説明

パンクシーリング剤

【課題】 パンク穴のシール速度が速く、長期安定性を有するパンクシーリング剤を提供する。
【解決手段】 パンクしたタイヤの穴をシールするパンクシーリング剤であって、天然ゴムラテックスと、不凍液とを含有し、前記天然ゴムラテックスの少なくとも一部が、変性もしくは重合処理されていることを特徴とするパンクシーリング剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンクしたタイヤの穴をシールする際に使用されるパンクシーリング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
パンクが発生した際にその発生箇所をシールするための補修剤として、種々のパンクシーリング剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。これらは主に、水性媒質中のコロイド分散系ポリマー(ラテックス)を含む。当該ラテックスとしては、例えば、ポリエチレン−ブタジエンラテックス、ポリ酢酸ビニルラテックス、アクリリック共重合体ラテックス、ニトリルラテックス、ポリクロロプレンラテックス等が用いられる。
【0003】
しかし、上記のような従来使用されているパンクシーリング剤は、完全に満足のいくものではない。それらは比較的早く機械的に除去され、またパンク穴を塞ぐスピードが遅いため、シールを完了して走行可能にするための予備走行にかなりの時間を要する。また、寿命が短いため、頻繁に交換する必要がある。
【特許文献1】特許第3210863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上から、本発明は、上記従来の課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、パンク穴のシール速度が速く、長期安定性を有するパンクシーリング剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく鋭意検討の結果、本発明者らは、下記本発明により当該目的を達成できることを見出した。
すなわち、本発明は、パンクしたタイヤの穴をシールするパンクシーリング剤であって、天然ゴムラテックスと、不凍液とを含有し、前記天然ゴムラテックスの少なくとも一部が、変性もしくは重合処理されていることを特徴とするシーリング剤である。
【0006】
本発明のパンクシーリング剤は、下記第1〜第3の態様のうち、少なくとも1つの態様を有することが好ましい。
(1)第1の態様は、少なくとも一部の前記天然ゴムラテックスの末端が、カルボキシル基または水酸基で変性されている態様である。
(2)第2の態様は、少なくとも一部の前記天然ゴムラテックスに、アクリレート系化合物、エポキシ系化合物、スチレン系化合物、アクリロニトリル系化合物、および、無水マレイン系化合物の群から選択される1以上の化合物がグラフト共重合している態様である。
(3)第3の態様は、さらに、天然ゴムラテックスを解重合して得られた低分子量天然ゴムラテックスを含有している態様である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、パンク穴のシール速度が速く、長期安定性を有するパンクシーリング剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
パンクしたタイヤの穴をシールする本発明のパンクシーリング剤は、天然ゴムラテックスと、不凍液とを含有する。そして、天然ゴムラテックスの少なくとも一部が、変性もしくは重合処理されている。変性もしくは重合処理されていることで、パンクシーリング剤のシール速度を速くしたり、長期安定性を向上させることができる。当該変性処理としては、少なくとも一部の天然ゴムラテックスの末端を、カルボキシル基または水酸基で変性する処理が挙げられる。また、重合処理としては、グラフト共重合や天然ゴムラテックスの一部を解重合し、これを混合する処理が挙げられる。上記処理は、1種のみでもよく、また、複数組み合わせてもよい。
【0009】
既述のように、安定性をより向上させる観点から、少なくとも一部の天然ゴムラテックスの末端は、カルボキシル基または水酸基で変性されていることが好ましい。パンクシーリング剤の安定性を向上させる目的で、界面活性剤を含有させることがある。しかし、このようにして含有される界面活性剤は、温度が高くなると天然ゴムラテックスから分離してしまうことがある。これに対し、天然ゴムラテックスの末端に直接、カルボキシル基または水酸基を導入することで、他の溶剤による影響もなく、高い安定性を確保することができる。また、良好な均一性をも確保できる。
