説明

パンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法及び装置

【課題】 ブラシテーブルのブラシの摩耗を自動的に測定できるパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法及び装置の提供。
【解決手段】 ブラシテーブルを備えたパンチプレスにおいて、打撃子の下面と、ダミーダイの上面とに接触可能な接触子を内蔵する測定用パンチ組立体を用いて、接触子がダミーダイに接触したときの打撃子の下降距離(L)とブラシテーブル上に載置した測定用ゲージ板に接触子が接触したときの打撃子の下降距離Lを検出し、この検出された前記打撃子の下降距離(L、L)及び前記測定用ゲージ板の板厚(T)を基にして前記ブラシテーブルの被加工材支持平面と前記測定用ダミーダイ上面との間隙(S)を演算して求めることを特徴とするパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固定テーブルと移動テーブルからなるパンチプレスの材料支持テーブルには、板材の移動位置決めを行う時に生じる騒音を少なくすると共に板材裏面に擦り傷が着くことを押さえるため、材料支持テーブル上面に多数のブラシを植えた謂わゆるブラシテーブルが使用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、パンチプレス機において多数の板材の加工を行うと当然ながらブラシの先端部に磨耗を生じ、板材の搬送水準であるパスラインが下降して、板材の移動位置決め時に板材裏面がダイ上面に接触した状態で移動位置決めが行われることになり、製品の裏傷発生の大きな要因となっている。
【0004】
また、ブラシテーブルの一部分のブラシのみが多く磨耗すると、ブラシテーブル上に材料を水平に支持することが出来なくなり、加工精度が悪くなるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−256368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は、加工後の製品に裏傷が発生したのを見て、初めてブラシが摩耗していることを知り、パスラインの調整や摩耗したブラシの交換を行っている。すなわち、裏傷による製品不良が発生してからパスラインの調整や摩耗したブラシの交換を行なっているという問題がある。
【0007】
また、パスラインの調整は、ブラシテーブル上に小さな板材を滑らせて、その板材とダイとが接触しているか否か、すなわち、ダイ上面との間に間隙Sが有るかか否かを作業者が感覚的に判断してパスラインの調整を実施しているので、ダイ上面とブラシの被加工材支持平面との間隙の初期値S(例えば、S=0.5mm)に迅速かつ正確に調整することが難しい。
【0008】
本発明は上述の如き問題を解決するためになされたものであり、本発明の課題は、ブラシテーブルのブラシの摩耗を自動的に測定できるパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決する手段として請求項1に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法は、パスライン直下のダイに対向してパンチを昇降可能に保持するパンチ装着孔を備えると共に、前記ダイの周囲に被加工材を前記パスライン位置に支持するブラシテーブルを備えたパンチプレスにおいて、前記パンチを上方から押圧する昇降位置決め自在の打撃子の下面と、測定用ダミーダイの上面とに接触可能な接触子を内蔵する測定用パンチ組立体を前記パンチ装着孔に昇降可能に装着し、前記打撃子により前記測定用パンチ組立体を押圧下降させて、前記接触子が前記測定用ダミーダイの上面に接触したときの前記打撃子の所定位置からの下降距離(L)を検出し、前記ブラシテーブルに板厚Tの測定用ゲージ板を載置した状態において、前記打撃子により前記測定用パンチ組立体を押圧下降させて、前記接触子が前記測定用ゲージ板の上面に接触したときの前記打撃子の所定位置からの下降距離(L)を検出し、この検出された前記打撃子の下降距離(L、L)及び前記測定用ゲージ板の板厚(T)を基にして前記ブラシテーブルの被加工材支持平面と前記測定用ダミーダイ上面との間隙(S)を演算して求めることを要旨とするものである。
【0010】
