説明

パルストランス

【課題】設計が非常に容易でありながら、変換効率、信号品位(シグナルインテグリティ)、および電磁環境適合性(EMC)に優れたパルストランスを提供する。
【解決手段】損失パルストランスは、巻枠15、磁心16、巻線17、端子19から26および32から37、および印刷配線基板38で構成されている。端子19および32は、印刷配線基板38のグランドプレーン90に接続される。端子20は、印刷配線基板8上のストリップ導体89の一端に接続される。端子33は、印刷配線基板8上のストリップ導体89の他端に接続される。印刷配線基板38は、2枚の片面銅張り板2枚を半導体プリプレグで貼り合わせて構成されている。ストリップ導体89、グランドプレーン90、絶縁体層86、および半導体層87で構成されるマイクロストリップ線路は、損失線路を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルストランスに関し、特に、高速スイッチング素子を使用する高速ディジタルデータ通信機器や高周波DC−DCコンバータに使用し、変換効率が高く、小型軽量化が可能で、信号品位(シグナルインテグリティ)や電磁環境適合性(EMC)に優れた損失パルストランスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報技術装置やマルチメディア機器のさらなる高性能化、高機能化のために、トランジスタの高速化が進んでいる。情報技術装置やマルチメディア機器にはまた、省エネルギ化や小型軽量化の要求も強い。
【0003】
しかし、高速トランジスタを使用して高い繰り返し周波数でパルストランスを駆動すると、電磁ノイズや発熱を増加させるという問題があり、従来のパルストランス設計技術では、省エネルギ化や小型軽量化の要求に応えることが難しかった。
【0004】
回路設計技術の理論を支配するのは物理学であり、より直接的には電磁気学である。電磁気学によると、回路の状態には活性状態(exited states)、定常状態(stationary states)および、実用上は定常状態と見なせる準定常状態(quasi
stationary states)が存在する。活性状態とは、回路上の電界と磁界が変化または振動している状態であり交流回路はその一例である。振動する電界と磁界は電磁波となって絶縁体中を進行する。該絶縁体が真空空間の場合は、電磁波は光速で進行する。
【0005】
定常状態とは、回路上の電界と磁界が静止している状態であり直流回路はその一例である。準定常状態とは、電界と磁界が電磁波となって回路上を進行するが、電磁波の波長が回路長に対して非常に長く回路内での電磁波の挙動が強弱振動だけと見なしても実用上不都合が生じない状態である。低周波アナログ回路や、およそ1[ns]以上の立ち上がり時間を有するスイッチング素子を10[cm]以上の配線を有する回路で使用する場合は、準定常状態と見なすことが出来る一例である。
【0006】
電磁気学によると、活性状態にある回路の電流はアンペールの法則として定義され次式で示される。
【0007】
【数1】

【0008】
電磁気学によると、電位Vは、電界の及ばない無限遠から導線の一点までの電界の積分値と定義されるが実用的にはグランド面から導線の一点までの電界の積分値として、また、電界Eは電位Vの傾きとしてそれぞれ次式から求められる。
【0009】
【数2】

【0010】
マックスウエルは、磁界に関する理論と電界に関する理論を融合したマックスウエルの方程式を1873年に発表し、続いてこの式をダランベールの波動方程式の形式に変形し、ベクトル波動方程式を導出した。マックスウエルは、1862年頃から主張していた、電磁波と光はともに光速で伝搬することをこの式を用いて理論的に証明し、線形電磁波理論(以下電磁波理論)を完成させ、これにより電磁気学が完成した。ヘルツは、1887年に、実験によって電磁波の存在を実証し、マックスウエルの電磁波理論の正しさを証明した。
【0011】
電磁気学によると、時間的に変化する電界と磁界は相互に作用しつつ横波となって空間または誘電体中を伝搬する。真空中を伝搬する電磁波の速度は光速である。伝搬する電磁波はポインチングベクトル理論に従って電力を伝搬する。空間を伝搬する電磁波は、周期および極性が一致し振幅ベクトルが進行方向に対して直交する電界波と磁界波とから構成される。この状態の電磁波はTEM(transverse electromagnetic)波と呼ばれる。TEM波を構成する電界波の振幅を磁界波の振幅で割った値は波動インピーダンス(surge
impedanceまたはwave impedance)と呼ばれる。
【0012】
電磁気学によると、電磁波は空間だけでなく媒体中も進行する。損失のない誘電体中を進行する電磁波の速度は、光速に対して比誘電率の平方根だけ遅くなり、波長は比誘電率の平方根だけ短くなる。後者は、波長圧縮と呼ばれる。
【0013】
電磁気学によると、損失のある媒体中を進行する電磁波は、次式で示される減衰定数γに従い、進行に伴って振幅が減少し位相が変化する。γの実数項であるαは減衰定数、γの虚数項であるβは位相定数と呼ばれる。αは、nep/m(ネパー/メートル)の単位で表される。1 [nep/m]は、1メートル進行して振幅がexp-1または0.368倍に減衰することを意味する。
【0014】
【数3】

【0015】
電磁気学によると、式(3)中のγ 2を変形して得られる次式の括弧の項は、損失のある誘電体に関する複素誘電率と定義され、虚数部(σ/εω)を実数部(εr)で割った値を誘電体損失の正接と呼び、tanδで表す。但し、tanδは、電磁気学上、深い意味を持たない。
【0016】
【数4】

【0017】
電磁波が導体中を進行する場合は、導体中では電磁波に作用する電荷は存在せず導電率σは ωεに比べて非常に大きいので、γは次式で表される。次式中における減衰定数α の逆数であるδは、表皮厚さと呼ばれる。
【0018】
【数5】

【0019】
電磁気学によると、導体中を進行する電磁波の電界と磁界の比である固有インピーダンスZは、損失のある媒体中の固有インピーダンスにおいて導電率σがωεに比べて非常に大きいとして、次式で与えられる。
【0020】
【数6】

