説明

パール顔料を用いた印刷方法

【課題】低廉で、かつ、虹彩色および金属光沢を有する画像を形成することができる印刷方法を提供すること。
【解決手段】基材を用意し、該基材の表面に、顔料または染料を含む第一の着色剤により第一の画像を形成し、次に、パール顔料を含む第二の着色剤により第二の画像を形成することを含んでなる、印刷方法により達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料または染料を含む第一の着色剤と、パール顔料を含む第二の着色剤とにより基材に印刷を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パール顔料は通常の顔料と比較して真珠光沢を有し、その安全性、光沢性、高級感を有することから、印刷インク、化粧品、各種塗料として利用されている。また、このパール顔料を含んでなるインクは、アルミ粉末のメタリック光沢と相違してシルク調の高級感のある光輝を有する虹彩色を放つことから、このインクを用いて印刷された画像は、見る角度により虹彩色および金属光沢が形成されるとされている。このため、パール顔料は印刷業界にあって注目を浴びている着色剤である。例えば、特開平8−85269号公報では、特定の無機パール顔料を含有する熱転写性インク層を有する熱転写シートを利用することより、高輝度な金属光沢を有する印刷物が得られるとの提案がなされている。
【0003】
しかしながら、この公報にあっては、顔料または染料を含んでなる着色剤とパール顔料を含んでなる着色剤とを利用することにより基材に印刷する方法の具体的な提案はされていない。また、この公報では、見る角度により肉眼で認識されまたは認識されなかったりする印刷画像が基材に形成されたとする具体的な開示はされていない。
【特許文献1】特開平8−85269号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明者等は、今般、顔料または染料を含んでなる着色剤と、パール顔料を含んでなる着色剤と用いることにより、低廉で、かつ、虹彩色および金属光沢を有する画像を形成することができるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
よって、本発明による印刷方法は、
基材を用意し、
該基材の表面に、顔料または染料を含む第一の着色剤により第一の画像を形成し、次に、
パール顔料を含む第二の着色剤により第二の画像を形成することを含んでなるものである。
また、本発明の別の態様による熱転写シートは、
基材シートと、
着色剤として顔料または染料を含んでなる第一の着色層と、
着色剤としてパール顔料を含んでなる第二の着色層とを含んでなるものである。
本発明による印刷方法および熱転写シートを利用することにより、基材に低廉で、かつ、虹彩色および金属光沢を有する画像を形成することができ、その結果、印刷画像が光りの反射によって肉眼により認識されたりされなかったりすることができる印刷方法を提供することを可能とする。
【発明の具体的説明】
【0005】
1.印刷方法
本発明による方法は、基材に、虹彩色または金属光沢を有する画像を形成することができる。本発明による方法によれば、パール顔料を含んでなる第二の着色剤により形成された画像のみが見る角度により肉眼で認識されまたは認識されなかったりする効果を印刷画像に付与することが可能となる。このため、本発明による印刷方法は、基材に、真贋性を必要とする画像の形成、セキュリティーを必要とする画像の形成、デザインを向上させる画像の形成等を可能とする。
【0006】
本発明による印刷方法を行う方法としては、顔料または染料を含む第一の着色剤と、パール顔料を含む第二の着色剤とを基材に手書きする方法、これらの着色剤を含むインク組成物を備えたペンで印刷する方法、また、これらの着色剤を含むインク組成物を利用したインクジェット記録方法、バブルジェット(登録商標)記録方法、さらには、これらの着色剤を設けた熱転写シートにより熱転写する方法等が挙げられ、好ましくは熱転写方法が挙げられる。
【0007】
本発明における印刷方法で利用する第一の着色剤と第二の着色剤とは、下記で説明する第一の着色層と第二の着色層に含まれる着色剤と同様であってよい。本発明にあって、「画像」とは、人、動物、物などの物体の形態の像のみならず、文字、図形、記号等の形態の像をも含む広い概念のものをいう。
【0008】
