説明

パルス波形測定を行うための装置及び方法

受信機は、規定された時間期間にわたって受信信号の平均チップ形状のイメージを形成する前置相関フィルタを備える。フィルタは、広帯域スペクトラムチップに沿った位置の特定の範囲またはコードチップ位相角から信号サンプルに関連する測定値を累積する複素累積レジスタのアレイを備える。累積された測定値を使用して、受信機は、直接路信号成分中のチップ遷移の位置を推定する。その後、受信機は、範囲の開始点、サイズ及び数を変更し、これにより、累積レジスタが、チップエッジからより多くの詳細を累積するようにすることができる。さらに、受信機は、累積された測定値を基準パルス波形と比較して、受信信号から計算された測距情報を歪ませることになるなんらかの干渉が受信した送信物中に存在するかどうかを判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
「関連出願への相互参照」
本出願は、Patrick C. Fentonによって2003年4月15日に出願された「PULSE-SHAPE MEASUREMENT FOR MULTIPATH-MITIGATION TECHNOLOGY」と題する米国仮特許出願第60/462,973の利益を主張するものである。尚、当該仮特許出願は参照により本明細書に組み込むものとする。
【0002】
「発明の分野」
本発明は、一般的には、同報型広帯域スペクトラム信号のパルス波形を測定するためのシステムに関連し、特に、パルス波形測定に基づいて少なくとも直接路信号(直達信号)を推定することによってマルチパス低減をもたらすシステムに関する。
【0003】
「背景情報」
同報型広帯域スペクトラム信号を利用するシステムの1例として、GPS, GLONASまたはAltBOCシステムなどの全地球測位システムがある。このシステムの受信機は、関連する衛星から受信した信号に基づいて地球上の位置(グローバルな位置)を決定する。同報型広帯域スペクトラム信号は、外見上、周期的に繰り返す1と0のランダムシーケンスから構成される2値のPRNコードなどのような、少なくとも1つの擬似ランダムコードによって変調されたキャリアからなる。PRNコード中の1及び0は「コードチップ」と呼ばれ、「コードチップ時間」に生じる1から0または0から1へのコード中の遷移は、「ビット遷移」と呼ばれる。衛星の各々は固有のPRNコードを使用し、したがって、受信機は、どのPRNコードが受信信号に含まれているかを決定することによって、受信信号を特定の衛星に関連付けることができる。
【0004】
受信機は、衛星がそれの信号を送信した時刻と受信機がその信号を受信した時刻との差を計算する。受信機は、次に、その関連する時間差に基づいて衛星からの距離、すなわち、「擬似距離(pseudorange)」を計算する。少なくとも4つの衛星からの擬似距離を使用して、受信機は、それのグローバルな位置を決定する。
【0005】
時間差を決定するために、受信機は、局所的に発生させたPRNコード(局所生成PRNコード)と受信信号内のPRNコードとを同期させるが、これは、各局所コード内のコードチップを対応する衛星が生成した固有のPRNコード内のチップと整列させることによりなされる。受信機は次に、局所生成PRNコードが、送信時の衛星PRNコードの既知のタイミングから時間的にどの程度ずれているかを判定し、測定された時間ずれに光速を乗じることによって関連する擬似距離を計算する。受信機が、局所生成PRNコードを受信信号内のPRNコードとより精密に整列させると、受信機は、関連する時間差と擬似距離、したがって、それのグローバルな位置をより正確に決定することができる。
【0006】
コード同期化処理には、衛星PRNコードの取得とそのコードの追跡が含まれる。PRNコードを取得するために、一般的に受信機は、コードチップによって時間的に分離された一連の相関測定を行って、局所生成コードがいつ1コードチップの範囲内で受信コードに整列したかを判定する。その後、PRNコードを追跡するために、一般に受信機は、受信したPRNコードと、局所生成PRNコードの早期バージョンと遅れバージョンに関連する相関測定を行う。こうして、受信機は、局所PRNコードと受信したPRNコードとの間の不整列に比例する関連する誤差信号を生成する。この誤差信号は、次に、誤差信号を本質的に最小化するように局所PRNコードをシフトさせるPRNコード発生器を制御するために使用される。
【0007】
受信機は、また、典型的には、局所PRNコードの時間通りのバージョン(すなわち、タイミングにずれがないバージョン)と関連した相関測定を使用して衛星キャリアと局所キャリアを整列させる。これを行うために、受信機は、キャリア追跡位相ロックループを使用する。
【0008】
受信機は、見通し経路、すなわち、直接路からの衛星信号だけでなく、異なる経路を伝送する信号であって、地面や、水面、近くの建造物などから受信機へと反射された複数の信号も受信する。マルチパス信号は、直接路信号(すなわち、直接路を介する信号)の後に受信機に到達し、直接路信号と結合して、歪んだ受信信号を生成する。この受信信号の歪みは、コード同期化処理に悪影響を与える。なぜなら、局所PRNコードと受信信号の相関を測定する相関測定は、マルチパス成分を含む全受信信号に基づいているからである。この歪みとは、受信機が、直接路信号ではなくマルチパス信号に同期化しようとするようなものでありうる。このことは、コードビット遷移が直接路信号において生じる時間に近接して生じるコードビット遷移を有するマルチパス信号の場合に特に当てはまる。
【0009】
受信したPRNコードと局所生成PRNコードとをより正確に同期化する1つの手段は、米国特許第5,101,416、5,390,207及び5,495,499に記載されている「narrow correlators(狭域相関器)」を使用することである。早期相関測定と遅れ相関測定との間の遅延間隔を狭くすることにより、早期測定−遅れ測定に対するノイズ及びマルチパス信号歪みの悪影響が大きく低減されることがわかっている。早期相関測定と遅れ相関測定にノイズが相互に関連するように遅延間隔は狭くされる。また、狭域相関器は、基本的に、多くのマルチパス信号の寄与物よりも、時間通りの(すなわち、タイミングにずれがない)PRNコードの相関測定に関連する相関ピークの近くに間隔をおいて配置される。したがって、これらの相関器によってなされる早期相関測定−遅れ相関測定は、それらがピークのまわりにより大きな間隔を有するときになされたであろうものよりも歪みが大幅に低減されたものとなる。
