説明

パーティクル測定装置

【課題】評価条件を一定にしてパーティクル数を確実に相対評価できるようにした低コストのパーティクル測定装置を提供する。
【解決手段】測定対象物Wの被測定面W1に対し圧縮空気を吹き付ける空気吹付管4と、被測定面から飛散したパーティクルを含む空気を吸引する吸引管2と、この吸引管内に吸引された空気を、当該空気中に含まれるパーティクルを計数する計数器Cへと導く導入管7とを備える。空気吹付管を分岐した分岐管を更に備え、この分岐管から圧縮空気を吹き出したときに発生するエジェクター効果で吸引管内にパーティクルを含む空気を吸引するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーティクル測定装置に関し、より詳しくは、測定対象物の被測定面に空気を吹き付けてパーティクルを飛散させ、この被測定面から飛散したパーティクルを含む空気を吸引し、これをパーティクル計数器へと導いて、一定の評価条件下で被測定面のパーティクル数を相対評価するためのものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの製造工程は、所定の清浄度に保たれたクリーンルーム内で一貫して行うことが一般的であるが、半導体デバイスが形成されたウエハ表面へのパーティクルの付着を完全に回避することは事実上不可能である。ウエハ表面に付着するパーティクル数が多くなると、配線の短絡や基板の金属汚染等が生じ、半導体デバイスの性能が低下するという問題がある。このため、上記製造工程においては、一定の評価条件下で複数のウエハに対してその表面に付着したパーティクル数を相対評価し、品質管理が行われている。
【0003】
このようなパーティクル数の計測に用いられるパーティクル測定装置として、手持式のプローブと計数器とから構成されるものが例えば特許文献1で知られている。このものでは、プローブのうち、測定対象物の被測定面(例えば、ウエハの半導体デバイス形成面)との対向面に設けられる空気吹付口から、被測定面に対し圧縮空気を吹き付け、被測定面に付着したパーティクルを飛散させ、同対向面に設けられる、真空ポンプに通じる吸引口から飛散したパーティクルを含む空気を吸引し、この吸引された空気に含まれるパーティクルを計数器で計数するようになっている。
【0004】
ここで、上記従来例のものでは、プローブの空気吹付口から被測定面までの距離が変化すると、それに伴い被測定面に吹き付けられる空気圧が変化すると共に、吸引口に吸引される空気量も変化する。このため、一定の評価条件下でパーティクル数を相対評価するには、空気吹付口と吸引口とが夫々設けられたプローブの面から被測定面までの距離等の評価条件を一定に保持することが必須となる。然し、プローブの操作は作業者に委ねられており、上記距離を一定に保つことは困難である。しかも、真空ポンプを用いて吸引するため、装置のコストアップを招来する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3920216号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、評価条件を一定にしてパーティクル数を確実に相対評価できるようにした低コストのパーティクル測定装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のパーティクル測定装置は、測定対象物の被測定面に対し圧縮空気を吹き付ける空気吹付管と、被測定面から飛散したパーティクルを含む空気を吸引する吸引管と、この吸引管内に吸引された空気を、当該空気中に含まれるパーティクルを計数する計数器へと導く導入管とを備え、空気吹付管を分岐した分岐管を更に備え、この分岐管から圧縮空気を吹き出したときに発生するエジェクター効果で吸引管内にパーティクルを含む空気を吸引するように構成したことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、測定対象物の被測定面に付着したパーティクルを飛散させるために当該被測定面に対して空気吹付管から圧縮空気を吹き付けると、この空気吹付管から分岐した分岐管からも圧縮空気が吹き出され、このとき発生するエジェクター効果で吸引管内にパーティクルを含む空気が吸引される。このため、飛散したパーティクルを含む空気を吸引するための真空ポンプは不要になり、装置コストを大幅に削減できる。
【0009】
この場合、前記吸引管の周囲に、吸引管の長手方向一側に向けて圧縮空気を吹き出す分岐管の空気吹出口が配置されるようにすれば、例えば、吸引管の他側を被測定面に向け、この状態で空気吹付管から圧縮空気を吹き付けると、エジェクター効果により吸引管内にその長手方向他側から一側に向かう方向に、圧縮空気の空気圧に応じた一定の吸引力が作用し、吸引管内にパーティクルを含む空気を吸引する構成が実現できる。
【0010】
また、本発明においては、前記吸引管の他側でこの吸引管内に前記空気吹付管の少なくとも先端部と導入管の少なくとも先端部とを内蔵することが好ましい。これによれば、吸引管の他端を被測定面に接触させ、この状態で、空気吹付管から圧縮空気を吹き付ければ、被測定面のうち吸引管で囲繞された空間でのみパーティクルが飛散し、この飛散した空気を計数器へと導入することができる。この場合、空気吹付管の先端のノズル口から被測定面までの距離を一致させることができ、しかも、導入管へと導入される空気量を簡単に一致させることができ、評価条件を一定にしてパーティクル数を確実に相対評価することが可能になる。