【0010】
カルボキシ基で変性するには、アクリル酸、マレイン酸、フタル酸、コハク酸、イタコン酸等のカルボン酸を少なくとも1種用いることが好ましい。また、水酸基で変性するには、フェノール樹脂誘導体を用いることが好ましい。
【0011】
カルボキシル基または水酸基による置換率としては、0.5〜95%であることが好ましく、10〜50%であることがより好ましい。0.5%未満であると、末端変性による十分な安定化効果が得られないことがあり、95%を超えると、安定性が向上しすぎてシール性が低下してしまうことがある。置換率を上記範囲に制御するには、モノマー添加量の制御、反応停止剤の添加といったことを行えばよい。
【0012】
また、少なくとも一部の天然ゴムラテックスに、アクリレート系化合物、エポキシ系化合物、スチレン系化合物、アクリロニトリル系化合物、および、無水マレイン系化合物の群から選択される1以上の化合物がグラフト共重合していることが好ましい。これらの化合物をモノマーとして、グラフト共重合させても安定性を向上させることができる。
【0013】
天然ゴムラテックスの主鎖中の2重結合と重合する上記化合物としては、以下の化合物をあげることができる。すなわち、アクリレート系化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸やこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸低級アルキルエステルの他、(メタ)アクリル酸グリシジル等が例示される。
【0014】
エポキシ系化合物としては、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0015】
スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレンおよびビニルトルエン等が挙げられる。アクリロニトリル系化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、マレオニトリル、α−クロロアクリロニトリル等が挙げられる。無水マレイン系化合物としては、マレイン酸、無水マレイン酸やこれらの誘導体等が挙げられる。
【0016】
グラフト率としては、0.5〜95%であることが好ましく、10〜40%であることがより好ましい。0.5%未満であると、グラフト化による接着力(シール性)向上の度合いが少なくなることがあり、95%を超えると保存安定性が低下することがある。グラフト率を上記範囲に制御するには、モノマー添加量の制御、反応停止剤の添加といったことを行えばよい。
【0017】
グラフト後のグラフト共重合体の分子量としては、幹ポリマーとしての天然ゴムラテックスの分子量を100としたときに、5〜60であることが好ましく、10〜50がより好ましい。10未満だとシール性の向上が少なく、60を超えると安定性が低下することがある。
【0018】
本発明のパンクシーリング剤は、さらに、天然ゴムラテックスを解重合して得られた低分子量天然ゴムラテックスを含有していることが好ましい。低分子量天然ゴムラテックスを添加することで、パンク穴への密着性を向上させることができる。低分子量天然ゴムラテックスのパンクシーリング剤中の含有量は、5〜40質量%であることが好ましい。
【0019】
粘着性の向上効果は分子量が小さいものほど高くなること、等を考慮して、低分子量天然ゴムラテックスの分子量は、オリジナルゴムラテックス(解重合していない天然ゴムラテックス)の分子量を100とした場合、5〜60%であることが好ましく、10〜50%であることが好ましい。5%未満では、粘着性が上がりすぎてタイヤ内への注入が困難となることがあり、50%を超えると十分な粘着性向上効果が得られないことがある。上記範囲(5〜60%)に制御するには、反応時間の制御、触媒の種類の選択やその量の調整といったことを行えばよい。
【0020】
また、本発明のパンクシーリング剤には、不凍液(凍結防止剤)が含有されている。不凍液としては、特に限定されず、エチレングリコール、プロピレングリコール等を使用することができる。凍結防止剤の含有量は、5〜50質量%であることが好ましい。5質量%未満では、低温での凍結防止性が十分に得られないことがあり、50質量%を超えると、ゴムラテックス量に対して、グリコール量が多くなるため、パンク補修時に、凝集したゴムラテックスの粒がグリコール中に分散した状態として存在するため、十分なシール特性が得られないことがある。好ましい凍結防止剤の含有量は、10〜40質量%である。
【0021】
