説明

パネルラックのパネル保持具

【課題】一定の締付け力の確保、短時間での締付け及びその解除操作、締付け完了の容易な視認性を得る。
【解決手段】レバー30の90度下方への回転操作によって押圧子20を建築用パネルP側縁端面に押圧して支持固定するパネルラック用保持具Rである。レバーの90度の正逆回転により締付け・その解除が行われ、その締付け力は一定となり、そのレバーの回転操作は容易であり、レバーの回転位置によって、締付け完了やその解除も容易に目視によって判断し得る。そのレバーによる押圧子の建築用パネルPの側縁端面への押圧は、レバー先端のカム面31と押圧子移動杆21後端の当接位置の変位による。押圧子20は、移動杆21と圧接子22とからなり、その圧接子の移動杆21へのねじ込み量の調節によってパネルとの距離aを調節できる。このため、例えば、圧接子をパネルに当接した後、レバーを回転すれば、常に、一定の押圧力となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、住宅等の建築資材であるパネルを収納保持するパネルラックにおける前記パネルを支持固定する保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の建築用パネル、特に木質材料からなる建築用パネルは、加工がし易く、また、通気性、透湿性に優れ、調湿機能を有する等の有利性から、種々の建築材料、特に、フローリング材、間仕切り材等、種々の内装材の分野で使用されている。
しかし、その木質材料は、近年、無垢の木材の入手が困難となってきていることから、合板、集成材、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード等、種々の木質基材に突き板を貼着したり、木目模様の化粧紙を接着する等をしたりして、表面化粧したものが建築用パネルとして汎用されている。
【0003】
これらの建築用パネルは、いずれの構成のものも工場で製造された後、トラック等によって建築現場まで輸送される。その輸送時、パネルラックと呼ばれるラックに複数枚のパネルを保持し、そのパネルラックを介して輸送するのが一般的である(特許文献1 図2、図3参照)。
そのパネルラックには、特許文献1に記載のように、パネルを縦置きして並べたり、パネルを水平置きして積み上げたりするものがある。その水平置きするパネルラック1は、図11〜図15に示すように、平面視、四角枠状の水平フレーム2と、その水平フレーム2の四角にそれぞれ立設された縦フレーム3、3、3、3と、各縦フレーム3の長さ方向にそれぞれ所要間隔で同一高さに設けられた受けとなる横桟4とからなるものであり、その各同一高さの横桟4に建築用パネルPをそれぞれ水平に載置する。
【0004】
図示の水平フレーム2は、図15に示すように横桟4aが4本設けられて、その左右内側の2本の横桟4a、4aと前後の杆2a、2aとから上記四角枠状と成っている(図11において左右方向が左右、図12において左右方向が前後、以下同様)。また、縦フレーム3は、同図に示すように、横桟4によって連結された対の縦フレーム片3a、3aを上下に嵌め合わせて構成され、各縦フレーム片3aはその下端部を下側の縦フレーム片3aの上端部に嵌めることによって連結される(鎖線状態参照)。縦フレーム片3aと横桟4の端部の固定は、その横桟端部を縦フレーム片3a側面に嵌めてビス止めしたり、溶接したりして行っている。水平フレーム2の四角枠状4角にも縦フレーム片3aの下端部が嵌る孔2cが形成されて、その孔2cに縦フレーム片3a下端部を嵌めることによって縦フレーム3が水平フレーム2に立設される(鎖線状態参照)。
【0005】
この構成のパネルラック1は、まず、水平フレーム2の4角の孔2cに縦フレーム片3aを嵌めて左右に横桟4、4を設け(図15鎖線状態)、その横桟4、4上にパネルPを載せ、つぎに、両縦フレーム片3aの上端部に縦フレーム片3aを嵌めて前後に横桟4、4を設け、さらに、その横桟4、4上にパネルPを載せる。この作業を繰り返すことによって所要段数の横桟4が設けられてその段数のパネルPが載置される。図11、図12においては、9段となっている。水平フレーム2の横桟4a、4a上にもパネルPを載置することもできる。
