説明

パーフルオロクロロエーテル溶媒を含有する液体組成物

【課題】フッ素含有有機化合物及びフッ素非含有有機化合物の両方に対して高い溶解度を示すパーフルオロクロロエーテル溶媒を含む組成物を提供すること。
【解決手段】(塩素含率/フッ素含率)値が1.2〜4.5の範囲内にあるパーフルオロクロロエーテル化合物を含有するパーフルオロクロロエーテル溶媒に、フッ素含率が0〜79質量%の有機化合物を溶解させたことを特徴とする液体組成物。ただし、(塩素含率/フッ素含率)値は下記式で定義される値である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーフルオロクロロエーテル溶媒を含有する液体組成物、該液体組成物の用途、及び新規なパーフルオロクロロエーテル化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロ溶媒は、不燃性、耐水性、耐油性、揮発性等の特徴を有し、多くの反応試薬に対して不活性であるため、反応溶媒(例えば、特許文献1参照)、磁気ディスク潤滑剤溶媒(例えば、特許文献2参照)、液体トナー用溶媒(例えば、特許文献3参照)、化粧料製品中の転写防止用溶媒(例えば、特許文献4参照)などの様々な分野で用いられる。しかしながら、一般にフッ素含有有機化合物のパーフルオロ溶媒に対する溶解度は高いが、フッ素非含有有機化合物のパーフルオロ溶媒に対する溶解度は低く、層分離を起こしてしまうため、基質適用範囲がフッ素含率の高いものに限られるという問題点があった。
【0003】
フッ素非含有有機化合物のパーフルオロ溶媒への溶解度を向上させるため、塩素原子を導入したパーフルオロ溶媒である1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン(CClFCClF)がフッ素含有有機化合物及びフッ素非含有有機化合物の両方をよく溶解させる溶媒として知られており、該溶媒を含む液体組成物が、例えば、洗浄剤(例えば、特許文献5参照)、液相フッ素化反応(例えば、特許文献6参照)、重合反応(例えば、特許文献7参照)に用いられている。しかしながら、この化合物は特定フロンであるため、使用が極めて厳しく制限されている。また、低沸点(48℃)であるため、高温での使用には適さないという問題点もあった。
【0004】
フロンに該当しない含塩素パーフルオロ溶媒として、CF[OCF(CFCl)]、ClCFCF[OCF(CFCl)](例えば、特許文献8参照)及びCF2ClCFClCOOCF2CFClCF2Cl(例えば、特許文献9参照)が液相フッ素化用の反応溶媒として開示されている。しかしながら、これらの溶媒は、フッ素含有有機化合物の溶解度は高いが、フッ素非含有有機化合物の溶解度があまり高くないため、基質汎用性に乏しいという問題点があり、フッ素含有有機化合物とフッ素非含有有機化合物の両方をよく溶解させるパーフルオロ溶媒の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−59101号公報
【特許文献2】特開2006-307123号公報
【特許文献3】特開平6−222623号公報
【特許文献4】特開平11−263709号公報
【特許文献5】特開平5−4077号公報
【特許文献6】国際公開第00/056694号
【特許文献7】特表2005−532413号公報
【特許文献8】特表平4−500520号公報
【特許文献9】特開2006−28023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点を解決し、フッ素非含有有機化合物及びフッ素含有有機化合物両方の溶解度が極めて高いパーフルオロクロロエーテル溶媒を含有する液体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、パーフルオロ溶媒の検討において、フッ素非含有有機化合物の溶解度がパーフルオロクロロエーテル溶媒の(塩素含率/フッ素含率)値に強く相関し、該値を適切な範囲に調節することにより、フッ素非含有有機化合物及びフッ素含有有機化合物の両方の溶解度が極めて高くなることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、上記課題は以下の手段により解決された。
【0008】
1.
(塩素含率/フッ素含率)値が1.2〜4.5の範囲内にあるパーフルオロクロロエーテル化合物を含有するパーフルオロクロロエーテル溶媒に、フッ素含率が0〜79質量%の有機化合物を溶解させたことを特徴とする液体組成物。ただし、(塩素含率/フッ素含率)値は下記式で定義される値である。
【0009】
【数1】

【0010】
2.
前記パーフルオロクロロエーテル化合物の(塩素含率/フッ素含率)値が1.8〜4.5の範囲内である、上記1に記載の液体組成物。
3.
前記パーフルオロクロロエーテル溶媒が、圧力760mmHgにおいて60℃〜300℃の範囲内に沸点を有することを特徴とする上記1又は2に記載の液体組成物。
4.
前記フッ素含率が0〜79質量%の有機化合物が、重合性化合物であることを特徴とする上記1〜3いずれか1項に記載の液体組成物。
5.
前記フッ素含率が0〜79質量%の有機化合物が、ポリマーであることを特徴とする上記1〜4いずれか1項に記載の液体組成物。
6.
前記パーフルオロクロロエーテル化合物が、下記一般式(1)で表わされる化合物であることを特徴とする上記1〜5いずれか1項に記載の液体組成物。
【0011】
【化1】

【0012】
(一般式(1)中、Rは、炭化水素基中の全ての水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置換された基(ただし、炭化水素基はエーテル性酸素原子を含んでいてもよい)を表す。ただし、一般式(1)で表される化合物の(塩素含率/フッ素含率)値は1.2〜4.5の範囲内である。)
7.
前記一般式(1)で表される化合物が、下記化合物(2)、(3)、(4)、又は(5)であることを特徴とする上記6に記載の液体組成物。
【0013】
【化2】

【0014】
8.
前記パーフルオロクロロエーテル化合物が、下記一般式(1’)で表わされる化合物であることを特徴とする上記1〜5いずれか1項に記載の液体組成物。
【0015】
【化3】

【0016】
(一般式(1’)中、Rは、炭化水素基中の全ての水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置換された基(ただし、炭化水素基はエーテル性酸素原子を含んでいてもよい)を表す。ただし、一般式(1’)で表される化合物の(塩素含率/フッ素含率)値は1.2〜4.5の範囲内である。)
9.
前記一般式(1’)で表される化合物が、下記化合物(2’)、(3’)、(4’)、又は(5’)であることを特徴とする上記8に記載の液体組成物。
【0017】
【化4】

【0018】
10.
上記1〜9のいずれか1項に記載の液体組成物を含むことを特徴とするコーティング用液体組成物。
11.
上記1〜9のいずれか1項に記載の液体組成物を含むことを特徴とする化学反応溶液。
12.
下記式(2)で表されるパーフルオロクロロエーテル化合物。
【0019】
【化5】

【0020】
13.
下記式(3)で表されるパーフルオロクロロエーテル化合物。
【0021】
【化6】

【0022】
14.
下記式(4)で表されるパーフルオロクロロエーテル化合物。
【0023】
【化7】

【0024】
15.
下記式(5)で表されるパーフルオロクロロエーテル化合物。
【0025】
【化8】

【0026】
16.
下記式(2’)で表されるパーフルオロクロロエーテル化合物。
【0027】
【化9】

【0028】
17.
下記式(3’)で表されるパーフルオロクロロエーテル化合物。
【0029】
【化10】

【0030】
18.
下記式(4’)で表されるパーフルオロクロロエーテル化合物。
【0031】
【化11】

【0032】
19.
下記式(5’)で表されるパーフルオロクロロエーテル化合物。
【0033】
【化12】

【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、フッ素非含有有機化合物及びフッ素含有有機化合物両方の溶解度が極めて高いパーフルオロクロロエーテル溶媒を含有する液体組成物を提供することができる。該組成物は、更に他の目的有効成分を溶解あるいは分散させることにより、例えば、化学反応溶液、洗浄剤、コーティング剤、冷却剤等として極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のパーフルオロクロロエーテル溶媒を含有する液体組成物(パーフルオロクロロエーテル含有組成物ともいう)は、(塩素含率/フッ素含率)値が1.2〜4.5の範囲内にあるパーフルオロクロロエーテル化合物を含有するパーフルオロクロロエーテル溶媒に、フッ素含率が0〜79質量%の有機化合物を溶解させたことを特徴とする液状のパーフルオロクロロエーテル含有組成物である。ただし、(塩素含率/フッ素含率)値は下記式で定義される値である。
【0036】
【数2】

【0037】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
なお、本発明における、「パーフルオロ化された」とは、全ての水素原子がフッ素原子に置換されたことをいう。また、「パーフルオロクロロエーテル」とは、全ての水素原子がフッ素原子又は塩素原子に置換されたエーテルを指す。
【0038】
本発明におけるフッ素含率とは下記式で定義される値である。
【0039】
【数3】

【0040】
(パーフルオロクロロエーテル溶媒)
本発明におけるパーフルオロクロロエーテル溶媒は、(塩素含率/フッ素含率)値が1.2〜4.5の範囲内にある、少なくとも1種のパーフルオロクロロエーテル化合物を含む溶媒である。一般に、パーフルオロ溶媒[例えば、FC−72(パーフルオロヘキサン)、フッ素含率79質量%]は、フッ素非含有有機化合物の溶解度が極めて低いため、均一に混合せず、層分離を起こすが、これはパーフルオロ溶媒の高いフッ素含率に由来する。したがって、パーフルオロ溶媒のフッ素含率を適切な範囲内に調節すれば、フッ素非含有有機化合物及びフッ素含有有機化合物の両方の溶解度が高い溶媒を得ることができる。本発明では、パーフルオロ溶媒のフッ素含率を適切な範囲内に調節するために塩素原子の導入が有効であり、更に(塩素含率/フッ素含率)値がフッ素非含有有機化合物及びフッ素含有有機化合物両方の溶解度に対する適切なパラメーターであることを見出し、該値が1.2〜4.5の範囲内にあるパーフルオロクロロエーテル溶媒は、フッ素非含有有機化合物及びフッ素含有有機化合物両方の溶解度が極めて高いことを明らかにした。該値が1.2より小さいと、フッ素含有有機化合物の溶解度は高いが、フッ素非含有有機化合物の溶解度が低くなるため、好ましくない。また、(塩素含率/フッ素含率)値が4.5より大きいと、フッ素非含有有機化合物の溶解度は高くなるが、フッ素含有有機化合物の溶解度が低くなるため、好ましくない。
パーフルオロクロロエーテル化合物の(塩素含率/フッ素含率)値は、フッ素非含有有機化合物の溶解度をより向上させるという観点から好ましくは1.8〜4.5の範囲内である。
(塩素含率/フッ素含率)値が1.2〜4.5の範囲内にあるパーフルオロクロロエーテル化合物としては、フッ素含率0質量%の有機化合物を20質量%以上溶解することができ、かつフッ素含率79質量%の有機化合物を20質量%以上溶解することができるものが好ましい。
【0041】
パーフルオロクロロエーテル溶媒は、それを使用する温度において液体であれば、その構造は特に限定されず、直鎖状、分岐状、及び環状いずれの構造であってもよい。また、塩素原子の位置、及びエーテル性酸素原子の数についても特に限定されない。
また、パーフルオロクロロエーテル溶媒は、1種のパーフルオロクロロエーテル化合物から成っていてもよく、2種あるいはそれ以上のパーフルオロクロロエーテル化合物を混合したものであってもよい。2種以上のパーフルオロクロロエーテル化合物を含む場合、少なくとも1種のパーフルオロクロロエーテル化合物の(塩素含率/フッ素含率)値が1.2〜4.5の範囲内にあればよい。また、パーフルオロクロロエーテル溶媒には、本発明の目的、効果を逸脱しないならば、その他の化合物を含んでいてもよい。パーフルオロクロロエーテル溶媒中のその他の化合物の割合は特に限定されず、使用用途によって適宜変更することができる。
【0042】
本発明のパーフルオロクロロエーテル溶媒の沸点は、用途によって適宜変更されるため特に限定されないが、圧力760mmHgにおいて60℃〜300℃のものが好ましい。例えば、パーフルオロクロロエーテル含有組成物をコーティング剤として使用する場合、沸点が高すぎるとコーティング後の乾燥工程が煩雑になるため、沸点は、好ましくは、60℃〜250℃であり、より好ましくは60℃〜200℃であり、特に好ましくは60℃〜150℃である。また、パーフルオロクロロエーテル含有組成物を、例えば、化学反応溶液あるいは化学反応溶媒として使用する場合、反応温度、反応基質及び生成物との分離性を考慮して、沸点が60℃〜300℃のパーフルオロクロロエーテル溶媒から最適なものを選んで使用することができる。
【0043】
(塩素含率/フッ素含率)値が1.2〜4.5の範囲内にあるパーフルオロクロロエーテル化合物の製造法は特に限定されず、様々な公知の方法によって製造できる。例えば、ジャーナル オブ フルオリン ケミストリー、13巻、123〜140頁(1979年)記載の製造方法にしたがって、下記式のようにクロロフルオロエーテル化合物を塩素化することにより製造することができる。
【0044】
【化13】

