説明

パーフルオロポリエーテルアミド連結ホスホネート、ホスフェートおよびそれらの誘導体

パーフルオロポリエーテルアミド連結ホスホネートおよびその誘導体が提供される。パーフルオロポリエーテルアミド連結ホスホネートまたはその誘導体、パーフルオロポリエーテルアミド連結ホスフェートまたはその誘導体あるいはそれらの組み合わせを含む組成物も提供される。更に、物品、物品を製造する方法および基材への異物の接着を減少させる方法が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
エレクトロニクスにおける現在の製品トレンドでは、ますますより微細なピッチのフレキシブル回路を必要としている。フレキシブル回路製造プロセスの画像形成工程中にフォトツールに接着する小粒子によって引き起こされる反復する欠陥は製品収率を大幅に下げる場合がある。
【0002】
フレキシブル回路の製作は誘電体および導電性材料の幾つかの層の作成を含み、それらの幾つかの層は、それらの層に隣接する層に密に接触している。これらの層の少なくとも1層は、当該層に材料を選択的に導入するか、または当該層から材料を選択的に除去することによりパターン化してもよい。パターンは、フォトリソグラフィー(写真印刷)プロセスによって作ってもよい。例えば、フォトレジスト材料の層はパターン化しようとする層の表面上に被着させることが可能である。所望のパターンの形を取った透明領域および不透明領域を有するフォトツールは、フォトレジストに紫外線を選択的に照射するために用いることが可能である。光はネガティブフォトレジストの場合のように照射領域においてフォトレジストの一部に架橋反応を受けさせるか、またはポジティブフォトレジストの場合のように照射領域において高分子分解反応を受けさせるかのいずれかである。フォトレジストの所望の部分を除去するために適切な溶媒を用いてもよい。下にある照射領域は減法処理(サブトラクティブ・プロセス)の場合エッチング除去してもよいか、または加法処理(アディティブ・プロセス)の場合加えてもよい。いずれの場合も、層はパターン化される。
【0003】
写真印刷プロセスは、優れたフィーチャ解像度を有するフレキシブル回路の作成を可能にし、製造プロセス中に高い処理量を可能にする。異なるパターンを異なる層に被着させる場合、フォトツールはフォトレジスト層上に正確に配列されなければならない。フォトツールは、フォトツールをこの写真印刷プロセス中にフォトレジストに接触して置く時、クランピングまたは真空引きによってフォオトレジストに固定してもよい。
【0004】
しかし、特に、フォトツールを清浄化せずにフォトツールを繰り返し用いて幾つかの基材を逐次印刷する時、パターンまたはフォトツール中の欠陥を日常的に経験する。結果として、フォトツールは定期的に検査され清浄化されなければならない。これは、写真印刷プロセスの処理量に影響を及ぼす可能性があり、欠陥を排除できないのでフォトツールを交換しなければならない場合に付加コストがもたらされる。
【0005】
従来のフォトツールはクロム領域とガラス領域を有することが多い。光はガラス領域を通過することが可能であるが、クロム領域を通過しない。ガラスとクロムの両方は高表面エネルギー材料であり、それはフォトレジストまたはダストの粒子をフォトツールに接着させることが可能である。粒子がガラスにくっつく時、光は吸収され、結果として、光はフォトレジストに達しない。これは、所定の領域の不適切な照射をもたらす可能性があり、それは、次に欠陥を作る。更に、フォトツールに接着する粒子は、フォトツールとフォトレジスト表面との間で空隙を作る可能性があり、得られる画像の解像度を落とす。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
パーフルオロポリエーテルアミド連結ホスホネートおよびその誘導体が提供される。パーフルオロポリエーテルアミド連結ホスホネートおよびその誘導体、パーフルオロポリエーテルアミド連結ホスフェートまたはその誘導体あるいはそれらの組み合わせを含む組成物も提供される。更に、物品、物品を製造する方法および基材への異物の接着を減少させる方法が開示されている。例えば、写真印刷プロセス中にフォトツールなどの基材の表面上に層を形成するために、本化合物および本組成物を用いることが可能である。こうした層は、写真印刷プロセスを用いて形成された製品中の欠陥を最少化するのを助けることが可能であるか、写真印刷プロセスの処理量を増やすことが可能であるか、またはそれらの組み合わせであることが可能である。
【0007】
一面において、化合物は次式Iにより表される。
【0008】
【化1】

【0009】
上式Iにおいて、Rfは1価または2価のパーフルオロポリエーテル基であり、yは1または2に等しく、各Xは独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、アルキルまたはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、あるいは正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員のヘテロ環式基であり、R1は水素またはアルキルであり、R2は、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレンまたはそれらの組み合わせから選択された2価基およびカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせから選択された任意の2価基を含み、ここで、R2は、置換されていないか、またはアルキル、アリール、ハロまたはそれらの組み合わせで置換されている。
【0010】
もう1つの面において、ヒドロフルオロエーテルおよび
次式Iの化合物:
【0011】
【化2】

【0012】
次式IIの化合物:
【0013】
【化3】

【0014】
またはそれらの組み合わせを含む組成物が提供される。
【0015】
上式中、Rfは1価または2価のパーフルオロポリエーテル基であり、yは1または2に等しく、各Xは独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、アルキルまたはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、あるいは正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員のヘテロ環式基であり、R1は水素またはアルキルであり、R2は、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレンまたはそれらの組み合わせから選択された2価基およびカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせから選択された任意の2価基を含み、ここで、R2は、置換されていないか、またはアルキル、アリール、ハロまたはそれらの組み合わせで置換されている。
【0016】
第3の面において、
弗素化シランおよび
次式Iの化合物:
【0017】
【化4】

