ヒトグリシン輸送体
【課題】現在その存在が判明している2種類のグリシン輸送体の内の1種である、GlyT2のヒトにおける遺伝子を発見、取得し、ヒトにおいてグリシンの関与する病気の解明、治療、予防に更に幅広く貢献することが望まれている。
【解決手段】動物がヒトグリシンT−2輸送体に対する自己免疫抗体を持っているかどうかを検出する方法であり、動物からの抗体試料又は動物からの体液を、ヒトグリシンT−2輸送体を含むかあるいは該グリシン輸送体から誘導されるポリペプチド抗原と接触させることからなるもので、該ポリペプチド抗原は配列番号:27及びその置換体アミノ酸配列を有するか配列番号:26の核酸配列、又はその置換体配列でコードされるものである方法。
【解決手段】動物がヒトグリシンT−2輸送体に対する自己免疫抗体を持っているかどうかを検出する方法であり、動物からの抗体試料又は動物からの体液を、ヒトグリシンT−2輸送体を含むかあるいは該グリシン輸送体から誘導されるポリペプチド抗原と接触させることからなるもので、該ポリペプチド抗原は配列番号:27及びその置換体アミノ酸配列を有するか配列番号:26の核酸配列、又はその置換体配列でコードされるものである方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、次の同時係属出願:「グリシン輸送体感染細胞及びその用途」、代理人整理番号317743−105、出願番号08/655,836、1996年5月31日出願;「神経障害及び神経精神障害治療用医薬」、代理人整理番号317743−103、出願番号08/656,063、1996年5月31日出願;「神経精神障害治療用医薬」、代理人整理番号317743−106、出願番号08/655,912、1996年5月31日出願;及び「神経障害及び神経精神障害治療用医薬」、代理人整理番号317743−107、出願番号08/655,847、1996年5月31日出願と関連しており、本発明は、ヒトグリシン輸送体系列の“GlyT―2”構成員をコードする核酸、その核酸によってコードされた単離蛋白質及び薬剤発見の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シナプス伝達は、シナプス前神経細胞及びシナプス後神経細胞の両方において、分化された構造の可成りの配列(considerable array of specialized structures)を含む細胞間伝達の複雑な形態である。高親和性神経伝達物質輸送体は、1つのそのような成分であり、シナプス前終末上及びグリア細胞の周囲に位置している(非特許文献1Kanner 及び Schuldiner、CRC Critical Reviews in Biochemistry, 22, 1032 (1987))。輸送体は、神経伝達物質をシナプスから隔離し、それによって、シナプス内での神経伝達物質の持続時間の他に、そのなかでの神経伝達物質の濃度を制御し、それらは共にシナプス伝達の大きさに影響を及ぼす。更に、伝達物質が隣接シナプスへ拡がるのを防ぐことによって、輸送体は、シナプス伝達の適合度を維持する。更に、放出された伝達物質をシナプス前終末内へ隔離することによって、輸送体は伝達物質の再利用を可能にする。
神経伝達物質輸送は、細胞外ナトリウム及び膜の両側の電圧差に依存し、例えば、発作中などのような強い神経ファイアリング(firing)の状態では、輸送体は、カルシウムに依存しない非エキソサイティックな方法で神経伝達物質を放出して、逆に機能することができる(非特許文献2Attwell 等、Neuron, 11, 401-407 (1993))。神経伝達物質輸送体の薬理学的変調は、このようにシナプス活性を改変する手段を提供し、それは、神経障害及び精神障害の治療のための有用な治療法を提供するものである。
アミノ酸グリシンは、哺乳動物の中枢神経系における重要な神経伝達物質であり、抑制性及び興奮性シナプスの両方で機能する。“神経系”という語句は、その神経系の中枢及び末梢部分の両方を意味する。グリシンの異なる抑制性及び興奮性機能は、2つの異なるタイプの受容体によって媒介され、それぞれが、異なる種類のグリシン輸送体と関連している。グリシンの抑制作用は、痙攣性アルカロイドストリキニンに対して感受性であるグリシン受容体によって媒介され、従って、“ストリキニン感受性”と呼ばれる。このような受容体は、グリシンが受容体に結合した際に開く固有のクロライドチャネルを含んでおり、クロライドコンダクタンスを高めることによって、活動電位の励起(firing)の閾値が高くなる。ストリキニン感受性グリシン受容体は、主として脊髄及び脳幹内で見出されており、従って、このような受容体の活性化を促進する薬物は、これらの領域内での抑制性神経伝達を高めるであろう。
グリシンは、中枢神経系における主要な興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸塩の作用を変調することによって、興奮性伝達において機能する。非特許文献3Johnson 及び Ascher、Nature, 325, 529-531 (1987); 非特許文献4Fletcher 等、Glycine Transmission,(Otterson 及び Storm-Mathisen、編者、1990)、193〜219頁参照。具体的には、グリシンは、N―メチル―D―アスパラギン酸塩(NMDA)受容体と呼ばれる種類のグルタミン酸塩受容体において、絶対共作動薬である。NMDA受容体を神経細胞上で活性化することによって、ナトリウム及びカルシウムコンダクタンスが上昇し、神経細胞を脱分極して、活動電位を励起(fire)するであろうという可能性を高めることになる。NMDA受容体は、脳全体に広く分布しており、大脳皮質及び海馬体に、特に高密度で分布している。
分子クローニングから、哺乳動物の脳の中には、GlyT―1及びGlyT―2と呼ばれる2種類のグリシン輸送体が存在することが分かっている。GlyT―1は、主に前脳で見出されており、その分布は、グルタミン酸塩作動経路及びNMDA受容体の分布に対応する(非特許文献5Smith 等、Neuron, 8, 927-935 (1992))。GlyT−2の分布は異なり、この輸送体は、主に脳幹及び脊髄で見出されており、その分布は、ストリキニン感受性グリシン受容体の分布に密接に対応している。非特許文献6Liu 等、J. Biol. Chem., 268, 22802-22808 (1993);非特許文献7Jursky 及び Nelson、J. Neurochem., 64, 1026-1033 (1995)。これらの観察は、グリシンのシナプスレベルを制御することによって、GlyT―1及びGlyT―2が、NMDA受容体及びストリキニン感受性グリシン受容体の活性に、それぞれ優先的に影響を及ぼすという考えと一致する。
GlyT―1とGlyT―2の配列の比較から、これらのグリシン輸送体は、例えば、γ―アミノ―n―酪酸(GABA)に特異的な輸送体などを含むナトリウム依存性神経伝達物質輸送体のより広い系列の構成員であることが分かった。非特許文献8Uhl、Trends in Neuroscience, 15, 265-268 (1992);非特許文献9Clark 及び Amara、BioEssays, 15, 323-332 (1993)。全体的に、これらの輸送体は、それぞれ、主として疎水性アミノ酸を含む12個の推定膜内外領域を含有する。リップマン−ピアソン(Lipman-Pearson)FASTAアルゴリズムを用いて、ラットGlyT―1をラットGlyT―2と比較すると、51%のアミノ酸配列同一性及び55%の核酸配列同一性があることが分かる。ヒトGlyT―1とヒトGlyT―2との比較から、51%のアミノ酸配列同一性及び53〜55%の核酸配列同一性があることが分かり、核酸配列については、ClyT―1に3つの変異体形態が存在することに起因して、数値に幅がある。
グリシン輸送体を抑制又は活性化する化合物は、受容体の機能を変え、種々の病状において治療上の恩恵を与えるものと期待されるであろう。例えば、GlyT―2の抑制は、グリシンのシナプスレベルを高め、これらの受容体によって媒介されることが分かっている、脊髄での痛みに関する(即ち、侵害受容の)情報の伝達を低減させることによって、ストリキニン感受性グリシン受容体を有する神経細胞の活性を低下させるのに用いることができる。非特許文献10Yaksh、Pain, 37, 111-123 (1989)。更に、脊髄内で、ストリキニン感受性グリシン受容体を介して、抑制性グリシン作動伝達を高めることを、筋肉機能亢進の低減に用いることができ、これは、痙性、ミオクロヌス(急激な筋肉痙攣に関係する)、てんかんなどの筋肉収縮の増大に関連する病気又は状態を治療するのに有用である(非特許文献11Truong 等、Movement Disorders, 3, 77-87 (1988);非特許文献12Becker、FASEB J., 4, 2767-2774 (1990))。グリシン受容体の変調によって治療することができる痙性は、てんかん、発作、頭部外傷、多発性硬化症、脊髄損傷、失調症及び神経系の病気、損傷のその他の状態と関係している。
【非特許文献1】Kanner 及び Schuldiner、CRC Critical Reviews in Biochemistry, 22, 1032 (1987)
【非特許文献2】Attwell 等、Neuron, 11, 401-407 (1993)
【非特許文献3】Johnson 及び Ascher、Nature, 325, 529-531 (1987)
【非特許文献4】Fletcher 等、Glycine Transmission,(Otterson 及び Storm-Mathisen、編者、1990)、193〜219頁
【非特許文献5】Smith 等、Neuron, 8, 927-935 (1992)
【非特許文献6】Liu 等、J. Biol. Chem., 268, 22802-22808 (1993)
【非特許文献7】Jursky 及び Nelson、J. Neurochem., 64, 1026-1033 (1995)
【非特許文献8】Uhl、Trends in Neuroscience, 15, 265-268 (1992)
【非特許文献9】Clark 及び Amara、BioEssays, 15, 323-332 (1993)
【非特許文献10】Yaksh、Pain, 111-123 (1989)
【非特許文献11】Truong 等、Movement Disorders, 3, 77-87 (1988)
【非特許文献12】Becker、FASEB J., 4, 2767-2774 (1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在その存在が判明している2種類のグリシン輸送体の内の1種である、GlyT2のヒトにおける遺伝子を発見、取得し、ヒトにおいてグリシンの関与する病気の解明、治療、予防に更に幅広く貢献することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要旨
第一の実施態様においては、本発明は、配列番号:27の蛋白質配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列と、少なくとも約96%の配列同一性を有するグリシン輸送体をコードする核酸を提供する。好ましくは、配列同一性は、少なくとも約97%であり、更に好ましくは、少なくとも約98%であり、更に一層好ましくは、少なくとも約99%であり、更に一層好ましくは、少なくとも約99.5%である。本発明の一実施態様では、配列同一性が100%である。好ましくは、コードされたグリシン輸送体は、基準蛋白質配列のアミノ酸200から797までの領域において、アミノ酸の相違が4つ以下であり、ここで、基準配列とは、配列番号:27、又は上記置換の1つを有することを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列である。より好ましくは、コードされたグリシン輸送体は、このような相違が2つ以下である。
本発明は、上記核酸を含むベクターを提供するものでもある。1つの実施態様においては、このベクターは、細菌細胞又は真核細胞の少なくとも1つにおいて、グリシン輸送体mRNAを発現するのに有効である。本発明の他の実施態様においては、このベクターは、酵母細胞、哺乳類細胞又は鳥類細胞の少なくとも1つにおいて、このmRNAを発現するのに有効である。
【0005】
更に、本発明は、本発明によって形質転換された細胞から誘導された単離グリシン輸送体を提供するものであり、該輸送体は、上記核酸によってコードされたアミノ酸配列、又はこのような核酸によってコードされたアミノ酸配列の1つ又は2つの近接部分からなり、ここで、蛋白質は、グリシン輸送体活性を有し、ラット輸送体配列の配列部分とは配列が異なるものである。“近接配列”という語句は、ここで用いられる場合、関連する基準核酸又はアミノ酸配列の連続部分を意味する。好ましくは、本発明のグリシン輸送体蛋白質は、ラット輸送体配列の配列部分とは、少なくとも2つのアミノ酸で配列が異なり、更に好ましくは、少なくとも4つのアミノ酸で異なる。好ましくは、近接配列は、少なくとも約600のアミノ酸からなり、更に好ましくは、少なくとも約700のアミノ酸からなり、更に好ましくは、少なくとも約750のアミノ酸からなる。1つの実施態様においては、輸送体蛋白質は、上記核酸によってコードされた蛋白質配列の全てを含む。好ましくは、輸送体蛋白質は、配列番号:27の蛋白質配列において述べたアミノ酸配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102に代えてSer、(2)Ser124に代えてPhe、(3)Ile279に代えてAsn、(4)Arg393に代えてGly、(5)Lys457に代えてAsn、(6)Asp463に代えてAsn、(7)Cys610に代えてTyr、(8)Ile611に代えてVal、(9)Phe733に代えてSer、(10)Ile735に代えてVal、(11)Phe245に代えてLeu、(12)Val305に代えてLeu、(13)Thr366に代えてIle、若しくは(14)Leu400に代えてProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列、又はこれらの配列の1〜2の近接部分からなるアミノ酸配列からなる。1つの好ましい実施態様においては、本発明は、グリシン輸送体並びに関連核酸、ベクター及び方法を提供し、ここで、蛋白質配列は、(1)Ser102、(2)Phe124、(3)Asn279、(4)Gly393、(5)Asn457、(6)Asn463、(7)Tyr610、(8)Val611、(9)Ser733、(10)Val735、(11)Leu245、(12)Leu305、(13)Ile366及び(14)Pro400の少なくとも1つを含む。好ましくは、この配列は、これらのアミノ酸残基の少なくとも2つを含み、更に好ましくは、少なくとも4つ、更に一層好ましくは、これらのアミノ酸残基の全てを含む。