【0010】
受信したPRNコードと局所生成PRNコードをより正確に同期化させる他の手段は、直接路信号と1つ以上のマルチパス信号の推定値を繰り返し生成するマルチパス低減処理技法を使用することである。そのような1つの技法は、米国特許第5,615,232及び6,692,008に記載されている。複数の相関器を使用する他の技法は、米国特許第5,414,729に記載されている。さらに他のマルチパス低減技法は、Weillによる「Multipath Mitigation Using Modernized GPS Signals: How Good Can It Get,」(ION GPS 2002, Portland, OR, September 24-27, 2002)に記載されている。
【0011】
マルチパス低減処理技法は、個別のコード−位相オフセットにおいて取得された受信信号のサンプルに対応するパルス波形情報の操作に基づいている。サンプルは、サンプルクロックに同期して取得され、所定数のサンプルがコードチップ毎に取得される。
【0012】
パルス中の各信号は3つのパラメータ[τ,A,θ]によって表される。ここで、τは時間オフセットまたはコード遅延を表し、Aは振幅を表し、θは位相角を表す。直接路信号[τ,A,θ]、2つのマルチパス信号[τmp1,Amp1,θmp1]と[τmp2,Amp2,θmp2]を抽出する操作の基本形式は、
【0013】
【数1】

【0014】
である。ここで、I,Q値は、予期された擬似ランダムノイズ(「PRN」)チップの部分的な長さに沿った個別のコード−位相オフセットにおいて測定されたパルス−振幅サンプルである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
受信した広帯域スペクトラム信号の個別のサンプルポイントからの入力データは、直接路信号とマルチパス信号を含む複合信号からのサンプルである。マルチパス低減処理の正確さは、入力広帯域スペクトラム信号のサンプルを劣化させる熱雑音レベルに逆比例する。信号の個々のサンプルは、ノイズが多すぎるために許容できる結果を提供しない。そこで、入力信号をある量だけフィルタリングすることが、マルチパス低減技法を使用して正確なマルチパス検出を提供するために必要とされている。
【0016】
マルチパス干渉は通常は広帯域スペクトラムチップレートの周波数に対してゆっくりと変化している。比較的長い時間期間(数秒間)にわたって、マルチパス干渉は入力信号の全てのチップに同じように影響する。信号を圧する熱雑音は、入力信号の各チップに対して急速に変化し、そのため、簡単にフィルタリングすることができる。
【特許文献1】米国特許第5,101,416明細書
【特許文献2】米国特許第5,390,207号明細書
【特許文献3】米国特許第5,495,499号明細書
【特許文献4】米国特許第5,615,232号明細書
【特許文献5】米国特許第6,692,008号明細書
【特許文献6】米国特許第5,414,729号明細書
【非特許文献1】Weillによる「Multipath Mitigation Using Modernized GPS Signals: How Good Can It Get,」(ION GPS 2002, Portland, OR, September 24-27, 2002)
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、前置相関フィルタと、このフィルタを利用して指定された時間期間にわたる受信信号の平均チップ形状(波形)の画像(イメージ)を形成する受信機である。画像は、単一のチップの長さに沿った複素電力測定値の時系列として表される。平均化処理は、複合信号(直接路信号+マルチパス信号)の細部を維持する一方で、平均化処理の長さに比例するある量だけ信号ノイズのレベルを低減する。
【0018】
受信機は、受信機チャンネル内に、複素累積レジスタのアレイ(または、複数の複素累積レジスタ)を備える。各複素レジスタは同相累積レジスタと直交(または直角位相)累積レジスタからなり、これらの累積レジスタの各々を別個のものとすることができ、選択的にイネーブルにすることができる。それぞれの複素累積レジスタは、応対域スペクトラムチップに沿った位置またはコード位相角の特定の範囲から取得された信号サンプルに関連する測定値を累積する。
【0019】
チップの長さは、複数の「範囲」、すなわち、チップの複数の部分に分割される。範囲はチップ全体のサイズと同じとすることができる(但し、これは必須ではない)が、好ましくは、範囲は、チップの立ち上がりエッジの近くでより小さい。範囲は、それぞれの複素累積レジスタに関連付けられる。サンプルが取得されると、対応する測定値が、そのサンプルに対して推定されたコード位相角を含む範囲に関連した適切な同相及び直交累積レジスタに追加される。さらに詳細に後述するように、複素累積レジスタは、コードレートと非同期であるサンプリング時刻に測定値を収集することによって、前置相関フィルタとして機能する。このようにして、システムは、フィルタリング処理に、関連する相関エラーが含まれるのを回避する。
【0020】
システムは、多くのチップに対する測定値を累積する。累積は本質的に低域通過フィルタと同じ効果を有し、したがって、広帯域幅のノイズが抑圧される。少なくとも直接路信号の平均チップ形状を提供する累積された測定値は、マルチパス低減処理技法によって、マルチパス干渉に起因するコード追跡ループの誤差を計算するために使用される。次に、計算されたマルチパス誤差を使用してコード追跡ループを補正し、これによって、より正確な擬似範囲測定値を提供する。マルチパス低減処理を使用して、マルチパス干渉に起因するキャリア追跡ループの誤差を計算することもでき、この場合、計算された誤差は、キャリア追跡ループを補正して、さらに高い正確さを提供するために使用される。
