説明

ヒトの眼の高次収差を補正するための装置および方法

【課題】非切開的かつ繰返し可能な態様でもってヒトの視力システムを矯正すること。
【解決手段】波面収差器コンタクトレンズであって、内側レンズと、外側レンズと、少なくとも1つの領域を有した放射線硬化可能樹脂層(104)と、を具備し、少なくとも1つの領域の各々が、所定の屈折率プロファイルを有し、波面収差器コンタクトレンズが、眼に対して設置され得るよう構成され、記屈折率プロファイルが、眼の高次収差と低次収差とのすべての組合せに対応したものとされ、これにより、波面収差器コンタクトレンズが、眼に設置されたときには、眼の高次収差と低次収差との少なくとも1つを実質的に補正し、放射線硬化可能樹脂層が、内側レンズと外側レンズとの間に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの眼の高次収差を補正するための装置に関するものであり、また、そのような装置を製造するための方法に関するものである。より詳細には、本発明は、高次収差を補正するために、ヒトの眼に設置されるよう構成された波面収差器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
反射面と屈折面とを有した従来技術による光学系においては、光学系を通過する光が、近軸光線に限定されることを前提とすることが、特に、光軸近傍を通過し小さな角度に維持されることを前提とすることが、通常的である。しかしながら、実際の光学系では、近軸光線に限定されることが稀であり、そのため、実際の画像は、ガウシアン光学系となって、多くの場合、『完全な』画像から逸脱してしまう。『完全な』画像からのこの逸脱により、光学系には、収差と称されるような歪みが導入される。このような収差は、焦点比が小さな光学系においては、光学軸からの角度が大きいことのために、重大な問題点である。
【0003】
球面のみを有した単色光学系においては、5個の基本的な光線が存在する。すなわち、球面収差と、コマ収差と、非点収差と、像面歪曲と、歪曲収差と、が存在する。多色光において使用するための光学系は、特に色収差といったような、さらなる歪みの原因を有している。
【0004】
光学系内へと収差によって導入された歪みが、そのような光学系の画像平面上における画像の品質を著しく劣化させることにより、そのような収差を低減することは、かなりの利点となる。収差を最小化するために、様々な技術が使用されている。例えば、球面収差またはコマ収差を最小化するために、レンズは、一定の焦点距離を維持しつつ両面の曲率半径が異なるように、『曲げる』ことができる。例えば、Coddington形状因子を使用することが想定できる。また、一方のガラスレンズが正の焦点距離を有しかつ他方のガラスレンズが負の焦点距離を有した他のガラスから形成されているような一対をなすレンズを使用することにより、球面収差を補正することができる。この技術の一例は、『ダブレット』レンズである。『ダブレット』レンズにおいては、2つのレンズが、対向面上においては同じ曲率半径を有しており、互いに接着されている。
【0005】
様々な収差を最小化するために利用可能な様々な技術にもかかわらず、多くの場合、すべての収差を同時に最小化することは困難である。実際、あるタイプの収差を最小化するための光学システムに関する補正は、他の収差を増大させる結果となり得る。このことは、ヒトの眼を光学系として解析する場合には、特に問題である。
【0006】
ヒトの眼は、特に角膜および水晶体は、様々な収差を示すことができる。これにより、眼の性能が劣化し、不鮮明な視力となる。歴史的には、光学収差は、ヒトの視力システムの前方に例えば眼鏡やコンタクトレンズといったような人工的レンズを導入することにより、補正されてきた。より最近では、外科手術によって、より恒久的な補正が行われている。このような技術には、眼内レンズがあり、また、放射状角膜切除術や乱視角膜切除術や自動化された表層角膜移植術や光屈折性角膜切開術やレーザー光線による近視手術(LASIK)といったような角膜の外科手術がある。
【0007】
レンズによる不鮮明視力の補正は、典型的には、例えばピンぼけや乱視といったような低次収差の補正のみに限定されてきた。従来より、例えば3次以上の Zernike多項式によって記述されるような高次収差は、レンズによっては、補正することができない。加えて、レンズ製造の限界や高価さのために、ピンぼけや乱視は、典型的には、個別ステップによって補正されるのみである。各補正においては、4分の1ジオプトールに近くなるように行われる。うまくないことに、4分の1ジオプトールという解像度は、不完全な視力補正であり、患者の眼の性能を制限する。人工的レンズの利点は、視力検査によって決定された新たなレンズへと交換することにより、眼の性能の経時的劣化を補償し得ることである。
【0008】
外科的な手術および技術は、非外科手術的手法と比較して、より恒久的な視力補正をもたらす。眼内レンズは、人工的水晶体であって、欠陥を有した水晶体と交換するようにして、外科手術的に挿入される。角膜手術は、角膜の補正および変更のための様々な外科手術を含んでいる。外科手術の利点は、より高性能の解像度を得るための補正を行い得ることである。しかしながら、経年変化や外傷によって眼の光学性能が変化した場合には、補正のためのさらなる手術を必要とする。あるいは、人工的レンズの付加を必要とする。また、すべての外科手術においては、本来的に、さらなる視力劣化をもたらしてしまうような感染や恒久的損傷というリスクがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第02/26121号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、ヒトの視力に関し、ピンぼけや乱視に加えて、光学的収差を正確に補償し得るような光学部材が要望されている。この光学部材は、経年変化や他の欠陥によって眼の性能が劣化したときには、容易に交換可能なものでなければならない。よって、光学的補正デバイスは、非切開的かつ繰返し可能な態様でもって、ヒトの視力システム内に組み込み得るものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態においては、波面収差器は、一対をなす透明ウィンドウまたはプレートと、これらウィンドウどうしを隔離する層と、を備えている。隔離層は、モノマーと重合開始剤とを含有しており、例えば、放射線硬化可能樹脂から構成されている。当該技術分野においては、様々な放射線硬化可能樹脂が公知である。好ましい放射線硬化可能樹脂は、硬化の程度の関数として、様々な屈折率値を示す。硬化は、紫外放射や可視放射や赤外放射に対しての露光によって誘起される。好ましくは、放射線硬化可能樹脂の硬化は、紫外光に対する露光によって行われる。露光度合いは、放射線硬化可能樹脂がなす表面全体にわたって変更することができ、これにより、所望の独自の波面遅延プロファイルを形成することができる。これにより、理想的な平面波が、波面収差器を通過したときには、波面収差器によって、波面プロファイルが所定に変更される。逆の言い方をするならば、例えばHartmann/Shackセンサによって波面を測定すること等によって、歪曲した波面が既知であれば、そのような収差を伴ったすなわち歪曲した波面収差の補正を、相補的な波面収差器デバイスを形成することによって、得ることができる。つまり、波面収差器デバイスを通過させることによって形成した歪曲波面を使用することにより、補正された平面波を生成することができる。
【0012】
本発明による波面収差器の一製造方法においては、放射線硬化可能樹脂を、複数の発光ダイオード(LED)からなるアレイによって露光する。これらLEDは、選択的に照射され、放射線硬化可能樹脂の様々な領域は、様々な照射レベルでもって露光される。このような照射レベルの相違は、表面にわたって屈折率が様々なに変化しているような波面収差器を形成する。この波面収差器は、複数のサブ領域を備えることができ、各サブ領域内において硬化された放射線硬化可能樹脂の屈折率は、一定であるとともに、隣接するサブ領域の屈折率とは相違している。
【0013】
本発明による波面収差器の代替可能な製造方法においては、放射線硬化可能樹脂を、縮小レンズを介して、複数のLEDからなるアレイによって露光する。これにより、LEDは、放射線硬化可能樹脂の表面上に焦点合わせされた硬化パターンを形成することができる。これにより、同様であるものの、より小型化された硬化パターンを得ることができ、小型化されたサイズの波面収差器を得ることができる。
【0014】
本発明による波面収差器のさらに他の代替可能な製造方法においては、液晶ディスプレイ(LCD)を介して光を透過させることにより、硬化パターンを形成する。非コヒーレントな光源を、拡散部材に隣接して配置することができ、これにより、拡散した光源を得ることができる。このような拡散光は、硬化パターンを有したLCDを介して、波面収差器上へと、伝達することができる。放射線硬化可能樹脂が露光された際には、LCD上の硬化パターンは、所望の屈折率プロファイルを形成する。新たなパターンは、LCD上のパターンを変更することにより、形成することができる。
【0015】
波面収差器の直下には、センサを配置することができる。これにより、硬化パターンの透過像を観測することができる。このセンサからの出力を使用することにより、LCDを通しての光の透過を選択的に変調することができる。これにより、所望の屈折率プロファイルを有した波面収差器を形成することができる。また、これにより、波面収差器の各サブ領域の硬化度合いに関しての動的なモニター手段および制御手段を構成することができる。
【0016】
本発明による波面収差器の他の代替可能な製造方法においては、例えばレーザーといったようなポイント状光源を使用することによって放射線硬化可能樹脂の各領域を選択的に照射することにより、硬化パターンを形成する。この選択的な照射は、走査速度および/または光源強度を変更させつつ、硬化対象をなす樹脂表面の各領域をラスター状に走査することにより、得られる。これにより、放射線硬化可能樹脂の硬化度合いが変化する。これに代えて、光源は、様々な速度および/または強度でもって、波面収差器上にわたって直接的に特定の硬化パターンをトレースすることができる。波面収差器上の走査に関する硬化パターンは、ラスター状とすることも、ベクトル状とすることも、できる。また、特定の波面遅延領域を、波面収差器に対して隣接配置することができ、拡散光によってあるいはコヒーレント光によって露光することができ、所望の屈折率プロファイルを形成することができる。