請求項2に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法は、請求項1に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法において、前記下降距離(L)は、前記打撃子により前記測定用パンチ組立体を押圧下降させたとき、前記打撃子と前記測定用ダミーダイとの間が前記接触子を介して電気的に導通したときの前記打撃子の上死点からの下降距離であり、前記下降距離(L)は、前記打撃子と前記測定用ゲージ板との間が前記接触子を介して電気的に導通したときの前記打撃子の上死点からの下降距離であることを要旨とするものである。
【0011】
請求項3に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置は、パスライン直下のダイ基準位置へダイを昇降自在のダイホルダと、ダイに対向してパンチを昇降可能に保持するパンチ装着孔を備えると共に、前記ダイの周囲に被加工材を前記パスライン位置に支持するブラシテーブルを備えたパンチプレスにおいて、打撃子の下面と測定用ダミーダイの上面とに接触可能な接触子を前記パンチ装着孔に昇降可能に装着した測定用パンチ組立体と、前記打撃子により前記測定用パンチ組立体を押圧下降させて、前記接触子が前記測定用ダミーダイの上面に接触したとき又は前記接触子が前記測定用ゲージ板の上面に接触したときの前記打撃子の所定位置からの下降距離(L)又は(L)を検出する打撃子移動距離測定手段と、前記測定用ゲージ板の板厚(T)を記憶したメモリと前記打撃子移動距離測定手段で検出した下降距離(L、L)と前記メモリに記憶した板厚(T)に基づき間隙(S)を演算する演算手段を備えることを要旨とするものである。
【0012】
請求項4に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置は、請求項3に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置において、前記打撃子移動距離測定手段は、前記打撃子と前記測定用ダミーダイとの間の前記接触子を介した導通又は、前記打撃子と前記測定用ゲージ板との間の前記接触子を介した導通により検出することをを要旨とするものである。
【0013】
請求項5に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法は、X、Y軸方向に移動位置決め自在の被加工材クランプ装置を備えた被加工材位置決め手段と、ダイをZ軸方向の任意の位置へ昇降位置決め自在のダイ昇降手段と、前記ダイに対向してパンチを昇降可能に保持するパンチ装着孔を備えると共に前記ダイの周囲に被加工材をパスライン位置に支持するブラシテーブルを備えたパンチプレスにおいて、ダイを装着し、前記被加工材クランプ装置に被加工材をクランプして前記ダイ上方を移動させ、前記ダイを階段的に昇降位置決めさせ、これを繰り返し、上方を移動する前記被加工材の裏面に前記ダイが当接したときの、ダイ移動量を検出し、該ダイ移動量に基づいた前記ブラシテーブルの被加工材支持平面と前記ダイ上面との間隙(S)を検出することを要旨とするものである。
【0014】
請求項6に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法は、請求項5に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法において、前記ダイの被加工材の裏面への当接は、このダイ上を移動する前記被加工材の振動特性の変化を振動センサにより検出して該被加工材の裏面への前記ダイの当接を検知することを要旨とするものである。
【0015】
請求項7に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗量検出方法は、請求項1又は請求項5記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法において、前記間隙(S)と予め設定した間隙の警告閾値を比較し、前記間隙(S)が該間隙(S)の警告閾値を越えた場合は警告することを要旨とするものである。
【0016】
請求項8に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗量検出装置は、X、Y軸方向に移動位置決め自在の被加工材クランプ装置を備えた被加工材位置決め手段と、ダイをZ軸方向の任意の位置へ昇降位置決め自在のダイ昇降手段と、前記ダイに対向してパンチを昇降可能に保持するパンチ装着孔を備えると共に、前記ダイの周囲に被加工材をパスライン位置に支持するブラシテーブルを備えたパンチプレスにおいて、前記被加工材クランプ装置に被加工材をクランプして前記ダイ上方を移動させ、上方を移動する前記被加工材の裏面に前記ダイに当接したことを検出する検出手段と、この検出手段が検出したときの、前記ダイ移動量を測定するダイ移動量測定手段を備えることを要旨とするものである。
