説明

パルス周波数信号を用いた計測方法及び装置

【課題】 複数個のパルス周期(時間)を計測して、その平均を取ることにより計測精度を高める方式において、小測定値を計測可能にする。
【解決手段】 本発明は、パルス周波数信号に変換された計測値信号を受信して、所定サンプリングパルス数の平均周期からパルス周波数を演算して、それをアナログ出力に変換し、また表示器に表示する。サンプリング上限時間判定部及び入力周波数演算部が備えられる。入力周波数演算部は、サンプリング上限時間At内に所定のサンプリング数Aを計測できた場合には、所定のサンプリング数Aの合計時間t[sec]を計測して、入力周波数測定結果=A/t[Hz]として求め、サンプリング上限時間At内に所定のサンプリング数Aを計測できなかった場合には、サンプリング上限時間内に計測されたサンプリング数Bを用いて、入力周波数測定結果=B/At[Hz]として求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス周波数信号に変換された計測値信号を受信して、所定サンプリングパルス数の平均周期からパルス周波数を演算して、それをアナログ出力に変換し、また表示器に表示するパルス周波数信号を用いた計測方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、流量計に適用した従来の一般的計測装置を例示する図であり、(A)はその概略構成を、また、(B)は伝送されるパルス周波数信号を例示している。図示の一般的計測装置は、通常、センサ及びセンサ検出信号整形部と、このセンサ検出信号整形部で演算された計測値信号を受信して、それをアナログ出力に変換したり、表示器に表示する流量計測部とから構成される。センサ検出信号整形部は波形整形フィルタやマイクロプロセッサ(CPU)を有して、センサで検知した電圧或いは電流信号などに基づき流量値を演算し、一定時間あたりのパルス数(パルス周波数)に変換したパルス周波数信号として出力する。パルス周波数信号を受信した流量計測部は、マイクロプロセッサ(CPU)を有して、パルスの単位時間当たりのパルス数をカウントすることにより、パルス周波数を演算して瞬時流量値を得ることができ、また、パルス数を積算することにより、流量の総量を得ることができる。
【0003】
流量計測部におけるパルスの時間計測は、通常、マイクロプロセッサの(タイマー)割り込みを利用して行われる(特許文献1参照)。これによって、図4(B)に示すように、時間計測結果は、それぞれ最小分解能をクロック周期として、その整数倍となる。このように、パルス信号の個々の周期の計測精度は、最小分解能によって決まることになる。従って、計測分解能が一定の場合、計測対象となる時間が長いほど、計測精度が高くなる。
【0004】
現実的には、CPUに入力されるパルス周波数にバラツキがある場合などを考慮し、複数個のパルス周期(時間)を計測して、その平均を取ることにより、バラツキを緩和しかつ計測精度を高めることが、従来より行われている。
【0005】
このような従来技術における問題点を、図5を参照して、例えば、サンプリング数(パルス周期数)を4パルスとした場合を例として説明する。図5(A)は、パルス周波数信号を例示し、(B)は従来技術による計測結果を示すグラフである。流量計測部において、サンプリングパルス数を増やして平均を取るべき周期数を増すほど、計測精度を高めることが可能になる一方、小流量値の計測には長時間を要することになるため実際上は困難となる。
【0006】
サンプリング数A(例示の場合、4パルス)の合計時間として、t[sec]が周期測定値として計測されたとする。この場合、入力周波数測定結果=A/t[Hz]となる。しかし、流量値が低下するにつれて、サンプリング数Aの合計時間が大きくなるが、実際には、無限に時間計測はできないので、従来技術においては、ある所定時間(サンプリング上限時間)を過ぎても、A個のパルスが入力されなかった場合は計測を中止し、入力周波数測定結果=0[Hz]としていた。例えば、サンプリング上限時間At=5[sec]、サンプリング数A=4とした場合、1/(At/A)=1/(5/4)=0.8[Hz]未満の入力は、図5(B)における実線に示すように「瞬時流量=0」と判定されていた。図5(B)における点線は、本来計測されるべき実際の瞬時流量を示している。なお、サンプリング数Aを小さくすることにより、最小計測周波数を延ばすことができるが、しかし、この場合、計測精度が低下することになる。
【0007】
上述の従来技術システムは、通常はマイクロプロセッサのソフトウエアにより実現されるが、このようなシステムは、さらに従前のF/I(又はF/V)変換方式に代えて用いられることがある。このF/I(又はF/V)変換方式は、ハードウエア構成によりパルス周波数信号をアナログ的に電流信号或いは電圧信号に変換する方式であり、0流量からほぼリニアに出力することができていた。それ故、上述のシステムをF/I変換方式に代えて用いて、計測結果をアナログ出力として出力するような場合には、小流量領域での互換性が乏しいという問題もあった。例えば、0流量になるとバルブを停止するような制御が行われていたところで用いられる場合、上述のシステムは実際には小流量が流れていても、「瞬時流量=0」と判定するので、この結果、小流量が流れているにもかかわらずバルブが閉じられることになる。これは、明らかに不都合である。