【0045】
別法としては、例えば、米国特許2803666号明細書記載の製造方法にしたがって、下記式のようにクロラールをエーテル化、脱塩酸後、塩素と三フッ化アンチモンを作用させることによって製造することができる。
【0046】
【化14】

【0047】
パーフルオロクロロエーテル化合物として、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0048】
【化15】

【0049】
一般式(1)中、Rは、炭化水素基中の全ての水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置換された基(ただし、炭化水素基はエーテル性酸素原子を含んでいてもよい)を表す。ただし、一般式(1)で表される化合物の(塩素含率/フッ素含率)値は1.2〜4.5の範囲内である。
前記Rは、直鎖状、分岐状、環状いずれの構造であってもよい。Rは脂肪族炭化水素基中の全ての水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置換された基(ただし、炭化水素基はエーテル性酸素原子を含んでいてもよい)であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素基中の全ての水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置換された基(ただし、炭化水素基はエーテル性酸素原子を含んでいてもよい)であることがより好ましい。
は、炭化水素基中の全ての水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置換された基であり、該炭化水素基はエーテル性酸素原子を含んでいてもよいが、製造の容易さという観点からエーテル性酸素原子を含まないことが好ましい。
は、好ましくは炭素数1〜10であり、より好ましくは炭素数1〜5であり、特に好ましくは炭素数1〜3であり、最も好ましくは炭素数2又は3である。
【0050】
の具体例としては、トリフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、2−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエチル基、1,2−ジクロロ−1,2,2−トリフルオロエチル基、2,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロ−1,1−ジフルオロエチル基、1,1,2−トリクロロ−2,2−ジフルオロエチル基、1,2,2−トリクロロ−1,2−ジフルオロエチル基、1−クロロ−1,2,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−n−プロピル基、2−クロロ−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−n−プロピル基、3−クロロ−1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−n−プロピル基、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、2,2−ジクロロ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、3,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、1,2−ジクロロ−1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、1,3−ジクロロ−1,2,2,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、2,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、1,1,2−トリクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル基、1,1,3−トリクロロ−2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル基、1,2,2−トリクロロ−1,3,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル基、1,2,3−トリクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル基、2,2,3−トリクロロ−1,1,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル基、2,3,3−トリクロロ−1,1,2,3−テトラフルオロ−n−プロピル基、3,3,3−トリクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロ−n−プロピル基、1,1,2,2−テトラクロロ−3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、1,1,2,3−テトラクロロ−2,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、1,1,3,3−テトラクロロ−2,2,3−トリフルオロ−n−プロピル基、1,2,2,3−テトラクロロ−1,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、1,2,3,3−テトラクロロ−1,2,3−トリフルオロ−n−プロピル基、1,3,3,3−テトラクロロ−1,2,2−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,3,3−テトラクロロ−1,1,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,3,3,3−テトラクロロ−1,1,2−トリフルオロ−n−プロピル基、1−クロロ−2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロ−i−プロピル基、2−クロロ−1,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロ−i−プロピル基、1,2−ジクロロ−2,2,2’,2’,2’−ペンタフルオロ−i−プロピル基、2,2−ジクロロ−1,2,2’,2’, 2’−ペンタフルオロ−i−プロピル基、2,2’−ジクロロ−1,2,2,2’,2’−ペンタフルオロ−i−プロピル基、1,2,2−トリクロロ−2,2’,2’,2’−テトラフルオロ−i−プロピル基、1,2,2’−トリクロロ−2,2,2’,2’−テトラフルオロ−i−プロピル基、2,2,2−トリクロロ−1,2’,2’,2’−テトラフルオロ−i−プロピル基、2,2,2’−トリクロロ−1,2,2’,2’−テトラフルオロ−i−プロピル基、1,2,2,2−テトラクロロ−2’,2’,2’−トリフルオロ−i−プロピル基、1,2,2,2’−テトラクロロ−2,2’,2’−トリフルオロ−i−プロピル基、2,2,2,2’−テトラクロロ−1,2’,2’−トリフルオロ−i−プロピル基、2,2,2’,2’−テトラクロロ−1,2,2’−トリフルオロ−i−プロピル基、1−クロロ−2,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2−クロロ−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、1,2−ジクロロ−2,3,3−トリフルオロシクロプロピル基、2,2−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロシクロプロピル基、2,3−ジクロロ−1,2,3−トリフルオロシクロプロピル基、1,2,3−トリクロロ−2,3−ジフルオロシクロプロピル基、1,2,2−トリクロロ−3,3−ジフルオロシクロプロピル基、2,2,3−トリクロロ−1,3−ジフルオロシクロプロピル基等があげられるが、好ましくは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、2,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロ−1,1−ジフルオロエチル基、2−クロロ−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−n−プロピル基、3−クロロ−1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−n−プロピル基、2,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、2,2−ジクロロ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、3,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、2,2,3−トリクロロ−1,1,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル基、2,3,3−トリクロロ−1,1,2,3−テトラフルオロ−n−プロピル基、3,3,3−トリクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロ−n−プロピル基、2,2,3,3−テトラクロロ−1,1,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,3,3,3−テトラクロロ−1,1,2−トリフルオロ−n−プロピル基、2−クロロ−1,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロ−i−プロピル基、2,2−ジクロロ−1,2,2’,2’, 2’−ペンタフルオロ−i−プロピル基、2,2’−ジクロロ−1,2,2,2’,2’−ペンタフルオロ−i−プロピル基、2,2,2−トリクロロ−1,2’,2’,2’−テトラフルオロ−i−プロピル基、2,2,2’−トリクロロ−1,2,2’,2’−テトラフルオロ−i−プロピル基、2,2,2,2’−テトラクロロ−1,2’,2’−トリフルオロ−i−プロピル基、2,2,2’,2’−テトラクロロ−1,2,2’−トリフルオロ−i−プロピル基、ペンタフルオロシクロプロピル基,2−クロロ−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2,2−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロシクロプロピル基、2,3−ジクロロ−1,2,3−トリフルオロシクロプロピル基、2,2,3−トリクロロ−1,3−ジフルオロシクロプロピル基であり、更に好ましくはトリフルオロメチル基、2−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、2,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロ−1,1−ジフルオロエチル基、2,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、3,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、3,3,3−トリクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロ−n−プロピル基、2,2−ジクロロ−1,2,2’,2’, 2’−ペンタフルオロ−i−プロピル基、2,2’−ジクロロ−1,2,2,2’,2’−ペンタフルオロ−i−プロピル基、2,2,2−トリクロロ−1,2’,2’,2’−テトラフルオロ−i−プロピル基、2,2,2’−トリクロロ−1,2,2’,2’−テトラフルオロ−i−プロピル基、2,2,2,2’−テトラクロロ−1,2’,2’−トリフルオロ−i−プロピル基、2,2,2’,2’−テトラクロロ−1,2,2’−トリフルオロ−i−プロピル基、2−クロロ−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2,2−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロシクロプロピル基、2,3−ジクロロ−1,2,3−トリフルオロシクロプロピル基、2,2,3−トリクロロ−1,3−ジフルオロシクロプロピル基であり、特に好ましくは、トリフルオロメチル基、2−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、2,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロ−1,1−ジフルオロエチル基、2,2’−ジクロロ−1,2,2,2’,2’−ペンタフルオロ−i−プロピル基、2,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基である。
【0051】
以下に一般式(1)で表される化合物の具体例を挙げるが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0052】
【化16】

【0053】
【化17】

【0054】
上記のうち、一般式(1)で表される化合物としては下記式(2)、(3)、(4)、及び(5)で表される化合物が、原料入手性の容易さという理由から、より好ましい。
【0055】
【化18】

【0056】
また、パーフルオロクロロエーテル化合物として、前記一般式(1)で表わされる化合物の他に、下記一般式(1’)で表される化合物も好ましい。
【0057】
【化19】

