻印6に、所定波長の光線に反応して可視範囲の蛍光を発する蛍光塗料を充填することができる。このような蛍光塗料として、ブラックライト(不可視光線)に代表されるような所定波長の紫外線や電磁波等の光線が照射されることにより蛍光を発する蛍光染料、蛍光顔料等を採用することができる。本実施例では、紫外線が照射されることにより蛍光を発する蛍光顔料(ブラックライト顔料)を採用している。これにより、ブラックライト等の所定波長の光線を照射することにより真偽を判定することができるようになる。
【0059】
以上のように、本発明のパチンコ球1は、上記赤道線Rに沿って延びる細長い単位刻印予定領域3が、上記赤道線Rに沿って列をなすよう複数設けられて線状刻印予定領域4が形成され、上記線状刻印予定領域4が上記赤道線Rと平行に複数設けられることにより上記情報記録領域2が構成されている。これにより、上記情報記録領域2が、単位刻印予定領域3が赤道線R方向とそれに交差する方向の二方向に並ぶことになる。そして、上記各単位刻印予定領域3における上記赤道線Rに沿って延びる細長い刻印6の有無により、上記情報記録領域2に所定の情報が記録される。これにより、単位刻印予定領域3が赤道線R方向とそれに交差する方向の二方向に並んで形成された情報記録領域2において、各単位刻印予定領域3における刻印の有無により、例えば、製造履歴情報・遊技店情報・真偽情報等の多くの情報を記録することができる。
【0060】
そして、上記各単位刻印予定領域3に形成される刻印6は、上記赤道線Rに沿って延びる細長い刻印であることから、例えば、転造等の方法により、比較的容易に形成することができ、直径11mm程度の金属球であるパチンコ球に対して、多くの情報を容易かつ確実に記録することが可能になる。また、情報記録領域は、球体の赤道線に沿って延びる所定幅の領域であることから、球体であっても縦横二方向を利用した二次元の情報記録を行うことが可能で、記録できる情報量も多くできる。
【0061】
したがって、製造所・製造年月日等の製造履歴情報・遊技店情報・真偽情報等の多くの情報をパチンコ球1自体に記録でき、パチンコ球1によりそのパチンコ球1から遊技店を特定したり製造履歴情報を遡って調査したりすることが可能となる。その結果、製造段階や流通段階等の遊技店に至るまでの過程や、遊技店が閉店した以降においても、パチンコ球1に関して厳重な管理を行うことができ、遊技店の損害を減少させ、業界全体の信用も向上させることができるようになる。
【0062】
また、上記情報記録領域2の領域内および/または領域外に、上記情報記録領域2に記録された情報の読取始点Sおよび読取方向を決定するための指標が設けられているため、単位刻印予定領域3が赤道線R方向とそれに交差する方向の二方向に並んで形成された情報記録領域2は、球体の赤道線Rに沿って帯状に形成されることから、情報の読取始点Sおよび読取方向を容易に決定することで、確実かつ容易に情報を読み取って活用することができる。
【0063】
つぎに、上記パチンコ球1の製造方法について説明する。
【0064】
図5は、上記パチンコ球1の製造工程を示す工程図である。まず、原材料の条鋼を所定の直径になるまで伸線し、圧造後、球加工して金属球を形成する。上記圧造工程は、図6(A)に示すように、切断刃物23で所定長さに切断した素材24を、半球状の凹部27が形成されたプレス金型25で圧造して略球状に形成することが行われる。上記球加工は、図6(B)に示すように、上記圧造した略球体の素材を2枚の加工盤26の間に挟み、加工盤26が円を描くように移動させ、真円度をある程度まであげた金属球10を形成する。
【0065】
ついで、金属球10の表面に刻印により所定の情報を記録するための刻印工程を行う。刻印工程は、図7に示すように、上記金属球10の球体表面の曲率に沿う凹曲面13を有する凹溝12が形成された転造型11を用い、上記金属球10の球体表面に転造により刻印6を形成する。
【0066】
上記転造型11は、略ブロック状であり、凹溝12の溝面が金属球10の球体表面の曲率に沿うように形成されている。そして、上記凹溝12の溝面に、刻印6を形成するための刻印凸部20を形成しておき、金属球10を、それぞれ凹溝12が形成された転造型11で挟むようにして、2つの転造型11を相対的に凹溝12の長手方向に移動させる。このとき、凹溝12の溝面に形成された刻印凸部20が金属球10の表面に食い込んで刻印6が形成されるのである。
【0067】
図8は上記転造型11の凹溝12側を示す図である。
【0068】
上記転造型11の凹溝12の内面には、上記凹溝12の長手方向Lに沿って延びる細長い単位凸部形成予定領域17が、上記長手方向Lに沿って列をなすよう複数設けられて線状凸部形成予定領域18が形成されている。そして、上記線状凸部形成予定領域18が凹溝12の長手方向Lと平行に複数設けられて情報書込み領域16が形成されている。
【0069】