以上のような本発明のパンクシーリング剤は、その効果を阻害しない限り、または、その他の特性を向上させることを目的として、種々の添加剤を含有させることができる。以下、添加剤について説明する。
【0022】
(樹脂系接着剤)
樹脂系接着剤としては、テルペンフェノール樹脂等のテルペン樹脂を使用することができる。テルペンフェノール樹脂としては、α−ピネンフェノール樹脂、ジペンテンフェノール樹脂、テルペンビスフェノール樹脂、またはこれらを水素添化したものなどが使用できる。また、市販のものを使用することもできる。なお、本発明のパンクシーリング剤が低分子量天然ゴムラテックスを含有する場合は、当該樹脂系接着剤は、必ずしも必要ではない。
【0023】
樹脂系接着剤の含有量は3〜30質量%の範囲であることが好ましく、5〜25質量%の範囲であることがより好ましく、7〜20質量%の範囲であることがさらに好ましい。3〜30質量%の範囲とすることで、実用的で良好なシール性を発揮することができる。樹脂系接着剤は、シール性の向上を考慮して、前記ゴムラテックスの水性分散剤または前記ゴムラテックスの水性乳剤の状態で加えられてなることが好ましい。
【0024】
(短繊維)
短繊維は、パンクによりタイヤに発生した穴(欠陥部)に入り込んで目詰まりを生じさせて、この穴を迅速、かつ確実に塞ぐ役割を果たす。パンクシーリング剤中の短繊維の含有量は、0.1質量%〜5質量%であることが好ましい。
【0025】
0.1質量%未満では、短繊維を添加したことによるシール性を十分に発揮することができないことがある。また、5質量%を超えると、短繊維の絡み合いが発生し、粘性が増加して注入容易性が低下すると共に、既述の役割を十分に発揮することが難くなるため、シール性も低下してしまうことがある。短繊維の含有量は、0.3〜4質量%とすることが好ましく、0.5〜3質量%とすることがより好ましい。
【0026】
また、既述のような役割を十分に発揮させるため、短繊維についても種々の設計をすることが好ましい。そこで、短繊維の比重(S)、長さ(L)、直径(D)、および長さと直径との比(L/D)は、それぞれ、下記の範囲とすることが好ましい。
【0027】
(1)比重(S):0.8≦S≦1.4(より好ましくは、0.9≦S≦1.3、さらに好ましくは、1.0≦S≦1.2)。
比重が0.8未満では、短繊維が上に浮いてしまって長期の分離安定性が低くなることがあり、1.4を超えると、短繊維が下に沈んでしまって長期の分離安定性が低くなることがある。
【0028】
(2)長さ(L):0.05≦L≦10mm(より好ましくは、0.08≦L≦8mm、さらに好ましくは、0.1≦L≦6mm)。
長さが0.05mm未満では、短繊維がパンクによる欠陥部に目詰まりを生じさせてシール性を向上させる効果を十分に発揮させることができない場合があり、10mmを超えると、短繊維の相対的な数が減少するためシール性が低下する場合がある。
【0029】
(3)直径(D):1≦D≦100μm(より好ましくは、3≦D≦80μm、さらに好ましくは、5≦D≦50μm)。
直径(太さ)が1μm未満では、上記目詰まりを生じさせてシール性を向上させる短繊維の役割を十分に発揮することができない場合があり、100μmを超えると、短繊維の相対的な数が減少するためシール性が低下する場合がある。
【0030】
(4)長さと直径との比(L/D):5≦L/D≦2000(より好ましくは、20≦L/D≦1600、さらに好ましくは、50≦L/D≦1200、特に好ましくは、100≦L/D≦300)。
L/Dが5未満では、上記目詰まりを生じさせてシール性を向上させる短繊維の役割を十分に発揮することができない場合があり、2000を超えると、短繊維の絡み合いによるダマが発生し、シール性および注入容易性の低下を引き起こすことがある。
なお、短繊維は、一の材質からなるものを一定の形状で使用することができるが、既述の範囲で複数の材質からなるものを種々の形状で使用することもできる。
【0031】
短繊維は、その材質に特に制限はないが、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン、およびこれら2以上の複合体のいずれかからなることが好ましく、ポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン、およびこれら2以上の複合体のいずれかからなることがより好ましい。かかる短繊維を使用することで、より良好な分離安定性が得られる。
【0032】
短繊維は、その全量若しくはその一部(好ましくは全量)を、高級アルコール系誘導体および/またはベタイン系活性剤等の溶剤で処理しておくことが好ましい。かかる処理により、溶剤が活剤として作用し、短繊維の分散性を向上させることができる。当該処理は、パンクシーリング剤に含有させる前でも後でもよい。処理方法としては、短繊維を上記溶剤に含浸したり、上記溶剤を吹き付けたりして行うことができる。高級アルコール誘導体としては、ポリグリコール系ポリエステル等が好適である。