【0021】
回路上の電界と磁界が変化または振動している活性状態または準定常状態においては電磁波理論が回路を支配し、この場合は導体中を電磁波が進むことは困難である。しかし回路上の電界と磁界が静止している定常状態においては導体中を電流が容易に移動することが出来る。
【0022】
物理学によると、導体中には無尽蔵に近い自由電子すなわち電荷が存在する。しかし、導体中の総電荷量は物性的に決まり定常的にはその値は一定である。直流電源に静的負荷が接続されている場合は導体中の電荷の移動による電流が流れるが、一般に、電荷の移動軸にはわずかな電界しか印加出来ないので電荷の平均移動速度は極めて遅い。
【0023】
例えば、1平方ミリメートルの断面を有する銅線中を導体中の電荷の速度(dq/dt)で定義される10アンペアの電流が進行しているときの電流の進行速度は、物理学に従って計算すると常温で0.368[mm/s]となる。導体中の電荷は、遅いながらも移動は可能であるので、導体の他端で定常的に電荷が消費される際に導体の一端から同量の電荷が定常的に供給されれば、導体の他端に接続される抵抗器等の定常負荷へのエネルギ供給が支障なく行われる。
【0024】
伝送線路上の電気信号の進行を扱うのが電気通信工学である。電気通信工学によると、直流的に絶縁された2本の導体間に電気信号を与えると、電気信号は電流波と電圧波となって伝送線路を進行するとしている。
【0025】
電気通信工学では、交流回路理論と同様に、電流を導体中の電荷の平均速度(dq/dt)すなわち導体電流としている。しかし、電磁気学の基礎を成すマックスウエルの方程式においては、導体電流は、時間の関数ではない電流密度Jに対応させている。
【0026】
交流回路理論や電気通信工学が電流をdq/dtと定義しているのは以下の理由によると考えられる。交流回路理論を支える重要な法則の一つであるキルヒホッフの法則が発表されたのが1845年でマックスウエルが電磁波の存在を理論的に証明しヘルツによって実験で電磁波の存在が確認される42年前、電気通信工学を支える重要な理論の一つである電信方程式が開発されたのが1874年で同様に電磁波の存在が確認される13年前である。従って、交流回路理論および電気通信工学が実用化された当時は、回路の作用を電磁波の作用とする考え方がそもそも存在していなかった。さらに、その後も理論の修正が行われなかった。
【0027】
電気通信工学の基礎を成す電信方程式において、導体電流が光速で流れることが出来るとしている根拠となっているのはダランベールの波動方程式である。ダランベールの波動方程式では波動の主体を、スカラー量のラプラシアンとするベクトル関数で表現し、特定していない。従って導体電流が導体間電圧とともに波となること、電気回路を支配する電磁気学と整合させた上で、電圧と電流に関する回路方程式をダランベールの波動方程式に対比させる必要がある。しかし、前述のように電磁気学では導体電流は時間的に変化しないものとしている。
【0028】
電流の定義が電磁気学に反すると、伝送線路の電圧や、インピーダンス、電磁波との関係、さらには伝送損失に関しても電磁気学と矛盾する考え方が生じる。電気通信工学は歴史が古く現在でも伝送線路設計に実用化されているため、従来通りの連続波を対象とする伝送線路設計には電磁気学との矛盾の顕在化を避ける工夫が見られる。
【0029】
スイッチング波またはディジタル波のような間欠波を対象とする伝送線路設計においても電気通信工学に基づくと効率的であるように見える。しかし電気通信工学のディジタル回路への実用化実績が浅いため電磁気学と対比しつつ慎重に設計や解析を行わないと、電磁気学との前記矛盾が顕在化する。
【0030】
電磁気学によれば伝送線路を構成する2本の導体に挟まれる絶縁体が真空である場合は、TEM波の電磁波は光速で真空中を進行する。つまり、この場合の電流や電圧は、伝送線路の導体ではなくて絶縁体中を進み、それぞれ式(1)および式(2)から求められる値となる。実際の電流や電圧は磁界や電界であるので絶縁体中を波となって準光速で進むことが可能となる。伝送線路上のTEM波を構成する電界波の振幅を磁界波の振幅で割った値が、特性インピーダンスである。
【0031】
電気通信工学によると、伝送線路上を進行する信号の挙動は、伝送線路の特性インピーダンスと伝搬定数によって決まる。理想的な平板導体が理想的な絶縁体を挟んで平行に対向している平行板線路の特性インピーダンスZは、伝送線路の物理定数によって次式から求められる。平板導体や絶縁体の材料特性は、伝送線路の特性インピーダンスに対して実用上大きな影響を及ぼさない。
【0032】
【数7】

【0033】
電気通信工学によると、直径aの2本の導線の中心間を距離dだけ離して平行に配置した構造の、レッヘル線路の特性インピーダンスは次式から求めることが出来る。
【0034】
【数8】

【0035】
電気通信工学によると、マイクロストリップ線路の特性インピーダンスは次式から求めることが出来る。
【0036】
【数9】

【0037】
電気通信工学によると、既知の特性インピーダンスZを有する伝送線路を通して未知の特性インピーダンスZを有する伝送線路に電磁波を注入したときの、
前記二つの伝送線路の接続点における反射係数S11は、次式で表される。
【0038】
【数10】

【0039】
電気通信工学によると、既知の特性インピーダンスZに対する反射係数がS11である損失を有する伝送線路すなわち伝送線路の透過係数S21は、次式で表される。
【0040】
【数11】

【0041】
電磁気学によると、実用的な伝送線路の減衰定数は、電磁波が損失のある誘電体内を進行するときの減衰と、電磁波が誘電体内を進行する過程でその一部が導体内に侵入して熱になる導体損と、伝送線路外に漏れ出る放射損との和となると考えることが出来る。
【0042】
高速ディジタルデータ通信機器の配線設計は電気通信工学に従って行われている。しかし、電気通信工学は正弦波等の連続波を扱う伝送線路設計には適するが、前述のようにディジタル信号のような間欠波を扱う伝送線路設計には、電磁気学との矛盾があり適さない。このため、
電気通信工学に従っても、変換効率が高く、小型軽量化が可能で、信号品位(シグナルインテグリティ)や電磁環境適合性(EMC)に優れたパルストランスを設計することは難しい。
【0043】
高速ディジタルデータ通信機器や高周波DC−DCコンバータにおける直流電源は、回路に電荷を供給すると考えられている。
【0044】
電磁気学によると、マックスウエルは、単位(試験)点電荷に働く力の原因は、単位点電荷の存在する場所における電界にあるとし、クーロンの法則を修正した。この事実はあまり知られていない。
【0045】
修正された電磁気学によると、電界に関する静電(electrostatic)エネルギwは、次式で表される。
【0046】
【数12】

【0047】
このように、静電エネルギwは電荷が持っているのではなくて電界Eと電束密度Dの積または電界Eとして媒質に蓄積していることになる。
【0048】
なお、電圧Vが印加された容量Cのコンデンサに蓄積されている静電エネルギwは、式(13)から、電極距離をd、電極面積をSとすると、次式で表される。
【0049】
【数13】

【0050】
電磁気学によると磁界に関する静磁気(magnetostatic)エネルギwは磁界と磁束密度の積として媒質に蓄積しているとされ、次式で表される。
【0051】
【数14】

【0052】
電流Iが印加された誘導Lのリアクトルに蓄積されている静磁気エネルギwは、リアクトルの磁路長をl 、磁路の断面積をSとすると、次式で表される。
【0053】
【数15】