上記各単位凸部形成予定領域17における上記長手方向Lに沿って延びる細長い刻印凸部20の有無により、上記情報書込み領域16に所定の情報が記録されている。図9は、上記刻印凸部20を示す図であり、平面視で凹溝12の長手方向Lに延びる長方形状を呈しており、断面は台形状である。
【0070】
上記単位凸部形成予定領域17は、上述したパチンコ球1の単位刻印予定領域3に対応し、線状凸部形成予定領域18は線状刻印予定領域4に対応する。このような転造型11を用いて金属球10の球体表面に転造による刻印6を行うことにより、球体表面に、球体の赤道線Rに沿って延びる所定幅の情報記録領域2を形成することができるのである。
【0071】
すなわち、上記転造は、2個一組の転造型11の凹溝12の凹曲面13に金属球10の表面が密着し、その状態で2つの転造型11が上記長手方向Lに相対的に動くことにより、金属球10が凹溝12内面と転動接触する。このとき、情報書込み領域16に形成された刻印凸部20により金属球10の表面に刻印6が転写され、情報書込み領域16に対応する情報記録領域2が形成されるのである。したがって、上記凹溝12の長手方向Lは、パチンコ球1の赤道方向Rに対応する。
【0072】
なお、図8において21は、上述した指標刻印形成部7に対応する指標刻印突部形成部であり、指標刻印を形成するための刻印突部が形成されている。
【0073】
上記刻印工程の後、焼入れ焼き戻し、バレル研磨、精密研磨、鍍金前処理、鍍金、色付けの各工程を経て、検査・梱包が行われる。上記色付け工程では、上述した蛍光塗料を使用して刻印6に塗料を充填することができる。
【0074】
本発明のパチンコ球の製造方法によれば、上記転造型11を用いて金属球10の球体表面に転造による刻印を行うことにより、球体表面に、球体の赤道線Rに沿って延びる所定幅の情報記録領域2を形成する。このように、情報記録領域2を転造により比較的容易に形成することができ、直径11mm程度の金属球であるパチンコ球1に対して、多くの情報を容易かつ確実に記録することが可能になる。また、単位凸部形成予定領域17に形成された細長い刻印凸部20は、長手方向に列をなし、それが幅方向に複数並んで情報書込み領域16が形成され、上記刻印凸部20、情報書込み領域16は、転造方向に沿った方向に形成されているため、転造の際の型の破損を防止して、情報の欠落や破損を防止し、所定の情報を確実にパチンコ球1に記録することができる。
【0075】
図10は、上述した本発明のパチンコ球1が梱包された梱包体の一実施例である。当該梱包体では、梱包箱30に、上記パチンコ球1の上記情報記録領域2に記録された情報を少なくとも含む情報が記録された二次元コード32付のラベル31が貼付されている。図11は上記ラベル31の具体例であり、二次元コード32としてQRコードが使用されている。また、上記ラベル31は、ダンボール等の梱包箱30の蓋の突合せ部をまたがるように貼付するのが好ましい。
上記二次元コード32が設けられたラベル31に代えて、上記ラベル31として、パチンコ球の上記情報記録領域に記録された情報を少なくとも含む情報が記録されたICが設けられたICカード、ICタグ、ICラベル等を用いることも可能である。このようにすることにより、ラベル31に多くの情報を記録することができ、トレーアビリティに対してより有効である。
【0076】
上記パチンコ球梱包体は、本発明のパチンコ球1が梱包され、当該梱包に、上記パチンコ球1の上記情報記録領域2に記録された情報を少なくとも含む情報が記録された二次元コード32付のラベル31が貼付されている。これにより、パチンコ球1に記録された情報を含む情報が梱包に貼付されることになることから、流通過程においても、製造履歴情報等の上記情報を利用することができ、トレーサビリティが可能になる。
【0077】
なお、本発明の梱包体は、パチンコ球1に限らずメダル等の遊技媒体に適用することができる。この場合、パチンコ球1やメダルの表面に、上記情報記録領域2と同様の情報記録領域を形成して情報を記録し、その情報を少なくとも含む情報が記録された二次元コード32付のラベル31を梱包箱に貼付することが行われる。
【0078】
また、本発明において、上記線状刻印予定領域4を構成する単位刻印予定領域3の数は、上述した例に限定するものではなく、上述した例より少なくても良いし多くても良い。また、情報記録領域2を構成する線状刻印予定領域4の数も、上述した例に限定するものではなく、上述した例より少なくても良いし多くても良い。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施例のパチンコ球を示す図である。
【図2】情報記録領域を示す図である。
【図3】本発明の作用の一例を説明する図である。
【図4】本発明の作用の第2例を説明する図である。
【図5】本発明のパチンコ球の製造工程を示す工程図である。
【図6】(A)圧造工程と、(B)球加工工程を説明する図である。
【図7】刻印工程を説明する図である。
【図8】転造型および情報書込み領域を説明する図である。
【図9】刻印凸部を示す図である。
