説明

ヒトの母乳を搾り出すための乳房シールド

管状のコネクタ(40)及びその上に一体的に形成され、母親の乳房の上に置かれるように意図された漏斗状部(42)を有し、漏斗状部(42)はコネクタ(40)から離れる自由な側に向かって広がる乳房シールド(4)であり、漏斗状部(42)の乳房側端部から連続的に、乳房側端部の反対側にあるコネクタ(40)のポンプ側端部まで延び、母親の乳房に真空を付加して搾乳された母乳を流れ出させる通路がある乳房シールド。本発明によれば、漏斗状部(42)はコネクタ(40)よりも柔軟なデザインであり、漏斗状部(42)は、通路(43)の第一開口角(α)を備えたその長さの大部分にわたって延びる主領域(420)と、通路(43)の第二開口角(α)を備えた乳房側末端領域(421)を有し、使用していない状態において、第一開口角(α)は、第二開口角(α)よりも小さく、使用状態において、少なくとも第一開口角(α1)は、乳房シールド(4)上の軸方向の圧力によって拡大され得る。この乳房シールドは装着するのに快適であり、死容積を最小限にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の前提部によるヒトの母乳を搾り出すための乳房シールド、及び請求項10の前提部による乳房シールドセットに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの母乳を搾り出すための装置は良く知られている。原則として、装置には、二つの異なるタイプがある。第一の装置のタイプは、手動操作でなされるものであり、搾出操作に必要な陰圧が真空ポンプの手動の作動により発生する。第二のタイプの装置においては、真空ポンプを電力供給ネットワークに接続することを可能にし、及び/又は、蓄電池若しくは他のエネルギーアキュムレータによって操作することを可能にして、真空ポンプは電気的に操作される。この例には、WO96/22116、US2009/0099511、US2008/0287037、US7094217、及びUS2008/0039781が含まれる。
【0003】
前記真空ポンプは乳房シールドに直接又は真空ラインを通じて接続される。乳房シールドは、通常、乳首を含む母親の乳房の一部を受容するための漏斗状部分を有している。一般に、前記漏斗状部分はある部分に統合されるが、その部分は、空洞の円柱状であり、第一に真空ポンプが直接又は吸引管を通じてその部分に接続され、第二にその部分は同様に直接に又は乳ラインを通じて乳収集容器に接続される。乳房シールドを乳房のサイズに応じて選択することが知られている。特に、母親によって漏斗形状部分のサイズの選択を可能にした乳房シールドセットが知られている。
【0004】
比較的小さな乳房シールドもまた、先行技術において知られている。US6379327は、「ハンズフリー」搾出装置と呼ばれる持ち運び可能なものを開示している。この文脈において、「ハンズフリー」とは、一度スイッチをオンにすると、搾出装置の全てが手を使わずに機能することを意味する。すなわち、ポンプも乳房シールドも手で持つ必要が無い。US327では、この目的のために、小さな漏斗状の乳房シールドが、ストラップを用いて乳房に固定される。第一の管が、乳房シールドから真空ポンプにつながり、ベルトに保持される。第二の管は、乳房シールドから乳収集容器内につながり、それは同じベルトに保持することができる。
【0005】
WO02/102437とWO2008/137678は、同様に「ハンズフリー」搾出装置を示している。ここでは、乳房シールドは、それぞれのケースにおいてポンプの筐体に統合され、同時に陰圧を発生させるための隔膜としての役割を果たしている。
【0006】
US949414は、ブラジャーの下に配置され得る漏斗形状の乳房シールドを開示している。真空が付与されるのではなく、管が、乳房シールドから赤ちゃんにつながり、その赤ちゃんが、管を吸うことにより所望の乳を得ることが意図されている。
【0007】
US6440100は、ブラジャーの下に着用可能な小さい乳房シールドを備えた母乳を搾り出すための装置を示す。乳管は、乳房シールドから乳収集容器につながる。乳収集容器は、真空管を通じて真空源へ接続される。陰圧が乳管を通じて乳房シールドに付与され、乳収集容器は、真空源によって空にされる。乳収集容器内に行き渡る陰圧によって、搾り出された乳は、乳管を通じて今度は乳収集容器へ入ってゆく。代替手段として、乳収集容器それ自体を真空ポンプとして用いることもできる。前記装置は、比較的大きな容積の乳収集容器が同様に空にされる必要があるという不利益を有している。その「死容積」は、装置の性能を制限すると考えられる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、母親が快適に装着でき、空気が充満した死容積を最小限にする、改良された乳房シールドを提供することである。
