説明

パラペット笠木の接続部構造

【課題】隣り合う笠木の端部間の隙間を笠木の上端表面から何ら突出することなく隠すことができるとともに、気温による笠木の伸縮に対応できるようにする。
【解決手段】コンクリート躯体の立ち上がり壁2の上端に笠木取り付け金具5を取り付け、この笠木取り付け金具5に被さり立ち上がり壁2の上端を覆うように配設される笠木1において隣り合う笠木1,1の端部にそれぞれ合成樹脂製の隙間隠し部材3,4を圧入し、隣り合う笠木1,1の端部に圧入された隙間隠し部材3,4に笠木1,1から笠木1,1の長さ方向に突出するように係合片11,15を設け、隣り合う笠木1,1の端部間の間隔の変化に追随して前記両係合片11,15は互いに係合した状態で互いに遠近移動するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンションなどのコンクリート躯体の立ち上がり壁の上端を覆うパラペット笠木の端部間の隙間を隠すパラペット笠木の接続部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種パラペット笠木の接続部構造としては、例えば特許文献1に開示されているように、逆溝型断面を有する笠木の連結部外周面に沿設する部材であって、適宜幅の軟質ゴムまたは軟質樹脂等の伸縮弾性を有する伸縮帯部材部の両端に、それぞれ硬質樹脂からなる係合部材部を一体的に成形するかまたは固設一体化してなり、該両係合部材部に前記笠木の前後垂縁の縁端と係合する係合溝等の係合構造を構成してなる笠木用目地隠し部材が用いられ、この笠木用目地隠し部材で隣り合う笠木の端部間の継ぎ目部を覆うように被せるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−279336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている笠木用目地隠し部材は隣り合う笠木の端部間の継ぎ目部を覆うように被せて使用するものであるが、笠木用目地隠し部材の端面と笠木の上面との間の隙間から雨水が浸入し、その雨水が隣り合う笠木の端部間に浸入してコンクリート躯体の立ち上がり壁に染み込むという問題があった。また、樹脂製の笠木用目地隠し部材は隣り合う笠木の端部間の継ぎ目部を覆うように被せられるので、笠木の表面から突出する状態となり、笠木用目地隠し部材に側方から外力が加わると笠木用目地隠し部材がずれ動くという問題や、笠木用目地隠し部材が損傷しやすくなるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、このような課題を解決するものであり、隣り合う笠木の端部間の隙間を笠木の上端表面から何ら突出することなく隠すことができるとともに、気温による笠木の伸縮に対応できるようにしたパラペット笠木の接続部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載のパラペット笠木の接続部構造は、コンクリート躯体の立ち上がり壁の上端を覆うパラペット笠木の接続部構造であって、立ち上がり壁の上端に笠木取り付け金具を取り付け、この笠木取り付け金具に被さり立ち上がり壁の上端を覆うように配設される笠木において隣り合う笠木の端部にそれぞれ合成樹脂製の隙間隠し部材を圧入し、隣り合う笠木の端部に圧入された隙間隠し部材に笠木から笠木の長さ方向に突出するように係合片を設け、隣り合う笠木の端部間の間隔の変化に追随して前記両係合片は互いに係合した状態で互いに遠近移動するようにした。
【0007】
請求項2に記載のパラペット笠木の接続部構造は、隣り合う笠木の端部に圧入された隙間隠し部材の内、一方の隙間隠し部材には隣り合う一方の笠木より突出して笠木の端面に当接するフランジの外面から直角に笠木の長さ方向に突出する水平部と、この水平部から内向きに直角に繋がる折曲部とからなる係合片が一体に設けられ、他方の隙間隠し部材には隣り合う他方の笠木より突出して笠木の端面に当接するフランジの外面から直角に笠木の長さ方向に突出する水平部と、この水平部から外向きに直角に繋がる折曲部とからなり前記係合片と係合する係合片が一体に設けられ、隣り合う笠木の端部間の間隔の変化に追随して前記両係合片の折曲部は互いに係合した状態で互いに遠近移動するようにした。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明のパラペット笠木の接続部構造は、隣り合う笠木の端部に圧入してそれぞれ設けた隙間隠し部材により隣り合う笠木の端部間の隙間を笠木の上端表面から何ら突出することなく隠すことができるとともに、隣り合う笠木の端部間の間隔の変化に追随して前記両係合片は互いに係合した状態で互いに遠近移動するようにしたことにより、気温による笠木の伸縮に対応できるようにしたパラペット笠木の接続部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態におけるパラペット笠木の接続部構造を示す概略平面図である。
