説明

パネル型ヒータ

【課題】筐体内での線状発熱体の位置ずれが起き難いパネル型ヒータを提供すること。
【解決手段】線状発熱体15を筐体11内に有するパネル型ヒータ10について、線状発熱体15の曲折箇所に、線状発熱体15に接触し支持する可動ピン14を設けるとともに、この可動ピン14を保持する保持穴18を筐体11に設けた。さらに保持穴18には突起19を設けて可動ピン14の可動を一方側には容易にし他方側には困難にした。これにより、筐体11内で線状発熱体15を強固に支持固定することができ、また、線状発熱体15に常時テンションをかけておくことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は線状発熱体を収納するパネル型ヒータに関し、特に屋外での融雪に適したパネル型ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
線状発熱体を発熱源に用いるヒータには床暖房パネルが知られている。この床暖房パネルは、表面材の下に線状発熱体を波状に配置して室内床面に設置しており、床を加温することで室内を自然に暖めるという床暖房に資すものである。こうした床暖房パネルは、例えば特開平9−79593号公報(特許文献1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−79593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
床暖房パネル内への線状発熱体の収容は、波状に配置した線状発熱体を、断熱材や、線状発熱体からの熱を床面に伝えるための均熱シートを介して筐体で上下面から押圧しパネル内に固定している。
ところが、屋外で融雪用などとして用いるパネル型ヒータでは、室内の床に静置される床暖房パネルと異なり、設置面は水平に限らず設置状況に応じて縦置き、斜め置きされる場合がある。また、除雪車や大型トラック、電車などの移動体においてマッドガード(泥よけ)に雪が堆積しないように用いるときには、振動や衝撃が加わる場合もある。こうした状況下で用いられるパネル型ヒータにおいては、上下面で圧接するだけでは線状発熱体の位置が安定せず、筐体内で動いて位置ずれを起こすことで効果的な発熱ができないおそれがある。
【0005】
すなわち本発明は、こうした問題点を解決するためになされたものであり、屋外や移動体に用いる場合であっても効果的な発熱を持続できるよう筐体内での線状発熱体の位置ずれが起き難いパネル型ヒータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく本発明は以下のように構成される。
すなわち、線状発熱体を筐体内に有するパネル型ヒータであって、線状発熱体の曲折箇所となる筐体内側部分に、この線状発熱体に接触し支持する係止ピンを設けたパネル型ヒータを提供する。
【0007】
線状発熱体の曲折箇所となる筐体内側部分に、この線状発熱体に接触し支持する係止ピンを設けたため、パネル面方向への線状発熱体の動きを抑制することができる。すなわち、従来の床暖房パネルで行われているパネル面に対する垂直方向の押圧固定に加えて、パネル面方向への係止固定が加わるため、水平方向への設置に限られない垂直、斜め方向への設置、静置設置に限られない移動体への設置等に対しても線状発熱体の位置ずれを抑制することができる。
【0008】
前記係止ピンが可動ピンであるパネル型ヒータとすることができる。
係止ピンを移動可能な可動ピンで形成したため、線状発熱体と可動ピンの当接する係止部分の位置を動かすことが可能となる。係止部分を可動にすることで、線状発熱体の弛みを抑え、適度なテンションをかけておくことができる。
また、起立した可動ピンに対して線状発熱体を係止できるため、線状発熱体の曲折箇所で線状発熱体と可動ピンとを密着させることができる。これにより、曲折箇所からの熱を可動ピンを介して筐体に伝達することができ、線状発熱体の曲折部分からの発熱を効果的に利用することができる。
さらに、可動ピンに線状発熱体を巻き付けるようにして線状発熱体を配置することができるため、線状発熱体の配置が容易で組み立てが簡単である。
【0009】
穴形状に沿って可動ピンが移動可能な長穴状の保持穴を筐体に設け、この保持穴内に可動ピンの可動を規制する突起を設けたパネル型ヒータとすることができる。