【0017】
代替可能な実施形態は、ヒトの視力において角膜および水晶体に基づく収差によって誘起された乱視およびピンぼけに関する補正をもたらす。例えば、ヒトの眼における収差または歪曲が既知であって歪曲した波面を形成するものである場合には、そのような収差波面または歪曲波面の補正は、相補的な波面収差器デバイスを形成することにより、得ることができる。つまり、波面収差器デバイスを通過させることによって形成した歪曲波面を使用することにより、平面波を生成することができる。波面収差器デバイスを眼の表面上や角膜の表面上に設置することにより、高次の視力補正を、実現することができる。
【0018】
他の実施形態においては、波面収差器は、一対をなす透明ウィンドウまたはプレートと、これらウィンドウどうしを隔離する層と、を備えている。隔離層は、モノマーと重合開始剤とを含有しており、例えば、放射線硬化可能樹脂(例えば、エポキシ)から構成されている。この放射線硬化可能樹脂は、硬化の程度の関数として、様々な屈折率値を示す。硬化は、例えば紫外放射といったような光に対しての露光によって行うことができる。露光度合いは、放射線硬化可能樹脂がなす表面全体にわたって変更することができ、これにより、所望の独自の波面遅延プロファイルを形成することができる。これにより、理想的な平面波が、波面収差器を通過したときには、波面収差器によって、波面プロファイルが所定に変更される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】波面収差器を示す斜視図であって、波面収差器は、上側透明カバーと、下側透明カバーと、これらの間に介装された放射線硬化可能樹脂層と、を備えている。
【図2】波面収差器を示す平面図であって、波面収差器は、放射線硬化可能樹脂層を囲んでいるとともに放射線硬化可能樹脂を所定容積内に制限する円形バリアを備えており、放射線硬化可能樹脂層は、円形バリア内に形成されていて、様々なサブ領域の間において様々な屈折率を有している。
【図3】図1における3−3線に沿って波面収差器を示す矢視断面図であって、上側および下側の透明カバーの間における放射線硬化可能樹脂層の位置を有している。
【図4】波面収差器を製造するためのシステムを示す図であって、コンピュータによって制御される発光ダイオード(LED)アレイパネルを備え、LEDアレイパネルは、硬化パターンを形成するものであって、硬化パターンは、拡散部材を介することにより波面収差器上へと案内され、これにより、放射線硬化可能樹脂を選択的に硬化させ、特定の所定屈折率プロファイルを形成する。
【図5】波面収差器を製造するためのシステムを示す図であって、LEDアレイパネルを備え、LEDアレイパネルは、硬化パターンを形成するものであって、硬化パターンは、縮小部材を介することにより波面収差器上へと案内され、これにより、放射線硬化可能樹脂を選択的に硬化させ、特定の所定屈折率プロファイルを形成する。
【図6】波面収差器を製造するためのシステムを示す図であって、コンピュータによって制御される液晶ディスプレイ(LCD)を備え、LCDは、硬化パターンを形成するものであって、LCDが光に対して露光されたときには、硬化パターンに対応した光が、LCDを介して波面収差器上へと伝達され、これにより、特定の所定屈折率プロファイルを形成する。
【図7A】波面収差器を製造するためのシステムを示す図であって、ポイント光源を備え、このポイント光源は、波面収差器の表面上にわたって様々な速度でもって移動しかつ様々な強度の光を放出し、これにより、放射線硬化可能樹脂を選択的に硬化させ、特定の所定屈折率プロファイル、あるいは、複数のサブ領域がなす構成、を形成する。
【図7B】波面収差器の屈折率プロファイルを測定するとともに、測定された屈折率プロファイルに応じて、ビーム走査レーザーユニットに対してのフィードバックを行うための方法を示すフローチャートである。
【図8】波面収差器の代替可能な実施形態を示す側面図であって、レンズの形状として形成された透明カバーを備えている。
【図9】波面収差器の代替可能な実施形態を示す側面図であって、下側透明カバーとして塩製ウィンドウを備えて形成されており、溶解したときには、放射線硬化可能樹脂層を露出させ、放射線硬化可能樹脂の硬化後処理を容易なものとすることができる。
【図10】ヒトの眼の光学的収差の補正に関して応用された状況で波面収差器を示す斜視図である。
【図11】図10における11−11線に沿って示す矢視断面図であって、上側および下側の透明カバーの間に位置した放射線硬化可能樹脂層を示している。
【図12】波面収差器を示す正面図であって、放射線硬化可能樹脂層を所定容積内に制限する円形バリアを備えており、放射線硬化可能樹脂層は、様々なサブ領域の間において様々な屈折率プロファイルを有している。
【図13】修正されたヒトの視力システムを示す横断面図であって、図示のようにして波面収差器が設置されている。
【図14】波面収差器の代替可能な実施形態を示す正面図であって、所定容積内において放射線硬化可能樹脂層を規定している硬化済み放射線硬化可能樹脂領域を備えており、放射線硬化可能樹脂層は、様々なサブ領域の間において様々な屈折率プロファイルを有している。
【図15】図14における15−15線に沿って波面収差器の代替可能な実施形態を示す矢視断面図であって、放射線硬化可能樹脂層が、内側および外側の透明カバーの間においてシールされている様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の上記のおよび他の目的や特徴点は、添付図面を参照しつつ、以下の詳細な説明を読むことにより、明瞭となるであろう。複数の図面にわたって、同一の部材または機能的に同様の部材に対しては、同じ参照符号が付されている。
【0021】
図1は、波面収差器を示す斜視図であって、波面収差器は、上側透明カバーと、下側透明カバーと、これらの間に介装された放射線硬化可能樹脂層と、を備えている。
【0022】
図2は、波面収差器を示す平面図であって、波面収差器は、放射線硬化可能樹脂層を囲んでいるとともに放射線硬化可能樹脂を所定容積内に制限する円形バリアを備えており、放射線硬化可能樹脂層は、円形バリア内に形成されていて、様々なサブ領域の間において様々な屈折率を有している。
【0023】
図3は、図1における3−3線に沿って波面収差器を示す矢視断面図であって、上側および下側の透明カバーの間における放射線硬化可能樹脂層の位置を有している。
【0024】
図4は、波面収差器を製造するためのシステムを示す図であって、コンピュータによって制御される発光ダイオード(LED)アレイパネルを備え、LEDアレイパネルは、硬化パターンを形成するものであって、硬化パターンは、拡散部材を介することにより波面収差器上へと案内され、これにより、放射線硬化可能樹脂を選択的に硬化させ、特定の所定屈折率プロファイルを形成する。
【0025】
図5は、波面収差器を製造するためのシステムを示す図であって、LEDアレイパネルを備え、LEDアレイパネルは、硬化パターンを形成するものであって、硬化パターンは、縮小部材を介することにより波面収差器上へと案内され、これにより、放射線硬化可能樹脂を選択的に硬化させ、特定の所定屈折率プロファイルを形成する。
【0026】
図6は、波面収差器を製造するためのシステムを示す図であって、コンピュータによって制御される液晶ディスプレイ(LCD)を備え、LCDは、硬化パターンを形成するものであって、LCDが光に対して露光されたときには、硬化パターンに対応した光が、LCDを介して波面収差器上へと伝達され、これにより、特定の所定屈折率プロファイルを形成する。
【0027】
図7Aは、波面収差器を製造するためのシステムを示す図であって、ポイント光源を備え、このポイント光源は、波面収差器の表面上にわたって様々な速度でもって移動しかつ様々な強度の光を放出し、これにより、放射線硬化可能樹脂を選択的に硬化させ、特定の所定屈折率プロファイル、あるいは、複数のサブ領域がなす構成、を形成する。
【0028】
図7Bは、波面収差器の屈折率プロファイルを測定するとともに、測定された屈折率プロファイルに応じて、ビーム走査レーザーユニットに対してのフィードバックを行うための方法を示すフローチャートである。
【0029】
図8は、波面収差器の代替可能な実施形態を示す側面図であって、レンズの形状として形成された透明カバーを備えている。
【0030】
図9は、波面収差器の代替可能な実施形態を示す側面図であって、下側透明カバーとして塩製ウィンドウを備えて形成されており、溶解したときには、放射線硬化可能樹脂層を露出させ、放射線硬化可能樹脂の硬化後処理を容易なものとすることができる。
【0031】
図10は、ヒトの眼の光学的収差の補正に関して応用された状況で波面収差器を示す斜視図である。
【0032】
図11は、図10における11−11線に沿って示す矢視断面図であって、上側および下側の透明カバーの間に位置した放射線硬化可能樹脂層を示している。
【0033】
図12は、波面収差器を示す正面図であって、放射線硬化可能樹脂層を所定容積内に制限する円形バリアを備えており、放射線硬化可能樹脂層は、様々なサブ領域の間において様々な屈折率プロファイルを有している。
【0034】
図13は、修正されたヒトの視力システムを示す横断面図であって、図示のようにして波面収差器が設置されている。
【0035】
図14は、波面収差器の代替可能な実施形態を示す正面図であって、所定容積内において放射線硬化可能樹脂層を規定している硬化済み放射線硬化可能樹脂領域を備えており、放射線硬化可能樹脂層は、様々なサブ領域の間において様々な屈折率プロファイルを有している。
【0036】
図15は、図14における15−15線に沿って波面収差器の代替可能な実施形態を示す矢視断面図であって、放射線硬化可能樹脂層が、内側および外側の透明カバーの間においてシールされている様子を示している。
【0037】