本発明による印刷方法を図1を用いて説明する。図1は本発明による印刷方法を実現できる熱転写シートの一例を表したものである。この熱転写シートは、背面層50に積層された基材シート40の表面に、着色剤として顔料または染料(イエロー「Y」、マゼンタ「M」、シアン「C」)を含んでなる第一の着色層部10と、着色剤としてパール顔料を含んでなる第二の着色層部20と、保護層部30とがそれぞれの順で設けられてなるものである。本発明による印刷方法は、この熱転写シートが熱転写装置に装填されて、その装置外部から導入された画像情報を、熱転写シートに設けられた第一の着色層部10を熱転写して第一の画像を基材に形成し、熱転写シートに設けられた第二の着色層部20を熱転写して第二の画像を基材形成して印刷することにより行うことができる。さらに、本発明の好ましい態様によれば、基材に形成された画像を保護するために、熱転写シートに設けられた保護層部30を熱転写して保護部を形成することができる。本発明の別の態様によれば、上記第一の着色層部10と第二の着色層部20が逆に設けられた熱転写シートにより印刷が行われてもよい。
【0009】
中間熱転写シートの利用
本発明の好ましい態様によれば、基材シートと、剥離可能とされた転写部とを含んでなり、該転写部が第一の着色層または第二の着色層から熱転写により転写された画像を受容する受容層を有する中間熱転写シートを用いて再転写することにより行われることが好ましい。中間熱転写シートは必要に応じて、離型層、接着層を有してもよい。離型層、接着層は熱転写シートにおいて説明するものと同様であってよい。
受容層
受容層は、第一の着色層と、第二の着色層が設けられた熱転写シートの熱転写により生じた着色剤を受容できるもので構成されてなるものが好ましい。受容層を構成する材料の具体例としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル−スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂が挙げられる。また、受容層は熱転写シートにおいて説明するもの蛍光剤を含んでなるものであってよい。
【0010】
2.熱転写シート
本発明による熱転写シートは、基本的に、基材シートと、第一の着色層と、第二の着色層とにより構成されてなる。本発明の好ましい態様によれば、熱転写シートは、保護層、離型層、剥離層、接着層、背面層等をさらに含んでなるものであってよい。
【0011】
基材シート
基材シートは、ある程度の耐熱性と強度を有するものであれば、いずれのものも好適に利用できる。基材シートの好ましい具体例は、グラシン紙、コンデンサー紙、パラフィン紙等の薄紙;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルホン等の耐熱性の高いポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレンの誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルペンテン、アイオノマー等、のプラスチックを延伸あるいは未延伸してフィルムに形成したもの、またはこれらのものを一種又は二種以上積層したもの、が挙げられる。基材シートの厚さは、強度及び耐熱性等が適合できるように適宜決定することができるが、1〜100μm程度、好ましくは2〜25μm程度の範囲である。
【0012】
第一の着色層
第一の着色層は、着色剤として顔料または染料を含んでなる。これらの着色剤はマゼンタ(Y)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)のいずれか一つの色を含んでなり、また他の色を含んでなるものであってよい。
【0013】
顔料としては、特に限定されず、無機顔料および有機顔料のいずれも使用することができる。無機顔料としては、酸化チタンおよび酸化鉄に加え、コンタクト法、ファーネスト法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。
【0014】
染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、および可溶性建染染料などの各種染料を使用することができる。第一の着色層は分散剤、樹脂、ワックス、接着剤、溶媒等がさらに添加されてよい。第一の着色層の厚さは、0.1〜20μm程度であることが望ましい。
【0015】
第二の着色層
第二の着色層は、着色剤としてパール顔料を含んでなる。パール顔料は魚介類から抽出したパールエッセンス、塩基性炭酸鉛、酸性ヒ酸鉛、酸塩化ビスマス、雲母を金属酸化物で被覆したもの等が挙げられ、安全性の見地から雲母を金属酸化物で被覆したものが好ましい。金属酸化物としては、その光沢性および屈折率から酸化チタン、酸化鉄が好ましくは利用される。
【0016】