【0018】
次式IIの化合物:
【0019】
【化5】

【0020】
またはそれらの組み合わせを含む組成物が提供される。
【0021】
上式中、Rfは1価または2価のパーフルオロポリエーテル基であり、yは1または2に等しく、各Xは独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、アルキルまたはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、あるいは正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員のヘテロ環式基であり、R1は水素またはアルキルであり、R2は、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレンまたはそれらの組み合わせから選択された2価基およびカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせから選択された任意の2価基を含み、ここで、R2は、置換されていないか、またはアルキル、アリール、ハロまたはそれらの組み合わせで置換されている。
【0022】
第4の面において、基材および前記基材の表面上に結合された上式Iによる化合物を含む物品が提供される。
【0023】
第5の面において、物品を製造する方法が提供される。本方法は、基材の表面にコーティング(塗料組成物)を被着させることを含む。一実施形態において、塗料組成物は上式Iの化合物を含む。第2の実施形態において、塗料組成物は、ヒドロフルオロエーテル、弗素化シランまたはそれらの組み合わせから選択された第1の成分および式I、式IIまたはそれらの組み合わせの化合物から選択された第2の成分を含む。
【0024】
第6の面において、基材への異物の接着を減少させる方法が提供される。本方法は、基材の表面に塗料組成物を被着させることを含む。一実施形態において、塗料組成物は上式Iの化合物を含む。第2の実施形態において、塗料組成物は、ヒドロフルオロエーテル、弗素化シランまたはそれらの組み合わせから選択された第1の成分および上式I、上式IIまたはそれらの組み合わせの化合物から選択された第2の成分を含む。
【0025】
上記要約は、本発明の開示された各実施形態もあらゆる実施も記載することを意図していない。以下の詳細な説明では、これらの実施形態をより詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
上記の面は、添付した図面と関連させて種々の実施形態の以下の詳細な説明を考慮すれば、より完全に理解することができるであろう。
【0027】
また、本発明は、化合物および組成物の使用を下記の特定の用途に限定しないことを理解されたい。反対に、本発明は、化合物および組成物についての一部の使用にのみで例示されるべきではない。
【0028】
パーフルオロポリエーテルアミド連結ホスホネートおよびその誘導体が提供される。パーフルオロポリエーテルアミド連結ホスホネートまたはその誘導体、パーフルオロポリエーテルアミド連結ホスフェートまたはその誘導体あるいはそれらの組み合わせを含む組成物も提供される。更に、物品、物品を製造する方法および基材への異物の接着を減少させる方法が開示されている。本化合物および組成物は、例えば、写真印刷プロセスにおけるフォトツールなどの基材を被覆するために用いることが可能である。
【0029】
定義
本明細書(英文)で用いられる「a」、「an」および「the」という用語は、記載されているエレメントの1つ以上を意味する「少なくとも1つ」と互換可能に用いられる。
【0030】
本明細書で用いられる「アシル」という用語は、式R(CO)−の基を意味する。式中、(CO)は炭素が二重結合により酸素に結合され、Rはアルキル基であることを示している。
【0031】
本明細書で用いられる「アシルオキシ」という用語は、式R(CO)O−の基を意味する。式中、Rはアルキル基である。
【0032】
本明細書で用いられる「アルカリ金属」という用語は、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンを意味する。
【0033】
本明細書で用いられる「アルカン」という用語は、直鎖、分岐、環式またはそれらの組み合わせである飽和炭化水素を意味する。アルカンは、典型的には1〜30個の炭素原子を有する。幾つかの実施形態において、アルカンは、1〜20、1〜10、1〜8、1〜6、1〜4または1〜3個の炭素原子を有する。
【0034】
本明細書で用いられる「アルコキシ」という用語は式−ORの基を意味する。式中、Rはアルキル基である。
【0035】
本明細書で用いられる「アルキル」という用語はアルカンからの水素の引抜によって形成される1価部分を意味する。アルキルは、直鎖構造、分岐構造、環式構造またはそれらの組み合わせを有することが可能である。シクロアルキルは環式アルキルであり、アルキル基の部分集合である。
【0036】
本明細書で用いられる「アルキレン」という用語は、アルカンからの2個の水素原子の引抜によって形成される2価部分を意味する。アルキレンは、直鎖構造、分岐構造、環式構造またはそれらの組み合わせを有することが可能である。
【0037】
本明細書で用いられる「アリール」という用語は、1〜5個の接続環、多縮合環またはそれらの組み合わせを有する炭素環式芳香族化合物の1価部分を意味する。幾つかの実施形態において、アリール基は、4個の環、3個の環、2個の環または1個の環を有する。例えば、アリール基はフェニルであることが可能である。
【0038】
本明細書で用いられる「アリーレン」という用語は、1〜5個の接続環、多縮合環またはそれらの組み合わせを有する炭素環式芳香族化合物の2価部分を意味する。幾つかの実施形態において、アリーレン基は、4個の環、3個の環、2個の環または1個の環を有する。例えば、アリーレン基はフェニレンであることが可能である。
【0039】
本明細書で用いられる「カルボニル」という用語は、式−(CO)−の2価基を意味する。式中、炭素は二重結合により酸素に結合される。
【0040】
本明細書で用いられる「カルボニルオキシ」という用語は、式−(CO)O−の2価基を意味する。
【0041】
本明細書で用いられる「カルボニルイミノ」という用語は、式−(CO)NRd−の2価基を意味する。式中、Rdは水素またはアルキルである。
【0042】
本明細書で用いられる「フルオロアルキル」という用語は、水素原子の少なくとも1個が弗素原子で置換されているアルキル基を意味する。
【0043】
本明細書で用いられる「フルオロエーテル」という用語は、酸素原子により連結された2個の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基を有する化合物または基を意味する(すなわち連鎖状酸素原子が存在する)。炭化水素基の少なくとも1個は弗素原子で置換された少なくとも1個の水素原子を有する。炭化水素基は、直鎖構造、分岐構造、環式構造またはそれらの組み合わせを有することが可能である。
【0044】
本明細書で用いられる「フルオロポリエーテル」という用語は、酸素原子により連結された3個以上の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基を有する化合物または基を意味する(すなわち少なくとも2個の連鎖状酸素原子が存在する)。炭化水素基の少なくとも1個および典型的には2個以上は弗素原子で置換された少なくとも1個の水素原子を有する。炭化水素基は、直鎖構造、分岐構造、環式構造またはそれらの組み合わせを有することが可能である。
【0045】
本明細書で用いられる「ハロ」という用語は、塩素、臭素、沃素または弗素を意味する。
【0046】
本明細書で用いられる「ヘテロアルカン」という用語は、硫黄、酸素またはNRdで置換された1個以上の炭素原子を有するアルカンを意味する。式中、Rdは水素またはアルキルである。ヘテロアルカンは、直鎖、分岐、環式またはそれらの組み合わせを有することが可能であり、典型的には約30個以下の炭素原子を含む。幾つかの実施形態において、ヘテロアルカンは、20個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子または4個以下の炭素原子を含む。エーテルおよびポリエーテルはヘテロアルカンの部分集合である。
【0047】
本明細書で用いられる「ヘテロアルキル」という用語は、ヘテロアルカンからの水素原子の引抜によって形成される1価部分を意味する。
【0048】
本明細書で用いられる「ヘテロアルキレン」という用語は、ヘテロアルカンからの2個の水素原子の引抜によって形成される2価部分を意味する。
【0049】
本明細書で用いられる「パーフルオロアルカン」という用語は、水素原子のすべてが弗素原子で置換されているアルカンを意味する。
【0050】
本明細書で用いられる「パーフルオロアルカンジイル」という用語は、ラジカル中心が異なる炭素原子上に位置するパーフルオロアルカンからの2個の弗素原子の引抜によって形成される2価部分を意味する。
【0051】
本明細書で用いられる「パーフルオロアルカントリイル」という用語は、パーフルオロアルカンからの3個の弗素原子の引抜によって形成される3価部分を意味する。
【0052】
本明細書で用いられる「パーフルオロアルキル」という用語は、水素原子のすべてが弗素原子で置換されているアルキル基を意味する。
【0053】
本明細書で用いられる「パーフルオロアルキリデン」という用語は、ラジカル中心が同じ炭素原子上にあるパーフルオロアルカンからの2個の弗素原子の引抜によって形成される2価部分を意味する。
【0054】
本明細書で用いられる「パーフルオロアルコキシ」という用語は、水素原子のすべてが弗素原子で置換されているアルコキシ基を意味する。
【0055】
本明細書で用いられる「パーフルオロエーテル」という用語は、炭化水素基のすべての上の水素原子のすべてが弗素原子で置換されているフルオロエーテルを意味する。
【0056】
本明細書で用いられる「パーフルオロポリエーテル」という用語は、炭化水素基のすべての上の水素のすべてが弗素原子で置換されているフルオロポリエーテルを意味する。
【0057】
本明細書で用いられる「ホスホン酸」という用語は、炭素原子に直接結合された式−(P=O)(OH)2の基または基を含む化合物を意味する。
【0058】
本明細書で用いられる「ホスホネート」という用語は、炭素原子に直接結合された式−(P=O)(OX)2の基または基を含む化合物を意味する。式中、Xはアルカリ、または正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員のヘテロ環式基から選択される。ホスホネートは、対応するホスホン酸のエステルまたは塩であることが可能である。
【0059】
本明細書で用いられる「ホスフェート」という用語は、炭素原子に直接結合された式−O(P=O)(OX)2の塩またはエステルを意味する。式中、Xは水素、アルカリ金属、アルキル、シクロアルキル、アンモニウム、アルキルまたはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、または正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員のヘテロ環式基から選択される。
【0060】
本明細書で用いられる「フォトツール」という用語は、放射線から層の部分を遮断することにより放射線感受性材料の層をパターン化するために放射線照射と連携して用いられるマスクのいずれかのタイプを意味する。
【0061】
本明細書で用いられる「基材」という用語は固体支持体を意味する。基材は、多孔質または無孔質、硬質または軟質、透明または不透明、クリアまたは着色および反射性または非反射性であることが可能である。適する基材材料には、高分子材料、ガラス、セラミック、金属またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0062】
本明細書で用いられる「スルホンアミド」という用語は−SO2NRa−の基を意味する。式中、Raはアルキルまたはアリールである。
【0063】
化合物
化合物は次式Iにより表される。
【0064】
【化6】