【0058】
一般式(1’)中、Rは、炭化水素基中の全ての水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置換された基(ただし、炭化水素基はエーテル性酸素原子を含んでいてもよい)を表す。ただし、一般式(1’)で表される化合物の(塩素含率/フッ素含率)値は1.2〜4.5の範囲内である。
前記Rは、直鎖状、分岐状、環状いずれの構造であってもよい。Rは脂肪族炭化水素基中の全ての水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置換された基(ただし、炭化水素基はエーテル性酸素原子を含んでいてもよい)であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素基中の全ての水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置換された基(ただし、炭化水素基はエーテル性酸素原子を含んでいてもよい)であることがより好ましい。
は、炭化水素基中の全ての水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置換された基であり、該炭化水素基はエーテル性酸素原子を含んでいてもよいが、製造の容易さという観点からエーテル性酸素原子を含まないことが好ましい。Rは、好ましくは炭素数1〜10であり、より好ましくは炭素数1〜5であり、特に好ましくは炭素数1〜3であり、最も好ましくは炭素数2又は3である。
【0059】
の具体例としては、クロロジフルオロメチル基、ジクロロフルオロメチル基、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、2−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエチル基、1,2−ジクロロ−1,2,2−トリフルオロエチル基、2,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロ−1,1−ジフルオロエチル基、1,1,2−トリクロロ−2,2−ジフルオロエチル基、1,2,2−トリクロロ−1,2−ジフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラクロロ−2−フルオロエチル基、1,2,2,2−テトラクロロ−1−フルオロエチル基、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、2,2−ジクロロ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、3,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、1,2−ジクロロ−1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、1,3−ジクロロ−1,2,2,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、2,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、1,1,2−トリクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル基、1,1,3−トリクロロ−2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル基、1,2,2−トリクロロ−1,3,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル基、1,2,3−トリクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル基、2,2,3−トリクロロ−1,1,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル基、2,3,3−トリクロロ−1,1,2,3−テトラフルオロ−n−プロピル基、3,3,3−トリクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロ−n−プロピル基、1,1,2,2−テトラクロロ−3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、1,1,2,3−テトラクロロ−2,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、1,1,3,3−テトラクロロ−2,2,3−トリフルオロ−n−プロピル基、1,2,2,3−テトラクロロ−1,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、1,2,3,3−テトラクロロ−1,2,3−トリフルオロ−n−プロピル基、1,3,3,3−テトラクロロ−1,2,2−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,3,3−テトラクロロ−1,1,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,3,3,3−テトラクロロ−1,1,2−トリフルオロ−n−プロピル基、1,1,2,2,3−ペンタクロロ−3,3−ジフルオロ−n−プロピル基、1,2,2,3,3−ペンタクロロ−1,3−ジフルオロ−n−プロピル基、1,2,3,3,3−ペンタクロロ−1,2−ジフルオロ−n−プロピル基、2,2,3,3,3−ペンタクロロ−1,1−ジフルオロ−n−プロピル基、1,1,3,3,3−ペンタクロロ−2,2−ジフルオロ−n−プロピル基、1,1,2,3,3−ペンタクロロ−2,3−ジフルオロ−n−プロピル基、1,2−ジクロロ−2,2,2’,2’,2’−ペンタフルオロ−i−プロピル基、2,2−ジクロロ−1,2,2’,2’, 2’−ペンタフルオロ−i−プロピル基、2,2’−ジクロロ−1,2,2,2’,2’−ペンタフルオロ−i−プロピル基、1,2,2−トリクロロ−2,2’,2’,2’−テトラフルオロ−i−プロピル基、1,2,2’−トリクロロ−2,2,2’,2’−テトラフルオロ−i−プロピル基、2,2,2−トリクロロ−1,2’,2’,2’−テトラフルオロ−i−プロピル基、2,2,2’−トリクロロ−1,2,2’,2’−テトラフルオロ−i−プロピル基、1,2,2,2−テトラクロロ−2’,2’,2’−トリフルオロ−i−プロピル基、1,2,2,2’−テトラクロロ−2,2’,2’−トリフルオロ−i−プロピル基、2,2,2,2’−テトラクロロ−1,2’,2’−トリフルオロ−i−プロピル基、2,2,2’,2’−テトラクロロ−1,2,2’−トリフルオロ−i−プロピル基、1,2,2,2,2’−ペンタクロロ−2’,2’−ジフルオロ−i−プロピル基、1,2,2,2’,2’−ペンタクロロ−2,2’−ジフルオロ−i−プロピル基、2,2,2,2’,2’−ペンタクロロ−1,2’−ジフルオロ−i−プロピル基、1−クロロ−2,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2−クロロ−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、1,2−ジクロロ−2,3,3−トリフルオロシクロプロピル基、2,2−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロシクロプロピル基、2,3−ジクロロ−1,2,3−トリフルオロシクロプロピル基、1,2,3−トリクロロ−2,3−ジフルオロシクロプロピル基、1,2,2−トリクロロ−3,3−ジフルオロシクロプロピル基、2,2,3−トリクロロ−1,3−ジフルオロシクロプロピル基、1,2,2,3−テトラクロロ−3−フルオロシクロプロピル基、2,2,3,3−テトラクロロ−1−フルオロシクロプロピル基等があげられるが、好ましくは、2−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、2,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロ−1,1−ジフルオロエチル基、2,2−ジクロロ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、3,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、2,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、2,2,3−トリクロロ−1,1,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル基、2,3,3−トリクロロ−1,1,2,3−テトラフルオロ−n−プロピル基、3,3,3−トリクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロ−n−プロピル基、2,2,3,3−テトラクロロ−1,1,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,3,3,3−テトラクロロ−1,1,2−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,3,3,3−ペンタクロロ−1,1−ジフルオロ−n−プロピル基、2,2−ジクロロ−1,2,2’,2’, 2’−ペンタフルオロ−i−プロピル基、2,2’−ジクロロ−1,2,2,2’,2’−ペンタフルオロ−i−プロピル基、2,2,2−トリクロロ−1,2’,2’,2’−テトラフルオロ−i−プロピル基、2,2,2’−トリクロロ−1,2,2’,2’−テトラフルオロ−i−プロピル基、2,2,2,2’−テトラクロロ−1,2’,2’−トリフルオロ−i−プロピル基、2,2,2’,2’−テトラクロロ−1,2,2’−トリフルオロ−i−プロピル基、2,2,2,2’,2’−ペンタクロロ−1,2’−ジフルオロ−i−プロピル基、2−クロロ−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2,2−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロシクロプロピル基、2,3−ジクロロ−1,2,3−トリフルオロシクロプロピル基、2,2,3−トリクロロ−1,3−ジフルオロシクロプロピル基、2,2,3,3−テトラクロロ−1−フルオロシクロプロピル基であり、更に好ましくは、2−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、2,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロ−1,1−ジフルオロエチル基、3,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、2,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、3,3,3−トリクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロ−n−プロピル基、2,2−ジクロロ−1,2,2’,2’, 2’−ペンタフルオロ−i−プロピル基、2,2’−ジクロロ−1,2,2,2’,2’−ペンタフルオロ−i−プロピル基、2,2,2−トリクロロ−1,2’,2’,2’−テトラフルオロ−i−プロピル基、2,2,2’−トリクロロ−1,2,2’,2’−テトラフルオロ−i−プロピル基、2,2,2,2’−テトラクロロ−1,2’,2’−トリフルオロ−i−プロピル基、2,2,2’,2’−テトラクロロ−1,2,2’−トリフルオロ−i−プロピル基、2,2,2,2’,2’−ペンタクロロ−1,2’−ジフルオロ−i−プロピル基、2−クロロ−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2,2−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロシクロプロピル基、2,3−ジクロロ−1,2,3−トリフルオロシクロプロピル基、2,2,3−トリクロロ−1,3−ジフルオロシクロプロピル基、2,2,3,3−テトラクロロ−1−フルオロシクロプロピル基であり、特に好ましくは、2−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、2,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロ−1,1−ジフルオロエチル基、2,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、2,2’−ジクロロ−1,2,2,2’,2’−ペンタフルオロ−i−プロピル基である。
【0060】
以下に一般式(1’)で表される化合物の具体例を挙げるが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0061】
【化20】

【0062】
【化21】

【0063】
上記のうち、一般式(1’)で表される化合物としては下記式(2’)、(3’)、(4’)、及び(5’)で表される化合物が、原料入手性の容易さという理由から、より好ましい。
【0064】
【化22】

【0065】
一般式(1)で表される化合物及び一般式(1’)で表される化合物の製造方法は特に限定されず、様々な公知の方法によって製造できる。一般式(1)で表される化合物は、例えば、下記一般式(8)で表される化合物をパーフルオロ化することによって製造できる。一般式(8)で表される化合物は、例えば、米国特許第2803665号明細書及びジャーナル・オブ・オルガノメタリック・ケミストリー、71巻、335−346頁(1974年)記載の製造方法に従って、クロラールとアルコール化合物(6)を反応させ、下記化合物(7)とし、塩素化することによって製造することができる。下記式中、Rは、パーフルオロ化されてRとなる1価置換基を示す。
【0066】
【化23】

【0067】
一般式(8)で表される化合物のパーフルオロ化の方法も特に限定されず、様々の公知の方法によって実施できる。例えば、特表平4−500520号記載の方法に従って、下記のように、パーフルオロ溶媒中でフッ素ガスと反応(液相フッ素化反応)させることによって製造できる。
【0068】
【化24】

【0069】
一般式(1’)で表される化合物は、例えば、前記一般式(8)で表される化合物を、塩基により脱塩酸させて化合物(6’)とし、化合物(6’)をフッ素ガスによってパーフルオロ化することによって製造できる。
【0070】
【化25】