【0054】
非特許文献1および非特許文献2に示される孤立電磁波コンセプトによると、スイッチング素子は、スイッチングの瞬間に、非線形波動またはソリトンの一種である孤立電磁波を励起する。スイッチング電源装置を構成する電力変換回路や制御回路内のスイッチング素子も、同様のメカニズムで、スイッチングの瞬間に非線形波動またはソリトンの一種である孤立電磁波を励起する。
【0055】
スイッチング素子のスイッチング動作時の孤立電磁波の励起メカニズムは、1834年にJohn Scott Russell がソリトンを発見する際に行った種々の実験の内の水を貯めた水門(ゲート)を急に開くことによって生じたソリトンの発生メカニズムや、ソリトンの一種であると確認されている津波の生成過程に極めて類似している。
【0056】
非特許文献1および非特許文献2に示される孤立電磁波コンセプトによると、スイッチング素子がオフからオンにスイッチングする瞬間に、スイッチング素子が電源線路と信号線路を接続した点の電位が前記直流電源の電圧を電源線路と信号線路の特性インピーダンス分割した値になる。従って、電源線路には電圧を分割電圧まで下げる極性の孤立電磁波が、信号線路には電圧を分割電圧まで上げる極性の孤立電磁波がそれぞれ同時に励起され、電磁波理論に従い、互いにその振幅ベクトルが直交する孤立電界波と孤立磁界波を伴って伝送線路上を進行する。
【0057】
図1は、孤立電磁波の挙動を説明するためのプッシュプル回路1に関する等価回路の一例である。図1において、特性インピーダンスZ0の伝送線路の途中にプッシュプル回路1が接続されており、特性インピーダンスZ0の伝送線路5は直流電源4とプッシュプル回路1との間に接続されて電源線路を構成し、特性インピーダンスZ0の伝送線路6はプッシュプル回路1と整合終端抵抗7との間に接続されて信号線路を構成している。プッシュプル回路1は、PチャネルMOS
FET2とNチャネルMOS FET3によるコンプリメンタリー構成である。
【0058】
図1において、プッシュプル回路1のオン状態とは、PチャネルMOS FET2がオンでNチャネルMOS FET3がオフの状態であり、プッシュプル回路1のオフ状態はその逆である。伝送線路を進行するTEM波に関する磁界と電流の関係および電界と電位の関係は、電磁気学においてそれぞれアンペアの法則および電位の定義として示される。
【0059】
図2に、プッシュプル回路1がオン時の伝送線路6上の電位波形9と、電磁気学に示される電位の定義から逆算して求められる伝送線路6上を進む電界波形8とを示す。図3は、プッシュプル回路1がオン時の伝送線路5上の電位波形11と、電磁気学に示される電位の定義から逆算して求められる電源側の伝送線路5上を進む電界波形10とを示す。
【0060】
図2および図3に示すように、プッシュプル回路1のスイッチングによって生じる電界の波形は、スイッチング素子の立ち上がり波形の最大傾斜部の接線を立ち上がり波形と見なして求める立ち上がり時間と円周率との積の逆数として求められる周波数で定義される実効周波数(significant frequency)を有する正弦波の半波形に近似している。実効周波数の考え方を引用すると、前記近似の確かさ(accuracy)は、92%以上と見込まれる。従って、設計だけに限ると実用上実効周波数で行うことが出来る。
【0061】
図1から図3において、プッシュプル回路1がオンすると、図1中のB点とC点の電位は等しくE/2[V]となる。プッシュプル回路1によって励起された、お互い逆極性を有する伝送線路6上を進む孤立電界波8と伝送線路5上を進む孤立電界波10は、それぞれプッシュプル回路1に対して反対方向に進む。伝送線路6上を進む孤立電界波8は、伝送線路6の電位を0[V]からE/2[V]に上昇させつつ進み、整合終端抵抗7に向かう。一方、伝送線路5上を進む孤立電界波10は、伝送線路5の電位をE[V]からE/2[V]に降下させつつ直流電源4に向かって、それぞれ伝送線路を構成する絶縁体中を準光速で進行する。
【0062】
非特許文献1および非特許文献2によると、伝送線路上を進行する孤立電磁波の波長は次式で定義される。
【0063】
【数16】