【0006】
第二の実施態様においては、本発明は、配列番号:27のアミノ酸配列の全て若しくは1〜2の近接部分、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当するアミノ酸配列の1〜2の近接部分と、少なくとも約99.5%の配列同一性を有する輸送体蛋白質をコードする核酸を提供するものでもあり、ここで、コードされた蛋白質は、グリシン輸送体活性を有している。好ましくは、近接配列は、少なくとも約600のアミノ酸からなり、更に好ましくは、少なくとも約700のアミノ酸からなり、更に好ましくは、少なくとも約750のアミノ酸からなる。本発明は、この核酸を含むベクターを提供するものでもある。1つの実施態様においては、このベクターは、細菌細胞又は真核細胞などの原核細胞の少なくとも1つにおいて、グリシン輸送体mRNAを発現するのに有効である。本発明の他の実施態様においては、このベクターは、酵母細胞、哺乳類細胞又は鳥類細胞の少なくとも1つにおいて、このmRNAを発現するのに有効である。
【0007】
更に、本発明は、第一の実施態様による第一の外因的に誘導された核酸、又は配列番号:27の蛋白質配列の1〜2の近接部分、若しくは次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列の1〜2の近接部分と、少なくとも約99.5%の配列同一性を有する輸送体蛋白質をコードする第二の外因的に誘導された核酸を含む細胞を提供し、ここで、コードされた蛋白質は、グリシン輸送体活性を有している。1つの実施態様において、この細胞は、核酸からグリシン輸送体を発現する。本発明の一実施態様においては、プロモーターが誘発性プロモーターである。
本発明は、前のパラグラフで説明した細胞を成長させることからなるグリシン輸送体の製造方法を提供するものでもある。この方法は、更に、(a)グリシン輸送体を含む膜を該細胞から単離すること、又は(b)グリシン輸送体を含む蛋白質画分を該細胞から抽出することの少なくとも1つを含むことができる。
本発明の一実施態様は、神経系障害若しくは状態の治療用生理活性剤を確認又は同定する方法において、(a)(i)上述のような細胞、又は(ii)上述の第一又は第二の外因的に誘導された核酸によりコードされたアミノ酸配列からなる単離グリシン輸送体蛋白質を含む第一の測定組成物を与え、(b)その第一の測定組成物を生理活性剤又は予期される(prospective)生理活性剤と接触させ、その測定組成物によって示されたグリシン輸送の量を測定することからなる方法を提供する。好ましくは、この方法は、更に、第一の測定組成物によって示されたグリシン輸送の量を、生理活性剤又は期待される生理活性剤と接触させないこと以外は、第一の測定組成物と同じに処理された第二の測定組成物によって示されたグリシン輸送の量と比較することを含む。この方法は、神経系障害又は状態が、(a)痛み、(b)痙性、(c)ミオクロヌス、(d)筋痙攣、(e)筋機能亢進又は(f)てんかんからなる群の1つである生理活性剤を確認するのに用いることができる。好ましい実施態様においては、生理活性剤が確認される痙性は、発作、頭部外傷、神経細胞死、多発性硬化症、脊髄損傷、失調症、ハンチントン病又は筋萎縮性側索硬化症と関係している。
【0008】
更に、本発明は、(a)ラット若しくはマウスGlyT―2輸送体のための配列又は(b)哺乳類GlyT―1輸送体のための配列とのハイブリダイゼーションを排除するのに十分なストリンジェンシー(stringency)の条件下で、配列番号:26である基準核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、(n)A2203をGへ、(o)C342をGへ、(p)C352をTへ、(q)T733をCへ、(r)A777をGへ、(s)G913をCへ、(t)G951をAへ、(u)C1097をTへ、若しくは(v)T1199をCへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている配列と交雑する核酸を提供する。好ましくは、この核酸配列は、長さが少なくとも約18個のヌクレオチドであり、基準核酸配列にはめ込まれた配列と少なくとも約95%の配列同一性を有している。好ましくは、この核酸配列は、長さが少なくとも約40個のヌクレオチドであり、更に好ましくは、長さが少なくとも約100個のヌクレオチドである。好ましくは、この核酸配列は、上記基準配列と少なくとも約97%の配列同一性を有し、更に好ましくは、99%の配列同一性を有する。好ましくは、この核酸は、PCRプライマーであり、ストリンジェント(stringent)条件は、ヒトGlyT―2配列を増幅するのには有効であるが、(a)ラット若しくはマウスGlyT―2輸送体のための配列又は(b)哺乳類GlyT―1輸送体のための配列を増幅するには有効でないPCR条件である。
更に、本発明は、ヒトGlyT―2遺伝子又はcDNAのコーディング又は非コーディングストランドからの近接配列を含む、長さが少なくとも約18個のヌクレオチドの核酸を提供し、ここで、この近接配列は、この近接配列と並べたラットGlyT―2遺伝子配列と比較した場合、少なくとも1つの配列相違を有しているものである。好ましくは、この核酸配列は、長さが少なくとも約40個のヌクレオチドであり、更に好ましくは、長さが少なくとも約100個のヌクレオチドである。好ましくは、この近接配列は、この近接配列と並べたラットGlyT―2遺伝子配列と比較した場合、少なくとも2つ、更に好ましくは、3つの配列相違を有している。
【0009】
更に、本発明は、細胞、組織、器官又は動物に投与した場合、その細胞又はその組織、器官若しくは動物の細胞内でのGlyT―2の発現を低下させるのに有効なGlyT―2のためのヒト遺伝子又はcDNAのコーディング又は非コーディングストランドからの近接配列を含むアンチセンス分子を提供し、ここで、この近接配列は、該近接配列と並べたラットGlyT―2遺伝子配列と比較した場合、少なくとも1つの配列相違を有しているものである。好ましくは、この近接配列は、この近接配列と並べたラットGlyT―2遺伝子配列と比較した場合、少なくとも2つ、更に好ましくは、3つの配列相違を有している。“アンチセンス分子”という語句は、ゲノムDNA又はmRNAと結合して、mRNA安定性を妨げることを始め、転写又は翻訳を妨害するように設計された分子を意味するのに用いられる。好ましくは、この近接配列は、長さが少なくとも約15個のヌクレオチドである。近接伸長(contiguous stretch)は、基準核酸配列のコーディング又は非コーディングストランドに含まれていることが好ましい。好ましくは、近接伸長(contiguous stretch)は、配列番号:26の核酸配列のコーディング又は非コーディングストランド内にある。本発明は、更に、このようなアンチセンス分子を含む発現ベクターを提供する。
本発明は、組織又は細胞に、GlyT―2発現低減有効量のこのようなアンチセンス分子、又はGlyT―2発現低減有効量の、組織又は細胞内でこのようなアンチセンス分子を発現させる発現ベクターを適用することからなる、組織又は細胞内でのGlyT―2発現を低減させる方法を提供するものでもある。また、本発明は、ヒトの患者の組織又は細胞に、神経系障害若しくは状態治療有効量のこのようなアンチセンス分子、又は神経系障害若しくは状態治療有効量の、組織又は細胞内でこのようなアンチセンス分子を発現させる発現ベクターを適用することからなる、神経系障害又は状態を治療する方法を提供する。
【0010】
更に、本発明は、動物がグリシン輸送体に対する自己免疫抗体を持っているかどうかを検出する方法を提供し、この方法は、動物からの抗体試料又は動物からの体液を、グリシン輸送体を含むかあるいはグリシン輸送体から誘導されるポリペプチド抗原と接触させることからなる。ポリペプチド抗原は、配列番号:27の蛋白質配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列によりコードされた近接配列を含むことが好ましい。好ましくは、近接配列は、長さが少なくとも約6個のアミノ酸であり、更に好ましくは、長さが少なくとも約10個のアミノ酸であり、更に一層好ましくは、長さが少なくとも約15個のアミノ酸である。本発明の1つの実施態様においては、ペプチド抗原は、GlyT―1輸送体あるいはGlyT―2輸送体に対する抗原について選択的である。
【発明の効果】
【0011】
本発明で見出された新規なヒトGlyT2により、ヒトにおけるグリシンの関与する病気の解明、治療、予防に有効な生物活性剤の探索が可能となり、また動物がグリシン輸送体に対する自己免疫抗体を持っているかどうかを検出する方法を提供することに成功した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
定義
本出願のためには、次の用語は、以下に示す意味を有するものとする。
○生理活性剤
生理活性剤は、細胞、ウイルス、組織、器官又は生体に作用することができる化学薬品などの物質であり、細胞、ウイルス、器官又は生体の機能化に変化をもたらす薬剤(即ち、医薬)が挙げられるが、これに限定されるものではない。好ましくは、生体は哺乳動物であり、更に好ましくは、ヒトである。本発明の好ましい実施態様においては、本発明の生理活性剤を同定する方法は、分子量が約1500以下の有機分子に適用される。
○外因的に誘導された核酸
外因的に誘導された核酸は、細胞内に見出される核酸であって、その細胞、その細胞の親若しくは祖先、又はその細胞が組み換え技術によって誘導される遺伝子導入動物に導入されたものである。
○核酸と機能的に関連する外因性プロモーター
蛋白質をコードする核酸用の外因性プロモーターは、その蛋白質のための核酸を発現するのに現実に用いられるものとは別のプロモーターである。プロモーターと両立しうる細胞内で、プロモーターが作用して核酸を転写させることができれば、プロモーターは、核酸と機能的に関連する。
○核酸特異性
核酸特異性は、異なる核酸分子を区別するのに用いることができる性質である。このような性質には制限は無く、(i)分子の全て又は一部のヌクレオチド配列、(ii)例えば、電気泳動で求めた分子の大きさ、(iii)核酸を断片化する化学薬品での処理によって生ずるか、あるいはヌクレアーゼにより生ずる切断パターン、及び(iv)分子又はその断片が、特定の核酸プローブと交雑するか、あるいは特定のプライマーとアンプリコン(amplicon)を作る能力が挙げられる。
○予期される剤(prospective agent)
予期される剤は、グリシン輸送に影響を及ぼすかどうかを決定するために、本発明のスクリーニング法によって試験されている物質である。
○配列同一性
技術上知られているように、“同一性”とは、配列を比較することにより求められた場合、特にこのような配列のストリング(strings)間の合致により求められた場合、2つ以上のポリペプチド配列又は2つ以上のポリヌクレオチド配列の間の関係である。“同一性”は、公知の方法(A.M. Lesk 編、計算分子生物学、Oxford University Press, New York (1988)、D.W. Smith 編、バイオコンピューティング:情報科学及びゲノムプロジェクト、Academic Press, New York (1993)、A.M. Griffin 及び H.G. Griffin 編、配列データのコンピューター解析、第一部、Humana Press, New Jersey (1994)、G. von Heinje、分子生物学における配列解析、Academic Press (1987)、及び M. Gribskov 及び J. Dcvereux 編、配列解析プライマー、M. Stockton Press, New York (1991))により容易に計算される。2つの配列間の同一性を測定するには、多くの方法が存在するが、この用語は、当業者に周知である(例えば、分子生物学における配列解析、配列解析プライマー、及び H. Carillo 及び D. Lipman、SIAM J. Applied Math., 48,1073 (1988) 参照)。配列間の同一性を求めるのに一般に用いられる方法としては、H. Carillo 及び D. Lipman、SIAM J. Applied Math., 48,1073 (1988)、又は、好ましくは、Needleman 及び Wunsch、J. Mol. Biol., 48, 443-445 (1970) に記載されているものが挙げられ、そこでは、パラメーターがDNASIS(Hitachi Software Engineering Co., San Bruno, CA)のバージョン2にセットされているものであるが、これらに限定されるものではない。同一性を求めるためのコンピュータープログラムは、公然と入手可能である。2つの配列間の同一性を求める好ましいコンピュータープログラム方法としては、GCGプログラムパッケージ(J. Devereux 等、Nucleic Acids Research, 12(1), 387 (1984))、BLASTP、BLASTN及びFASTA(S.F. Altschul 等、J. Molec. Biol., 215, 403-410 (1990))が挙げられるが、これらに限定されるものではない。BLASTXプログラムは、NCBI(blast@ncbi.nlm.nih.gov.)及びその他の情報源(BLAST Manual, S. Altschul 等、NCBI NLM NIH Bethesda, MD 20894; S. Altschul 等、J. Molec. Biol., 215, 403-410 (1990))から公然と入手可能である。
【0013】
発明の詳細な説明
配列番号18及び26のGlyT―2核酸配列又は配列番号19及び27の対応するコードされた蛋白質配列は、Liu 等、J. Biol. Chem., 268, 22802-22808 (1992) に報告されているラットGlyT―2配列のヒト類縁である。配列番号:21、即ち、配列番号:20の核酸配列によりコードされたGlyT―2蛋白質配列は、配列番号:19及び27のアミノ酸配列とは異なり、おそらく、ヒトGlyT―2の変異体を示しているであろう。配列番号:1〜34に記載された他の配列は、更に変異を示すものである。これらの変異は、クローンを生成するためのいくつかのドナーについてプールされたmRNAからのcDNAの使用に主として起因する。全体で、単離された種々のヒトGlyT―2由来核酸が、下記の配列変異を示す。
【0014】
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【表1D】
【表1E】
この変異の源になるものとは無関係に、ペプチド配列における点変異は、停止コドンを除いて、GlyT―2の機能に悪影響を与えないものと信じられている。配列番号:19及び27のGlyT―2蛋白質配列が特に最も好ましく、配列番号:27が最も好ましい。配列番号:26の核酸配列は、大きいコンセンサス配列を提供するものと信じられている。