【0006】
これらのパネルラック1において、各パネルPが輸送中の振動により横ずれ等してパネルラック1からずり落ちることはパネルPの損傷に繋がる。このため、例えば、特許文献1のパネルラックにおいては、各パネルPの両側端面を保持部材で支持固定して前記横ずれ等を防止している(特許文献1図2の符号16参照)。
【0007】
また、図11、図12に示すパネルラック1は、同図及び図13、図14に示すように、各縦フレーム3の各パネルPの載置位置に対応して一方側に押圧子5を設け、他方側にはストッパー6を設けて、その押圧子5によってパネルPの側縁端面を押圧し、押圧子5とストッパー6とによってパネルPを支持固定する。その押圧子5は、縦フレーム3にねじ通されたボルト5aとそのボルト先端のゴム製パッド5bからなり、ストッパー6は、縦フレーム3に固定又は縦フレーム3とパネルPの間に介在されて、パネルPとの当接面にゴム製パッド6bが設けられている。
【0008】
同図中、7は同一横桟4上に載置された小幅のパネルP間に介在されたスペーサ、8は縦フレーム3の中間部と最上段に取付けたロングアイボルトであって、このロングアイボルト8でもってこのパネルラック1は吊上げられる。このロングアイボルト8の取付け位置には左右の縦フレーム3に亘る補強杆2bが架け渡されている(図13、図14参照)。また、Tはトラック等の輸送車の荷台である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−335675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1記載のパネル縦置きパネルラックは、建築用パネルPが縦置きであることから、トラック等の荷台Tの幅によって積載パネル量が制限されるとともに、同一大きさのパネルPしか収納し得ない不都合がある。
図11、図12に示すパネル横置きパネルラック1は、同図から理解できるように、上方に積み上げていくため、その積み上げが許される限りにおいてラック1を高くすれば、積載パネル量を多くすることができるとともに、パネルPの長さが異なっても、横桟4に載置し得る限りにおいて収納することができ、幅が異なっても、スペーサ7を介在することによって収納し得る。
【0011】
そのパネル横置きパネルラック1においては、図12から理解できるように、各横桟4上に収納したパネルPは、一枚もの、数枚ものに限らず、各段のパネルPの前後両側縁はほぼ揃うため、上記押圧子5によりそのパネル側縁端面を押すことによって、各段のパネルPをパネルラック1に支持固定し得る。
このとき、その押圧子5のボルト5aを強くねじ込むと、建築用パネルPが変形したり、損傷したりする恐れがあり、一方、ねじ込み量(締付け力)が弱いと、輸送中の振動によってパネルPが動いて傷が付く等の不都合が生じる。このように、適切な締付け力でないと、パネルPが傷ついて商品価値を失うこととなって使用できなくなる。
このため、通常、図14の鎖線で示すように、そのボルト締めはトルクレンチ9でもって、一定の締付けトルク(ねじ込み量)となるようにしている。
【0012】
しかし、そのトルクレンチ9による締め付けは、一段のパネルPに対し、少なくとも左右2個所のボルト5aに対して行う必要があって、例えば、図示の9段であれば、2×9=18個所となる。その18個所において、各ボルト5aにトルクレンチ9を嵌めて締付けする作業は、締付け力を確認しながら行うこととなり、細心の注意が必要であって神経を使うため、繁雑であるとともに多くの時間を必要とする。
また、トルクレンチ9の締付け力の管理は、ボルト5aとの嵌合面の状況(面粗さ、潤滑油の有無等)により摩擦係数が変動するため、その最終締付け力のバラツキが多く、締め付け過ぎや逆に締付け力不足を起こす恐れがある。