【0017】
請求項9に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置は、請求項8に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置において、前記ダイが被加工材の裏面に当接した際に、前記被加工材の振動特性の変化を振動センサにより検出して該被加工材の裏面へのダイの当接を検知して該ダイの移動量を検出することを要旨とするものである。
【0018】
請求項10に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置は、請求項3又は請求項8に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置において、予め設定した警告閾値を記憶するメモリと前記間隙(S)又は前記ダイ移動量測定手段で測定したダイ移動量に基づく間隙と、予め設定した警告閾値とを比較する警告閾値比較手段と、この比較手段で比較した結果、前記間隙が前記警告閾値を越えた場合は警告する警告手段を備えることを要旨とするものである。
【0019】
請求項11に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置は、請求項3又は請求項8に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置において、ブラシテーブルの沈み込み量を板厚毎に記憶したメモリを備えることを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本願発明のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法及び装置によれば、測定用のダミーダイと測定用パンチ組立体とを使用してブラシテーブルにおけるブラシの摩耗を自動的に検出することができる。
【0021】
また、本願発明のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法及び装置によれば、パスラインの調整や摩耗したブラシの交換を製品に裏傷が発生する前に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願発明のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置を備えたパンチプレスの正面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】本願発明に係るブラシ摩耗量検出装置の第1の実施形態の説明図。
【図4】第1の実施形態において、ダイ基準位置に位置決めされた測定用ダミーダイの上面の検出状況を説明する図。
【図5】第1の実施形態において、ブラシテーブルの被加工材支持平面の位置の検出状況を説明する図。
【図6】ブラシ摩耗量の測定結果及び警告メッセージ等を表示装置に表示した図。
【図7】第2の実施形態のブラシ摩耗量検出装置の平面図。
【図8】本願発明に係るブラシ摩耗量検出装置の第2の実施形態の測定過程の説明図。
【図9】本願発明に係るパンチプレスを制御する数値制御装置のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面によって説明する。なお、本願発明の説明において使用するパスラインなる用語は、被加工材をブラシテーブル上に載置したときの被加工材支持平面を表すものとして使用している。したがって、被加工材の重量(板厚)によっては、パスラインが下降してダイ上面との間隙は変化するものである。
【0024】
図1は、本願発明のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置を備えた公知のタレットパンチプレスの概略の説明図である。
【0025】
図1および図2を参照するに、タレットパンチプレス1は、門型フレーム2を備えており、門型フレーム2は下部フレーム4と、左右コラム6、8と上部フレーム10からなっている。
【0026】
上部フレーム10には、上部タレットディスク3が設けてあり、下部フレーム4には下部タレットディスク5が設けてある。この上下のタレットディスク3、5には、それぞれ多数のパンチ7とダイ9からなる金型セットが装着してあり、前記上下のタレットディスク3、5を回転させることにより、任意の金型セットが、例えば油圧シリンダの如き打撃子駆動手段14により昇降駆動される打撃子11の直下へ位置決めできる様に設けてある。