上記変異は、主にヒト個体間の配列変異を示すものである。上記核酸配列を生成させるのに用いられる物質は、特定の核酸配列に応じて、26又は92の個体からのプールを含んでいた。沈黙又は保存変異(silent or conservative substitutions)が優勢であることと共に、プールされた原料物質を使用することにより、変異が、増幅反応によって生ずる突然変異よりも、むしろヒト由来変異を反映するものであるという結論が支持される。
配列番号18のヒトヌクレオチド配列とGlyT―2のためのラットヌクレオチド配列との関係、及びそれらがコードする蛋白質配列の関係は、下記の表に示す通りである。これらの表に示された関連値(relatedness values)は、ピアソンとリップマン(Pearson and Lipman)によって記載されたFASTAコンピュータープログラム(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 2444-2448 (1988))を用いて求めた。
【0015】
【表2A】
【表2B】
【0016】
核酸−ググリシン輸送体をコードする核酸
グリシン輸送体をコードする天然に存在しない核酸を作るためには、未変性配列を出発点として用い、特定の要求に適するように変性することができる。例えば、配列を突然変異させて、有用な制限部位を取り入れることができる。Maniatis 等、分子クローニング、実験室マニュアル(Molecular Cloning, a Laboratory Manual)(Cold Spring Harbor Press, 1989)参照。このような制限部位は、“カセット”、即ち制限酵素と連結反応を用いて円滑に置換された核酸の領域を作るのに用いることができる。このカセットは、突然変異グリシン輸送体アミノ酸配列をコードする合成配列を置換するのに用いることができる。また、グリシン輸送体をコードする配列は、実質的又は完全に合成したものであることができる。例えば、Goeddel 等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76, 106-110 (1979)参照。組み換え発現のためには、このような核酸が発現されることになる生体へのコドン使用優先(codon usage preferences)を、グリシン輸送体をコードする合成核酸を設計する際に考慮するのが好都合である。例えば、原核コドン優先(prokaryotic codon preferences)を取り入れる核酸配列を、National Biosciences, Inc. (Plymouth, MN) から入手できるオリゴ―4(Oligo-4)などのソフトウエアプログラムを用いて、哺乳類由来の配列から設計することができる。
本発明の核酸配列実施態様は、好ましくはデオキシリボ核酸配列であり、好ましくは2本鎖デオキシリボ核酸配列である。しかし、それらは、リボ核酸配列であってもよい。
蛋白質をコードする核酸配列から配列を欠失させるか、あるいはその核酸配列を突然変異させ、これらの欠失又は突然変異した配列によってコードされた蛋白質の機能を確認するには、多数の方法が知られている。従って、本発明は、グリシンへ特異的に結合する能力及び膜を通してグリシンを輸送する能力を保持する蛋白質をコードするヒト核酸配列の突然変異又は欠失したものに関するものでもある。これらの類似体は、GlyT―2の機能が保持される限り、N末端、C末端又は内部欠失があってもよい。残っているヒトGlyT―2蛋白質配列は、配列番号:27の蛋白質配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列に関して、約4つ以下のアミノ酸配列変異を有することが好ましく、好ましくは2つ以下のアミノ酸配列変異、更に好ましくは1つ以下のアミノ酸変異を有するであろう。これらの変異は、配列番号:19又は27の蛋白質配列に関連していることが更に好ましく、配列番号:27が更に一層好ましい。1つの好ましい実施態様においては、本発明の蛋白質実施例が、配列番号:27の蛋白質配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、若しくは(10)Ile735をValへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列に関して、明らかにされている。点変異は、保存(conservative)点変異であることが好ましい。これらの類似体は、配列番号:27の蛋白質配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列と、好ましくは、少なくとも約96%の配列同一性、好ましくは、少なくとも約97%の配列同一性、更に好ましくは、少なくとも約98%の配列同一性、更に一層好ましくは、少なくとも約99%の配列同一性、更にもっと好ましくは、少なくとも約99.5%の配列同一性を有しているであろう。これらの変異は、配列番号:19又は27の蛋白質配列に関連していることが更に好ましく、配列番号:27が更に一層好ましい。突然変異又は欠失のアプローチは、ヒトGlyT―2蛋白質を発現する本発明の核酸配列の全てに適用されることができる。上で論じたように、保存(conservative)突然変異が好ましい。このような保存突然変異としては、下記の群の1つの範囲内で、1つのアミノ酸を他のアミノ酸に変換する突然変異が挙げられる。
1.小さい脂肪族非極性又はわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr、Pro及びGly
2.極性で、負に帯電した残基及びそれらのアミド類:Asp、Asn、Glu及びGln
3.極性で、正に帯電した残基:His、Arg及びLys
4.大きい脂肪族非極性残基:Met、Leu、Ile、Val及びCys
5.芳香族残基:Phe、Tyr及びTrp
保存変異の好ましいリスティングは、次の通りである。
【0017】
【表3】
【0018】
選択された変異の種類は、Schulz 等、Principles of Structure, Springer-Verlag (1978) によって開発された異なる種の同族蛋白質間のアミノ酸変異の頻度の解析、Chou 及び Fasman、Biochemistry, 13, 211 (1974) 並びに Adv. Enzymol, 47, 45-149 (1978) によって開発された構造形成ポテンシャルの解析、並びにEisenberg 等、Proc. Natl. Acad. USA, 81, 140-144 (1984)、Kyte & Doolittle、J. Molec. Biol., 157, 105-132 (1981) 及びGoldman 等、Ann. Rev. Biophys. Chem., 15, 321-353 (1986) によって開発された蛋白質における疎水性パターンの解析に基づけばよい。このパラグラフの参考文献は、全てそのまま、ここに参照のために記載する。
ここで同定された種々のヒトGlyT―2mRNA間にアミノ酸置換を生成する10の同定された点変異は、機能性GlyT―2を生成するのに有用であると信じられるので、これらの点変異の全ての組み合わせを取り込む蛋白質は、機能的であると信じられる。これらの変異は、本発明の範囲内である。
この適用のためには、本発明の核酸が、それが誘導される細胞又は組織の他の高分子から分離された場合は、その核酸が“単離”されたということである。この核酸を含む組成物は、もとの細胞の組成物よりも、核酸含有量に関して、少なくとも約10倍高いことが好ましい。この核酸は、実質的に純粋であることが好ましく、これは、他の核酸に関して、少なくとも約60%w/wの純度を意味し、更に好ましくは約80%、更に一層好ましくは約90%、更にもっと好ましくは約95%である。
【0019】
ハイブリダイゼーションプローブ
グリシン輸送体のための核酸配列の多くの欠失又は突然変異類似体は、グリシン輸送体をコードする核酸に有効なハイブリダイゼーションプローブであろうと認められるであろう。従って、本発明は、ストリンジェント(stringent)条件下で、このようなグリシン輸送体をコードする核酸配列と交雑する核酸配列に関するものである。好ましくは、この核酸配列は、配列番号:26の核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、(n)A2203をGへ、(o)C342をGへ、(p)C352をTへ、(q)T733をCへ、(r)A777をGへ、(s)G913をCへ、(t)G951をAへ、(u)C1097をTへ、若しくは(v)T1199をCへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている核酸配列と交雑する。1つの実施態様においては、本発明の核酸(又は機能的同等物)実施例が、配列番号:26の核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、若しくは(n)A2203をGへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている核酸配列に関して明らかにされている。
“ストリンジェント(stringent)条件”とは、実質的に関連する核酸配列のハイブリダイゼーションを許容する条件を意味する。例えば、このような条件下では、一般に、少なくとも約85%の配列同一性、好ましくは 少なくとも約90%の配列同一性、更に好ましくは少なくとも約95%の配列同一性で配列のハイブリダイゼーションが可能であろう。このようなハイブリダイゼーション条件は、Sambrook 等、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press (1989) により記載されている。ハイブリダイゼーション条件及びプローブを、十分に特徴のある方法で調整して、ヒト由来プローブの選択的ハイブリダイゼーションを行うことができる。
ストリンジェント(stringent)条件下で、グリシン輸送体をコードする核酸へ交雑する核酸分子は、上で略述した方法を用い、あるいは、例えば、Sambrook 等、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press (1989) で総説されているハイブリダイゼーション方式を使用することにより、機能的に同定されることができる。
ハイブリダイゼーションプローブへの用途の例としては、制限はなく、ヒトGlyT―2輸送体を発現する組織を同定することなどの組織化学的用途;mRNA濃度を測定して、例えばサンプルの組織の種類を同定するか、あるいは異常濃度のグリシン輸送体を発現する細胞を同定すること;及びグリシン輸送体遺伝子内の多形現象を検出することなどが挙げられる。RNAハイブリダイゼーション方法は、Maniatis 等、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press (1989))に記載されている。
【0020】
PCRプライマー
ポリメラーゼ連鎖反応(“PCR”)プライマーを設計する方式は、PCR Protocols, Cold Spring Harbor Press (1991) により総説されているように、現在、確立されている。変性(degenerate)プライマー、即ち、所定の配列場所で不均一なプライマー試料を、ヒトGlyT―2核酸と高度に類似しているが、同一ではない核酸配列を増幅するように設計することができる。必要とするプライマーのうちの1つだけを公知の配列と特異的に交雑させる方策は、現在、利用可能である。Froman 等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8998 (1988) 及び Loh 等、Science, 243, 217 (1989) 参照。例えば、適当な核酸プライマーを、増幅しようとする核酸に結合して、それらのプライマーのうちの1つのためのハイブリダイゼーションパートナーを提供することができる。この方法では、プライマーのうちの1つだけが、増幅しようとする核酸の配列に基づいていることが必要である。
核酸を増幅するPCR法は、少なくとも2つのプライマーを利用するであろう。これらのプライマーの一方は、増幅されるべき核酸の第一のストランドへ交雑することができ、酵素で行われる(enzyme-driven)核酸合成を第一の方向へ開始させる(prime)ことができるであろう。他方は、この第一のストランドの相互配列(もし、増幅されるべき配列が一本鎖のものであれば、この配列は、最初は仮定的であるが、第一の増幅サイクルで合成されるであろう)を交雑し、そのストランドから、第一の方向とは反対の方向で、第一のプライマーのためのハイブリダイゼーションの部位へ向かって、核酸合成を開始させることができるであろう。このような増幅を行うための条件、特に、好ましいストリンジェント(stringent)ハイブリダイゼーション条件は、よく知られている。例えば、PCR Protocols, Cold Spring Harbor Press (1991)参照。
【0021】
ベクター
適当な発現ベクターは、宿主細胞に含まれているGlyT―2コードDNAの発現を促進することができ、真核性、真菌性又は原核性であることができる。なかでも、適当な発現ベクターとしては、pRc/CMV(Invitrogen, San Diego, CA)、pRc/RSV(Invitrogen)、pcDNA3(Invitrogen)、Zap Express Vector(Stratagene Cloning Systems, LaJolla, CA)、pBk/CMV又はpBk−RSVベクター(Stratagene)、Bluescript II SK +/− Phagemid Vectors(Stratagene)、LacSwitch(Stratagene)、pMAM及びpMAM neo(Clontech, Palo Alto, CA)、pKSV10(Pharmacia, Piscataway, NJ)、pCRscript(Stratagene)及びpCR2.1(Invitrogen)が挙げられる。有用な酵素発現系としては、例えば、pYEUra3(Clontech)が挙げられる。有用なバキュロウイルスベクターとしては、pVL1393、pVL1392、pBluBac2、pBluBacHis A、B又はCなどの Invitrogen(San Diego, CA)からのウイルス性ベクターや、pbacPAC6(Clontech から)が挙げられる。
【0022】
細胞
本発明の1つの実施態様においては、輸送体は、哺乳類の細胞系内で発現されるのが好ましく、株化細胞培養履歴を有する形質転換細胞内で発現されるのが好ましい。この実施態様においては、特に好ましい細胞系としては、COS―1、COS―7、LM(tk−)、Hela、HEK293、CHO、Rat―1及びNIH3T3が挙げられる。他の好ましい細胞としては、QT―6細胞などの鳥類細胞が挙げられる。用いることのできる他の細胞としては、ショウジョウバエ細胞などの昆虫細胞、魚類細胞、両生類細胞及び爬虫類細胞が挙げられる。