【0065】
上式中、Rfは1価または2価のパーフルオロポリエーテル基であり、yは1または2に等しく、各Xは独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、アルキルまたはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、あるいは正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員のヘテロ環式基であり、R1は水素またはアルキルであり、R2は、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレンまたはそれらの組み合わせから選択された2価基およびカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせから選択された任意の2価基を含み、ここで、R2は、置換されていないか、またはアルキル、アリール、ハロまたはそれらの組み合わせで置換されている。
【0066】
上式Iの基R1は水素またはアルキルであることが可能である。幾つかの実施形態において、R1はC1〜C4アルキルである。
【0067】
上式Iの各X基は独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アルキル金属、アンモニウム、アルキルまたはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、あるいは正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員のヘテロ環式基であることが可能である。各Xが水素である時、式Iによる化合物はホスホン酸である。式Iによる化合物は、少なくとも1個のXがアルキル基である時にエステルである。例証的なアルキル基には、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基が挙げられる。アルキル基は、直鎖、分岐または環式であることが可能である。
【0068】
上式Iによる化合物は、少なくとも1個のXがアルカリ金属、アンモニウム、アルキルまたはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、あるいは正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員のヘテロ環式基である時に塩である。例証的なアルカリ金属には、ナトリウム、カリウムおよびリチウムが挙げられる。例証的な置換アンモニウムイオンには、テトラアルキルアンモニウムイオンが挙げられが、それらに限定されない。アンモニウムイオン上のアルキル置換基は、直鎖、分岐または環式であることが可能である。正に帯電した窒素原子を有する例証的な5員〜6員のヘテロ環式基には、ピロリウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、チアゾリウムイオン、イソキサゾリウムイオン、オキサゾリウムイオン、チアゾリウムイオン、イソチアゾリウムイオン、オキサジアゾリウムイオン、オキサトリアゾリウムイオン、ジオキサゾリウムイオン、オキサチアゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピリダジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピペラジニウムイオン、トリアジニウムイオン、オキサジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、オキサチアジニウムイオン、オキサジアジニウムイオンおよびモルフォリニウムイオンが挙げられが、それらに限定されない。
【0069】
2基は、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレンまたはそれらの組み合わせから選択された2価基およびカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせから選択された任意の2価基を含む。R2は、置換されていないか、またはアルキル、アリール、ハロまたはそれらの組み合せで置換されていることが可能である。R2基は典型的には30個以下の炭素原子を有する。幾つかの実施形態において、R2基は、20個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子または4個以下の炭素原子を有する。例えば、R2は、アルキレン、アリール基で置換されたアルキレンまたはアリーレンと組み合わせたアルキレンであることが可能である。例証的な幾つかの化合物において、R2基は、炭素原子数1〜6のアルキレン基に接続されたフェニレン基である。例証的な他の化合物において、R2基は、置換されていないか、またはフェニル基またはアルキル基で置換されている炭素原子数1〜6のアルキレン基である。
【0070】
パーフルオロポリエーテル基Rfは、直鎖、分岐またはそれらの組み合わせであることが可能であり、飽和または不飽和であることが可能である。パーフルオロポリエーテルは少なくとも2個の連鎖状酸素ヘテロ原子を有する。例証的なパーフルオロポリエーテルには、−(Cp2p)−、−(Cp2pO)−、−(CF(Z))−、−(CF(Z)O)−、−(CF(Z)Cp2pO)−、−(Cp2pCF(Z)O)−、−(CF2CF(Z)O)−またはそれらの組み合わせの群から選択された過弗素化反復単位を有するものが挙げられが、それらに限定されない。これらの反復単位において、Pは典型的には1〜10の整数である。幾つかの実施形態において、pは、1〜8、1〜6、1〜4または1〜3の整数である。Z基は、直鎖構造、分岐構造、環式構造またはそれらの組み合わせを有するパーフルオロアルキル基、パーフルオロエーテル基、パーフルオロポリエーテル基またはパーフルオロアルコキシ基であることが可能である。Z基は、典型的には12個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、4個以下の炭素原子、3個以下の炭素原子、2個以下の炭素原子または1個以下の炭素原子を有する。幾つかの実施形態において、Z基は、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下の酸素原子を有することが可能であるか、または酸素原子を有しないことが可能である。これらのパーフルオロポリエーテル構造において、異なる反復単位をブロック配列またはランダム配列で組み合わせて、Rf基を形成することが可能である。
【0071】
fは、1価(すなわち式Iのyは1である)または2価(すなわち式Iのyは2である)であることが可能である。パーフルオロポリエーテル基Rfが1価である時、パーフルオロポリエーテル基Rfの末端基は、例えば、(Cp2p+1)−、(Cp2p+1O)−であることが可能である。式中、pは、1〜10、1〜8、1〜6、1〜4または1〜3の整数である。例証的な幾つかの1価パーフルオロポリエーテル基Rfには、C37O(CF(CF3)(CF2O)nCF(CF3)−、C37O(CF2CF2CF2O)nCF2CF2−およびCF3O(C24O)nCF2−が挙げられが、それらに限定されない。式中、nは0〜50、1〜50、3〜30、3〜15または3〜10の平均値を有する。
【0072】
他の例証的な1価パーフルオロポリエーテル基Rfには、CF3O(CF2O)q(C24O)nCF2−およびF(CF23O(C48O)n(CF23−が挙げられが、それらに限定されない。式中、qは、0〜50、1〜50、3〜30、3〜15または3〜10の平均値を有することが可能であり、nは、0〜50、3〜30、3〜15または3〜10の平均値を有することが可能である。
【0073】
例証的な幾つかの2価パーフルオロポリエーテル基Rfには、−CF2O(CF2O)q(C24O)nCF2−、−CF2O(C24O)nCF2−、−(CF23(C48O)n(CF23−および−CF(CF3)(OCF2CF(CF3))sOCt2tO(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)−が挙げられが、それらに限定されない。式中、qは、0〜50、1〜50、3〜30、3〜15または3〜10の平均値を有することが可能であり、nは、0〜50、3〜30、3〜15または3〜10の平均値を有することが可能であり、sは、0〜50、1〜50、3〜30、3〜15または3〜10の平均値を有することが可能であり、nおよびsの合計(すなわちn+s)は0〜50または4〜40の平均値を有することが可能であり、qおよびnの合計(すなわちq+n)は0を上回ることが可能であり、tは2〜6の整数であることが可能である。
【0074】
合成時、式Iによるパーフルオロポリエーテルアミド連結ホスフェートおよびその誘導体は、典型的には、異なるパーフルオロポリエーテル基Rfを有する混合物である(すなわち、化合物は単一の化合物として合成されず、異なるRf基を有する化合物の混合物である)。例えば、q、nおよびsの値は、混合物が少なくとも400g/モルの数平均分子量を有するかぎり異なることが可能である。パーフルオロポリエーテルアミド連結ホスホネートおよびその誘導体の適する混合物は、典型的には少なくとも約400、少なくとも800、または少なくとも約1000g/モルの数平均分子量を有する。異なるパーフルオロポリエーテルアミド連結ホスホネートおよびその誘導体の混合物は、400〜10000g/モル、800〜4000g/モルまたは1000〜3000g/モルの分子量(数平均)を有することが多い。
【0075】
上式Iによる化合物の特定の例には、
【0076】
【化7】

【0077】
およびそれらの誘導体が挙げられる。上式中、nは、0〜50、1〜50、3〜30、3〜15または3〜10の平均値を有する。適当な誘導体は、ホスホン酸の塩およびエステルを包含する。
【0078】
組成物
ヒドロフルオロエーテルおよび式I、式IIまたはそれらの組み合わせによる化合物を含む組成物が提供される。
【0079】
【化8】

