パン生地構造及びパン生地の製造方法
【目的】切断面の所望の位置に模様が現れるパンを製造するためのパン生地構造及びその製造方法を提供する。
【構成】模様生地1の周りに包囲生地2を巻きつけ、両端どうしを僅かに重ね合わせて、機械的強度が弱い緩衝部2aを形成させる。そして、包囲生地2の周面に外装生地3を巻き付けに、さらに包囲生地2の側面に側面生地4a、4bを貼り付ける。
【構成】模様生地1の周りに包囲生地2を巻きつけ、両端どうしを僅かに重ね合わせて、機械的強度が弱い緩衝部2aを形成させる。そして、包囲生地2の周面に外装生地3を巻き付けに、さらに包囲生地2の側面に側面生地4a、4bを貼り付ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断面に模様が現れるパンを製造するための、パン生地構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食パン、フランスパン、ロールパン等、様々な形状のパンが製造されており、その種類ごとに様々な構造のパン生地が用いられている。また、パンの形状を見栄えの良いものにするためのパン生地構造も提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−20234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、焼成されたパンを切断した場合に、所望の位置に模様が現れるパンを製造することは困難であった。このようなパンを製造しようとする場合、焼成後のパン生地の膨張を予測し、焼成後に望む位置に模様が収まるように、パン生地に異なる色の生地を仕込んでおくことが考えられる。しかし、パン生地が焼成によってどのように膨張するかを予め予測することは難しいため、模様生地が一方向に極端に膨張して模様が隅のほうに寄ったり、焼成されたパンの内部に空隙が生じたりして、模様を望みどおりの位置に形成させることは困難であった。
【0004】
本発明は、上記従来の実情に鑑みなされたものであり、切断面の所望の位置に模様が現れるパンを製造するためのパン生地構造及びその製造方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者は、上記課題解決のために様々なパン生地構造を試し、パン生地構造と切断面の模様との関係について鋭意研究を行った。その結果、模様を構成するための模様生地を包囲生地で包囲し、さらに包囲生地に機械的強度が弱くされた緩衝部を設ければ、上記従来の問題点を解決できることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明のパン生地構造は、径方向の切断面に模様が現れるパンを製造するためのパン生地構造であって、軸方向に延在し、焼成後に模様を構成する模様生地と、該模様生地の周面を包囲する包囲生地と、該包囲生地の周面を包囲する外装生地とを備えており、該包囲生地には機械的強度が弱くされた緩衝部が軸方向に延在して設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明のパン生地構造では、模様生地を包囲する包囲生地に、機械的強度が弱くされた緩衝部が軸方向に延在して設けられている。
模様生地はその保形のため包囲生地で包囲される必要がある。この包囲生地がないと、模様生地が他の生地と癒着して焼成後に所望の形状を得ることができない。
しかしながら、模様生地は色素を含んでいたりまた小さな生地を重ね合わせたりするので、更には包囲生地で包囲されているので、焼成したときの膨張率が他のパン生地(外装生地)と異なり、一般的には小さくなる。その結果、焼成したときパンの中に空間が出来るおそれがある。また、空間ができないまでも膨張率の差に起因して模様が位置ズレするおそれがある。
そこで機械的強度の小さい緩衝部を設けておくと、包囲生地で覆われた模様生地の膨張率が外装生地に比べて小さいときにも当該緩衝部の存在する部分において優先的に膨張し、膨張率の差を緩和する。その結果、空間の形成や位置ズレが未然に防止されると考えられる。
【0008】
本発明における緩衝部は、パン生地を焼成する場合に上方となる位置に設けることが好ましい。発明者の試験結果によれば、緩衝部をこのような位置に設ければ、焼成したパンの切断面に現れる模様の位置の偏りを最も小さくすることができる。
【0009】
また、緩衝部における機械的強度を弱くするための構造としては、特に限定はないが、例えば、包囲生地の両端どうしを僅かに重ね合わせた構造としたり、包囲生地の両端どうしを突き合わせた構造としたりすることができる。また、包囲生地の軸方向に、包丁で切り込みを入れたり、一定間隔ごとに孔を開けたりして機械的強度を弱め、緩衝部とすることもできる。さらには、緩衝部を複数箇所設けることも可能である。