【0009】
この目的は、請求項1の特徴を有する乳房シールド、及び請求項10の特徴を有する乳房シールドセットにより達成される。
【0010】
本発明の乳房シールドは、管状コネクタと、その上に一体的に形成され、母親の乳房上に置かれることを意図された漏斗状部を有し、前記漏斗状部はコネクタから離れるその自由な側に向かって広がり、前記漏斗状部の乳房側端部から乳房側端部の反対側のコネクタのポンプ側端部まで連続して延び、母親の乳房に真空を付加して搾乳された母乳を流れ出させる通路がある。
【0011】
本発明によると、漏斗状部分はコネクタよりもより柔軟に設計されている。漏斗状部分は、その長さの大部分にわたって延長し、通路の第一の開口角を有する主領域および通路の第二の開口角を有する乳房側端部領域を有する。非使用時には、第一の開口角は第二の開口角よりも小さく、使用時には、少なくとも第一の開口角が乳房シールド上の軸方向の圧力によって拡大する。
【0012】
この乳房シールドそれ自体は、ヒトの母親の乳房の形状に最適に適合し、要件および接触圧に依拠して、乳房ときつく、あるいはそれほどきつくなく連結する。
【0013】
この適合性によって、装着は快適であり、空気あるいは母乳に満ちた死容積が減少する。
【0014】
乳房シールドは乳首の周辺、せいぜい乳輪を囲む程度に小さいことが好ましい。前記乳房シールドが「ハンズフリー」システムにおいて単純に使用できるだけでなく(たとえばブラジャーに装着できる)、前記乳房シールドは、サイズが小さいために、空気が充満した領域をほとんどもたない。これは真空ポンプに好ましい影響を与える。なぜなら、これによって、真空ポンプが必要とする動力はより少なく、したがってより静かに作動する。さらに、前記理由のため、前記真空ポンプもまた小さくできる。
【0015】
さらに、これらの小さい乳房シールドは、シールド内の乳房の組織の動きが小さいという利点を有する。その結果、乳房シールドは組織によりぴったりと密着することができる。その結果、ポンプの吸入力も少なくてすむ。ポンプも同様に小型で静かに作動するように設計できる。
【0016】
公知の乳房シールドおよび赤ちゃんの自然な吸入とは対照的に、本発明の乳房シールドの乳首は、その長さの2.5倍にまで拡大しないようになっている。これは、母親、特に乳首に痛みを感じる母親にとって好ましい。
【0017】
非使用時においては、乳房シールドの第一の開口角の標準値は5度以下(5度かそれより小さい)であり、第二開口角は90度から160度である。使用時、および、付加される軸方向の圧力によって、少なくとも第二開口角は120度まで、あるいは好ましくは160度まで拡大する。
【0018】
漏斗形状部は好ましくは乳房側の直径が5ミリから40ミリであり、長さが10ミリから40ミリである。それによって、使用時には、乳首、そしてせいぜい乳輪が乳房シールドによって囲まれる。乳房組織の乳管は、好ましくは乳房シールドによって囲まれない。
【0019】
コネクタと漏斗状部分の間には、好ましくは、通路の第三開口角を有する移行領域があり、第三開口角は装置非使用時の第一開口角より大きい。
【0020】
第三開口角の標準値は60度から150度である。
【0021】
主領域は、好ましくは移行領域と直接隣接する。末端領域もまた好ましくは主領域と直接隣接する。
【0022】
好ましい実施形態において、コネクタは、漏斗部分の壁厚よりかなり大きい壁厚を有する。付加的あるいは代替的に、コネクタはより大きなショア硬度を有する素材からなる。
【0023】
コネクタと漏斗部の間の移行領域には、好ましくは外側係止があり、コネクタの外周部に突出している。
【0024】
もしコネクタの外周部が漏斗部に向かって円錐状に広がるように設計されていたならば、コネクタは凹部に簡単に挿入できる。
【0025】
本発明による前記乳房シールドは、好ましくはシリコーンから製造され、好ましくはショアA硬度が30から70である。漏斗部は好ましくはショアA硬度がおよそ50であり、コネクタはショアA硬度がおよそ70である。
【0026】
比較的小型でコンパクトな前記乳房シールドを簡単に手で持てるように、前記乳房シールドは好ましくは、接続部を有する乳房シールドセットに設置される。接続部は、封止された状態で乳房シールドコネクタを受容し、前記接続部は円筒状に設計され、コネクタを受容するブラインドホールが形成されるように、一方の側で底部によって閉じられる。少なくともひとつ、好ましくはひとつのみのポート開口部があり、そのポート開口部は乳房シールドの通路に、流体連結として接続している。
【0027】