【図2】(A)および(B)は一方の隙間隠し部材の斜視図である。
【図3】(A)および(B)は他方の隙間隠し部材の斜視図である。
【図4】同隣り合う一方の笠木の端部に一方の隙間隠し部材を圧入した状態を示す斜視図である。
【図5】同隣り合う他方の笠木の端部に他方の隙間隠し部材を圧入した状態を示す斜視図である。
【図6】図1のX−X断面図である。
【図7】図1のY−Y断面図である。
【図8】同気温の変化により隣り合う笠木間が開いた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を、図1〜図8を用いて具体的に説明する。
図において、1はマンションなどのコンクリート躯体の屋上などにおける周囲の立ち上がり壁2の上端を覆う笠木で、アルミを材料に用いて押し出し成型により形成されている。笠木1は立ち上がり壁2の長さ方向に分断されており、その分断部における隣り合う両笠木1の端部内側には合成樹脂製の隙間隠し部材3,4がそれぞれ設けられる。前記両笠木1はともに断面形状において側面形状がほぼ門型で、上端板部1aが立ち上がり壁2の内側に向って下降傾斜するように形成され、この上端板部1aに繋がる前後板部1b,1cを備え、前側の板部1bの下端内側には後述する笠木取り付け金具5に当接してビス6により結合される斜め下向きの当接片7を備え、さらに前記上端板部1aに繋がる後側板部1cの下端ならびに下端より少し上側においてほぼ水平に内側に突出する互いに平行な板部1d,1eを備えている。前記隣り合う一方の笠木1の端部内側には一方の隙間隠し部材3が設けられ、隣り合う他方の笠木1の端部内側に他方の隙間隠し部材4が設けられる。前記一方の隙間隠し部材3は前記一方の笠木1の端部に嵌り込むようにほぼ門型を呈し、前記一方の笠木1の端部内側において笠木1の上端内面およびこの上端内面に繋がる前後内面に当接して圧入されるとともに笠木1の上端内面および前後内面との間に連続する溝8が並設されており、また笠木1の後側板部1cの内側に位置する部分には笠木1の下端より少し上側の前記板部1eが嵌り込む切除部9が形成され、さらに笠木1より突出して笠木1の端面に当接するフランジ10の外面にフランジ10の外面から直角に笠木1の長さ方向に突出する水平部11aと、この水平部11aから内向きに直角に繋がる折曲部11bとからなる係合片11が一体に設けられている。前記他方の隙間隠し部材4も前記一方の隙間隠し部材3と同様に前記他方の笠木1の端部に嵌り込むようにほぼ門型を呈している。そして、この他方の隙間隠し部材4は他方の笠木1の端部内側において笠木1の上端内面およびこの上端内面に繋がる前後内面に当接して圧入されるとともに笠木1の上端内面および前後内面との間に連続する溝12が並設されており、また笠木1の後側板部1cの内側に位置する部分には笠木1の下端より少し上側の前記板部1eが嵌り込む切除部13が形成され、さらに笠木1より突出して笠木1の端面に当接するフランジ14の外面にフランジ14の外面から直角に笠木1の長さ方向に突出する水平部15aと、この水平部15aから外向きに直角に繋がる折曲部15bとからなる係合片15が一体に設けられている。従って、隣り合う両笠木1,1は一方の隙間隠し部材3の係合片11の折曲部11bと他方の隙間隠し部材4の係合片15の折曲部15bとが係合した状態で気温の変化により互いに遠近移動することになる。
【0011】
ところで、前記両隙間隠し部材3,4には係合片11および係合片15が形成されている位置で前記フランジ10および14の内側で立ち上がり壁2の上端に当接するように当接板部16および17が形成されている。そして、前記一方の隙間隠し部材3および他方の隙間隠し部材4の移動ストロークを大きくするために、当接板部16および17に前記係合片15の折曲部15bおよび係合片11の折曲部11bが嵌入可能な開口部18および19が形成されている。つまり、隣り合う両笠木1,1間の間隔が外気温の変化により変化しても、一方の隙間隠し部材3側の係合片11と他方の隙間隠し部材4の係合片15は係合状態で前記折曲部11bと折曲部15bは互いに遠近移動し、両笠木1,1間が最も離れた状態において折曲部11bと折曲部15bが当接し、両笠木1,1間が最も近づいた状態において一方の隙間隠し部材3側の折曲部11bは他方の隙間隠し部材4側の開口部19に入り込み、他方の隙間隠し部材4側の折曲部15bは一方の隙間隠し部材3側の開口部18に入り込むようになる。