本発明にあっては、パール顔料は、それをさらに顔料、染料等で着色したものであってもよい。また、第二の着色層は、ワックス、樹脂等が添加されてもよい。ワックスとしては、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等が挙げられる。樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエンゴム等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0017】
第二の着色層は、パール顔料10〜90重量%と、樹脂90〜10重量%と、ワックス0〜50重量%との割合で構成されてなるものが好ましい。上記の添加量で添加されることにより、第二の着色層が、所望の、虹彩色または金属光沢を再現でき、印字時の解像性が向上され、着色層の膜強度が向上する。その結果、得られる画像は、虹彩色、金属色調、光沢感、(半)透明感、解像度が向上されたものとなる。第二の着色層の厚さは、0.1〜20μm程度であることが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、パール顔料を含んでなる第二の着色層は蛍光剤または蛍光増白剤を含んでなるものが好ましい。
本発明にあっては、第一の着色層または第二の着色層とが着色剤としてパール顔料を含んでなるものであればよい。
【0018】
保護層
本発明の好ましい態様によれば、熱転写シートは保護層を含んでなるものが好ましい。さらに好ましくは、保護層は、第一の着色層、第二の着色層以外の箇所に設けられてなるものが好ましい。保護層を形成する材料の具体例としては、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、これらの各樹脂をシリコーン変性させた樹脂、これらの各樹脂の混合物、電離放射線硬化性樹脂、紫外線遮断性樹脂等が挙げられる。また、必要に応じて、保護層は紫外線吸収剤、有機フィラーおよび/または無機フィラーを適宜添加することができる。
【0019】
電離放射性硬化性樹脂を含有する保護層は、耐可塑剤性や耐擦過性が特に優れたものとなる。電離放射性硬化性樹脂の具体例としては、ラジカル重合性のポリマーまたはオリゴマーを電離放射性照射により架橋、硬化させ、必要に応じて光重合開始剤を添加し、電子線や紫外線によって重合架橋させたものが挙げられる。
【0020】
紫外線遮断性樹脂や紫外線吸収剤を含有する保護層は、主として印刷物に耐光性を付与することができる。紫外線遮断性樹脂としては、例えば、反応性紫外線吸収剤を熱可塑性樹脂又は上記した電離放射線硬化性樹脂と反応、結合させて得た樹脂を使用することができる。より具体的には、サリシレート系、フェニルアクリレート型、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、クマリン系、トリアジン系、ニッケルキレート系等の非反応性の有機系紫外線吸収剤に、付加重合性二重結合基(例えばビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基など)、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基のような反応性基を導入したものが挙げられる。紫外線吸収剤の具体例としては、非反応性の有機系紫外線吸収剤、サリシレート系、フェニルアクリレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、クマリン系、トリアジン系、ニッケルキレート系等が挙げられる。
【0021】
有機フィラー及び/又は無機フィラーの具体例としては、ポリエチレンワックス、ビスアマイド、ナイロン、アクリル樹脂、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、マイクロシリカ、コロイダルシリカ等のシリカ微粉末等が挙げられるが、特に限定はされない。
有機フィラー及び/又は無機フィラーは、滑り性が良く、かつ、その粒径は10μm以下、好ましくは0.1〜3μm程度の範囲のものが好ましい。有機フィラー及び/又は無機フィラーの添加量は、熱転写した時に透明性が保たれる程度が好ましく、具体的には、上記した樹脂分100質量部に対して、0〜100質量部の範囲である。保護層の厚みは、保護層形成用樹脂の種類によって、適宜決定することができるが、0.5〜10μm程度である。
【0022】
剥離層
