説明

パレット搬送装置

【課題】位置決め精度と滑らかな搬送性を両立させるパレット搬送装置を提供すること。
【解決手段】搬送方向に移動される少なくとも一つのパレットPnを載置する走路部21と、パレットPnの搬送方向に直交する方向の位置を規制するためにパレットPnを挟むように対向配置された一対の位置規制部22とを具備する直線ガイド手段2、及びパレットPnを搬送方向に駆動すると共に位置決めするパレット駆動位置決め手段3を具備するパレット搬送装置において、直線ガイド手段2の位置規制部22がパレットPnの両側面Psに転がり接触する複数の転がり接触手段25を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを搭載したパレットを搬送して位置決めする、パレット搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワークを加工するために、ワークをパレットに載せて搬送して所定の位置に位置決めし、ワークが加工された後にパレットを前記所定の位置から搬出するように構成されたパレット搬送装置が用いられている。図4は従来のこの種の装置の概略的横断面図であるが、従来の装置は、ワークWを搭載したパレットPを図の紙面に垂直な搬送方向に沿って案内するために凹字状の断面形を有する直線ガイド部材102と、パレットPを搬送方向に移動させると共に搬送方向の所定の位置に位置決めする駆動位置決め手段103とを具備している。直線ガイド部材102は、パレットPを搬送方向に直交するY軸方向で位置決めする機能も有しているので、位置決め精度を高めようとするとその側壁部122とパレットの側面Psとの間のクリアランスを小さく設定しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ワークWは、通常の金属材料あるいはプラスチック材料だけでなく、例えば黒鉛及び銅などの微細粒子を固結した材料から作られていることがあり、そのような材料の場合、微細粒子の分離又は欠け落ちが生じることがある。微細粒子が分離したり欠け落ちたりすると、それは、パレットPと直線ガイド部材の側壁部122との間に落下及び侵入し、パレットPと側壁部122との間の摩擦抵抗を増大させ、その結果パレットの滑らかな搬送を妨げ、場合によってはパレットの移動を完全に妨げることもあった。
【0004】
本発明は、前述した従来技術の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、位置決め精度と滑らかな搬送性を両立させるパレット搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、搬送方向に移動される少なくとも一つのパレット(Pn)を載置する走路部(21)と、パレット(Pn)の搬送方向に直交する方向の位置を規制するためにパレット(Pn)を挟むように対向配置された一対の位置規制部(22)とを具備する直線ガイド手段(2)、及びパレット(Pn)を搬送方向に駆動すると共に位置決めするパレット駆動位置決め手段(3)、を具備するパレット搬送装置であって、直線ガイド手段(2)の位置規制部(22)がパレット(Pn)の両側面(Ps)に転がり接触する複数の転がり接触手段(25)を備えることを特徴としている。これにより、パレット側面(Ps)と転がり接触手段(25)は転がり接触するので例えばワークから分離剥落した微粒子等の異物の影響を受け難く、比較的小さなクリアランスでもパレット(P)の滑らかな搬送性が確保される。
【0006】
前記接触手段(25)にローラ(25)を用いることが可能である。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、ローラ(25)の下側の端面が、走路部(21)のパレット載置面(28)より上方に配置されていることを特徴としている。これにより、ローラ(25)の下側の端面とパレット載置面(28)との間にスペースが生み出されて、このスペースに異物が集積するので、転がり接触面に付着する異物が減少するという効果が得られる。
【0008】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施例に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施例について図面を参照しながら説明する。図1は本願発明の実施例によるパレット搬送装置の概略的平面図であり、図2は図1の部分拡大図であって分かり易くするために後述する第2作動器32を作図上除いた図であり、図3は図1のI−I断面図である。本実施例によるパレット搬送装置1は、ワークWnである直流モータ用の通電ブラシを順次移動させ且つ位置決めするものであり、ワークWnには溶接機(不図示)によりリード線(不図示)が接合され、この接合工程は4回の工程に分けて実施される。このためパレット搬送装置1は4箇所の加工位置A〜DにワークWnを移動させて位置決めするように構成されている。なお、ワークWnである通電ブラシは黒鉛及び銅の微細粒子を固めた材料から作られたものである。