さらに、各押圧子5の締め付けが完了したか否かは、目視でもってボルト5aのねじ込み度合で確認するしかなく、上記のようにその締付け個所が多いことから、締付け忘れを起こし易く、その確認作業に神経を使うこととなる。
【0013】
なお、上記押圧子5を縦フレーム3に設ける以外のパネル支持固定手段には、特殊な搬送用固定金具を使用しているものもあるが、その固定金具はパネル収納の度に縦フレーム3等に取付・取外ししているため、その作業が煩雑であるとともに、多くの時間を費やしている。
上記のいずれのパネル支持固定手段においても、建築用パネルPは、多くの枚数を決められた時間に所定の建築現場に輸送する必要があり、そのためには、多くの作業員と時間を必要としている。
【0014】
この発明は、上記実情の下、一定の締付け力の確保、短時間での締付け(パネル支持固定)操作、締付け完了の視認性、短時間での締付け解除(パネル取外し)操作を行い得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を達成するために、この発明は、レバーの所要角度の回転操作によって押圧子を建築用パネルPの側縁端面に押圧して支持固定するようにしたのである。
その所要角度、例えば、90度、レバーを正逆回転すれば、締付け・その解除が行われ、その締付け力は一定となる。また、そのレバーの回転操作は容易であるとともに、レバーの回転位置によって、締付け完了やその解除も容易に目視によって判断し得る。
【0016】
この発明の具体的な構成としては、平面視、四角枠状の水平フレームと、その水平フレームの四角にそれぞれ立設された縦フレームと、各縦フレームの長さ方向にそれぞれ所要間隔で同一高さに設けられた受けとからなり、その各同一高さの受けに建築用パネルをそれぞれ水平に載置し、前記対向する縦フレームに建築用パネルの側縁端面を押圧してその建築用パネルを支持固定する保持具を設けたパネルラックにおける前記保持具であって、前記縦フレームに建築用パネルの側縁端面に向かって進退自在に設けられてその建築用パネルの側縁端面に押圧される押圧子と、前記縦フレームに回転可能に設けられて押圧子の後端面に先端カム面が摺接するレバーとからなり、前記カム面は、前記レバーが水平状態では押圧子が建築用パネルの側縁端面から離れるレバー回転中心からの高さとなっているとともに、レバーをその水平状態から上下方向に回転すると、レバー回転中心から徐々に離れる高さとなって押圧子が建築用パネルの側縁端面に近づくように押してやがてレバー回転中心から同一高さ面となってその押圧子の建築用パネルの側縁端面への押圧状態を固定する形状となっている構成を採用することができる。
【0017】
この構成の建築用パネル保持具は、レバーをその水平状態から、例えば、上方向又は下方向に回転すると、カム面でもって押圧子が建築用パネルの側縁端面に近づけられて押圧して一定の押圧力(締付け力)になると、そのカム面がレバー回転中心から同一高さ面となる。この同一高さ面での押圧は、レバーを逆転し得る力が働かない限り、その押圧状態が解除されないことであって、ロック状態と言える。
レバーを逆転させれば、カム面でもって上記押圧力が解除され、パネルPの取外しが可能となる。
【0018】
上記押圧子は、上記作用をなし得る物であれば、どの様な構成でも良いが、例えば、上記縦フレームに進退自在に挿入されて後端面に上記レバーのカム面が摺接する移動杆と、その移動杆先端の上記建築用パネルの側縁端面に圧接する圧接子とからなって、その圧接子に移動杆がねじ込まれている構成とすることができる。
この構成の押圧子では、そのねじ込み量を調節することによって移動杆後端面と圧接子の建築用パネルの側縁端面との圧接面の間の長さ(図7、図8の符号a参照)を調整することができる。このため、例えば、移動杆のねじ込み量を調節して圧接子を建築用パネルの側縁端面に当てた後、レバーを回転することによって、その回転による一定の押圧力(締付け力)を付与し得るようにし得る(正確な押圧子の変位を確保し得る)。これは、建築用パネルPは工業製造製品ではあるが、公差範囲での寸法差が生じるが、その公差を移動杆のねじ込み量の調節によって吸収し得る利点がある。