以下の説明においては、本明細書の一部をなす添付図面を参照する。添付図面は、本発明を実施するに際しての特定の例およびプロセスを、例示している。可能な場合には、複数の図面にわたって、同じ部材または同様の部材を示すために、同じ符号が使用されている。いくつかの例においては、本発明の理解を明瞭なものとし得るよう、多数の特定の詳細が説明されている。しかしながら、本発明は、そのような特定の詳細を使用することなく実施することができ、ある種の代替可能な等価なデバイスおよび/または等価な構成部材を使用して、上記方法を実施することができる。他の例においては、本発明による見地を無用に不鮮明化することがないよう、周知方法や周知デバイスおよび/または周知部材についての説明が省略されている。
【0038】
本明細書においては、『エポキシ』という用語は、様々な硬化可能なモノマーや、プレポリマーや、光や熱や当業者に公知の他の任意の硬化開始手法を適用することによって重合し得るような樹脂、を意味しており、したがって、エポキシファミリーをなす部材に限定されるものではない。本明細書においては、『放射線硬化可能樹脂』という用語は、モノマーや、プレポリマーや、ポリマーや、および/または、好ましくは紫外放射線といったような放射線に対して露光されたときに重合し得るようなおよび/または架橋し得るような混合物、を意味している。
【0039】
まず最初に、図1は、波面収差器の一実施形態が、全体的に符号(100)によって斜視図で示されている。波面収差器(100)は、下側の透明カバー(102)と、放射線硬化可能樹脂層(104)と、上側の透明カバー(106)と、を備えている。
【0040】
波面収差器(100)の形状は、図1に示すように、正方形のカバー(102,106)によって規定されている。しかしながら、図1に示す波面収差器(100)の形状は、単なる例示に過ぎず、任意の形状とし得ることは、理解されるであろう。また、例示の目的のために、透明カバー(102,106)は、図1においては、実質的に平面的なものとして示されている。しかしながら、カバー(102,106)を湾曲したものとし得ることは、理解されるであろう。その場合には、非平面的な波面収差器(100)が得られることとなる。加えて、当業者であれば、波面収差器は、上側および下側の透明カバー(106,102)を使用する必要なく、放射線硬化可能樹脂層のみから構成し得ることを、理解されるであろう。
【0041】
図2は、波面収差器(100)を平面図で示している。例えば円形バリア(108)といったようなバリアを、放射線硬化可能樹脂層(104)を囲むようにして配置することができる。これにより、放射線硬化可能樹脂層(104)を、上側の透明カバー(106)と下側の透明カバー(102)との間に保持することができる。当業者であれば、上側および下側の透明カバー(106,102)を使用する必要なく、放射線硬化可能樹脂層を、眼の上に直接的に配置し得るような形状とし得ることは、理解されるであろう。
【0042】
放射線硬化可能樹脂層(104)は、好ましい実施形態においては、モノマーと重合開始剤とから構成された光硬化可能樹脂とされる。樹脂の屈折率は、樹脂が硬化したときには変化する。樹脂は、放射線硬化可能樹脂の硬化度合いに依存して、樹脂層内における様々な位置の間にわたって変位する。硬化度合いは、放射線硬化可能樹脂内におけるモノマー間の架橋の割合によって決定される。適切な樹脂には、Star Technology, Inc. 社から市販されているVLE−4101(商標名)というUV〜可視光で硬化するエポキシや、Norland Products, Inc.社から市販されている光学的接着剤#63(商標名)というUV硬化可能樹脂、がある。典型的には、樹脂は、300nm〜550nmという範囲のUV光または可視光によって露光することにより、硬化することができる。一般に、本発明による概念は、硬化することによって屈折率が変化するような任意のタイプの放射線硬化可能樹脂に対して、適用される。対応する硬化用光源は、300nm〜3000nmという範囲の波長を有することができる。
【0043】
露光によって屈折率が同様に変化するような、多数の様々な他の適切な放射線硬化可能樹脂が存在することは、理解されるであろう。また、光重合開始剤を使用して長鎖分子へと重合する他のモノマーも、使用することができる。例えば、適切なモノマーは、エポキシドやウレタンやチオール−エンズ(thiol-enes)やアクリレートやセルロースエステルやメルカプトエステルのファミリーから選択することができ、また、幅広いクラスのエポキシから選択することができる。また、例えば、適切な光重合開始剤は、ベンゾインエーテルやベンジルケタールやアセトフェノンやホスフィンオキシドといったようなアルファ劈開型の光重合開始剤や、ベンゾフェノンやチオキサンソンオキシドやカムホルキノンやビスイミダゾールといったような水素抽出型の光重合開始剤や、アリルジアゾニウム塩やアリルスルホニウム塩やアリルオドニウム塩やフェロセニウム塩といったようなカチオン性の光重合開始剤、の中から選択することができる。これに代えて、例えばフェニルホスホニウムベンゾフェン塩や、アリルテルブチルペレステルスや、NMM、といったような他の光重合開始剤を使用することができる。
【0044】
『放射線硬化可能樹脂』という用語は、また、放射線に対する露光によって屈折率を変化させ得るポリマーも意味している。液晶ポリマーは、機械的処理や電磁界の印加といったような様々な手法によって優先的に配向し得るようなメソゲニックユニットから構成されている。例えば、A. Ciferri et al.,“Polymer Liquid Crystals,”Academic Press, New York, 1982;米国特許第5,319,113号明細書;および、米国特許第5,237,076号明細書を参照されたい。屈折率は、好ましくは、メソゲニックユニットの向きを制御することによって、制御される。よって、好ましい実施形態においては、重合開始剤を含むような化学反応は、不要である。当業者には、ポリマーバックボーン内におよび/または側鎖内にメソゲニックユニットを有しているような様々な液晶ポリマーが公知である。側鎖液晶ポリマーが、好ましい。
【0045】
一実施形態においては、特定の波長を有した光源が、モノマー層を照射し、これにより、光重合開始剤が活性化され、放射線硬化可能樹脂の硬化プロセスが開始される。液晶ポリマーの硬化は、好ましくは、熱によって行われる。加熱により、メソゲニックユニットの移動度が増大し、その後、電磁界を印加することにより、メソゲンが所定に配向する。硬化プロセスにより、樹脂の屈折率が変化する。しかしながら、特定波長の光の露光を停止すると、放射線硬化可能樹脂の硬化が停止し、放射線硬化可能樹脂の屈折率変化が停止することは、理解されるであろう。これにより、波面収差器(100)は、光源により、時間と位置とを変化させつつ、放射線硬化可能樹脂層(104)のある種の複数の領域を露光させることによって、形成することができる。これにより、波面収差器は、表面上にわたって様々な屈折率を有することとなる。選択的に硬化された波面収差器は、例えば眼鏡のようにして、眼の前方に配置し得るようなレンズまたはレンズ部材の形態とすることができる。好ましくは、選択的に硬化された波面収差器は、眼の上に設置し得るような形状とすることができる。眼の前方または眼上における波面収差器の配置は、好ましくは、低次のおよび/または高次の収差を補正する。一実施形態においては、コンタクトレンズが、硬化した放射線硬化可能樹脂を備えている。他の実施形態においては、コンタクトレンズが、1つまたは複数のレンズに対して接着された態様で、硬化した放射線硬化可能樹脂を備えている。他の実施形態においては、眼鏡レンズが、液晶ポリマーを備えている。
【0046】
図2においては、様々な屈折率プロファイルが、放射線硬化可能樹脂層(104)内に形成されている様子が示されている。より詳細には、様々な屈折率プロファイルは、領域(110,112,114)によって示されている。これにより、波面収差器(100)は、3個の個別の屈折率値を有している。
【0047】
図2における3個の個別の屈折率値が、単なる例示に過ぎないことは、理解されるであろう。当業者であれば、上記において例示された概念を、任意の数の屈折率プロファイルを備えたシステムに適用し得ること、および、それら様々なプロファイルを、放射線硬化可能樹脂層(104)内に形成し、これにより、実質的に任意の形状としたり実質的に任意の局所的湾曲度合いとし得ることは、理解されるであろう。さらに、放射線硬化可能樹脂層(104)は、例えば画素(109,111,113)といったような複数の画素からなるアレイと見なすことができる。各画素は、選択的に照射して硬化させることができ、これにより、特定の屈折率値の画素とすることができる。
【0048】
さて、図3には、図1における3−3線に沿った波面収差器の矢視断面が図示されている。放射線硬化可能樹脂層(104)は、上側の透明カバー(106)と下側の透明カバー(102)との間に介装されているとともに、バリア(108)によって所定位置に保持されている。放射線硬化可能樹脂層(104)の限定容積は、バリア(108)のサイズと、上側の透明カバー(106)および下側の透明カバー(102)の間の間隔と、によって決定される。好ましい実施形態においては、放射線硬化可能樹脂層(104)の厚さ(116)は、およそ0.0508mm〜2.54mm(0.002インチ〜0.1インチ)とされ、上側の透明カバー(106)の厚さ(118)は、およそ0.508mm〜2.54mm(0.02インチ〜0.1インチ)とされ、下側の透明カバー(102)の厚さ(120)は、およそ0.508mm〜2.54mm(0.02インチ〜0.1インチ)とされる。
【0049】
好ましい実施形態においては、上側の透明カバー(106)および下側の透明カバー(102)は、例えばガラスやプラスチックといったような剛直な透明材料から形成される。ガラスは、屈折率プロファイルの形成に際しての安定的なプラットホームをもたらすけれども、そのような剛直さは、不要である。実際、カバー(102,106)は、例えば透明なポリマーといったようなフレキシブルな材料から形成することができる。適切な透明ポリマーには、限定するものではないけれども、マイラーフィルムや、ポリカーボネートフィルムや、アセテートフィルム、がある。このような材料を使用すれば、様々な屈折率プロファイルを有したフレキシブル波面収差器が得られる。