【0027】
被加工材Wは、被加工材位置決め手段12によりX軸方向とY軸方向に移動位置決め自在に設けてある。すなわち、被加工材位置決め手段12は、X軸キャリッジ13に一対の被加工材クランプ装置15を有しており、このX軸キャリッジ13は、X軸サーボモータ17にX軸サーボモータ17に駆動されるX軸送りねじ19によってX軸方向に移動位置決め自在に設けてある。また、X軸キャリッジ13が設けてあるキャリッジベース21は、Y軸サーボモータ23によりY軸送りねじ(図示省略)を介してY軸方向に移動位置決め自在に設けてある。
【0028】
したがって、被加工材クランプ装置15に把持された被加工材Wの任意な加工位置を前記打撃子11の直下に位置決めされたパンチ7とダイ9からなる金型セットの間へ位置決めし、打ち抜き加工を行うことができる。
【0029】
図2に示す如く、前記下部フレーム4の上部には、固定ブラシテーブル25aが設けてあり、下部タレットディスク5の周囲にも固定ブラシテーブル25bが設けてある。
【0030】
また、前記キャリッジベース21には、前記固定ブラシテーブル25aの両側をキャリッジベース21と共にY軸方向に移動する移動ブラシテーブル25cが設けてある。
【0031】
上述の固定または移動ブラシテーブル25(a,b,c)には、被加工材Wをダイ上面と適宜な間隔をもって支持するブラシ27がテーブル表面に適宜な間隔で植設してある。
【0032】
図3〜図5には、本願発明に係るブラシテーブルブラシ摩耗検出装置の第1の実施形態を示してある。
【0033】
図3を参照するに、前記上部タレットディスク3に設けられたガイド孔29には、測定用パンチ組立体31が昇降可能に装着してある。
【0034】
上記測定用パンチ組立体31は、前記ガイド孔29に摺動自在に嵌合するガイド本体33と、後述の測定用ダミーダイ9dと前記打撃子11との間を電気的に導通させる棒状の接触子37と、この接触子と前記ガイド本体33とを電気的に絶縁する上、中、下部絶縁部材39、40、42等からなっている。
【0035】
前記ガイド孔29に摺動自在に嵌合する前記ガイド本体33の摺動部33gの上部にはフランジ部33fが設けてあり、このフランジ部33fの上面に前記ガイド本体33と同軸のパンチヘッド35が一体的に設けてある。
【0036】
前記ガイド本体33の内部、すなわち、ガイド本体33の摺動部33g及びパンチヘッド35の内部には、前記接触子37を昇降可能にガイドする上部絶縁部材39と、中、下部絶縁部材40、42とが設けてある。
【0037】
前記接触子37は、前記上部絶縁部材39に昇降自在にガイドされるガイド軸部37jを有し、このガイド軸部37jの上端部には、上部絶縁部材39の頭部39hに設けた座繰り穴41に係合して、前記ガイド軸部37jの下方向への移動を規制する係止部43が設けてある。なお、係止部43の上面は座繰り穴41の上面よりαmm下に位置する様に設定してある。例えば、α=1mmでも可。
【0038】
また、前記ガイド軸部37jの下部には、検出ピン保持部45がガイド軸部37jに一体的に設けてある。
【0039】
前記上部絶縁部材39の下部には、下方に開放した円筒状の空間47を有する中部絶縁部材40が設けてある。この中部絶縁部材40の下部に下部絶縁部材42が設けてある。
【0040】
前記検出ピン保持部45は、前記ガイド本体33の下部絶縁部材42に昇降可能に保持されているが、前記空間47に設けたスプリング44により常時下方に押圧付勢されており、検出ピン保持部45に設けたフランジ部45fが前記下部絶縁部材42の上面に係合することにより、検出ピン保持部45の下方への移動が規制されている。
【0041】
また、前記検出ピン保持部45には、後述の測定用ダミーダイ9dに係合可能な検出ピン49が出没自在に設けてある。この検出ピン49は検出ピン保持部45内部に設けたスプリング51により常時下方へ押圧付勢されている。
【0042】
前記上部タレットディスク3のガイド孔29の上部には、座繰り穴53が設けてある。そして、この座繰り穴53と前記ガイド本体33のフランジ部33fとの間には、複数個の圧縮スプリングからなるリフトスプリング55が設けてあって、前記測定用パンチ組立体31がほぼ一定の高さに保持されるように設けてある。
【0043】
前記打撃子11の直下へ位置決めされた前記測定用パンチ組立体31に対向する位置にあるダイホルダ57には、測定用ダミーダイ9dが装着してある。
【0044】
前記打撃子11と下部タレットディスク5の間には、導通回路59が設けてある。この導通回路59は、例えば、電磁コイル61と、a接点61a、直流電源63により構成してあり、打撃子11と下部タレットディスク5の間の電気的導通の有無を表す信号62(SG1、SG2)をタレットパンチプレス1を制御する数値制御装置64に送信するようになっている。
