説明

パーボイル米の製造方法及びその製造方法によって製造されたパーボイル米

【課題】浸漬工程のような大量の水を使用して玄米の含水率を上昇させる工程を設けることなく、また、排水処理設備を必要としないパーボイル米の製造方法を提供する。
【解決手段】原料玄米を分搗きする分搗工程と、該分搗工程から排出された米粒に加水する噴霧加水工程と、該噴霧加水工程から排出された米粒の水分調質を行う水分調質工程と、該水分調質工程から排出された米粒を蒸気で加熱する常圧蒸煮工程と、該蒸気加熱工程から排出された米粒を加圧蒸気で蒸煮する加圧蒸煮工程と、該加圧蒸煮工程から排出された米粒の少なくとも表面の熱を低下させる冷却工程と、該冷却工程から排出された米粒を仕上げ精米する仕上精米工程と、該精米工程から排出された米粒を乾燥する乾燥工程と、を順次設けてなるパーボイル米の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に長粒種や中粒種の玄米原料をパーボイル米にする製造方法及びその製造方法されたパーボイル米に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水やお湯を加えることによって、短時間のうちに炊飯米の状態に戻すことのできる乾燥米飯食品がある。この乾燥米飯食品の種類の一つにパーボイル米がある。このパーボイル米は、特に、インドやパキスタンなどのアジア地域のほか、アメリカやヨーロッパにおいても食されている。前記パーボイル米は、原料の籾(もみ)米をそのまま蒸煮(アルファ化)し、次いで乾燥、籾摺り、精米を順次行って製造され、食べるときには、お湯の中で10分程度茹(ゆ)でて食される。前記パーボイル米は、製造過程において原料籾米をそのまま蒸煮するため、籾殻の臭い等が胚乳に浸透し、籾殻臭の風味を有したものとなっている。
【0003】
近年、消費者の前記パーボイル米の食味に対する好みが多様化し、パーボイル米に付いた籾殻臭の風味を嫌う消費者が増えており、これに対応するため、籾殻臭を有さないパーボイル米の開発が行われている。その先行技術としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されたようなパーボイル米の製造方法がある。この特許文献1,2の製造方法は、原料籾米をそのまま蒸煮するのではなく、原料を玄米にし、該玄米を蒸煮(アルファ化)することにより、胚乳に籾殻臭が浸透せず、籾殻臭の風味が付いていないパーボイル米(製品)を製造するというものである。
【0004】
【特許文献1】特許第3649339号公報
【特許文献2】米国特許第5275836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記先行技術には、以下のような問題点がある。前記先行技術において、原料の玄米を蒸煮する際、蒸煮に先立って、前記玄米の含水率を30%前後に上昇させるための浸漬工程を必要とする。該浸漬工程は、約60℃の温水を入れた浸漬タンクに原料玄米を例えば60分間浸漬させる工程である。このため、前記浸漬タンクには大量の水が必要であるとともに、使用後の水を排水する際に必要な排水処理を行う排水処理設備が必要である。したがって、前記浸漬工程において大量の水を使用することによるランニングコストの増大の問題や、前記排水処理設備を必要とすることによる設備コストの増大の問題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点にかんがみ、前記浸漬工程のような大量の水を使用して玄米の含水率を上昇させる工程を設けることなく、また、前記排水処理設備を必要としないパーボイル米の製造方法を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、
パーボイル米の製造方法は、請求項1により、
原料玄米を分搗きする分搗工程と、
該分搗工程から排出された米粒に加水する噴霧加水工程と、
該噴霧加水工程から排出された米粒の水分調質を行う水分調質工程と、
該水分調質工程から排出された米粒を蒸気で加熱する常圧蒸煮工程と、
該蒸気加熱工程から排出された米粒を加圧蒸気で蒸煮する加圧蒸煮工程と、
該加圧蒸煮工程から排出された米粒の少なくとも表面の熱を低下させる冷却工程と、
該冷却工程から排出された米粒を仕上げ精米する仕上精米工程と、
該精米工程から排出された米粒を乾燥する乾燥工程と、
を順次設けてなる、という技術的手段を講じた。
【0008】
また、パーボイル米の製造方法は、請求項2により、