【0021】
また、後述するように、範囲の数、サイズ及び開始点を、マルチパス低減処理が直接路信号におけるチップ遷移の位置を推定する際に調整することができる。チップのエッジ(チップエッジ)を含む範囲を狭くし、チップの中央部を含む範囲を広くすることができる。この代わりに、または、これに加えて、範囲の数を少なくすることができる。
【0022】
パルス波形測定値(パルス形状測定値)を1つまたは複数の基準チップ遷移波形(基準チップ遷移形状)と比較して、受信信号が、範囲の歪みを生じさせうる干渉を含むか否かを決定することもできる。受信機は、この場合、適宜、影響を受けた信号を無視するか、または、干渉を補正することができる。
【0023】
本発明の説明は添付の図面を参照して行われる。
【実施例】
【0024】
「例示的な実施形態の詳細な説明」
図1を参照すると、受信機10は、アンテナ11を介して、直接路信号及び関連するマルチパス信号を含む複合信号を受信する。ダウンコンバータ12とサンプラー14は従来方式で動作して、受信した複合信号をダウンコンバートし、例示的な実施形態では、ダウンコンバートされた信号の一連のサンプルを取得する。一連のサンプルはそれぞれのチャンネル16(図2)に提供される。
【0025】
ここで、図2を参照すると、所与のチャンネル16は、サンプルとキャリア位相の推定値を混合することによってサンプルからキャリアを除去するミクサー25を備える。こうして、既知のやり方で、一連のサンプルの各々を、推定されたキャリア位相のサイン(正弦)変換及びコサイン(余弦)変換の両方と混合して、対応する複素I及びQサンプル対を生成する。キャリア位相の推定値は、位相発生器22によって生成されるが、これは、キャリア位相ロックループ(「PLL」)60(図3)によって生成されるキャリア追跡誤差信号により既知のやり方で制御される。図3を参照してより詳細に後述するように、PLLは、最初に操作されてマルチパスの悪影響が除去されるキャリア位相誤差信号によって制御される。
【0026】
チャンネル16はさらに、広帯域スペクトラムコード発生器24を備えるが、これは、既知の方式で動作して、受信信号内のコードの1つに対応する局所的に生成された広帯域スペクトラムコード(局所生成広帯域スペクトラムコード)を生成する。GPSシステムの例では、コード発生器24は、視野内の衛星の1つによって送信されるコードと同じ局所生成PRNコードを生成する。コード発生器24はさらに局所生成広帯域スペクトラムコードの位相遅延バージョンを生成する。このバージョンは、例えば、1/2チップだけ早い(Early)バージョン、時間通りの(Punctual)バージョン、及び、1/2チップだけ遅い(Late)バージョンとすることができる。I及びQサンプルにコードの早いバージョン、時間通りのバージョン、及び遅いバージョンを乗算器26で乗じて、対応する、早期測定信号、時間通り測定信号、及び遅れ測定信号を生成する。測定信号は、アーリー(Early:早期)複素アキュムレータ、パンクチュアル(Punctual:時間通りの)複素アキュムレータ、及びレイト(Late:遅れ)複素アキュムレータ28において累積される。複素アキュムレータの動作については、図5を参照してより詳細に後述する。
【0027】
コード数値制御式発振器(「CNCO」)42はコード発生器24を駆動して、局所コードを受信コードに整列させる。CNCOは、次に、コード追跡誤差信号によって駆動される。この誤差信号は、コード追跡遅延ロック信号(「DLL」)62(図3)によって生成されるDLL誤差信号に基づいている。図3を参照してより詳細に後述するように、DLLは、マルチパスの悪影響を除去するように先ず操作されるコード誤差信号によって制御される。CNCO42については、図4を参照してより詳細に後述する。
【0028】
ライン27における早期測定値(早期測定の測定値)もまた複素累積レジスタ32のアレイ30に提供される。より詳細に後述するように、コード位相デコーダ40は、所与の早期測定値が適切な累積レジスタ32によって累積されるように、累積レジスタを選択的にイネーブルにする。それぞれのレジスタからの累積された測定値は、適切な時刻に、以後「MMT」プロセッサ(図3)と呼ぶマルチパス低減プロセッサ50に提供される。より詳細に後述するように、マルチパス低減プロセッサは、既知のマルチパス低減技法(「MMT」)にしたがって測定値を処理して、累積されたパルス波形測定値32のアレイ(または、複数の累積されたパルス波形測定値32)から、直接路信号のチップエッジの位置の少なくとも1つの推定値を決定する。マルチパス低減プロセッサ50はさらに、ライン57及び59上のキャリア追跡誤差信号とコード追跡マルチパス誤差信号をそれぞれ生成する。これらの信号は、加算器56及び58によって、キャリア及びコード追跡処理からマルチパスの悪影響を除去するために使用される。
【0029】
図3を再度参照すると、位相誤差発生器52は、パンクチュアルアキュムレータ28Pによって累積された値を逆正接類似の関数を使用して従来のやり方で位相誤差信号に変換する。加算器56は、MMTプロセッサ50によって生成されたマルチパス位相補正信号を位相誤差信号に加えることによって位相誤差信号を補正する。次に、補正されたマルチパス位相誤差信号は、PLL60によって使用されて、位相発生器22を制御する位相追跡誤差信号が生成される。
【0030】
コード誤差発生器54は、従来のやり方で、アーリーアキュムレータ28E、パンクチュアルアキュムレータ28P及びレイトアキュムレータ28Lからの早期値、時間通り値、及び遅れ値を使用して、下記公式を使用してコード誤差を推定する。
【0031】
【数2】

【0032】