【0071】
パーフルオロクロロエーテル溶媒は、他のフッ素溶媒や非フッ素溶媒と混合して用いてもよい。この場合、混合溶媒中のパーフルオロクロロエーテル化合物の含有量は、フッ素含率が0〜79質量%の有機化合物の溶解度及び使用用途等によって適宜変更されるため、特に限定することはできないが、例えば、フッ素非含有有機化合物とフッ素含有有機化合物の両方を溶解させる場合、フッ素非含有有機化合物とフッ素含有有機化合物両方の溶解度を向上させるという理由から、(塩素含率/フッ素含率)値が1.2〜4.5の範囲内にあるパーフルオロクロロエーテル化合物は、パーフルオロクロロエーテル溶媒中、1〜100質量%含有されることが好ましく、10〜100質量%含有されることがより好ましく、20〜100質量%含有されることが特に好ましい。
【0072】
パーフルオロクロロエーテル溶媒と混合して用いることができるフッ素溶媒は、フッ素含率が0〜79質量%の有機化合物の溶解度及び用途によって適宜変更されるため、特に限定することはできないが、例えば、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオリド、ヘキサフルオロベンゼン、2,2,2−トリフルオロエタノール、フルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ヘキサフルオロアセトン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、パーフルオロアルカン化合物[FC−72(商品名、住友スリーエム社製)等]、パーフルオロエーテル化合物[FC−75、FC−77(共に商品名、住友スリーエム社製)等]、パーフルオロポリエーテル化合物[商品名:{クライトレックス(krytox)、デュポン(DuPont)社商標}、{フォンブリン(Fomblin)、ソルベイ ソレクシス(Solvay Solexis)社商標}、{ガルデン(Galden)、ソルベイ ソレクシス(Solvay Solexis)社商標}、{デムナム、ダイキン化学工業(株)}等]、ハイドロクロロフルオロカーボン化合物[AK−225(商品名、AGC社製)等]、クロロフルオロカーボン化合物(CFC−11、CFC−113等)、ハイドロフルオロカーボン化合物[バートレル(Vertrel){商品名、三井デュポンフロロケミカル(株)社商標等}]、ハイドロフルオロエーテル化合物[ノベック(商品名、3M社商標)等]、クロロフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロトリアルキルアミン化合物、不活性流体[商品名:フロリナート(Fluorinert)、3M社商標]、ハロカーボン(Halocarbon)[商品名、ハロカーボン(Halocarbon)社製]等があげられ、これらは、2種あるいはそれ以上を混合して用いてもよい。
前記フッ素溶媒のパーフルオロクロロエーテル溶媒中の含有量は、フッ素溶媒の種類、フッ素含率が0〜79質量%の有機化合物の溶解度、及び用途によって適宜変更されるため、特に限定することはできないが、例えば、フッ素非含有有機化合物とフッ素含有有機化合物の両方を溶解させる場合、フッ素非含有有機化合物及びフッ素含有有機化合物両方の溶解度を向上させるという理由から、前記フッ素溶媒は、パーフルオロクロロエーテル溶媒中、0〜99質量%含有されることが好ましく、0.1〜99質量%含有されることがより好ましく、0.1〜90質量%含有されることが更に好ましく、0.1〜80質量%含有されることが特に好ましい。
【0073】
パーフルオロクロロエーテル溶媒と混合して用いることができる非フッ素溶媒は、用途によって適宜変更されるため、特に限定することはできないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i―プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸系溶媒、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の炭化水素系溶媒、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジグリム、トリグリム、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、アニソール、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶媒、チオアニソール、フェニルスルフィド等のチオエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルー2−ピロリドン、N−エチルー2−ピロリドン、N−ブチルー2−ピロリドン等のアミド系溶媒、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピペリジン、ピロリジン、アニリン、N,N‐ジメチルアニリン、モルホリン等のアミン系溶媒、ピリジン、2,6−ルチジン等のピリジン系溶媒、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ヘキサメチル亜リン酸トリアミド等が挙げられ、これらは、2種あるいはそれ以上を混合して用いてもよい。
前記非フッ素溶媒のパーフルオロクロロエーテル溶媒中の含有量は、非フッ素溶媒の種類、フッ素含率が0〜79質量%の有機化合物の溶解度、及び用途によって適宜変更されるため、特に限定することはできないが、例えば、フッ素非含有有機化合物とフッ素含有有機化合物の両方を溶解させる場合、フッ素非含有有機化合物及びフッ素含有有機化合物両方の溶解度を向上させるという理由から、前記非フッ素溶媒は、パーフルオロクロロエーテル溶媒中、0〜99質量%含有されることが好ましく、0.1〜99質量%含有されることがより好ましく、0.1〜90質量%含有されることが更に好ましく、0.1〜80質量%含有されることが特に好ましい。
【0074】
(フッ素含率が0〜79質量%の有機化合物)
本発明におけるフッ素含率が0〜79質量%の有機化合物は、フッ素を含まない有機化合物、及びフッ素を含み、フッ素含率が79質量%以下の有機化合物である。本発明におけるフッ素含率が0〜79質量%の有機化合物としては、本発明におけるパーフルオロクロロエーテル溶媒に溶解するものであれば、特に限定されず、液体、固体、気体いずれの状態であってもよい。本発明のパーフルオロクロロエーテル含有組成物は、フッ素含率が0〜79質量%の有機化合物を溶解させた状態で含むものであるが、含まれる該有機化合物は、1種でも、2種以上でもよい。
【0075】
本発明における有機化合物とは、鎖状、枝状、又は環状の炭化水素を母体構造とするか、又はその母体構造の一部の炭素、炭化水素、あるいは水素原子が、他の原子又は置換基によって置き換えられた化合物を示す。炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよく、芳香族であってもよい。芳香族は、単環であっても縮合環であっても良く、環内にヘテロ原子(例えば、窒素原子、イオウ原子、酸素原子)を持つヘテロ環であってもよい。ヘテロ環は、飽和環であっても、不飽和環であってもよく、単環であっても縮合環であってもよい。本発明における有機化合物は、有機金属化合物や金属錯体であってもよい。また、本発明の有機化合物は、カチオンあるいはアニオンであってもよく、カチオンである場合の対アニオンは、有機アニオンであっても無機アニオンであってもよく、有機化合物がアニオンである場合の対カチオンは有機カチオンであってもよく、無機カチオンであってもよい。
【0076】
本発明における有機化合物が含むことができる炭素原子以外の他の原子は特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、プラチナ、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、窒素、リン、酸素、硫黄、セレン、テルル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などがあげられるが、好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、チタン、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、プラチナ、銅、銀、金、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、ケイ素、スズ、窒素、リン、酸素、硫黄、セレン、テルル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、より好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、チタン、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、スズ、窒素、リン、酸素、硫黄、セレン、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素である。
【0077】
本発明における有機化合物が有してもよい置換基は特に限定されず、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基等)、シクロアルケニル基(例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基、エチニル基、トリメチルシリルエチニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、m−クロロフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基、モルフォリノ基等)、ヘテロアリールオキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基、ピリジルオキシ基、チアゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、イミダゾリルオキシ基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、2−ナフチルオキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基等)、ヘテロアリールチオ基(例えば、ピリジルチオ基、チアゾリルチオ基、オキサゾリルチオ基、イミダゾリルチオ基、フリルチオ基、ピロリルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基、モルフォリノスルホニル基、ピロリジノスルホニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アシルオキシカルボニル基(例えば、アセチルオキシカルボニル基、プロピオニルオキシカルボニル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ホルミルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基、モルフォリノカルボニル基、ピペラジノカルボニル基等)、アルカンスルフィニル基又はアリールスルフィニル基(例えば、メタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基、ブタンスルフィニル基、シクロヘキサンスルフィニル基、2−エチルヘキサンスルフィニル基、ドデカンスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルカンスルホニル基又はアリールスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、シクロヘキサンスルホニル基、2−エチルヘキサンスルホニル基、ドデカンスルホニル基、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、N−メチルアニリノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基等)、アミノカルボニルオキシ基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等)、アルコキシカルボニルオキシ基(例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等)、アリールオキシカルボニルオキシ基(例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等)、スルファモイルアミノ基(例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アリールアゾ基(例えば、フェニルアゾ基、ナフチルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基等)、ヘテロアリールアゾ基(例えば、ピリジルアゾ基、チアゾリルアゾ基、オキサゾリルアゾ基、イミダゾリルアゾ基、フリルアゾ基、ピロリルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基等)、イミノ基(例えば、N−スクシンイミド−1−イル基、N−フタルイミド−1−イル基等)、ホスフィノ基(例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等)、ホスフィニル基(例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等)、ホスフィニルオキシ基(例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等)、ホスフィニルアミノ基(例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基等)、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、トリクロロシリル等)、アルコキシシリル基(例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等)ハロカルボニル基(例えば、フルオロカルボニル基、クロロカルボニル基、ブロモカルボニル基、ヨードカルボニル基等)、アルデヒド基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ヒドロキシル基、スルホ基、カルボキシル基、アジド基、イソシアネート基、チオール基等が挙げられ、これらの置換基は更に他の置換基で置換されていてもよく、分子内にこれらの置換基を2つあるいはそれ以上有していてもよい。分子内に2つ以上の置換基を有する場合、置換基は同一であっても、異なっていてもよい。
【0078】
前記有機化合物がフッ素含有有機化合物である場合、フッ素原子は母体の炭化水素の炭素原子に結合していてもよく、置換基の炭化水素の炭素原子に結合していてもよく、炭素以外の他の原子に結合していてもよい。フッ素含有有機化合物は、フッ素を分子内に1つ以上有していればよく、パーフルオロ化されていてもよい。
【0079】
フッ素含率が0〜79質量%の有機化合物は、重合性化合物であってもよい。重合性化合物とは、分子内に少なくとも1つの重合する官能基を有する化合物をいい、該官能基はフッ素原子を含んでいてもよい。重合性基としては、例えば、アクリロイル基、メタアクリロイル基、2−フルオロアクリロイル基、2−トルフルオロメチルアクリロイル基、3,3−ジフルオロアクリロイル基、アクリルアミド基、ビニル基、トリフルオロビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、パーフルオロビニルエーテル基等の不飽和二重結合官能基、エチニル基、プロパルギル等の不飽和三重結合官能基、アルコキシシリル基、シラノール基等のゾル−ゲル重縮合性基、グリシジル基、オキセタニル基等が挙げられる。重合性化合物は、重合性官能基を分子内に2つ、あるいはそれ以上有していてもよく、2つ以上の重合性官能基を有する場合は、重合性官能基が同一であっても異なっていてもよい。また、前記重合性化合物は、一成分でも多成分であってもよく、モノマー、プレポリマー(例えばダイマー、トリマー、テトラマー、オリゴマー)でも、これらの混合物のいずれであってもよい。
【0080】
フッ素含率が0〜79質量%の有機化合物は、ポリマーであってもよい。ポリマーは、用途によって適宜変更されるため、特に限定することはできないが、例えば、前記重合性化合物を重合させることによって得られるポリマーが挙げられる。
【0081】
本発明におけるフッ素含率が0〜79質量%の有機化合物は、用途によって適宜変更されるため特に限定することはできないが、好ましくは本発明におけるパーフルオロクロロエーテル溶媒に対する溶解度が1質量%以上の有機化合物であり、より好ましくは10質量%以上、最も好ましくは20質量%以上の有機化合物である。
【0082】
本発明によれば、(塩素含率/フッ素含率)値が1.2〜4.5の範囲内にあるパーフルオロクロロエーテル化合物を含有するパーフルオロクロロエーテル溶媒に、フッ素非含有有機化合物とフッ素含有有機化合物の両方、あるいは低フッ素含率の有機化合物と高フッ素含率の有機化合物の両方を溶解させた液体組成物を得ることもできる。例えば、本発明の(塩素含率/フッ素含率)値が1.2〜4.5の範囲内にあるパーフルオロクロロエーテル化合物を含有するパーフルオロクロロエーテル溶媒に、フッ素含率が0〜20質量%の有機化合物を10〜30質量%、及びフッ素含率が30〜79質量%の有機化合物を10〜30質量%溶解させた液体組成物を得ることもできる。
【0083】
(パーフルオロクロロエーテル含有組成物の用途)
次に、本発明のパーフルオロクロロエーテル含有組成物の用途について説明する。ただし、本発明のパーフルオロクロロエーテル含有組成物の用途はこれらに限定されない。
本発明のパーフルオロクロロエーテル溶媒は、フッ素非含有有機化合物及びフッ素含有有機化合物両方の溶解度が極めて高く、かつ安定であるため、パーフルオロクロロエーテル溶媒を含む組成物は様々な用途に利用できる。本発明のパーフルオロクロロエーテル含有組成物の用途は、特に限定されないが、例えば、コーティング剤、洗浄剤、化学反応溶液、化学反応溶媒、冷却溶媒、抽出溶媒、クロマトグラフィー用溶媒等に用いることができ、用途に応じて、更に他の目的有効成分を溶解あるいは分散させることができる。他の目的有効成分は、無機化合物であっても有機化合物であってもよく、用途によって適宜変更されるため、特に限定されない。例えば、重合性化合物をパーフルオロクロロエーテル溶媒に溶解させた組成物をコーティング剤に用いる場合、例えば、重合開始剤、重合促進剤、連鎖移動触媒、界面活性剤、重合禁止剤等を溶解あるいは分散させることができる。また、該組成物を化学反応溶液に用いる場合、例えば、金属触媒、無機塩、鉱酸等を溶解あるいは分散させることができる。
【0084】
本発明のパーフルオロクロロエーテル溶媒は、コーティング組成物として極めて有用である。フッ素非含有有機化合物及びフッ素含有有機化合物の両方を溶解させたコーティング組成物を調製する場合、フッ素非含有有機化合物の溶解度が低い溶媒、あるいはフッ素含有有機化合物の溶解度が低い溶媒を用いると、コーティング溶液が均一にならないため、均一なコーティング膜を得ることができない。本発明のパーフルオロクロロエーテル溶媒は、フッ素非含有有機化合物及びフッ素含有有機化合物両方の溶解度が極めて高いため、フッ素非含有有機化合物とフッ素含率の高い有機化合物を用いても、均一なコーティング溶液を調製することができるため、均一なコーティング膜を得ることができる。
前記コーティング組成物における、(塩素含率/フッ素含率)値が1.2〜4.5の範囲内にあるパーフルオロクロロエーテル化合物の含有量は、フッ素含率が0〜79質量%の有機化合物の溶解度、他の添加剤、用途等によって適宜変更されるため、特に限定することはできないが、例えば、フッ素非含有有機化合物とフッ素含有有機化合物の両方を溶解させた組成物を得る場合、フッ素非含有有機化合物及びフッ素含有有機化合物両方の溶解度を向上させるという理由から、(塩素含率/フッ素含率)値が1.2〜4.5の範囲内にあるパーフルオロクロロエーテル化合物は、コーティング組成物中、1〜90質量%含有されることが好ましく、5〜80質量%含有されることがより好ましい。
【0085】
本発明のパーフルオロクロロエーテル溶媒は、多くの反応試薬に対して不活性であるため、該溶媒を含む組成物は、化学反応溶媒あるいは化学反応溶液としても極めて有用である。本発明のパーフルオロクロロエーテル含有組成物の化学反応溶媒あるいは化学反応溶液としての利用は、パーフルオロクロロエーテル溶媒が反応基質あるいは反応試薬等と反応し分解する条件でなければ、特に限定されず、例えば、酸化反応、還元反応、付加反応、置換反応、(付加)環化反応、エステル化反応、アミド化反応、加水分解反応、ラジカル反応、ハロゲン化反応、グリニャール試薬等の有機金属試薬を用いた反応、重合反応等の一般的な有機化学反応に好適用いることができ、液相フッ素化に用いる溶媒及び反応溶液として、特に好適に用いることができる。
前記化学反応溶媒あるいは化学反応溶液における、(塩素含率/フッ素含率)値が1.2〜4.5の範囲内にあるパーフルオロクロロエーテル化合物の含有量は、フッ素含率が0〜79質量%の有機化合物の溶解度、適用する化学反応、反応試薬等によって適宜変更されるため、特に限定することはできないが、例えば、後述の液相フッ素化反応に用いる場合、フッ素非含有有機化合物及びフッ素含有有機化合物両方の溶解度を向上させるという理由から、(塩素含率/フッ素含率)値が1.2〜4.5の範囲内にあるパーフルオロクロロエーテル化合物は、反応溶液中、1〜99.9質量%含有されることが好ましく、5〜99質量%含有されることがより好ましい。
【0086】
液相フッ素化反応とは、米国特許5093432号明細書に記載されているのと同様の反応である。すなわち、液相フッ素化反応とは、パーフルオロ溶媒等のフッ素ガスに不活性な溶媒中で、水素含有有機化合物をフッ素ガスと反応させることにより、水素を部分的にフッ素に置換、あるいは全ての水素をフッ素に置換(パーフルオロ化)する反応である。また、二重結合等の不飽和結合を有する有機化合物の不飽和結合にフッ素を付加させる反応も液相フッ素化反応に含まれる。液相フッ素化反応においては、フッ素化される反応基質及び生成物であるフッ素化された化合物の溶媒に対する溶解度が、生成物の収率及び純度に極めて重要である。すなわち、液相フッ素化反応によって、フッ素非含有有機化合物をフッ素化あるいはパーフルオロ化する場合、パーフルオロ溶媒に対するフッ素非含有有機化合物の溶解度が低い場合、フッ素非含有有機化合物が溶けにくく溶媒と二層に分離してしまうため、副反応が進行し収率及び純度が低下しやすくなるため、好ましくない。また、パーフルオロ溶媒に対するフッ素含有有機化合物の溶解度が低い場合、フッ素化された化合物が溶けにくく、副反応が進行し収率及び純度が低下しやすくなるため、好ましくない。したがって、液相フッ素化反応溶媒としては、フッ素非含有有機化合物及びフッ素含有有機化合物両方の溶解度が高いことが求められる。
【0087】
本発明におけるパーフルオロクロロエーテル溶媒は、前述のようにフッ素含有有機化合物及びフッ素非含有有機化合物両方の溶解度が極めて高いことから、液相フッ素化用溶媒として極めて有用であり、フッ素非含有有機化合物及びフッ素含有有機化合物の液相フッ素化用の溶媒として好適に用いることができる。
【0088】
本発明におけるパーフルオロクロロエーテル溶媒を液相フッ素化反応溶媒として用いる場合、単独で用いても他のパーフルオロ溶媒と混合して用いてもよい。パーフルオロ溶媒の例としては、例えば、パーフルオロアルカン化合物[FC−72(商品名、住友スリーエム社製)等]、パーフルオロエーテル化合物[FC−75、FC−77(共に商品名、住友スリーエム社製)等]パーフルオロポリエーテル化合物[{商品名:クライトレックス(krytox)、デュポン(DuPont)社商標}、{フォンブリン(Fomblin)、ソルベイ ソレクシス(Solvay Solexis)社商標}、{ガルデン(Galden)ソルベイ ソレクシス(Solvay Solexis)社商標}、{デムナム、ダイキン化学工業(株)等}]、クロロフルオロカーボン類(CFC−11、CFC−113等)、不活性流体[商品名:フロリナート(Fluorinert)、3M社商標]、ハロカーボン(Halocarbon)[商品名:ハロカーボン(Halocarbon)社製]等が挙げられ、これらは、2種あるいはそれ以上を混合して用いてもよい。
本発明の(塩素含率/フッ素含率)値が1.2〜4.5の範囲内にあるパーフルオロクロロエーテル化合物を含有するパーフルオロクロロエーテル溶媒を、液相フッ素化反応溶媒として用いる場合、原料であるフッ素非含有有機化合物あるいはフッ素含有有機化合物、及びペルフルオロ化された生成物を、それぞれ20質量%以上溶解できることが好ましい。液相フッ素化反応の原料であるフッ素非含有有機化合物あるいはフッ素含有有機化合物と、パーフルオロ化された生成物を同程度溶解することにより、フッ素化反応が効率的に進行するため特に好ましい。
【実施例】
【0089】
以下に本発明を具体的に説明する実施例を挙げるが、本発明はこれらによって限定されるものではない。ここでは、核磁気共鳴法をNMR、ガスクロマトグラフィ分析法をGC、ガスクロマトグラフィ質量分析法をGC−MSと記す。H−NMRではテトラメチルシラン(TMS)を内部標準として用いて測定を行った。19F−NMRではフルオロトリクロロメタンを外部標準として用いて測定を行った。
【0090】
[実施例1]化合物(2)の製造
【0091】
【化26】