長穴状の穴形状に沿って可動ピンが移動できる長穴状の保持穴を筐体に設け、この保持穴内に可動ピンの可動を規制する突起を設けたため、保持穴内での可動ピンの位置を多段に変えることができる。可動ピンの位置を変えられるため、線状発熱体の長さによらず線状発熱体の弛みを防ぐことができる。また、線状発熱体が緩んでしまった後に、再び引っ張ることができ、線状発熱体の張り状態を長時間維持することができる。
【0010】
前記突起が、可動ピンの可動を一方側には容易にし他方側には困難にする偏突起であるパネル型ヒータとすることができる。
前記突起が、可動ピンの可動を一方側には容易にし他方側には困難にする偏突起としたため、線状発熱体の弛み方向には容易に可動ピンが動かないようにし、線状発熱体の締め付け方向には容易に可動ピンを動かして締め付けることができる。したがって、弛みにくく締め付けやすい構造である。
【0011】
線状発熱体の断面が長形であって、線状発熱体の幅広面を前記係止ピンに沿って係止させるパネル型ヒータである。
線状発熱体を筐体内に有するパネル型ヒータであるため、線状発熱体を筐体内に折り曲げて配置する必要がある。この線状発熱体はその断面が往往にして長形であり、線状発熱体を伸長させて設置する箇所では、線状発熱体の幅広部分を筐体に接地して配置することが合理的である。そうした一方で、線状発熱体の曲折箇所ではその幅広部分がよれて立ち上がるようになる。そのため、幅広部分を筐体に接地させることが困難となる。ところが、この曲折箇所に係止ピンを設けたため、線状発熱体の幅広面を係止ピンに沿って係止させることができ、線状発熱体の曲折箇所での係合が可能となり、線状発熱体の支持力を高めることに加えて、線状発熱体の曲折部分からも熱を外部に伝え易くなる。
【0012】
よって、線状発熱体の伸長箇所では線状発熱体を筐体に密着させて、線状発熱体からの熱を効果的に筐体へ伝えることができるとともに、線状発熱体の曲折箇所でも係止ピンに密着させて、係止ピンを通じて筐体へ熱を伝えることができる。そして、線状発熱体の位置ずれを抑制することができる。線状発熱体が立ち上がって膨らんだ箇所を係止ピンで係止できなければ、この膨らみにともなって伸長箇所でも筐体から浮き上がり、伸長箇所での筐体への密着が十分に図れず、筐体内で線状発熱体が動く可能性が高まるが、そうした不都合を回避できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、線状発熱体を収容する筐体内で、線状発熱体が動いて位置ずれを起こすことを防止し、安定した発熱を生じさせるパネル型ヒータである。
また、線状発熱体の曲折箇所から生じる熱も効果的に外部に伝達することができるパネル型ヒータである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】パネル型ヒータの内部構造を示す図2のSB−SB線断面での断面斜視図である。
【図2】図1のパネル型ヒータのSA−SA線断面での模式断面図である。
【図3】線状発熱体の曲折部分での形状を説明する説明図である。
【図4】図3のSC−SC線拡大断面図である。
【図5】筐体に設けた保持穴と可動ピンを示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面に従って本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明のパネル型ヒータ10の内部を説明する横断面図であり、図2はパネル型ヒータ10の縦断面図である。
パネル型ヒータ10は、図1で示すように、筐体11を構成するベース材12に可動ピン14を保持する保持穴18が設けられている。そして、この保持穴18内に固定された可動ピン14を支柱にして線状発熱体15が波状(ジグザグ状)に折り曲げられて配置している。そして、図2で示すように、ベース材12とカバー材13でなる筐体11内に線状発熱体15を封入している。
【0016】
線状発熱体15の詳細については後述するが、その断面形状はアレイ形や長円形といった長形となっている場合がある。線状発熱体15の伸長箇所15aでは、図3、図4で示すように、線状発熱体15の幅広部分15bがクッション材16を介してベース材12の内側面12aに横向きに密着されるとともに、カバー材13に対しても幅広部分15bが直接カバー材13の内側面に接触する。そうした一方で、線状発熱体15の曲折箇所15cは、線状発熱体15の断面が長形となっているため、横置きから縦置きに成らざるを得ず、縦置きによる膨らみが生じてしまう。したがって、曲折箇所15cから直接カバー材13へ熱を伝えることは難しいが、線状発熱体15の幅広部分15bは可動ピン14の側面に密着しているため、可動ピン14を通じてカバー材13へ熱を効果的に伝達することができ、線状発熱体15の曲折箇所15cから発せられる熱も有効に利用することができる。