加算器58は、コード誤差発生器54によって生成されたコード誤差信号に、MMTプロセッサ50によって生成されたマルチパスコード位相補正信号を加えることによって、そのコード誤差信号を補正する。補正されたマルチパスコード誤差信号は、次に、DLL62によって、関連するDLL誤差信号を生成するために使用される。加算器64は、DLL誤差信号をPLL60によって生成されたキャリア追跡誤差信号と結合して、ドップラー効果における変化を補正する。その結果は、CNCO42に供給されるコード追跡誤差信号である。
【0033】
ここで、図4を参照すると、CNCO42はチップエッジクロック信号を生成する。この信号は、コード発生器24によって生成された局所発生の時間通りのPRNコードの位相を、受信コードの位相に整列させるために使用される。CNCOはまたそれぞれのI及Qサンプルの推定されたコード位相を表すために使用される精細なコードチップ位相詳細信号を生成する。CNCOは、コード位相レジスタ44を制御するコードレートレジスタ48を備える。コードレートレジスタは、加算器46において、コード位相レジスタフィードバックと結合されるコードレート誤差信号を生成する。この結果、適切な時刻にコード発生器制御信号を生成するようレジスタが駆動される。コードレートレジスタによって提供される補正は、コード追跡誤差信号に基づいている。
【0034】
任意の所与の時刻におけるコード位相レジスタは、推定されたコード位相、すなわち、推定された位相角に対応するカウント値を含む。カウント値が新しいチップの開始に対応するときは、コード位相レジスタはコード発生器24に信号を提供し、コード発生器24は、次に、局所的に生成されたコードの次のチップを生成する。コード位相レジスタによって生成された信号は、局所コードの早期バージョンにおけるチップ時間と同期している。すべてのサンプルクロック時刻において、コード位相レジスタはまた、位相角の値を、複素累積レジスタ32を制御するコード位相デコーダ40に提供する。
【0035】
コード位相デコーダ40の動作についてより詳しく説明する前に、図5を参照して、累積レジスタ32に関連するコードチップ範囲について説明する。図に示されているように、コードチップ70は複数のコードチップ範囲72にセグメント化されており、コードチップ範囲の各々はコードチップの1部分である。時刻tで取得されたサンプルsは、チップの中央部分をカバーする範囲に含まれるある位相角を有する。図示のように、チップの立ち上がりエッジの近くの範囲を、チップの中央部近くの範囲より小さくして、より多くの測定の詳細をMMTプロセッサ50に提供することができる。
【0036】
図4を再度参照すると、サンプルクロック(不図示)の各パルスにおいて、コード位相レジスタ44は、コード位相デコーダ40に、根底にあるコードチップに関して対応するサンプルの推定された位置または位相角に対応する位相値を提供する。したがって、サンプリング時刻t1(図5)において、コード位相レジスタはコード位相デコーダに、サンプルのチップ中央位置に対応する位相角の値を提供する。nビットデコーダ82は、位相角の値を複数のANDゲート80を駆動する信号にデコード(復号化)する。ANDゲート80は、サンプルの推定された位相角を含むチップ中央範囲に対応する複素累積レジスタ32を除いて全てを選択的にディスエーブルにする信号を生成する。イネーブルにされた複素累積レジスタ32は、次に、サンプルに対応する早期測定値を累積する。
【0037】
図6に示すように、複素累積レジスタ32は、同相レジスタ32I及び直角位相レジスタ32Qを備える。I及びQサンプルは、好ましくは、受信機によって個別に処理される。なぜなら、サンプルを異なる範囲と関連付けることができるからである。したがって、コード位相デコーダによって生成された信号は、複素レジスタ対の1つだけを選択的にイネーブルにし、これにより、測定値が、適切な複素累積レジスタ32によって収集されるようにする。
【0038】
コード発生器24はまた、ライン41上にエッジ検出信号を生成する。この信号は、コード位相デコーダ40のANDゲート80によって、複素累積レジスタ32のアレイ30に対してイネーブル信号をアサートするために使用される。局所的に生成されたコードにおけるチップ極性の変化に続いて、エッジ検出信号は、イネーブルにされ、チップ全体に対してイネーブルにされた状態を維持する。エッジ検出信号はチップレベルに変化がないときにはチップの開始時にはイネーブルにされない。なぜなら、MMTプロセッサ50に最も有用な情報は、チップエッジ遷移中に生成されるからである。代わりに、対応する測定値を、エッジ検出信号がイネーブルにされていないときに選択的にイネーブルにされる累積レジスタにおいて累積することができる。ごくわずかな位相変調しか含まないこれらの測定値は、適切な時刻にMMTプロセッサ50に提供される。
【0039】
早期測定値、すなわち、ダウンコンバートされた複素信号と局所コードの早期バージョンを乗算した結果は、本明細書に記載の実施形態において、複素累積レジスタ32用に使用される。しかしながら、エッジ検出信号が選択された測定値と同期化される限り、代わりに、早期、時間通り、または遅れ測定の測定値のうちの任意ものを使用することができる。
【0040】
動作時、衛星信号は通常のやり方でチャンネル16によって取得される。受信機が定常状態の位相ロックループにおいて追跡した後、複素累積レジスタ32の内容がMMTプロセッサ50に提供される。MMTプロセッサ50はその信号を処理してマルチパス干渉が存在するかどうかを決定する。マルチパス干渉を含む1組の信号測定値の例示的な組を図7に示す。この例では、マルチパス信号の影響を直接路信号(直達信号)のチップエッジから容易に区別できることがわかる。大きさが等しくされたレンジに基づく測定値32は、MMTプロセッサに受信信号伝送チップ波形の非常に正確な表現を提供する。これらの測定値を使用して、MMTプロセッサは、既知のMMTにしたがって動作して、コード及びキャリア追跡処理からマルチパス干渉の悪影響を除去するコード及びキャリアマルチパス誤差信号を生成する。MMTプロセッサ50は、直接路のチップエッジの正確な表現を用いて、コード及びキャリアオフセットの点で、より正確なマルチパスコード及びキャリア誤差信号を生成する。これは、直接路信号コード及びキャリアのより正確な追跡を直接的にもたらし、最終的には、より正確な擬似範囲をもたらす。