【特許文献1】特開2004−93467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、計測部において、複数個のパルス周期(時間)を計測して、その平均を取ることにより計測精度を高める方式において、小測定値を計測できないという上述の問題点を解決して、小測定値を計測可能にすることを目的としている。
【0009】
これによって、本発明は、測定値0からほぼリニアに出力する従来のF/I変換方式に互換可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のパルス周波数信号を用いた計測方法及び装置は、センサが検出した信号に相当するパルス周波数信号を受信して、所定サンプリングパルス数の平均周期からパルス周波数を演算して、それをアナログ出力に変換し、また表示器に表示する。サンプリング上限時間判定部及び入力周波数演算部が備えられる。入力周波数演算部は、サンプリング上限時間At内に所定のサンプリング数Aを計測できた場合には、所定のサンプリング数Aの合計時間t[sec]を計測して、入力周波数測定結果=A/t[Hz]として求め、サンプリング上限時間At内に所定のサンプリング数Aを計測できなかった場合には、サンプリング上限時間内に計測されたサンプリング数Bを用いて、入力周波数測定結果=B/At[Hz]として求める。
【0011】
また、サンプリング上限時間At内に所定のサンプリング数Aを計測できなかった場合には、サンプリング数Bを計測するために実際に要した時間t1を用いて、入力周波数測定結果=B/t1[Hz]として求めることもできる。
【0012】
本発明は、計測精度を上げるために、「ある一定時間内に何個かのパルスをサンプリングする」ような計測方法において、設定した数のパルス数がサンプリングできなかった場合は、それまでに計測できたパルス数から瞬時流量を求めることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、保証流量範囲内では、当然、保証精度で計測するとして、保証最小流量を下回ったら「0流量」になるのではなく、精度は悪くなるが、計測は継続できる。これによって、計測結果をアナログ出力として出力する場合、従来のハードウエアによるF/I変換出力方式に近い動作となり、該方式に置換可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、例示に基づき本発明を説明する。図1は、本発明を具体化する計測装置を流量計測に適用した場合を例示する図である。図示の計測装置は、センサ及びセンサ検出信号整形部と、このセンサ検出信号整形部で演算された計測値信号を受信して、それをアナログ出力に変換したり、表示器に表示する流量計測部とから構成される。センサ検出信号整形部は、図4を参照して説明した従来技術による構成と同じにすることができる。センサ検出信号整形部は、波形整形フィルタやマイクロプロセッサ(CPU)等を有して、センサで検知した電圧或いは電流信号などに基づき、流量値を一定時間あたりのパルス数(パルス周波数)に変換したパルス信号として出力される。
【0015】
パルス信号を受信した下流側の流量計測部は、また、マイクロプロセッサ(CPU)を有して、パルスの単位時間当たりのパルス数をカウントすることにより、瞬時流量値を得ることができ、また、パルス数を積算することにより、流量の総量を得ることができる。
【0016】
このとき、例示の流量計測部は、サンプリング上限時間判定部を備えて、この上限時間内である限り、入力周波数演算部では、従来技術と同様に、設定された所定のサンプリング数Aの合計時間として、t[sec]が周期測定値として計測された場合、入力周波数測定結果=A/t[Hz]とする。しかし、上限時間At内に所定のサンプリング数Aを計測できなかった場合には、上限時間内に計測されたサンプリング数Bを用いて、入力周波数測定結果=B/At[Hz]とする。なお、より正確な値を求める必要がある場合には、サンプリング数Bを計測するために実際に要した時間t1を用いて、入力周波数測定結果=B/t1[Hz]とすることができる。
【0017】
さらに、図3に示すフローチャートを用いて、流量計測部の動作を詳細に説明する。ステップS1で、平均を求めるべきサンプリング数A、及びサンプリング上限時間Atを設定する。ステップS2では、入力パルスの立ち上がりを検出する毎に、基準となるリセット時パルスから数えたサンプリング数a、及び基準パルスの立ち上がりからの合計時間t[sec]を測定する(前述の図5(A)参照)。ステップS3では、測定したサンプリング数aを、設定されているサンプリング数Aと比較する。aがAよりも小さくない場合、即ち、aがAに等しくなると、比較の結果はNoとなり、ステップS4に進んで、入力周波数測定結果=A/t[Hz]とする。そして、ステップS8に進む。
【0018】