【0064】
従来の印刷配線基板については、下記の特許文献や非特許文献に記載されている。その要点は後述される。
【特許文献1】特開平6−224052
【特許文献2】特開平7−161533
【特許文献3】特開平7−45451
【特許文献4】特開2004−253500(P2004−253500A)
【特許文献5】特開2005−19766(P2005−19766A)
【特許文献6】特願2006−332245(P2006−332245A)
【特許文献7】特開2007−67177(P2007−67177A)
【非特許文献1】Hirokazu Tohya andNoritaka Toya著 「A Novel DesignMethodology of the On - Chip Power Distribution Network Enhancing thePerformance and Suppressing EMI of the SoC」、IEEE InternationalSymposium on Circuits and Systems 2007、 pp. 889-892、 May 2007.
【非特許文献2】遠矢弘和、遠矢紀尚 著 「SoCの性能とEMCを大きく改善するオンチップ電源分配回路の新しい設計法」、電子情報通信学会 信学技報、Vol.107、No. 149、 EE2007-20、pp.73-78、2007年7月.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0065】
解決しようとする問題点の第1は、特許文献1に関する。特許文献1は、変成器巻線において、巻線間の結合度を改良するために、多数の、横断面が小さい、相互に絶縁されている個別線材(例えば銅ラッカ線材)から成るコイル形状に巻回されたフレキシブルなリッツ線を備え、個別線材は個々にまたは複数個平行にまとめられて相互に緻密に撚られており、かつ1次巻線および2次巻線はそれぞれ、任意に選択可能な数の個別線材から成る束によって形成される技術を開示している。
【0066】
電磁気学によると、変成器は、1次巻線に印加される定常エネルギによって静磁気エネルギが蓄積され、2次巻線から静磁気エネルギを放出する。静磁気エネルギの蓄積と放出の効率が高い変成器が、一般に高い性能を有すると考えられる。一方、変成器の1次巻線に印加される電磁波が2次巻線に漏洩すると、該変成器を搭載する機器の電磁環境適合性(EMC)や信号品位(シグナルインテグリティ)が低下する。
【0067】
特許文献1において、1次巻線および2次巻線を複数個平行にまとめられて相互に緻密に撚られるとしているので、1次巻線と2次巻線の間は、静磁気エネルギの結合度だけでなく巻線間の静電容量による変位電流または電束電流による電磁波の結合度が非常に高いと考えられる。従って、開示された技術によって、変成器を使用するスイッチング機器の信号品位(シグナルインテグリティ)や電磁適合性(EMC)を共に大幅に高めることは不可能であった。
【0068】
解決しようとする問題点の第2は、特許文献2に関する。特許文献2は、パルス符号通信や変復調を用いたデータ通信に使用されるパルストランスを、伝送路側と送受信器側との絶縁を確保し、コモンモードノイズを除去し、1次巻線と2次巻線との間の電磁結合を高くするために、1次巻線と2次巻線との間にシールド板を設けるか、1次巻線とシールド機能を持つ巻線と2次巻線とを交互に巻く従来の方法ではなく、1次導体巻線と、2次導体巻線2との間に、線径がほぼ同じ棒状のシールド巻線6を介在させて接着剤によって一体成形してこれを複合部材とし、トロイダルコアに、前記複合部材が一定ピッチでスパイラル状に、かつ、隣り合う1次導体巻線1と、2次導体巻線2との間隔を等しく巻く技術を開示している。
【0069】
特許文献2で使用する配線材である複合部材はリボン状であるので、トロイダルコアのサイズが大きくなる。トロイダルコアのサイズを小さくするためには複合部材を多層に亘って巻く必要があるが、多層巻きにすると複合部材中のシールド巻線の効果が損なわれる。従って、開示された技術によって、ディジタル機器の信号品位(シグナルインテグリティ)や電磁環境適合性(EMC)を共に大幅に高めるとともに小型軽量化を実現することは不可能であった。
【0070】
解決しようとする問題点の第3は、特許文献3に関する。特許文献3は、自動組立が容易であって安価な静電シ−ルド機能を備えたスイッチングトランスによってスイッチング電源回路の雑音を除去するために、電源1次側と磁性体コア及び2次側巻線と磁性体コアの間にそれぞれ1次側及び2次側の安定電位端子に接続される銅箔を使用する従来のシ−ルドに対して、活電部を構成する1次巻線の主構成部と非活電部を構成する2次巻線の主構成部との間に、それぞれ活電部および非活電部に接続される独立した1層の巻線による静電シ−ルド層を備える、スイッチングトランスの技術を開示している。
【0071】
上記従来の技術では銅箔に励起される電圧は小さいので銅箔は静電シールドとして機能するが、特許文献3で開示されている静電シールド巻線には、1次巻線または2次巻線の電圧と同等の大きな電圧が励起される。1次巻線と1次側の静電シールド巻線、および2次巻線と2次側の静電シールド巻線とは密に巻かれるので、結局、特許文献3で開示されている技術では、従来の銅箔で行う静電シールドと同等のシールド特性を得ることは不可能である。従って、開示された技術によって、スイッチング電源回路の雑音を除去することは不可能であった。
【0072】
解決しようとする問題点の第4は、特許文献4に関する。特許文献4は、インバータ電源からのスイッチングトランスのノイズ発生を抑えるために、従来のシールド用のショートリングによる方法の代わりに、コイルとボビンと磁気コアとを備え、ボビンはコイルが巻かれる巻回部と、巻回部を挟むように設けられた側板部とを具備し、各側板部の表面には巻回部を一巡するように磁気コアを配置するための凹部分が設けられたトランス本体と、トランス本体を覆う収納ケースと、収納ケースの内面に設けられ、トランス本体を覆う導体からなるシールドケースと、トランス本体が設けられた収納ケースに注入された樹脂とから、低背型スイッチングトランスを構成する技術を開示している。
【0073】
特許文献4では、スイッチングトランスのノイズ問題をスイッチングトランスからの放射電磁波だけとみなしているが、スイッチングトランスの最大のノイズ問題は、1次側と2次側の高周波電磁結合である。従って、開示された技術によって、インバータ電源のノイズ問題を解決することは不可能であった。
【0074】
解決しようとする問題点の第5は、特許文献5に関する。特許文献5は、インバータ等に使用されるパルストランスの、低域における伝送効率を高くすると共に、所定レベル以上の高域の場合における結合状態の減衰量を確保し、不要な信号や雑音(ノイズ)を低減するために、機械的に隙間なく閉磁路を形成する閉磁路コアと、この閉磁路コアを巻軸としてそれぞれ閉磁路コアの離れた位置に巻回された一次巻線及び二次巻線と、一次巻線及び二次巻線の間に配置され、所定レベル以上の高周波帯域において一次巻線と二次巻線との容量結合を低下させるように容量結合を制御する結合制御コア部とを備える技術を開示している。
【0075】
電磁気学によると、変成器は、1次巻線に印加される定常エネルギによって静磁気エネルギが蓄積され、2次巻線から静磁気エネルギを放出する。静磁気エネルギの蓄積と放出の効率が高い変成器が、一般に高い性能を有すると考えられる。一方、変成器の1次巻線に印加される電磁波が2次巻線に漏洩すると、該変成器を搭載する機器の電磁環境適合性(EMC)や信号品位(シグナルインテグリティ)が低下する。特許文献5で開示されている技術は、1次巻線と2次巻線がE型コアの2個所の脚の部分に分けて配置されているので、1次巻線と2次巻線との間の高周波電磁結合は低いと考えられる。しかし、静磁気エネルギに対す磁気結合が低くなる。従って、開示された技術によって、インバータ電源のノイズ問題の解決と、小型軽量化や電力変換効率向上との両立を実現することは不可能であった。
【0076】
解決しようとする問題点の第6は、特許文献6および特許文献7に関する。特許文献6および特許文献7は、簡単な構造で安定した直流重畳特性を実現し、また漏れ磁束を低減し、かつ低コストの線輪部品すなわちチョークコイルを提供することを目的としており、開磁路線輪部品の周辺を閉磁路化のため、ペースト状の流動体から成る軟磁性金属粉末と熱硬化性樹脂との混成物にてモールドすることにより、十分な直流重畳特性を可能にする技術を開示している。
【0077】
特許文献6および特許文献7は、チョークコイルに限定し、モールド用の混和物には軟磁性体粉末に限定しているため、高速スイッチング素子を使用する高速ディジタルデータ通信機器や高周波DC−DCコンバータに使用し、変換効率が高く、小型軽量化が可能で、信号品位(シグナルインテグリティ)や電磁環境適合性(EMC)に優れたパルストランスに適用することは不可能であった。
【0078】
アナログ回路は、回路状態の変化が比較的緩やかで始まりと終わりが明確でないことが多い。アナログ回路の歴史は古く、特に工学においては経験則等の適用によって、電磁気学に戻らなくても、従来の交流回路理論や電気通信工学に従う回路設計において、実用上、問題が生じることはほとんど無かった。
【0079】
一方、アナログ回路の場合と異なり、スイッチング回路における状態の変化の始まりと終わりは明確である。スイッチング回路の状態の変化は非常に急激であり、急激な電界または磁界の変化は当然ながら大きなレベルの電磁波を励起する。スイッチング回路における電界または磁界の変化は間歇的である。さらに、半導体集積回路中の約9割を占めるデータ処理回路においては、一般にスイッチングの周期は不定である。