【0041】
試験の後、チップを4〜8の範囲に都合良く分割できることが決定される。但し、上記の例におけるようにより多くのチップを使用することもできる。4つの累積レジスタが測定値を提供し、これらの測定値から、MMTプロセッサ50は、直接路信号における少なくともチップエッジを正確に駆動することができる。追加のレジスタからの測定値を使用して、MMTプロセッサは、また、1以上のマルチパス信号のチップエッジを正確に駆動することができる。4つの累積レジスタが使用される場合は、第1の累積レジスタは、チップの立ち上がりエッジの前に取得されたサンプルからの測定値を累積するように配置され、第2の累積レジスタは、チップの立ち上がりエッジの開始部からエッジに沿った中間ポイントまでに取得されたサンプルからの測定値を累積するように配置され、第3の累積レジスタは、チップの中間ポイントから立ち上がりエッジの先端部までに取得された測定値を累積するように配置され、第4の累積レジスタは、立ち上がりエッジの先端部から第1の累積レジスタに関連する範囲の開始部までの測定値を取得するように配置される。1例として、第4の累積レジスタは、チップに沿って立ち下がりエッジまでに取得されたサンプルに関連する測定値を収集することができる。結局、MMTプロセッサ50に十分な情報を提供するように選択された立ち上がりチップエッジをカバーする範囲について境界を有する3つの累積レジスタを使用することができる。
【0042】
受信機は、複素累積レジスタ32において前置相関測定値(事前相関測定値)を収集する。これらの測定値は、システムが、推定されたコードチップ境界に対して事前に決定された時間においてサンプルを取得するためにサンプルクロックを駆動しないという意味において前置相関である。したがって、システムは、関連する相関誤差を測定値中に組み込まない。
【0043】
MMTプロセッサ50が直接路信号内のチップエッジの位置を推定すると、MMTプロセッサ50は、例えば、チップエッジの推定された位置を含む範囲の開始点をシフトさせ、及び/またはその範囲を狭くし、さらに、適宜、他の範囲を広くすることによって、それらの範囲を調整することができる。代替的に、または、これに加えて、MMTプロセッサは範囲の数を減じて、チップ中央部の位置に関連する測定値がより少ない範囲に含まれるようにすることなどができる。これを行うために、MMTプロセッサは、nビットデコーダの動作を制御して、デコーダが、適切なレジスタをイネーブルにする信号を生成するようにする。例えば、チップエッジに関連する範囲がシフトされるか狭くされると、MMTプロセッサ50は、ライン51上に、デコーダがそれぞれの累積レジスタ32をイネーブルにするために生成する信号に関連するコード位相オフセット値の変化を伝達する。MMTプロセッサ50は、それぞれのアキュムレータに関連するコードオフセット値を適切に変化させることにより範囲の長さ、数及び/または開始位置を変更することができる。
【0044】
MMTプロセッサはまた、測定されたパルス波形と基準チップ遷移波形を比較して、受信した送信物が計算された範囲を歪ませうる他の干渉を含むかどうかを決定することができる。これは、航空機着陸(aircraft landing)などの生命安全確保用途において特に重要である。このやり方で検出することができる干渉は、種々の受信機の相関処理に別様に影響を与えるタイプのものであって、他のやり方では検出するのが難しいタイプのものである。いくつかの例は、衛星の誤差(衛星の構成部品の故障を含む)、近くの高周波発生源からのマイクロ波干渉、及び、受信機の高周波故障(部品の故障を含む)などである。複素アキュムレータ32により提供される正確なパルス波形情報を使用して、MMTプロセッサ50は、そのような干渉がいつあらわれたかを決定することができる。受信機は、この場合、干渉を含む受信信号を無視し、または、適宜、測距計算における歪みを補正することができる。
【0045】
複素累積レジスタ32を選択的にグループ分けすることができ、アーリー(早期用)アキュムレータ、パンクチュアル(時間通り、すなわち、同タイミング用)アキュムレータ、及びレイト(遅れ)アキュムレータ28によって生成された、累積された早期相関値、時間通り相関値、遅れ相関値に対応する信号を提供するようにそれらの内容を結合することができる。代替的に、または、これに加えて、複素累積レジスタ32をグループ分けして、複数の早期相関器及び複数の遅れ相関器によって生成される値に対応する相関値を生成することができる。MMTプロセッサ50は、したがって、追加の相関器ハードウエアを必要とすることなく、複数の早期相関器と遅れ相関器を使用しているかのように動作することができる。さらに、受信機は、実効的な相関器の間隔が狭くなるようにグループ分けを変更することができる。
【0046】
代わりに、MMTプロセッサ50によって生成される信号を直接使用して、位相発生器22とCNCO42を制御することができる。したがって、MMTプロセッサは、計算された直接路コード時間オフセット及び位相角をフィードバック信号としてそれらのコンポーネントに提供し、アーリーアキュムレータ、パンクチュアルアキュムレータ、及びレイトアキュムレータ、PLL及びDLLを信号追跡処理から排除することができる。したがって、スイッチ(不図示)を回路に付加し、これにより、ある位置において、MMTプロセッサが位相誤差発生器82及びコード誤差発生器54によって生成された関連するコード及び位相誤差信号中のマルチパス誤差を補正するようにすることができる。スイッチが第2の位置にあるときは、MMTプロセッサ50によって生成された信号を直接使用して、位相発生器22及びCNCO42を制御する。
【0047】