【0045】
また、前記打撃子11の移動距離(Z軸座標)を検出する打撃子移動距離測定手段66として、例えば、パルスエンコーダ、リニアスケール等の公知の位置検出手段(図示省略)が設けてあり、前記打撃子11と下部タレットディスク5間が電気的に導通した瞬間の打撃子11の移動距離を検知することができる様になっている。
【0046】
なお、測定用パンチ組立体31のパンチハイトPHは、通常のパンチ組立体のパンチハイトと同一に設定してある。
【0047】
次に、上記構成のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置において、ブラシの摩耗を検出する方法を説明する。
【0048】
前記測定用パンチ組立体31とダミーダイ9dが打撃子11の直下に位置決めされた図3の状態において、打撃子11の下端面は停止基準位置67にあって、打撃子11の下端面と測定用パンチ組立体31の上部絶縁部材39の頭部39hとは離隔している。
【0049】
なお、通常、打撃子11の停止位置はメカニカルプレスでは上死点に位置し、油圧プレスの場合にはピストンストロークの上限位置である。しかしながら、必ずしも上死点または上限位置にある必要はない。
【0050】
前記測定用パンチ組立体31とダミーダイ9dが打撃子11の下に位置決めされた図3の状態から、打撃子11を下降させると打撃子11の下端部が、先ず上部絶縁部材39の頭部39hに当接する。
【0051】
さらに、打撃子11が下降すると、上部絶縁部材39と共にガイド本体33がリフトスプリング55に抗して下降する。そして、検出ピン49の先端が前記測定用ダミーダイ9dに当接すると、検出ピン保持部45に内蔵されたスプリング51を介して、検出ピン保持部45がスプリング44の押圧力に抗して上昇する。すなわち、検出ピン保持部45と一体的な接触子37がスプリング44の押圧付勢力に抗して上昇することになる。
【0052】
その結果、図4に示すように、接触子37が上部絶縁部材39に対して上昇して、接触子37の係止部43が打撃子11に接触し、打撃子11と測定用ダミーダイ9dとの間が電気的に導通した状態となる。
【0053】
打撃子11と測定用ダミーダイ9dとの間が電気的に導通すると、導通回路59のa接点61が閉じて、数値制御装置64に電気的導通を示す信号が送信され、数値制御装置64では、この電気的導通信号を受信した際の打撃子11の停止基準位置67からの下降距離Lを検出する。
【0054】
次いで、図5に示す如く、測定用ダミーダイ9dの周囲のブラシテーブル25bの上面に厚さTの測定用ゲージ板69を載置して、前記下降距離Lの検出場合と同様にして、打撃子11と測定用ゲージ板69との間の電気的導通を検出して、その際の打撃子11の停止基準位置67からの下降距離Lを検出する。
【0055】
この際には、打撃子11と測定用ゲージ板69との間に前記導通回路59が入る様に設けてある。なお、測定用ゲージ板69を前記被加工材クランプ装置15にクランプすれば、測定用ゲージ板69は、被加工材クランプ装置15を介して前記導通回路59に電気的に接続された状態となる。
【0056】
上述の如くして、検出された前記打撃子の下降距離(L、L)及び前記測定用ゲージ板の板厚Tを基に、前記ブラシテーブルの被加工材支持平面PLと前記測定用ダミーダイ上面との間隙Sを演算して求めることができる。
【0057】
なお、被加工材Wをブラシ上に載置していないときの間隙Sは、被加工材の重量(板厚)により、ブラシの被加工材支持平面PLが下がるので、被加工材の重量(板厚)に応じたブラシの沈み量を補正をする必要がある。
【0058】
上述のブラシの沈み補正値ΔSとすれば、前記間隙Sは次式(1)より求められる。なお、被加工材の板厚が薄くて被加工材が軽い場合には、上述の補正値ΔSがゼロとして計算する。
(数1)
S=L−(L+T)+ΔS・・・(1)
【0059】
前記被加工材Wの板厚によるブラシの沈み補正値ΔSおよびブラシの再調整または、交換時期を警告する際の警告閾値は、例えば、次の(表1)に示す様に板厚毎に適宜な警告閾値が設定してある。
【0060】
【表1】

【0061】
かくして間隙(S)が求められ、その間隙Sと板厚毎に予め設定された警告閾値とを比較して間隙(S)が警告閾値を越えた場合には、前記数値制御装置64の表示装置65に間隙(S)の測定値とブラシ再調整又は交換時期等を警告メッセージと共に表示する。なお、前記(表1)において、補正値ΔSを考慮した警告閾値を設定すれば、補正値ΔSは不要となる。また間隙Sと間隙の初期値Sとの差からブラシ摩耗量(S−S)が求められる。