【0092】
(1−1)化合物(10)の製造
2−クロロエタノール30g(373mmol)をガラス製反応容器にとり、トルエン30mlを加え、10℃以下に冷却した。クロラール109.8g(745mmol)を加え、室温で2時間攪拌し、化合物(9)を得た。反応溶液を10℃以下に冷却し、塩化チオニル66.6g(560mmol)及びピリジン44.3g(560mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。反応溶液を10℃以下に冷却後、水を100mL加え、トルエン50mLで抽出した。有機層を15%食塩水100mL、7.5%重曹水100mL(2回)、飽和食塩水100mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去することにより化合物(10)を49.4g(201mmol、収率53.8%)得た。得られた化合物(10)のGC純度は96%であった。
化合物(10);H−NMR〔CDCl〕:δ[ppm]=3.75(2H,dd,J=6.0Hz,4.8Hz)、3.94−4.02(m,1H)、4.22−4.30(1H、m)、5.82(1H、S);GC−MS[SCI]:m/z=209 [M−Cl]。
【0093】
(1−2)化合物(2)の製造
500mLのテフロン(登録商標)製反応容器にFC−72(商品名、住友スリーエム社製)300mL及びフッ化ナトリウム63.6g(1.51mol)をとり、外温を約−25℃に保った。反応容器の出口には、NaFペレット充填層及び―40℃に保持した冷却器を直列に設置し、冷却器で凝集した液体は返送ラインを通して反応容器に戻せるようにした。200mL/minの速度でヘリウムガスを30分間吹き込んだ後、窒素ガスで20%に希釈したフッ素ガス(以下、単純にフッ素ガスと呼ぶ)を250mL/minの速度で15分間吹き込んだ。フッ素ガスを同じ速度で吹き込みながら、化合物(10)20g(81.2mmol)、AK−225(商品名、AGC社製)20g(98.6mmol)、ヘキサフルオロベンゼン20g(107.5mmol)の混合物を8.7時間かけて添加した。その後、フッ素ガスを同じ速度で吹き込みながら、ヘキサフルオロベンゼン1g(5.37mmol)と1gのFC−72との混合物を30分かけて添加した。ヘリウムガスを200mL/minの速度で1時間吹き込んだ後、反応溶液を濾過し、常圧でFC−72を留去した。濃縮物を減圧蒸留することにより、化合物(2)を15.9g(47.3mmol、収率58.2%)得た。GCにより、得られた化合物(2)の純度は91%であった。
化合物(2);19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]=−89.2(1F)、−86.9(1F)、−73.7(2F)、−71.1(1F); GC−MS[SCI]:m/z=299 [M−Cl]。
【0094】
[実施例2]化合物(3)の製造
【0095】
【化27】