【0010】
また、包囲生地の周面であってパン生地を焼成する場合に下方となる位置には、軸方向に延在する高さ調整生地が貼り付けられていることが好ましい。発明者の試験結果によれば、本発明のパン生地構造を有するパン生地を焼成した場合、模様が下方に移動し易い傾向がある。このため、高さ調整生地を、パン生地を焼成する場合に下方となる位置に軸方向に延在させれば、高さ調整生地が膨張して模様を上に押し上げることとなり、模様の位置が下方に下がることを防止することができる。
【0011】
また、外装生地は複数の層とすることが好ましい。発明者の試験結果によれば、食パンのような直方体形状のパンを作る場合、包囲生地を複数の層からなる外装生地で包囲することにより、焼成されたパンの側面の一部が径内方向に凹むことを防止することができる。
【0012】
本発明のパン生地の製造方法は、径方向の切断面に模様が現れるパンを製造するためのパン生地を製造するためのパン生地の製造方法であって、軸方向に延在し、焼成後に模様を構成するための模様生地と、該模様生地の周面を包囲するための包囲生地と、該包囲生地の周面を包囲するための外装生地とを用意する準備工程と、該模様生地を該包囲生地で包囲し、該包囲生地の両端どうしを僅かに重ね合わせ、あるいは突き合わせることによって、軸方向に機械的強度が弱くされた緩衝部を設ける包囲工程と、該包囲生地の周面を外装生地で包囲してパン生地とする外装工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
上述したように、こうして製造したパン生地を焼成すれば、焼成後の模様の位置を常にほぼ同じ位置に収めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施例を比較例と比較しつつ説明する。
(実施例1)
<準備工程>
器に185mlのぬるま湯を入れ、砂糖を10g加え、さらにドライイースト3gを全体に広げるように振り入れ数分間放置することにより、イースト菌の予備発酵液とする。ボールに強力粉300g、スキムミルク6g、無塩バター12g、塩4gを入れ、さらにその中へ上記予備発酵液を入れて捏ね、白色のパン生地とする。さらに、パン生地の一部を分け取り、紅麹や抹茶粉を練り込んで、色付けしたパン生地を作る。これらのパン生地を丸めてボールに入れ、ラップをかけて30〜40°Cで50分間放置して一次発酵させる。
【0015】
一次発酵が終わったパン生地の表面をこぶしの背で軽く押し、ガス抜きをする。その後、白色のパン生地の一部を分け取り、図1に示すように、長方形板形状に延ばして板生地1aとする。さらに、色付けしたパン生地を板生地1aの幅と同じ長さとなるように切り出して短冊生地1b〜1hを作り、そのうち短冊生地1b〜1gを板生地1a上に所定の間隔で並べ、短冊生地1hを板生地1aの下の端部に貼り付ける。そして、短冊生地1hを中心にして板生地1a及び短冊生地1b〜1hを巻つけ、図2に示すロール形状の模様生地1とする。
【0016】
残りの白色のパン生地から、図3に示すように、模様生地1の長さと同じ幅を有する長方形板状の包囲生地2及び外装生地3と、円盤状の2枚の側面生地4a、4bとを作る。
【0017】
<包囲工程>
そして、図4に示すように、模様生地1の周りに包囲生地2を巻き付ける。この際、図5にも示すように、包囲生地2の両端どうしを僅かに重ね合わせることにより、機械的強度が弱い緩衝部2aを形成させる。そして、包囲生地2の周面に外装生地3を巻き付けに、さらに包囲生地2の側面に図2に示す側面生地4a、4bを貼り付ける。
【0018】
<焼成工程>
以上のようにして得られたパン生地を、緩衝部2aが上方となるように直方体容器形状のパン焼き用容器に入れ、30〜40°Cで15〜20分間放置して二次発酵を行う。その後、オーブンで190〜200°C、35分間の焼成を行った後、焼きあがった食パンを取り出す。
【0019】
(実施例2)
実施例2では、図6に示すように、模様生地1の周面であって緩衝部2aと反対側の位置に、高さ調整生地5を貼り付けた後、さらに包囲生地2を巻きつけた。その他の構成は実施例1のパン生地構造と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0020】
(実施例3)
実施例3では、図7に示すように、包囲生地2の周面を2枚の外装生地6a、6bで包囲した。その他の構成は実施例2のパン生地構造と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0021】