【0062】
図6は、前記数値制御装置64の表示装置65に表示するブラシ診断画面の表示例であり、間隙Sの測定値Sとブラシ再調整又は交換時期等を警告メッセージと共に表示した例である。この表示例は、板厚が1.6の場合で、間隙Sの測定値Sが0.185であり、板厚が1.6の場合における警告閾値の設定値が0.20であって警告閾値より間隙Sが小さいため、このような警告表示がなされたものである。
【0063】
図7、図8は、本願発明に係るブラシテーブルブラシ摩耗検出装置の第2の実施形態を説明する図である。
【0064】
図7は、前記図2における被加工材クランプ装置15と、下部タレットディスク5の近傍を示したものであり、被加工材クランプ装置15のひとつには振動センサ71が設けてある。
【0065】
図8(a)は、測定用ダミーダイ9dがパスライン直下のダイ基準位置Dに位置し、被加工材Wの裏面との間隙がS(S≦S)の状態を示してある。
【0066】
上記状態において、ブラシの摩耗量を検出する際には、前記被加工材クランプ装置15に被加工材Wをクランプして、前記測定用ダミーダイ9dの上方をX軸又はY軸方向に移動させると同時に、測定用ダミーダイ9dを前記ダイ基準位置Dから、少なくとも前記ブラシテーブル25bの被加工材支持平面であるパスラインPLとの間隙Sの初期値Sより大きい距離をダイ昇降手段(図示省略)により、測定用ダミーダイ9dが被加工材Wをに接触するまでの間を細かく階段的に昇降位置決めさせる。
【0067】
図8(a)に示すように、被加工材Wと測定用ダミーダイ9dとが未だ接触していない状態において、被加工材Wを移動させた場合には被加工材Wとブラシテーブル25bのブラシ27との摩擦により発生する振動波形73が振動センサ71により検出される。
【0068】
図8(b)は、ダイ基準位置DからΔdだけ測定用ダミーダイ9dを上昇させた場合で、前記振動波形73が振動センサ71により検出されば、測定用ダミーダイ9dと被加工材Wとが当接しておらず、このときの間隙Sは、S=Δdとなる。
【0069】
図8(c)は、前記Δdより大きいΔd(Δd≧S)を上昇させた場合で、前記振動センサ71により、被加工材Wと測定用ダミーダイ9dとの摩擦によって発生する振動波形75が振動センサ71により検出された場合には、測定用ダミーダイ9dと被加工材Wとが当接(S≦0)したしたものと判断される。
【0070】
被加工材Wをブラシ上に載置していないときの間隙Sは、被加工材の重量(板厚)により、ブラシの被加工材支持平面PLが下がるので、被加工材の重量(板厚)に応じたブラシの沈み量を補正した次式(2)より求められる。
をする必要がある。
(数2)
S=Δd+ΔS・・・(2)
【0071】
なお、被加工材の板厚が薄くて軽い場合には、上述の補正値ΔSはゼロとして計算すればよい。また、数式(2)で求めた間隙Sと間隙の初期値Sとの差から前記ブラシテーブルにおけるブラシ摩耗量(S−S)を求めることができる。
【0072】
図9に示すように、数値制御装置64は、CPU81に連なるデータバス83にRAM85及びROM87を備え、このデータバス83には、キーボードの如き入力手段89、CRTの如き出力手段65が接続してある。また、このデータバス83には、プログラムを記憶するプログラムメモリ93、後述する初期設定値を記憶する初期設定値メモリ95、検出データを記憶する検出データメモリ97が接続してある。
【0073】
前記初期設定メモリ95には、ブラシ摩耗量検出時に用いる測定用ゲージ板69の板厚(T)、ブラシテーブル25の被加工材支持面であるパスラインPLと前記測定用ダミーダイ9dの上面との間隙Sの初期値S、測定用ダミーダイ9dのZ軸基準位置(D)、板厚毎のブラシの沈み補正値ΔS及び警告閾値等が設定記憶してある。
【0074】
また、前記検出データメモリ97には、打撃子の所定の停止基準位置67からの下降距離(L、L)、前記測定用ダミーダイ9dがダイ基準位置Dから上昇して被加工材の裏面に当接したときのZ軸移動量(Δd)、測定された間隙(S)等が記憶される。
【0075】
前記数値制御装置64には、間隙値S並びにこの間隙値Sと初期値Sからブラシ摩耗量(S−S)を演算して求める演算手段99、被加工材Wと測定用ダミーダイ9dとが当接した状態で被加工材が移動する際に発生する振動波形と被加工材Wがブラシテーブル25上を移動する際に発生する振動波形とを比較する振動波形比較手段101、間隙値Sと警告閾値とを比較する警告閾値比較手段103が前記データバス83を介して接続してある。
【0076】