【0033】
溶剤の添加量(上記処理により短繊維に吸収される量)としては、短繊維質量の0.2〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましく、1〜6%であることがさらに好ましい。添加量が少なすぎると、短繊維の十分な分散効果が得られずに当該処理が不十分となることがあり、多すぎても、それ以上の効果の向上が期待できない。
【0034】
以上のようなパンクシーリング剤において、当該パンクシーリング剤中の固体成分(以下、「固形分」ということがある)の含有量は、5〜70質量%であることが好ましい。
【0035】
「固形分の含有量」は、以下のようにして求めることができる。まず、パンクシーリング剤100gを30分間、200℃の状態で放置する。放置後の残留分の質量を測定し、当該残留分の質量をパンクシーリング剤の質量で除する(残留分の質量/放置前のパンクシーリング剤の質量)ことで求めることができる。
【0036】
固形分の含有量が5質量%未満だと、ゴムラテックスの割合が低くなり、十分なシール性を確保することが不可能となることがある。また、70質量%を超えると、シール性以外の特性を十分に確保することができないことがある。
上記範囲内での固形分含有量のより好ましい上限は60質量%であり、さらに好ましくは50質量%であり、特に好ましくは40質量%である。また、上記範囲内で固形分の含有量のより好ましい下限は8質量%であり、さらに好ましくは10質量%である。
【0037】
また、パンクシーリング剤の粘度は、実際の使用条件として想定される条件(少なくとも、タイヤへの充填前であって60℃〜−30℃の範囲)において、3〜6000mPa・sであること好ましく、5〜4500mPa・sであることがより好ましく、8〜3000mPa・sであることがさらに好ましく、10〜3000mPa・sであることが特に好ましく、15〜1500mPa・sであることが最も好ましい。
3mPa・s未満では、粘度が低すぎてバルブへの注入時に液漏れが発生することがある。6000mPa・sを超えると、注入時の抵抗が強くなって注入容易性が低下する場合があり、また、タイヤ内面への広がりも十分でなく、高いシール性が得られない場合がある。なお、当該粘度は、B型粘度計等により測定することができる。
【0038】
本発明のパンクシーリング剤では、希薄化のために、水を含有させることができる。さらにパンクシーリング剤に、通常の分散剤、乳化剤、発泡安定剤、苛性ソーダ等のpH調整剤、を添加してもよい。
【0039】
また迅速にシールしかつ大きな穴でも確実にシールできるように、パンクシーリング剤に1種又はそれ以上のフィラーを混合してもよい。安定したフィラーとしては、例えばケイ酸、チョーク、カーボンブラック、グラスファイバーで補強された合成樹脂、ポリスチレン粒子、タイヤ等の加硫成品の粉砕による粉末ゴム、おがくず、モスラバー粒子、カットフラワー用の発泡粒子等が採用できる。この中でも特に好ましいフィラーは、ケイ酸と結合したゴム粉末、およびグラスファイバーで補強された合成樹脂である。
【0040】
前記フィラーは、パンクシーリング剤に直接添加され得る。しかしながら、フィラーが、バルブサイズを変更することなくバルブをへてパンクシーリング剤を導くのを困難または不可能にする大きさを有する限りにおいては、これらのフィラーは、一般的にタイヤをリム組するときにタイヤの内部に導入され、タイヤにパンクが発生した際にパンクシーリング剤が注入されることによってシーリングを成し遂げる。
【0041】
前記フィラーは、パンクシーリング剤中に、好ましくは約20〜200g/リットル、より好ましくは60〜100g/リットル加えられ、あるいはタイヤのリム組においてタイヤ内部に配される。他方、液体成分として、樹脂系接着剤用の分散剤又は乳化剤、好ましくは水が添加されてもよく、必要により液状樹脂系接着剤を用いてもよい。
【0042】
パンクシーリング剤は、既述の材料を公知の方法で混合等して製造することができる。また、パンクシーリング剤の製造、保管、充填は、酸化等を避けるため、好ましくは窒素又は希ガスの雰囲気で行われる。
【0043】
以上のようなパンクシーリング剤によるパンクの修理方法としては、公知の方法を適用することができる。すなわち、まず、パンクシーリング剤が充填された容器をタイヤのバルブ口に差し込み、適量を注入する。その後、パンクシーリング剤がタイヤ内面に広がりパンク穴をシールできるようにタイヤを回転させればよい。