【0096】
(2−1)化合物(12)の製造
1,3−ジクロロ−2−プロパノール10g(77.5mmol)をガラス製反応容器にとり、トルエン10mlを加え、10℃以下に冷却した。クロラール45.6g(310mmol)を加え、60℃で3時間攪拌し、化合物(11)を得た。反応溶液を10℃以下に冷却し、塩化チオニル18.5g(156mmol)及びピリジン12.3g(155mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。反応溶液を10℃以下に冷却後、水を30mL加え、トルエン10mLで抽出した。有機層を15%食塩水30mL、7.5%重曹水30mL(2回)、飽和食塩水30mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去することにより化合物(12)を15.5g(52.6mmol、収率67.8%)得た。得られた化合物(12)のGC純度は95%であった。
化合物(12);H−NMR〔CDCl〕:δ[ppm]=3.70―3.90(4H,m)、4.23−4.35(1H,m)、5.99(1H、S);GC−MS[SCI]:m/z=257 [M−Cl]。
【0097】
(2−2)化合物(3)の製造
実施例1と同様の装置を組み、500mLのテフロン(登録商標)製反応容器にFC−72を300mL及びフッ化ナトリウム18.5g(441mmol)をとり、外温を約−25℃に保った。200mL/minの速度でヘリウムガスを30分間吹き込んだ後、フッ素ガスを200mL/minの速度で15分間吹き込んだ。フッ素ガスを同じ速度で吹き込みながら、化合物(12)5.5g(18.7mmol)、AK−225(商品名、AGC社製)5.5g(27.1mmol)、ヘキサフルオロベンゼン5.5g(29.6mmol)の混合物を3時間かけて添加した。その後、フッ素ガスを同じ速度で吹き込みながら、ヘキサフルオロベンゼン2g(10.7mmol)と2gのFC−72との混合物を30分かけて添加した。ヘリウムガスを200mL/minの速度で1時間吹き込んだ後、反応溶液を濾過し、常圧でFC−72を留去した。濃縮物を減圧蒸留することにより、化合物(3)を5.66g(14.1mmol、収率75.1%)得た。GCにより、得られた化合物(3)の純度は96%であった。
化合物(3);19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]=−137.1(1F)、−63.1〜−65.2(5F); GC−MS[SCI,70eV]:m/z=365 [M−Cl]。
【0098】
[実施例3]化合物(4)の製造
【0099】
【化28】

【0100】
(3−1)化合物(14)の製造
2,2−ジクロロエタノール15g(130mmol)をガラス製反応容器にとり、トルエン15mlを加え、10℃以下に冷却した。クロラール76.9g(522mmol)を加え、30℃で3時間攪拌し、化合物(13)を得た。反応溶液を10℃以下に冷却し、塩化チオニル30.9g(260mmol)及びピリジン20.6g(260mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。反応溶液を10℃以下に冷却後、水を45mL加え、トルエン15mLで抽出した。有機層を15%食塩水45mL、7.5%重曹水45mL(2回)、飽和食塩水45mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去することにより化合物(14)を26.1g(93.0mmol、収率71.5%)得た。得られた化合物(14)のGC純度は94%であった。
化合物(14);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=4.30(1H、dd、J=4.8、4.5Hz)、4.42(1H、dd、J=4.8、4.6)、5.65(1H、dd、J=4.6、4.5Hz)、6.09(1H、S); GC−MS[SCI]:m/z=243[M−Cl]。
【0101】
(3−2)化合物(4)の製造
実施例1と同様の装置を組み、500mLのテフロン(登録商標)製反応容器にFC−72を300mL及びフッ化ナトリウム24.1g(575mmol)をとり、外温を約−25℃に保った。200mL/minの速度でヘリウムガスを30分間吹き込んだ後、フッ素ガスを200mL/minの速度で15分間吹き込んだ。フッ素ガスを同じ速度で吹き込みながら、化合物(14)10g(35.6mmol)、AK−225(商品名、AGC社製)10g(49.3mmol)、ヘキサフルオロベンゼン10g(53.7mmol)の混合物を4.6時間かけて添加した。その後、フッ素ガスを同じ速度で吹き込みながら、ヘキサフルオロベンゼン2g(10.7mmol)と2gのFC−72との混合物を30分かけて添加した。ヘリウムガスを200mL/minの速度で1時間吹き込んだ後、反応溶液を濾過し、常圧でFC−72を留去した。濃縮物を減圧蒸留することにより、化合物(4)を9.39g(26.6mmol、収率74.8%)得た。GCにより、得られた化合物(4)の純度は98%であった。
化合物(4);19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]=−87.8(2F)、−76.2(1F)、−71.9(1F); GC−MS[SCI]:m/z=315[M−Cl]。
【0102】
[実施例4]化合物(5)の製造
【0103】
【化29】

【0104】
(4−1)化合物(16)の製造
2,2,2−トリクロロエタノール10g(66.9mmol)をガラス製反応容器にとり、トルエン10mlを加え、10℃以下に冷却した。クロラール98.6g(669mmol)を加え、60℃で3時間攪拌し、化合物(15)を得た。反応溶液を10℃以下に冷却し、塩化チオニル15.9g(134mmol)及びピリジン10.6g(134mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。反応溶液を10℃以下に冷却後、水を30mL加え、トルエン10mLで抽出した。有機層を15%食塩水30mL、7.5%重曹水30mL(2回)、飽和食塩水30mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去することにより化合物(16)を10.8g(34.3mmol、収率51.3%)得た。得られた化合物(16)のH‐NMRスペクトルは、ジャスタス リービッヒ アナレン デル ケミー (Justus Liebigs Annalen der Chemie)ジャーナル、755巻、40〜50頁(1972年)記載の標品のスペクトルと一致した。得られた化合物(16)のGC純度は94%であった。
【0105】
(4−2)化合物(5)の製造
実施例1と同様の装置を組み、500mLのテフロン(登録商標)製反応容器にFC−72を300mL及びフッ化ナトリウム18.2g(433mmol)をとり、外温を約−25℃に保った。200mL/minの速度でヘリウムガスを30分間吹き込んだ後、フッ素ガスを200mL/minの速度で15分間吹き込んだ。フッ素ガスを同じ速度で吹き込みながら、化合物(16)10g(31.7mmol)、AK−225(商品名、AGC製)10g(49.3mmol)、ヘキサフルオロベンゼン10g(53.7mmol)の混合物を4.5mL/hの速度で添加した。その後、フッ素ガスを同じ速度で吹き込みながら、ヘキサフルオロベンゼン2g(10.7mmol)と2gのFC−72との混合物を30分かけて添加した。ヘリウムガスを200mL/minの速度で1時間吹き込んだ後、反応溶液を濾過し、常圧でFC−72を留去した。濃縮物を減圧蒸留することにより、化合物(5)を9.66g(26.2mmol、収率82.5%)得た。GCにより、得られた化合物(5)の純度は98%であった。
化合物(5);19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]=−88.9(2F)、−72.6(1F); GC−MS[SCI]:m/z=331[M−Cl]。
【0106】
[実施例5]溶解度の測定
化合物(2)1gを攪拌しているところに、下記化合物(17)を加えていった。化合物(17)を2g加えても、溶液は均一であり、化合物(17)は化合物(2)に完全に溶解していることがわかった。次に、化合物(17)1gを攪拌しているところに、化合物(2)を加えていったところ、2g加えても溶液は均一であり、化合物(17)は化合物(2)に完全に溶解していることがわかった。以上より、化合物(17)は化合物(2)に任意の割合で溶解することがわかった。
【0107】
【化30】

【0108】
[実施例6]溶解度の測定
化合物(2)を化合物(3)にかえたこと以外は実施例5と同様に行い、化合物(17)は化合物(3)に任意の割合で溶解することがわかった。
【0109】
[実施例7]溶解度の測定
化合物(2)を化合物(4)にかえたこと以外は実施例5と同様に行い、化合物(17)は化合物(4)に任意の割合で溶解することがわかった。
【0110】
[実施例8]溶解度の測定
化合物(2)を化合物(5)にかえたこと以外は実施例5と同様に行い、化合物(17)は化合物(5)に任意の割合で溶解することがわかった。
【0111】
[比較例1]溶解度の測定
ハロカーボン1.8オイル[ハロカーボン(halocarbon)社製]3gを攪拌しているところに、化合物(17)を加えていった。化合物(17)を2g加えたところ、化合物(17)のハロカーボン1.8オイルに対する飽和溶解度をこえたため、溶液がハロカーボン1.8オイルの層(下層)と化合物(17)の層(上層)に分離した。下層の、化合物(17)が飽和しているハロカーボン1.8オイルの層1.67gを抜き取り、内部標準物質として1,1,2,2−テトラクロロエタン[和光純薬(株)社製]を150μL(0.867mmol)加えた。該溶液を重クロロホルムで希釈し、H−NMRを測定した。1,1,2,2−テトラクロロエタンと化合物(17)の積分比から、ハロカーボン1.8オイル層1.67g中の化合物(17)を定量した結果、0.27gであり、化合物(17)のハロカーボン1.8オイルに対する飽和溶解度は16質量%であることがわかった。
【0112】
[比較例2]溶解度の測定
ハロカーボン1.8オイルを、特許文献8に記載の下記化合物(18)にかえたこと以外は、比較例1と同様に行った。化合物(17)の化合物(18)に対する飽和溶解度は4.7質量%であった。
【0113】
【化31】

【0114】
[比較例3]溶解度の測定
ハロカーボン1.8オイルを下記FC−72(パーフルオロヘキサン)にかえたこと以外は、比較例1と同様に行った。化合物(17)のFC−72に対する飽和溶解度は0.14質量%であった。
【0115】
【化32】

【0116】
また、実施例5〜8、比較例1、2で使用した化合物(2)、化合物(3)、化合物(4)、化合物(5)、ハロカーボン1.8オイル、化合物(18)はFC−72を任意の割合で溶解することが確認できた。
上記実施例5〜8、比較例1〜3の溶解度測定の結果は下記表1にまとめることができる。表1にはフッ素溶媒の沸点及び(塩素含率/フッ素含率)値も記載した。
【0117】
【表1】

【0118】
表1に示したように、化合物(17)の溶解度は(塩素含率/フッ素含率)値の増大に伴い、上昇し、該(塩素含率/フッ素含率)値が本発明における範囲内のパーフルオロ溶媒は化合物(17)及びFC−72の両方を任意の割合で溶解することがわかった。
【0119】
[実施例9]化合物(2)を溶媒に用いた化合物(10)の液相フッ素化による化合物(2)の製造
【0120】
【化33】