また、圧接子と移動杆が別部材であることは、パネルの仕様が変わり、それに伴って圧接子の形状も変えなければならない場合、それに合った形状などの圧接子に交換するだけで、そのパネル仕様に対応できる。これは、経済的であって、所謂エコ的と言える。
さらに、弾性体、例えば、その形状、硬度を適宜に設定することによって、パネルへ所要の押圧力が加わるようにし得る。
【0019】
上記押圧子の建築用パネルの側縁端面との圧接面には、ゴム等の弾性体を設けて緩衝作用を行い得るようにすることが、パネルの支持固定に伴う損傷を防ぐ点から好ましい。このとき、その弾性体を上記圧接子に設けて移動杆からその弾性体付の圧接子を取替え自在とすれば、長期使用による摩耗やオゾン劣化によってその弾性体が使用不能となったときの取換えが容易となる。また、弾性体の形状、硬度を適宜に設定することによって、パネルへ所要の押圧力が加わるようにし得る。
【0020】
上記押圧子はその進退によって縦フレームから外れないことが好ましく、そのために、例えば、その押圧方向に長い長孔を形成し、その長孔に縦フレームに固定のピンを長孔の長さ方向に移動可能に嵌めて、押圧子の前記押圧方向の移動を許容すると共に縦フレームからの抜け止めを行う構成を採用することができる。
また、その抜け止め構造として、上記押圧子の移動杆の外周に突起を設けるとともに、縦フレームのその移動杆が進退する孔内面には前記突起が嵌って移動する前記進退方向の溝を形成し、その溝への突起の嵌合によって移動杆の回転を阻止するとともに、前記溝の建築用パネル側の閉塞壁への前記突起の当接によって移動杆の抜け止めを行う構成を採用することができる。この構造において、移動子の回転阻止だけで縦フレームからの抜け止めを考えなければ、前記溝の建築用パネル側は開口して突起が抜ける形状でも良い。
【発明の効果】
【0021】
この発明は、以上のように構成して、レバーの所要角度の回転によって建築用パネルの支持固定及びその解除を行い得るようにしたので、一定の締付け力の確保が容易であり、短時間での締付け操作、締付け完了の視認性、短時間での締付け解除操作を行い得る。このため、各パネルの支持固定のし忘れも生じにくく、輸送中におけるパネルの損傷も極力少なくなるとともに、トラック荷台等からの荷降ろしも短時間で行うことができ、トラック等の輸送手段の停車時間も短いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一実施形態のパネルラックへの建築用パネルの収納状態斜視図
【図2】同正面図
【図3】同右側面図
【図4】図2の要部拡大図
【図5】同実施形態の要部拡大一部切断平面図
【図6】同実施形態の要部拡大斜視図
【図7】図6の一部切断正面図
【図8】他の実施形態の保持具の取付部を示し、(a)は拡大切断正面図、(b)は同切断右側面図
【図9】他の実施形態の要部拡大切断正面図
【図10】圧接子と移動杆との結合態様の各例の部分切断正面図
【図11】建築用パネルを収納した従来のパネルラックの正面図
【図12】同右側面図
【図13】図12の一部欠如した拡大図
【図14】図13の要部拡大図
【図15】パネルラックの組立説明用斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の一実施形態を図1〜図7に示し、この実施形態のパネルラック10は、従来と同様に、建築用パネルPを横置きに載置して収納するものであって、図1平面視、四角枠状の水平フレーム12と、その水平フレーム12の四角にそれぞれ立設された縦フレーム13、13、13、13と、各縦フレーム13の長さ方向にそれぞれ所要間隔で同一高さに設けられた受けとなる横桟14とからなる。
【0024】
水平フレーム12は、図11、図12、図15に記載の水平フレーム2と同一構成であって、前後の水平杆12a、12aの間に横桟14aが4本設けられて、その左右内側の2本の横桟14a、14aと前記前後の水平杆12a、12aとから四角枠状と成っている。また、縦フレーム13は、横桟14付きの縦フレーム片3a、3aを上下に嵌め合わせて構成される。なお、パネルラック10は、トラック等の荷台Tに載せて搬送されるため、その前後左右の長さ(幅)はその荷台の大きさに対応させる。