さらに、前記数値制御装置64のデータバス83には、前記打撃子移動距離測定手段66、電気的導通の有無を表す信号62(SG1、SG2)、振動センサ71及びダイ移動量測定手段(図示省略)等からの入力と、被加工材位置決め手段12、打撃子駆動手段14及びダイ昇降手段(図示省略)への出力が接続してある。
【符号の説明】
【0077】
1 タレットパンチプレス
2 門型フレーム
3 上部タレットディスク
4 下部フレーム
5 下部タレットディスク
6 左コラム
7 パンチ
8 右コラム
9 ダイ
9d 測定用ダミーダイ
10 上部フレーム
11 打撃子
12 被加工材位置決め手段
13 X軸キャリッジ
14 打撃子駆動手段
15 被加工材クランプ装置
17 X軸サーボモータ
19 X軸送りねじ
21 キャリッジベース
23 Y軸サーボモータ
25(a、b) 固定ブラシテーブル
25c 移動ブラシテーブル
27 ブラシ
29 ガイド孔
31 測定用パンチ組立体
33 ガイド本体
33f フランジ部
33g 摺動部
35 パンチヘッド
37 接触子
37j ガイド軸部
39 上部絶縁部材
39h 頭部
40 中部絶縁部材
41、53 座繰り穴
42 下部の絶縁部材
43 頭部
44、51 スプリング
45 検出ピン保持部
45f フランジ部
47 空間
49 検出ピン
55 リフトスプリング
57 ダイホルダ
59 導通回路
61 電磁コイル
61a a接点
63 直流電源
64 数値制御装置
67 停止基準位置
69 測定用ゲージ板
71 振動センサ
73、75 振動波形
ダイ基準位置
PH パンチハイト
PL パスライン
間隙Sの初期値
W 被加工材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パスライン直下のダイに対向してパンチを昇降可能に保持するパンチ装着孔を備えると共に、前記ダイの周囲に被加工材を前記パスライン位置に支持するブラシテーブルを備えたパンチプレスにおいて、前記パンチを上方から押圧する昇降位置決め自在の打撃子の下面と、測定用ダミーダイの上面とに接触可能な接触子を内蔵する測定用パンチ組立体を前記パンチ装着孔に昇降可能に装着し、前記打撃子により前記測定用パンチ組立体を押圧下降させて、前記接触子が前記測定用ダミーダイの上面に接触したときの前記打撃子の所定位置からの下降距離(L)を検出し、前記ブラシテーブルに板厚Tの測定用ゲージ板を載置した状態において、前記打撃子により前記測定用パンチ組立体を押圧下降させて、前記接触子が前記測定用ゲージ板の上面に接触したときの前記打撃子の所定位置からの下降距離(L)を検出し、この検出された前記打撃子の下降距離(L、L)及び前記測定用ゲージ板の板厚(T)を基にして前記ブラシテーブルの被加工材支持平面と前記測定用ダミーダイ上面との間隙(S)を演算して求めることを特徴とするパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法において、前記下降距離(L)は、前記打撃子により前記測定用パンチ組立体を押圧下降させたとき、前記打撃子と前記測定用ダミーダイとの間が前記接触子を介して電気的に導通したときの前記打撃子の所定位置からの下降距離であり、前記下降距離(L)は、前記打撃子と前記測定用ゲージ板との間が前記接触子を介して電気的に導通したときの前記打撃子の所定位置からの下降距離であることを特徴とするパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法。
【請求項3】
パスライン直下のダイ基準位置へダイを昇降自在のダイホルダと、ダイに対向してパンチを昇降可能に保持するパンチ装着孔を備えると共に、前記ダイの周囲に被加工材を前記パスライン位置に支持するブラシテーブルを備えたパンチプレスにおいて、打撃子の下面と測定用ダミーダイの上面とに接触可能な接触子を前記パンチ装着孔に昇降可能に装着した測定用パンチ組立体と、前記打撃子により前記測定用パンチ組立体を押圧下降させて、前記接触子が前記測定用ダミーダイの上面に接触したとき又は前記接触子が前記測定用ゲージ板の上面に接触したときの前記打撃子の所定位置からの下降距離(L)又は(L)を検出する打撃子移動距離測定手段と、前記測定用ゲージ板の板厚(T)を記憶したメモリと前記打撃子移動距離測定手段で検出した下降距離(L、L)と前記メモリに記憶した板厚(T)に基づき間隙(S)を演算する演算手段を備えることを特徴とするパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置において、前記打撃子移動距離測定手段は、前記打撃子と前記測定用ダミーダイとの間の前記接触子を介した導通又は、前記打撃子と前記測定用ゲージ板との間の前記接触子を介した導通により検出することを特徴とするパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置。