本発明による熱転写シートは、剥離層または離型層を設けてもよく、好ましくは基材シートと第二の着色層の間に剥離層を設けることが好ましい。剥離層は、基材シートとの密着性を向上させることができる。剥離層は上記したワックスおよび樹脂等で形成されてよい。本発明の好ましい態様によれば、剥離層は蛍光剤が添加されてよい。蛍光剤は紫外線照射により蛍光を発する物質であり、無機、有機のいずれのものであってよく、可視領域において吸収帯を有するもの有さないもののいずれも使用することができる。無機蛍光剤の具体例としては、Ca、Ba、Mg、Zn、Cdなどの酸化物、硫化物、ケイ酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩などの結晶を主成分として、Mg、Ag、Cu、Sb、Pbなどの金属元素、もしくはランタノイド類などの希土類元素を活性剤として添加し焼成して得られるものが挙げられる。有機蛍光剤としては、ジアミノスチルベンジルスルホン酸誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、トリアゾール、カルバゾール、ピリジン、ナフタル酸、イミダゾロン等の誘導体、フルオレセン、エオシン等の色素、アントラセンなどの縮合環を有する化合物が挙げられる。剥離層の厚さ0.05〜5μm程度が好ましい。
【0023】
離型層
本発明による熱転写シートは離型層を設けることができ、好ましくは、第二の着色層または保護層の下層に離型層を設けることが好ましい。離型層は、離型剤を用いて形成することができ、その具体例としては、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の各種ワックス類、高級脂肪酸アルコール、オルガノポリシロキサン、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、有機カルボン酸及びその誘導体、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、タルク、シリカ等の無機化合物の微粒子等を用いることができる。離型層の厚さ0.05〜5μm程度が好ましい。
【0024】
接着層
本発明による熱転写シートは接着層を設けることができ、好ましくは、第一の着色層と、第二の着色層と、保護層のいずれか一つ以上の層の表面に設けることが好ましい。接着層を形成する接着剤は、いずれのものであってよいが、好ましくは最低成膜温度が50〜100℃程度であり、その粒径が0.1〜10μmである熱可塑性樹脂粒子を熱溶融性ワックス中に分散させたものが好ましい。接着層は、その厚さ0.1〜10μm程度とすることができる。
本発明のより好ましい態様によれば、接着層中に着色剤(顔料、染料)を含有させることができる。着色剤の添加量は、接着層組成物の総重量のうち、1〜50重量%程度であることが好ましい。
【0025】
背面層
本発明の好ましい態様によれば、基材シートの裏面に背面層を設けることが好ましい。背面層は、サーマルヘッド等の加熱デバイスと基材シートとの熱融着を防止し、熱転写シートの走行を滑らかにすることができる。背面層に用いる樹脂の具体例としては、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルアミド、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のアクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン変性又はフッ素変性ウレタン等、の天然又は合成樹脂の単体又は混合物が用いられる。
本発明の好ましい態様によれば、耐熱性と滑性とを兼ね備えた背面層(以下、適宜、「耐熱滑性層」という)であることが好ましい。耐熱滑性層の具体例としては、上記の樹脂のうち水酸基系の官能基を有している樹脂に、架橋剤としてポリイソシアネート等と、界面活性剤(好ましくはリン系界面活性剤)を添加して形成されたものが好ましくは挙げられる。背面層の厚みは0.1〜10μm程度、好ましくは0.5〜5μm程度であることが好ましい。
【0026】
3.熱転写シートの調製
本発明による熱転写シートは、基材シートの表面に第一の着色層のみが設けられたシート、基材シートの表面に第二の着色層のみが設けられたシートとして調製されてよく、熱転写時にこれらを組み合わせて使用してよい。本発明の好ましい態様によれば、基材シートの表面に、第一の着色層と、第二の着色層と、および必要に応じて保護層とがこれらの順で設けられてなるシート、または基材シートの表面に、第二の着色層と、第一の着色層と、および必要に応じて保護層とがこれらの順で設けられてなるシートとして形成されることが好ましい。また、本発明の好ましい態様によれば、基材シートに、第一の着色層、第二の着色層、保護層を形成する場合には、それぞれの層の上下に、離型層、剥離層、接着層を形成させてもよい。基材シートに、第一の着色層、第二の着色層、保護層を形成する手段は、それぞれの組成物を、ホットメルトコート、ホットラッカーコート、グラビアダイレクトコート、グラビアリバースコート、ナイフコート、エアコート、ロールコート法により塗工して行うことができる。