【0080】
【化9】

【0081】
上式中、Rfは1価または2価のパーフルオロポリエーテル基であり、yは1または2に等しく、各Xは独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、アルキルまたはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、あるいは正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員のヘテロ環式基であり、R1は水素またはアルキルであり、R2は、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレンまたはそれらの組み合わせから選択された2価基およびカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせから選択された任意の2価基を含み、ここで、R2は、置換されていないか、またはアルキル、アリール、ハロまたはそれらの組み合わせで置換されている。式IIによる化合物はパーフルオロポリエーテルアミド連結ホスフェートおよびその誘導体である。
【0082】
適するヒドロフルオロエーテルは、例えば次式IIIの化合物であることが可能である。
【0083】
【化10】

【0084】
上式中、aは1〜3の整数であり、基Rf1は、パーフルオロアルカン、パーフルオロエーテルまたはパーフルオロポリエーテルの1価部分、2価部分または3価部分である。Rhはアルキルまたはヘテロアルキルである。Rf1基は、直鎖構造、分岐構造、環式構造またはそれらの組み合わせを有することが可能である。同様に、Rh基は、直鎖構造、分岐構造、環式構造またはそれらの組み合わせを有することが可能である。基Rf1中の炭素原子の数および基Rh中の炭素原子の数の合計は典型的には4以上である。
【0085】
aが1に等しい時、Rf1基は1価であり、aが2に等しい時、Rf1基は2価であり、aが3に等しい時、Rf1基は3価である。Rf1基は、典型的には、30以下の炭素原子、20個以下の炭素原子、15個以下の炭素原子、12個以下の炭素原子または8個以下の炭素原子を含む。Rf1基は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個または少なくとも4個の炭素原子を含むことが可能である。幾つかの用途において、Rf1は、4〜9個の炭素原子、4〜8個、4〜7個、5〜7個または5〜6個の炭素原子を含む。2価Rf1基に関して、ラジカル中心は同じかまたは異なる炭素原子上にあることが可能である。3価Rf1基に関して、ラジカル中心は異なる炭素原子上にそれぞれあることが可能であるか、またはラジカル中心の2個は同じ炭素原子上にあることが可能である。
【0086】
aが1に等しい式IIIによる幾つかの化合物において、基Rf1は、例えば、(1)2〜約15個の炭素原子を有する直鎖または分岐のパーフルオロアルキル基、(2)5〜約15個の炭素原子を有するパーフルオロシクロアルキル含有パーフルオロアルキル基または(3)3〜約12の炭素原子を有するパーフルオロシクロアルキル基であることが可能である。環式構造は、1〜4個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基で任意に置換されることが可能である。
【0087】
aが2に等しい式IIIによる幾つかの化合物において、基Rf1は、(1)直鎖または分岐のパーフルオロアルカンジイル基、(2)2〜約15個の炭素原子を有するパーフルオロアルキリデン基、(3)5〜約15個の炭素原子を有するパーフルオロシクロアルキル含有またはパーフルオロシクロアルキレン含有のパーフルオロアルカンジイル基またはパーフルオロアルキリデン基、あるいは(4)3〜約12個の炭素原子を有するパーフルオロシクロアルカンジイル基またはパーフルオロシクロアルキリデン基であることが可能である。環式構造は、1〜4個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基で任意に置換されることが可能である。
【0088】
式IIIによる幾つかの化合物において、aが3に等しい時、Rf1は、(2〜約15個の炭素原子を有する直鎖または分岐のパーフルオロアルカントリイル基、(2)約6〜15個の炭素原子のパーフルオロシクロアルキル含有基またはパーフルオロシクロアルキレン含有基あるいは(3)3〜約12個の炭素原子を有するパーフルオロシクロアルカントリイル基であることが可能である。環式構造は、炭素原子数1〜4のパーフルオロアルキル基で任意に置換されることが可能である。
【0089】
式IIIによる化合物において、各Rh基は独立してアルキルまたはヘテロアルキルであることが可能である。Rhとして使用可能な基の各々は、直鎖構造、分岐構造、環式構造またはそれらの組み合わせを有することが可能である。Rhがヘテロアルキル基である幾つかの実施形態において、ヘテロアルキル部分はエーテル基またはポリエーテル基であることが可能である。基Rhとして用いられるアルキル基またはヘテロアルキル基は、20個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子または8個以下の炭素原子を有することが多い。式IIIによる幾つかの化合物において、Rh基は1〜8個の炭素原子を有することが可能である。例えば、式IIIによる化合物中の基Rhは、4〜約8個の炭素原子を有するシクロアルキル含有アルキル基または3〜約8個の炭素原子を有するシクロアルキル基であることが可能である。
【0090】
式IIIによる化合物の範囲内に入る特定の幾つかの例証的なヒドロフルオロエーテルには、メチルパーフルオロ−n−ブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、エチルパーフルオロ−n−ブチルエーテル、エチルパーフルオロイソブチルエーテルまたはそれらの組み合わせが挙げられが、それらに限定されない。
【0091】
弗素化シランおよび式I、式IIまたはそれらの組み合わせによる化合物を含む組成物も提供される。
【0092】
【化11】

【0093】
【化12】

【0094】
上式中、Rfは1価または2価のパーフルオロポリエーテル基であり、yは1または2に等しく、各Xは独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、アルキルまたはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、あるいは正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員のヘテロ環式基であり、R1は水素またはアルキルであり、R2は、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレンまたはそれらの組み合わせから選択された2価基およびカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせから選択された任意の2価基を含み、ここで、R2は、置換されていないか、またはアルキル、アリール、ハロまたはそれらの組み合わせで置換されている。基Rf、R1、R2およびXは上で更に記載されている。
【0095】
適する弗素化シランには、次式IVによる化合物が挙げられる。
【0096】
【化13】