【0017】
保持穴18は、図5で示すように、その断面が長穴状に形成されており、この長穴内に可動ピン14が固定される一方で、長穴内を可動ピンが移動できるようになっている。すなわち、この長穴には可動ピン14の可動を規制する突起19が設けられていて、可動ピン14が固定状態から脱して移動するには抵抗を受けて容易には移動できないようになっている。
【0018】
突起19の形状は、図5で示すように、一方面がなめらかで他方面が急峻な偏突起19となっており、可動ピン14の一方側(図3では下側)への移動を容易にし、他方側(図3では上側)への移動を困難にしている。なお図5では、突起19を左右対称に4対設けているが、可動ピン14の安定位置を何段階とするかによってその数を適宜変更することができる。また、偏突起とせずに可動ピン14の一方側および他方側への移動抵抗を同じにすることもできる。
可動ピン14の形状も図5(A)で示すように断面を円形とする他に、図5(B)で示すように、突起19の形状に対応させた形状とすることも可能である。
【0019】
メンテナンス時などに可動ピン14の位置を容易に変更できるように、または可動ピン14を取り外しできるように、可動ピン14の上部と下部とで断面形状または断面積が異なるようにしても良い。
例えば、可動ピン14の下部にフランジを設けるとともに保持穴18の下部にもこのフランジに対応する溝を設けておき、この溝内にフランジをスライドさせることで、可動ピン14の動きをスムーズにすることができる。また、可動ピン14を取り外す際には、可動ピン14を回転させてフランジの溝との係止を解除した後、カバー材13方向に向けて垂直に引き上げれば、フランジの突起19との接触を回避して可動ピン14を取り外すことができる。
【0020】
また、突起19は、保持穴18の上下方向深さ全体に亘って突出した形状とすることができるが、保持穴18の上下方向深さの一部に突出した形状としておくこともできる。この場合、この突起19に突き当たる可動ピン14の部分を図5(B)に示すような突起19と係合する形状にし、突起19に突き当たらない可動ピン14の部分は図5(A)に示すような円形としておくことができる。こうした構造とすることで、可動ピン14を回転させて係合を解除し、垂直に引き上げることで可動ピン14の移動が容易になるため、可動ピン14の取り外しや移動に優れた構造となる。
【0021】
このように突起19との接触を回避して可動ピン14を取り外し、または移動できるように可動ピン14の形状や大きさ等を適宜変更することが可能である。しかしながら、可動ピン14を単なる円柱状などの上下方向に均等な形状としても良く、このような形状としても可動ピン14の上下方向はカバー材13により規制されているため筐体11内に収容されているときは可動ピン14は外れ難くなっている。
【0022】
パネル型ヒータ10を構成する上記各部材の具体例を説明する。
線状発熱体15は、その両端に連通した電源コード(図示せず)から電気を取り入れて発熱するものであって、例えば、線方向に沿って配置した熱源となる複数のPTC素子(図示せず)と、PTC素子を連結するための導体(図示せず)とを備え、PTC素子と導体は柔軟性を有する合成樹脂製の絶縁体によって被覆された線状発熱体15が好ましく、こうした線状発熱体15の断面は長形となっている。
カバー材13は、その内部に設けた線状発熱体15からの熱が直接または間接的に伝わりその表面が暖められることで、外気を暖め、またカバー材13に接触する雪を溶かすための部材である。したがって、カバー材13としては熱伝導性を考慮するとアルミ合金で製造することが好ましい。また、線状発熱体15のリード線が銅であることから、リード線との熱膨張率差を考慮すると銅合金製が好ましい。そして熱を効果的に伝達させることから板金状が好ましい。
【0023】
ベース材12は、線状発熱体15の伸長箇所15aではクッション材16を介して線状発熱体15をカバー材12に対して押圧しており、また、可動ピン14を支える基部となっている。このため、断熱性や軽量が要求され樹脂やゴム製が好ましい。