【0011】
更に、本発明においては、内部に空気吹付管及び分岐管への圧縮空気の供給をオンオフ制御する開閉弁が介設された空気通路を備える一方向に長手の胴体を備え、胴体に、この胴体に交差させて上記吸引管が設けられると共に、開閉弁の開閉を操作する操作部が設けられることが好ましい。これによれば、被測定面に対し圧縮空気を吹き付ける部品や被測定面から飛散したパーティクルを吸引する部品等、作業者により操作され得るものを一体に組み付けた手持式のプローブとして構成でき、一定の評価条件下でパーティクル数を相対評価する作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】パーティクル測定装置の構成を示す模式図。
【図2】図1のプローブを拡大して示す模式図。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、測定対象物Wをウエハとし、このウエハの表面に付着したバーティクル数を測定する場合を例に本発明の実施形態のパーティクル測定装置を説明する。図1には、本実施形態のパーティクル測定装置Mが示され、パーティクル測定装置Mは、主として手持式のプローブPと計数器Cとから構成される。なお、計数器Cとしては、公知構造のものを用いることができるため、ここでは計数器Cの具体的な構造や計数器Cでのパーティクルの計数方法についての説明を省略する。
【0014】
図2及び図3を更に参照して、プローブPは、上下方向(一方向)に長手の胴体1と、この胴体1の上側で胴体1に交差させて設けられる吸引管2とを備える。以下では、図1中、上下方向に交差する方向を前後方向(図1中、左右方向)として説明する。胴体1は、樹脂や金属製であり、立方体状の上部11と、この上部11の下側に連設された下部12とから構成される。上部11には、前後方向にのびる透孔(図示せず)が開設され、この透孔にその両側が延出するように吸引管2が挿設されている。吸引管2は、例えば樹脂製の中空のストレート管で構成され、前側の端部が下方に屈曲され、前端面が測定対象物Wの被測定面W1に面接触させ易いようにしている。
【0015】
また、胴体1の下部11は、上部12の上下方向の延長線から所定の角度で屈曲されて下方にのびる棒状部材であり、その断面形状は、手持ちし易いように例えば略長円状に形成されている。更に、胴体1内には、下部12の下端から上部11の上端まで通じる空気通路13が形成されている。そして、図外のコンプレッサーからの元管3が下部12の下端に着脱自在に接続され、フィルターを通した圧縮空気が供給されるようになっている。また、空気通路13には開閉弁14が介設されている。開閉弁14は、下部12の前側に設けたプッシュスイッチ15(操作部)の操作で開閉されるようになっている。なお、開閉弁14については、プッシュスイッチ15の操作で開閉して圧縮空気の供給をオンオフ制御できるものであれば特に制限はなく、公知の電磁弁等が利用できる。また、操作部についても、下部12を手持ちした状態で簡単に操作できるものであれば、上記のものに限定されるものではない。
【0016】
空気通路13の上端は、上部11の上面に設けたL字状の継ぎ手41を介して、前側に向けて延びる空気吹付管4に連通している。空気吹付管4の先端部は、吸引管2のうち上部11から前側(吸引管2の他側)にのびる部分の壁面を貫通して当該吸引管2に内蔵されている。この場合、空気吹付管4のノズル口(吹付口)4aは、吸引管2の前端より後側に位置し、吸引管2の前端を被測定面W1に接触させると、被測定面W1に対し一定の距離で圧縮空気を吹き付けることができるようになっている。
【0017】
また、空気通路13は上部11内にて分岐され、この分岐管16が、上部11の後面で吸引管2のうち上部11から後側(吸引管2の一側)にのびる部分に外装されたリング部材5に接続されている。リング部材5には、分岐管16に連通する環状の内部通路51と、この内部通路51に連通し、リング部材5の後側に向けて開口する4個の空気吹出口52とが形成されている。本実施形態では、空気吹出口52は90度間隔で設けられている。また、吸引管2の後端(吸引管2の一側)は、被測定面から飛散した空気がその周囲に拡散することを防止するために、前端を開口した排気管6内に同心に挿設されている。
【0018】
排気管6は、一端が開口した筒状部材であり、その途中には、パーティクルを捕獲するフィルタ61が介設され、周辺雰囲気と隔絶された空間(例えば、クリーンルームの外側)まで通じている。そして、空気吹出口52から圧縮空気が吹き出されると、吸引管2の外周面に沿って圧縮空気が流れ、吸引管2の外周面と排気管6の内周面との間の間隙を通って排気管6内へ流れる。このとき、吸引管2の後端開口付近が負圧となり、吸引管2内の空気が排気管6へと吸引されるようになる(エジェクター効果)。これにより、吸引管2内にパーティクルを含む空気を吸引することができる(図1参照)。この場合、圧縮空気の空気圧は、被測定面W1に付着したパーティクルを効果的に飛散できると共に、吸引管2内に吸引力が作用させることができる範囲内で適宜設定される。
【0019】