なお、各図中、図11〜図12に記載の符号と同一符号は同一物を示し、上記補強杆2bは補強杆12bとしている。横桟14によるパネル載置段数は任意である。
【0025】
このパネルラック10と上記パネルラック1との相違は、建築用パネルPの側縁端面を押圧してその建築用パネルを支持固定する保持具R(押圧子5)の構造である。その保持具Rは、建築用パネルPの側縁端面に押圧される押圧子20と、その押圧子20を押すレバー30とからなる。
【0026】
上記押圧子20は、横桟14からなるパネルPの載置段に対応した各縦フレーム13の各高さに設けられて、縦フレーム13に水平方向進退自在に挿入された移動杆21と、その移動杆21先端にねじ込まれた圧接子22とからなる。移動杆21は、縦フレーム13の側面にねじ固定されたブロック23の貫通孔24に挿入されて、そのブロック23に設けたピン25が長孔(溝)26に挿入されている。その長孔26は、移動杆21の進退方向(押圧子20の建築用パネルPの側縁端面への押圧方向)に長くなっており、その長孔26の長さだけ、ピン25(ブロック23、縦フレーム13)に対して移動杆21がその軸心周りに回ることなく進退可能である(溝26の端にピン25が当接することによって移動杆21は抜け止めされる。)。長孔26とピン25には、押圧子20の移動に支障がない限りにおいて両者の間に間隙を設ければ、移動杆21の円滑な移動にとって有効である。このとき、長孔26が溝状であれば、その底面とピン25の先端の間隙も同様である。
【0027】
圧接子22は、移動杆21が中心にねじ込まれた基台27と、その基台27の前面(建築用パネルPの側縁端面への対向面)のゴム製パッド28とからなる。このパッド28は、円柱状のその表面周囲に切り孔28aを形成したものであって、建築用パネルPの側縁端面に支障なく適切な押圧力が付与されるようになっている。
【0028】
上記レバー30は、その先端部が上記貫通孔24に挿入されて縦フレーム13に水平状態から下方に軸32でもって回転可能に設けられている。そのレバー30の先端部面は上下方向においてその回転軸32からの高さ(長さ)Lが変化するカム面31となっている。このカム面31は、レバー30が水平状態(図6、7の実線状態)では押圧子20が建築用パネルPの側縁端面から離れるレバー回転中心(回転軸32)からの高さ(距離)Lとなるフラットな面31aとなっており、レバー30をその水平状態から下方向に90度回転すると(同図矢印参照)、レバー回転中心(回転軸32)から徐々に離れる高さLの弧状面31bとなって押圧子20を建築用パネルPの側縁端面に近づくように押し、やがてレバー回転中心32から同一高さLのフラット面31cとなってその押圧子20の建築用パネルPの側縁端面への押圧状態を固定する。その弧状面31bの高さLの変位、すなわち、レバー回転中心32からレバー水平状態の当接面31aの距離Aが同レバー下方状態の当接面31cの距離Bより小さく設定され(A<B)、その変位(B−A)が押圧子20の変位量となって、後述の建築用パネルPの側縁端面への締付け力となる(図7参照)。
【0029】
この実施形態のパネルラック10は以上の構成であり、パネル製造工場において、各保持具Rのレバー30を水平状態(図1、図6の実線状態)として、図1〜図3に示すように、従来と同様にして各横桟14にパネルPを載置してパネルラック10に収納する。
このとき、必要に応じてスペーサ7を使用する。また、所要段の横桟14を予め設けておいても良いが、パネルPを載置する度に横桟14を設けてもよい。例えば、最下段にパネルPを載置した後、その上段の横桟14を組立てその上にパネルPを載置する等のように、各段毎に横桟14の設置とパネルPの載置を繰り返してもよい。さらに、パネルPの微動(図3において左右方向)は、圧接子22を回してパネルPに当接し、レバー30を上下に回転(開閉)することによって行う。
【0030】