比較の結果Yesとなって、測定数aが設定数Aに達していない場合、ステップS5に進んで、測定した合計時間tが、設定した上限時間At以下であるか否かが判断される。上限時間At以下の場合、判断はYesとなってステップS2に進み、次の入力パルスについて、サンプリング数a及び合計時間tを同様に測定する。測定した合計時間tが、設定した上限時間Atに達するか、それを超えると、判断はNoとなってステップS6に進む。ここで、上限時間At内に測定されたパルス数Bを入力する。そして、ステップS7で、入力周波数測定結果=B/At[Hz]として、ステップS8に進み、この周期の測定をリセットし、次の周期の測定をステップS2から開始する。
【0019】
このような動作を、図2を参照して、例えば、サンプリング上限時間At=5[sec]、サンプリング数A=4とした場合を例として説明する。図2における点線は、本来計測されるべき実際の瞬時流量を示しており、また、実線は、瞬時流量計測結果を示している。この場合、1/(At/A)=1/(5/4)=0.8[Hz]以上については、従来と同様に測定される。これ未満の入力は、従来は、「瞬時流量=0」と判断されていたものであるが、本発明においては、図2における実線に示すように、点線で示す実際の瞬時流量を近似する階段状に表される。上述の例では、サンプリング上限時間At=5[sec]以内に、4個ではなく、3個のサンプリング数Aを検出できたとする。この場合、1/(At/A)=1/(5/3)=0.6[Hz]と判断する。同様に、パルス周波数の低下につれて、サンプリング上限時間At内で、2個のパルスの検出状態を経て、1個のパルスしか検出できない状態に至る。この状態では、1/(5/1)=0.2[Hz]と判断される。これ未満のパルス周波数は0と判断されるものの、本発明においては、サンプリング上限時間At内の1個のパルスに相当する周波数までの小流量を、若干の誤差は生じるものの測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を具体化する計測装置を例示する図である。
【図2】流量計測部の動作を、サンプリング上限時間At=5[sec]、サンプリング数A=4とした場合を例として説明する図である。
【図3】流量計測部の動作を説明するフローチャートである。
【図4】流量計に適用した従来の一般的計測装置を例示する図であり、(A)はその概略構成を、(B)は伝送されるパルス周波数信号を例示している。
【図5】従来技術における問題点を、サンプリング数(パルス周期数)を4パルスとした場合を例として説明する図であり、(A)はパルス周波数信号を、(B)は従来技術による計測結果を例示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス信号に変換された計測値信号を受信して、所定サンプリングパルス数の平均周期からパルス周波数を演算して、それをアナログ出力に変換し、また表示器に表示する計測方法において、
サンプリング上限時間At内に所定のサンプリング数Aを計測できた場合には、所定のサンプリング数Aの合計時間t[sec]を計測して、入力周波数測定結果=A/t[Hz]として求め、
サンプリング上限時間At内に所定のサンプリング数Aを計測できなかった場合には、サンプリング上限時間内に計測されたサンプリング数Bを用いて、入力周波数測定結果=B/At[Hz]として求める
ことからなるパルス周波数信号を用いた計測方法。
【請求項2】
サンプリング上限時間At内に所定のサンプリング数Aを計測できなかった場合には、サンプリング数Bを計測するために実際に要した時間t1を用いて、入力周波数測定結果=B/t1[Hz]として求める請求項1に記載のパルス周波数信号を用いた計測方法。
【請求項3】
パルス信号に変換された計測値信号を受信して、所定サンプリングパルス数の平均周期からパルス周波数を演算して、それをアナログ出力に変換し、また表示器に表示する計測装置において、
サンプリング上限時間判定部及び入力周波数演算部を備え、
前記入力周波数演算部は、サンプリング上限時間At内に所定のサンプリング数Aを計測できた場合には、所定のサンプリング数Aの合計時間t[sec]を計測して、入力周波数測定結果=A/t[Hz]として求め、
サンプリング上限時間At内に所定のサンプリング数Aを計測できなかった場合には、サンプリング上限時間内に計測されたサンプリング数Bを用いて、入力周波数測定結果=B/At[Hz]として求める
ことからなるパルス周波数信号を用いた計測装置。
【請求項4】
サンプリング上限時間At内に所定のサンプリング数Aを計測できなかった場合には、サンプリング数Bを計測するために実際に要した時間t1を用いて、入力周波数測定結果=B/t1[Hz]として求める請求項3に記載のパルス周波数信号を用いた計測装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−3242(P2006−3242A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180519(P2004−180519)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)
【Fターム(参考)】