【0044】
このようなパンクシーリング剤そのものは、種々のポンプアップ装置、例えば燃料ガスとしてプロパン・ブタン混合ガスを含むスプレー缶を用いてタイヤの内部に導入されてタイヤを再膨張させうるが、図1に示されるポンプアップ装置20によってより好ましく使用できる。
【0045】
図1に示されるポンプアップ装置20では、前記圧力源として小型のエアコンプレッサ1を用いている。このエアコンプレッサ1は、ホース2を介して耐圧容器4のガス導入部3に接続されている。前記ガス導入部3は、栓バルブ5で閉止できかつ耐圧容器4に収納されたパンクシーリング剤6の液面上までのびるライザーチューブとして形成されている。
【0046】
また、耐圧容器4は、パンクシーリング剤6を取出すための出口バルブ7を有し、この出口バルブ7にホース8の一端が接続されるとともに、該ホース8の他端には、タイヤバルブ10にねじ止めされるねじアダプタ9が取付けられている。
【0047】
耐圧容器4は、フィリングスタブ12を有し、かつ水が充填されたジャケット11を具える。必要に応じて加熱源としての塩化カルシウムが前記フィリングスタブ12内に充填されうる。パンクシーリング剤6が低温で凍結すると、この加熱源の水和作用で解放される熱によって、利用できる温度にパンクシーリング剤6が加熱される。
【0048】
前記エアコンプレッサ1には、電気ケーブル13が接続され、そのプラグ14は、例えば、シガレットライターに差込まれる。
【0049】
タイヤにパンクが発生すると、前記ねじアダプタ9がタイヤバルブ10にねじ止めされ、かつエアコンプレッサ1がシガレットライターに接続されるとともに、耐圧容器4のガス導入部3において前記栓バルブ5が開かれる。そしてエアコンプレッサ1から耐圧容器4内にガス導入部3をへて導入される圧縮空気が、出口バルブ7からパンクシーリング剤6を押出し、タイヤバルブ10をへてタイヤの内部に導入させる。然る後、空気がタイヤの内部に再充填され、タイヤを特定の内圧で膨張させる。これが終わると、ねじアダプタ9をタイヤバルブ10から取外し、エアコンプレッサ1を止める。この直後に、一定距離に亘って予備走行し、タイヤ内部にパンクシーリング剤6を散布しつつパンク穴をシールした後、ポンプアップ装置20が再び接続されてタイヤを要求される内圧まで再度、ポンプアップする。
【0050】
また、本発明のパンクシーリング剤は、図2A,Bに示されるポンプアップ装置30によってもより好ましく使用できる。なお、図2A,Bに示されるポンプアップ装置において、図1に示されるポンプアップ装置20と共通の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
このポンプアップ装置30は、図2Aに示されるパンクシーリング剤6の収納容器である樹脂製のボトル22と、図2Bに示される圧力源としてのエアコンプレッサ1とを備えている。ボトル22は、1回のパンク修理に必要なパンクシーリング剤6を収容している。ボトル22には、先端部にアダプタ26が配置されたホース24が接続されている。またエアコンプレッサ1に接続されたホース2にも、その先端部にアダプタ9が配置されている。但し、ボトル22のホース24については、タイヤバルブ26に直接接続可能なものであるならばアダプタ9を省略しても良い。
【0052】
パンク発生時に、ボトル22のアダプタ26がタイヤバルブ10にねじ止めされる。これにより、ホース24及びアダプタ26を通してタイヤ内に連通する。この状態で、作業者は、図2Aで2点鎖線(想像線)により示されるように、ボトル22を握り潰してパンクシーリング剤6をボトル22内から搾り出すことにより、ホース24を通してパンクシーリング剤6をタイヤ内へ注入する。
【0053】
ボトル22内からタイヤ内へのパンクシーリング剤6の注入が完了すると、作業者は、アダプタ26をタイヤバルブ10から取り外してボトル22をタイヤから切り離す。
【0054】
次いで、作業者は、エアコンプレッサ1のアダプタ9をタイヤバルブ10にねじ止めし、アダプタ9及びホース2を通してエアコンプレッサ1をタイヤ内に連通させる。この状態で、作業者は、エアコンプレッサ1を作動させて加圧空気をタイヤ内へ再充填し、タイヤを特定の内圧で膨張させる。これが終わると、作業者は、アダプタ9をタイヤバルブ10から取外し、エアコンプレッサ1を止める。この直後に、一定距離に亘って予備走行し、タイヤ内部にパンクシーリング剤6を散布しつつパンク穴をシールした後、作業者は、ポンプアップ装置30のエアコンプレッサ1を再び接続してタイヤを要求される内圧まで再度、ポンプアップする。
【0055】