上記説明は本発明の特定の実施形態に限定してなしたものである。しかしながら、本発明の利点のいくつかまたは全てを達成しつつ、本発明に対して変更及び改変をなすことが可能であることは明らかである。したがって、本発明の思想及び範囲内にあるそのような全ての変更及び改変をカバーすることが添付の特許請求の範囲の目的である。本発明の思想及び範囲には、アーリーアキュムレータ、パンクチュアルアキュムレータ、及びレイトアキュムレータの代わりにMMTプロセッサ50により生成された値を使って、局所コードの関連する時間通りバージョン及び遅れバージョンと共にDLL及びPLLが除去されるようにすることが含まれる。さらに、受信信号をサンプリングして、同時発生のI及びQサンプルを生成することができるが、この場合、ミクサーは複素ミクサーである。各IとQの対は、常にコードチップ範囲に生じるので、次に、同時発生のサンプルが並行して処理される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の教示を利用する広帯域スペクトラム受信機のブロック図である。
【図2】受信機チャンネルのより詳細なブロック図である。
【図3】チャンネルの構成要素のより詳細なブロック図である。
【図4】チャンネルの構成要素のより詳細なブロック図である。
【図5】コードチップ範囲の1例を示す図である。
【図6】複素アキュムレータのブロック図である。
【図7】複素累積レジスタによって取得された累積値のプロットの1例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広帯域スペクトラム信号を受信する受信機用の前置相関フィルタであって、
複数のコードチップにわたって、受信信号のサンプルに対応する測定値を累積する複素累積レジスタのアレイであって、前記累積レジスタは、コードチップの全てまたは一部にわたるコードチップ範囲に関連することからなる、複素累積レジスタのアレイと、
前記それぞの複素累積レジスタを制御して、それぞれの測定値を、サンプルが取得されるコードチップ範囲に関連する前記複素累積レジスタに送るコード位相デコーダであって、前記サンプルの推定された位相角に対応する値を復号化するコード位相デコーダ
を備える、前置相関フィルタ。
【請求項2】
コードチップの立ち上がりエッジをカバーするコードチップ範囲が、コードチップの他の部分をカバーするコードチップ範囲よりも小さい、請求項1の前置相関フィルタ。
【請求項3】
コードチップ範囲が調整可能である、請求項1の前置相関フィルタ。
【請求項4】
コードチップ範囲のサイズ、数、及び開始点が選択的に変更される、請求項1の前置相関フィルタ。
【請求項5】
直接路信号におけるチップエッジの推定された位置を含むコードチップ範囲が狭くされる、請求項4の前置相関フィルタ。
【請求項6】
1つ以上のコードチップ範囲の開始点が、直接路信号におけるチップエッジの推定された位置に対してコードチップ範囲を選択的に配置するように変更される、請求項4の前置相関フィルタ。
【請求項7】
直接路信号内のチップエッジの位置の推定値が計算された後に、コードチップ範囲の数が低減される、請求項4の前置相関フィルタ。
【請求項8】
前記それぞれの複素累積レジスタが、同相サンプルに対応する測定値を収集する同相レジスタと、直交サンプルに対応する測定値を収集する直角位相レジスタを備える、請求項1の前置相関フィルタ。
【請求項9】
複数の複素累積値を所定の基準形状と比較して干渉信号の存在または不存在を検出する、請求項1の前置相関フィルタ。
【請求項10】
広帯域スペクトラム信号を受信するための受信機であって、
受信信号に含まれるコードの位相遅延バージョンを生成する局所コード発生器と、
前記コードのそれぞれのバージョンと受信信号から取得されたサンプルを乗算し、対応する測定値を生成する複数の乗算器と、
チップエッジ信号と推定されたコード位相に対応するコード位相角を生成するコード位相発生器と、
推定されたキャリア位相に対応する位相角を生成するキャリア位相発生器と、
前記コード発生器のコードレートを制御するために使用されるコード誤差信号を生成するコード追跡遅延ロックループと、
前記位相発生器を制御するために使用される位相誤差信号を生成するキャリア追跡位相ロックループと、
受信信号のサンプルに対応する測定値を収集する複数の複素累積レジスタと、前記複素累積レジスタを制御して、関連するサンプルが取得されるコードチップ範囲に関連するそれぞれの複素累積レジスタに前記測定値を送るコード位相デコーダとを備える前置相関フィルタと、
前記複素累積レジスタによって収集された測定値を使用して、コードマルチパス誤差信号とキャリアマルチパス誤差信号を生成するマルチパス低減プロセッサと、
前記コードマルチパス誤差信号とキャリアマルチパス誤差信号を、それぞれ、前記コード誤差信号と位相誤差信号に結合して、マルチパス干渉に関連するコード及びキャリア追跡誤差を補正する加算器
を備え、
前記累積レジスタは、コードチップの全てまたは一部にわたるコードチップ範囲に関連し、前記コード位相デコーダは、前記サンプルの推定された位相角に対応する値を復号化し、前記加算器は、前記コード発生器及び位相発生器を制御するために使用される信号を生成することからなる、受信機。
【請求項11】
コードチップの立ち上がりエッジをカバーするコードチップ範囲が、コードチップの他の部分をカバーするコードチップ範囲よりも小さい、請求項10の受信機。
【請求項12】
コードチップ範囲が調整可能である、請求項10の受信機。
【請求項13】
コードチップ範囲のサイズ、数、及び開始点が選択的に変更される、請求項10の前置相関フィルタ。
【請求項14】
直接路信号におけるチップエッジの推定された位置を含むコードチップ範囲が狭くされる、請求項10の前置相関フィルタ。
【請求項15】
1つ以上のコードチップ範囲の開始点が、直接路信号におけるチップエッジの推定された位置に対してコードチップ範囲を選択的に配置するように変更される、請求項10の前置相関フィルタ。
【請求項16】
直接路信号内のチップエッジの位置の推定値が計算された後に、コードチップ範囲の数が低減される、請求項10の前置相関フィルタ。
【請求項17】