【0097】
上式中、Rfは1価または2価のパーフルオロポリエーテル基であり、cは1〜2の整数であり、bは0〜1の整数であり、R3は、アルキル、アリール、ハロまたはそれらの組み合わせで置換されていないか、または置換されているアルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレン、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミド、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせから選択される。R4はアルキル基である。Yはアルコキシまたはアシルオキシから選択される。
【0098】
fは式Iに関して上で定義されたのと同じである。
【0099】
式IV中のR3基は、アルキル、アリール、またはハロ基で置換されていないか、または置換されているアルキレン、アリーレン、へテロアルキレン、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせから選択される。幾つかの実施形態において、R3は、アルキレン、アリール基で置換されたアルキレンまたはアリーレンと組み合わせたアルキレンである。R3基は、典型的には30個以下の炭素原子を有する。例えば、R3基は、2〜20個の炭素原子、2〜16個の炭素原子または3〜10個の炭素原子を有することが可能である。幾つかの例証的な弗素化シランにおいて、R3基は−C(O)NH(CH23−または−CH2O(CH23−である。
【0100】
式IV中のR4基はアルキル基である。例えば、R4は、10個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子または4個以下の炭素原子を有するアルキルである。幾つかの例において、R4基はC1〜C4アルキルである。
【0101】
式IV中のY基はアルコキシまたはアシルオキシから選択される。適するアルコキシ基は、典型的には10個以下、6個以下または4個以下の炭素原子を有する。幾つかの例において、YはC1〜C4アルコキシである。特定の例において、bは0に等しく、Yは炭素原子数1〜4のアルコキシ基である。適するアシルオキシには、式−C(O)R5を有する基が挙げられる。式中、R5はアルキル基である。幾つかの化合物において、R5はC1〜C4アルキルである。
【0102】
式IVによる適する弗素化シランは、典型的には少なくとも約400または少なくとも約1000の数平均分子量を有する。式IVの化合物は標準技術を用いて合成することが可能である。例えば、市販されているか、または容易に合成されたパーフルオロポリエーテルエステルは、米国特許第3,810,874号明細書(7欄41行〜8欄49行参照)に記載されているように、3−アミノプロピルアルコキシシランなどの官能化アルコキシシランと組み合わせることが可能である。
【0103】
弗素化シランの例には、構造QCF2O(CF2O)q(C24O)nCF2Q、C37O(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)Q、QCF(CF3)(OCF2CF(CF3))sOCt2tO(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)Q、QCF2O(C24O)nCF2Q、CF3O(C24O)nCF2QおよびQ(CF23O(C48O)n(CF23Qが挙げられが、それらに限定されない。式中、qは、0〜50、1〜50、3〜30、3〜15または3〜10の平均値を有する。nは、0〜50、3〜30、3〜15または3〜10の平均値を有する。sは、0〜50、1〜50、3〜30、3〜15または3〜10の平均値を有する。合計(n+s)は0〜50または4〜40の平均値を有する。合計(q+n)は0より大きい。tは2〜6の整数である。Qは式IVにおいて上で定義された通り−R3−SiY3-b4bまたはcが1に等しい時に非シラン含有末端基である。非シラン含有末端基は、((Cp2p+1)−、(X’Cp2pO)−、または(Cp2p+1O)−であることが可能である。式中、X’はH、ClまたはBrである。但し、分子当たり少なくとも1個のQ基はシランであることを条件とする。
【0104】
他の弗素化シランにおいて、R3基は窒素を含む。幾つかの実施形態において、分子当たり少なくとも1個のQ基は−C(O)NH(CH23Si(OR)3(式中、Rはメチル、エチルまたはそれらの混合物である)であり、シランではない場合、他のQ基はOCF3またはOC37である。
【0105】
物品および方法
本発明のもう1つの面は、基材および前記基材の表面に結合された式Iによる化合物を含む物品を提供する。式Iの化合物は上述したのと同じである。
【0106】
本発明のなおもう1つの面は、物品を製造する方法であって、基材の表面に塗料組成物を被着させることを含む方法を提供する。一実施形態において、塗料組成物は式Iの化合物を含む。第2の実施形態において、塗料組成物は、ヒドロフルオロエーテル、弗素化シランまたはそれらの組み合わせから選択された第1の成分および式I、式IIまたはそれらの組み合わせの化合物選択された第2の成分を含む。式Iおよび式IIの化合物は上述したのと同じである。
【0107】
幾つかの用途において、式I、式IIまたはそれらの組み合わせの化合物は、基材上に自己組立単分子層を形成することが可能である。例えば、式I、式IIまたはそれらの組み合わせの化合物は、金属含有基材上に自己組立単分子層を形成することが可能である。金属含有層は、金属、金属酸化物またはそれらの組み合わせを含むことが可能である。例証的な金属含有基材は、金、白金、クロム、アルミニウム、銅、銀、チタン、インジウム、ゲルマニウム、錫、ニッケル、インジウム錫またはそれらの組み合わせを含むことが可能である。これらの化合物もガラスおよび石英上に自己組立単分子層を形成することも可能であるが、典型的には、金属酸化物などの金属含有基材により容易に接着することが可能である。自己組立単分子層は一般に薄く、およそ10nm以下であり、典型的には、基材の光学特性または表面構造特性を大幅には変えない。多くの実施形態において、自己組立単分子層は約1〜約10nmの厚さを有する。少なくとも幾つかの実施形態において、層は厚さ約6nmである。
【0108】
式I、式IIまたはそれらの組み合わせの化合物を含む塗料は基材の表面に被着させて、低エネルギー表面を提供することが可能である。本発明のもう1つの態様は、基材への異物の接着を減少させる方法であって、塗料組成物を基材の表面に被着させることを含む方法を提供する。一実施形態において、塗料組成物は式Iの化合物を含む。第2の実施形態において、塗料組成物は、ヒドロフルオロエーテル、弗素化シランまたはそれらの組み合わせから選択された第1の成分および式I、式IIまたはそれらの組み合わせの化合物から選択された第2の成分を含む。式Iおよび式IIの化合物は上で記載されたのと同じである。
【0109】
物品を製造する一実施形態において、基材はフォトツールである。フォトツールの表面上の式I、式IIまたはそれらの組み合わせの化合物の塗料は、埃および他の粒子がフォトツールの表面に接着しないように抑制することが可能である。塗料は、フレキシブル回路を製造するために用いられるプロセスなどの写真印刷プロセス中に画像形成欠陥の発生率を減少させることが可能である。フォトツールへの粒子の接着を防ぐ能力は微細ピッチフレキシブル回路上でより良好な収率を見込んでいる。
【0110】
フレキシブル回路の製作は、誘電体および導電性材料の幾つかの層の作成を含み、それらの幾つかの層は密に接触している。これらの層の少なくとも1層は、材料を選択的に導入するか、または材料を選択的に除去することによりパターン化してもよい。パターン化された層は、窓、通路などの誘電体膜中の回路トレースまたはフィーチャを形成するために用いることが可能である。パターンは写真印刷プロセスによって作ってもよい。所望のパターンの画像は、パターン化しようとする層に接触している適するレセプタ材料、例えばフォトレジスト上に所望のパターンを有するフォトツールを通してUV線を照射することにより作られる。
【0111】
フォトツールは、UV透明基材料の表面上にクロムまたは酸化クロムなどのパターン化されたUV不透明材料を有するガラスまたは石英などのUV透明基材料を含む。
【0112】
フォトツールに塗料を被着させる一方法において、適する溶媒(例えばヒドロフルオロエーテル)中で希釈された式I、式IIまたはそれらの組み合わせの化合物を含む塗料組成物の層は、噴霧塗布、回転塗布または浸漬塗布などの従来の塗布プロセスによってフォトツール表面上に被着させる。弗素化シランは被着させた塗料中に含めてもよい。その後、塗料は空気乾燥させて、溶媒を除去してもよく、その後、典型的には約100℃〜150℃の温度で約30分にわたりオーブン内で焼成して、一切の残留溶媒を除去し、パーフルオロポリエーテルシランの架橋を誘発し、フォトツール表面への塗料の接着を強化してもよい。
【0113】
これらの被覆されたフォトツールは、フレキシブル回路の金属および誘電体層をパターン化するために用いられるプロセスなどの写真印刷プロセスにおいて用いてもよい。写真印刷プロセスにおいて、フォトツールのパターン化側はUV−レセプタ材料に接触するようにさせる。UV線がパターン化フォトツールに向けて伝達される時、光は透明領域を通過するが、不透明領域によって反射され、よってUV−レセプタ材料の選択された部分で光が照射され、露光が行われる。照射、すなわち露光後、フォトツールは、好ましくはフォトツールにUV−レセプタ材料も他の異物材料も全くくっつかずにUV−レセプタ材料の表面から上げられる。
【0114】
UV−レセプタ材料は典型的にはフォトレジストである。例えば、フォトレジスト材料の層は、パターン化しようとするフレキシブル回路の表面上に被着される。フォトツールを通過するUV線はフォトレジストによって吸収される。光はネガティブフォトレジストの場合のようにフォトレジストの照射部分に架橋反応を受けさせるか、またはポジティブフォトレジストの場合のように高分子分解反応を引き起こして、照射領域において高分子構造を破壊させる。その後、フォトレジストの所望の部分は適切な溶媒によって除去してもよい。その後、フレキシブル回路は、米国特許第5,227,008号明細書、同第6,177,357号明細書または同第6,403,211号明細書に記載された方法などの従来の方法によって処理してもよい。例えば、下にある照射領域は減法処理の場合エッチング除去してもよいか、または加法処理の場合加えてもよい。
【0115】
図1は単純な写真印刷装置100の断面図である。写真印刷装置100は、少なくとも1つのフォトツール110、フォトレジスト層120と基層140の少なくとも1層を含む層状回路基材130を含む。基層140は、ポリマー(典型的にはポリイミド)層142および金属(典型的には銅)層144から製造されている。フォトツール110は典型的にはガラスまたは石英の透明材料112を含み、典型的には酸化物表面を有するクロムである不透明材料114の被覆領域は、当業者に周知された方式で透明材料112の表面上に散在される。式I、IIまたはそれらの組み合わせの化合物などの低表面エネルギー材料の層118は、透明材料112(不透明材料114を含む)の表面116に被着させることが可能である。
【0116】
式Iおよび式IIによる化合物は、典型的には400〜5000、より好ましくは1000〜3000の範囲内の分子量を有する。
【0117】
層としてフォトツールに被着させることが可能である式Iによる例証的な化合物には、
【0118】
【化14】