【0050】
[製造方法]
図4には、波面収差器を製造するためのシステムが、全体的に符号(130)によって示されている。このシステム(130)は、発光ダイオード(LED)アレイパネル(132)を備えている。このLEDアレイパネル(132)は、距離(134)という離間距離でもって互いに隣接配置された複数のダイオード(135,137)を有しているとともに、インターフェース(138)を介してコンピュータ(136)によって制御されている。好ましい実施形態においては、ダイオード(135,137)間の離間距離(134)は、変更可能であり、典型的には、およそ3.175mm(0.125インチ)とすることができる。しかしながら、他の離間距離とすることもできる。拡散部材(140)を、LEDアレイパネル(132)と波面収差器(100)との間に配置することができる。これにより、LEDアレイパネル(132)から放出される光を、拡散させて、より円滑な屈折率プロファイルを形成することができる。
【0051】
製造時には、まず最初に、所望の屈折率プロファイルを決定し、コンピュータ(136)が、LEDアレイパネル(132)が照射すべき特定の発光パターンを決定する。これにより、硬化パターンが生成され、この硬化パターンは、拡散部材(140)を通して波面収差器(100)上へと案内される。例えばLEDアレイパネル(132)内において、特定のLED(135,137)を選択的に発光させることにより、放射線硬化可能樹脂(図示されていない)が選択的に硬化される。この選択的な硬化により、放射線硬化可能樹脂に対する露光時間と露光強度とに対応して、予め決定された特定の屈折率プロファイルが形成される。この選択的な硬化により、波面収差器は、様々な屈折率値を有した複数の領域を有することとなる。よって、例えばLED(135,137)による照射強度および照射時間を変更することにより、波面収差器を、所望の屈折率プロファイルを有したものとして形成することができる。放射線硬化可能樹脂として液晶ポリマーを使用している実施形態においては、LEDアレイは、十分な熱を印加し、これにより、メソゲニックユニットの移動度を高め、その結果、所定強度の電磁界(図示せず)を印加することにより、配向させる。
【0052】
図5には、波面収差器(100)を製造するためのシステムが、全体的に符号(150)によって側面図により示されている。このシステム(150)は、LEDアレイパネル(132)を備えている。各LED(151)は、拡散角度(152)を有した光ビーム(154)を生成する。複数のLEDは、集合的に、硬化パターンを生成する。この硬化パターンは、画像縮小部材(156)を通して案内され、これにより、硬化パターンが、光パターン(158)へと焦点合わせされ、波面収差器(100)上へと案内される。これにより、波面収差器(100)内において放射線硬化可能樹脂(図示されていない)が硬化される。これにより、図2に示すような特定の波面プロファイルが形成される。硬化パターンは、縮小ではなく、拡大することができる。これにより、大面積の波面収差器デバイスを得ることができる。
【0053】
図6には、波面収差器(100)を製造するためのシステムが、全体的に符号(170)によって示されている。このシステム(170)は、光源(172)と、この光源に隣接配置された拡散部材(174)と、を備えている。拡散部材(174)は、光ビーム(178)を円滑化し、一様な強度の光線(180)を形成する。光線(180)は、コンピュータによって制御されたLCD(176)を通過する。LCD(176)は、空間的な光強度変調器として機能するものである。LCDに対して光源(172)からの光線(180)が照射された際には、硬化パターン(182)に対応した光が、LCD(176)を通して波面収差器(100)上へと案内される。これにより、特定の屈折率プロファイル(184)が形成される。
【0054】
好ましい実施形態においては、システム(170)の光源(172)は、一定面積の光源とされ、光照射面上にわたって一定の強度の光を放出する。例えば、光源(172)は、複数のLEDからなるアレイや、他の任意の適切な照射光源、を備えることができる。LCDの光透過特性は、LCDデバイス上の電極アレイに対して可変電圧を印加することにより、制御することができる。これにより、LCDデバイスを透過する光の強度が空間的にかつ時間的に制御される。これにより、波面収差器(100)の放射線硬化可能樹脂層(104)を選択的に硬化させることができる。放射線硬化可能樹脂として液晶ポリマーを使用している実施形態においては、一定発光光源が、十分な熱を印加し、これにより、メソゲニックユニットの移動度を高め、その結果、所定強度の電磁界(図示せず)を印加することにより、配向させる。
【0055】
システム(170)に対する追加として、検出器(185)を、波面収差器(100)の直下に配置することができる。これにより、波面収差器(100)を透過する透過画像(186)を検出することができる。フィードバックインターフェース(188)によって、検出器(185)とコンピュータ(189)とを接続することができる。コンピュータ(189)は、LCDパネル(176)に対して接続することができる。このようにして、コンピュータ(189)によって屈折率プロファイルを決定し、LCD(176)によって屈折率プロファイルを形成し、検出器(185)によって屈折率プロファイルを検証することができる。これにより、波面収差器(100)に、適切な波面プロファイルを、確実に形成することができる。検出器(185)は、例えばCCDといったような強度撮影器を有することができる。あるいは、例えば Shack-Hartmann センサといったような波面センサを有することができる。あるいは、当該技術分野において公知の他の任意の光学センサを有することができる。好ましい波面センサは、米国特許出願シリアル番号第10/014,037号明細書に記載されている。
【0056】
上記においてはパネル(176)をLCDパネルとして説明したけれども、代替可能な実施形態においては、写真のネガまたはポジを使用することによって、波面収差器(100)に屈折率プロファイル(184)を形成することができる。この場合、光源(172)は、一定照射の光源をなし、屈折率プロファイル(182)を有した写真ネガまたはポジは、波面収差器(100)に対して到達する照射光を、空間的におよび強度的に制御する。これにより、適切な屈折率プロファイル(184)が形成される。
【0057】
図7Aには、波面収差器(100)を製造するためのシステムが、全体的に符号(190)によって示されている。このシステム(190)は、ビーム走査ユニット(195)と、レーザービーム(193)を生成するレーザーユニット(191)と、を備えている。レーザービーム(193)は、波面収差器(100)上に、ポイント状光源(『スポット』(192)を形成する。レーザーユニット(191)は、レーザー強度制御手段(図示せず)を有することができる。スポット(192)は、波面収差器(100)の表面上にわたって、破線(194,196,198)によって示されているようなラスター状経路に沿って、駆動される。スポット(192)の駆動時には、駆動速度と光強度とを変更することができる。これにより、放射線硬化可能樹脂層(104)を選択的に硬化させることができ、それぞれ個別の屈折率値を有した様々な領域(214,215,216)が形成された特定の屈折率プロファイル(212)を得ることができる。放射線硬化可能樹脂として液晶ポリマーを使用している実施形態においては、レーザーが、十分な熱を印加し、これにより、メソゲニックユニットの移動度を高め、その結果、所定強度の電磁界(図示せず)を印加することにより、配向させる。
【0058】
代替的には、スポット(200)を形成して、波面収差器(100)の表面上にわたって、経路(202,204,206)に沿って駆動することができる。屈折率プロファイル(212)を形成するためのさらに他の代替可能な手法においては、スポット(210)を、波面収差器(100)の中心に形成し、スポットを、外向き螺旋経路(212)に沿って駆動することができる。また、特定の屈折率プロファイル(212)は、例えば複数の領域(214,215,216)の間の境界線をレーザービーム(193)によって直接的に形成することにより、形状を規定するあるいは境界を規定することができる。代替可能な実施形態においては、レーザービーム(193)を固定しておき、スポット(210)が波面収差器(100)の表面上にわたって移動するようにして、波面収差器(100)をレーザービーム(193)に対して移動させる。より詳細には、波面収差器(100)は、方向(220および/または222)に移動することができる。これにより、スポット(210)を波面収差器の表面上にわたって移動させることができる。
【0059】
システム(190)に対する追加として、検出器(185)を、波面収差器(100)の直下に配置することができる。これにより、波面収差器(100)を透過する透過スポット(192)を検出することができる。フィードバックインターフェース(188)によって、検出器(185)とコンピュータ(189)とを接続することができる。コンピュータ(189)は、ビーム走査ユニット(195)および/またはレーザーユニット(191)に対して接続することができる。このようにして、コンピュータ(189)によって屈折率プロファイルを決定し、ビーム走査ユニット(195)およびレーザーユニット(191)によって屈折率プロファイルを形成し、検出器(185)によって屈折率プロファイルを検証することができる。これにより、波面収差器(100)に、適切な波面プロファイルを、確実に形成することができる。検出器(185)は、例えばCCDといったような強度撮影器を有することができる。あるいは、例えば Shack-Hartmann センサといったような波面センサを有することができる。あるいは、当該技術分野において公知の他の任意の光学センサを有することができる。
【0060】