組み立てられた状態では、乳房シールドから離れたコネクタの末端側は、接続部の底部から離れたところにあるのが好ましい。前記少なくともひとつのポート開口部は、好ましくは接続部内に偏心状に配置される。
【0028】
少なくともひとつのポート開口部が接続部の上部に配置され、接続部に「この側を上に」という印がついていたとすれば、搾乳作業中に、空気の泡が接続部内に停滞するのが避けられ、空気が充満した「死容積」がなくなる。
【0029】
円錐状のコネクタをより簡単に挿入させるために、接続部のブラインドホールも底部に向けて径が小さく、先細にいる。
【0030】
接続部は好ましくは堅く設計され、このためコネクタの挿入が簡単になり、安定感が増す。この部分はゆえにより簡単に保持されるか固定される。
【0031】
乳房シールドは好ましくはどんなものであれインサートを有さず、単に上述の要素のみから成る。
【0032】
本発明の乳房シールドは、すべての種類の乳房ポンプと組み合わせることができる。しかし、搾乳中に、空圧システムから水圧システムへと変わる乳房ポンプと共に使用することは有利である。すなわち、最初、乳房シールドに真空を付加した同じラインが搾乳した乳を運び、それゆえ乳は媒体となり、母親の乳房からさらなる乳を流出させる。
【0033】
ヒトの母乳を搾るためのこのような装置は、母親の乳房に当てがうための本発明の乳房シールド、真空を発生させるための真空ポンプ、乳房シールドをポンプチャンバーに接続させるラインを有し、発生した真空を乳房シールド、そしてチャンバーに送ることを目的としている。このラインのポンプ側は、前記チャンバーの第一のポートで終わる。本発明によると、チャンバーは、乳収集容器に連結するための第二のポートを有している。チャンバー内の二つのポートは、流体通路として互いに連結している。搾乳作業の最中、このラインは乳房シールドにおいて搾られた母乳をチャンバーに送るために使用する乳ラインを形成する。乳は次にチャンバーから乳収集容器に運ばれる。
【0034】
前記システムの利点は、既に絞られた乳が乳房シールドを暖めるので母親には快適であるだけではない。さらに、ただひとつのラインのみを必要とするので、特に「ハンズフリー」設計では、このラインを衣服の中に目立たないように隠すことができる。
【0035】
システム全体が乳で溢れ、古典的な意味における真空ラインはもはや存在しないため、乳を搾り出すために、より低いポンピング力が必要とされる。空気出力の典型的な値は、最大で50ml/minであり、乳出力の典型的な値は、最大で100ml/minである。それ故に、真空ポンプはより小さく、より軽く構成することができる。これは、すなわち、見る者に対してより目立たないことを意味する。母親は前記真空ポンプをより目立たないように使用できる。さらに、より小さなポンピング力しか要求されないため、使用している間、真空ポンプはより静かであり、それはすなわち快適さとめだたなさを向上させる。
【0036】
システム全体が、すなわち真空ポンプのポンピングユニット側又は駆動部側の領域以外のシステム全体が、乳で溢れ、空気で満たされた非常に小さな死空間のみしか存在しないため、どのようなものであれ付加された真空は、より簡単に制御することができる。乳房シールドに存在する陰圧はまた、真空ポンプで発生する真空により早く対応する。
【0037】
前記乳ラインは様々な方法で実現できる。好ましい実施形態において、間仕切り壁が存在し、これが真空ポンプ駆動部とラインを互いに分離している。結果として、チャンバーは間仕切り壁によって乳房シールド側領域と駆動部側領域とに分離される。その2つの領域は互いに完全に分離され、隔壁を通じてのみ互いに連絡する。それ故、乳は真空ポンプの駆動部側領域に入り込むことがなく、また駆動部側領域からの汚れや空気が乳誘導ラインに入り込まず、よって乳房シールドにも乳収集容器にも入り込まないことが保証される。前記間仕切り壁は、好ましくは隔壁である。
【0038】
好ましい実施形態において、前記隔壁が駆動されて、搾り出された乳を運搬する役割を果たす。結果として、乳は、乳房シールド、乳収集容器、及び真空ポンプの互いの相対位置から独立して、搾り出すことができる。母親は、例えば横になっていてさえ搾乳できる。母親は、屈んでさえよく、一般に非常に自由に動いてよいため、これは特に「ハンズフリー」の実施形態において最適である。
【0039】
非常に幅広い種類の真空ポンプが、本発明の真空伝送及び乳誘導ラインと共に用いることができる。必須ではないが好ましくは、一つの隔壁が、乳の輸送と媒体の分離の両方の各ケースにおいて用いられる。
【0040】
真空ポンプは好ましくは隔壁ポンプであり、チャンバーは真空ポンプの真空発生ポンプチャンバーであり、隔壁は真空発生のために用いられるポンプチャンバーの隔壁である。
【0041】