このパネルPの収納時、各パネルP毎、数枚のパネルP毎、或いは全てのパネルPを各横桟14に載置した後、保持具Rでもって、各パネルPの側縁端面2個所を支持固定する。その支持固定は、圧接子22を手で回してパッド28をパネル側縁端面に当接させた後、図1、図3鎖線で示すように、水平状態のレバー30を下方に降ろすことにより、カム面31でもって押圧子20がパネルPの側縁端面に押圧されることによってなされる。その押圧状態は、押圧力(締付け力)が一定であり、また、レバー30が垂れ下がった状態であるため、目視による確認も容易かつ確実である。
パネルPを収納したパネルラック10は、従来と同様に、トラックの荷台T等に載せられて建築現場に輸送される。
【0031】
図8には保持具R(押圧子20)の他の実施形態を示し、この保持具Rは、基台27の表面板27aにセルフファスナー式のナット27bを固定し、そのナット27bに移動杆21をねじ込んだ構成である。その移動杆21は、ボルト形状であって、その頭部21aの両側縁が平行に切除されたほぼ小判状となっているとともに、貫通孔24もレバー30側が断面その小判状となっており(同図(b)参照)、このボルト状移動杆21を貫通孔24にレバー30側から挿入すると、頭部21aと小判状の貫通孔24の部分24aとの嵌り合いによって、移動杆21の図示左方への抜け止めと回り止めがなされる。貫通孔24の前記小判状部24aとそれより左方の円筒状部との段部(壁)と頭部21aの間には、レバー30の回転による移動杆21の移動を許容する間隙24bが形成されている(同図(a)参照)。
【0032】
この実施形態の保持具Rも上記実施形態と同様に、パネルラック10へのパネルPの収納時、各パネルP毎、数枚のパネルP毎、或いは全てのパネルPを各横桟14に載置した後、圧接子22を手で回してパッド28をパネル側縁端面に当接させた後、水平状態のレバー30を下方に降ろすことにより、カム面31でもって移動杆21が押されて押圧子20がパネルPの側縁端面に押圧されることによってパネルPの支持固定を行う。
【0033】
図9には、さらに、保持具R(押圧子20)の他の実施形態を示し、この実施形態は、移動杆21側に雌ねじを形成したものである。移動杆21は、上記実施形態と同様に、頭部21aの周縁が小判状をなし、貫通孔24の断面もその形状に対応して、抜け止めと周り止めがなされている。押圧子20の基台表面板27aには前記移動杆21の雌ねじにねじ込まれるねじ軸27bが溶接でもって固定されている。このねじ軸27bと表面板27aとの固定には、図10(a)、(b)に示すカシメ手段27c等を採用し得る。
この実施形態の保持具Rも上記実施形態と同様に、パネルラック10へのパネルPの収納時、各パネルP毎、数枚のパネルP毎、或いは全てのパネルPを各横桟14に載置した後、圧接子22を手で回してパッド28をパネル側縁端面に当接させた後、水平状態のレバー30を下方に降ろすことにより、カム面31でもって移動杆21が押されて押圧子20がパネルPの側縁端面に押圧されることによってパネルPの支持固定を行う。
【0034】
なお、上記各実施形態において、レバー30の回転方向は、下方が好ましいが、上方向、横方向と任意である。また、回転角度も90度に限らず、適正な押圧力を得ることができる限りにおいて任意である。
さらに、横桟14は、対の縦フレーム13、13(図3において左右の縦フレーム13、13)間に全て亘っていることが好ましいが、パネル受けとして機能すれば、強度が維持できる限りにおいて、その一部が一方の縦フレーム13から他方の縦フレーム13に向かって途中で切れた物でも良い。
【符号の説明】
【0035】
1、10 パネルラック
2、12 水平フレーム
3、13 縦フレーム
3a 縦フレーム片
4、14 横桟
20 押圧子
21 移動杆
22 圧接子
23 押圧子取付用ブロック
24 ブロック貫通孔
25 押圧子抜け止めピン
26 長孔(溝)
27 圧接子基台
28 押圧パッド
30 操作レバー
31 カム面
31a レバー水平状態維持用フラットカム面
31b 押圧子押圧用弧状カム面