図7Bは、波面収差器の屈折率プロファイル(本明細書においては、『屈折率プロファイル』という用語は、『屈折率値のプロファイル』すなわち『IRP』と同義である)を測定して、屈折率プロファイルに関するこの測定結果に基づいて、例えば一定面積光源やレーザービームといったような照射デバイスに対してのフィードバックをもたらすための方法を示すフローチャートである。図7Bに示すフィードバック手法は、波面収差器を製造するためのすべてのシステムにおいて、実施可能である。例えば、図7Bのフィードバック手法は、選択的に透過性とされたLCDデバイスに対して光源を照射して波面収差器を製造するシステム(図6参照)においても、また、波面収差器の複数の特定領域において速度および光強度を変えるようなポイント状光源を使用して所望のIRPを製造するシステム(図7A参照)においても、使用可能である。
【0061】
ブロック(710)においては、最終的な屈折率プロファイル(『IRP』)を決定する。一実施形態においては、最終的なIRPは、補正のために波面収差器が適用されることとなる眼の検査結果に基づいて、決定される。最終的なIRPは、波面収差器の様々な領域において様々な屈折率に関する情報を有している。
【0062】
ブロック(720)においては、例えば一定面積光源やレーザービームといったような照射デバイスを、最終的なIRPに応じて、駆動する。例えば、一定面積光源を使用した実施形態においては、最終的なIRPに応じて選択的に光を透過させ得るよう構成されたLCDパネルを通して光を照射することにより、放射線硬化可能樹脂を選択的に硬化させる。同様に、レーザービームを使用した実施形態においては、最終的なIRPに応じて放射線硬化可能樹脂の様々な領域上においてレーザーの速度および強度を変化させつつ、放射線硬化可能樹脂を選択的に硬化させる。しかしながら、放射線硬化可能樹脂を照射(硬化)するためのすべての手法は、本来的にエラー因子を有している。そのため、波面収差器における実際のIRPは、最終的なIRPとは同じでないこともあり得る。よって、波面収差器に対して、さらなる調整を行う必要性が生じる。
【0063】
ブロック(730)においては、波面収差器のIRPを決定する。図6および図7Aの実施形態においては、照射デバイスとは反対側において波面収差器に近接配置された検出器(185)によって、波面収差器のIRPを測定する。これにより、放射線硬化可能樹脂が硬化した時点で、波面収差器の実際のIRPを測定することができる。
【0064】
ブロック(740)においては、波面収差器のIRP(ブロック(730)における測定結果)を、最終的なIRP(ブロック(710)において決定されたIRP)と比較する。上述したように、放射線硬化可能樹脂に対する照射の目的は、波面収差器の各領域ごとにIRPを選択的に変化させることであり、これにより、最終的なIRPを、波面収差器のIRPと実質的に同じとすることである。よって、波面収差器のIRPが、最終的なIRPと実質的に同じでない場合には、ブロック(750,760)において、波面収差器のIRPの付加的な調整を行う。
【0065】
ブロック(750)においては、波面収差器に対して適用すべきIRP調整量を決定する。一実施形態においては、IRP調整量は、最終的なIRPと波面収差器のIRP(ブロック(730)において決定された)との間の差である。IRP調整の目的は、放射線硬化可能樹脂をさらに硬化させることにより、波面収差器のIRPを、最終的なIRPに対して実質的に同じとすることである。
【0066】
ブロック(760)においては、IRP調整量に基づいて、照射デバイスを駆動する。よって、放射線硬化可能樹脂のうちのさらなる硬化が必要とされた部分が、さらに照射され、これにより、波面収差器において、最終的なIRPを得る。IRP調整量に応じた波面収差器のさらなる硬化が完了すると、プロセスは、ブロック(730)へと戻り、波面収差器のIRPを決定する。そして、ブロック(740)において、波面収差器のIRPが最終的なIRPと実質的に同じであるかどうかを決定する。このようにして、ブロック(730,740,750,760)を複数回にわたって繰り返すことができ、最終的には、波面収差器のIRPを、最終的なIRPに対して実質的に同じとする。
【0067】
ブロック(770)においては、波面収差器のIRPが最終的なIRPに対して実質的に同じとなっており、波面収差器が完成する。
【0068】
[代替可能な実施形態]
図8は、波面収差器(100)の代替可能な実施形態を示す側面図であって、面(233)を有したレンズの形状として形成された透明カバー(232)を備えている。透明カバー(232)は、正の屈折力を有したレンズとされている。これに代えて、負の屈折力を有したレンズ、および、円筒形の(非点収差の)屈折力を有したレンズ、を使用することもできる。面(233)と透明カバー(232)との間には、屈折率を変更可能な放射線硬化可能樹脂からなる層(234)が介装されている。透明カバー(232)は、球形の屈折面(238)を有しており、この屈折面(238)は、光学部材として機能する。よって、透明カバー(232)は、放射線硬化可能樹脂層(234)と組み合わせることにより、焦点合わせ特性と、波面フェーズプロファイル特性と、の双方を有した光学部材を提供する。
【0069】
波面収差器の代替可能な実施形態が、全体的に符号(240)によって、図9に示されている。この波面収差器(240)は、上側の透明ウィンドウ(242)と、これに隣接して配置された屈折率変更可能な放射線硬化可能樹脂からなる層(244)と、を備えている。下側透明ウィンドウ(246)(破線によって図示されている)は、可溶性の塩から形成されている。放射線硬化可能樹脂層(244)内において屈折率プロファイルが形成され終わったときには、塩製ウィンドウ(246)を、溶解させることができる。ウィンドウ(246)が可溶性であることにより、放射線硬化可能樹脂層を露出させることができ、必要であれば、放射線硬化可能樹脂の硬化後処理を容易に行うことができる。これに代えて、ウィンドウ(242,246)は、有機溶媒によって溶解可能とされた有機材料から形成することができる。
【0070】
上述した各実施形態を使用することにより、実質的にすべての光学系において収差を補正することができる。例えば、ある実施形態においては、例えば望遠鏡や双眼鏡や顕微鏡といったような光学的画像システムにおける本来的な静的な収差を補正するに際して、特に有効なものとすることができる。加えて、本発明による概念は、眼科の手術や診断に適用することができる。この場合には、眼が、光学系内の1つの部材であり、眼の収差を改良することにより、光学系の機能が改良される。例えば、例えば網膜の手術といったような眼の手術においては、上記実施形態は、眼に存在する収差を低減または除去することができ、より良好な焦点合わせを得ることができる。また、本発明による概念は、眼底カメラや、細隙灯生体鏡や、検眼鏡や、走査型レーザー検眼鏡、において使用された際に有利なものであり、光学系内の収差を低減または除去することにより、像品質を改良することができる。また、他の実施形態においては、望遠鏡や双眼鏡や顕微鏡といったような光学系の接眼部材内に収差補正を組み込むことが、特に有利である。
【0071】
また、波面収差器を使用することにより、レーザービームにおける静的収差を補正することができ、また、レーザー位置決め装置やレーザー検出装置やレーザー走査装置やレーザー通信装置やレーザー追跡装置内において使用するための関連光学部材における静的収差を補正することができる。様々な実施形態に関するこれら使用の例示は、単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。
【0072】
[他の代替可能な実施形態]
図10は、波面収差器の代替可能な実施形態を、全体的に符号(300)によって斜視図により示している。波面収差器(300)は、ヒトの眼(400)の局所的なかつ非一様な歪曲を補正することができるとともに、従来技術と比較して、より複雑な治療を行うことができる。ヒトの眼(400)は、様々な構成要素から構成されており、角膜(402)と、網膜(404)と、水晶体(416)(図13に図示されている)と、を備えている。波面収差器(300)は、眼(400)の角膜(402)の前方表面上に、直接的に設置されている。
【0073】
角膜(402)内の局所的な欠陥は、典型的には、エラー源を構成し、ヒトの眼(400)の視覚の鮮明さを劣化させる。このような局所的欠陥の例は、互いに異なる焦点距離を有したいくつかの個別領域(408,410,412)によって図示されている。画像波面が角膜(402)を通過した際には、波面は、局所的欠陥(408,410,412)に遭遇し、非一様な歪曲源をもたらし、波面画像を、非コヒーレント的に焦点ズレさせ、結果的に、視力を劣化させる。
【0074】
図10および図11に示すように、波面収差器(300)は、ボディ(302)から構成され、ボディ(302)は、内側レンズ(312)と、外側レンズ(314)と、これら内側レンズ(312)および外側レンズ(314)の間に介装された放射線硬化可能樹脂層(316)と、を備えている。また、図10に示すように、放射線硬化可能樹脂層(316)内には、複数の屈折率プロファイル(304,306,308)が形成されている。重要なことに、これらプロファイル(304,306,308)は、眼(400)の局所的欠陥(408,410,412)に対応して配置されている。後述するように、欠陥(408,410,412)の認識は、対応した相殺用の屈折率プロファイル(304,306,308)を有した波面収差器を、直接的な形成をもたらす。これにより、光が、波面収差器(300)を通して眼(400)内へと入射したときには、角膜内のすべての欠陥が、正確に補償されている。
【0075】
図11においては、波面収差器(300)は、バリア(318)を有したものとして示されている。このバリア(318)は、放射線硬化可能樹脂層(316)を囲んでおり、これにより、放射線硬化可能樹脂層(316)を、外側レンズ(314)と内側レンズ(312)との間に保持している。また、付属錘(310)が示されている。この付属錘(310)は、付属錘(310)にかかる重力に基づいて、角膜上においてレンズを適切に配向させるように機能する。当業者であれば、角膜上におけるレンズの向きを確保するための他の手法を、理解されるであろう。例えば、ある種の実施形態においては、レンズを適切に成形することが、同等に効果的である。