(比較例1)
比較例1では、図8に示すように、模様生地1を包囲生地7で包囲する際、包囲生地7の両端どうしの重ね合わせ部7aの面積を広くすることにより、重ね合わせ部7aがしっかりと張り合わされ、機械的強度が強くされている。その他の構成は実施例1のパン生地構造と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0022】
上記実施例1〜3及び比較例1の食パンを包丁によって径方向に切断し、その断面を観察した。その結果、実施例1の食パンは、図9に示すように、バラの形状の模様8がほぼ中央のやや下寄りの位置に現れ、その再現性も良好であった。これに対して、比較例1の食パンは、バラ形状の模様の位置が一定せず、端に寄ったり、内部に空洞が生じたりした。以上の結果から、図4及び図5に示すように、模様生地1を包囲生地2によって包囲する場合に、包囲生地2の両端どうしを僅かに重ね合わせただけの、機械的強度を弱くされた緩衝部2aを設ければ、焼成後における模様の位置が、安定してほぼ中央部に位置することが分かった。
【0023】
また、高さ調整生地5(図6及び図7参照)を設けた実施例2及び実施例3では、実施例1と比較して、模様の位置がさらに正確に中央に位置した。これは、模様生地1と包囲生地2の間に設けた高さ調整生地5が焼成によって膨らみ、下方に下がる傾向のある模様生地2を上方に押し上げるためである。
【0024】
また、実施例1、2の食パンは、図10に示すように、焼成されたパンの側面の中央部分が径内方向に少し凹んでいた。これに対し、図7で示すように、包囲生地2の周面を2枚の外装生地6a、6bで包囲した実施例3の食パンでは、図11に示すように、そのような凹みはほとんど生じなかった。このことから、外装生地を複数の層とすることにより、パンの側面が径内方向に凹むことを防止できることが分かった。
【0025】
(実施例4)
実施例4では、実施例1における包囲生地2の緩衝部2a(図4参照)の替わりに、図12に示すように、包囲生地21の両端どうしを突き合わせた緩衝部21aとした。その他の構成は実施例1のパン生地構造と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0026】
(実施例5)
実施例5では、実施例1における包囲生地2の緩衝部2a(図4参照)の替わりに、図13に示すように、包囲生地31の上部の軸方向に包丁で切り込み入れ、これを緩衝部31aとした。その他の構成は実施例1のパン生地構造と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0027】
(実施例6)
実施例6では、実施例1における包囲生地2の緩衝部2a(図4参照)の替わりに、図14に示すように、包囲生地41の上部に小さな穴を軸方向に一列に多数設け、これを緩衝部41aとした。その他の構成は実施例1のパン生地構造と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0028】
上記実施例4〜6のパン生地を実施例1と同様の焼成条件で焼成し、焼成された食パンの断面を観察したところ、実施例1と同様、模様が中央やや下寄りの位置に現れ、その再現性も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、食パン、ロールパン、フランスパン、菓子パン等、さまざまなパンの内部に模様を一定の位置に形成させることができ、パン製造業において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】模様生地を巻く前の状態の斜視図である。
【図2】模様生地の側面図である。
【図3】包囲生地、外装生地及び側面生地の斜視図である。
【図4】実施例1における側面生地を貼り付ける前のパン生地の側面図である。
【図5】実施例1における緩衝部の側面図である。
【図6】実施例2における側面生地を貼り付ける前のパン生地の側面図である。
【図7】実施例3における側面生地を貼り付ける前のパン生地の側面図である。
【図8】比較例1における側面生地を貼り付ける前のパン生地の側面図である。
【図9】実施例1で焼成されたパンの径方向の断面図である。
【図10】実施例1、2で焼成されたパンの側面模式図である。
【図11】実施例3で焼成されたパンの側面模式図である。
【図12】実施例4の緩衝部の側面図である。
【図13】実施例5のパン生地の斜視図である。