【0027】
4.本発明による印刷方法の用途
本発明による印刷方法は基材に虹彩色および金属光沢を付与した画像形成に利用される。その具体例としては、身分証明書やIDカード、クレジットカード、その他カード類への顔写真や文字等の印刷;遊園地、ゲームセンター、博物館、水族館等のアミューズメント施設における合成写真や記念写真等の印刷;等が挙げられる。
【実施例】
【0028】
本発明の内容を以下の実施例により説明する。しかしながら、本発明は下記の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0029】
実施例1
熱転写シート1の調製
1.背面層(耐熱滑性層)
下記の組成に従って耐熱滑性層を形成する組成物を調製した。この組成物をグラビアコートで、1.0g/mの塗工量で、図1に示すように、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる基材シートの裏面に塗工し耐熱滑性層を形成させた。
耐熱滑性層
ポリビニルブチラール 3.6重量部
ポリイソシアネート 8.6重量部
リン酸エステル系界面活性剤 2.8重量部
タルク 0.7重量部
メチルエチルケトン 32.0重量部
トルエン 32.0重量部
【0030】
1.第一の着色層部
下記の組成に従って第一の着色層を形成する組成物を調製した。これらの組成物をグラビアコートで、0.8g/mの塗工量で上記耐熱滑性層に積層された基材シートの表面にY、M、Cの順でそれぞれ塗工し図1に示す第一の着色層部を形成させた。
【0031】
イエロー組成物
キノフタロン系染料 6.0重量部
ポリビニルアセトアセタール 3.0重量部
(積水化学工業(株)製、KS−5)
トルエン 45 重量部
メチルエチルケトン 45 重量部
【0032】
マゼンタ組成物
ピラゾロトリアゾールアゾメチン系染料 4.4重量部
アントラキノン系染料 1.0重量部
ポリビニルアセトアセタール樹脂 3.0重量部
(積水化学工業(株)製、KS−5)
トルエン 45 重量部
メチルエチルケトン 45 重量部
【0033】
シアン組成物
インドアニリン系染料 4.0重量部
アントラキノン系染料 1.0重量部
ポリビニルアセトアセタール樹脂 3.0重量部
(積水化学工業(株)製、KS−5)
トルエン 45 重量部
メチルエチルケトン 45 重量部
【0034】
2.第二の着色層部
離型層
下記の組成に従って離型層を形成する組成物を調製した。この組成物をグラビアコートで、0.5g/mの塗工量で実施例1と同様の基材シートの表面に塗工し、離型層を形成させた。
ポリビニルアルコール樹脂 2.0重量部
ウレタンエマルジョン樹脂 2.6重量部
イソプロピルアルコール 63.6重量部
イオン交換水 31.8重量部
剥離層
下記の組成に従って剥離層を形成する組成物を調製した。この組成物をグラビアコートで、0.8g/mの塗工量で上記離型層の表面に塗工し、剥離層を形成させた。
ポリメタクリル酸メチル樹脂 30 重量部
(三菱レーヨン社製 BR−87)
ベンゾオキサゾル系染料 2.6重量部
(チバスペシャリティーケミカル社製 ユビテックスOB) トルエン 35 重量部
メチルエチルケトン 35 重量部
第二の着色層
下記の組成に従って第二の着色層を形成する組成物を調製した。この組成物をグラビアコートで、1.4g/mの塗工量で上記剥離層の表面に塗工し、第二の着色層を形成させた。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂 21 重量部
(ユニオンカーバイド社製 VYLF−X)
パール顔料 21 重量部
(メルクジャパン社製 Iriodin/Afflair 223)
トルエン 29 重量部
メチルエチルケトン 29 重量部
【0035】
3.保護層部
離型層
2.第二の着色層部で説明したのと同様の手順で、基材シート表面に離型層を形成させた。
保護層
下記の組成に従って保護層を形成する組成物を調製した。この組成物をグラビアコートで、1.4g/mの塗工量で上記離型層の表面に塗工し、保護層を形成させた。
ポリメタクリル酸メチル樹脂 30 重量部
(三菱レーヨン社製 BR−87)
ポリエチレンワックス 1.2重量部
トルエン 35 重量部
メチルエチルケトン 35 重量部
接着層