【0076】
領域(320,322)は、放射線硬化可能樹脂層(316)が硬化することによって、眼(400)の欠陥(408,410,412)に対する補償に必要な屈折率プロファイルが形成された領域を示している。
【0077】
図10および図11は、複数の屈折率プロファイルを図示しているけれども、補正のための複数の領域の形成が、例示のためのものに過ぎず、任意の数の補正領域を備えた他の実施形態を想定し得ることは、理解されるであろう。さらに、角膜内の欠陥を参照していることは、理解されるであろう。しかしながら、波面収差器(300)を使用することにより、限定するものではないけれども、角膜(402)や水晶体(416)や網膜(404)も含めた眼(400)の様々な構成要素によって引き起こされたエラー要素(収差)も含め、ヒトの視力の劣化をもたらす様々なすべての収差を補償し得ることは、理解されるであろう。
【0078】
使用時には、波面収差器(300)は、眼(400)の角膜(402)の前方表面上に、直接的に設置されている。波面収差器(300)は、変形した波面を形成する。変形した波面は、未補正状態のヒトの視力システムのインパルス応答に対して180°だけ移送がずれるように構成されている。波面収差器(300)によって変形された波面が、未補正のヒトの視力システムを通過した際には、受領された波面は、補正されたヒトの視力システムの外表面に衝突する波面と同一となり、これにより、視力の鮮明さが改良される。
【0079】
波面収差器(300)は、図11においては、凹凸レンズ(312,314)を有するものとして示されている。一方または双方のレンズを、屈折特性を有したものとして形成し得ること、および、これにより、眼に対しての全体的補正をもたらし得ることは、理解されるであろう。これに代えて、レンズ(312,314)は、屈折特性をほとんど有していないものあるいは全く有していないものとして形成することができる。この場合には、放射線硬化可能樹脂層(316)によって実現された補正が、全体的な光学的補正となる。
【0080】
図11は、内側透明レンズ(312)と、放射線硬化可能樹脂層(316)と、外側透明レンズ(314)と、放射線硬化可能樹脂バリア(318)と、の間の相互関係を示している。放射線硬化可能樹脂層(316)の容積は、放射線硬化可能樹脂バリア(318)と、内側透明レンズ(312)と、外側透明レンズ(314)と、が囲む容積によって決定されている。
【0081】
好ましい実施形態においては、内側透明レンズ(312)は、例えば透明ポリマーといったような、ガス透過性でありかつフレキシブルなまたはソフトな材料から形成することができる。これにより、患者の快適さを高めることができる。外側レンズ(314)は、剛直なガス透過性材料から形成することができる。これにより、レンズどうしの組合せとして、構造的剛性をもたらすことができる。これに代えて、内側および外側レンズ(312,314)の双方を、剛直なまたはソフトなレンズ材料から形成することができる。外側レンズと内側レンズと硬化済み樹脂材料との典型的な厚さは、すなわち、コンタクトレンズ全体の厚さは、およそ0.03mm〜0.5とされる。レンズ(312,314)の例示としての厚さは、次のようなものである。外側透明レンズ(314)の厚さ(326)は、およそ0.125mm(0.005インチ)であり;放射線硬化可能樹脂層(316)の厚さ(328)は、およそ0.125mm(0.005インチ)であり;内側透明レンズ(312)の厚さ(330)は、およそ0.125mm(0.005インチ)である。
【0082】
図12は、波面収差器(300)を示す正面図である。例えば円形バリア(318)といったようなバリアを、放射線硬化可能樹脂層(316)の周囲に配置することができ、これにより、放射線硬化可能樹脂を、内側および外側の透明レンズ(312,314)の間に保持することができる。これに代えて、レンズ(312,314)は、それぞれのエッジどうしのところにおいて融着することができ、これにより、放射線硬化可能樹脂層(316)を、これらレンズ(312,314)の間に保持することができる。これにより、より薄い波面収差器(300)が得られ、ヒトの眼(400)上における波面収差器の使用を容易なものとすることができる。エッジ回りにおけるレンズ(312,314)の融着は、熱の印加により、あるいは、圧力の印加により、あるいは、放射線(例えば、レーザー放射)の印加により、溶媒や触媒といったような化学的手段の印加により、あるいは、これら手法の任意の2つ以上の組合せにより、行うことができる。
【0083】
図12においては、放射線硬化可能樹脂層(316)内には、様々な屈折率プロファイルが示されている。より詳細には、様々な屈折率プロファイルは、領域(304,306,307,308,309)によって示されており、波面収差器(300)は、複数の個別の屈折率値を有している。また、放射線硬化可能樹脂層(316)内に様々なプロファイルを形成することにより、実質的に任意の形状または局所的湾曲度合いが得られることは、理解されるであろう。これにより、眼(400)の実質的にすべての欠陥に対して適合させることができる。
【0084】
図13は、ヒトの眼上に適切に配置された波面収差器(300)を示す横断面図である。より詳細には、波面収差器(300)は、角膜(402)の外表面上において、水性流体からなる薄いフィルム(420)の上に載置されている。所定に配置された後には、波面収差器(300)は、波面を変更し、変更済みの波面が、角膜(402)へと入射して水晶体(416)を通して網膜(404)へと到達することとなる。付属錘(310)は、光学軸に対して波面収差器(300)を所定の回転配向性とすることを補助している。これにより、眼(400)の収差に関しての修正波面の向きが適切に確保される。レンズ(312,314)の湾曲度合いは、中心合わせ力をもたらす。これにより、波面収差器(300)は、角膜(402)上において所定位置に維持される。
【0085】
図14および図15は、代替可能な実施形態を全体的に符号(500)によって、それぞれ正面図および断面図により、示している。波面収差器(500)は、図11および図12に関して上述した波面収差器と比較して、多くの点で同様である。特に、波面収差器(500)は、内側および外側の透明レンズ(312,314)の間に、放射線硬化可能樹脂層(316)を備えている。しかしながら、他の実施形態とは異なり、波面収差器(500)は、放射線硬化可能樹脂層(316)を保持するためのバリア層(例えば、バリア(318))を必要としていない。
【0086】
例えば、波面収差器(500)は、波面収差器の周縁近傍に配置された硬化済み樹脂領域(316a)を有するものとして図示されている。使用している特定の光硬化可能樹脂の接着特性のために、硬化済み樹脂領域(316a)は、他のいくつかの実施形態において使用されているバリア層と同様にして、機能することができる。特に、湾曲した硬化済み樹脂領域(316a)を使用することにより、内側および外側レンズ(312,314)を接着し得るとともに、放射線硬化可能樹脂層(316)をなす放射線硬化可能樹脂を保持することができる。
【0087】
硬化済みの放射線硬化可能樹脂樹脂領域(316a)は、典型的には、放射線硬化可能樹脂層(316)がなす領域を適切な態様で硬化させることにより、形成される。これにより、内側および外側レンズ(312,314)の間にシールが形成される。使用可能な硬化手法には、熱や、圧力や、放射線、等がある。
【0088】
[眼のための波面収差器の製造方法]
図10〜図13に示す波面収差器(300)は、任意の様々な手法によって製造することができる。これら手法においては、レンズ(312,314)は、眼(400)上に配置され得るような寸法とされる。一手法においては、第1ステップとして、内側レンズ(312)の凸状表面あるいは外側レンズ(314)の凹状表面のいずれか一方の表面を、放射線硬化可能樹脂によってコーティングし、これにより、放射線硬化可能樹脂層(316)を形成する。次に、内側レンズ(312)の凸状表面あるいは外側レンズ(314)の凹状表面のいずれか他方の表面を、放射線硬化可能樹脂層(316)の露出面上に配置する。最後に、所望の屈折率プロファイルに基づき、光によって放射線硬化可能樹脂層(316)を硬化する。
【0089】
他の手法においては、内側レンズ(312)の凸状表面あるいは外側レンズ(314)の凹状表面のいずれか他方の表面上に配置する前に、放射線硬化可能樹脂層(316)を、硬化させる。
【0090】
さらに他の手法においては、バリア(318)を配置することによって、放射線硬化可能樹脂層(316)を取り囲む。これにより、放射線硬化可能樹脂層(316)を、両レンズ(312,314)の間に保持する。バリア(318)の配置は、放射線硬化可能樹脂を一方のレンズ(312または314)上に配置する直前か、あるいは、放射線硬化可能樹脂を他方のレンズ(312または314)上に配置する直前か、に行う。
【0091】
第4の手法においては、両レンズ(312,314)のエッジを互いに融着させる。これにより、放射線硬化可能樹脂層(316)を両レンズ(312,314)の間に保持する。融着は、レンズ(312,314)の他方が、放射線硬化可能樹脂層(316)上に配置された直後に行う。両レンズ(312,314)のエッジは、加熱によって、あるいは、加圧によって、あるいは、放射線(例えば、レーザー放射)の印加によって、あるいは、溶媒や触媒といったような化学的手段の印加により、あるいは、これら手法の任意の2つ以上の組合せにより、行うことができる。
【0092】
本発明において現時点で好ましいと考えられる実施形態について説明したけれども、当業者には、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、上記実施形態に対して修正や変形を加え得ることは、明らかであろう。特定の部材や、特定の形状や、特定の材料や、特定の機能や、特定のモジュール、に関して上述した。しかしながら、当業者であれば、本発明によるシステムの製造に関して多様な手法を適用し得ること、また、上記に代えて、様々な部材や構成要素やモジュールや機能を互換的に使用し得ることは、明らかである。上記においては、様々な実施形態に関して本発明による新規な基本的特徴点について例示し説明したけれども、当業者であれば、本発明の精神および本質的特徴点を逸脱することなく、実施態様や細部に関して、様々な省略や互換や変形を行い得ることは、明らかであろう。