乳房シールドはまた、直接、かつ上述したラインを使用することなく、真空ポンプの筐体に連結させることができる。それにもかかわらず、水圧ポンプシステムに変えることができる。この乳房シールドによってヒトの母乳を搾り出す、好ましい真空ポンプは、駆動部及び駆動部により周期的に駆動される隔壁を有し、その隔壁はチャンバー内に配置されて、チャンバーを駆動部側部分と乳房シールド側部分とに分離し、その乳房シールド側部分は乳房シールドへの接続を作り出す真空ポートを有している。本発明によれば、チャンバーの乳房シールド側部分は、さらに乳収集容器への接続を作り出す乳ポートを備えており、真空ポートと乳ポートは、チャンバーの乳房シールド側部分を通じて流体連結の観点から互いに連結されている。好ましくは、前記真空ポンプは隔壁ポンプであり、チャンバーは真空発生ポンプチャンバーである。
【0042】
好ましい実施形態において、真空ポンプは電気隔壁ポンプである。この場合、隔壁ポンプにおける隔壁は、好ましくは、乳の駆動推進と間仕切り壁としての役割を果たす上述した隔壁を形成する。隔壁の駆動は、好ましくは同時にポンプチャンバー内に真空を発生させ、乳の流れを運ぶ役割を果たす。隔壁の3つの機能によって、真空はより良く制御され得る。
【0043】
隔壁は、好ましくは実質的に円形の輪郭を有している。隔壁は、好ましくはその中心領域において駆動され、好ましくはその中心において駆動される。
【0044】
他のタイプの隔壁ポンプもまた、用いることができる。隔壁のない代替ポンプもまた使用しても良い。さらに、手動ポンプを使用しても良い。
【0045】
3つの要素の組み合わせ
・真空を運び、乳を運ぶライン
・3つの機能を備えたポンプチャンバー隔壁
・小さいデザインで死容積を防ぐ乳房シールド
は、極端に小さく、静かで、さらにどのようなタイプの使用、特に「ハンズフリー」での使用に最適な装置となる。
【0046】
さらなる有利な実施形態及びその方法の変形例は、従属項に示される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、ヒトの乳房に比較的大きな接触圧でとりつけられた本発明の乳房シールドの縦方向断面図である。
【図2】図2は、ヒトの乳房により小さな接触圧でとりつけられた、図1に示す、本発明の乳房シールドの縦方向断面図である。
【図3】図3は、第一実施形態における接続部を有する、図1による乳房シールドの縦方向断面図である。
【図4】図4は、第二実施形態における接続部の縦断面図である。
【図5】図5は、第三実施形態における接続部の縦断面図である。
【図6】図6は、図3の接続部の縦断面図である。
【図7】図7は、第一実施形態におけるヒトの母乳を搾るための本発明による装置の分解図であり、真空ポンプの側壁は示していない。
【図8】図8は、使用のために組み立てられた図7による装置を示し、真空ポンプの側壁は示していない。
【図9】図9は、第二実施形態における本発明の装置を示し、真空ポンプの側壁は示していない。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の好ましい実施形態は、以下に図面を参照して説明されるが、それは単なる説明であって、限定されるべきものではない。図において、同じ部分には同じ符号を付与している。
【0049】
図1から3は、本発明による乳房シールド4の好ましい実施例を示している。図3において、乳房シールドセットは接続部3を有しているのがわかる。
【0050】
図1は女性の乳房Bにとりつけられた本発明の乳房シールド4を示している。乳房シールド4は、コネクタ40、漏斗状部42、それらを連結する移行領域44を有する。好ましくは、コネクタ40と漏斗状部42の間に、放射状および外方向に向かって突出するフランジ41がある。連続した通路43が、乳房シールドが二つの対向する末端部で開くように設計されるべく、乳房シールド4全体にわたって延びている。乳房シールド4は、好ましくは回転対称的に設計されている。乳房シールド4は好ましくは、特にインサートなど、どんなものであれ更なる要素を有さない。
【0051】
乳房シールド4は、一つの部品としてデザインされることが好ましい。それは、通常はプラスチック、好ましくはシリコーンからなる。
【0052】
コネクタ40は、固形のデザインで、言い換えれば比較的堅いデザインであり、接続部3への接続の役割を果たす。それは漏斗状部42の壁厚よりもずっと大きな壁厚を有している。この例において、コネクタ40は、その外周において円錐形であり、好ましくは回転対称に設計される。円錐形状は、接続部3への挿入を容易にし、加えて接続部3への接続の密着性を増加させる。その材料により接続部においてわずかに圧迫されるコネクタ40によって、さらに密着性が得られる。この目的のため、コネクタ40の外側の直径は、接続部3の内側の直径よりもわずかに大きくしてある。コネクタ40の典型的な外側の直径は、8mmから40mmである。典型的な長さは、5mmから40mmである。