31c レバー倒れ状態維持用フラットカム面
32 レバー回転軸
P 建築用パネル
R 建築用パネル支持保持用保持具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視、四角枠状の水平フレーム(12)と、その水平フレーム(12)の四角にそれぞれ立設された縦フレーム(13)と、各縦フレーム(13)の長さ方向にそれぞれ所要間隔で同一高さに設けられた受け(14)とからなり、その各同一高さの受け(14)に建築用パネル(P)をそれぞれ水平に載置し、前記対向する縦フレーム(13)に前記建築用パネル(P)の側縁端面を押圧してその建築用パネル(P)を支持固定する保持具(R)を設けたパネルラック(10)における、前記保持具(R)であって、
上記縦フレーム(13)に建築用パネル(P)の側縁端面に向かって進退自在に設けられてその建築用パネル(P)の側縁端面に押圧される押圧子(20)と、前記縦フレーム(13)に回転可能に設けられて前記押圧子(20)の後端面に先端カム面(31)が摺接するレバー(30)とからなり、前記カム面(31)は、前記レバー(30)が水平状態では前記押圧子(20)が前記建築用パネル(P)の側縁端面から離れるレバー回転中心(32)からの高さ(L)となっているとともに、レバー(30)をその水平状態から上下方向に回転すると、レバー回転中心(32)から徐々に離れる高さ(L)となって前記押圧子(20)が前記建築用パネル(P)の側縁端面に近づくように押してやがてレバー回転中心(32)から同一高さ面(31c)となってその押圧子(20)の建築用パネル(P)の側縁端面への押圧状態を固定する形状となっていることを特徴とするパネルラックのパネル保持具。
【請求項2】
上記押圧子(20)が、上記縦フレーム(13)に進退自在に挿入されて後端面に上記レバー(30)のカム面(31)が摺接する移動杆(21)と、その移動杆(21)先端の上記建築用パネル(P)の側縁端面に圧接する圧接子(22)とからなり、その圧接子(22)に前記移動杆(21)がねじ込まれてそのねじ込み量を調節することによって前記移動杆(21)後端面と前記圧接子(22)の建築用パネル(P)の側縁端面との圧接面の間の長さ(a)を調整可能としたことを特徴とする請求項1に記載のパネルラックのパネル保持具。
【請求項3】
上記押圧子(20)にその押圧方向に長い長孔(26)を形成し、その長孔(26)に上記縦フレーム(13)に固定のピン(25)を前記長孔(26)の長さ方向に移動可能に嵌めて、押圧子(20)の前記押圧方向の移動を許容すると共に縦フレーム(13)からの抜け止めを行ったことを特徴とする請求項1又は2に記載のパネルラックのパネル保持具。
【請求項4】
上記押圧子(20)の移動杆(21)の外周に突起(21a)を設けるとともに、上記縦フレーム(13)のその移動杆(21)が進退する孔(24)内面には前記突起(21a)が嵌って移動する前記進退方向の溝(24a)を形成し、その溝(24a)への突起(21a)の嵌合によって移動杆(21)の回転を阻止するとともに、前記溝(24a)の上記建築用パネル(P)側の閉塞壁への前記突起(21a)の当接によって前記移動杆(21)の抜け止めを行ったことを特徴とする請求項2に記載のパネルラックのパネル保持具。
【請求項5】
上記押圧子(20)の建築用パネル(P)の側縁端面との圧接面に弾性体(28)を設けたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載のパネルラックのパネル保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−162302(P2012−162302A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24800(P2011−24800)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(595122187)ブリヂストンケービージー株式会社 (36)
【Fターム(参考)】