【0121】
実施例1と同様の装置を組み、300mLのテフロン(登録商標)製反応容器に化合物(2)100mL及びフッ化ナトリウム8.52g(203mmol)をとり、−10℃以下に保った。100mL/minの速度でヘリウムガスを30分間吹き込んだ後、フッ素ガスを100mL/minの速度で15分間吹き込んだ。フッ素ガスを同じ速度で吹き込みながら、化合物(10)5g(20.3mmol)と化合物(2)5gの混合物を2.7時間かけて添加した。その後、フッ素ガスを同じ速度で吹き込みながら、ヘキサフルオロベンゼン0.1g(0.537mmol)と化合物(2)0.1gの混合物を15分かけて添加した。ヘリウムガスを100mL/minの速度で1時間吹き込んだ後、反応溶液を濾過した。GC及びNMRにより解析し、全ての化合物(10)が化合物(2)に変換されていることがわかった。
【0122】
[実施例10] 化合物(2)を溶媒に用いた化合物(17)のフッ素化による化合物(20)の製造
【0123】
【化34】

【0124】
実施例1と同様の装置を組み、300mLのテフロン(登録商標)製反応容器に化合物(2)100mL及びフッ化ナトリウム6.66g(159mmol)をとり、−10℃以下に保った。100mL/minの速度でヘリウムガスを30分間吹き込んだ後、フッ素ガスを100mL/minの速度で15分間吹き込んだ。フッ素ガスを同じ速度で吹き込みながら、化合物(17)1g(2.64mmol)と化合物(2)1gの混合物を2.1時間かけて添加した。その後、フッ素ガスを同じ速度で吹き込みながら、ヘキサフルオロベンゼン0.25g(1.34mmol)と化合物(2)0.25gの混合物を30分かけて添加した。ヘリウムガスを100mL/minの速度で1時間吹き込んだ後、反応溶液を濾過し、化合物(19)が化合物(2)に溶解した溶液を得た。フッ化ナトリウム0.665g(15.8mmol)及びメタノール64mLを加え、室温で1時間攪拌後、常圧で溶媒を留去することにより化合物(20)を1.96g(2.59mmol、収率98.1%)得た。GCにより、得られた化合物(20)の純度は86%であった。
【0125】
[実施例11]化合物(5)を溶媒に用いた化合物(17)のフッ素化による化合物(20)の製造
溶媒を化合物(2)から化合物(5)に換えたこと以外は、実施例10と同様の方法で化合物(20)の製造を行った。得られた化合物(20)の収量は1.96g(2.59mmol、収率98.1%)、GC純度は85%であった。
【0126】
[比較例4]FC−72を溶媒に用いた化合物(17)のフッ素化による化合物(20)の製造
【0127】
【化35】

【0128】
実施例1と同様の装置を組み、300mLのテフロン(登録商標)製反応容器にFC−72を100mL及びフッ化ナトリウム6.66g(159mmol)をとり、−10℃以下に保った。100mL/minの速度でヘリウムガスを30分間吹き込んだ後、フッ素ガスを100mL/minの速度で15分間吹き込んだ。フッ素ガスを同じ速度で吹き込みながら、化合物(17)1g(2.64mmol)と3g(14.8mmol)のAK−225との混合物を2.5時間かけて添加した。その後、フッ素ガスを同じ速度で吹き込みながら、ヘキサフルオロベンゼン2g(10.7mmol)と2gのFC−72との混合物を1時間かけて添加した。ヘリウムガスを100mL/minの速度で1時間吹き込んだ後、反応溶液を濾過し、化合物(19)がFC−72に溶解した溶液を得た。フッ化ナトリウム0.665g(15.8mmol)及びメタノール64mLを加え室温で1時間攪拌後、常圧で溶媒を留去することにより化合物(20)を1.89g(2.50mmol、収率94.5%)得た。GCにより、得られた化合物(20)の純度は41%であった。
【0129】
実施例9では、フッ素含率が0質量%の化合物(10)をパーフルオロ化することにより、フッ素含率28質量%の化合物(2)を得た。反応開始から終了まで溶液は常に均一であり、化合物(10)及び化合物(10)の水素が部分的にフッ素に置換された中間体は溶媒(2)に完全に溶解していた。また、該反応は、化合物(10)がパーフルオロ化された化合物(2)を溶媒として用いているため、反応後に存在するのは、化合物(2)のみであり、精製する必要がなく、極めて有用な化合物(2)の製造方法である。
【0130】
実施例10及び実施例11では、フッ素含率が0質量%の化合物(17)をパーフルオロ化し、フッ素含率62質量%の化合物(19)を得て、化合物(19)からフッ素含率53質量%の化合物(20)を得た。化合物(17)から化合物(19)へのフッ素化反応において、溶液は常に均一であり、化合物(17)、化合物(17)の水素が部分的にフッ素に置換された中間体、及び化合物(19)は化合物(2)あるいは化合物(5)に完全に溶解していた。
【0131】
比較例4では、化合物(17)がFC−72に溶解しないため、反応溶液は不均一であった。比較例4の生成物(20)の純度は41%であり、実施例10及び実施例11の生成物(20)の純度が、それぞれ86%、85%であることからも明らかなように、本発明のパーフルオロクロロエーテル溶媒を用いると、フッ素非含有有機化合物及びフッ素含有有機化合物両方の溶解度が高くなるために、副反応が抑えられフッ素化反応が極めて良好に進行することがわかった。
【0132】
[実施例12]フッ素含有アクリレートを含む組成物を用いたコーティング膜の作製
1,6-ビス(アクリロイルオキシ)-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン[東京化成(株)社製、フッ素含率41質量%]40質量部、光開始剤として、イルガキュア184(チバガイギー社製、フッ素含率0質量%)4質量部、溶媒として化合物(2)60質量部を混合し、均一な硬化性塗液を調製した。この塗液を、厚さ100μmのPETフィルムにスピンコートした。ついで紫外線照射装置で120W高圧水銀灯を用いて400mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させることにより、均一なハードコート膜を表面に形成させたPETフィルムを作製することができた。
【0133】
【化36】

【0134】
[実施例13]フッ素含有及びフッ素非含有アクリレートを含む組成物を用いたコーティング膜の作製
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[日本化薬(株)社製、フッ素含率0質量%]120質量部、1,6−ビス(アクリロイルオキシ)−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン[東京化成(株)社製、フッ素含率41質量%]20質量部、光開始剤として、イルガキュア184(チバガイギー社製、フッ素含率0質量%)4質量部、溶媒として化合物(4)60質量部を混合し、均一な硬化性組成物を調製した。組成物を、厚さ100μmのPETフィルムにスピンコートした。ついで紫外線照射装置で120Wの高圧水銀灯を用いて400mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させることにより、均一なハードコート膜を表面に形成させたPETフィルムを作製することができた。
【0135】
[実施例14]シロキサンポリマーを含む組成物を用いたコーティング膜の作製
3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン{和光純(株)社製、フッ素含率28質量%}0.1g、化合物(2)2g、イソプロピルアルコール(フッ素含率0質量%)の0.5gを混合し、よく撹拌した。これに1%HCl水溶液1.0gを徐々に滴下した。滴下終了後25℃に保温し7日間放置してコーティング組成物を調製した。組成物を30mm四方のガラス片上にスピンコートした。塗布後のガラス片を100℃の恒温槽に入れて12時間保持することにより、均一なコーティング膜を作製することができた。
【0136】
[実施例15]ウレタン基含有シロキサンポリマーを含む組成物を用いたコーティング膜の作製
(15−1)コーティング用組成物の調製
1H,1H,10H,10H-ヘキサデカフルオロ-1,10-デカンジオール[東京化成(株)社製]1.0g(2.16mmol)、炭酸カリウム0.69g(5mmol)、及び化合物(3)5mLの混合物にイソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル[東京化成(株)社製]1.07g(4.33mmol)を添加し、室温で4時間攪拌した。セライト濾過後、化合物(3)を20mL加え、溶液Aを得た。アセチルアセトン0.88g(8,8mmol)、オルトチタン酸 テトラエチル[東京化成(株)社製]1.0g(4.4mmol)及びエタノール18.9gを混合し、室温で10分攪拌後、水0.15g(8.3mmol)を加え、室温で1h攪拌し、溶液Bを得た。溶液A2.5mL、溶液B1.01g、及び化合物(3)2.5mLの混合物に、水0.3gを添加し、室温で4時間攪拌後、14時間静置してコーティング用組成物を得た。
【0137】
(15−2)コーティング膜の作製
コーティング用組成物を30mm四方のガラス片上にスピンコートした。塗布後のガラス片を150℃の恒温槽に入れて30分保持することにより、均一なコーティング膜を作製することができた。
【0138】
[比較例5]FC−72を含む組成物を用いたコーティング膜の作製
化合物(4)をFC−72に換えたこと以外は、実施例13と同様に行った。ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートがFC−72に溶解しないため、均一なハードコート膜が得られなかった。
【0139】
[比較例6]FC−72を含む組成物を用いたコーティング膜の作製
化合物(3)をFC−72に換えたこと以外は、実施例15と同様に行った。イソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル及び1H,1H,10H,10H-ヘキサデカフルオロ-1,10-デカンジオール等がFC−72に完全に溶解せず、また溶液Aと溶液Bも均一に混合しないため、均一なハードコート膜が得られなかった。
【0140】
[実施例16]化合物(2’)の製造
【0141】
【化37】

【0142】
(1’ ‐1)化合物(7’)の製造
ガラス製反応容器に化合物(10)5.84g(23.7mmol)及びエタ
ノール112mLをとり、内温10℃以下に冷却した。7.1質量%水酸化ナトリウム水溶液20mLを添加し、室温で3時間攪拌した。反応溶液を1規定塩酸で中和後、
酢酸エチル150mL及び10%食塩水100mLを加え、分液した。有機層を
25%食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧濃縮することにより、化合物(7’)を4.51g(21.5mmol、収率90.7%)
得た。
【0143】
(1’‐2)化合物(8’)の製造
実施例1と同様の装置を組み、300mLテフロン(登録商標)製反応容器に化合物(7’)4g(19.1mmol)及びAK−225 100mLをとり、外温を約−98℃に保った。100mL/minの速度でヘリウムガスを30分間吹き込んだ後、フッ素ガスを20mL/minの速度で160分間吹き込んだ。ヘリウムガスを100mL/minの速度で30分吹き込んだ後、反応溶液を減圧濃縮することにより、化合物(8’)を4.26g(17.2mmol、収率90.1%)得た。
【0144】
(1’‐3)化合物(2’)の製造
実施例1と同様の装置を組み、500mLテフロン(登録商標)製反応容器にフッ化ナトリウム7.05g(168mmol)及びFC−72 100mLをとり、外温を約−25℃に保った。100mL/minの速度でヘリウムガスを30分間吹き込んだ後、フッ素ガスを100mL/mLの速度で15分間吹き込んだ。フッ素ガスを同じ速度で吹き込みながら、化合物(8’)4g(16.1mmol)及びAK−225 4gの混合物を130分かけて添加した。その後、フッ素ガスを同じ速度で吹き込みながら、ヘキサフルオロベンゼン0.25g(1.35mmol)とFC−72 0.25gの混合物を15分かけて添加した。ヘリウムガスを100mL/minの速度で30分吹き込んだ後、反応溶液を濾過し、常圧で溶媒を留去した。濃縮物を減圧濃縮することにより、化合物(2’)を4.55g(14.2mmol、収率88.3%)得た。
化合物(2’);19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]=−89.0(1F)、−86.7(1F)、−74.6(1F)、−73.6(2F)、−72.6(1F); GC−MS[SCI]:m/z=283[M−Cl]。
【0145】
[実施例17]化合物(3’)の製造
【0146】
【化38】

