説明

パワー・アシスト方式の体内埋め込み型人工心臓

【課題】従来の補助人工心臓では、循環血液が器械部分と接触するため、赤血球の破砕や血栓が生じやすく、抗血栓薬の長期投与が必要であり、様々な合併症も発生しやすかった。
【解決手段】電力によって駆動されるポンプの力を、心臓1の外側から心室に伝えることによって、心臓の駆出力を増強する。これにより心臓や大血管系への侵襲を避け、また器械が循環血液と接触することを避ける。具体的には中空嚢状のインターフェイスによって心臓を覆い、収縮期にインターフェイスの内圧を上げて心臓の収縮を補助する。拡張期には内圧を下げる。内圧の変化は、外側膜3の一部に設けた中空のチューブを経由して、駆動ポンプにより内容物を送脱することにより行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
医学、人工心臓
【背景技術】
【0002】
心疾患はわが国では死因の第2位、米国では第1位と多い。心不全が進行すると、内科的治療では対処できなくり、心移植が究極の選択肢となる。しかし、ドナー数が圧倒的に少ない現状から、米国でもわが国でも、主に心移植までのつなぎとして、「体内埋め込み型の補助人工心臓」が適用されるケースが増えつつある。この装置は、左室に挿入した脱血管から、血液を血液ポンプに導き、送血グラフトを経て上行大動脈に送るのが基本である。どの補助人工心臓でも、循環血液が器械部分と接触するため、赤血球の破砕や血栓が生じやすく、抗血栓薬の長期投与が必要であり、様々な合併症も発生しやすい。このため生存期間は多くの場合数ヶ月、長くても1年位と限定されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は「血液と接触することなく心臓の拍出機能を補助する人工心臓」を開発し、合併症の発生を防ぎ、生存率を向上させようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
「電力によって駆動されるポンプの力を、心臓の外側から心室に伝える」ことによって、心臓の駆出力を増強する。これにより心臓や大血管系への侵襲を避け、また器械が循環血液と接触することを避けることができる。
【0005】
本発明は「心臓を覆う部分」に関する。本発明の人工心臓は、さらにポンプ、ポンプと駆動装置をつなぐケーブル、および駆動装置の存在を前提としているが、これらはいずれも体内埋込式補助人工心臓や大動脈内バルーン・パンピングなどの既存の技術に含まれる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の人工心臓を体内に埋込む際に、心臓や大血管系を切開する必要はない。このため心循環系に対する負担が少ない。また術後に抗凝固薬の長期投与も不要なので、生命予後の改善が期待できる。1台で左心室と右心室の両方の機能を増強できるので、両心不全の発生予防や治療に有用と考えられる。さらに心機能の不可逆化防止効果も期待できる。10年、15年といった長期の使用も可能と思われる。なお両心不全に対しては、従来の補助人工心臓では2台の取付けが必要であった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
「心臓を覆う部分」は中空嚢状のインターフェイスとする。中空部分に心臓を留置する。インターフェイスの心臓側には伸縮性の膜を用い、外側には低伸縮性の膜を用いる。嚢の内部に内容物(液体、気体、あるいは他の可塑性物)を充満させる。外側膜の一部に設けた中空のチューブを経由して、駆動ポンプにより内容物を送脱する。
【0008】
心臓の収縮期と同期して、嚢の内容物の量を増加させる。すると心臓外側から圧が加わるので、心臓の収縮が増強する。心臓の拡張期には、嚢の内容物の量を減少させ、インターフェイスの内圧を低下させる。健常成人の一回心拍出量は約70mlなので、このように送脱する内容量は70ml以下である。
【0009】
心臓の心尖部近傍での「心臓側の膜の伸縮性」を高くしておけば、心尖部に近い部分の心収縮がより増強されるので、自然の血行動態に近い収縮補助ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明における「中空嚢状のインターフェイス」と心臓の関係を示す概略図である。
【符号の説明】
【0011】
1 心臓
2 内側膜
3 外側膜
4 液体、または気体
5 中空のチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端で結合した「内側膜」と「外側膜」による二重膜が、全体として中空の嚢の形態をとり、「内側膜」と「外側膜」の間のスペースに液体あるいは気体を含有し、外側膜に中空管が接続してある「人工心臓インターフェイス」。

【図1】
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