【図14】実施例6のパン生地の斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1…模様生地
2、21…包囲生地
3,6a,6b…外装生地
2a,21a,31a,41a…緩衝部
5…高さ調整生地
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断面に模様が現れるパンを製造するための、パン生地構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食パン、フランスパン、ロールパン等、様々な形状のパンが製造されており、その種類ごとに様々な構造のパン生地が用いられている。また、パンの形状を見栄えの良いものにするためのパン生地構造も提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−20234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、焼成されたパンを切断した場合に、所望の位置に模様が現れるパンを製造することは困難であった。このようなパンを製造しようとする場合、焼成後のパン生地の膨張を予測し、焼成後に望む位置に模様が収まるように、パン生地に異なる色の生地を仕込んでおくことが考えられる。しかし、パン生地が焼成によってどのように膨張するかを予め予測することは難しいため、模様生地が一方向に極端に膨張して模様が隅のほうに寄ったり、焼成されたパンの内部に空隙が生じたりして、模様を望みどおりの位置に形成させることは困難であった。
【0004】
本発明は、上記従来の実情に鑑みなされたものであり、切断面の所望の位置に模様が現れるパンを製造するためのパン生地構造及びその製造方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者は、上記課題解決のために様々なパン生地構造を試し、パン生地構造と切断面の模様との関係について鋭意研究を行った。その結果、模様を構成するための模様生地を包囲生地で包囲し、さらに包囲生地に機械的強度が弱くされた緩衝部を設ければ、上記従来の問題点を解決できることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明のパン生地構造は、径方向の切断面に模様が現れるパンを製造するためのパン生地構造であって、軸方向に延在し、焼成後に模様を構成する模様生地と、該模様生地の周面を包囲する包囲生地と、該包囲生地の周面を包囲する外装生地とを備えており、該包囲生地には機械的強度が弱くされた緩衝部が軸方向に延在して設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明のパン生地構造では、模様生地を包囲する包囲生地に、機械的強度が弱くされた緩衝部が軸方向に延在して設けられている。
模様生地はその保形のため包囲生地で包囲される必要がある。この包囲生地がないと、模様生地が他の生地と癒着して焼成後に所望の形状を得ることができない。
しかしながら、模様生地は色素を含んでいたりまた小さな生地を重ね合わせたりするので、更には包囲生地で包囲されているので、焼成したときの膨張率が他のパン生地(外装生地)と異なり、一般的には小さくなる。その結果、焼成したときパンの中に空間が出来るおそれがある。また、空間ができないまでも膨張率の差に起因して模様が位置ズレするおそれがある。
そこで機械的強度の小さい緩衝部を設けておくと、包囲生地で覆われた模様生地の膨張率が外装生地に比べて小さいときにも当該緩衝部の存在する部分において優先的に膨張し、膨張率の差を緩和する。その結果、空間の形成や位置ズレが未然に防止されると考えられる。
【0008】
本発明における緩衝部は、パン生地を焼成する場合に上方となる位置に設けることが好ましい。発明者の試験結果によれば、緩衝部をこのような位置に設ければ、焼成したパンの切断面に現れる模様の位置の偏りを最も小さくすることができる。
【0009】
また、緩衝部における機械的強度を弱くするための構造としては、特に限定はないが、例えば、包囲生地の両端どうしを僅かに重ね合わせた構造としたり、包囲生地の両端どうしを突き合わせた構造としたりすることができる。また、包囲生地の軸方向に、包丁で切り込みを入れたり、一定間隔ごとに孔を開けたりして機械的強度を弱め、緩衝部とすることもできる。さらには、緩衝部を複数箇所設けることも可能である。
【0010】