【0080】
以上のようにアナログ回路とスイッチング回路は、電磁気学の観点からは大きく異なっている。しかし、従来の電気通信工学や交流回路理論では、間欠的な回路動作を想定した回路すなわちパルス回路の設計は、電磁気学とは関係のない前述のような手法で行われ、解析は、スイッチング波をひずみ波の一種と考えるフーリエ変換法が適用されてきた。
【0081】
フーリエ変換法によると、ひずみ波は正弦波である多数の高調波から構成されている。これらの高調波は始まりと終わりが無い多数の正弦波である。回路上の信号を高調波毎に解析してその結果を加算すれば、スイッチング回路の解析が可能となる。しかし、フーリエ変換法は数学の一手法であり、上位理論である電磁気学との整合性を確認した上で電気電子回路の設計や解析に採用されている訳ではないため、ディジタル回路で発生する瞬時現象の解析は、現実との乖離が甚だしく、不可能である。
【0082】
たとえばデューティが1/10で繰り返し周波数が1[GHz]のスイッチング波をフーリエ変換すると振幅の1/10の値の直流成分と1[GHz]を基本波とする高調波とに分解できる。直流電流はほとんど流さないCMOS回路を使用する半導体集積回路内のある長さの配線または伝送線路が、1[GHz]の振幅を1/2に低下させる損失を有しているとすると、配線または伝送線路の終端でのスイッチング波の振幅は、解析結果ではほぼ1/2以下に低下する。
【0083】
しかし、電磁気学に従うと、スイッチング波の振幅は直流電源から供給される静電エネルギによって維持される。静電エネルギは波ではないので配線または伝送線路の損失の作用は受けない。従って、伝送線路の終端で観測されるスイッチング波の振幅は減衰しないはずである。
【0084】
この事実は、スイッチング波をひずみ波として扱うことが誤りであることを示している。また、この事実は、フーリエ変換法に基づいて生じる群速度の概念に従う、ディジタル信号配線における信号品位(シグナルインテグリティ)に関する従来の理論には修正が必要であることを示している。すなわち、この事実は、スイッチング回路やディジタル回路上での瞬時の変化と比較的長い期間の挙動を矛盾無く説明できる、統一した設計および解析のための理論が、新たに構築されなければならないことを示唆している。
【0085】
本発明は、上記問題を根本的に解決する手段を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0086】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、パルストランスに係り、スイッチング素子によって駆動される、少なくとも1つの1次巻線と少なくとも1つの2次巻線とを有するパルストランスにおいて、該パルストランスが、該パルストランスの1次巻線に、スイッチング素子の立ち上がり波形の最大傾斜部の接線を立ち上がり波形と見なして求める立ち上がり時間と円周率との積の逆数として求められる周波数で定義される実効周波数の電磁波を印加したときに、前記パルストランスの内部で前記電磁波の振幅を1/10以下に減衰させる能力を有する損失パルストランスとして設計されて成ることを特徴としている。
【0087】
また、請求項2記載の発明は、パルストランスに係り、請求項1記載の損失パルストランスにおいて、前記損失パルストランスを構成する巻線構造と外部接続端子とを接続する配線が、導体と、該導体表面に形成される絶縁体と、該絶縁体の表面に形成される半導体とで構成される損失線路、または、導体と、該導体表面に形成される前記半導体と、該半導体の表面に形成される絶縁体とで構成される損失線路であることを特徴としている。
【0088】
また、請求項3記載の発明は、パルストランスに係り、請求項1から請求項2記載の損失パルストランスにおいて、前記損失パルストランスを構成する前記損失線路の長さが、10[mm]以上であることを特徴としている。
【0089】
また、請求項4記載の発明は、パルストランスに係り、請求項1から請求項3記載の損失パルストランスにおいて、前記損失パルストランスを構成する前記損失線路の特性インピーダンスが、前記損失パルストランスを搭載する印刷配線基板の特性インピーダンスに±20%以内の精度で等しいことを特徴としている。
【0090】
また、請求項5記載の発明は、パルストランスに係り、請求項1から請求項4記載の損失パルストランスにおいて、前記損失パルストランスを構成する前記損失線路が、半導体膜で覆われた2本の導体を柔軟性のある絶縁体樹脂中に埋め込んで形成されることを特徴としている。
【0091】
また、請求項6記載の発明は、パルストランスに係り、請求項1から請求項5記載の損失パルストランスにおいて、前記損失パルストランスを構成する前記損失線路が、2層の導体層の間に絶縁層と半導体層を有する印刷配線基板上に形成されることを特徴としている。
【0092】
また、請求項7記載の発明は、パルストランスに係り、請求項1から請求項6記載の損失パルストランスにおいて、前記半導体が、無機半導体または有機半導体であって10[S/m]以上の導電率を有するように設計されて成ることを特徴としている。
【0093】
また、請求項8記載の発明は、パルストランスに係り、請求項1から請求項7記載の損失パルストランスにおいて、前記半導体が、ポリ(p−フェニレン)(22.7°)、またはポリ(p−フェニレンスルフィド)、またはカーボングラファイト、または二酸化マンガン、またはポリアセチレン、またはポリチオフェン、またはポリピロール、またはポリフェニレンビニレン、またはテトラチアフルバレン−テトラキノジメタン(TTF−TCNQ)であることを特徴としている。
【0094】
また、請求項9記載の発明は、パルストランスに係り、請求項1から請求項8記載の損失パルストランスにおいて、前記半導体が、1015[cm-3]以上のリンをドーピングしたn型シリコン、1016[cm-3]以上のボロンをドーピングしたp型シリコン、または、不純物を混合した、アモルファスシリコン、またはアルミナ、またはジルコニア、またはカーバイド、またはニトライド、またはシリサイド、またはシリコンカーバイド、またはシリコンナイトライド、またはマグネシウムナイトライド、または酸化亜鉛であることを特徴としている。
【0095】
また、請求項10記載の発明は、パルストランスに係り、請求項1から請求項9記載の損失パルストランスにおいて、前記半導体が、請求項4から請求項6記載の半導体または最大長が100ナノメートル以下の前記半導体の粒子を混合した、樹脂であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0096】
高速ディジタルデータ通信機器や高周波DC−DCコンバータに主として使用されるパルストランスに、非特許文献1および非特許文献2に示される孤立電磁波コンセプトに従う本発明を適用すると、電磁気学に忠実なパルストランスの設計や解析を容易に行うことが出来る。
【0097】
また、高速ディジタルデータ通信機器や高周波DC−DCコンバータに主として使用されるパルストランスに孤立電磁波コンセプトに基づく本発明を適用すると、高速スイッチングパルスを印加するパルストランスに不可欠であったスナバや整合終端回路が全く不要となる。
【0098】
また、パルストランスに孤立電磁波コンセプトに基づく本発明を適用すると、高速ディジタルデータ通信機器や高周波DC−DCコンバータなどの変換効率、信号品位(シグナルインテグリティ)、ならびに電磁環境適合性(EMC)を高めるために、小型軽量化や高性能化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0099】
以下、本発明に係る 最良の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0100】
(実施の形態1)
図4は、損失線路の一例である。
【0101】
図4において、損失巻線は、導体12、絶縁体13、および半導体14によって構成されている。
【0102】
図5は、損失パルストランスの断面構造の一例である。
【0103】
図5において、損失パルストランスは、巻枠15、磁心16、巻線17、樹脂18、一次巻線外部端子19、20、一次巻線内部端子21、22、固定用の端子23、24、二次巻線内部端子25,26、二次巻線外部端子27、28、樹脂基板29、および樹脂箱30で構成されている。
【0104】
図6は、損失パルストランスの内部配線構造の一例である。
【0105】
図6において、損失パルストランスの内部配線構造は、一次巻線外部端子19、20と一次巻線内部端子21、22との間を接続するための、図4の断面を有する損失線路31を樹脂箱30に内蔵している。損失線路31は、図4の断面構造を有し、導体12の半径が0.5[mm]、半導体14の厚さが0.1[mm]、2本の導体12間の中心距離が2
[mm]であるとすると、式(8)から、損失線路31の特性インピーダンスは50.8[Ω]となる。
【0106】
の特性インピーダンスを有する損失線路を構成する絶縁体の導電率が無限大、半導体の導電率がσである場合、絶縁体中を進行するインピーダンスZを有する電磁波の一部が固有インピーダンスZを有する半導体中に侵入する。該半導体中に進行中にした電磁波はTEM波以外の通信に役立たない電磁波であって全てが損失となる。半導体の導電率を実際に損失に関わる割合で修正したものを半導体の実効導電率と定義すると、実効導電率σ
P1は次式から求めることができる。
【0107】
【数17】