【0012】
さらに、笠木1を前記立ち上がり壁2上に取り付けるための前記笠木取り付け金具5は、前記一方の隙間隠し部材3および他方の隙間隠し部材4が嵌り込む笠木1の端部を除く位置で適当箇所で笠木1を受けるべく立ち上がり壁2の上端に取り付けられるもので、寸法幅は短尺であり、立ち上がり壁2の上端に載りビス20止めされる板部21と、立ち上がり壁2の内側に位置するように板部21に下向きに連設され下端が笠木1の下向きの当接片7と当接してビス6により結合される下向き板部22と、立ち上がり壁2の外側に位置するように板部21に下向きに連設され下端が笠木1の下端より少し上側の前記板部1eの先端に係止する下向き板部23と、前記板部21の前後方向のほぼ中心から上向きに立ち上がり上端が笠木1の上端板部1aの内面に面で受ける板部24を上端に備えた支持部25とから構成されており、笠木1は笠木取り付け金具5に被さるように配設されて笠木取り付け金具5に支持される。
【0013】
上記構成において、笠木1は立ち上がり壁2の上端に取り付けられた笠木取り付け金具5により支持され、この支持された隣り合う笠木1,1間の隙間を隠すべく隣り合う笠木1,1の端部に圧入された隙間隠し部材3および4により笠木1,1間の隙間を隠すとともに外気温の変化により隣り合う両笠木1,1間の間隔が変化しても係合片11と係合片15が互いに係合した状態で両笠木1,1間の間隔の変化に追随でき、隣り合う両笠木1,1間に隙間ができることがない。また、両笠木1,1の端部より両笠木1,1と両隙間隠し部材3,4との微小な隙間より雨水が浸入してもその雨水は前記溝8,12に入り込み、立ち上がり壁2の内外に流れ落ちるようになり、コンクリート躯体の立ち上がり壁2の防水性が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明のパラペット笠木の接続部構造は、マンションなどのコンクリート躯体の立ち上がり壁の上端を覆う笠木の取り付け部において、隣り合う両笠木間の間隔が変化しても隣り合う両笠木間に隙間ができることがないパラペット笠木の接続部構造である。
【符号の説明】
【0015】
1 笠木
1a 上端板部
1b,1c 前後板部
1d,1e 板部
2 立ち上がり壁
3,4 隙間隠し部材
5 笠木取り付け金具
6 ビス
7 当接片
8 溝
9 切除部
10 フランジ
11 係合片
11a 水平部
11b 折曲部
12 溝
13 切除部
14 フランジ
15 係合片
15a 水平部
15b 折曲部
16,17 当接板部
18,19 開口部
20 ビス
21 板部
22,23 下向き板部
24 板部
25 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート躯体の立ち上がり壁の上端を覆うパラペット笠木の接続部構造であって、立ち上がり壁の上端に笠木取り付け金具を取り付け、この笠木取り付け金具に被さり立ち上がり壁の上端を覆うように配設される笠木において隣り合う笠木の端部にそれぞれ合成樹脂製の隙間隠し部材を圧入し、隣り合う笠木の端部に圧入された隙間隠し部材に笠木から笠木の長さ方向に突出するように係合片を設け、隣り合う笠木の端部間の間隔の変化に追随して前記両係合片は互いに係合した状態で互いに遠近移動するようにしたことを特徴とするパラペット笠木の接続部構造。
【請求項2】
隣り合う笠木の端部に圧入された隙間隠し部材の内、一方の隙間隠し部材には隣り合う一方の笠木より突出して笠木の端面に当接するフランジの外面から直角に笠木の長さ方向に突出する水平部と、この水平部から内向きに直角に繋がる折曲部とからなる係合片が一体に設けられ、他方の隙間隠し部材には隣り合う他方の笠木より突出して笠木の端面に当接するフランジの外面から直角に笠木の長さ方向に突出する水平部と、この水平部から外向きに直角に繋がる折曲部とからなり前記係合片と係合する係合片が一体に設けられ、隣り合う笠木の端部間の間隔の変化に追随して前記両係合片の折曲部は互いに係合した状態で互いに遠近移動するようにしたことを特徴とする請求項1記載のパラペット笠木の接続部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−180599(P2010−180599A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24360(P2009−24360)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000107985)セイコー産業株式会社 (14)