他の実施態様においては、細菌細胞系や酵素細胞系などの、哺乳類細胞系よりも安価に維持され、成長する細胞系内で発現される。
【0023】
単離されたグリシン輸送体
本発明は、好ましくは、蛋白質に関して少なくとも約80%、好ましくは90%、更に好ましくは95%の純度で、本発明の核酸の任意のものによりコードされたヒトGlyT―2蛋白質を規定するものでもある。純度は、例えば、下記のような蛋白質精製方法を、本発明による組み換え細胞の溶解産物に適用することにより達成される。
上のパラグラフのヒトGlyT―2変異株は、ヒトGlyT―2活性を生ずる生体又は細胞を作るのに使用されることができる。関連分子生物学法を始めとする精製方法を次に述べる。
【0024】
グリシン輸送体を製造する方法
本発明の核酸の1つの指示(direction)のもとで生体により合成されたポリペプチドを単離する1つの単純化された方法は、融合パートナーが円滑にアフィニティ精製されている融合蛋白質を組み換え的に発現させることである。例えば、融合パートナーとしては、グルタチオンS―トランスフェラーゼを挙げることができ、これは、市販の発現ベクター(例えば、Pharmacia, Piscataway, NJ から入手できるベクターpGEX4T3)上でコードされる。次いで、この融合蛋白質を、グルタチオンアフィニティカラム(例えば、Pharmacia, Piscataway, NJ から入手できるもの)で精製することができる。その他の融合パートナーも、例えば、Invitrogen (Carlsbad, CA)で販売されている種々の発現ベクターにおいて使用できる。勿論、このような融合パートナー無しに、GlyT―2に結合する適当な抗体を用いて、組み換えポリペプチドをアフィニティ精製することができる。このような抗体を製造する方法は、GlyT―2発現系及び既知の抗体製造法のここでの十分な記載に照らしてみれば、当業者にとって利用できるものである。例えば、Ausubel 等、Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York (1992) 参照。融合蛋白質を使用する場合は、融合パートナーとGlyT―2との間のリンカーなどのような構造ができていない領域を優先的に攻撃する部分蛋白分解消化法により、融合パートナーを除去することができる。例えば、Chou 及び Fasman、Biochemistry, 13, 211 (1974) 並びに Chou 及び Fasman、Adv. in Enzymol., 47, 45-147 (1978) によって開発された二次構造形成ポテンシャルの方式を用いて、構造が存在しないようにリンカーを設計することができる。トリプシンにより切断された部位を規定するアミノ酸であるアルギニン及びリシン残基、又は、例えば、AspAspAspAspLysなどの、リシン残基の後で切断されたエンテロキナーゼ標的配列のような、プロテアーゼ標的アミノ酸を導入するように、リンカーを設計することもできる。リンカーを作るためには、標準サブクローニング方法論と共に、オリゴヌクレオチドを作る標準合成法を用いることができる。GST以外にも、他の融合パートナーを用いることができる。真核細胞、特に哺乳類細胞を利用する方法は、これらの細胞が蛋白質を翻訳後に改変して、天然蛋白質と高度に類似しているか、あるいはそれと機能的に同一である分子を作るので好ましい。
用いることができる他の精製技術としては、制限はなく、予備電気泳動、FPLC(Pharmacia, Uppsala, Sweden)、HPLC(例えば、ゲル濾過、逆相又は弱疎水性カラムを用いる)、ゲル濾過、分別沈殿(例えば、“塩析”沈殿)、イオン交換クロマトグラフィー及びアフィニティクロマトグラフィーが挙げられる。
GlyT―2は膜蛋白質であり、関連輸送体蛋白質との類似により12の膜内外配列を持っていいると信じられているため、単離方法では、洗浄剤、一般には非イオン性洗浄剤を用いて、蛋白質の適当な二次又は三次構造を維持することが多いであろう。例えば、Lopez-Corcuera 等、J. Biol. Chem., 266, 24809-24814 (1991) 参照。可溶化された輸送体を膜内に再統合する方法の記載については、Lopez-Corcuera 等、J. Biol. Chem., 266, 24809-24814 (1991) 参照。
GlyT―2の単離は、GlyT―2を発現するために形質転換された細胞から膜を単離することを含むことができる。このような細胞は、膜画分内のGlyT―2の量が、自然にGlyT―2を発現する細胞からの比較しうる膜に見られるものよりも少なくとも約10倍、更に好ましくは、その量が少なくとも約100倍高くなるような十分な複製数でGlyT―2を発現することが好ましい。
この蛋白質は、実質的に純粋であることが好ましく、これは、他の蛋白質に関して、少なくとも60%の純度を意味する。この適用のためには、GlyT―2が、それが誘導される細胞又は組織の他の高分子から分離された場合は、GlyT―2が“単離”されたということである。GlyT―2を含む組成物は、もとの細胞の組成物よりも、蛋白質含有量に関して、少なくとも約10倍、好ましくは少なくとも約100倍高いことが好ましい。
【0025】
RNA挿入によるGlyT―2の発現
mRNAを細胞に挿入するという簡単な方法で、ヒトGlyT―2を発現させることができるということが認められるであろう。GlyT―2活性を有する蛋白質をコードする核酸を、SP6又はT7RNAポリメラーゼプロモーターなどの、高効率生体外転写用プロモーターを含むベクターへサブクローニングすることにより、これらの用途のRNAを調製することができる。このベクターからのRNAの製造は、例えば、Ausubel 等、Short Protocols in Molecular Biology, pp. 10-63 から 10-65 まで、John Wiley & Sons, New York (1992) に記載されている方法で行うことができる。アフリカツメガエル由来の卵母細胞へのRNAの挿入が、例えば、Liu 等、FEBS Letters, 305, 110-114 (1992) 及び Bannon 等、J. Neurochem., 54, 706-708 (1990) に記載されている。
一方、mRNAを、膜含有翻訳系であってもよい生体外翻訳系に挿入するという簡単な方法で、ヒトGlyT―2を発現させることができるということが認められるであろう。生体外での蛋白質の発現は、例えば、Ausubel 等、Short Protocols in Molecular Biology, pp. 10-63 から 10-65 まで、John Wiley & Sons, New York (1992) に記載されている。Guastella 等、Science, 249, 1303-1306 (1990) (輸送体の生体外発現)も参照。生体外で膜蛋白質を製造するのに、細胞下膜様物質を使用することが、Walter 及び Blobel、Meth. Enzymol., 96, 84 (1983) (ウサギ網状赤血球翻訳系について)並びに Spiess 及び Lodish、Cell, 44, 177 (1986) (小麦胚芽翻訳系について)に記載されている。
【0026】
剤を確認又は同定する方法
神経系障害若しくは状態に関連する病気若しくは状態の治療用生理活性剤を分析又はスクリーニングする方法は、第一及び第二の細胞を別々に培養することからなり、ここで、その第一及び第二の細胞は、好ましくは同一種のもの、更に好ましくはその同一株のものであり、ここで述べられているようなグリシン輸送体をコードする外因性核酸を含んでいる。この剤を治療のために使用できる神経系障害又は状態としては、(a)痛み、(b)ミオクロヌス、(c)筋痙攣、(d)筋機能亢進、(e)てんかん又は(f)発作、頭部外傷、神経細胞死、多発性硬化症、脊髄損傷、失調症、ハンチントン病又は筋萎縮性側索硬化症と関係しているものなどの痙性が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この方法では、第一の細胞を、好ましくは3Hや14Cなどの放射性同位元素を取り入れているグリシンの存在下で、好ましくはペプチド又は有機化合物などの化合物である生理活性剤又は予期される剤(prospective agent)と接触させる。次いで、第一の細胞を、その化合物と接触させなかった第二の細胞(即ち、対照細胞)へのグリシン輸送と比較して、第一の細胞へのグリシン輸送の促進又は抑制について試験する。このような分析又はスクリーニングには、好ましくは所見、学習、発見、測定、同定又は確認の活性(activities of finding, learning, discovering, determining, identifying or ascertaining )が含まれる。
一方で、細胞の代わりに、単離されたGlyT―2輸送体を含む化合物を測定に用いることができる。このような単離された輸送体の試料は、好ましくは小胞内に膜又は脂質二重層を含むことが好ましく、その小胞は、内部と外部とを有し、その外部を横切って輸送を測定することができる。例えば、Kanner、Biochemistry, 17, 1207-1211 (1978) 参照。
試験の終わりにおいて、細胞内、小胞内又はその他に輸送されたグリシンの量が、剤と接触させなかった組成物よりも、剤と接触させた組成物の方が大きい場合は、生理活性剤はグリシン輸送取り込みの促進剤であり、逆に、細胞内又は小胞内グリシンの量が、他方と比較して、剤と接触させなかった組成物の方が大きい場合は、生理活性剤は、グリシン輸送の抑制剤である。試験される第一の組成物と対照の第二の組成物との間のグリシン取り込みの差は、好ましくは少なくとも約2倍、更に好ましくは少なくとも約5倍、最も好ましくは少なくとも約10倍以上である。
GlyT―2輸送体に関する抑制剤又は促進剤である生理活性剤は、GlyT―1輸送体の1つなどの他のグリシン輸送体については、中立又は反対の影響を有する。好ましい生理活性剤は、GlyT―2輸送体を促進又は抑制する特異性を有し、他のグリシン輸送体に及ぼす影響は、中立又は無視できるものである。生理活性剤は、第二のグリシン輸送体に及ぼすその影響と比較して、GlyT―2輸送体によって媒介されたグリシン取り込みを抑制又は促進する際に、IC50値などの濃度依存性パラメーターに反映して、大きさが少なくとも1オーダー大きい効力を持っていることが好ましい。より好ましい剤は、グリシン輸送体の1つについて、他のものと比較して、少なくとも約100倍大きい効力を有している。
生理活性剤は、輸送体と接触するように拡散することができる形でグリシン輸送体に供与できれば、どのような化合物、物質、組成物、混合物又は化学薬品であってもよい。このような生理活性剤としては、好ましくは長さが2から約25までのアミノ酸、より好ましくは2から約10まで、更に一層好ましくは長さが2から約5のアミノ酸のポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明に関連する他の適当な生理活性剤としては、好ましくは分子量が約100ダルトンから約5,000ダルトンまでの小さい有機化合物が挙げられ、アルキル、アリール、アルケン、アルキン、ハロ、シアノ及びその他の基のような機能性(functionalities)からなり、ヘテロ原子は含んでいても含まなくてもよい。このような有機化合物としては、単純糖(simple sugar)を始めとする炭水化物、アミノ又はイミノ酸、核酸、ステロイドなどを挙げることができる。予期される剤(prospective agent)として試験される化学薬品は、当該技術分野において知られている組み合わせ化学プロセス又は化学合成の従来からの手段を用いて、調製することができる。生理活性剤が、神経系障害又は状態の治療用薬剤として有用であることが好ましい。
GlyT―1又はGlyT―2媒介輸送を抑制するいくつかの化合物は、ストリキニン感受性受容体のグリシン結合部位又はNMDA受容体のグリシン結合部位へも結合する。ストリキニン感受性受容体へのこのような結合は、例えば、脊髄や脳幹組織からの膜画分から調製されることができるような、ストリキニン感受性受容体の試料と接触して、放射線標識ストリキニンを置くことによる結合測定法により同定することができる。膜画分は、例えば、均質化及び遠心分離の方法を含む通常の方法を用いて調製することができる。
NMDA受容体へのこのような結合は、例えば、神経細胞や脳組織からの膜画分から調製されることができるような、NMDA受容体の試料と接触して、放射線標識グリシンを置くことによる結合測定法により同定することができる。Grimwood 等、Molec. Pharmacol., 41, 923-930 (1992)。このような膜内に置かれたNMDA受容体は、約0.1%〜約0.5%サポニンなどの弱い洗浄剤で処理されて、どのような内因性グリシン又はグルタミン酸塩でも除去する。
このような結合測定法で用いられるリガンドは、炭素又は水素の放射性同位元素のような、任意の検出可能な同位元素で放射線標識されている。次いで、放射線標識リガンドの特異的結合を、放射線標識リガンドの全(即ち、特異的及び非特異的)結合による放射能から非特異的結合による放射能を引くことにより求める。非特異的結合による放射能は、放射線標識リガンド及び100倍過剰のように著しく過剰の非放射線標識リガンドの両方に接触したストリキニン感受性又はNMDA受容体含有膜画分と結合した放射線標識の量を測定することにより求められる。放射線標識リガンドの全結合による放射能は、非放射線標識リガンドの不存在下で、受容体試料に結合した放射線標識の量を測定することにより求められる。NMDA受容体については、例えば、ジクロロキヌレン酸又はL―689,560などのアミノ酸の標識類似体を用いて、受容体のグリシン部位への結合を測定することもできる。例えば、Grimwood 等、Molec. Pharmacol., 41, 923-930 (1992)参照。
カルシウムフラックス(NMDA受容体試料について)若しくは塩化物フラックス(ストリキニン感受性受容体試料について)を促進又は抑制することに関して、本発明によって同定された化合物の効果を測定するのに、機能性イオンフラックス測定法(functional ion-flux assay)が用いられる。この試験は、膜結合NMDA受容体又はストリキニン感受性受容体とグリシン輸送体を有する細胞培養で行われる。このような細胞は、神経細胞を含み、一般には、脳幹及び脊髄のもの、それらから誘導された細胞株及びNMDA受容体又はストリキニン感受性受容体を発現するように誘導又はトランスフェクトされた他の任意の細胞を含む。このような試験に用いられるカルシウムは、カルシウムキレーター(chelator)と結合した蛍光である、カルシウム結合蛍光などの他のカルシウム測定技術を同様に用いることもできるが、一般には、45Ca同位元素である。このような試験に用いられる塩化物は、通常、同位元素36Clが挙げられる。どの方法でカルシウム又は塩化物をモニターしても、本発明の生理活性剤を別に添加すれば、その結果、イオンフラックスを促進又は抑制することができる。この方式の利点は、受容体とグリシン輸送体の両方のグリシン部位に相互作用する化合物のNMDA受容体又はストリキニン感受性受容体機能に及ぼす正味の影響をモニターできるという点にある。