【符号の説明】
【0093】
100 波面収差器
102 透明カバー
104 放射線硬化可能樹脂層
106 透明カバー
108 バリア
110 領域
112 領域
114 領域
232 透明カバー
234 屈折率を変更可能な放射線硬化可能樹脂からなる層
240 波面収差器
242 透明ウィンドウ
244 屈折率変更可能な放射線硬化可能樹脂からなる層
300 波面収差器
310 付属錘
312 内側レンズ
314 外側レンズ
316 放射線硬化可能樹脂層
318 バリア
400 眼
500 波面収差器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波面収差器コンタクトレンズであって、
内側レンズと、外側レンズと、少なくとも1つの領域を有した放射線硬化可能樹脂層と、を具備し、
前記少なくとも1つの領域の各々が、所定の屈折率プロファイルを有し、
前記波面収差器コンタクトレンズが、眼に対して設置され得るよう構成され、
前記屈折率プロファイルが、眼の高次収差と低次収差とのすべての組合せに対応したものとされ、これにより、前記波面収差器コンタクトレンズが、眼に設置されたときには、眼の高次収差と低次収差との少なくとも1つを実質的に補正し、
前記放射線硬化可能樹脂層が、前記内側レンズと前記外側レンズとの間に配置されていることを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項2】
請求項1記載の波面収差器コンタクトレンズにおいて、
眼が、少なくとも1つの欠陥を有している場合に、
前記所定屈折率プロファイルが、前記少なくとも1つの欠陥を補正するものであることを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項3】
請求項2記載の波面収差器コンタクトレンズにおいて、
前記少なくとも1つの欠陥が、非一様な歪曲であることを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項4】
請求項2記載の波面収差器コンタクトレンズにおいて、
前記少なくとも1つの欠陥の各々が、眼上の各場所に対応していることを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項5】
請求項4記載の波面収差器コンタクトレンズにおいて、
さらに、付属錘を具備し、
この付属錘により、前記波面収差器コンタクトレンズの向きが規定され、これにより、前記少なくとも1つの領域が、眼の各欠陥に対応した位置に隣接するようになっていることを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項6】
請求項1記載の波面収差器コンタクトレンズにおいて、
さらに、前記内側レンズと、前記外側レンズと、を具備し、
前記放射線硬化可能樹脂層が、前記内側レンズと前記外側レンズとの間に配置されていることを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項7】
請求項1記載の波面収差器コンタクトレンズにおいて、
さらに、前記放射線硬化可能樹脂層を囲むことによって前記放射線硬化可能樹脂層を前記内側レンズと前記外側レンズとの間に保持するバリアを具備し、
前記内側レンズが、眼に対して配置され得る寸法とされていることを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項8】
請求項1記載の波面収差器コンタクトレンズにおいて、
前記外側レンズが、第1エッジを有し、
前記内側レンズが、第2エッジを有し、
前記第1エッジと前記第2エッジとが、互いに融着され、これにより、前記放射線硬化可能樹脂層が、前記内側レンズと前記外側レンズとの間に保持されていることを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項9】
請求項1記載の波面収差器コンタクトレンズにおいて、
前記内側レンズと前記外側レンズとの少なくとも一方が、屈折力を有していることを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項10】
請求項1記載の波面収差器コンタクトレンズにおいて、
前記内側レンズと前記外側レンズとの少なくとも一方が、屈折力を有していないことを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項11】
請求項1記載の波面収差器コンタクトレンズにおいて、
前記内側レンズと前記外側レンズとの少なくとも一方が、ポリマーとされていることを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項12】
請求項1記載の波面収差器コンタクトレンズにおいて、
前記内側レンズと前記外側レンズとの少なくとも一方が、ガス透過性とされていることを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項13】
請求項1記載の波面収差器コンタクトレンズにおいて、
前記内側レンズと前記外側レンズとの少なくとも一方が、ソフトなレンズ材料から形成されていることを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項14】
請求項1記載の波面収差器コンタクトレンズにおいて、
前記内側レンズと前記外側レンズとの少なくとも一方が、剛直であることを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項15】
請求項1記載の波面収差器コンタクトレンズにおいて、
前記放射線硬化可能樹脂層が、液晶ポリマーを備えていることを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項16】
波面収差器コンタクトレンズであって、
第1エッジを有した内側レンズと;
第2エッジを有した外側レンズと;
前記内側レンズと前記外側レンズとの間に位置した放射線硬化可能樹脂層と;
を具備し、
前記放射線硬化可能樹脂層が、少なくとも1つの領域を有し、
前記少なくとも1つの領域の各々が、所定の屈折率プロファイルを有し、
前記第1エッジと前記第2エッジとが、互いに融着され、これにより、前記放射線硬化可能樹脂層が、前記内側レンズと前記外側レンズとの間に保持され、
前記屈折率プロファイルが、眼の高次収差と低次収差とのすべての組合せに対応したものとされ、これにより、前記波面収差器コンタクトレンズが、眼に設置されたときには、眼の高次収差と低次収差との少なくとも1つを実質的に補正することを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項17】
請求項16記載の波面収差器コンタクトレンズにおいて、
前記内側レンズが、眼に対して設置され得るような寸法とされていることを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項18】
請求項16記載の波面収差器コンタクトレンズにおいて、
前記放射線硬化可能樹脂層が、液晶ポリマーを備えていることを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項19】
波面収差器コンタクトレンズを製造するための方法であって、
眼に対して設置され得る寸法とされ、かつ、眼に接触する第1表面と、この第1表面とは反対側に位置した第2表面と、を有した、第1レンズを準備し;
この第1レンズの前記第2表面に対して放射線硬化可能樹脂を適用し;
第2レンズを準備し;
この第2レンズを、前記放射線硬化可能樹脂上に設置し、これにより、前記第1レンズと前記第2レンズとの間に、前記放射線硬化可能樹脂からなる層を介装し;
屈折率プロファイルに対応するようにして、前記放射線硬化可能樹脂層を硬化させ、ここで、前記屈折率プロファイルを、眼の高次収差と低次収差とのすべての組合せに対応したものとし、これにより、前記波面収差器コンタクトレンズを、眼に設置されたときに、眼の高次収差と低次収差との少なくとも1つを実質的に補正するものとする;
ことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法において、
前記屈折率プロファイルを、複数のサブ領域を備えたものとし、
これらサブ領域の各々を、眼の収差に対応した屈折率を有したものとすることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20記載の方法において、
バリア材料を使用することによって、前記放射線硬化可能樹脂層の少なくとも一部を取り囲み、これにより、前記放射線硬化可能樹脂層を、前記第1レンズと前記第2レンズとの間に保持することを特徴とする方法。
【請求項22】
コンタクトレンズを製造するための方法であって、
複数の領域を有した放射線硬化可能樹脂を準備し;
前記各領域を、所望の屈折率プロファイルとなるようにして、硬化させ、ここで、前記屈折率プロファイルを、眼の高次収差と低次収差とのすべての組合せに対応したものとし、これにより、前記波面収差器コンタクトレンズを、眼に設置されたときに、眼の高次収差と低次収差との少なくとも1つを実質的に補正するものとし;
ヒトの眼に対して設置し得るようにして、硬化させた放射線硬化可能樹脂をパッケージングする;
ことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法において、
前記パッケージングに際しては、外側レンズと内側レンズとの間に前記放射線硬化可能樹脂を接着し、
前記内側レンズを、眼に対して設置され得るよう構成することを特徴とすることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項22記載の方法において、