【0119】
などの化合物または化合物の誘導体が挙げられが、それらに限定されない。上式中、nは3〜30、3〜15または3〜10の平均値を有する。
【0120】
式Iによる例証的な他の化合物には、
【0121】
【化15】

【0122】
などの化合物または化合物の誘導体が挙げられが、それらに限定されない。上式中、nは3〜30、3〜15または3〜10の平均値を有する。
【0123】
層としてフォトツールに被着させることが可能である式IIによる例証的な化合物には、
【0124】
【化16】

【0125】
などの化合物または化合物の誘導体が挙げられが、それらに限定されない。上式中、nは3〜30、3〜15または3〜10の平均値を有する。
【0126】
少なくとも1つの実施形態において、式I、式IIまたはそれらの組み合わせによる化合物は、フォトツールの透明表面または不透明表面上に自己組立単分子層を形成する。自己組立単分子層は、金、白金、クロム、アルミニウム、銅、インジウム、錫、銀、チタン、ゲルマニウムおよびニッケルなどの金属含有材料上に特に生じそうである。金属含有材料は、金属、金属酸化物またはそれらの組み合わせであることが可能である。自己組立単分子層はガラスおよび石英上にも生じることが可能であるが、より容易に金属酸化物に接着する。自己組立単分子層は、元の基材の光学特性または表面構造特性を大幅には変えないことが多い。殆どの実施形態において、式I、式IIまたはそれらの組み合わせによる化合物は、約1nm〜約10mmである層を形成する。少なくとも1つの実施形態において、層の厚さは約6mmである。
【0127】
式I、式IIまたはそれらの組み合わせによる化合物は酸化クロムなどのUV不透明材料に加えてガラスなどのUV透明材料に接着できるが、弗素化シランは、典型的には、より良好にガラスに接着する。従って、式I、式IIまたはそれらの組み合わせによる化合物は、単独でまたは弗素化シランと合わせて用いてもよい。
【0128】
適する弗素化シランは式IVにより表される化合物を含む。
【0129】
【化17】

【0130】
上式中、Rfは1価または2価のパーフルオロポリエーテル基であり、cは1〜2の整数であり、bは0または1の整数であり、R3は、アルキル、アリール、ハロまたはそれらの組み合わせで置換されていないか、または置換されているアルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレン、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせから選択される。R4はアルキル基である。Yはアルコキシまたはアシルオキシから選択される。
【0131】
式I、式IIまたはそれらの組み合わせの化合物を含む組成物は、回転塗布、噴霧、浸漬または蒸着などの幾つかの従来の方法のいずれか1方法で被着させてもよい。式I、式IIまたはそれらの組み合わせの化合物は、本質的に同じ特性を有する非分離性異性体の混合物である3M「ノベック(Novec)」(登録商標)「エンジニアード・フルイッド(Engineered Fluid)」HFE−7100(C49OCH3)などのヒドロフルオロエーテルまたはイソプロパノールなどの他の有機溶媒に可溶性(または分散性)であることが多い。この可溶性は、噴霧または回転塗布によって溶液から過剰材料の均一膜を被着させることを可能にする。その後、基材は、単分子層形成を促進するために加熱することが可能であり、過剰分はリンスするか、または拭き取ることが可能であり、よって単分子層膜を残す。
【0132】
塗料組成物を被着させるために用いられる溶媒には、典型的には、実質的に不活性(すなわち、式I、式IIまたはそれらの組み合わせの化合物および弗素化シランと実質的に非反応性)で、非プロトン性で且つこれらの材料を分散または溶解できる溶媒が挙げられる。幾つかの実施形態において、溶媒は、式I、式IIまたはそれらの組み合わせによる化合物および弗素化シランを実質的に完全に溶解する。適切な溶媒の例には、弗素化炭化水素、特に弗素置換アルカン、エーテル、特にアルキルパーフルオロアルキルエーテルおよびヒドロクロロフルオロアルカンおよびエーテルが挙げられが、それらに限定されない。こうした溶媒の混合物を用いることが可能である。
【0133】
幾つかの用途において、溶媒はヒドロフルオロエーテルである。適するヒドロフルオロエーテルは以下の一般式IIIによって表すことが可能である。
【0134】
【化18】

【0135】
上式中、aは1〜3の整数であり、Rf1は、直鎖、分岐、環式またはそれらの組み合わせであるパーフルオロアルカン、パーフルオロエーテルまたはパーフルオロポリエーテルの1価基、2価基または3価基であり、かつRhは、直鎖、分岐、環式またはそれらの組み合わせであるアルキルまたはヘテロアルキル基である。例えば、ヒドロフルオロエーテルは、メチルパーフルオロブチルエーテルまたはエチルパーフルオロブチルエーテルであることが可能である。
【実施例】
【0136】
実施例1
以下の式のホスフェート化合物の調製のために、J.Fluorine Chem.,95,51(1999)に記載された手順に従った。
【0137】
【化19】

【0138】
過剰の2−アミノエタノールによるC37O[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)COOCH3(対応する弗化アシルと過剰のメタノールの反応により調製されたもの)の処理によってアルコールC37O[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)CONHC24OHを調製した。オーバーヘッドスターラー、水凝縮器および熱電対が装着された250ml丸底フラスコにピロ燐酸(25.5g、0.14モル、アルドリッチ(Aldrich))を入れた。酸を60℃に加熱した。その温度で酸は粘性液体であった。C37O[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)CONHC24OH(MN=1220、50g、0.041モル、nは3〜10に等しい)を幾つかの2ml部分に分割してこの液体に添加した。この添加は若干発熱であった。
【0139】
添加が完了した後、反応混合物を60℃で2時間にわたり保持した。酢酸イソプロピル(35ml)を添加し、その後、得られた溶液を150mlの2%水性HClと合わせて4時間にわたり攪拌した。その後、より低いフルオロケミカル含有相を分離し、約300mlのメチルt−ブチルエーテル(MTBE)に溶解し、その後、エーテル溶液を等体積の2NHCl溶液で2回洗浄した。MTBE溶液を分離し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を回転蒸発によって除去した。得られた製品の赤外線スペクトルは、1709cm-1での強いカルボニルストレッチを示した。陽子NMR分析およびリン−31NMR分析は、製品が約75%の所望の弗素化ホスフェートおよび25%の未反応出発アミドアルコールであったことを示した。
【0140】
弗素化ホスフェート製品の一部をHFE−7100(メチルパーフルオロブチルエーテル)中で0.25重量%に希釈し、振とうしてクリア溶液を得た。アルミニウム被覆シリコンウェハおよびクロム被覆シリコンウェハ(カリフォルニア州サンホセのウェハネット(WaferNet(San Jose,CA))から得たもの)の1/4ウェハ片を建て付けUV/オゾンチャンバ内で5分にわたり照射することにより清浄化し、直ちに上の溶液で処理した。1個のアルミニウム片を室温で1時間にわたり溶液に浸漬し、HFE−7100中で1分にわたりリンスし、放置して空気中で乾燥させた。溶液を回転塗布(500rpm/5秒、その後、2000rpm/15秒)することにより1個のアルミニウム片および1個のクロム片を処理し、その後、被覆されたウェハを真空ホットプレート上で30分にわたり150℃で加熱し、HFE7100中でリンスし、放置して空気中で乾燥させた。
【0141】
ウェハを水接触角およびヘキサデカン接触角の測定に供した。「VCA−2500XE」という製品番号としてASTプロダクツ(AST Products)(マサチューセッツ州ビレリカ(Billerica,MA))から入手できるビデオ接触角分析器で、受領したままの試薬グレードヘキサデカン(アルドリッチ(Aldrich))およびミリポア・コーポレーション(Millipore Corporation)(Billerica,MA))から得られた濾過システムを通して濾過された脱イオン水を用いて測定を行った。報告した値は両側で測定された少なくとも3つの滴に関する測定値の平均であり、表1に示している。滴体積は静的測定に関して5μLおよび前進と後退に関して1〜3μLであった。ヘキサデカンに関しては、前進および後退接触角のみを報告している。静的値と前進値がほぼ等しいことが判明したからである。
【0142】
【表1】