前記噴霧加水工程及び水分調質工程は、米粒を0.5%/h〜0.8%/hの速度で加水し、含水率が17%〜19%の範囲になるまで互いの工程を繰り返して循環する、という技術的手段を講じた。
【0009】
さらに、パーボイル米の製造方法は、請求項3により、
前記分搗工程は、胚芽を残留させるように搗精する、という技術的手段を講じた。
【0010】
また、請求項3により、
パーボイル米は、前記請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のパーボイル米の製造方法によって製造する、という技術的手段を講じた。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるパーボイル米の製造方法によれば、分搗工程で原料玄米を分搗きして米粒内部(胚乳部)に水分が浸透し易い状態にし、この米粒を後工程の蒸気加熱工程及び加圧蒸煮工程に搬送して各処理を行うことによって、分搗き玄米を常圧蒸気及び加圧加熱蒸気によって米粒の含水率を上昇さながらα化することができる。このため、大量の水を使った浸漬工程が不要になり、大量の水が不要になるだけでなく、前記浸漬工程における排水処理設備が不要になる。よって、ランニングコストと設備コストを低減することができる。
【0012】
また、本発明のパーボイル米の製造方法は、前記分搗工程には米粒の吸水性を向上させる作用のほかに米粒の胚芽を残留させる作用を有し、このため、この米粒をこの後の噴霧加水工程及び水分調質工程に搬送して各処理を行うことによって、米粒内部のGABA(γ−アミノ酪酸)の栄養成分が増加する。したがって、本製造方法によって製造されたパーボイル米は、前記GABAの栄養成分が豊富に含まれた、従来品よりも付加価値のあるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1の本発明におけるパーボイル米の製造方法の製造フローを参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
ステップ1(分搗工程):
本分搗工程では、原料玄米を分搗きする。まず、原料として、籾米(長粒種又は中粒種)を籾摺りして玄米を準備する。本分搗工程では、例えば、図2に示した公知の縦型研削式精米機を使用する。該縦型研削式精米機1の構成は、回転主軸2に砥石ロール3を軸着してなる精白ロール4と、該精白ロール4の外周方向に所定間隔の間隙(搗精室)5を介して配設した多孔スクリーン9と、該多孔スクリーン9の外周方向に配設した除糠収容室10とを構成する。そして、前記回転主軸2は、その上下の任意位置に配設した軸受2aによって軸支されるとともに、下端部が、軸着されたプーリ11及び動力伝達ベルト12を介してモータ13の出力側となるプーリ7と連結され、これによって回転自在に構成されている。さらに、前記搗精室5の下端部には製品排出部17が構成されており、該製品排出部17は、抵抗蓋14、製品排出口15及び製品排出樋16から構成される。
【0015】
一方、前記搗精室5の上端部は、更にその上部に配設した原料供給口18に通じている。該原料供給口18には原料供給調節部19が設けてある。なお、前記除糠収容室10の下端部は、管路8を介して排風ファン6と連通し、糠を吸引して機外に排出するようにしてある。
【0016】
本分搗工程(ステップ1)の作用としては、上記縦型研削式精米機1を使用して、前記原料玄米を1%から5%の範囲内に分搗きする。該分搗きにより、後の玄米の加水工程(噴霧加水工程)において、米粒内部(胚乳部)に水分が浸透し易くなる作用が生じる。また、前記原料玄米の1%から5%の範囲内で分搗きした米粒には胚芽が残留しているため、後の工程において、米粒内の栄養成分であるGABA(γ−アミノ酪酸)を富化させることに寄与する。
【0017】
ステップ2(噴霧加水工程)及びステップ3(テンパリング工程):
本噴霧加水工程では、上記分搗工程で得られた分搗き玄米に噴霧加水を行い、これに続くテンパリング工程では、加水後の分搗き玄米を常温のタンク内に循環させながら保持させ、米粒内の前記GABA成分を富化させる。本噴霧加水工程において使用する装置としては、例えば、図3に示した公知の加水装置20とし、一方、本テンパリング工程において使用する装置としては、例えば、同じく図3に示した公知のテンパリング装置25とする。
【0018】