ストリキニン感受性受容体アゴニストでもあるGlyT―2抑制剤は、グリシン輸送体の抑制、そしてストリキニン感受性受容体活性を直接高めることで、ストリキニン感受性受容体発現シナプスにおけるグリシン濃度を増大させることにより、上記適応症(indications)において作用する。ストリキニン感受性受容体アンタゴニストでもあるグリシン輸送体抑制剤は、例えば、グリシン輸送体抑制によるグリシンの増加が、ストリキニン感受性受容体拮抗作用よりも優勢であれば、それにもかかわらず、これらの適応症を治療する際に活性を保持することができる。ストリキニン感受性受容体アンタゴニスト活性が、グリシン輸送体の抑制に起因する細胞外グリシン増加効果よりも優勢である場合は、これらの化合物は、重症筋無力症などの筋肉活性の低下に関連する状態を治療するのに有用である。
【0027】
上述のごとく、本発明の生理活性剤は、多数の薬理作用を持つことができる。これらの化合物の相対的有効性は、下記のものを含む多くの方法で評価することができる。
1.GlyT―1及びGlyT―2輸送体により媒介された活性を比較すること。この試験は、(a)GlyT―1輸送体に対してより活性であり、従って、精神分裂症を治療若しくは予防し、認識を増進し、記憶を増強するのにより有用な、又は(b)GlyT―2輸送体に対してより活性であり、従って、てんかん、痛み若しくは痙性を治療若しくは予防するのにより有用な生理活性剤を同定する。
2.ストリキニン感受性受容体又はNMDA受容体結合の試験。この試験は、このような結合の薬理学的効果を更に調べることを保証するのに十分な結合がこの部位にあるかどうかを決定する。
3.一次組織培養におけるイオンフラックス、例えば、ストリキニン感受性受容体により媒介された塩化物イオンフラックス若しくはNMDA受容体により媒介されたカルシウムイオンフラックスを促進又は低減させる際に、化合物の活性を試験する。イオンフラックスを増大させる生理活性剤は、(a)ストリキニン感受性受容体にアンタゴニストをほとんど持たないかあるいは全く持っておらず、GlyT―2輸送体抑制によるグリシン活性の増強におそらく影響を与えないものであるか、又は(b)ストリキニン感受性受容体との直接の相互作用がほとんどない比較GlyT―2抑制剤との結果に著しい増加が認められれば、その剤は、受容体アゴニストである。
本発明の剤分析法は、生理活性剤が、NMDA受容体とGlyT―2輸送体とが関係している適応症を治療するのに有用であるかどうかを確認するのに用いられることがあるであろう。この場合、一般に、ストリキニン感受性受容体とGlyT―2輸送体に関する活性の程度が低いほど、望ましい。
【0028】
アンチセンス治療法
本発明の1つの態様は、上で確認されたもののような神経性適応症を治療するための“アンチセンス”核酸の使用に関するものである。このアプローチは、GlyT―2をコードするmRNAに結合して、そのmRNAの翻訳を停止又は抑制するか、あるいはGlyT―2遺伝子に結合して、その転写を妨げるように設計されたアンチセンス分子の使用を含むものである。ゲノムDNAに結合して、転写を妨げるヌクレオチド配列の設計の議論については、Helene、Anti-Cancer Drug Design, 6, 569 (1991) 参照。結合されようとするmRNA配列が分かれば、ワトソン−クリック(Watson-Crick)塩基対合則によりセンスストランドに結合して、DNA二重らせんと類似の二重構造を形成するアンチセンス分子を設計することができる。Erikson 及び Ixzant 編、遺伝子調節:アンチセンスRNA及びDNAの生物学(Gene Regulation: Biology of Antisense RNA and DNA)、Raven Press, New York (1991);Helene、Anti-Cancer Drug Design, 6, 569 (1991);Crooke、Anti-Cancer Drug Design, 6, 609 (1991)。
アンチセンス技術を十分に利用することに対する重大な障害は、標的mRNAの翻訳又はDNAの機能を有効に妨げるのに十分な数のアンチセンス分子を細胞内に効率的に導入するという問題である。この問題を克服するのに用いられている1つの方法は、アンチセンスポリ核酸分子の5’又は3’末端を疎水性置換基により共有結合で変性することである。これらの変性核酸は、一般に、一層効率よく細胞内に入り込む。例えば、Boutorin 等、FEBS Lett., 23, 1382-1390 (1989);Shea 等、Nucleic Acids Res., 18, 3777-3783 (1990) 参照。更に、アンチセンス分子のリン酸塩バックボーンは、負の電荷を除去又は低減させるように変性されており(例えば、Agris 等、Biochemistry, 25, 6268 (1986);Mol 及び Van der Krol 編、アンチセンス核酸と蛋白質:基礎と応用(Antisense Nucleic Acids and Proteins: Fundamentals and Applications) における Cazenave 及び Helene、47頁以降、Marcel Dekker, New York (1991) 参照)、又はプリン若しくはピリミジン塩基が変性されている(例えば、Mol 及び Van der Krol 編、アンチセンス核酸と蛋白質:基礎と応用、47頁以降、Marcel Dekker, New York (1991);Huber 及び Laso 編、腫瘍疾患の遺伝子治療(Gene Therapy For Neoplastic Diseases)におけるMilligan 等、288頁以降、New York Academy of Sciences, New York (1994) 参照)。細胞透過障害を克服する他の方法としては、少ないコピー数で細胞内に挿入されることができるが、細胞内では、細胞機構(cellular machinery)を支配して、より多くの可成りの量のアンチセンスポリ核酸分子を合成することができる発現ベクターにアンチセンスポリ核酸配列を導入することが挙げられる。例えば、Farhood 等、Ann. N.Y. Acad. Sci., 716, 23 (1994) 参照。この方策は、アンチセンス配列が取り込まれた発現部位を有する組み換えウイルスを使用することを含むものである。例えば、Boris-Lawrie 及び Temin、Ann. N.Y. Acad. Sci., 716, 59 (1994) 参照。その他にも、アンチセンス分子又は他の核酸分子の負の電荷をポリカチオンで中和することにより、膜透過性を高めることが試みられている。例えば、Wu 及び Wu、Biochemistry, 27, 887-892 (1988);Behr 等、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 86, 6982-6986 (1989) 参照。
アンチセンス治療などの遺伝子治療に関しては、細胞からなくなっているか、あるいは更に大量に発現すれば細胞や生体にとって有用である蛋白質の合成を支配することができるDNAベクターを、1つ又はそれ以上の種類の生体に取り込もうとする試みが、医学研究者によってしばしば行われている。DNAを導入して、細胞が新しい蛋白質又はより多くの蛋白質を生成するようにさせる方法は、“トランスフェクション”法と呼ばれる。一般には、Huber 及び Lazo 編、腫瘍疾患(Neoplastic Diseases)、New York Academy of Science, New York (1994);Feinger、Adv. Drug Deliv. Rev., 5, 163 (1990);MacLachlin 等、Progr. Nucl. Acids Rev. Mol. Biol., 38, 91 (1990);Karlsson、S. Blood, 78, 2481 (1991);Einerhand 及び Valerio、Curr. Top Microbiol. Immunol., 177, 217-235 (1992);Makdisi 等、Prog. Liver Dis., 10, 1 (1992);Litzinger 及び Huang、Biochim. Biophys. Acta., 1113, 201 (1992);Morsy 等、J.A.M.A., 270, 2338 (1993);Dorudi 等、British J. Surgery, 80, 566 (1993) 参照。
核酸を細胞に取り込む他の一般的な方法としては、核酸のリン酸カルシウム沈殿及び標的細胞でのインキュベーション(Graham 及び Van der Eb、Virology, 52, 456 (1983))、核酸、DEAE―デキストラン及び細胞の混合インキュベーション(Sompayrac 及び Danna、Proc. Natl. Acad. Sci., 12, 7575 (1981))、核酸の存在下における細胞のエレクトロポレーション(Potter 等、Proc. Natl. Acad. Sci., 81, 7161-7165 (1984))、核酸をウイルス膜内に取り込んで、トランスフェクション小胞を作る方法(Gitman 等、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 82, 7309-7313 (1985))及びリポソームに取り込まれた核酸と共に細胞をインキュベートする方法(Wang 及び Huang、Proc. Natl. Acad. Sci., 84, 7851-7855 (1987))が挙げられる。遺伝子治療に対する1つのアプローチは、細胞内に導入しようとする遺伝子を、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス又はレトロウイルスなどのウイルスに取り込むことである。例えば、Akli 等、Nature Genetics, 3, 224 (1993) 参照。
【0029】
本発明の核酸組成物は、例えば、経口、局所、直腸、経鼻、経膣、例えば、エアロゾルの使用による吸引、又は、例えば、筋肉内、皮下、腹腔内、心室内若しくは静脈内などの非経口で投与される。この核酸組成物は、単独で投与されるか、あるいは標準的な医薬慣例に従って、薬理学的に許容されうる担体又は賦形剤と組み合わせられることができる。経口様式の投与では、核酸組成物は、錠剤、カプセル、ロゼンジ、トローチ、粉剤、シロップ、エリキシル、水溶液、懸濁液などの形で用いられる。錠剤の場合、用いられることができる担体としては、ラクトース、クエン酸ナトリウム及びリン酸の塩が挙げられる。澱粉などの種々の崩壊剤及びステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルクなどの滑沢剤が、一般に、錠剤に用いられる。カプセル形態での経口投与に関しては、有用な希釈剤は、ラクトース及び高分子量ポリエチレングリコールである。経口用に水性懸濁液が必要な場合は、核酸組成物を乳化及び懸濁剤と組み合わせることができる。所望であれば、ある種の甘味剤及び/又は着香剤を添加することができる。非経口投与に関しては、通常、接合体の無菌溶液を調製し、その溶液のpHを適当に調整、緩衝する。静脈使用については、溶質の全濃度を調節して、製剤を等張性にしなければならない。目への投与に関しては、塗布具又は点眼瓶などの公知の目搬送系(ocular delivery systems)により、軟膏又は点眼液を供給することができる。このような組成物としては、ヒアルロン酸、硫酸コンドロイチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルアルコールなどのムコミメチック(mucomimetics)、ソルビン酸、EDTA又は塩化ベンジルクロムなどの防腐剤、並びに通常量の希釈剤及び/又は担体を挙げることができる。肺投与については、エアロゾルを形成させるのに適当なように、希釈剤及び/又は担体を選択することになるであろう。
一般に、核酸組成物は、有効量で投与されるであろう。医薬用途については、有効量は、(1)治療しようとする適応症の症状を軽減するか、あるいは(2)治療しようとする適応症を治療又は予防するのに適切な薬理学的変化をもたらすのに有効な量である。
ウイルス遺伝子治療ベクターに関しては、投与量は、一般に、体重1kg当たり核酸が約1μgから約1mgまでであろう。非感染遺伝子治療ベクターについては、投与量は、一般に、体重1kg当たり核酸が約1μgから約100mgまでであろう。アンチセンスオリゴヌクレオチド投与量は、、一般に、体重1kg当たり核酸が約1μgから約100mgであろう。
【0030】
自己免疫異常
グリシン輸送体に対して抗体が作られる自己免疫異常は、病気の状態と関連していると予想することができる。例えば、GlyT―2輸送体については、このような異常が、筋肉活性の低下、例えば、臨床的には重症筋無力症とよく似た状態を示す筋肉活性の低下と関連しているか、あるいは痛み知覚の低下と関連している予想することができる。神経伝達に含まれる分子(グルタミン酸デカルボキシラーゼ)に対する自己抗体による病気の例については、Nathan 等、J. Neurosci. Res., 40, 134-137 (1995) 参照。
これらの抗体の存在は、ここに述べた核酸又は他のところで報告されている関連グリシン輸送体から得られる蛋白質配列を用いた、確立された免疫学的方法により、測定することができる。例えば、Kim 等、Mol. Pharmacol., 45, 608-617 (1994) 及び Liu 等、J. Biol. Chem., 268, 22802-22808 (1992) 参照。このような免疫学的方法は、例えば、Ausubel 等、分子生物学における簡単プロトコル(Short Protocols in Molecular Biology)、John Wiley & Sons, New York (1992) に記載されている。
次の実施例は、本発明を更に説明するものであるが、いずれにせよ、その範囲を限定するものと解釈されるべきでないことは勿論のことである。
【実施例】
【0031】
実施例1A−GlyT―2クローニング
ヒトGlyT―2をコードするcDNAを、逆転写PCR(RT―PCR)により2段階で生成した。第1段階では、ヒト脊髄ポリAmRNA(Clontech, Palo Alto, CA)からのcDNA合成を開始するのに、2540から2521まで(5’―GGRTCDATCATRTTYTTRTA)のラットGlyT―2ヌクレオチド配列に相当する変性プライマーを使用した。ラット配列についてここに列挙されたナンバーリングは、Liu 等、J. Biol. Chem., 268, 22802-22808 (1992) に報告されたナンバーリングによる。次いで、PCR反応に下記のプライマー対を使用した。