前記複数の領域の前記所望の屈折率を、ヒトの眼の複数の欠陥に対応したものとすることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項22記載の方法において、
前記放射線硬化可能樹脂を、エポキシを備えたものとすることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項22記載の方法において、
前記放射線硬化可能樹脂を、液晶ポリマーを備えたものとすることを特徴とする方法。
【請求項27】
波面収差器コンタクトレンズを製造するための方法であって、
眼に対して設置され得る寸法とされ、かつ、眼に接触する第1表面と、この第1表面とは反対側に位置した第2表面と、を有した、第1レンズを準備し;
第2レンズを準備し;
屈折率プロファイルに対応するようにして放射線硬化可能樹脂層を硬化させ、ここで、前記屈折率プロファイルを、眼の高次収差と低次収差とのすべての組合せに対応したものとし、これにより、前記波面収差器コンタクトレンズを、眼に設置されたときに、眼の高次収差と低次収差との少なくとも1つを実質的に補正するものとし;
硬化させた前記放射線硬化可能樹脂層を介装した状態で、前記第1レンズの前記第2表面と、前記第2レンズと、を接着する;
ことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27記載の方法において、
前記接着に際しては、前記第1レンズの前記第2表面の外側エッジの少なくとも一部と、前記第2レンズの外側エッジの少なくとも一部とを、
(a)前記第1エッジおよび前記第2エッジの加熱によって、あるいは、
(b)圧力を印加することによって、あるいは、
(c)放射線を印加することによって、あるいは、
(d)化学的手段を適用することによって、
接着することを特徴とする方法。
【請求項29】
波面収差器コンタクトレンズを製造するための方法であって、
2つの第1表面と第1エッジとを有し、かつ、眼に対して設置され得る寸法とされた、第1レンズを準備し;
硬化によって屈折率が変化するような放射線硬化可能樹脂を準備し;
前記第1表面の一方に対して前記放射線硬化可能樹脂を適用することにより、前記第1表面の前記一方上に放射線硬化可能樹脂層を形成し、この場合、前記放射線硬化可能樹脂層を、前記第1表面の前記一方から先端側において露出表面を有したものとし;
前記第1表面の前記一方上に、前記放射線硬化可能樹脂を取り囲むバリアを配置し;
2つの第2表面と第2エッジとを有した第2レンズを準備し;
前記露出表面上に前記第2表面の一方を配置し、これにより、前記放射線硬化可能樹脂層を、前記第1レンズと前記第2レンズとの間に介装するとともに、前記第1レンズと前記第2レンズとの間において前記バリアによって保持されたものとし;
所定の屈折率プロファイルに対応するようにして、前記放射線硬化可能樹脂層を硬化させ、ここで、前記屈折率プロファイルを、眼の高次収差と低次収差とのすべての組合せに対応したものとし、これにより、前記波面収差器コンタクトレンズを、眼に設置されたときに、眼の高次収差と低次収差との少なくとも1つを実質的に補正するものとする;
ことを特徴とする方法。
【請求項30】
波面収差器コンタクトレンズを製造するための方法であって、
2つの第1表面と第1エッジとを有した第1レンズを準備し;
硬化によって屈折率が変化するような放射線硬化可能樹脂を準備し;
前記第1表面の一方に対して前記放射線硬化可能樹脂を適用することにより、前記第1表面の前記一方上に放射線硬化可能樹脂層を形成し、この場合、前記放射線硬化可能樹脂層を、前記第1表面の前記一方から先端側において露出表面を有したものとし;
2つの第2表面と第2エッジとを有した第2レンズを準備し;
前記露出表面上に前記第2表面の一方を配置し、これにより、前記放射線硬化可能樹脂層を、前記第1レンズと前記第2レンズとの間に介装するとともに、前記第1エッジと前記第2エッジとを連結し;
前記第1エッジと前記第2エッジとを融着させることにより、前記放射線硬化可能樹脂層を、前記第1レンズと前記第2レンズとの間に保持し;
所定の屈折率プロファイルに対応するようにして、前記放射線硬化可能樹脂層を硬化さ、ここで、前記屈折率プロファイルを、眼の高次収差と低次収差とのすべての組合せに対応したものとし、これにより、前記波面収差器コンタクトレンズを、眼に設置されたときに、眼の高次収差と低次収差との少なくとも1つを実質的に補正するものとする;
ことを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項30記載の方法において、
前記第1レンズを、眼に対して設置され得る寸法とされたものとすることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項30記載の方法において、
前記第1エッジと前記第2エッジとの前記融着に際しては、
(a)前記第1エッジおよび前記第2エッジの加熱と;
(b)圧力の印加と;
(c)放射線の印加と;
(d)化学的手段の適用と;
からなるグループの中から選択された少なくとも1つの融着手法を使用することを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項30記載の方法において、
前記第1エッジと前記第2エッジとの前記融着を、レーザー照射によって行うことを特徴とする方法。
【請求項34】
波面収差器コンタクトレンズを製造するための方法であって、
各領域が屈折率初期値を有しているような複数の領域を備えた放射線硬化可能樹脂を準備し;
所定の屈折率プロファイルに実質的に適合するようにして前記複数の領域のそれぞれの屈折率を変更し、この変更を、前記複数の領域の各々に対してポイント状光源を照射することにより行い、ここで、前記屈折率プロファイルを、眼の高次収差と低次収差とのすべての組合せに対応したものとし、これにより、前記波面収差器コンタクトレンズを、眼に設置されたときに、眼の高次収差と低次収差との少なくとも1つを実質的に補正するものとする;
ことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34記載の方法において、
前記ポイント状光源を、レーザーを備えたものとすることを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項35記載の方法において、
前記複数の領域の各々に対して前記ポイント状光源を照射しつつ、前記複数の領域の各々に対して所定強度の電磁界を印加することを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項36記載の方法において、
前記放射線硬化可能樹脂を、液晶ポリマーを備えたものとすることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項35記載の方法において、
前記レーザーによって前記複数の領域の各々を選択的に照射する際には、レーザー照射時間とレーザー照射強度との一方または双方を調節することを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項34記載の方法において、
さらに、
前記変更時には、前記複数の領域の少なくとも1つの領域に関し、その時点での屈折率を検出し;
当該時点での前記屈折率が、前記屈折率プロファイルに一致しているかどうかを決定し;
一致していない場合には、前記レーザーの少なくとも1つのパラメータを変更する;
ことを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項39記載の方法において、
前記レーザーの前記パラメータを、レーザー照射時間、および、レーザー強度、とすることを特徴とする方法。
【請求項41】
波面収差器コンタクトレンズであって、
複数の領域を有した放射線硬化可能樹脂層を具備し、
前記複数の領域の各々が、それぞれ対応する屈折率を有していることを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項42】
請求項41記載のレンズにおいて、
前記複数の領域が、選択的に照射されたものであり、これにより、前記それぞれ対応する屈折率が得られていることを特徴とするレンズ。
【請求項43】
波面収差器コンタクトレンズであって、
透明カバーと;
この透明カバー上に配置された光学材料からなる層であるとともに、少なくとも1つの第1サブ領域と少なくとも1つの第2サブ領域とを備え、前記第1サブ領域の光学材料と前記第2サブ領域の光学材料とが、互いに異なる屈折率を有しているような、光学材料層と;
眼の少なくとも1つの低次収差と高次収差とを補正する波面収差器コンタクトレンズと;
を具備していることを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。
【請求項44】
請求項43記載のレンズにおいて、
前記第1サブ領域の前記光学材料が、硬化され、これにより、前記第2サブ領域の前記光学材料に対して、さらに異なる屈折率を有していることを特徴とするレンズ。
【請求項45】
請求項43記載のレンズにおいて、
前記光学材料が、液晶ポリマーを備えていることを特徴とするレンズ。
【請求項46】
波面収差器コンタクトレンズであって、
液晶ポリマーを備え、
この液晶ポリマーが、屈折率が互いに相違している複数の領域を有していることを特徴とする波面収差器コンタクトレンズ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−154408(P2011−154408A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111474(P2011−111474)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【分割の表示】特願2004−527710(P2004−527710)の分割
【原出願日】平成15年7月30日(2003.7.30)
【出願人】(504159981)オフソニックス・インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】