説明

パワーステアリング装置

【課題】 簡単な構造で流体音の波動を減衰できるパワーステアリング装置を提供することである。
【解決手段】 ハウジング1内に組み込んだ入力軸3を、内輪7aと外輪7bとこれら内外輪の間に介在させた転動体7cとからなる転がり軸受7で回転自在に支持するとともに、入力軸3にトーションバー5を介して出力軸6を連繋する一方、入力軸3にロータリースプール4を設け、ロータリースプール4をハウジング1に組み込んだバルブスリーブ2に貫通させ、これらロータリースプール4とバルブスリーブ2とでロータリーバルブVを構成する一方、入力軸3と出力軸6とを相対回転させることによって、ロータリーバルブVを切り換えてパワーシリンダを制御するパワーステアリング装置において、転がり軸受7の内輪7aと入力軸3との間にOリング11を介在させ、入力軸3に伝わる流体音の波動をOリング11で減衰する構成にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入力軸と出力軸とを相対回転させてロータリーバルブを切り換えてパワーシリンダを制御するパワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の装置を示したのが、図2である。この図2に示すように、ハウジング1にバルブスリーブ2を組み込むとともに、このバルブスリーブ2を貫通するようにして入力軸3を設けている。この入力軸3にはロータリースプール4を設け、このロータリースプール4と上記バルブスリーブ2とでロータリーバルブVを構成するようにしている。そして、上記入力軸3はトーションバー5を介して出力軸6に連繋している。また、上記ハウジング1であって入力軸3の突出端側にプラグ12を装着するとともに、このプラグ12には転がり軸受7を組み込んでいる。この転がり軸受7は、内輪7aと外輪7bとの間に転動体7cを介在させたもので、外輪7bをプラグ12に固定し、内輪7aを入力軸3にはめているが、このようにした転がり軸受7で入力軸3を回転自在に支持している。また、この入力軸3であって、上記転がり軸受7とは反対端はブッシュ13で回転自在に支持されている。
なお、図中符号8は上記転がり軸受7の外側をシールするシール部材、符号9,10は出力軸6を支持するスラストベアリングである。
【0003】
上記のようにした従来の装置は、図示していないステアリングホイールを回すと、それにともなって入力軸3が回転するが、このとき出力軸6側には図示していないタイヤ側の負荷が作用しているので、入力軸3と出力軸6とはトーションバー5をねじりながら相対回転する。上記のようにして入力軸3が出力軸6と相対回転すると、それにともなってロータリースプール4とバルブスプール2も相対回転してロータリーバルブVを切り換える。
【0004】
ロータリーバルブVが上記のように切り換わることによって、図示していないポンプからの圧油が、このロータリーバルブVを経由して、同じく図示していないパワーシリンダに供給されるとともに、このパワーシリンダの作動力でステアリング操作がパワーアシストされることになる。
【特許文献1】特開平5−105096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにした従来の装置では、ロータリーバルブVで流体の流路が切り換えられるとともに、その切り換えられた流路に流体が流れるが、このように流体が流れる過程でそこには流体音が発生する。特に、この流体音の波動が入力軸3に伝わると、その波動は、図示していないコラムシャフトを介してステアリングホイールにも伝わる。ステアリングホイールに流体音の波動が伝わると、その波動が再び音として再現される。このようにして発生する音は、ドライバーに対して異音として感じることになり、ドライバーの不快感を誘発する原因になっていた。
この発明の目的は、簡単な構造で上記流体音の波動を減衰できるパワーステアリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、ハウジング内に組み込んだ入力軸を、内輪と外輪とこれら内外輪の間に介在させた転動体とからなる転がり軸受で回転自在に支持するとともに、この入力軸にトーションバーを介して出力軸を連繋する一方、上記入力軸にロータリースプールを設け、このロータリースプールをハウジングに組み込んだバルブスリーブに貫通させ、これらロータリースプールとバルブスリーブとでロータリーバルブを構成する一方、入力軸と出力軸とを相対回転させることによって、上記ロータリーバルブを切り換えてパワーシリンダを制御するパワーステアリング装置を前提にするものである。
そして、上記の装置を前提にしつつ、この発明は、上記転がり軸受の内輪位置における入力軸の周囲にOリングを介在させた点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
第1の発明によれば、ロータリーバルブ内を流れる流体によって流体音が発生したとしても、その流体の波動がOリングで減衰されるので、その波動がステアリングホイールに伝わって音を発生することがない。したがって、ドライバーには、異音による不快感を与えることがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の実施形態は、転がり軸受7をはめた入力軸3にOリング11をはめた点に特徴を有するもので、その他の構成は、図2に示した従来の装置と同じである。したがって、以下には、従来と同一の構成要素について同一符号を付しつつ、その詳細な説明を省略する。
【0009】
上記入力軸3であって転がり軸受7の内輪7aがはまっている位置に、Oリング11をはめているが、このOリング11によってロータリーバルブVの側近を押さえるようにしている。なお、このOリング11は、内輪7aと入力軸3との間にあって、内輪7aおよび入力軸3と一体的に回転するものである。
上記のようにロータリーバルブVの側近をOリング11で押さえているので、そのロータリーバルブVで発生した流体音の波動が入力軸3に伝わったとしても、その波動は、Oリング11によって減衰されることになる。このように入力軸3に伝えられた流体音の波動が減衰されるので、それがステアリングホイールに伝わって音として再現されることはなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施形態の断面図である。
【図2】従来の装置の断面図である。
【符号の説明】
【0011】
1 ハウジング
2 バルブスリーブ
3 入力軸
4 ロータリースプール
V ロータリーバルブ
5 トーションバー
6 出力軸
7 転がり軸受
7a 内輪
7b 外輪
7c 転動体
11 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に組み込んだ入力軸を、内輪と外輪とこれら内外輪の間に介在させた転動体とからなる転がり軸受で回転自在に支持するとともに、この入力軸にトーションバーを介して出力軸を連繋する一方、上記入力軸にロータリースプールを設け、このロータリースプールを、ハウジングに組み込んだバルブスリーブに貫通させ、これらロータリースプールとバルブスリーブとでロータリーバルブを構成する一方、入力軸と出力軸とを相対回転させることによって、上記ロータリーバルブを切り換えてパワーシリンダを制御するパワーステアリング装置において、上記転がり軸受の内輪と入力軸の周囲との間にOリングを介在させたパワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−27578(P2006−27578A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213752(P2004−213752)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】