【0053】
漏斗状部42は母親の乳房を受容する役割を果たす。前記漏斗状部は、非常に柔軟に構成することが好ましい。それは実質的にコネクタ40よりもより柔軟で柔らかいデザインになっている。その柔軟性により、前記漏斗状部はその形状を乳房の形状に適用させることができる。それはここではコネクタ40の壁厚よりもずっと薄い壁厚を有している。もう一つの方法として、コネクタ40と漏斗状部42はまた同じ壁厚を有していても良く、この場合、コネクタ40はより大きなショアA硬さを有する材料から作られるか、又は補強を有すことが好ましい。漏斗状部42は、約50のショアA硬さを有することが好ましく、コネクタ40は、約70のショアA硬さを有することが好ましい。
【0054】
図3は、使用されていないときの乳房シールド4を示している。漏斗状部42は、主領域420と前方の乳房シールド側端部領域421の少なくとも2つの領域を有している。端部領域421は乳房シールドの乳房シールド側端部を形成し、ゆえに自由に終端する。
【0055】
使用されていないとき、主領域420は第一開口角αを有し、端部領域は第二開口角αを有している。第一開口角αは、第二開口角αよりも小さい。さらに、壁面は、端部領域421において外側に折り曲がっていることが好ましい。図1及び2に見ることができるように、第一開口角αは、端部領域421が最適に乳房の形状に適応できるように、乳房上の軸方向の接触圧により拡大されることができる。
【0056】
図に見られるように、主領域420は、端部領域421に直接接している。他の端部において、主領域420は、移行領域44に直接接している。
【0057】
移行領域44には、さらに第三開口角αがあり、これもまた主領域420の第一開口角αよりも大きい。前記第三開口角は主領域の角度を広げるための予め決定された値としての役割を果たす。
【0058】
使用されていないときの角度は、好ましくは第一開口角αが5°以下(a1≦5°)、第二開口角αが90°〜160°、第三開口角αが60°〜150°である。使用されるとき、第一開口角αは好ましくは少なくとも10°の角度まで広げられ得る。
【0059】
漏斗状部42は、10mmから40mmまでの長さLを有する。前端領域の直径Dは、好ましくは5mmから40mmであり、より好ましくは20mmから40mmである。結果として、それは乳首をとり囲み、乳輪はとり囲まないか、せいぜい部分的、あるいは全体的にとり囲むが、乳房の残部はとり囲まないような小さなサイズになっている。これは、赤ちゃんにより口に入れられる乳房部分にだいたい一致する。漏斗状部42は、コネクタ40の領域で円錐台状に設計されており、前記漏斗状部は乳房に向かって開口している。前方、すなわちその乳房側の縁は、コネクタ側部分よりもより大きく外側に広がっている。
【0060】
乳房シールド4又は少なくとも漏斗状部42は柔軟に構成されるため、母親は接触圧を選択することにより、自身で実際に乳房シールド4により乳房をどの程度囲むかを選択することができる。接触圧は、漏斗状部42への軸方向の圧力と母親の乳房からの反対圧力から生み出される。図1において、接触圧は比較的大きく、漏斗状部42は拡張されている。また、図2では、圧力はより小さく、漏斗状部42は単に乳首を取り囲んでいる。接触圧を選択することにより、乳房への密着性もまた調整することができ、それ故に搾出操作は母親にとってできるだけ心地よいように調整することができる。
【0061】
図3に示すように、乳房シールド4は接続部3に差し込まれている。接続部3はまた、小さいけれど、可能な限り堅く構成することが好ましい。前記接続部は、その外周においては円筒状のデザインにすることが好ましく、その内周においては円錐台状又は円錐状にすることが好ましい。それはU字型の断面、すなわち一つの端部で開口し、他の端部で閉じるように設計されている。それ故、ブラインドホールが存在し、これに乳房シールド4のコネクタ40は係止部41まで押し込まれることができる。図3において、乳房シールド4はまだ完全には押し込まれていない。しかしながら、見ての通り、完全に押し込まれた状態では、コネクタ40の端部と接続部3の後壁との間には間隙があり、その間隙は通路43から接続部3のポート開口部31への液体通路を形成することがわかる。
【0062】
前記ポート開口部31は、真空ライン及び/または乳ラインを連結する。もし真空ライン及び乳ラインが別々に存在していれば、接続部3にはゆえに二つのポート開口部が存在する。前記ポート開口部は逆止めバルブを有していてもよい。真空ラインは真空ポンプにつながり、乳ラインは乳