【図10】本発明のパチンコ球梱包体を示す斜視図である。
【図11】上記梱包体に使用するラベルを示す図である。
【符号の説明】
【0080】
R 赤道線
L 長手方向
S 読取始点
1 パチンコ球
2 情報記録領域
3 単位刻印予定領域
4 線状刻印予定領域
5 予備線状刻印予定領域
6 刻印
7 指標刻印形成部
10 金属球
11 転造型
12 凹溝
13 凹曲面
16 情報書込み領域
17 単位凸部形成予定領域
18 線状凸部形成予定領域
20 刻印凸部
21 指標刻印凸部形成部
23 切断刃物
24 素材
25 プレス金型
26 加工盤
27 凹部
30 梱包箱
31 ラベル
32 二次元コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球体表面に、球体の赤道線に沿って延びる所定幅の情報記録領域が形成され、
上記赤道線に沿って延びる細長い単位刻印予定領域が、上記赤道線に沿って列をなすよう複数設けられて線状刻印予定領域が形成され、
上記線状刻印予定領域が上記赤道線と平行に複数設けられることにより上記情報記録領域が構成され、
上記各単位刻印予定領域における上記赤道線に沿って延びる細長い刻印の有無により、上記情報記録領域に所定の情報が記録されていることを特徴とするパチンコ球。
【請求項2】
上記情報記録領域の領域内および/または領域外に、上記情報記録領域に記録された情報の読取始点および読取方向を決定するための指標が設けられている請求項1記載のパチンコ球。
【請求項3】
金属球の球体表面の曲率に沿う凹曲面を有する凹溝が形成された転造型を用い、上記金属球の球体表面に転造により刻印を行うパチンコ球の製造方法であって、
上記転造型の凹溝の内面に、
上記凹溝の長手方向に沿って延びる細長い単位凸部形成予定領域が、上記長手方向に沿って列をなすよう複数設けられて線状凸部形成予定領域が形成され、上記線状凸部形成予定領域が凹溝の長手方向と平行に複数設けられて情報書込み領域が形成され、
上記各単位凸部形成予定領域における上記長手方向に沿って延びる細長い刻印凸部の有無により、上記情報書込み領域に所定の情報が記録され、
上記転造型を用いて金属球の球体表面に転造による刻印を行うことにより、球体表面に、球体の赤道線に沿って延びる所定幅の情報記録領域を形成することを特徴とするパチンコ球の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載のパチンコ球が梱包され、当該梱包に、請求項1記載のパチンコ球の上記情報記録領域に記録された情報を少なくとも含む情報が記録されたラベルが貼付されていることを特徴とするパチンコ球梱包体。
【請求項5】
上記ラベルは、パチンコ球の上記情報記録領域に記録された情報を少なくとも含む情報が記録された二次元コードが設けられたものである請求項4記載のパチンコ球梱包体。
【請求項6】
上記ラベルは、パチンコ球の上記情報記録領域に記録された情報を少なくとも含む情報が記録されたICが設けられたものである請求項4または5記載のパチンコ球梱包体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属球の球体表面の曲率に沿う凹曲面を有する凹溝が形成された転造型を用い、上記金属球の球体表面に転造により刻印を行うパチンコ球の製造方法であって、
上記転造型の凹溝の内面に、
上記凹溝の長手方向に沿って延びる細長い単位凸部形成予定領域が、上記長手方向に沿って列をなすよう複数設けられて線状凸部形成予定領域が形成され、上記線状凸部形成予定領域が凹溝の長手方向と平行に複数設けられて情報書込み領域が形成され、
上記各単位凸部形成予定領域における上記長手方向に沿って延びる細長い刻印凸部の有無により、上記情報書込み領域に所定の情報が記録され、
上記情報書込み領域の領域内および/または領域外に、上記情報書込み領域に記録された情報の読取始点および読取方向を決定するための指標となる指標刻印凸部形成部が、上記単位凸部形成予定領域における刻印凸部と同様に上記凹溝の長手方向に沿って延びる細長い刻印凸部として形成され設けられ、
上記転造型を用いて金属球の球体表面に転造による刻印を行うことにより、球体表面に、球体の赤道線に沿って延びる所定幅の情報記録領域を形成することを特徴とするパチンコ球の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−343708(P2006−343708A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257194(P2005−257194)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【特許番号】特許第3806137号(P3806137)
【特許公報発行日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(504245631)佐藤鉄工株式会社 (4)