前記加水装置20は前記分搗き玄米の供給タンク21を有し、該供給タンク21は排出側に配設した繰り出しバルブ(ロータリーバルブ)22を介して供給管路23に続き、さらに撹拌移送部24の供給側の一端上部部に接続する。前記供給管路23の内部には、噴霧状の水を散水する噴霧ノズル23aを臨ませ、また、該噴霧ノズル23aの上方には傘状の米粒流下規制板23bが配設してある。前記撹拌移送部24は、横設した撹拌筒24aを備え、該撹拌筒24aの供給側に前記供給管路23を接続し、排出側には排出部24aが設けてある。そして、該撹拌筒24aの内部には軸受けによって回転自在にした撹拌移送軸24bを内蔵し、該撹拌移送軸24bには、その長手方向に向かった等間隔位置に、撹拌作用兼移送作用を米粒に与える撹拌移送羽根24cが配設してある。前記撹拌移送軸24bの一端部は、プーリ及び動力伝達ベルトを介してモータ24dと接続している。なお、前記噴霧ノズル23aは、水の加圧供給部(図示せず)と接続し、噴霧水の量を調節できるようになっている。
【0019】
前記テンパリング装置25は円筒形状のタンク部26を備え、該タンク部26は、前記加水装置20の排出部24aと接続した流路26aが上部供給口に接続され、一方、下部排出口には繰り出しバルブ26bが設けてある。また、前記繰り出しバルブ26bから排出された加水後の分搗き玄米をタンク部26内に還流させるための還流部27を備える。該還流部27としては、公知のバケット式の昇降機や加圧空気搬送式のエア搬送装置などを使用する。前記還流部27には、その還流経路において、前記加水後の分搗き玄米のサンプルを採取する任意のサンプル採取手段(例えば、サンプル採取経路)28を設け、該サンプル採取手段28には、公知の穀物水分計29を接続して、随時、前記還流経路を通る米粒の含水率が測定されるようになっている。
【0020】
また、前記還流部27の排出側には流路切換弁30を備えて、前記タンク部26に還流する流路30aと、前記加水装置20又は次工程(常圧蒸煮工程・ステップ4)に向かう流路30bとが切換え可能にしてある。該流路30bの下流側には流路切換弁31を備えて、前記加水装置20の供給タンクに還流する流路31aと、次工程(常圧蒸煮工程・ステップ4)に向かう流路31bとが切換え可能にしてある。なお、前記流路は、下方傾斜状に配設したパイプなどを使用する。
【0021】
本噴霧加水工程(ステップ2)の作用としては、まず、前工程(ステップ1・分搗工程)から1ロット(一定量)単位で分搗き玄米が前記加水装置20に供給され、順次加水される。該加水は、前記分搗き玄米が前記供給管路23内を流下する際に、分搗き玄米に対して、前記噴霧ノズル23aから散水される噴霧水によってムラなく均一に添加して行われる。この後、米粒ごとに加水による水分ムラが生じないようにするため、前記撹拌移送部24によって撹拌されながら移送されて前記排出部24aから排出される。前記噴霧ノズル23aから噴霧する水の添加量については、吸水によって米粒に亀裂が生じない程度の添加量にするのがよい。このため、加水速度は、緩やか(緩速的)に行う必要があり、例えば、0.5%/h〜0.8%/hの範囲内となるようにするのが好ましい。なお、前記加水装置20において、1ロットの分搗き玄米の加水・米粒排出が終了すると、前記加水装置20は、次工程(テンパリング工程・ステップ3)の処理が終了するまで休止状態にする。なお、本噴霧加水工程においては、排水が出ることはない。
【0022】
次に、前記テンパリング工程(水分調質工程)(ステップ3)の作用としては、前記噴霧加水工程(ステップ2)で加水した前記1ロットの分搗き玄米を、前記テンパリング装置25におけるタンク26に供給して堆積し、前記繰り出しバルブ26b及び還流部27の駆動によって順次循環しながら調質する。この循環の際に、前記サンプル採取手段28によって加水後の分搗き玄米サンプルを採取して穀物水分計29に送り、前記玄米サンプルの含水率の測定を行う。
【0023】
本テンパリング工程においては、含水率を17%〜19%の範囲にまで加水した分搗き玄米を、常温の環境状態で8時間から16時間の間、循環しながら調質し、玄米中におけるGABA(γ−アミノ酪酸)の栄養成分を増加させることを一つの目的(効果)としている。このため、前記玄米サンプルの測定含水率が、17%〜19%の範囲に達していない場合には、前記流路切換弁30,31を切換えて、前記タンク26内の分搗き玄米を前記加水装置20に戻して再度加水を行う。再加水後の分搗き玄米は再度前記テンパリング装置25に供給されて循環され、穀物水分計29による再測定による含水率が17%〜19%の範囲に達しているか否かをチェックし、含水率が前記範囲内に達していれば、再加水後の分搗き玄米は前記テンパリング装置25内で前記時間の間循環を繰り返して調質し、一方、含水率が前記範囲内に達していなければ、前記のように再度、加水装置20に戻して加水を行う。
【0024】