【0147】
(2’−1)化合物(9’)の製造
化合物(10)を化合物(14)6g(21.4mmol)にかえ、実施例16の(1’−1)と同様に行い、化合物(9’)を4.81g(19.7mmol、収率92.1%)得た。
【0148】
(2’−2)化合物(10’)の製造
化合物(7’)を化合物(9’)4.5g(18.4mmol)にかえ、実施例16の(1’−2)と同様に行い、化合物(10’)を4.71g(16.7mmol、収率90.9%)得た。
【0149】
(2’−3)化合物(3’)の製造
化合物(8’)を化合物(10’)4.5g(15.9mmol)にかえ、実施例16の(1’−3)と同様に行い、化合物(3’)を4.81g(14.3mmol、収率89.9%)得た。
化合物(3’);19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]=−87.6(2F)、−76.2(1F)、−74.6(1F)、−72.9(1F); GC−MS[SCI]:m/z=299[M−Cl]。
【0150】
[実施例18]化合物(4’)の製造
【0151】
【化39】

【0152】
(3’−1)化合物(11’)の製造
化合物(10)を化合物(16)5.5g(17.4mmol)にかえ、実施例16の(1’−1)と同様に行い、化合物(11’)を4.60g(16.5mmol、収率94.8%)得た。
【0153】
(3’−2)化合物(12’)の製造
化合物(7’)を化合物(11’)4.5g(16.1mmol)にかえ、実施例16の(1’−2)と同様に行い、化合物(12’)を4.81g(15.2mmol、収率94.4%)得た。
【0154】
(3’−3)化合物(4’)の製造
化合物(8’)を化合物(12’)4.5g(14.2mmol)にかえ、実施例16の(1’−3)と同様に行い、化合物(4’)を4.76g(13.5mmol、収率95.1%)得た。
化合物(4’);19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]=−88.7(2F)、−74.7(1F)、−73.2(1F); GC−MS[SCI]:m/z=315[M−Cl]。
【0155】
[実施例19]化合物(5’)の製造
【0156】
【化40】

【0157】
(4’−1)化合物(13’)の製造
化合物(10)を化合物(12)6g(20.4mmol)にかえ、実施例16の(1’−1)と同様に行い、化合物(13’)を5.06g(19.6mmol、収率96.1%)得た。
【0158】
(4’−2)化合物(14’)の製造
化合物(7’)を化合物(13’)4.5g(17.4mmol)にかえ、実施例16の(1’−2)と同様に行い、化合物(14’)を4.95g(16.7mmol、収率96.0%)得た。
【0159】
(4’−3)化合物(5’)の製造
化合物(8’)を化合物(14’)4.5g(15.2mmol)にかえ、実施例16の(1’−3)と同様に行い、化合物(5’)を5.60g(14.5mmol、収率95.4%)得た。
化合物(5’);19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]=−136.9(1F)、−64.7(4F);GC−MS[SCI]:m/z=349[M−Cl]。
【0160】
[実施例20]溶解度の測定
ハロカーボン1.8オイルを化合物(2’)にかえたこと以外は、比較例1と同様に行い、化合物(17)の化合物(2’)に対する飽和溶解度は21質量%であることがわかった。
【0161】
[実施例21]溶解度の測定
化合物(2)を化合物(3’)にかえたこと以外は実施例5と同様に行い、化合物(17)は化合物(3’)に任意の割合で溶解することがわかった。
【0162】
[実施例22]溶解度の測定
化合物(2)を化合物(4’)にかえたこと以外は実施例5と同様に行い、化合物(17)は化合物(4’)に任意の割合で溶解することがわかった。
【0163】
[実施例23]溶解度の測定
ハロカーボン1.8オイルを化合物(5’)にかえたこと以外は、比較例1と同様に行い、化合物(17)の化合物(5’)に対する飽和溶解度は27質量%であることがわかった。
【0164】
また、実施例20〜23で使用した化合物(2’)、化合物(3’)、化合物(4’)、化合物(5’)はFC−72を任意の割合で溶解することが確認できた。
上記実施例20〜23の溶解度測定の結果は下記表2にまとめることができる。表2にはフッ素溶媒の沸点及び(塩素含率/フッ素含率)値も記載した。
【0165】
【表2】

【0166】
[実施例24]化合物(2’)を溶媒に用いた化合物(17)のフッ素化による化合物(20)の製造
【0167】
【化41】

【0168】
溶媒を化合物(2)から化合物(2’)に換えたこと以外は、実施例10と同様の方法で化合物(20)の製造を行った。得られた化合物(20)の収量は1.95g(2.58mmol、収率97.7%)、GC純度は89%であった。
【0169】
[実施例25]化合物(5’)を溶媒に用いた化合物(17)のフッ素化による化合物(20)の製造
【0170】
【化42】

【0171】
溶媒を化合物(2)から化合物(5’)に換えたこと以外は、実施例10と同様の方法で化合物(20)の製造を行った。得られた化合物(20)の収量は1.96g(2.59mmol、収率98.1%)、GC純度は88%であった。
【0172】
[実施例26]フッ素含有及びフッ素非含有アクリレートを含む組成物を用いたコーティング膜の作製
【0173】
トリメチロールプロパントリアクリレート[東京化成(株)社製、フッ素含率0質量%]20質量部、1,6−ビス(アクリロイルオキシ)−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン[東京化成(株)社製、フッ素含率41質量%]20質量部、光開始剤として、イルガキュア184(チバガイギー社製、フッ素含率0質量%)4質量部、溶媒として化合物(2’)80質量部を混合し、均一な硬化性組成物を調製した。組成物を、厚さ100μmのPETフィルムにスピンコートした。ついで紫外線照射装置で120Wの高圧水銀灯を用いて400mJ/cmの紫外線を照射して硬化させることにより、均一なハードコート層を表面に形成させたPETフィルムを作製することができた。
【0174】
[比較例7]
【0175】
溶媒を化合物(2’)からFC−72にかえたこと以外は、実施例26と同様に行った。トリメチロールプロパントリアクリレートがFC−72に溶解しないため、均一なハードコート膜が得られなかった。
【0176】
以上のように、本発明のパーフルオロクロロエーテル溶媒を用いると、フッ素非含有有機化合物及びフッ素含有有機化合物両方の溶解度が高いために、均一なコーティング膜を作製することができる。
以上の実施例からも明らかなように、本発明のパーフルオロクロロエーテル溶媒を用いると、フッ素含率(0〜79質量%)、官能基(炭化水素基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、水酸基、アリール基、イソシアネート基、ウレタン基、アクリレート基、トリアルコキシシリル基、シロキシ基など)、液体、固体を問わず、様々な有機化合物を溶解させることができ、これらの有機化合物を溶解させるためには(塩素含率/フッ素含率)値が1.2から4.5の範囲内にあるパーフルオロクロロエーテル溶媒を用いることが極めて重要であることがわかる。したがって、本発明のパーフルオロクロロエーテル溶媒に溶解させることができる有機化合物は特に限定されず、様々なフッ素含率及び構造の有機化合物を用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(塩素含率/フッ素含率)値が1.2〜4.5の範囲内にあるパーフルオロクロロエーテル化合物を含有するパーフルオロクロロエーテル溶媒に、フッ素含率が0〜79質量%の有機化合物を溶解させたことを特徴とする液体組成物。ただし、(塩素含率/フッ素含率)値は下記式で定義される値である。
【数1】

【請求項2】
前記パーフルオロクロロエーテル化合物の(塩素含率/フッ素含率)値が1.8〜4.5の範囲内である、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
前記パーフルオロクロロエーテル溶媒が、圧力760mmHgにおいて60℃〜300℃の範囲内に沸点を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体組成物。
【請求項4】
前記フッ素含率が0〜79質量%の有機化合物が、重合性化合物であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項5】
前記フッ素含率が0〜79質量%の有機化合物が、ポリマーであることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項6】
前記パーフルオロクロロエーテル化合物が、下記一般式(1)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の液体組成物。
【化1】

(一般式(1)中、Rは、炭化水素基中の全ての水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置換された基(ただし、炭化水素基はエーテル性酸素原子を含んでいてもよい)を表す。ただし、一般式(1)で表される化合物の(塩素含率/フッ素含率)値は1.2〜4.5の範囲内である。)
【請求項7】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記化合物(2)、(3)、(4)、又は(5)であることを特徴とする請求項6に記載の液体組成物。
【化2】

【請求項8】
前記パーフルオロクロロエーテル化合物が、下記一般式(1’)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の液体組成物。
【化3】

(一般式(1’)中、Rは、炭化水素基中の全ての水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置換された基(ただし、炭化水素基はエーテル性酸素原子を含んでいてもよい)を表す。ただし、一般式(1’)で表される化合物の(塩素含率/フッ素含率)値は1.2〜4.5の範囲内である。)
【請求項9】
前記一般式(1’)で表される化合物が、下記化合物(2’)、(3’)、(4’)、又は(5’)であることを特徴とする請求項8に記載の液体組成物。
【化4】

【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の液体組成物を含むことを特徴とするコーティング用液体組成物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の液体組成物を含むことを特徴とする化学反応溶液。
【請求項12】
下記式(2)で表されるパーフルオロクロロエーテル化合物。
【化5】

【請求項13】
下記式(3)で表されるパーフルオロクロロエーテル化合物。
【化6】

【請求項14】
下記式(4)で表されるパーフルオロクロロエーテル化合物。
【化7】

【請求項15】
下記式(5)で表されるパーフルオロクロロエーテル化合物。
【化8】

【請求項16】
下記式(2’)で表されるパーフルオロクロロエーテル化合物。
【化9】

【請求項17】
下記式(3’)で表されるパーフルオロクロロエーテル化合物。
【化10】

【請求項18】
下記式(4’)で表されるパーフルオロクロロエーテル化合物。
【化11】

【請求項19】
下記式(5’)で表されるパーフルオロクロロエーテル化合物。
【化12】


【公開番号】特開2010−254678(P2010−254678A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76452(P2010−76452)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】