収集容器につながる。
【0063】
これらのラインは開口部に単に差し込むこともできるが、接続部3に固定されてもよい。あるいは、ラインに接続するための、たとえばコネクタなどの、プラグイン又はプラグオン手段を用いても良い。
【0064】
少なくとも一つのポート開口部31は、異なる場所に設けても良い。図3では、それは接続部3の後壁の上部領域に配置されている。図4では、それは後壁の中央に配置されている。図5では、ケーシングに配置されているものの後壁に近い後部領域に配置されている。好ましくは、それはまた上部領域に配置される。図6はまた、乳房シールド4が差し込まれていない、図3による状況を示している。
【0065】
もし、特に乳ラインのためのポート開口部31が最上部に配置されると、接続部3の残留空気が乳と共に吸引されて死容積は再度低減する。使用状態において、乳房シールド4と接続部3はもはやどのような空気チャンバーも有しない。その隙間は、もしまだ存在すれば、乳で満たされる。ポート開口部31が、使用中に実際に上方を向くように、それに相当する印が、例えば接続部3において示され得る。
【0066】
前記乳房シールドはすべての種類の乳房ポンプとともに使用できる。しかし、ヒトの母乳を搾るには、図7から9に示される装置と共に使用するのが有利である。
【0067】
図7及び8は、この種の装置の第一の実施形態を示している。図示された装置は、真空ポンプ1、第一のライン2、接続部3、乳房シールド4、逆止めバルブ5、第二のライン6及び乳収集容器7を有している。
【0068】
乳房シールド4は、接続部3と第一柔軟ライン2を通じて真空ポンプ1に接続している。第二柔軟ライン6は、真空ポンプ1から乳収集容器7へ接続し、前記接続には逆止めバルブ5が設けられる。2つの柔軟ライン2、6は、好ましくはチューブであり、特にシリコーンからなるものである。
【0069】
図9において説明されるように、乳収集容器7はまた、もう一つの方法として、真空ポンプ1に直接固定しても良い。この目的のために、乳収集容器7上に適切な形状のアダプタ70があることが好ましく、前記アダプタは、真空ポンプの筐体10に着脱可能に接続される。
【0070】
真空ポンプ1は、上述した筐体10を有しており、図において筐体10の側壁は図示されていない。その結果、筐体10の内部を見ることができる。
【0071】
筐体10には電気モータ11がある。前記電気モータは主電源及び/又はバッテリーにより操作され得る。動力転送部12は、ここではモータに接続するピストン棒であり、モータの回転運動を直線運動に転送する。接続棒12は、その第二端部が隔壁14に接続されている。隔壁14は、ポンプチャンバーの一部を形成する、筐体10の凹部に配置されている。筐体10に着脱可能に接続されるカバー13は、その場所で隔壁14を固定する。
【0072】
前記駆動部の代わりに、他のタイプの駆動部、特に手動駆動もまた用いることができる。
【0073】
カバー13は、好ましくは筐体10にねじ止めされる。その他のタイプの接続もまた可能である。カバー13は、前記カバーがポンプチャンバーの第二の部分を形成するように、凹部もまた有している。ポンプチャンバーの2つの部分は隔壁14によって互いに分離されている。カバー13は一つの部品又はいくつかの部品によって形成することができる。
【0074】
カバー13は単一のあるいはたくさんの部分として形成されている。それは、堅く閉めるだけでなく、隔壁真空ポンプのためのバルブプレートとしての役割を果たす。ポンプチャンバーのカバー側あるいは乳房側部分に真空を作らせる通路及びバルブ(ここでは詳細を示していない)は、それゆえ、カバー13に配置される。
【0075】
隔壁ポンプの操作の原理は、よく知られているため、ここでは詳細について説明しない。駆動手段によって、ここではモータ11と接続棒12によって、隔壁は、周期的に前後に動き、ポンプチャンバーの乳房シールド側又はカバー側部分に、陰圧が発生する。ここで説明した駆動部に変えて、隔壁14を周期的に運動させるために適切な他のタイプの動力もまた使用可能である。ポンプと制御要素の操作に必要な電子装置はここでは説明しない。公知の手段を使用して良い。ポンプは一時的に一定の周期で操作でき、又は従来知られているように、吸引カーブの形、頻度、及びその強さを、赤ちゃんの吸引行動及び/又は母親の要求に適したに合わせて良い。
【0076】
カバー13において、すなわちバルブプレートにおいて、第一の排気口130があり、これはその周囲をポンプチャンバーのカバー側部分に接続する。前記排気口130は、第一のライン2のための第一のポートとして働く。第二の排気口131、これもまたポンプチャンバーのカバー側と乳房側部分をその周囲にそれぞれ接続しており、第二ポートとしてデザインされている。前記第二ポートには、逆止めバルブ5が備えられている。ここではカモノハシバルブが使用され、これはコネクタにプラグ接続される。しかしながら、他のタイプのバルブもまた使用できる。