【0010】
本実施例によるパレット搬送装置1は、ワークWnが搭載されたパレットPnを搬送方向(以下X軸方向という)に案内する直線ガイド手段2と、パレットPnをX軸方向に駆動すると共にX軸方向で位置決めするパレット駆動位置決め手段3とを具備している。また、パレット搬送装置1の上流側及び下流側にそれぞれ隣接して搬入ベルトコンベア4及び搬出ベルトコンベア5が設けられる。
【0011】
直線ガイド手段2は、本実施例では、4個のパレットP3〜P6が整列されて載置されたX軸方向に細長い矩形状の走路部21と、載置されたパレットPnのY軸方向の位置を規制するためにパレットPn挟むように対向配置された一対の位置規制部22とを具備している。走路部21には図2に示されるように異物を排出するための多数の貫通穴23が設けられている。また、走路部21は図3に示されるように支持台24によって支えられ、支持台24がベース11に固定されている。一方、位置規制部22は、パレットPnの対向する両側面Psに転がり接触するように、矩形状の走路部21のX軸に平行な両端縁に沿って配置された複数のローラ25を具備している。また、位置規制部22は、前述の複数のローラ25を回転可能に支持するためのローラ25と同数の複数の支持軸部26と、この支持軸部26を固定するX軸方向に延びる角棒状部材である軸固定部27も備えている。
【0012】
図3において、位置規制部22のローラ25とパレットPnの側面Psとの間のクリアランスが参照符号C1で示され、支持軸部26及び軸固定部27とパレット側面Psとの間のクリアランスが参照符号C2で示されているが、本実施例においては、異物の排出性を高めるためクリアランスC2はクリアランスC1より相当大きく設定されている。また、同様の理由で隣接するローラ25の間にはローラ25の半径程度の幅を有する間隙であって、直線ガイド手段2の内側から外側へ通じる間隙が形成されている。さらにやはり同様の理由でローラ25の下端面は走路部21のパレット載置面28よりも上方に配置されている。
【0013】
パレット駆動位置決め手段3は、パレットPnにX軸の左方に向かう力を加えてそれをパレット載置面28上で左方へ滑動させ且つX軸方向に位置決めする第1作動器31と、パレットPnをX軸方向に位置決めするだけの第2作動器32とを具備しており、前記第1及び第2作動器31、32は、直線ガイド手段2の長手方向の両端縁に沿って対向して配置されている。第1及び第2作動器31、32は、概ね矩形状に形成されているが、4個のパレットを部分的に挟むようにY軸方向に延びる5個の突出部33をそれぞれ有している。これら突出部33は直線ガイド手段2上に整列されたパレットPnの間に進入してパレットPnをX軸方向に位置決めする。また第1作動器31が左方に移動するとき、その突出部33の左側面がパレットPnに力を加えてパレットPnを左方に滑動させる。
【0014】
パレット駆動位置決め手段3は、第1作動器31をX軸及びY軸方向でそれぞれ往復移動させる第1駆動部34と、第2作動器32をY軸方向で往復移動させる第2駆動部35とを具備している。第1及び第2駆動部34、35は、図1及び図2では作図が省略され図3にのみ示されているが、X軸及び/又はY軸方向へのガイド機構と電動モータ(不図示)等を含む在来的なタイプのものである。第1駆動部34は第1作動器31をX軸方向にストロークSxで及びY軸方向にストロークSyで往復駆動するように構成され、第2駆動部35は第2作動器32をY軸方向にストロークSyで往復駆動するように構成されている。
【0015】
次に、上流側の搬入ベルトコンベア4について説明すると、搬入ベルトコンベア4はその走路上で搬送されるパレットPnの移動を阻止する2個のストッパ41を具備している。ストッパ41はエアシリンダから成る本体部42と該本体部42からY軸方向に伸縮するスピンドル43と具備しており、スピンドル43は、それが伸長している場合にパレットPnの移動を阻止し、本体部42内に後退したときパレットPnの移動を許容するように、パレット駆動位置決め手段3の作動と連動する。
【0016】
次にパレット搬送装置1の作動について以下に説明する。