ところで、アジア地域などにおいては、収穫後の籾米の乾燥貯蔵設備が整っていないため、原料籾米の含水率のバラつきが大きいが、本テンパリング工程や前記噴霧加水工程を経ることにより、原料玄米の含水率を均一化することができるので、一定品質のパーボイル米を製造することに役立つ。これがもう一つの目的(効果)である。
【0025】
本テンパリング工程において調質処理が終了すると、前記流路切換弁30,31を切換えて、前記調質処理を終えた玄米を前記流路31bを介して次工程(常圧蒸煮工程・ステップ4)に搬送する。
【0026】
ステップ4(常圧蒸煮工程):
本常圧蒸煮工程では、前記調質処理を終えた分搗き玄米を常圧蒸気によって加熱する。本常圧蒸煮工程において使用する常圧蒸煮装置32を図4に示す。該常圧蒸煮装置32は、密閉状の機枠38の内部に、多孔壁からなる円筒多角形状の回転ドラム33,34が上下に横設してある。上段には前記回転ドラム33を横設し、該回転ドラム33は、原料が流下するように一端供給開口側から他端排出開口側に向かって下方傾斜状になっている。そして、前記一端供給開口側には原料供給管35の排出側が挿入され、他端排出開口側には、当該回転ドラム33から排出された原料を下段に横設した前記回転ドラム34の一端供給開口側に移送供給するための下方移送管36に通じている。
【0027】
前記回転ドラム34も前記回転ドラム33と同様に、原料が流下するように一端供給開口側から他端排出開口側に向かって下方傾斜状になっており、前記一端供給開口側に前記下方移送管36の排出側が挿入され、他端排出開口側は、次工程(加圧蒸煮工程・ステップ5)に原料を移送供給する下方移送管37に通じている。前記回転ドラム33,34は、それぞれ内部中央に横設した回転軸33a,34aに対して、連結板33c,34cによって連結されているとともに、前記機壁38に設けた各軸受によって回転自在になっている。そして、前記回転軸33a,34aの一端部は、プーリ33b,34b及び動力伝達ベルト39を介してモータ40と接続している。
【0028】
前記回転ドラム33,34の各下方には、該回転ドラム33,34の全長に亘(わた)る長さの蒸気噴出管41,42が横設してあり、該蒸気噴出管41,42の蒸気供給源側は、蒸気管43及び開閉弁44を介して蒸気供給源(図示せず)と接続している。前記機枠38の底部38aは、一方側に向かって下方傾斜状になっており、その傾斜下部には、常圧蒸煮装置32において蒸気が水滴になって溜まった水を排水するための排水部38bが設けてある。なお、前記原料供給管35の上部供給側には繰り出しバルブ35aが設けてある。
【0029】
前記回転ドラム33,34の回転数については、特に限定されるものではないが、胴割れが生じないように、原料(分搗き玄米)が前記回転ドラム33,34内を通過する時間が10秒から300秒の範囲内になるように、適宜設定する。また、前記蒸気噴出管41から機壁38内に充満させる蒸気の供給量についても、胴割れが生じないように、適宜設定する。
【0030】
本常圧蒸煮工程(ステップ4)の作用を説明する。本常圧蒸煮工程は、上記構成の常圧蒸煮装置32を用い、該常圧蒸煮装置32を、機壁38内に約100℃の蒸気を前記蒸気噴出管41から供給して充満させるとともに前記回転ドラム33,34を回転させた状態にしておいて、前工程において調質処理を終えた1ロットの分搗き玄米を、順次、前記繰り出しバルブ35a及び原料供給管35を介して前記回転ドラム33の一端供給開口側に供給する。
【0031】
前記回転ドラム33に供給された分搗き玄米は、常圧の前記蒸気(飽和水蒸気)によって加熱されるとともに、前記蒸気によって粒間の空気が追い出されて代わりに蒸気が充満された状態で、回転ドラム33の回転によって撹拌されながら他端排出開口側に向かって流下する。このとき、前記粒間の空気は、機壁38の上部に設けた排気管と排風ファンとからなる空気排気部38cから排出される。前記他端排出開口側から排出された前記分搗き玄米は、前記下方移送管36を通って前記回転ドラム34内に一端供給開口側から供給され、該回転ドラム34内においても前記回転ドラム33の作用と同様に加熱作用と粒間に蒸気が充満される作用とを受けながら撹拌移送されて他端排出開口側から排出される。これにより、前記常圧蒸煮装置32での処理を終えて排出される前記分搗き玄米は、胴割れが生じることなく約100℃に加熱され、かつ、粒間に蒸気が充満され、次工程(加圧蒸煮工程)のα化処理を品質よく行うための予備的な処理が行われたことになる。
【0032】
また、本常圧蒸煮工程では蒸気を使用するので、前記排出部38bから排出する排水量は少量ですむ。
【0033】
ステップ5(加圧蒸煮工程):