下記の組成に従って接着層を形成する組成物を調製した。この組成物をグラビアコートで、1.2g/mの塗工量で上記保護層の表面に塗工し、接着層を形成させた。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂 30 重量部
トルエン 35 重量部
メチルエチルケトン 35 重量部
【0036】
実施例2
熱転写シート2の調製
第二の着色層部において剥離層を形成せず、第二の着色層を下記の通りに形成した以外は、実施例1と同様にして図2に示した熱転写シート2を調製した。
第二の着色層
下記の組成に従って第二の着色層を形成する組成物を調製した。この組成物をグラビアコートで、1.4g/mの塗工量で離型層の表面に塗工し、第二の着色層を形成させた。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂 21 重量部
(ユニオンカーバイド社製 VYLF−X)
パール顔料 21 重量部
(メルクジャパン社製 Iriodin/Afflair 201)
ベンゾオキサゾル系染料 3.0重量部
(チバスペシャリティーケイミカル社製 ユビテックスOB)
トルエン 30 重量部
メチルエチルケトン 30 重量部
【0037】
実施例3
熱転写シート3の調製
保護層部を形成しなかった以外は、実施例2と同様にして図3に示した熱転写シート3を調製した。
【0038】
評価試験
評価1:直接転写試験
熱転写装置(ELTRON社製カードプリンターP310)に、熱転写シート1〜3を装填し、下記組成の受像シート(樹脂製白色カード)に女性の顔写真と文字を解析して得た電気信号を上記装置に設けられたサーマルヘッドに伝達し熱転写を行った。具体的には、先ず、第一の着色層部を熱転写し、女性の顔のフルカラー画像を形成した。次に、第二の着色層部を熱転写し上記フルカラー画像の上部に文字画像を形成した。その後、第二の着色層部を熱転写し形成された画像の上部に保護層を形成させて、女性の顔のフルカラー画像とパール顔料で形成された文字画像とが一体となった画像形成カードを得た。
受像シート
ポリ塩化ビニル組成物 100 重量部
(重合度800:添加剤(安定剤等)を約10重量%含有)
白色顔料(酸化チタン) 10 重量部
可塑剤(DOP) 0.5重量部
【0039】
評価2:中間転写試験
熱転写装置(ELTRON社製カードプリンターP310)に、熱転写シート1〜3と、下記中間転写媒体とを装填し、上記した受像シート(樹脂製白色カード)に画像を形成したカードを得た。まず、中間転写媒体の受容層面に、女性の顔写真と文字を解析して得た電気信号を上記装置に設けられたサーマルヘッドに伝達し熱転写を行った。具体的には、第一の着色層部を熱転写し、女性の顔のフルカラー画像を形成した。次に、第二の着色層部を熱転写し上記フルカラー画像の上部に文字画像を形成した。その後、受像シートに、画像が形成された受容層を有する中間熱転写媒体の反対側から熱転写し、女性の顔のフルカラー画像とパール顔料で形成された文字画像とが一体となった画像形成カードを得た。
【0040】
実施例4
中間転写媒体の調製
基材シートと、剥離層と、受容層とからなる中間転写媒体を下記のようにして調製した。
剥離層
下記の組成に従って剥離層を形成する組成物を調製した。この組成物をグラビアコートで、0.8g/mの塗工量で、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる基材シートの表面に塗工し剥離層を形成させた。
アクリル樹脂 88重量部
(三菱レイヨン社製 BR−83)
ポリエステル樹脂 1重量部
ポリエチレンワックス 11重量部
メチルエチルケトン 50重量部
トルエン 50重量部
受容層
受容層の下記の組成に従って受容層を形成する組成物を調製した。この組成物をグラビアコートで、1.5g/mの塗工量で剥離層の表面に塗工し、受容層を形成させた。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂 21 重量部
(ユニオンカーバイド社製 VYLF−X)
アクリルシリコーン 2.0重量部
トルエン 50 重量部
メチルエチルケトン 50 重量部
【0041】
評価結果
評価試験1および2で得られた画像が形成されたカードの全てを角度をつけて目視したところ、光の反射によりパール顔料で形成された文字画像が肉眼で認識できない角度においては、女性の顔のフルカラー画像のみが肉眼で認識できた。一方、光の反射によりパール顔料で形成された文字画像が肉眼で認識できる角度においては、女性のフルカラー画像の表面にパール顔料で形成された文字画像が肉眼で認識された。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明による印刷方法に使用される熱転写シートを示す。