【0108】
実効導電率がσ P1のときの減衰定数αP1は次式から求めることが出来る。
【0109】
【数18】

【0110】
図5において、図4の断面構造を有する損失線路31が、導電率が無限大の絶縁体と導電率が100[S/m]の半導体を有し、長さが1[cm]で、特性インピーダンスが端子19,20を経由して50.8[Ω]の印刷配線基板上の伝送線路に接続されているときの、損失線路31の透過係数S21は、式(10)、(11)、(17)および(18)から、1[GHz]で−43dB、10[GHz]で−162dBとなる。これらの値の妥当性については、実施の形態3に示すDC−DCコンバータへの適用例で検証する。
【0111】
(実施の形態2)
【0112】
図7は、損失パルストランスの断面構造の他の一例である。
【0113】
図8は、印刷配線基板38の損失パルストランス搭載面の配線構造の一例である。図9は、図8のX−X’から見た印刷配線基板38の断面図である。
【0114】
図7と図8において、損失パルストランスは、巻枠15、磁心16、巻線17、一次巻線外部端子19、20、一次巻線内部端子21、22、一次巻線の印刷配線基板38との接続端子32,33、二次巻線内部端子25,26、二次巻線外部端子34、35、巻枠15に孤立して配置されて固定され印刷配線基板38のビア83と84に接続される端子36および37、および印刷配線基板38で構成されている。端子34と35は、印刷配線基板38のバカ穴81、82の中心部を非接触で貫通しており、損失パルストランスが搭載される印刷配線基板に直接接続される。
【0115】
図7と図8において、端子19および32は、印刷配線基板38のグランドプレーン90に接続されているビア77,79に接続される。端子20は、印刷配線基板38上のストリップ導体89の一端に接続されているビア78に接続される。端子33は、印刷配線基板38上のストリップ導体89の他端に接続されているビア80に接続される。
【0116】
印刷配線基板38は、2枚の片面銅張り板2枚を半導体プリプレグで貼り合わせて構成されている。
【0117】
図9は、図8のX−X’から見た印刷配線基板38の断面図である。
【0118】
図9において、ストリップ導体89、グランドプレーン90、絶縁体層86、および半導体層87で構成されるマイクロストリップ線路は、損失線路を構成する。
【0119】
図8および図9において、ストリップ導体89およびグランドプレーン90の厚さを35[μm]、絶縁体層86の厚さを500[μm]、半導体層87の厚さを50[μm]、ストリップ導体89のストリップ導体の幅を1[mm]、絶縁体層の比誘電率を4とすると、マイクロストリップ線路の特性インピーダンスは、式(9)から、49.6[Ω]となる。
【0120】
図8および図9において、絶縁体層の導電率が無限大、半導体層の導電率が100[S/m]であり、ストリップ導体の実効長が1[cm]のとき、端子78、79を経由して50[Ω]の印刷配線基板上の伝送線路に接続されているときの、刷配線基板38上の損失線路の透過係数S21は、式(10)、(11)、(17)および(18)から、1[GHz]で−43dB、10[GHz]で−162dBとなる。これらの値の妥当性については、実施の形態3に示す損失パルストランスのDC−DCコンバータへの適用例で検証する。
【0121】
(実施の形態3)
本実施の形態は、実施の形態1および2の損失パルストランスをフォワード型DC−DCコンバータに使用したときの伝送線路上での孤立電磁波の挙動に関する。
【0122】
図10において、フォワード型DC−DCコンバータは、直流電源51と、スイッチング用のNチャネルMOS FET55と、NチャネルMOS FET55と直流電源51の間に接続され導体52と53からなる伝送線路54と、損失パルストランス60と、損失パルストランス60の一次巻き線端子62,63とMOS FET55との間に接続され導体56と57からなる伝送線路58と、損失パルストランス60の一次巻き線端子61と63の間に接続されるダイオード59と、損失パルストランス60の二次巻き線端子64と66に接続されるダイオード66、67と、チョークコイル71と、チョークコイル71とダイオード67との間に接続され導体68と69からなる伝送線路70とコンデンサ72とで構成されている。なお、伝送線路54と58の特性インピーダンスは50[Ω]である。
【0123】
図10において、NチャネルMOS FET55がオンすると、立ち上がりの期間に、伝送線路58上のC点に、図11に示す負の極性を有する孤立電磁波が励起される。C点に励起された孤立電磁波を構成する孤立電界波41は、式(16)で定義される波長λを維持しつつ、図11に示す先頭部の包絡曲線43に沿って指数的に振幅を減少させながら伝送線路58中を進行しD点に到達する。
【0124】
指数的に減衰する電界は、式(2)に従うと、孤立電界波の減衰分を補う形の電位を発生させる。この電界は静電界であって、孤立電界波が伝送線路上に図10における直流電源51から静電エネルギを引き出すことによって生じる。
【0125】
孤立電磁波は、静電界を伝送線路上に分布させつつ伝送線路58の電位をC点からD点まで一定に保ちつつ進行する。本実施の形態においては伝送線路52と伝送線路58の特性インピーダンスが等しいので、孤立電界波7がD点に到達する伝送線路50の電位は−E/2 [V]の定常値となる。
【0126】
D点には実施の形態1または実施の形態2の損失パルストランスが接続されている。実施の形態1および2の損失パルストランスには、図10端子61と端子62に接続されている一次巻線が無いが、本実施の形態での説明には不用であるので、省略した。
【0127】
D点に到達した孤立電磁波7は損失パルストランス60の一次巻き線に向かって進む過程で、損失パルストランス60中の損失線路により、1[GHz]で−43dBだけ減衰する。大きく減衰した孤立電磁波7は変位電流または電束電流の考え方に従って損失パルストランス60の二次巻線に進むが、孤立電磁波が引き出してきた静電エネルギは絶縁体を透過できないので、線路57上の電位の上昇は一次巻線までで停止する。なお、立ち上がり時間が0.3[ns]のNチャネルMOS FETの前記実効周波数は1[GHz]となる。
【0128】
図11は、伝送線路58上のC点とD点の孤立電界波と、孤立電界波の尖頭部の包絡曲線の一例である。
【0129】
損失パルストランス60中の損失線路上を孤立電磁波が進行する場合の孤立電磁波の尖頭部の包絡曲線は、式(11)の指数項から求まる減衰曲線となる。孤立電磁波の尖頭部が式(11)の指数項で減衰するときの孤立電界波による伝送線路の長さ方向の電位の変化は、電界の減衰特性に依存すると考えられ、次式から求められる。
【0130】
【数19】

【0131】
式(19)は、孤立電界波が損失パルストランス60中の損失線路路上を進行中に、損失線路の電位を上昇させる能力が減少することを静電エネルギが補い、結果的に孤立電界波が進行中の損失パルストランス60中の損失線路の−E/2 [V]の電位および損失パルストランス60の一次巻き線の−E/2 [V]の電位は減衰しない。
【0132】
図10において、NチャネルMOS FET55がオンすると、立ち上がりの期間に、前述の伝送線路58上のC点と同時に、伝送線路54上のB点に図12に示す正の極性を有する孤立電磁波が励起される。B点に励起された孤立電磁波を構成する孤立電界波42は、式(16)で定義される波長λを維持し、伝送線路54の電位を−E[V]から−E/2
[V]に上昇させつつA点に向かって進行する。
【0133】
A点に接続されている直流電源51は理想電源であって端子インピーダンスがゼロであるとする。孤立電界波42がAに到達すると、反射して極性を反転させ、伝送線路54の電位を−E[V]に戻しつつてB点まで進む。孤立電界波42がB点に到達した時点で、NチャネルMOS FET55がオンを維持していると、孤立電界波42は伝送線路58上のC点を通ってD点に向かう。
【0134】
D点に到達した孤立電磁波42は損失パルストランス60の一次巻き線に向かって進む過程で、損失パルストランス60中の損失線路により、1[GHz]で−43dBだけ減衰するが、前述のように損失パルストランス60の一次巻き線の電位を−E[V]の定常値にする。従って、損失パルストランス60中の損失線路は、損失パルストランス60を駆動するためのNチャネルMOS FET55の静電エネルギ供給能力を減ずることはない。
【0135】
損失パルストランス60中の損失線路上で大きく減衰した孤立電磁波7は変位電流または電束電流の考え方に従って損失パルストランス60の二次巻線に進むが、孤立電磁波が引き出してきた静電エネルギは絶縁体を透過できないので、電位の−E[V]までの降下は一次巻線までで停止する。
【0136】
孤立電磁波7が損失パルストランス60の一次巻き線に到達するまでの間は、直流電源51から線路58を充電するための静電エネルギが供給される。孤立電磁波7が損失パルストランス60の一次巻き線に到達後は、NチャネルMOS FET55がオフするまで、損失パルストランス60に静磁気エネルギを蓄積するために、引き続き直流電源51から静電エネルギが供給される。この期間、直流電源51から直流電流の供給が観測されるが、この電流は定常電流である。伝送線路58を充電する期間の電流は、伝送線路58上の電位を伝送線路58の特性インピーダンスで割った値である。
【0137】
伝送線路58上および損失パルストランス60中を孤立電磁波が通過する際に、変位電流または電束電流が観測されるが、これは孤立電磁波が保有する電磁波エネルギすなわちポインチングベクトルによる瞬時の電流である。
【0138】
図13は、伝送線路54上のA点の時間軸上で表した伝送線路上の電位曲線45の一例である。図14は、伝送線路54上のB点の時間軸上で表した伝送線路上の電位曲線46の一例である。図15は、伝送線路58上のC点の時間軸上で表した伝送線路上の電位曲線47の一例である。図16は、伝送線路58上のD点の時間軸上で表した伝送線路上の電位曲線48の一例である。電流については前述の通りであって図は省略した。
【0139】
図13から図16において、tは、伝送線路58上のC点に励起された孤立電磁波がD点に到達するまでの時間である。tは、伝送線路54上のB点に励起された孤立電磁波がA点で反射してB点に戻るまでの時間である。tは、伝送線路54上のB点に励起された孤立電磁波がA点で反射して、B点およびC点を経て伝送線路58上のD点に到達するまでの時間である。
【0140】
図16から、伝送線路58上のD点の信号波形の立ち上がり時間は、伝送線路54や伝送線路58の損失または減衰定数に無関係であること、および、波源であるNチャネルMOS FET55の立ち上がり時間と、NチャネルMOS FET55と直流電源51との間に接続されている伝送線路54の長さに依存していることが判る。
【0141】
放射電力Pを有する線形電磁波がアンテナから放射されたときのr[m]の距離での電界強度Eは、IEC CISPR16−2−3に示されている次式から求めることが出来る。
【0142】
【数20】