前記それぞれの複素累積レジスタが、同相サンプルに対応する測定値を収集する同相レジスタと、直交サンプルに対応する測定値を収集する直角位相レジスタを備える、請求項10の受信機。
【請求項18】
前記マルチパス低減プロセッサが、複素アキュムレータのグループによって収集された測定値を結合して、複数の早期相関値及び遅れ相関値を生成する、請求項10の受信機。
【請求項19】
複数の複素累積値を所定の基準形状と比較して干渉信号の存在または不存在を検出する、請求項10の受信機。
【請求項20】
前記マルチパス低減プロセッサが、さらに、コード誤差信号及び位相誤差信号の代わりに使用されるコードオフセット及びキャリア位相値を生成して、キャリア位相発生器及びコード位相発生器を制御する、請求項10の受信機。
【請求項21】
広帯域スペクトラム信号を受信するための受信機であって、
受信信号に含まれるコードの位相遅延バージョンを生成する局所コード発生器と、
チップエッジ信号と推定されたコード位相に対応するコード位相角を生成するコード位相発生器と、
前記コードのバージョンと受信信号から取得されたサンプルを乗じて、対応する測定値を生成する乗算器と、
推定されたキャリア位相に対応する位相角を生成するキャリア位相発生器と、
受信信号のサンプルに対応する測定値を収集する複数の複素累積レジスタと、前記複素累積レジスタを制御して、関連するサンプルが取得されるコードチップ範囲に関連するそれぞれの複素累積レジスタに前記測定値を送るコード位相デコーダとを備える前置相関フィルタと、
前記複素累積レジスタによって収集された測定値を使用して、コード発生器と位相発生器を制御するために使用される直接路のコードオフセット及び位相角信号を生成するマルチパス低減プロセッサ
を備え、
前記累積レジスタは、コードチップの全てまたは一部にわたるコードチップ範囲に関連し、前記コード位相デコーダは、前記サンプルの推定された位相角に対応する値を復号化することからなる、受信機。
【請求項22】
前記マルチパス低減プロセッサが、複素アキュムレータのグループによって収集された測定値を結合して、早期相関値及び遅れ相関値を生成する、請求項21の受信機。
【請求項23】
前記マルチパス低減プロセッサが、複素アキュムレータのグループによって収集された測定値を結合して、複数の早期相関値及び遅れ相関値を生成する、請求項21の受信機。
【請求項24】
コードチップの立ち上がりエッジをカバーするコードチップ範囲が、コードチップの他の部分をカバーするコードチップ範囲よりも小さい、請求項21の受信機。
【請求項25】
コードチップ範囲が調整可能である、請求項21の受信機。
【請求項26】
コードチップ範囲のサイズ、数、及び開始点が選択的に変更される、請求項21の前置相関フィルタ。
【請求項27】
直接路信号におけるチップエッジの推定された位置を含むコードチップ範囲が狭くされる、請求項21の前置相関フィルタ。
【請求項28】
1つ以上のコードチップ範囲の開始点が、直接路信号におけるチップエッジの推定された位置に対してコードチップ範囲を選択的に配置するように変更される、請求項21の前置相関フィルタ。
【請求項29】
直接路信号内のチップエッジの位置の推定値が計算された後に、コードチップ範囲の数が低減される、請求項21の前置相関フィルタ。
【請求項30】
前記それぞれの複素累積レジスタが、同相サンプルに対応する測定値を収集する同相レジスタと、直交サンプルに対応する測定値を収集する直角位相レジスタを備える、請求項21の受信機。
【請求項31】
複数の複素累積値を所定の基準形状と比較して干渉信号の存在または不存在を検出する、請求項21の受信機。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
広帯域スペクトラム信号を受信する受信機用の前置相関フィルタであって、
複数のコードチップにわたって、局所PRNコードのあるバージョンを乗じた受信信号のサンプルに対応する測定値を累積する複素累積レジスタ(32)のアレイ(30)を備え、
前記累積レジスタは、コードチップの全てまたは一部分にわたるコードチップ範囲に関連付けられ、
前記前置相関フィルタは、さらに、それぞれの複素累積レジスタを制御してサンプルが取得されるコードチップ範囲に関連する複素累積レジスタにそれぞれの測定値を送るコード位相デコーダ(40)を備え、前記コード位相デコーダは、サンプルの推定された位相角に対応する値を復号化する、前置相関フィルタ。
【請求項2】
コードチップの立ち上がりエッジをカバーするコードチップ範囲が、コードチップの他の部分をカバーするコードチップ範囲よりも小さい、請求項1の前置相関フィルタ。
【請求項3】
コードチップ範囲が調整可能である、請求項1の前置相関フィルタ。
【請求項4】
コードチップ範囲のサイズ、数、及び開始点が選択的に変更される、請求項1の前置相関フィルタ。
【請求項5】
直接路信号におけるチップエッジの推定された位置を含むコードチップ範囲が狭くされる、請求項4の前置相関フィルタ。
【請求項6】
1つ以上のコードチップ範囲の開始点が、直接路信号におけるチップエッジの推定された位置に対してコードチップ範囲を選択的に配置するように変更される、請求項4の前置相関フィルタ。
【請求項7】
直接路信号内のチップエッジの位置の推定値が計算された後に、コードチップ範囲の数が低減される、請求項4の前置相関フィルタ。
【請求項8】
前記それぞれの複素累積レジスタ(32)が、同相サンプルに対応する測定値を収集する同相レジスタ(32I)と、直交サンプルに対応する測定値を収集する直角位相レジスタ(32Q)を備える、請求項1の前置相関フィルタ。
【請求項9】
複数の複素累積値を所定の基準形状と比較して干渉信号の存在または不存在を検出する、請求項1の前置相関フィルタ。
【請求項10】
請求項1の前置相関フィルタを備える受信機であって、
受信信号に含まれるコードの位相遅延バージョンを生成する局所コード発生器(24)と、
前記コードのそれぞれのバージョンと受信信号から取得されたサンプルを乗算し、対応する測定値を生成する複数の乗算器(26)と、