また、吸引管2内には、先端部が空気吹付管4の後側に位置するように吸引管2より小径の導入管7が内蔵され、吸引管2のうち上部11から後側にのびる部分の壁面を貫通して当該吸引管2の外側までのび、計数器Cに接続されている。これにより、吸引管2内に吸引された、パーティクルを含む空気の一部が導入管7内へと流れ、計数器Cに導入され、公知の方法でパーティクル数が計測される。この場合、吸引力が一定であれば、導入管7へと流れる空気量が一致する。
【0020】
次に、上記パーティクル計測器を用いた測定方法を説明する。先ず、胴体1の下部12を手に持ち、吸引管2の前端を測定対象物Wの被測定面W1に面接触させる。このとき、空気吹付管4のノズル口4aは、被測定面W1から所定の間隔だけ離れた位置に存するようになる。この状態で、プッシュスイッチ15を押すと、開閉弁14が開弁して空気通路13を介して空気吹付管4及び分岐管16に圧縮空気が供給され、被測定面W1に対して圧縮空気が吹き付けられると共に、各空気吹出口52から圧縮空気が吹き出され、エジェクター効果で吸引管2内にその前側から後側へと向かう吸引力が作用する。これにより、被測定面W1のうち吸引管2の先端で囲繞された空間でのみパーティクルが飛散し、パーティクルを含む空気が吸引管2から排気管6へと排気される。このとき、パーティクルを含む空気の一部は導入管7を経て計数器Cへと導かれ、公知の方法でパーティクル数が計測される。
【0021】
以上説明したように、本実施形態によれば、測定対象物Wの被測定面W1に付着したパーティクルを飛散させるために当該被測定面W1に対して空気吹付管4から圧縮空気を吹き付けると、この空気吹付管から分岐した分岐管16からも圧縮空気が吹き出され、このとき発生するエジェクター効果で吸引管2内にパーティクルを含む空気が吸引される。このため、飛散したパーティクルを含む空気を吸引するための真空ポンプは不要になり、装置コストを大幅に削減できる。また、吸引管2内に空気吹付管4の先端部を内蔵したため、空気吹付管4のノズル口から被測定面W1までの距離を簡単に一致させることができ、しかも、導入管7、ひいては、測計数器Cへと導入される空気量を簡単に一致させることができ、その結果、評価条件を一定にしてパーティクル数を確実に相対評価することが可能になる。更に、被測定面W1に対し圧縮空気を吹き付け、被測定面W1から飛散したパーティクルを吸引する部品等、作業者により操作されるものを一体に組み付けた手持式のプローブPとして構成したため、一定の評価条件下でパーティクル数を相対評価する作業性を向上することができる。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではない。上記実施形態においては、手持式のプローブPを備えたものを例に説明したが、被測定面に対して圧縮空気を吹き付けるものから分岐し、この分岐したものから圧縮空気を吹き出したときに発生するエジェクター効果で吸引管2内にパーティクルを含む空気を吸引するものであれば、その形態は問わない。また、上記実施形態では、空気吹付管4の先端部を吸引管2に内蔵したものを例に説明したが、吸引管2の外側に設けることもできる。更に、クリーンルーム等で利用することを考慮して、排気管6を備えたものを例に説明したが、利用環境によっては、これを省略することもできる。
【符号の説明】
【0023】
M…パーティクル測定装置、P…プローブ、C…計数器、W…ウエハ(測定対象物)、W1…被測定面、1…胴体、13…空気通路、14…開閉弁、15…ブッシュスイッチ(操作部)、16…分岐管、52…空気吹出口、4…空気吹付管、7…導入管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の被測定面に対し圧縮空気を吹き付ける空気吹付管と、被測定面から飛散したパーティクルを含む空気を吸引する吸引管と、この吸引管内に吸引された空気を、当該空気中に含まれるパーティクルを計数する計数器へと導く導入管とを備え、
空気吹付管を分岐した分岐管を更に備え、この分岐管から圧縮空気を吹き出したときに発生するエジェクター効果で吸引管内にパーティクルを含む空気を吸引するように構成したことを特徴とするパーティクル測定装置。
【請求項2】
前記吸引管の周囲に、この吸引管の長手方向一側に向けて圧縮空気を吹き出す分岐管の空気吹出口が配置されることを特徴とする請求項1記載のパーティクル測定装置。
【請求項3】
前記吸引管の他側でこの吸引管内に前記空気吹付管の少なくとも先端部と導入管の少なくとも先端部とを内蔵したことを特徴とする請求項1または請求項2記載のパーティクル測定装置。
【請求項4】
内部に空気吹付管及び分岐管への圧縮空気の供給をオンオフ制御する開閉弁が介設された空気通路を備える一方向に長手の胴体を備え、胴体に、この胴体に交差させて上記吸引管が設けられると共に、開閉弁の開閉を操作する操作部が設けられることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のパーティクル測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−29415(P2013−29415A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165457(P2011−165457)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)