また、包囲生地の周面であってパン生地を焼成する場合に下方となる位置には、軸方向に延在する高さ調整生地が貼り付けられていることが好ましい。発明者の試験結果によれば、本発明のパン生地構造を有するパン生地を焼成した場合、模様が下方に移動し易い傾向がある。このため、高さ調整生地を、パン生地を焼成する場合に下方となる位置に軸方向に延在させれば、高さ調整生地が膨張して模様を上に押し上げることとなり、模様の位置が下方に下がることを防止することができる。
【0011】
また、外装生地は複数の層とすることが好ましい。発明者の試験結果によれば、食パンのような直方体形状のパンを作る場合、包囲生地を複数の層からなる外装生地で包囲することにより、焼成されたパンの側面の一部が径内方向に凹むことを防止することができる。
【0012】
本発明のパン生地の製造方法は、径方向の切断面に模様が現れるパンを製造するためのパン生地を製造するためのパン生地の製造方法であって、軸方向に延在し、焼成後に模様を構成するための模様生地と、該模様生地の周面を包囲するための包囲生地と、該包囲生地の周面を包囲するための外装生地とを用意する準備工程と、該模様生地を該包囲生地で包囲し、該包囲生地の両端どうしを僅かに重ね合わせ、あるいは突き合わせることによって、軸方向に機械的強度が弱くされた緩衝部を設ける包囲工程と、該包囲生地の周面を外装生地で包囲してパン生地とする外装工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
上述したように、こうして製造したパン生地を焼成すれば、焼成後の模様の位置を常にほぼ同じ位置に収めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施例を比較例と比較しつつ説明する。
(実施例1)
<準備工程>
器に185mlのぬるま湯を入れ、砂糖を10g加え、さらにドライイースト3gを全体に広げるように振り入れ数分間放置することにより、イースト菌の予備発酵液とする。ボールに強力粉300g、スキムミルク6g、無塩バター12g、塩4gを入れ、さらにその中へ上記予備発酵液を入れて捏ね、白色のパン生地とする。さらに、パン生地の一部を分け取り、紅麹や抹茶粉を練り込んで、色付けしたパン生地を作る。これらのパン生地を丸めてボールに入れ、ラップをかけて30〜40°Cで50分間放置して一次発酵させる。
【0015】
一次発酵が終わったパン生地の表面をこぶしの背で軽く押し、ガス抜きをする。その後、白色のパン生地の一部を分け取り、図1に示すように、長方形板形状に延ばして板生地1aとする。さらに、色付けしたパン生地を板生地1aの幅と同じ長さとなるように切り出して短冊生地1b〜1hを作り、そのうち短冊生地1b〜1gを板生地1a上に所定の間隔で並べ、短冊生地1hを板生地1aの下の端部に貼り付ける。そして、短冊生地1hを中心にして板生地1a及び短冊生地1b〜1hを巻つけ、図2に示すロール形状の模様生地1とする。
【0016】
残りの白色のパン生地から、図3に示すように、模様生地1の長さと同じ幅を有する長方形板状の包囲生地2及び外装生地3と、円盤状の2枚の側面生地4a、4bとを作る。
【0017】
<包囲工程>
そして、図4に示すように、模様生地1の周りに包囲生地2を巻き付ける。この際、図5にも示すように、包囲生地2の両端どうしを僅かに重ね合わせることにより、機械的強度が弱い緩衝部2aを形成させる。そして、包囲生地2の周面に外装生地3を巻き付けに、さらに包囲生地2の側面に図2に示す側面生地4a、4bを貼り付ける。
【0018】
<焼成工程>
以上のようにして得られたパン生地を、緩衝部2aが上方となるように直方体容器形状のパン焼き用容器に入れ、30〜40°Cで15〜20分間放置して二次発酵を行う。その後、オーブンで190〜200°C、35分間の焼成を行った後、焼きあがった食パンを取り出す。
【0019】
(実施例2)
実施例2では、図6に示すように、模様生地1の周面であって緩衝部2aと反対側の位置に、高さ調整生地5を貼り付けた後、さらに包囲生地2を巻きつけた。その他の構成は実施例1のパン生地構造と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0020】
(実施例3)
実施例3では、図7に示すように、包囲生地2の周面を2枚の外装生地6a、6bで包囲した。その他の構成は実施例2のパン生地構造と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0021】
(比較例1)
比較例1では、図8に示すように、模様生地1を包囲生地7で包囲する際、包囲生地7の両端どうしの重ね合わせ部7aの面積を広くすることにより、重ね合わせ部7aがしっかりと張り合わされ、機械的強度が強くされている。その他の構成は実施例1のパン生地構造と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0022】