【0143】
例えば家庭内使用を目的とするクラスB情報技術装置から10[m]の距離での妨害波電界強度の許容値は、VCCI(CISPR22)で決められており、30[MHz]から230[MHz]で30[dBμV/m]、230[MHz]から1[GHz]で37[dBμV/m]である。式(20)から、例えば230[MHz]での許容放射電力値を求めると、2[nW]となる。
【0144】
図17は従来のパルストランスの断面構造の一例である。
【0145】
図17において、従来のパルストランスは、巻枠92、磁心93、巻線94、樹脂91、端子95で構成されている。
【0146】
図10のフォワード型DC−DCコンバータの入力電力を100[W]とし、NチャネルMOS FET55の立ち上がり時間を0.3[ns]、オン時間を30[ns]とすると、孤立電磁波のエネルギは1[W]となる。この内の0.1%がパルストランスから大気中に放射され、さらにその内の10−4の電力を230[MHz]の線形電磁波が有しているとすると、230[MHz]の放射妨害波の電力は、100 [nW]となる。この値は、前記クラスB情報技術装置の許容放射電力値を大幅に上回る。
【0147】
実施の形態1および2の損失パルストランスにおいては、損失パルストランス中の損失線路の透過係数が、立ち上がり時間0.3[ns]のときの実効周波数である1[GHz]において、−43dBであるので、前記条件での230[MHz]の放射妨害波の電力は、0.7[nW]となり、前記クラスB情報技術装置の許容放射電力値を充分満たす。
【0148】
実施の形態1および2の損失パルストランスにおいては、損失パルストランス中の損失線路の長さを1[cm]とした。透過係数は、式(11)に示すように、損失線路の長さに対して指数的に減少するので、長さを選択することによって容易に大きな減衰特性を得ることが出来る。従って、本特許に依れば、特にEMC対策部品や電磁シールド材を使用しなくても、パルストランスが原因のEMC問題はほぼ解消されると考えられる。
【0149】
(実施の形態4)
図18は、試作した低インピーダンスを有する損失線路の構造の一例である。
【0150】
低インピーダンスを有する損失線路は、導体96、弁金属97、絶縁体98、半導体99、および導電性接着剤100とで構成され、弁金属97は図17に示すように線路長方向に引き出されている。引き出された弁金属97の線路長方向の両端が陽極端子となり、導体96の線路長方向の両端が負極端子となる。
【0151】
試作した低インピーダンスを有する損失線路は、線路部の幅が1[mm]で長さが16[mm]を有するエッチング処理が施されたアルミニウム薄膜が弁金属97として使用されている。アルミニウム薄膜のエッチング部に化成処理によって形成された10[nm]の厚さの酸化アルミニウム被膜が絶縁体98に相当している。アルミニウム薄膜のエッチング部分に化学重合によって付着させたポリピロールが半導体99に相当し、厚さは約2.5μmである。
【0152】
ポリピロールの上に約30[μm]の厚さに塗布されたカーボングラファイトとカーボングラファイトの上に塗布された熱硬化性銀ペーストが導電性接着剤100に相当する。導電性接着剤100によって幅が1[mm]で長さが16[mm]の銅板が接着されおりこれが導体99に相当する。半導体として使用するポリピロールの導電率は1500[S/m]、絶縁体として使用する酸化アルミニウムの比誘電率は10である。
【0153】
図19は、試作した低インピーダンスを有する損失線路の透過係数 (S21) 特性の一例である。
【0154】
図19には、低インピーダンスを有する損失線路の部分の長さを4[mm]、8[mm]、16[mm]および24[mm]としたときの特性と、従来の2種類のチップセラミックコンデンサの特性を示している。
【0155】
低インピーダンスを有する損失線路を構成する平行板の静電容量をCとすると、エッチングによる対向面積の拡大率kは、次式から得られる。
【0156】
【数21】

【0157】
回路に並列に使用される場合を想定したコンデンサのインピーダンスZCは散乱行列透過係数(S21)から求めることが出来る。測定系のケーブルの特性インピーダンスZ0が50[Ω]であって、透過係数 (S21)が1よりかなり小さい場合は、ZCと透過係数 (S21)の関係は簡略化されて次式のようになる。
【0158】
【数22】