本加圧蒸煮工程では、前記加熱処理を終えた分搗き玄米を加圧蒸気によってα化する。本加圧蒸煮工程において使用する加圧蒸煮装置45を図4に示す。該加圧蒸煮装置45は、密閉状の機枠46の内部に、ベルトコンベヤー47が横設内蔵する。該ベルトコンベヤー47は、ネット状の搬送無端ベルト47aと、該送無端ベルト47aを掛け渡す駆動ローラー47b及び従動ローラー47cとから構成されている。前記機枠46の底部には、機枠46によって形成された密閉空間内に、加圧・加熱蒸気を供給するための加圧加熱蒸気供給部49が配設してある。該加圧加熱蒸気供給部49は、前記機枠46の底部に設けた供給口(図示せず)に蒸気管49aを介して接続した加圧・加熱蒸気供給源(図示せず)と、前記蒸気管49aの途中に設けた開閉弁49bとから構成される。
【0034】
前記ベルトコンベヤー47の搬送始端側には、当該ベルトコンベヤー47上に原料を供給する傾斜シュート管48が配設してあり、該傾斜シュート管48の上流側の端部は、前工程から排出された原料が移送されてくる前記下方移送管37の排出側と連通している。
【0035】
前記下方移送管37の内部には、原料を加圧蒸煮装置45に供給する際に、前記機枠46内の加圧加熱蒸気が当該下方移送管37を通って抜け出ないようにするための複数の弁が内蔵されている。前記下方移送管37の内部には、前記複数の弁として、上部から、原料の落下衝撃を吸収するための衝撃吸収ダンパー37a、上方バタフライ弁37b、下方バタフライ弁37c、前工程から供給された原料(加熱された分搗き玄米)の塊をほぐすほぐし板37dが順次、任意間隔をおいて配設してある。また、前記下方移送管37における前記上方バタフライ弁37bと下方バタフライ弁37cとの間の間隙37fには、エア抜きバルブ37eが設けてある。
【0036】
前記下方移送管37を介して原料を加圧蒸煮装置45に供給する際には、まず、前記上方バタフライ弁37b及び下方バタフライ弁37cを共に閉状態にして前記エア抜きバルブ37eから前記隙間37fにおける圧力(加圧加熱蒸気)を抜く。次いで、前記上方バタフライ弁37bを開状態にし、原料を上部供給側から前記衝撃吸収ダンパー37aの開度によって流量調整しながら前記隙間37f内に供給する。そして、該隙間37f内に原料が所定量堆積した時点で、前記エア抜きバルブ37eを閉状態にするとともに前記上方バタフライ弁37bを閉状態にし、この後に、下方バタフライ弁37cを開状態にすることで、原料は、自重によって落下し、前記ほぐし板37bを介して前記加圧蒸煮装置45(傾斜シュート管48)に供給される。上記順序が繰り返されることで、1ロット分の原料は加圧蒸煮装置45内に順次供給される。
【0037】
前記ベルトコンベヤー47の搬送終端側には、当該加圧蒸煮装置45においてα化処理を終えた分搗き玄米を機枠46外に排出するための下方移送管50が配設してある。該下方移送管50の内部にも、α化処理を終えた分搗き玄米を機枠46外に排出する際に、前記機枠46内の加圧加熱蒸気が当該下方移送管50を通って抜け出ないようにするための複数の弁が配設してある。該下方移送管50の内部にも前記下方移送管37と略同様に、上部から、α化処理を終えた分搗き玄米の落下衝撃を吸収するための衝撃吸収ダンパー50a、上方バタフライ弁50b、下方バタフライ弁50c、が順次、任意間隔をおいて配設してある。また、前記下方移送管50における前記上方バタフライ弁50bと下方バタフライ弁50cとの間の間隙50eには、エア抜きバルブ50fが設けてある。なお、前記機枠46の底部には、加圧蒸煮装置45において蒸気が水滴になって溜まった水を排水するための排水部51が設けてある。
【0038】
前記下方移送管50を介してα化処理を終えた分搗き玄米を加圧蒸煮装置45から排出する際には、まず、前記上方バタフライ弁50b及び下方バタフライ弁50cを共に閉状態にして前記エア抜きバルブ50dから前記隙間50eにおける圧力(加圧加熱蒸気)を抜く。次いで、前記上方バタフライ弁50bを開状態にし、α化処理を終えた分搗き玄米を前記衝撃吸収ダンパー50aの開度によって流量調整しながら前記隙間50e内に供給する。そして、該隙間50e内に前記玄米が所定量堆積した時点で、前記エア抜きバルブ50dを閉状態にするとともに前記上方バタフライ弁50bを閉状態にし、この後に下方バタフライ弁50cを開状態にすることで、α化処理を終えた分搗き玄米は、自重によって落下して排出される。上記順序が繰り返されることで、α化処理を終えた1ロット分の分搗き玄米は加圧蒸煮装置45外に順次排出される。
【0039】