図1は、ワークW3〜W6の搭載された4個のパレットP3〜P6が加工位置A〜Dに第1及び第2作動器31、32によって位置決めされた状態を示してており、このとき、搬入ベルトコンベア4上にはワークW1及びW2を搭載した2個のパレットP1及びP2がストッパ41によって所定の間隔を空けて待機させられている。また搬出コンベア上には加工の終わったワークW7及びパレットP7が搬出されている。
【0017】
ワークW3〜W6に対する加工が終わると、第1及び第2作動器31、32はそれぞれ図1の下方及び上方にストロークSyで移動する。さらに第1作動器31は図1の仮想線で示されるようにストロークSxで右方へ移動し、その後ストロークSyで上方に移動する。その結果第1作動器31は搬入ベルトコンベア4上のパレットP2と直線ガイド手段2の走路部21上のパレットP3、P4、及びP5を各突出部33の間に収めることとなる。次にストッパ41のスピンドル43がその本体部42内に後退した後、第1作動器31はストロークSxで左方に移動する。これにより、パレットP2〜P6はその側面Psがローラ25と転がり接触をしながら、第1作動器31の各突出部33の左側面によって左方にストロークSxで滑動させられる。その結果パレットP6が搬出ベルトコンベア5上に押し出される。次いで第2作動器32がストロークSyで下方に移動する。以上により、パレットP2〜P5及びワークW2〜W5が加工位置A〜Dに位置決めされる。またこの間に、パレットP1を搬入ベルトコンベア4の左端に移動させてそこで待機させるために二つのストッパ41が作動される。
【0018】
ところで、ワークから黒鉛又は銅の微細粒子が、分離又は欠け落ちてローラ25とパレット側面Psとの間に侵入することがあるが、ローラ25とパレット側面Psは転がり接触をしているのでこのような微粒子の影響を受け難い。また各ローラ25の間に設けられた間隙、及び走路部21の貫通穴23が、欠け落ちた微粒子の直線ガイド手段2の外側への排出を促進する。
【0019】
本実施例では、位置規制部22は複数のローラ25を具備していたが、ローラ25に代えて鋼球等のボールを用いることも可能である。ボールを用いる場合、その支持構造は図3に示したものとは異なるが、周知技術により容易に構築できることは理解されるはずである。
【0020】
また本実施例ではパレット駆動位置決め手段が4個のパレットPnを同時にストロークSxで移動させていたが、パレット駆動位置決め手段により同時に駆動されるパレットPnの数は任意の自然数が可能であり、さらに移動のストロークも例えば2倍にすることも可能である。
【0021】
さらに、本実施例におけるパレット駆動位置決め手段3は、第1作動器31と第2作動器32を具備しているが、例えばパレットPnのY軸方向の幅が狭い場合等には第2作動器32を含まないパレット駆動位置決め手段も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例によるパレット搬送装置の概略的平面図である。
【図2】図1の要部の拡大図であり、第2作動器を取り除いた状態を示す図である。
【図3】図1のI−I断面図である。
【図4】従来のパレット搬送装置1の概略的横断面図である。
【符号の説明】
【0023】
2 直線ガイド手段
3 駆動位置決め手段
21 走路部
22 位置規制部
25 ローラ
31 第1作動器
32 第2作動器
n パレット
n ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に移動される少なくとも一つのパレット(Pn)を載置する走路部(21)と、前記パレット(Pn)の前記搬送方向に直交する方向の位置を規制するために前記パレット(Pn)を挟むように対向配置された一対の位置規制部(22)とを具備する直線ガイド手段(2)、及び
前記パレット(Pn)を前記搬送方向に駆動すると共に位置決めするパレット駆動位置決め手段(3)、を具備するパレット搬送装置であって、
前記直線ガイド手段(2)の前記位置規制部(22)が前記パレット(Pn)の両側面(Ps)に転がり接触する複数の転がり接触手段(25)を備えることを特徴とする、パレット搬送装置。
【請求項2】
前記転がり接触手段(25)がローラ(25)であることを特徴とする、請求項1に記載のパレット搬送装置。
【請求項3】
前記ローラ(25)の下側の端面が、前記走路部(21)のパレット載置面(28)より上方に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載のパレット搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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