可動ピン14は、筐体11への固定や溝加工、さらには熱伝導性を考慮するとアルミや銅合金などの金属製が好ましい。
クッション材16は、線状発熱体15をカバー材13に押圧し、カバー材13とベース材12との隙間を埋める部材であり、クッション性能や断熱性能を有する材料からなることが好ましく、例えば、ゴム材や発泡成形品などが利用される。
なお、図3や図4では、線状発熱体15の伸長箇所15aにクッション材16を用いているが、線状発熱体15をカバー材13に密着させた後、線状発熱体15とベース材12との間に生じる隙間全体にクッション材を敷き詰めることもできる。
【0024】
上記実施形態は本発明のパネル型ヒータ10の一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での適度な修正、変更も本発明の範囲に含まれるものである。
例えば、ベース材12とカバー材13の固着はビス止めなどの他、接着剤による固着など種々の方法を採用することができる。
また、クッション材16以外の種々の機能材を利用することもできる。例えばシート状伝熱材で線状発熱体15を覆ってからクッション材16で覆うなどの適宜の変更も可能である。
【0025】
ベース材12やカバー材13は板状とする他、強度を保つための柱状や梁状の突起を設けたり、折り曲げて凹凸を設けたりしても良い。ベース材12やカバー材13に線状発熱体15の伸長箇所15aを収容できる凹みを設けることで、線状発熱体15の安定的な配置とベース材12やカバー材13の強化を同時に達成することができる。
【0026】
可動ピン14は、保持穴18に固定する構造とせず、線状発熱体15を引っ張る方向に常時テンションが加わるようにしても良い。
例えば、可動ピン14をスライド可能な溝をベース材12に設け、この溝に係合するフランジを可動ピン14に設けるとともに、このフランジに引っ張りバネを取付ける。こうすることで、図5(A)において、突起19によって可動ピン14の移動が規制されない図面下方に可動ピン14に対し常にテンションがかかるようにしておき、何らかの理由で線状発熱体15を支持する可動ピン14のテンションが緩めば図面下方に可動ピン14が自動的に移動して、線状発熱体15を支持するテンションを高めることができる。このようにしておけば、線状発熱体15が緩むような振動や衝撃を受けたとしても可動ピン14が自然(自動的)に移動することができ、線状発熱体15の張り状態を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
パネル型ヒータ10は、屋根や排水溝など、屋外における水平でない設置箇所や、除雪車などの移動体のマッドガード(泥よけ)などとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0028】
10 パネル型ヒータ
11 筐体
12 ベース材
12a 内側面
13 カバー材
14 可動ピン
15 線状発熱体
15a 伸長箇所
15b 幅広部分
15c 曲折箇所
16 クッション材
18 保持穴
19 突起(偏突起)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状発熱体を筐体内に有するパネル型ヒータであって、
線状発熱体の曲折箇所となる筐体内側部分に、この線状発熱体に接触し支持する係止ピンを設けたパネル型ヒータ。
【請求項2】
前記係止ピンが可動ピンである請求項1記載のパネル型ヒータ。
【請求項3】
穴形状に沿って可動ピンが移動可能な長穴状の保持穴を前記筐体に設け、この保持穴内に可動ピンの可動を規制する突起を設けた請求項2記載のパネル型ヒータ。
【請求項4】
前記突起が、可動ピンの可動を一方側には容易にし他方側には困難にする偏突起である請求項3記載のパネル型ヒータ。
【請求項5】
線状発熱体の断面が長形であって、線状発熱体の幅広面を前記係止ピンに沿って係止させる請求項1〜請求項4何れか1項記載のパネル型ヒータ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−132646(P2012−132646A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286728(P2010−286728)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】