チップエッジ信号と推定されたコード位相に対応するコード位相角を生成するコード位相発生器(42)と、
推定されたキャリア位相に対応する位相角を生成するキャリア位相発生器(22)と、
前記コード発生器のコードレートを制御するために使用されるコード誤差信号を生成するコード追跡遅延ロックループ(62)と、
前記位相発生器を制御するために使用される位相誤差信号を生成するキャリア追跡位相ロックループ(60)と、
前記複素累積レジスタによって収集された測定値を使用して、コードマルチパス誤差信号とキャリアマルチパス誤差信号を生成するマルチパス低減プロセッサ(50)と、
前記コードマルチパス誤差信号とキャリアマルチパス誤差信号を、それぞれ、前記コード誤差信号と位相誤差信号に結合して、マルチパス干渉に関連するコード及びキャリア追跡誤差を補正する加算器(58、56)
をさらに備え、
前記加算器は、前記コード発生器及び位相発生器を制御するために使用される信号を生成することからなる、受信機。
【請求項11】
コードチップの立ち上がりエッジをカバーするコードチップ範囲が、コードチップの他の部分をカバーするコードチップ範囲よりも小さい、請求項10の受信機。
【請求項12】
コードチップ範囲が調整可能である、請求項10の受信機。
【請求項13】
コードチップ範囲のサイズ、数、及び開始点が選択的に変更される、請求項10の前置相関フィルタ。
【請求項14】
直接路信号におけるチップエッジの推定された位置を含むコードチップ範囲が狭くされる、請求項10の前置相関フィルタ。
【請求項15】
1つ以上のコードチップ範囲の開始点が、直接路信号におけるチップエッジの推定された位置に対してコードチップ範囲を選択的に配置するように変更される、請求項10の前置相関フィルタ。
【請求項16】
直接路信号内のチップエッジの位置の推定値が計算された後に、コードチップ範囲の数が低減される、請求項10の前置相関フィルタ。
【請求項17】
前記それぞれの複素累積レジスタ(32)が、同相サンプルに対応する測定値を収集する同相レジスタ(32I)と、直交サンプルに対応する測定値を収集する直角位相レジスタ(32Q)を備える、請求項10の受信機。
【請求項18】
前記マルチパス低減プロセッサ(50)が、複素アキュムレータのグループによって収集された測定値を結合して、複数の早期相関値及び遅れ相関値を生成する、請求項10の受信機。
【請求項19】
複数の複素累積値を所定の基準形状と比較して干渉信号の存在または不存在を検出する、請求項10の受信機。
【請求項20】
前記マルチパス低減プロセッサ(50)が、さらに、コード誤差信号及び位相誤差信号の代わりに使用されるコードオフセット及びキャリア位相値を生成して、キャリア位相発生器及びコード位相発生器を制御する、請求項10の受信機。
【請求項21】
請求項1の前置相関フィルタを備える受信機であって、
受信信号に含まれるコードの位相遅延バージョンを生成する局所コード発生器(24)と、
チップエッジ信号と推定されたコード位相に対応するコード位相角を生成するコード位相発生器(42)と、
前記コードのバージョンと受信信号から取得されたサンプルを乗じて、対応する測定値を生成する乗算器(26)と、
推定されたキャリア位相に対応する位相角を生成するキャリア位相発生器(22)と、
前記複素累積レジスタによって収集された測定値を使用して、コード発生器(42)と位相発生器(22)を制御するために使用される直接路のコードオフセット及び位相角信号を生成するマルチパス低減プロセッサ(50)
をさらに備える、受信機。
【請求項22】
前記マルチパス低減プロセッサが、複素アキュムレータ(32)のグループによって収集された測定値を結合して、早期相関値及び遅れ相関値を生成する、請求項21の受信機。
【請求項23】
前記マルチパス低減プロセッサが、複素アキュムレータのグループによって収集された測定値を結合して、複数の早期相関値及び遅れ相関値を生成する、請求項21の受信機。
【請求項24】
コードチップの立ち上がりエッジをカバーするコードチップ範囲が、コードチップの他の部分をカバーするコードチップ範囲よりも小さい、請求項21の受信機。
【請求項25】
コードチップ範囲が調整可能である、請求項21の受信機。
【請求項26】
コードチップ範囲のサイズ、数、及び開始点が選択的に変更される、請求項21の前置相関フィルタ。
【請求項27】
直接路信号におけるチップエッジの推定された位置を含むコードチップ範囲が狭くされる、請求項21の前置相関フィルタ。
【請求項28】
1つ以上のコードチップ範囲の開始点が、直接路信号におけるチップエッジの推定された位置に対してコードチップ範囲を選択的に配置するように変更される、請求項21の前置相関フィルタ。
【請求項29】
直接路信号内のチップエッジの位置の推定値が計算された後に、コードチップ範囲の数が低減される、請求項21の前置相関フィルタ。
【請求項30】
前記それぞれの複素累積レジスタ(32)が、同相サンプルに対応する測定値を収集する同相レジスタ(32I)と、直交サンプルに対応する測定値を収集する直角位相レジスタ(32Q)を備える、請求項21の受信機。
【請求項31】
複数の複素累積値を所定の基準形状と比較して干渉信号の存在または不存在を検出する、請求項21の受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−523970(P2006−523970A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504110(P2006−504110)
【出願日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000565
【国際公開番号】WO2004/093339
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(598093381)ノヴァテル・インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】