また、本発明のパンクシーリング剤は、種々の空気入りタイヤのパンク修理に適用することができる。例えば、自動車用タイヤ、二輪車用タイヤ、一輪車用タイヤ、車いす用タイヤ、農地作業や庭園作業に使用する車両用タイヤ等が挙げられる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0057】
〔実施例1〕
脱タンパク天然ゴムラテックスにスチレンをグラフト共重合した固形分70質量%のラテックスに、プロピレングリコール30質量%を添加してパンクシーリング剤を製造した。
【0058】
〔実施例2〕
脱タンパク天然ゴムラテックスにアクリル酸をグラフト共重合した固形分70質量%のラテックスに、プロピレングリコール30質量%を添加してパンクシーリング剤を製造した。
【0059】
〔実施例3〕
脱タンパク天然ゴムラテックスを解重合により、分子量をもとのラテックスの1/10にして、固形分70質量%の低分子量天然ゴムラテックスを製造した。
【0060】
解重合していない脱タンパク天然ゴムラテックス100質量部に、上記低分子量天然ゴムラテックス40質量部を混合し、さらに、プロピレングリコール40質量部を混合して、パンクシーリング剤を製造した。
【0061】
〔比較例1〕
スチレンとのグラフト重合を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、パンクシーリング剤を製造した。
【0062】
〔評価〕
(パンク穴シール性の評価)
1つのタイヤのタイヤトレッド溝部に、φ2.3mmの穴をドリルであけ、作製したパンクシーリング剤(実施例1〜4および比較例1のそれぞれ)を注入し、車に装着した。その後、1.3kgf/cm2(12.74×10-4Pa)の空気圧を維持しながら、約50km/hで車を走行させ、上記穴が完全にシールされるまでの距離を測定した。結果を下記表1に示す。
【0063】
(安定性の評価)
実施例1〜3および比較例1で作製したパンクシーリング剤のそれぞれを同量採取し、これを80℃に保持して、ゲル化か起こる時間(日数)を目視で観察した。結果を下記表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1の結果より、実施例1〜3では、天然ゴムラテックスの少なくとも一部が、変性もしくは重合処理されているため、穴のシール速度が速かった。また、良好な長期安定性を有することが確認できた。かかる結果から、本発明のパンクシーリング剤は、実用的に優れていることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態に係るパンクシーリング剤をタイヤに充填するために用いられるシーリング・ポンプアップ装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係るパンクシーリング剤をタイヤに充填するために用いられるシーリング・ポンプアップ装置の他の例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0067】
3 ガス導入部
4 耐圧容器
6 シーリング剤
7 出口バルブ
20 ポンプアップ装置
30 ポンプアップ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンクしたタイヤの穴をシールするパンクシーリング剤であって、
天然ゴムラテックスと、不凍液とを含有し、
前記天然ゴムラテックスの少なくとも一部が、変性もしくは重合処理されていることを特徴とするパンクシーリング剤。
【請求項2】
少なくとも一部の前記天然ゴムラテックスの末端が、カルボキシル基または水酸基で変性されていることを特徴とする請求項1に記載のパンクシーリング剤。
【請求項3】
少なくとも一部の前記天然ゴムラテックスに、アクリレート系化合物、エポキシ系化合物、スチレン系化合物、アクリロニトリル系化合物、および、無水マレイン系化合物の群から選択される1以上の化合物がグラフト共重合していることを特徴とする請求項1または2に記載のパンクシーリング剤。
【請求項4】
さらに、天然ゴムラテックスを解重合して得られた低分子量天然ゴムラテックスを含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパンクシーリング剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−188621(P2006−188621A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2343(P2005−2343)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】