【請求項5】
X、Y軸方向に移動位置決め自在の被加工材クランプ装置を備えた被加工材位置決め手段と、ダイをZ軸方向の任意の位置へ昇降位置決め自在のダイ昇降手段と、前記ダイに対向してパンチを昇降可能に保持するパンチ装着孔を備えると共に前記ダイの周囲に被加工材をパスライン位置に支持するブラシテーブルを備えたパンチプレスにおいて、ダイを装着し、前記被加工材クランプ装置に被加工材をクランプして前記ダイ上方を移動させ、前記ダイを階段的に昇降位置決めさせ、これを繰り返し、上方を移動する前記被加工材の裏面に前記ダイが当接したときの、ダイ移動量を検出し、該ダイ移動量に基づいた前記ブラシテーブルの被加工材支持平面と前記ダイ上面との間隙(S)を検出することを特徴とするパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法。
【請求項6】
請求項5に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法において、前記ダイの被加工材の裏面への当接は、このダイ上を移動する前記被加工材の振動特性の変化を振動センサにより検出して該被加工材の裏面への前記ダイの当接を検知することを特徴とするパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗量検出方法。
【請求項7】
請求項1又は請求項5記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法において、前記間隙(S)と予め設定した間隙の警告閾値を比較し、前記間隙(S)が該間隙(S)の警告閾値を越えた場合は警告することを特徴とするパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出方法。
【請求項8】
X、Y軸方向に移動位置決め自在の被加工材クランプ装置を備えた被加工材位置決め手段と、ダイをZ軸方向の任意の位置へ昇降位置決め自在のダイ昇降手段と、前記ダイに対向してパンチを昇降可能に保持するパンチ装着孔を備えると共に、前記ダイの周囲に被加工材をパスライン位置に支持するブラシテーブルを備えたパンチプレスにおいて、前記被加工材クランプ装置に被加工材をクランプして前記ダイ上方を移動させ、上方を移動する前記被加工材の裏面に前記ダイに当接したことを検出する検出手段と、この検出手段が検出したときの、前記ダイ移動量を測定するダイ移動量測定手段を備えることを特徴とするパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置において、前記ダイが被加工材の裏面に当接した際に、前記被加工材の振動特性の変化を振動センサにより検出して該被加工材の裏面へのダイの当接を検知して該ダイの移動量を検出することを特徴とするパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置。
【請求項10】
請求項3又は請求項8に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置において、予め設定した警告閾値を記憶するメモリと前記間隙(S)又は前記ダイ移動量測定手段で測定したダイ移動量に基づく間隙と、予め設定した警告閾値とを比較する警告閾値比較手段と、この比較手段で比較した結果、前記間隙が前記警告閾値を越えた場合は警告する警告手段を備えることを特徴とするパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置。
【請求項11】
請求項3又は請求項8に記載のパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗検出装置において、ブラシテーブルの沈み込み量を板厚毎に記憶したメモリを備えることを特徴とするパンチプレスのブラシテーブルブラシ摩耗量検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−66930(P2013−66930A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209194(P2011−209194)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【Fターム(参考)】