上記実施例1〜3及び比較例1の食パンを包丁によって径方向に切断し、その断面を観察した。その結果、実施例1の食パンは、図9に示すように、バラの形状の模様8がほぼ中央のやや下寄りの位置に現れ、その再現性も良好であった。これに対して、比較例1の食パンは、バラ形状の模様の位置が一定せず、端に寄ったり、内部に空洞が生じたりした。以上の結果から、図4及び図5に示すように、模様生地1を包囲生地2によって包囲する場合に、包囲生地2の両端どうしを僅かに重ね合わせただけの、機械的強度を弱くされた緩衝部2aを設ければ、焼成後における模様の位置が、安定してほぼ中央部に位置することが分かった。
【0023】
また、高さ調整生地5(図6及び図7参照)を設けた実施例2及び実施例3では、実施例1と比較して、模様の位置がさらに正確に中央に位置した。これは、模様生地1と包囲生地2の間に設けた高さ調整生地5が焼成によって膨らみ、下方に下がる傾向のある模様生地2を上方に押し上げるためである。
【0024】
また、実施例1、2の食パンは、図10に示すように、焼成されたパンの側面の中央部分が径内方向に少し凹んでいた。これに対し、図7で示すように、包囲生地2の周面を2枚の外装生地6a、6bで包囲した実施例3の食パンでは、図11に示すように、そのような凹みはほとんど生じなかった。このことから、外装生地を複数の層とすることにより、パンの側面が径内方向に凹むことを防止できることが分かった。
【0025】
(実施例4)
実施例4では、実施例1における包囲生地2の緩衝部2a(図4参照)の替わりに、図12に示すように、包囲生地21の両端どうしを突き合わせた緩衝部21aとした。その他の構成は実施例1のパン生地構造と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0026】
(実施例5)
実施例5では、実施例1における包囲生地2の緩衝部2a(図4参照)の替わりに、図13に示すように、包囲生地31の上部の軸方向に包丁で切り込み入れ、これを緩衝部31aとした。その他の構成は実施例1のパン生地構造と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0027】
(実施例6)
実施例6では、実施例1における包囲生地2の緩衝部2a(図4参照)の替わりに、図14に示すように、包囲生地41の上部に小さな穴を軸方向に一列に多数設け、これを緩衝部41aとした。その他の構成は実施例1のパン生地構造と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0028】
上記実施例4〜6のパン生地を実施例1と同様の焼成条件で焼成し、焼成された食パンの断面を観察したところ、実施例1と同様、模様が中央やや下寄りの位置に現れ、その再現性も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、食パン、ロールパン、フランスパン、菓子パン等、さまざまなパンの内部に模様を一定の位置に形成させることができ、パン製造業において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】模様生地を巻く前の状態の斜視図である。
【図2】模様生地の側面図である。
【図3】包囲生地、外装生地及び側面生地の斜視図である。
【図4】実施例1における側面生地を貼り付ける前のパン生地の側面図である。
【図5】実施例1における緩衝部の側面図である。
【図6】実施例2における側面生地を貼り付ける前のパン生地の側面図である。
【図7】実施例3における側面生地を貼り付ける前のパン生地の側面図である。
【図8】比較例1における側面生地を貼り付ける前のパン生地の側面図である。
【図9】実施例1で焼成されたパンの径方向の断面図である。
【図10】実施例1、2で焼成されたパンの側面模式図である。
【図11】実施例3で焼成されたパンの側面模式図である。
【図12】実施例4の緩衝部の側面図である。
【図13】実施例5のパン生地の斜視図である。
【図14】実施例6のパン生地の斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1…模様生地
2、21…包囲生地
3,6a,6b…外装生地
2a,21a,31a,41a…緩衝部
5…高さ調整生地
【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向の切断面に模様が現れるパンを製造するためのパン生地構造であって、