【0077】
もし装置が使用されるなら、乳房シールド4は少なくとも乳首を取り囲むように母親の乳房に配置される。好ましくは、乳輪がせいぜい追加的に乳房シールド4によって取り囲まれる。真空ポンプ1は公知の方法で電源が入れられ操作される。ポンプチャンバーで発生した真空は第一のライン2から空気を抜き、乳房シールド4に陰圧が生じる。結果として、母親の乳房から乳が搾乳され、乳房シールド4と接続部3を通過して、第一のライン2に入る。乳は第一のポート130を通過してポンプチャンバーのカバー側部分に流れ込む。搾られた乳はポンプチャンバーから出発して第二ポート131と逆止めバルブ5を通過し、第二のライン6を経由して(図8参照)、あるいは実施形態によっては直接に(図9参照)、乳収集容器に入り込む。従って、乳を運ぶための別のラインはなく、第一のライン2が吸引ライン及び乳運搬ラインとして同時に機能する。従って、初期の空気式のポンプ動作の後、装置は水力式のポンプ動作に変わる。これは赤ちゃんの自然な吸引に一層近いものである。
【0078】
ポンプチャンバーの隔壁14は3つの機能を有している。第一に、それは隔壁真空ポンプの隔壁を形成し、それによってポンプチャンバーに真空を発生する。第二に、それはポンプチャンバーのポンプ側部分における空気と、ポンプチャンバーのカバー側部分における乳の間に間仕切壁を形成する。それ故に、それは分離媒体の手段としての役割を果たす。その結果、それは乳がポンプユニットへ入り込むことを防止する。しかしながら、それはまたポンプユニットからの汚れが第一及び第二のライン2、6へ入り込むことも防止する。第三に、ポンプチャンバーにおける前記隔壁の周期運動が、隔壁による乳の搬送と輸送をもたらす。隔壁14の前記第三の機能によって、搾乳の間、乳収集容器7、乳房シールド4、及び真空ポンプ1は、お互いに独立した位置に配置することができる。例えば、乳収集容器7は、真空ポンプ1及び/又は乳房シールド4の上に配置させることができる。真空ポンプ1はまた乳収集容器7及び/又は乳房シールド4の上に配置して良い。これにより母親は寝そべっている間でも搾乳可能となり、あるいは座っている場合に、乳収集容器7と真空ポンプ1を棚や小さい子供の手が届かない高い壇に配置することができる。
【0079】
図7から9の例では、0〜300mmHgの陰圧が好ましくは発生する。ポンピングの周期は、毎分5から120サイクルにすることが好ましい。
【0080】
逆止めバルブ5は、十分な圧力がある時、すなわちポンプチャンバーが十分に乳に満たされている時にのみ開くことが好ましい。その結果、空にされるべき死容積は、最小限に保つことができる。
【0081】
本発明の乳房シールドは、母親にとって装着が快適であり、空気あるいは乳で満たされた死容積を、搾乳中に最小限に減らす。
【符号の説明】
【0082】
1 真空ポンプ
10 筐体
11 モータ
12 動力転送装置
13 カバー
130 第一のポート
131 第二のポート
133、133’ 凹部
14 隔壁
2 第一のライン
3 接続部
30 底部
31 ポート開口部
4 乳房シールド
40 コネクタ
41 係止部
42 漏斗状部
420 主領域
421 末端領域
43 通路
44 移行領域
5 逆止めバルブ
6 第二のライン
60 バルブキャップ
7 乳収集容器
70 アダプタ
B 乳房
D 漏斗状部の末端領域の径
L 漏斗状部の長さ
α1 第一開口角
α2 第二開口角
α 第三開口角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの母乳を搾るための装置で用いる乳房シールド(4)であって、前記乳房シールド(4)が、管状コネクタ(40)と、その上に一体的に形成され、母親の乳房(B)上に置かれることを意図された漏斗状部(42)を有し、前記漏斗状部(42)は前記コネクタ(40)から離れるその自由な側に向かって広がり、前記漏斗状部(42)の乳房側端部から乳房側端部と反対側の前記コネクタ(40)のポンプ側端部まで連続して延び、母親の乳房に真空を付加して搾乳された母乳を流れ出させる通路(43)があり、前記漏斗状部(42)は前記コネクタ(40)よりも柔軟なデザインであり、前記漏斗状部(42)は、前記通路(43)の第一開口角(α)を備えたその長さの大部分にわたって延びる主領域(420)と、前記通路(43)の第二開口角(α)を備えた乳房側末端領域(421)を有し、使用していない状態において、前記第一開口角(α)は、前記第二開口角(α)よりも小さく、使用状態において、少なくとも前記第一開口角(α)は、前記乳房シールド(4)上の軸方向の圧力によって拡大され得ることを特徴とする乳房シールド。