【0143】
上記データは、ホスフェート化合物が両方の金属の表面を非常に疎水性および疎油性にしたことを示している。
【0144】
実施例2
以下の式の化合物を製造するために、次式のジエチル(4−アミノベンジル)ホスホネート(10g、0.041モル、アルドリッチ(Aldrich))、
【0145】
【化20】

【0146】
トリエチルアミン(4.15g、0.041モル)およびメチルt−ブチルエーテル(100ml)をオーバーヘッドスターラーおよび水凝縮器が装着された250ml丸底フラスコ内で窒素下で組み合わせた。C37O[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)COF(MW=1017、41.8g、0.041モル、米国特許第3,274,244号明細書に記載されたように、ジグリム溶媒中でヘキサフルオロプロピレンオキシドの弗化セシウム−開始オリゴマー化により調製し、低沸点成分を蒸留除去したもの)を約1.5時間にわたってこの混合物に滴下した。添加の終わり近くで、溶液はほぼ均質になった。周囲温度で16時間にわたり攪拌後、溶液を追加のMTBEで希釈し、約5%水性重炭酸水素ナトリウムおよび2N HClで一回洗浄した。硫酸マグネシウム上で乾燥させた後、溶媒を回転蒸発によって除去した。アミドカルボニルが得られた製品の赤外線スペクトルにおいて1721.5cm-1で見られた。
【0147】
特に精製せずに、ホスホネートをジエチルエーテルに溶解させ、ブロモトリメチルシラン(17.6g、0.115モル、アルドリッチ(Aldrich))を一度に添加した。溶液を周囲温度で24時間にわたり攪拌し、シランの追加10gを添加した。数時間後、無水メタノールを添加して、未反応シランおよびシリルエステルを分解させた。溶媒を得られた均質溶液から除去し、残留物を似た方式で無水メタノールでもう2回処理した。回転蒸発によって体積減少後の最終メタノール溶液を水に注ぎ込み、固体ホスホン酸を濾過し、空気乾燥させた。陽子NMR、燐−31NMRおよび炭素−13NMRは構造を確認した。
【0148】
実施例3
以下の式の化合物を製造するために、次式のジエチル(α−アミノベンジル)ホスホネート塩酸塩(10.5g、0.037モル、アルドリッチ(Aldrich))、
【0149】
【化21】

【0150】
トリエチルアミン(7.58g、0.075モル)およびMTBE(100ml)をマグネチックスターラーおよび水凝縮器が装着された250ml丸底フラスコ内で組み合わせた。C37O[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)COF(MW=1017、35g、0.034モル)を一度に添加し、得られた混合物を周囲温度で約16時間にわたって攪拌した。この反応期間の終わりに赤外線分析によって残留弗化酸は観察されなかった。水を添加し、より低いフルオロケミカル含有相を分離し、希HClでもう2回洗浄して、一切の残留トリエチルアミン塩および未反応ホスホネート出発材料を除去した。回転蒸発を経由して溶媒を除去し、その後、ブロモトリメチルシラン(21g、0.14モル)で処理した。この場合、少量のジエチルエーテルを添加し、溶液を6時間にわたり還流し、その後、周囲温度で追加の18時間にわたり攪拌した。
【0151】
実施例2において上で記載された組成物の手順に従った。しかし、この手順はジエチルホスホネートを完全に加水分解するのには不十分であったことが判明した。その後、部分的に加水分解された混合物(20.2g)を追加の20gのブロモトリメチルシランで処理し、加熱して18時間にわたり還流(約80℃)させた。メタノールの幾つかの部分の添加によるシリルエステルの除去は実施例2に記載された通り進行した。但し、最終製品は水から沈降しなかった。製品の赤外線スペクトルは、1712cm-1でカルボニルピークを示した。構造は、陽子NMR分析、弗素−19NMR分析および炭素−13NMR分析によって確認した。
【0152】
実施例4
実施例3および実施例1で調製した材料をHFE7100中でそれぞれ0.1重量%に希釈し、振とうしてクリア溶液を得た。実施例2で調製した材料はHFE7100に直接的には容易に溶解できなかった。そこで、その材料をイソプロピルアルコール中で最初に5重量%に希釈し、振とうして固形物を溶解させた。0.45μmのフィルターカートリッジを通してこの溶液を濾過して、少量の未溶解材料を除去した。得られたクリア溶液(重量分析により固形物4.97重量%)を49gのHFE−7100で希釈(1g)して、0.1重量%溶液を調製し、それはクリアであり、室温で少なくとも数週間にわたり沈殿の形成に対して貯蔵安定性であった。
【0153】
それぞれアルミニウム被覆シリコンウェハおよびクロム被覆シリコンウェハ(直径100mm、カリフォルニア州サンホセのウェハネット(WaferNet(San Jose,CA))から得たもの)の3枚の1/4ウェハ片を建て付けUV/オゾンチャンバ内で5分にわたり照射することにより清浄化し、直ちに回転塗布によって上の溶液で処理した。これは、塗料溶液が2000rpmで回転している間にピペットによって2mlの塗料溶液をウェハに被着させることにより行った。その後、ウェハを真空ホットプレート上で150℃で3分にわたり加熱し、放置して冷却し、その後、HFE−7100中で1分にわたりリンスし、放置して空気中で乾燥させた。実施例1に記載された手順および装置を用いて水接触角を測定した。結果は表2に示している。
【0154】
【表2】

【0155】
実施例5
実施例2および3で調製した材料のサンプルをそれぞれイソプロピルアルコール中で0.2重量%に希釈し、振とうしてクリア溶液を得た。アルミニウム被覆シリコンウェハ(直径100mm、カリフォルニア州サンホセのウェハネット(WaferNet(San Jose,CA))から得たもの)の4枚の1/4ウェハ片を建て付けUV/オゾンチャンバ内で5分にわたり照射することにより清浄化し、直ちに上の溶液で処理した。2枚の片をそれぞれ溶液で処理し、一方は、室温で1時間浸漬、その後、イソプロピルアルコール中で1分リンスすることにより処理し、他方は回転塗布(500rpm/5秒、その後、2000rpm/15秒)、その後、真空ホットプレート上で150℃で3分加熱、その後、イソプロピルアルコールで1分リンスによって処理した。被覆されたウェハ片を窒素下で吹き付け乾燥させ、その後、実施例1の手順および装置を用いて水接触角の測定に供した。結果は表3に示している。
【0156】
【表3】

【0157】
これらのデータと実施例1の結果の比較は、より高い接触角を有する塗料を溶媒としてHFE7100を用いて得られたことを示している。
【0158】
本発明を特定の図面および実施形態を用いて記載してきたが、当業者は、本発明の精神および範囲を逸脱せずに形態および詳細において変更をなすことが可能であることを認識されたい。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】単純な写真印刷装置の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式Iにより表される化合物:
【化1】