軸方向に延在し、焼成後に模様を構成する模様生地と、該模様生地の周面を包囲する包囲生地と、該包囲生地の周面を包囲する外装生地とを備えており、該包囲生地には機械的強度が弱くされた緩衝部が軸方向に延在して設けられていることを特徴とするパン生地構造。
【請求項2】
緩衝部は、パン生地を焼成する場合に上方となる位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載のパン生地構造。
【請求項3】
緩衝部は、包囲生地の両端どうしを僅かに重ね合わせた構造とされていることを特徴とする請求項1又は2記載のパン生地構造。
【請求項4】
緩衝部は、包囲生地の両端どうしを突き合わせた構造とされていることを特徴とする請求項1又は2記載のパン生地構造。
【請求項5】
包囲生地の周面であってパン生地を焼成する場合に下方となる位置には、軸方向に延在する高さ調整生地が貼り付けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のパン生地構造。
【請求項6】
外装生地は複数の層からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のパン生地構造。
【請求項7】
径方向の切断面に模様が現れるパンを製造するためのパン生地を製造するためのパン生地の製造方法であって、
軸方向に延在し、焼成後に模様を構成するための模様生地と、該模様生地の周面を包囲するための包囲生地と、該包囲生地の周面を包囲するための外装生地とを用意する準備工程と、
該模様生地を該包囲生地で包囲し、該包囲生地の両端どうしを僅かに重ね合わせ、あるいは突き合わせることによって、軸方向に機械的強度が弱くされた緩衝部を設ける包囲工程と、
該包囲生地の周面を外装生地で包囲してパン生地とする外装工程とを備えることを特徴とするパン生地の製造方法。
【請求項1】
径方向の切断面に模様が現れるパンを製造するためのパン生地構造であって、
軸方向に延在し、焼成後に模様を構成する模様生地と、該模様生地の周面を包囲する包囲生地と、該包囲生地の周面を包囲する外装生地とを備えており、該包囲生地には機械的強度が弱くされた緩衝部が軸方向に延在して設けられていることを特徴とするパン生地構造。
【請求項2】
緩衝部は、パン生地を焼成する場合に上方となる位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載のパン生地構造。
【請求項3】
緩衝部は、包囲生地の両端どうしを僅かに重ね合わせた構造とされていることを特徴とする請求項1又は2記載のパン生地構造。
【請求項4】
緩衝部は、包囲生地の両端どうしを突き合わせた構造とされていることを特徴とする請求項1又は2記載のパン生地構造。
【請求項5】
包囲生地の周面であってパン生地を焼成する場合に下方となる位置には、軸方向に延在する高さ調整生地が貼り付けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のパン生地構造。
【請求項6】
外装生地は複数の層からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のパン生地構造。
【請求項7】
径方向の切断面に模様が現れるパンを製造するためのパン生地を製造するためのパン生地の製造方法であって、
軸方向に延在し、焼成後に模様を構成するための模様生地と、該模様生地の周面を包囲するための包囲生地と、該包囲生地の周面を包囲するための外装生地とを用意する準備工程と、
該模様生地を該包囲生地で包囲し、該包囲生地の両端どうしを僅かに重ね合わせ、あるいは突き合わせることによって、軸方向に機械的強度が弱くされた緩衝部を設ける包囲工程と、
該包囲生地の周面を外装生地で包囲してパン生地とする外装工程とを備えることを特徴とするパン生地の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−180821(P2006−180821A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379852(P2004−379852)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(505004514)株式会社 縄文生物研究所 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(505004514)株式会社 縄文生物研究所 (1)
【Fターム(参考)】
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