本加圧蒸煮工程(ステップ5)の作用を説明する。前記加圧蒸煮装置45の内部(機枠46の内部)に前記加圧加熱蒸気供給部49から加圧加熱蒸気を供給充満させて、室内圧力を0.2MPa〜0.4MPaとし、また、蒸気温度を約145℃前後の状態に設定する。また、ベルトコンベヤー47の搬送速度は、分搗き玄米が供給されて排出されるまでの時間が120秒から1800秒の範囲となるように、適宜な速度にする。この設定条件で、前工程(常圧蒸煮工程、ステップ4)で予備的な処理を終えた分搗き玄米、すなわち、胴割れが生じることなく約100℃に加熱され、かつ、粒間に蒸気を充満させた(空気を追い出した)分搗き玄米を、順次、前記下方移送管37及び傾斜シュート管48を介してベルトコンベヤー47上に供給する。
【0040】
前記ベルトコンベヤー47上に供給された分搗き玄米は、ベルトコンベヤー47によって搬送されながら室内の圧力と加熱蒸気とによって米粒内の含水率を上昇させながらα化され、排出の際にはα化度が約100%になる。このとき、本圧蒸煮工程に供給された分搗き玄米は、前述の予備的な処理がなされているため、粒間に加熱蒸気がスムーズに充満されて米粒におけるα化のムラ発生が防止されて、製品の品質が向上する効果を奏し、また、予め加熱されているので100%α化するための時間を短時間にすることができ、α化処理の生産効率面でも効果を奏する。なお、前記加圧加熱蒸気の圧力や温度は、適宜、米粒のα化度をチェックしながら設定する。
【0041】
前記ベルトコンベヤー47上においてα化処理を終えた分搗き玄米は、前記下方移送管50から排出され、次工程(放冷工程・ステップ6)に移送供給される。
【0042】
また、本加圧蒸煮工程では蒸気を使用するので、前記排出部51から排出する排水量は少量ですむ。
【0043】
ステップ6(放冷工程):
本放冷工程は、α化処理を終えた前記分搗き玄米の表面の熱(粗熱(あらねつ))をとり、次工程(高水分精米工程・ステップ7)を容易にするために行う。本放冷工程では、図5に示した放冷装置52を使用する。前記放冷装置52は、機枠53内にベルトコンベヤー54を横設内蔵する。前記機枠53の一端上部には、次工程から移送供給された分搗き玄米をベルトコンベヤー54上に供給するための供給部55が配設してあり、また、前記機枠53の他方下端部には、ベルトコンベヤー54上の搬送終端部から放出された分搗き玄米を機外排出するための排出部56が配設してある。
【0044】
前記ベルトコンベヤー54は、ネット状の搬送無端ベルト54aと、該搬送無端ベルト54aを掛け渡す駆動ローラー54b及び従動ローラー54cとから構成されている。前記機枠53の側面には、前記ベルトコンベヤー54の長手方向に沿った横長形状の外気取入口57が構成されている。また、前記機枠53における上面には、ベルトコンベヤー54の搬送面の略全面積に相当する大きさの吸引排風口58が設けてある。前記吸引排風口58は吸引管59を介して排風ファン60に接続し、さらに排気管61へと接続してしる。
【0045】
本放冷工程(ステップ6)の作用を説明する。本放冷工程(冷却工程)では、前工程(加圧蒸煮工程)においてα化処理された直後の分搗き玄米を、順次、前記供給部55から搬送無端ベルト54aの搬送始端側に供給する。該搬送無端ベルト54a上に供給された前記分搗き玄米は、ベルトコンベヤー54によって搬送される間に、前記排風ファン60の吸引によって生じる、前記外気取入口57から取り入れた外気が搬送無端ベルト54aの下方から通風され、これにより、米粒の表面の熱(粗熱)が奪われて表面温度が低下して前記排出部56から排出される。排出された分搗き玄米は、含水率が17%〜25%の範囲内となり、次工程(高水分精米工程・ステップ7)に搬送される。なお、前記ベルトコンベヤー54の搬送速度や前記排風ファン60による吸引風量は、排出された米粒の表面温度が60℃以下になるようにチェックしながら適宜設定する。
【0046】
ステップ7(高水分精米工程):
本高水分精米工程(仕上精米工程)は、前工程によって放冷された分搗き玄米について、仕上げ精米を行う。本高水分精米工程においては、前記ステップ1(分搗工程)で使用した前記縦型研削式精米機1と同様のものを使用する(図2参照)。該縦型研削式精米機1の構成については、前述のとおりである。
【0047】
本高水分精米工程(ステップ7)の作用を説明する。前工程(放冷工程)によって表面の粗熱が取られた分搗き玄米を、順次、前記縦型研削式精米機1の原料供給口18に供給すると、前記分搗き玄米は、搗精室5において仕上げ搗精されて前記製品排出部17から排出される。このとき、原料の分搗き玄米は前工程(放冷工程)によって粗熱が取られて米粒表面のぬめりがなくなっているので、搗精が良好に行われる。排出された製品精白米(パーボイル米)は、含水率が18%前後であり、次工程(乾燥工程)に搬送される。なお、前記精白ロール4の回転速度や前記製品排出部17における抵抗値などについては、搗精品質や砕米が生じないように適宜設定する。