【図2】図2は、図1に示した熱転写シートにおいて第二の着色層が離型層に直接形成された熱転写シートを示す。
【図3】図3は、図2に示した熱転写シートにおいて保護層部が形成されれていない熱転写シートを示す。
【符号の説明】
【0043】
10 第一の着色層部
20 第二の着色層部
21 第二の着色層
22 剥離層
30 保護層部
31 接着層
32 保護層
40 基材シート
50 背面層
60 離型層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面層と、基材シートと、第一の着色層と、第二の着色層と、離形層を備えてなり、
前記背面層の上に、基材シートが積層されてなり、
前記基材シートの表面に、第1の着色層と、前記離形層とが順に積層されてなり、
前記離形層の表面に、第二の着色層が積層されてなるものであり、
第一の着色層が、着色剤として顔料または染料を含んでなり、
第二の着色層が、着色剤として顔料または染料で着色されたパール顔料を含んでなるものである、熱転写シート。
【請求項2】
背面層と、基材シートと、第一の着色層と、第二の着色層と、離形層と、保護層と、接着層を備えてなり、
前記背面層の上に、基材シートが積層されてなり、
前記基材シートの表面に、第1の着色層と、離形層とが順に積層されてなり、
前記離形層の表面に、第二の着色層と、前記保護層が順に積層されてなり、
前記保護層の表面に、前記接着層が積層されてなるものであり、
第一の着色層が、着色剤として顔料または染料を含んでなり、
第二の着色層が、着色剤として顔料または染料で着色されたパール顔料を含んでなるものである、熱転写シート。
【請求項3】
前記離形層の表面に、第二の着色層が、別の離形層を介して積層されてなる、請求項2に記載の熱転写シート。
【請求項4】
第1の着色層が、イエロー、マゼンタ、シアンを含んでなるものであり、
第1の着色層が、前記基材シートの表面に、イエロー、マゼンタ、シアンの順で積層されてなる、請求項1〜3の何れか一項に記載の熱転写シート。
【請求項5】
前記パール顔料含む第一の着色剤又は前記パール顔料含む第二の着色剤が、蛍光剤または蛍光増白剤をさらに含んでなるものである、請求項1〜4の何れか一項に記載の熱転写シート。
【請求項6】
前記パール顔料が、雲母の表面を金属酸化物で被覆したものである、請求項1〜5の何れか一項に記載の熱転写シート。
【請求項7】
前記金属酸化物が酸化チタン及び/または酸化鉄である、請求項6に記載の熱転写シート。
【請求項8】
前記剥離層に蛍光剤が含まれてなる、請求項1〜7の何れか一項に記載の熱転写シート。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱転写シートを用いて熱転写を行い、基材に画像を形成する方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法で画像が形成された、基材。
【請求項11】
基材シートと、剥離可能とされた転写部とを含んでなり、
該転写部が請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱転写シートから熱転写により転写された画像を受容する受容層を有するものである、中間熱転写シート。
【請求項12】
熱転写シートと、中間熱転写シートとを用いて基材に画像を形成する方法であって、
第一の着色層または第二の着色層を含んでなる熱転写シートを熱転写して、中間転写シートの受容層に画像を形成し、
前記受容層を前記画像が形成されていない側から熱転写して、基材に画像を形成することを含んでなり、
前記熱転写シートが、請求項1〜8のいずれか一項に記載されたものであり、
前記中間転写シートが、請求項11に記載されたものである、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法により画像が形成された、基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−202598(P2009−202598A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128182(P2009−128182)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【分割の表示】特願2003−337907(P2003−337907)の分割
【原出願日】平成15年9月29日(2003.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】