(式中、Rfは1価または2価のパーフルオロポリエーテル基であり、
yは1または2に等しく、
各Xは独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、アルキルまたはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、あるいは正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員のヘテロ環式基であり、
1は水素またはアルキルであり、そして
2は、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレンまたはそれらの組み合わせから選択された2価基およびカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせから選択された任意の2価基を含み、ここで、R2は、置換されていないか、またはアルキル、アリール、ハロまたはそれらの組み合わせで置換されている)。
【請求項2】
2は、炭素原子数1〜6のアルキレン基に結合されたフェニレン基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
2は、置換されていないか、またはフェニル基またはアルキル基で置換されている炭素原子数1〜6のアルキレン基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
fは1価であり、C37O(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)−、C37O(CF2CF2CF2O)nCF2CF2−またはCF3O(C24O)nCF2−(式中、nは0〜50の平均値を有する)から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物は、次式の化合物またはその塩あるいはエステル
【化2】

(式中、nは3〜30の平均値を有する)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物は、次式の化合物またはその塩あるいはエステル
【化3】

(式中、nは3〜30の平均値を有する)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物は、次式の化合物またはその塩あるいはエステル
【化4】

(式中、nは3〜30の平均値を有する)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
ヒドロフルオロエーテルおよび
次式Iの化合物:
【化5】

次式IIの化合物:
【化6】

(式中、Rfは1価または2価のパーフルオロポリエーテル基であり、
yは1または2に等しく、
各Xは独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、アルキルまたはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、あるいは正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員のヘテロ環式基であり、
1は水素またはアルキルであり、そして
2は、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレンまたはそれらの組み合わせから選択された2価基およびカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせから選択された任意の2価基を含み、ここで、R2は、アルキル、アリール、ハロまたはそれらの組み合わせで置換されていないか、または置換されている)
またはそれらの組み合わせを含む組成物。
【請求項9】
前記組成物は
【化7】

(式中、nは3〜30の平均値を有する)
から選択された少なくとも1種の化合物またはその塩あるいはエステルを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ヒドロフルオロエーテルはメチルパーフルオロブチルエーテルまたはエチルパーフルオロブチルエーテルを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
弗素化シランおよび
次式Iの化合物:
【化8】

次式IIの化合物:
【化9】

(式中、Rfは1価または2価のパーフルオロポリエーテル基であり、
yは1または2に等しく、
各Xは独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、アルキルまたはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、あるいは正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員のヘテロ環式基であり、
1は水素またはアルキルであり、そして
2は、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレンまたはそれらの組み合わせから選択された2価基およびカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせから選択された任意の2価基を含み、ここで、R2は、アルキル、アリール、ハロまたはそれらの組み合わせで置換されていないか、または置換されている)
またはそれらの組み合わせを含む組成物。
【請求項12】
前記組成物は式
【化10】

(式中、nは3〜30の平均値を有する)
の少なくとも1種の化合物またはその塩あるいはエステルを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
基材および前記基材の表面に結合された化合物を含む物品であって、前記化合物が次式Iにより表される化合物:
【化11】

(式中、Rfは1価または2価のパーフルオロポリエーテル基であり、
yは1または2に等しく、
各Xは独立して水素、アルキル、アルカリ金属、アンモニウム、アルキルまたはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、あるいは正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員のヘテロ環式基であり、
1は水素またはアルキルであり、そして
2は、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレンまたはそれらの組み合わせから選択された2価基およびカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせから選択された任意の2価基を含み、ここで、R2は、置換されていないか、またはアルキル、アリール、ハロまたはそれらの組み合わせで置換されている)
である物品。
【請求項14】
前記化合物は、次式の化合物またはその塩あるいはエステル
【化12】

(式中、nは3〜30の平均値を有する)である、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
基材の表面に塗料組成物を被着させることを含む基材への異物の接着を減少させる方法であって、前記塗料組成物が次式Iの化合物:
【化13】

次式IIの化合物:
【化14】

(式中、Rfは1価または2価のパーフルオロポリエーテル基であり、
yは1または2に等しく、
各Xは独立して水素、アルキル、アルカリ金属、アンモニウム、アルキルまたはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、あるいは正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員のヘテロ環式基であり、
1は水素またはアルキルであり、そして
2は、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレンまたはそれらの組み合わせから選択された2価基およびカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせから選択された任意の2価基を含み、ここで、R2は、置換されていないか、またはアルキル、アリール、ハロまたはそれらの組み合わせで置換されている)
またはそれらの組み合わせを含む方法。
【請求項16】
前記塗料組成物は、次式の少なくとも1種の化合物またはその塩あるいはエステル
【化15】

(式中、nは3〜30の平均値を有する)を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
基材の表面に塗料組成物を被着させることを含む基材への異物の接着を減少させる方法であって、前記塗料組成物が
(a)ヒドロフルオロエーテル、弗素化シランまたはそれらの組み合わせから選択された第1の成分および
(b)次式Iの化合物:
【化16】

次式IIの化合物:
【化17】

(式中、Rfは1価または2価のパーフルオロポリエーテル基であり、
yは1または2に等しく、
各Xは独立して水素、アルキル、アルカリ金属、アンモニウム、アルキルまたはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、あるいは正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員のヘテロ環式基であり、
1は水素またはアルキルであり、そして
2は、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレンまたはそれらの組み合わせから選択された2価基およびカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせから選択された任意の2価基を含み、ここで、R2は、置換されていないか、またはアルキル、アリール、ハロまたはそれらの組み合わせで置換されている)
またはそれらの組み合わせから選択された第2の成分
を含む方法。
【請求項18】
前記塗料組成物は、次式の少なくとも1種の化合物またはその塩あるいはエステル
【化18】

(式中、nは3〜30の平均値を有する)を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
基材の表面に塗料組成物を被着させることを含む物品を製造する方法であって、
前記塗料組成物が次式Iの化合物:
【化19】

(式中、Rfは1価または2価のパーフルオロポリエーテル基であり、
yは1または2に等しく、
各Xは独立して水素、アルキル、アルカリ金属、アンモニウム、アルキルまたはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、あるいは正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員のヘテロ環式基であり、
1は水素またはアルキルであり、そして
2は、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレンまたはそれらの組み合わせから選択された2価基およびカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせから選択された任意の2価基を含み、ここで、R2は、置換されていないか、またはアルキル、アリール、ハロまたはそれらの組み合わせで置換されている)
を含む方法。
【請求項20】
前記塗料組成物は、次式の少なくとも1種の化合物またはその塩あるいはエステル
【化20】

(式中、nは3〜30の平均値を有する)を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
基材の表面に塗料組成物を被着させることを含む物品を製造する方法であって、前記塗料組成物が
(a)ヒドロフルオロエーテル、弗素化シランまたはそれらの組み合わせから選択された第1の成分および
(b)次式Iの化合物:
【化21】

次式IIの化合物:
【化22】

(式中、Rfは1価または2価のパーフルオロポリエーテル基であり、
yは1または2に等しく、
各Xは独立して水素、アルキル、アルカリ金属、アンモニウム、アルキルまたはシクロアルキルで置換されたアンモニウム、あるいは正に帯電した窒素原子を有する5員〜7員のヘテロ環式基であり、
1は水素またはアルキルであり、そして
2は、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレンまたはそれらの組み合わせから選択された2価基およびカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせから選択された任意の2価基を含み、ここで、R2は、置換されていないか、またはアルキル、アリール、ハロまたはそれらの組み合わせで置換されている)
またはそれらの組み合わせから選択された第2の成分
を含む方法。
【請求項22】
前記塗料組成物は、次式の少なくとも1種の化合物またはその塩あるいはエステル
【化23】

(式中、nは3〜30の平均値を有する)を含む、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−502814(P2007−502814A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523841(P2006−523841)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/021713
【国際公開番号】WO2005/023822
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】