【0048】
ステップ8(乾燥工程):
本乾燥工程では、前工程から排出された製品精白米(パーボイル米)の乾燥を行う。本乾燥工程において使用する乾燥装置は、例えば、図6に示した循環式穀物乾燥装置62を使用する。該循環式穀物乾燥装置62は、例えば、特公平8−27134号公報に記載された公知ものである。前記循環式穀物乾燥装置62は、上部から、貯留部(調質部)63、乾燥部64、排出部65を順次重設してなる乾燥機本体部62aと、該乾燥機本体部62aの側方に併設した昇降機66とから構成される。
【0049】
前記乾燥部64は、熱風を生成するバーナー67と、前記熱風が供給される熱風胴68と、穀粒が流下しかつ熱風を通風可能な多孔板からなる左右の穀物流下層69,69と、前記熱風胴68から穀物流下層69,69(穀粒間)を通風した熱風を排風する左右の排風胴70,70と、該排風胴70,70と連通して前記熱風を吸引して機外に排風する排風ファン(図示せず)とから構成される。
【0050】
前記排出部65は、前記穀物流下層69,69の下部に配設した繰り出しバルブ71と、該繰り出しバルブ71の下方に設けた漏斗状の穀粒集穀板72と、該穀粒集穀板72の下部に配設され、穀粒を前記昇降機66の搬送始端側に搬送する下部搬送スクリュー73とから構成される。
【0051】
前記昇降機66は、機枠66a内に、その上部と下部にそれぞれ配設したプーリ74,74と、該プーリ74,74に掛け渡した複数のバケット75が装着された無端状のバケットベルト75aとを有する。前記プーリ74,74の一方はモータ(図示せず)と接続して駆動側となり、前記バケットベルト75aを搬送回転できるようにしてある。前記機枠66aの下部は前記下部搬送スクリュー73の搬送終端側と連通し、また、前記機枠66aの上部は後述する上部搬送部76の搬送始端側と連通している。前記機枠66aの側部には穀物水分計66bを装着して、乾燥中の穀物の含水率が自動的に測定されるようになっている。前記上部搬送部76は前記貯留部63の上部に配設され、上部搬送スクリュー77と、該上部搬送スクリュー77の搬送終端側の位置に前記貯留部63内に臨ませた飛散板78とから構成される。なお、前記排風胴70,70の一方側の機壁には、被乾燥物である前記製品精白米(パーボイル米)を供給するための開閉扉78が設けてある。
【0052】
本乾燥工程(ステップ8)の作用を説明する。まず、前記開閉扉78を開けて、前工程(高水分精米工程、ステップ7)から排出された1ロットの製品精白米(パーボイル米)(含水率:18%前後)を順次供給すると、前記製品精白米は、下部搬送スクリュー73、昇降機66及び上部搬送部76を介して貯留部63に搬送されて堆積される(以上、張込運転)。この張込運転が終了すると前記開閉扉78を閉め、乾燥運転を開始する。
【0053】
前記乾燥運転は、前記排風ファンの吸引作用によって、前記バーナー67で発生させた熱風を前記穀物流下層69,69の穀粒(前記製品精白米)に通風させる。前記繰り出しバルブ71が断続的に回転して前記穀物流下層69,69の前記穀粒が繰り出され、繰り出された穀粒は、前記下部搬送スクリュー73、昇降機66及び上部搬送部76を介して貯留部63に還流され、該貯留部63内で調質される。このようにして穀物は機内を循環し、熱風通風と調質を繰り返しながらムラなく乾燥される。そして、前記穀物水分計66bによる穀物の測定含水率が、例えば、13%まで下がると乾燥運転を終了し、排出運転を行って当該穀粒を機外に排出する。
【0054】
なお、本乾燥工程(ステップ8)に続き、必要に応じて、研米工程を設ける。該研米工程は、公知の湿式研米装置を使い、乾燥処理された前記穀粒(=製品精白米(パーボイル米))に少量の噴霧水を添加し、穀粒を互いに擦(こす)り合わせて表面に艶(つや)を出す工程である。この研米工程を経ることにより、製品の外観品質が高まる。
【0055】
以上説明した工程を経て製造されたパーボイル米は、前記GABA(γ−アミノ酪酸)の成分が増加しているので栄養成分が豊富であり、胴割れも生じていないので外観的にも優れている。また、製造設備面においても、蒸気を使用するので排水量は少量であり、よって、大量の排水処理に必要な排水処理設備が不要とうメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のパーボイル米の製造方法における製造フローを示す。