プライマーA1:5’―CCNAARGARATGAAYAARCCNCC
(配列番号:37;ラット配列のNT223−245に基づく)
プライマーA2:5’―GCNGTGAAGTACACCACTTTNCC
(配列番号:38;ラット配列のNT1490−1468に基づく)
プライマーB1:5’―CCNAARGARATGAAYAARCCNCC
(配列番号:39;ラット配列のNT223−245に基づく;プライマーA1と同じプライマー)
プライマーB2:5’―GGCYTCNGGGTAARCCACRAANGC
(配列番号:40;ラット配列のNT1872−1849に基づく)
“R”の表示は、オリゴヌクレオチド組成物が、示された位置において、アデノシンとグアノシンの混合物を有していることを示し“N”は、示された位置において、全部で4つの塩基の組み合わせを有する混合オリゴヌクレオチドに関するものであり、“Y”は、シトシンとチミジンの混合物に関するものであり、“K”は、グアノシンとチミジンの混合物に関するものであり、“D”は、アデノシン、グアノシン及びチミジンの混合物に関するものである。
A1+A2プライマー及びB1+B2プライマーにより生成した断片を、pCRscript(Stratagene, La Jolla, CA)又はpCR2.1(Invitrogen, San Diego, CA)の中に別々にクローン化し、得られたクローンから、オートリード(AutoRead)配列決定(sequencing)キット(Pgarmacia, Piscataway, NJ)を用いて配列決定された(sequenced)。リップマン―ピアソン(Lipman-Pearson)FASTAアルゴリズムを用いて、これらの配列をラットGlyT―2と比較したところ、89%の同一性であることが分かり、これらの配列がヒトGlyT―2をコードしていることを確認した。A1+A2プライマー対は、クローンphG2―1を作り、それは、その挿入物として、配列番号:5の核酸配列を有している。B1+B2プライマー対は、クローンphG2―2を作り、それは、その挿入物として、配列番号:7の核酸配列を有している。
第2段階については、ランダム6量体(Promega, Madison, WI)を用いて、ヒト脊髄又は小脳mRNA(Clontech, Palo Alto, CA)からcDNAを合成し、PCR用クローンphG2―1及びphG2―2の配列に基づいて、更に追加のプライマーを設計した。ヒトGlyT―2cDNAの5’及び3’末端を増幅するのに、次のプライマー対を用いた。
プライマーC1:5’―CGGTTCAATCTGTTGTCCGCATCAGACATG
(配列番号:41;ラット配列のNT181−210に基づく)
プライマーC2:5’―GCAGGCTCGCGCGTCCGCTG
(配列番号:42;ヒト配列のNT210−191に基づく)
プライマーD1:5’―CCCGTATGTCGTACTCGTGATCCTCCTCATCCG
(配列番号:43;ヒト配列のNT1284−1316に基づく)
プライマーD2:5’―CCNCCRTGNGTDATCATNGGRAANCCC
(配列番号:44;ラット配列のNT2087−2061に基づく)
プライマーE1:5’―CCCGTATGTCGTACTCGTGATCCTCCTCATCCG
(配列番号:43;ヒト配列のNT1284−1316に基づく)
プライマーE2:5’―CCATCCACACTACTGGAYYARCAYTGNGTNCC
(配列番号:45;ラット配列のNT2624−2593に基づく)
プライマーF1:5’―CAGATTTCCTTCTCTTTATCTGCTGCATGG
(配列番号:46;ヒト配列のNT1417−1446に基づく)
プライマーF2:5’―GGRTCDATCATRTTYTTRTANCKYTCNCC
(配列番号:47;ラット配列のNT2540−2512に基づく)
プライマーG1:5’―CCTGCACCAACAGTGCCACAAGC
(配列番号:48;ヒト配列のNT1517−1539に基づく)
プライマーG2:5’―CCATCCACACTACTGGAYYARCAYTGNGTNCC
(配列番号:45;ラット配列のNT2624−2593に基づく)
プライマーH1:5’―CCAAGTACCTACGCACACACAAGCC
(配列番号:49;ヒト配列のNT1784−1808に基づく)
プライマーH2:5’―GGATTAATACGGGACCATCCACACTACT
(配列番号:50;ラット配列のNT2638−2611に基づく)
C1+C2プライマー対は、それらの挿入物として、配列番号1及び3の核酸配列をそれぞれ有するクローンphG2―3―a及びphG2―3―bを作った。D1+D2プライマー対は、それらの挿入物として、配列番号10及び12の核酸配列をそれぞれ有するクローンphG2―4―a及びphG2―4―bを作った。E1+E2プライマー対は、ヌクレオチド1317−2379を包含すると信じられるクローンを作った。F1+F2プライマー対は、ヌクレオチド1447−2298を包含すると信じられるクローンを作った。G1+G2プライマー対は、クローンphG2―7―aを作り、それは、その挿入物として、配列番号:14の核酸配列を有しており、また、クローンphG2―7―bを作り、それは、その挿入物として、配列番号:16の核酸配列を有している。H1+H2プライマー対は、それらの挿入物として、配列番号22及び24の核酸配列をそれぞれ有するクローンphG2―8―a及びphG2―8―bを作った。
PCR断片をpCR2.1(Invitrogen)の中にクローン化した。図1は、ヒトGlyT―2配列全体に関するクローン化されたcDNAのそれぞれの場所を示す。クローンphG2―3及びphG2―8bは、ヒト小脳mRNAから得られ、一方、残りは、脊髄から得られた。cDNA挿入物は、オートリード配列決定キット(Pgarmacia)及びアルフェックスプレス(ALFexpress)TM自動配列決定装置(Pharmacia)を用いて配列決定した。これらの配列は、アミノ酸配列において、10点の変異を示した。配列番号:18のヒトGlyT―2DNA配列をラットGlyT―2配列と比較すると、FASTAアルゴリズムを用いて、89%の核酸同一性及び94.4%のアミノ酸同一性があることが分かった。
【0032】
実施例1A−更なるGlyT―2クローニング
次のプライマーも使用した。
プライマーI1:5’―AGCTCTGCGGGACTTGAGAG
(配列番号:51;ヒト配列のNT276−295に基づく)
プライマーI2:5’―GTACACCACTTTTCCTGAAGTCTTG
(配列番号:52;ヒト配列のNT1245−1269に基づく)
プライマーJ1:5’―AGCTCTGCGGGACTTGAGAG
(配列番号:51;ヒト配列のNT276−295に基づく)
プライマーJ1:5’―CCTTGGTCTGCCACATTCTCAATGTTG
(配列番号:53;ヒト配列のNT1599−1625に基づく)
I1+I2プライマー対は、それらの挿入物として、配列番号29、31及び33の核酸配列をそれぞれ有するクローンphG2―9―a、phG2―9―b及びphG2―8―cを作った。J1+J2プライマー対は、配列番号:35の核酸配列を有するクローンphG2―10を作った。
【0033】
実施例2−全長クローン
次いで、ヒトGlyT―2cDNAを用いて、全長ヒトGlyT―2コーディング配列を作り、それをpcDNA3ベクター(Invitrogen)の中へクローン化した。このクローンは、配列番号:20の核酸配列を取り込み、pHGT2―aと表示された。354bpのHindIII―NarI断片を、クローンphG2―3から予めHindIIIとNarIで消化されたクローンphG2―1へ挿入することによって、cDNAの5’末端を作った。HindIII―HincII断片をphG2―2から、HincII―XbaI断片をクローンphG2―7から、予めHindIII及びXbaIで消化されたpcDNA3ベクターへ挿入することによって、cDNAの3’末端を作った。最後に、5’末端クローンからのHindIII―NruI断片及び3’末端クローンからのNruI―XbaI断片を、HindIII及びXbaIで消化されたpcDNA3ベクター(Invitrogen)の中へクローン化した。このようにして得られたpHGT2―a発現クローンは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下で、1から2397までのヒトGlyT―2の配列を含んでいる。この発現クローンにおいては、nts1−173がクローンphG2―3から誘導され、nts174−823がクローンphG2―1から誘導され、nts824−1599がクローンphG2―2から誘導され、nts1600−2397がクローンphG2―7から誘導された(図2参照)。
【0034】
実施例3A−第二の全長クローン
配列番号:18の核酸配列を含む発現クローンは、NT304をGからAへ変え、NT371をTからCへ変え、NT836をAからTへ変え、NT1116をGからAへ変え、NT1831をGからAへ変え、NT2382をTからCへ変え、NT2388をAからGへ変え、NT2391をTからCへ変え、NT2394をAからGへ変える特定部位の突然変異誘発により、配列番号:20を含む発現クローンから作られる。突然変異誘発は、Ausubel 等、分子生物学における現代のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、pp. 8.1.1-8.1.6., John Wiley and Sons, New York (1995) により記載されているオリゴヌクレオチド指向方法論(oligonucleotide-directed methodology)によって行われる。
実施例3B−第三の全長クローン
ヒトGlyT―2cDNAを用いて、他の全長ヒトGlyT―2コーディング配列を作り、それをpcDNA3ベクター(Invitrogen)の中へクローン化した。pHGT2―bで表されるクローンが、配列番号:28の核酸配列を取り込み、配列番号:27をコードした。まず、phG2―3a(配列番号:1)からの254bpのHindIII―NarI断片を、予め、HindIII―NarIで消化したクローンphG2―2(配列番号:7)へ挿入して、中間体1を作った。中間体1からの1.6kbのHindIII―HincII断片及びクローンphG2―7bからの800bpのHincII―XbaI断片を、HindIII―XbaIで消化しておいたpcDNA内に結合して、中間体2を作った。
中間体2からのNdeI―MscI断片(1kb)及びBsmI―NdeI断片(6.9kb、pcDNA3含有)を、phG2―1(配列番号:5)からの434bpのMscI―BsmI断片に結合して、中間体3を作った。中間体3からの3.8kbのBssHII断片をクローンpHGT2―a(実施例2参照)の4.0kpのBssHII断片に結合して、pHGT2―bを作った。pHGT2―bにおいては、nts1−173がクローンphG2―3a(配列番号:1)から誘導され、nts174−523及び962−1599がクローンphG2―2(配列番号:7)から誘導され、nts524−961がクローンphG2―1(配列番号:5)から誘導され、nts1600−2397がクローンphG2―7b(配列番号:16)から誘導された。
【0035】
実施例4−GlyT―2発現
実施例2及び3Bのクローンを、実施例5に述べる方法を用いて、QT―6細胞(アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)、受付番号ATCC CRL―1708から)内にトランスフェクトした。実施例6に述べるグリシン輸送体測定法を用いて、グリシン輸送活性が、トランスフェクションによりこの細胞へ与えられたことを確認した。
【0036】
実施例5−トランスフェクション
この実施例は、QT―6細胞を成長及びトランスフェクトさせる方法並びに材料を述べるものであり、その細胞は、ウズラ由来の鳥線維芽細胞である。pHGT2―aによるトランスフェクションを、GlyT―1ベクターによるトランスフェクションと同様にして行った。なお、この後者のトランスフェクションは、別の時点で行った。
QT―6細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(受付番号ATCC CRL―1708)から入手した。QT―6を成長させるための完全QT―6培地は、培地199(Sigma Chemical Company, St. Louis, MO、以下、“Sigma”という)であり、10%リン酸トリプトース(tryptose phosphate)、5%ウシ胎児血清(Sigma)、1%ペニシリン―ストレプトマイシン(Sigma)及び1%無菌ジメチルスルホキシド(DMSO;Sigma)を含有している。QT―6細胞を成長又はトランスフェクトさせるのに必要な他の溶液としては、次のものが挙げられる。
DNA/DEAE混合物:TBS450μl、DEAEデキストラン(Sigma)450μl、DNA(4μg)のTE溶液100μl、ここで、DNAは、適当な発現ベクター中に、DNAをコードするGlyT―1a、GlyT―1b、GlyT―1c又はGlyT―2を含んでいた。使用されるDNAは、次に定義される通りである。
PBS:標準リン酸緩衝食塩水、pH7.4、1mMCaCl2及び1mMMgCl2含有、0.2μmフィルターで滅菌。
TBS:溶液B1ml、溶液A10ml;蒸留水で100mlとする;濾過滅菌して4℃で保存。
TE:0.01Mのトリス、0.001MのEDTA、pH8.0。
DEAEデキストラン:Sigma、#C―9885。DEAEデキストランの1%(1mg/ml)TBS溶液からなる原液を調製した。この原液を濾過滅菌して、1mlずつ凍結した。
クロロキン:Sigma、#C―6628。100mMクロロキン水溶液からなる原液を調製した。この原液を濾過滅菌して、0.5mlずつ凍結して保存した。
溶液A(10×)
NaCl 8.00g
KCl 0.38g
Na2HPO4 0.20g
トリス塩基 3.00g
この溶液をHClでpH7.5に調整し、蒸留水で100.0mlとし、濾過滅菌して、室温で保存した。
溶液B(100×)
CaCl2―2H2O 1.5g
MgCl2―6H2O 1.0g
この溶液を蒸留水で100mlとして、濾過滅菌した;次いで、この溶液を室温で保存した。
HBSS:150mMNaCl、20mMHEPES、1mMCaCl2、10mMグルコース、5mMKCl、1mMMgCl2―H2O;NaOHでpH7.4に調整。