【0159】
図19において、コンデンサとして作用していると考えられる100k[kHz]における16[mm]の長さで1[mm]の幅の低インピーダンスを有する損失線路の透過係数(S21)は約−46dBである。このときのコンデンサとしてのインピーダンスZは式(22)から求めることが出来、静電容量Cは12[μF]となる。この値および既定の他のパラメータを式(21)に代入すると、エッチングによる対向面積の拡大率kは、85、幅の拡大率k’は9.2となる。
【0160】
このときの、平行板線路として作用する場合の特性インピーダンスは、式(7)のwを9.2wとして求めることが出来、0.13[mΩ]となる。
【0161】
本実施の形態の低インピーダンス損失線路の、特性インピーダンスが50[Ω]の線路に対する透過係数(S21)は、式(10)、(11)、(17)および(18)を使用して求めることが出来る。線路長が8[mm]の場合は、10 [MHz]で−63dB、100[MHz]で−82dB、1[GHz]で−129dBとなる。線路長が16[mm]の場合のS21は、同様にして、10
[MHz]で−77dB、100[MHz]で−116dB、1[GHz]で−208dBとなる。
【0162】
これらの特性は、図19の特性と大略一致する。実測と計算結果との間に生じる差異は、アルミニウム薄膜のエッチング部の構造が非常に複雑であるためである。従って、実施の形態1および2における、損失線路の特性インピーダンス並びに透過係数 (S21)は、エッチング処理を行わない場合はほぼ正確に計算で求めることが可能であるし、エッチング処理を行う場合においても、実用上支障のない精度で計算によって求めることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0163】
この発明は、孤立電磁波コンセプトに従うことによって、高周波DC−DCコンバータに使用するパルストランスの設計や解析を非常に容易に行うことが可能にする。
【0164】
この発明は、周波DC−DCコンバータに使用するパルストランスの、変換効率、信号品位(シグナルインテグリティ)、および電磁環境適合性(EMC)を、未熟な技術者でも容易に向上させることが出来る。
【0165】
また、本発明は、パルストランスの電磁シールド、並びにパルストランスを使用する機器のEMC対策部品や材料の使用を削減できるとともに、高速スイッチングパルスを印加するパルストランスに不可欠であったスナバや整合終端回路を不要とするので、機器の小型軽量化、製造コスト低減、設計期間短縮を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】図1は、プッシュプル回路に関する等価回路の一例である。
【図2】図2は、負荷側の伝送線路上の電界波形と電位波形の一例である。
【図3】図3は、電源供給側の伝送線路上の電界波形と電位波形の一例である。
【図4】図4は、伝送線路構造の一例である。
【図5】図5は、損失パルストランスの断面構造の一例である。
【図6】図6は、損失パルストランスの内部配線構造の一例である。
【図7】図7は、損失パルストランスの断面構造の他の一例である。
【図8】図8は、印刷配線基板38の損失パルストランス搭載面の配線構造の一例である。
【図9】図9は、図8のX−X’から見た印刷配線基板38の断面図である。
【図10】図10は、フォワード型スイッチング電源回路の一例である。
【図11】図11は、図10の伝送線路58上を進行する孤立電界波と、孤立電界波の尖頭部の包絡曲線の一例である。
【図12】図12は、図10の伝送線路54上を進行する孤立電界波と、孤立電界波の尖頭部の包絡曲線の一例である。
【図13】図13は、図10の伝送線路54上のA点の時間軸電位波形の一例である。
【図14】図14は、図10の伝送線路54上のB点の時間軸電位波形の一例である。
【図15】図15は、図10の伝送線路58上のC点の時間軸電位波形の一例である。
【図16】図16は、図10の伝送線路58上のD点の時間軸電位波形の一例である。
【図17】図17は、従来のパルストランスの断面構造の一例である。
【図18】図18は、試作した低インピーダンスを有する損失線路の構造の一例である。
【図19】図19は、試作した低インピーダンスを有する損失線路の透過 (S21) 特性の一例である。
【符号の説明】
【0167】
1
プッシュプル回路
2
PチャネルMOS FET
3
、55 NチャネルMOS FET
4
、51 直流電源
5
、6、54、58、70 伝送線路
7
整合終端抵抗
8
、10、41、42 孤立電界波
9
、11、45、46、47、48 伝送線路上の電位波形
12
、52、53、56、57、68、69 導体
13
、98 絶縁体
14
、99 半導体
15
、92 巻枠
16
、93 磁心
17
、94 巻線
18
、91 樹脂
19
、20、21、22、23、24、25、26、27、28、31、32、33、34、35、61、62、63、64、65、73、74、95 端子
29
樹脂基板
30
樹脂箱
31
損失線路
38
印刷配線基板
43
孤立電界波の尖頭部の包絡曲線
59
、66、67 ダイオード
60
損失パルストランス
77
、78、79、80、83、84 ビア
81
、82 バカ穴
85
、88 導体層
86
絶縁体層
87
半導体層
89
ストリップ導体
90
グランドプレーン
96
導体
97
弁金属
100導電性接着剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子によって駆動される、少なくとも1つの1次巻線と少なくとも1つの2次巻線とを有するパルストランスにおいて、該パルストランスが、該パルストランスの1次巻線に、スイッチング素子の立ち上がり波形の最大傾斜部の接線を立ち上がり波形と見なして求める立ち上がり時間と円周率との積の逆数として求められる周波数で定義される実効周波数の電磁波を印加したときに、前記パルストランスの内部で前記電磁波の振幅を1/10以下に減衰させる能力を有する損失パルストランスとして設計されて成ることを特徴とする、パルストランス
【請求項2】
請求項1記載の損失パルストランスにおいて、前記損失パルストランスを構成する巻線構造と外部接続端子とを接続する配線が、導体と、該導体表面に形成される絶縁体と、該絶縁体の表面に形成される半導体とで構成される損失線路、または、導体と、該導体表面に形成される前記半導体と、該半導体の表面に形成される絶縁体とで構成される損失線路であることを特徴とする、パルストランス
【請求項3】
請求項1から請求項2記載の損失パルストランスにおいて、前記損失パルストランスを構成する前記損失線路の長さが、10[mm]以上であることを特徴とする、パルストランス
【請求項4】
請求項1から請求項3記載の損失パルストランスにおいて、前記損失パルストランスを構成する前記損失線路の特性インピーダンスが、前記損失パルストランスを搭載する印刷配線基板の特性インピーダンスに±20%以内の精度で等しいことを特徴とするパルストランス
【請求項5】
請求項1から請求項4記載の損失パルストランスにおいて、前記損失パルストランスを構成する前記損失線路が、半導体膜で覆われた2本の導体を柔軟性のある絶縁体樹脂中に埋め込んで形成されることを特徴とするパルストランス
【請求項6】
請求項1から請求項5記載の損失パルストランスにおいて、前記損失パルストランスを構成する前記損失線路が、2層の導体層の間に絶縁層と半導体層を有する印刷配線基板上に形成されることを特徴とするパルストランス
【請求項7】
請求項1から請求項6記載の損失パルストランスにおいて、前記半導体が、無機半導体または有機半導体であって10[S/m]以上の導電率を有するように設計されて成ることを特徴とする、パルストランス
【請求項8】
請求項1から請求項7記載の損失パルストランスにおいて、前記半導体が、ポリ(p−フェニレン)(22.7°)、またはポリ(p−フェニレンスルフィド)、またはカーボングラファイト、または二酸化マンガン、またはポリアセチレン、またはポリチオフェン、またはポリピロール、またはポリフェニレンビニレン、またはテトラチアフルバレン−テトラキノジメタン(TTF−TCNQ)であることを特徴とする、パルストランス
【請求項9】
請求項1から請求項8記載の損失パルストランスにおいて、前記半導体が、1015[cm-3]以上のリンをドーピングしたn型シリコン、1016[cm-3]以上のボロンをドーピングしたp型シリコン、または、不純物を混合した、アモルファスシリコン、またはアルミナ、またはジルコニア、またはカーバイド、またはニトライド、またはシリサイド、またはシリコンカーバイド、またはシリコンナイトライド、またはマグネシウムナイトライド、または酸化亜鉛であることを特徴とする、パルストランス
【請求項10】
請求項1から請求項9記載の損失パルストランスにおいて、前記半導体が、請求項4から請求項6記載の半導体または最大長が100ナノメートル以下の前記半導体の粒子を混合した、樹脂であることを特徴とする、パルストランス


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−260088(P2009−260088A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108357(P2008−108357)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(706001123)株式会社アイキャスト (37)
【Fターム(参考)】