【図2】本発明における縦型研削式精米機の縦断面図を示す。
【図3】本発明における加水装置とテンパリング装置を示す。
【図4】本発明における常圧蒸煮装置及び加圧蒸煮装置の各縦断面図を示す。
【図5】本発明における放冷装置の縦断面図を示す。
【図6】本発明における循環式穀物乾燥機の縦断面図を示す。
【符号の説明】
【0057】
1 縦型研削式精米機
2 回転主軸
2a 軸受
3 砥石ロール
4 精白ロール
5 搗精室
6 排風ファン
7 プーリ
8 管路
9 多孔スクリーン
10 除糠収容室
11 プーリ
12 動力伝達ベルト
13 モータ
14 抵抗蓋
15 製品排出口
16 製品排出樋
17 製品排出部
18 原料供給口
19 原料供給調節部
20 加水装置
21 供給タンク
22 繰り出しバルブ
23 供給管路
23a 噴霧ノズル
23b 米粒流下規制板
24 撹拌移送部
24a 排出部
24b 撹拌移送軸
24c 撹拌移送羽根
24d モータ
25 テンパリング装置
26 タンク部
26a 流路
26b 繰り出しバルブ
27 還流部
28 サンプル採取手段
29 穀物水分計
30 流路切換弁
31 流路切換弁
31a 流路
32 常圧蒸煮装置
33 回転ドラム
33a 回転軸
33b プーリ
33c 連結板
34 回転ドラム
34a 回転軸
34b プーリ
34c 連結板
35 原料供給管
35a 繰り出しバルブ
36 下方移送管
37 下方移送管
37a 衝撃吸収ダンパー
37b 上方バタフライ弁
37c 下方バラフライ弁
37d ほぐし板
37e エア抜きバルブ
37f 間隙
38 機壁
38a 底部
38b 排出部
38c 空気排気部
39 動力伝達ベルト
40 モータ
41 蒸気噴出管
42 蒸気噴出管
43 蒸気管
44 開閉弁
45 加圧蒸煮装置
46 機枠
47 ベルトコンベヤー
47a 搬送無端ベルト
47b 駆動ローラー
47c 従動ローラー
48 傾斜シュート管
49 加圧加熱蒸気供給部
49a 蒸気管
49b 開閉弁
50 下方移送管
50a 衝撃吸収ダンパー
50b 上方バタフライ弁
50c 下方バタフライ弁
50d エア抜きバルブ
50e 間隙
51 排水部
52 放冷装置
53 機枠
54 ベルトコンベヤー
54a 搬送無端ベルト
54b 駆動ローラー
54c 従動ローラー
55 供給部
56 排出部
57 外気取入口
58 吸引排風口
59 吸引管
60 排風ファン
61 排気管
62 循環式穀物乾燥装置
62a 乾燥機本体部
63 貯留部
64 乾燥部
65 排出部
66 昇降機
66a 機枠
66b 穀物水分計
67 バーナー
68 熱風胴
69 穀物流下層
70 排風胴
71 繰り出しバルブ
72 集穀板
73 下部搬送スクリュー
74 プーリ
75 バケット
75a バケットベルト
76 上部搬送部
77 上部搬送スクリュー
78 飛散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料玄米を分搗きする分搗工程と、
該分搗工程から排出された米粒に加水する噴霧加水工程と、
該噴霧加水工程から排出された米粒の水分調質を行う水分調質工程と、
該水分調質工程から排出された米粒を蒸気で加熱する常圧蒸煮工程と、
該蒸気加熱工程から排出された米粒を加圧蒸気で蒸煮する加圧蒸煮工程と、
該加圧蒸煮工程から排出された米粒の少なくとも表面の熱を低下させる冷却工程と、
該冷却工程から排出された米粒を仕上げ精米する仕上精米工程と、
該精米工程から排出された米粒を乾燥する乾燥工程と、
を順次設けてなることを特徴とするパーボイル米の製造方法。
【請求項2】
前記噴霧加水工程及び水分調質工程は、米粒を0.5%/h〜0.8%/hの速度で加水し、含水率が17%〜19%の範囲になるまで互いの工程を繰り返して循環することを特徴とするパーボイル米の製造方法。
【請求項3】
前記分搗工程は、胚芽を残留させるように搗精することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパーボイル米の製造方法。
【請求項4】
前記請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のパーボイル米の製造方法によって製造したことを特徴とするパーボイル米。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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