使用した成長及び継代(passaging)方法は、次の通りであった。細胞は、225mlのフラスコ内で成長させた。継代については、細胞を温HBSSで2度洗浄した(各洗浄5mlずつ)。2mlの0.05%トリプシン/EDTA溶液を加え、培養液をかき混ぜ、次いで、トリプシン/EDTA溶液を速やかに吸引した。次いで、培養液を約2分間(細胞が持ち上がる(lift offする)まで)インキュベートし、その後、10mlのQT―6培地を加え、フラスコをかき混ぜ、その底をこつこつ叩くことにより、細胞を更に取り外した。その細胞を取り除き、15mlの三角チューブに移し、1000×gで10分間遠心分離して、10mlのQT―6培地に再懸濁させた。計数のためにサンプルを取り除き、次いで、QT―6培地を用いて、細胞を更に1×105個/mlの濃度に希釈し、継代細胞(passaged cells)の225mlフラスコ当たり65mlの培養液を加えた。
次のようにして調製したcDNAを用いて、トランスフェクションを行った。
ヒトGlyT―2発現に関しては、上に述べたpHGT2―aクローンを用いた。
ヒトGlyT―1a(hGlyT―1a)クローンは、Kim 等、Mol. Pharmacol., 45, 608-617 (1994) に記載されたようなHindIII―XbaI断片として、pRc/CMVベクター(Invitrogen, San Diego, CA)中にクローン化されたヌクレオチド位置183〜2108のhGlyT―1aの配列を含んでいた。この Kim 等の論文に報告されているGlyT―1a配列の最初の17個のヌクレオチド(最初の6個のアミノ酸に対応する)は、実際には、ラット配列に基づくものである。ヒトGlyT―1aの配列がこの領域で異なっているかどうかを求めるために、ヌクレオチド1から212までのhGlyT―1aの5’領域を、Gibco BRL (Gaithersburg, MD) により供給されている5’RACE方法を用いて、cDNA末端の迅速増幅(rapid amplification)により得た。GlyT―1aのこの5’領域の配列決定から、コーディング配列の最初の17個のヌクレオチドが、ヒト及びラットGlyT―1aにおいて同一であることが確認された。
ヒトGlyT―1b(hGlyT―1b)クローンは、Kim 等、上記に記載されたようなHindIII―XbaI断片として、pRc/CMVベクター中にクローン化されたヌクレオチド位置213〜2274のhGlyT―1bの配列を含んでいた。
ヒトGlyT―1c(hGlyT―1c)クローンは、Kim 等、上記に記載されたようなHindIII―XbaI断片として、pRc/CMVベクター(Invitrogen)中にクローン化されたヌクレオチド位置213〜2336のhGlyT―1cの配列を含んでいた。このクローンからのhGlyT―1cのHindIII―Xba断片が、pRc/RSVベクター中に更にクローン化された。pRc/RSV及びpRc/CMV発現ベクターの両者中で、GlyT―1cによりトランスフェクション実験をおこなった。
トランスフェクションには、下記の4日法を用いた。
1日目は、100mmの皿の中に、完全QT―6培地10ml当たり1×106個の細胞密度で、QT―6細胞をプレートした。
2日目は、培地を吸引し、10mlのPBSで洗浄し、次いで10mlのTBSで洗浄した。TBSを吸引し、次いで、1mlのDEAE/DNA混合物をプレートへ添加した。このプレートをフード内で5分毎にかき混ぜた。30分後、80μMクロロキンのQT―6培地液8mlを加え、培養液を37℃、5%CO2で2.5時間インキュベートした。次いで、培地を吸引し、細胞を完全QT―6培地で2回洗浄し、その後、100mlの完全QT―6培地を加えて、細胞をインキュベーターへ戻した。
3日目は、上述のように、トリプシン/EDTAで細胞を除去し、96ウエルの測定プレートのウエル内に、約2×105細胞/ウエルでプレートした。
4日目に、実施例6で述べるようにしてグリシン輸送体を測定した。
【0037】
実施例6−グリシン取り込み
この実施例は、トランスフェクトされた培養細胞によるグリシン取り込みを測定する方法を説明するものである。
実施例5に従って成長させた一過性のGlyTでトランスフェクトされた細胞又は対照細胞を、HEPES緩衝食塩水(HBS)で3回洗浄した。トランスフェクション操作で、cDNAを省略したこと以外は、GlyTでトランスフェクトされた細胞と厳密に同様にして、対照細胞を処理した。この細胞を、37℃で10分間インキュベートし、その後、50nM[3H]グリシン(17.5Ci/mmol)及び(a)非潜在的拮抗剤(no potential competitor)、(b)10mM非放射性グリシン又は(c)ある濃度の予期される剤(prospective agent)を含む溶液を添加した。予期される剤(prospective agent)の濃度範囲は、50%の効果(例えば、グリシン取り込みを50%だけ抑制する剤の濃度であるIC50)となる濃度を計算するためのデータを作るのに用いられる。次いで、細胞を37℃で更に20分間インキュベートし、その後、細胞を氷冷HBSで3回洗浄した。この細胞に閃光体(scintillant)を加え、この細胞を30分間振とうし、シンチレーヨンカウンターをもちいて、細胞中の放射能を計数した。予期される剤(prospective agent)と接触した細胞と接触しなかった細胞との間でデータを比較し、用いられる測定法に応じて、適切なところで、GlyT―1活性を有する細胞をGlyT―2活性を有する細胞と対比して、データを比較した。
ヒトGlyT―2クローン、pHGT2―a、でトランスフェクトされたQT―6細胞におけるグリシン輸送体活性の発現を図5に示し、ここでは、[3H]グリシン取り込みを、模擬(mock)とpHGT2―aでトランスフェクトされた細胞とについて示す。pHGT2―aでトランスフェクトされたQT―6細胞は、模擬トランスフェクトされた対照細胞に比較して、グリシン輸送に顕著な増加を示す。結果は、3回行われた代表的な実験の平均値±SEMとして示されている。pHGT2―bと実質的に同様な結果が得られた。
pHGT2―aでトランスフェクトされた細胞におけるグリシン輸送の濃度依存性を、図6に示す。pHGT2―bと実質的に同様な結果が得られた。ヒトGlyT―2でトランスフェクトされたQT―6細胞を、50nM[3H]グリシン及び表示濃度の非標識グリシンで20分間インキュベートし、細胞に取り込まれた放射能をシンチレーション計数によって求めた。データポイントは、4回行われた実験からの平均値±SEMを示すものである。結果は、40μMのIC50を示した。
【0038】
実施例7−カルシウムフラックス
この実施例は、細胞内でのカルシウムフラックスを測定するプロトコルを説明するものである。
カルシウムフラックス測定は、無菌解離器具(dissecting equipment)、顕微鏡及び特定の培地を必要とする操作及び技術を用いて調製した一次細胞培養液において、一般に行った。用いたプロトコルは、わずかな変更はあるが、Lu 等、Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA, 88, 6289-6292 (1991) によって記載されたものと実質的に同じであった。
実施例8−ストリキニン感受性受容体への結合
ストリキニン感受性受容体へのストリキニンの結合は、White 等、J. Neurochem, 35, 503-512 (1989) 及び Becker 等、J. Neurosci., 6, 1358-1364 に記載されているようにして、これにわずかな変更を加えて測定した。
配列番号によってここに表される核酸(N.A.)又はアミノ酸配列は、以下に示す通りである。
要約すると、配列リスチング(Sequence Listing)の配列は、次の通りである。
【0039】
【表4A】
【表4B】
【0040】
** 配列番号:28は、若干のコドン使用の違いはあるが、配列番号:26と同じ蛋白質をコードする。
ここに述べた核酸配列、及びその結果、それらから誘導された蛋白質配列を注意深く配列決定した。しかし、核酸配列決定技術が多少の誤差を受けやすいことは、当業者の認めるところであろう。当業者は、当の核酸配列を単離する方法のここでの十分な記載に基づいて、これらの配列を確認し、補正することができ、本開示によって容易に利用できるような変更は、本発明に含まれるものである。更に、後からの明確化研究によって配列決定の誤りが確認されようがされまいが、ここに報告されたこれらの配列は、本発明内のものである。
本発明は、好ましい実施態様を強調して説明しているが、好ましい装置及び方法を変更したものを用いてもよいこと、及びここで特定的に記載されているのとは別のようにして本発明を実施しようとすることは、当業者にとって自明であろう。従って、本発明は、次の実施態様によって限定されている本発明の精神及び範囲内に包含される全ての変更を含むものである。
【0041】
本発明の実施態様として次のものが挙げられる。
1.配列番号:27の蛋白質配列である基準配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列と、少なくとも約96%の配列同一性を有するグリシン輸送体をコードする組み換え核酸。
2.基準配列が、配列番号:27の蛋白質配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、若しくは(10)Ile735をValへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列である上記1の核酸。
3.該配列同一性が、少なくとも約97%である上記1の核酸。
4.該配列同一性が、少なくとも約98%である上記1の核酸。
5.核酸が、基準配列を有するグリシン輸送体をコードする上記1の核酸。
6.配列番号:26の核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、(n)A2203をGへ、(o)C342をGへ、(p)C352をTへ、(q)T733をCへ、(r)A777をGへ、(s)G913をCへ、(t)G951をAへ、(u)C1097をTへ、若しくは(v)T1199をCへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている配列を含む上記1の核酸。
7.配列番号:26の核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、若しくは(n)A2203をGへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている配列を含む上記1の核酸。
8.上記1の核酸及び機能的にこれと関連する外因性プロモーターを含むベクター。
9.基準アミノ酸配列の全て若しくは1〜2の近接部分と、少なくとも約99.5%の配列同一性を有するグリシン輸送体蛋白質をコードする核酸において、その基準配列が、配列番号:27のアミノ酸配列、又は次のアミノ酸置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列である核酸。
10.1〜2の近接配列部分が、少なくとも約600のアミノ酸からなる上記9の核酸。
11.下記の細胞:
(a)上記8による第一のベクターで形質転換され、該核酸を含むか、又は
(b)第二のベクターで形質転換され、配列番号:27である基準蛋白質配列、若しくは次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列の1〜2の近接部分と、少なくとも約99.5%の配列同一性を有する輸送体蛋白質をコードする第二の核酸を含み、ここで、コードされた蛋白質は、グリシン輸送体活性を有している。
12.上記11の細胞を成長させることからなるグリシン輸送体の製造方法。
13.(a)グリシン輸送体を含む膜を該細胞から単離すること、又は(b)グリシン輸送体を含む蛋白質画分を該細胞から抽出することの少なくとも1つを更に含む上記12の方法。
14.上記11による細胞から単離され、第一又は第二の外因的に誘導された核酸により発現されたグリシン輸送体。
15.神経系障害若しくは状態の治療用生理活性剤を確認又は同定する方法において、(a)(i)上記10による細胞、又は(ii)該第一又は第二の外因的に誘導された核酸によりコードされたアミノ酸配列からなる単離グリシン輸送体蛋白質を含む第一の測定組成物を与え、(b)その第一の測定組成物を生理活性剤又は予期される(prospective)生理活性剤と接触させ、その測定組成物によって示されたグリシン輸送の量を測定することからなる方法。
16.第一の測定組成物によって示されたグリシン輸送の量を、生理活性剤又は期待される生理活性剤と接触させないこと以外は、第一の測定組成物と同じに処理された第二の測定組成物によって示されたグリシン輸送の量と比較することを更に含む上記15の方法。
17.は、神経系障害又は状態が、(a)痛み、(b)痙性、(c)ミオクロヌス、(d)筋痙攣、(e)筋機能亢進又は(f)てんかんからなる群の1つである上記15の方法。
18.痙性が、発作、頭部外傷、神経細胞死、多発性硬化症、脊髄損傷、失調症、ハンチントン病又は筋萎縮性側索硬化症である上記17の方法。
19.(a)ラット若しくはマウスGlyT―2輸送体のための配列又は(b)哺乳類GlyT―1輸送体のための配列とのハイブリダイゼーションを排除するのに十分なストリンジェンシー(stringency)の条件下で、配列番号:26である基準核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、(n)A2203をGへ、(o)C342をGへ、(p)C352をTへ、(q)T733をCへ、(r)A777をGへ、(s)G913をCへ、(t)G951をAへ、(u)C1097をTへ、若しくは(v)T1199をCへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている配列と交雑する核酸。
20.この核酸は、PCRプライマーであり、ストリンジェント(stringent)条件は、ヒトGlyT―2配列を増幅するのには有効であるが、(a)ラット若しくはマウスGlyT―2輸送体のための配列又は(b)哺乳類GlyT―1輸送体のための配列を増幅するには有効でないPCR条件である上記19の核酸配列。
21.ヒトGlyT―2遺伝子又はcDNAのコーディング又は非コーディングストランドからの近接配列を含む、長さが少なくとも約18個のヌクレオチドの核酸であり、ここで、この近接配列は、この近接配列と並べたラットGlyT―2遺伝子配列と比較した場合、少なくとも1つの配列相違を有しているものである核酸。
22.細胞、組織、器官又は動物に投与した場合、その細胞又はその組織、器官若しくは動物の細胞内でのGlyT―2の発現を低下させるのに有効なGlyT―2のためのヒト遺伝子又はcDNAのコーディング又は非コーディングストランドからの近接配列を含むアンチセンス分子であり、ここで、この近接配列は、該近接配列と並べたラットGlyT―2遺伝子配列と比較した場合、少なくとも1つの配列相違を有しているアンチセンス分子。