【請求項2】
前記漏斗状部(42)は5mm〜40mmの乳房側直径(D)と、10mm〜40mmの長さ(L)を有し、使用状態において、乳首及びせいぜい乳輪が乳房シールド(4)によって囲まれる請求項1に記載の乳房シールド。
【請求項3】
前記コネクタ(40)及び前記漏斗状部(42)の間に前記通路(43)の第三開口角(α)を有した移行領域(44)があり、使用していない状態において、前記第三開口角(α)は前記第一開口角(α)よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の乳房シールド。
【請求項4】
前記主領域(420)が直接前記移行領域(44)に隣接するか及び/又は前記末端領域(421)が直接前記主領域(420)に隣接することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の乳房シールド。
【請求項5】
前記コネクタ(40)が前記漏斗状部(42)の壁厚よりもより厚い壁厚を有していることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の乳房シールド。
【請求項6】
前記コネクタ(40)の外周部を越えて突出する外部係止部(41)が、前記コネクタ(40)前記漏斗状部(42)の間の前記移行領域(44)に存在することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の乳房シールド。
【請求項7】
前記コネクタ(40)の外周部が、前記漏斗状部(42)に向かって円錐状に広がっていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の乳房シールド。
【請求項8】
シリコーンからなることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の乳房シールド。
【請求項9】
前記漏斗状部(42)がショアA硬度およそ50を有し、前記コネクタ(40)がショアA硬度およそ70を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の乳房シールド。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の乳房シールド(4)および前記乳房シールド(4)の前記コネクタ(40)を受容するためのコネクタ(3)を封止した状態で有する乳房シールドセットであり、前記コネクタ(3)が円筒状で、前記コネクタ(40)を受容するためのブラインドホールが形成されるように基底部によって一端で閉じており、前記乳房シールド(4)の前記通路(43)と流体連結によって接続している少なくとも一つのポート開口部(31)が存在することを特徴とする、乳房シールドセット。
【請求項11】
組み立てられた状態で、前記コネクタ(40)の乳房シールドから離れた先端部が、前記コネクタ(3)の底部から離れたところで終わっている、請求項10に記載の乳房シールドセット。
【請求項12】
前記少なくとも一つのポート開口部(31)が、前記コネクタ(3)に偏心的に配置されていることを特徴とする、請求項10及び11のいずれかに記載の乳房シールドセット。
【請求項13】
前記少なくとも一つのポート開口部(31)が、前記コネクタ(3)の上部領域に配置されており、前記コネクタ(3)が「この面を上に」と定義する印を有していることを特徴とする、請求項12に記載の乳房シールドセット。
【請求項14】
前記コネクタ(3)の前記ブラインドホールが、前記底部に向かって径が小さく、先細になっていることを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項に記載の乳房シールドセット。
【請求項15】
前記コネクタ(3)が堅く設計されていることを特徴とする請求項10から14のいずれか一項に記載の乳房シールドセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−505087(P2013−505087A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530067(P2012−530067)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/CH2010/000226
【国際公開番号】WO2011/035448
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(503465052)メデラ ホールディング アーゲー (40)
【Fターム(参考)】