23.配列番号:26の核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、(n)A2203をGへ、(o)C342をGへ、(p)C352をTへ、(q)T733をCへ、(r)A777をGへ、(s)G913をCへ、(t)G951をAへ、(u)C1097をTへ、若しくは(v)T1199をCへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている配列のコーディング又は非コーディングストランド内に、近接伸長(contiguous stretch)が含まれている上記22のアンチセンス分子。
24.上記22の核酸を含む発現ベクター。
25.(a)GlyT―2発現低減有効量の上記22の核酸、又は(b)GlyT―2発現低減有効量の、該組織又は細胞内で該核酸を発現させる発現ベクターを、組織又は細胞に適用することからなる、組織又は細胞内でのGlyT―2発現を低減させる方法。
26.ヒトの患者の組織又は細胞に、神経系障害若しくは状態治療有効量の上記22の核酸、又は神経系障害若しくは状態治療有効量の、該組織又は細胞内で該核酸を発現させる発現ベクターを適用することからなる、神経系障害又は状態を治療する方法。
27.動物がグリシン輸送体に対する自己免疫抗体を持っているかどうかを検出する方法であり、動物からの抗体試料又は動物からの体液を、グリシン輸送体を含むかあるいはグリシン輸送体から誘導されるポリペプチド抗原と接触させることからなる方法。
【0042】
本発明の更なる実施態様として次のものが挙げられる。
1.配列番号:27の蛋白質配列である基準配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列と同一の配列と、少なくとも96%の配列同一性を有するグリシン輸送体をコードする組み換え核酸。
2.配列番号:27の蛋白質配列である基準配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、若しくは(10)Ile735をValへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列と同一の配列である上記1の核酸。
3.該配列同一性が、少なくとも97%である上記1の核酸。
4.該配列同一性が、少なくとも98%である上記1の核酸。
5.核酸が、配列番号:27の蛋白質配列である基準配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列と同一の配列を有するグリシン輸送体をコードする上記1、2、3または4の核酸。
6.配列番号:26の核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、(n)A2203をGへ、(o)C342をGへ、(p)C352をTへ、(q)T733をCへ、(r)A777をGへ、(s)G913をCへ、(t)G951をAへ、(u)C1097をTへ、若しくは(v)T1199をCへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている配列を含む上記1、2、3、4または5の核酸。
7.配列番号:26の核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、若しくは(n)A2203をGへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている配列を含む上記1、2、3、4または5の核酸。
8.上記1、2、3、4、5、6または7の核酸及び機能的にこれと関連する外因性プロモーターを含むベクター。
9.基準アミノ酸配列の全て若しくは基準アミノ酸配列中の連続した少なくとも600のアミノ酸からなる配列部分と、少なくとも99.5%の配列同一性を有するグリシン輸送体蛋白質をコードする核酸において、その基準配列が、配列番号:27のアミノ酸配列、又は次のアミノ酸置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列である核酸。
10.下記の細胞:
(a)上記8による第一のベクターで形質転換され、該核酸を含むか、又は
(b)第二のベクターで形質転換され、配列番号:27である基準蛋白質配列、若しくは次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列と同一の配列のアミノ酸配列中の連続した少なくとも600のアミノ酸からなる配列部分と、少なくとも99.5%の配列同一性を有する輸送体蛋白質をコードする第二の核酸を含み、ここで、コードされた蛋白質は、グリシン輸送体活性を有している。
11.上記10の細胞を成長させることからなるグリシン輸送体の製造方法。
12.(a)グリシン輸送体を含む膜を該細胞から単離すること、又は(b)グリシン輸送体を含む蛋白質画分を該細胞から抽出することの少なくとも1つを更に含む上記11の方法。
13.上記10による細胞から単離され、第一又は第二のベクターにより発現されたグリシン輸送体。
14.神経系障害若しくは状態の治療用生理活性剤を確認又は同定する方法において、(a)(i)上記10による細胞、又は(ii)該第一又は第二の外因的に誘導された核酸によりコードされたアミノ酸配列からなる単離グリシン輸送体蛋白質を含む第一の測定組成物を提供し、(b)その第一の測定組成物を生理活性剤又は予期される(prospective)生理活性剤と接触させ、(c)その測定組成物によって示されたグリシン輸送の量を測定することからなる方法。
15.第一の測定組成物によって示されたグリシン輸送の量を、生理活性剤又は期待される生理活性剤と接触させないこと以外は、第一の測定組成物と同じに処理された第二の測定組成物によって示されたグリシン輸送の量と比較することを更に含む上記14の方法。
16.神経系障害又は状態が、(a)痛み、(b)痙性、(c)ミオクロヌス、(d)筋痙攣、(e)筋機能亢進又は(f)てんかんからなる群の1つである上記14または15の方法。
17.痙性が、発作、頭部外傷、神経細胞死、多発性硬化症、脊髄損傷、失調症、ハンチントン病又は筋萎縮性側索硬化症である上記16の方法。
18.配列番号:26である基準核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、(n)A2203をGへ、(o)C342をGへ、(p)C352をTへ、(q)T733をCへ、(r)A777をGへ、(s)G913をCへ、(t)G951をAへ、(u)C1097をTへ、若しくは(v)T1199をCへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている配列とハイブリダイズする、配列番号:42,43,46,48,49,51〜53のいずれか1つのPCRプライマーである核酸。
19.動物がヒトグリシンT−2輸送体に対する自己免疫抗体を持っているかどうかを検出する方法であり、動物からの抗体試料又は動物からの体液を、ヒトグリシンT−2輸送体を含むかあるいは該グリシン輸送体から誘導されるポリペプチド抗原と接触させることからなる方法。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ヒトGlyT―2遺伝子のいくつかの遺伝子断片の配列を示す。
【図2】配列番号:20の核酸配列を取り込むクローン、ヒトGlyT―2遺伝子の全長クローン、を作るのにどの断片クローンを用いたかを説明するものである。
【図3A】配列番号:18の核酸配列とラットGlyT―2配列との比較を示す。
【図3B】配列番号:18の核酸配列とラットGlyT―2配列との比較を示す。
【図3C】配列番号:18の核酸配列とラットGlyT―2配列との比較を示す。
【図3D】配列番号:18の核酸配列とラットGlyT―2配列との比較を示す。
【図3E】配列番号:18の核酸配列とラットGlyT―2配列との比較を示す。
【図4A】配列番号:19のアミノ酸配列とラットGlyT―2配列との比較を示す。
【図4B】配列番号:19のアミノ酸配列とラットGlyT―2配列との比較を示す。
【図5】ヒトGlyT―2発現ベクターでトランスフェクトされるか、あるいは模擬トランスフェクトされたQT―6細胞内でのグリシン輸送体の測定を示す。
【図6】ヒトGlyT―2でトランスフェクトされたQT―6細胞内でのグリシン輸送体の濃度依存性を示す。
【技術分野】
【0001】
本出願は、次の同時係属出願:「グリシン輸送体感染細胞及びその用途」、代理人整理番号317743−105、出願番号08/655,836、1996年5月31日出願;「神経障害及び神経精神障害治療用医薬」、代理人整理番号317743−103、出願番号08/656,063、1996年5月31日出願;「神経精神障害治療用医薬」、代理人整理番号317743−106、出願番号08/655,912、1996年5月31日出願;及び「神経障害及び神経精神障害治療用医薬」、代理人整理番号317743−107、出願番号08/655,847、1996年5月31日出願と関連しており、本発明は、ヒトグリシン輸送体系列の“GlyT―2”構成員をコードする核酸、その核酸によってコードされた単離蛋白質及び薬剤発見の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シナプス伝達は、シナプス前神経細胞及びシナプス後神経細胞の両方において、分化された構造の可成りの配列(considerable array of specialized structures)を含む細胞間伝達の複雑な形態である。高親和性神経伝達物質輸送体は、1つのそのような成分であり、シナプス前終末上及びグリア細胞の周囲に位置している(非特許文献1Kanner 及び Schuldiner、CRC Critical Reviews in Biochemistry, 22, 1032 (1987))。輸送体は、神経伝達物質をシナプスから隔離し、それによって、シナプス内での神経伝達物質の持続時間の他に、そのなかでの神経伝達物質の濃度を制御し、それらは共にシナプス伝達の大きさに影響を及ぼす。更に、伝達物質が隣接シナプスへ拡がるのを防ぐことによって、輸送体は、シナプス伝達の適合度を維持する。更に、放出された伝達物質をシナプス前終末内へ隔離することによって、輸送体は伝達物質の再利用を可能にする。
神経伝達物質輸送は、細胞外ナトリウム及び膜の両側の電圧差に依存し、例えば、発作中などのような強い神経ファイアリング(firing)の状態では、輸送体は、カルシウムに依存しない非エキソサイティックな方法で神経伝達物質を放出して、逆に機能することができる(非特許文献2Attwell 等、Neuron, 11, 401-407 (1993))。神経伝達物質輸送体の薬理学的変調は、このようにシナプス活性を改変する手段を提供し、それは、神経障害及び精神障害の治療のための有用な治療法を提供するものである。
アミノ酸グリシンは、哺乳動物の中枢神経系における重要な神経伝達物質であり、抑制性及び興奮性シナプスの両方で機能する。“神経系”という語句は、その神経系の中枢及び末梢部分の両方を意味する。グリシンの異なる抑制性及び興奮性機能は、2つの異なるタイプの受容体によって媒介され、それぞれが、異なる種類のグリシン輸送体と関連している。グリシンの抑制作用は、痙攣性アルカロイドストリキニンに対して感受性であるグリシン受容体によって媒介され、従って、“ストリキニン感受性”と呼ばれる。このような受容体は、グリシンが受容体に結合した際に開く固有のクロライドチャネルを含んでおり、クロライドコンダクタンスを高めることによって、活動電位の励起(firing)の閾値が高くなる。ストリキニン感受性グリシン受容体は、主として脊髄及び脳幹内で見出されており、従って、このような受容体の活性化を促進する薬物は、これらの領域内での抑制性神経伝達を高めるであろう。
グリシンは、中枢神経系における主要な興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸塩の作用を変調することによって、興奮性伝達において機能する。非特許文献3Johnson 及び Ascher、Nature, 325, 529-531 (1987); 非特許文献4Fletcher 等、Glycine Transmission,(Otterson 及び Storm-Mathisen、編者、1990)、193〜219頁参照。具体的には、グリシンは、N―メチル―D―アスパラギン酸塩(NMDA)受容体と呼ばれる種類のグルタミン酸塩受容体において、絶対共作動薬である。NMDA受容体を神経細胞上で活性化することによって、ナトリウム及びカルシウムコンダクタンスが上昇し、神経細胞を脱分極して、活動電位を励起(fire)するであろうという可能性を高めることになる。NMDA受容体は、脳全体に広く分布しており、大脳皮質及び海馬体に、特に高密度で分布している。
分子クローニングから、哺乳動物の脳の中には、GlyT―1及びGlyT―2と呼ばれる2種類のグリシン輸送体が存在することが分かっている。GlyT―1は、主に前脳で見出されており、その分布は、グルタミン酸塩作動経路及びNMDA受容体の分布に対応する(非特許文献5Smith 等、Neuron, 8, 927-935 (1992))。GlyT−2の分布は異なり、この輸送体は、主に脳幹及び脊髄で見出されており、その分布は、ストリキニン感受性グリシン受容体の分布に密接に対応している。非特許文献6Liu 等、J. Biol. Chem., 268, 22802-22808 (1993);非特許文献7Jursky 及び Nelson、J. Neurochem., 64, 1026-1033 (1995)。これらの観察は、グリシンのシナプスレベルを制御することによって、GlyT―1及びGlyT―2が、NMDA受容体及びストリキニン感受性グリシン受容体の活性に、それぞれ優先的に影響を及ぼすという考えと一致する。
GlyT―1とGlyT―2の配列の比較から、これらのグリシン輸送体は、例えば、γ―アミノ―n―酪酸(GABA)に特異的な輸送体などを含むナトリウム依存性神経伝達物質輸送体のより広い系列の構成員であることが分かった。非特許文献8Uhl、Trends in Neuroscience, 15, 265-268 (1992);非特許文献9Clark 及び Amara、BioEssays, 15, 323-332 (1993)。全体的に、これらの輸送体は、それぞれ、主として疎水性アミノ酸を含む12個の推定膜内外領域を含有する。リップマン−ピアソン(Lipman-Pearson)FASTAアルゴリズムを用いて、ラットGlyT―1をラットGlyT―2と比較すると、51%のアミノ酸配列同一性及び55%の核酸配列同一性があることが分かる。ヒトGlyT―1とヒトGlyT―2との比較から、51%のアミノ酸配列同一性及び53〜55%の核酸配列同一性があることが分かり、核酸配列については、ClyT―1に3つの変異体形態が存在することに起因して、数値に幅がある。
グリシン輸送体を抑制又は活性化する化合物は、受容体の機能を変え、種々の病状において治療上の恩恵を与えるものと期待されるであろう。例えば、GlyT―2の抑制は、グリシンのシナプスレベルを高め、これらの受容体によって媒介されることが分かっている、脊髄での痛みに関する(即ち、侵害受容の)情報の伝達を低減させることによって、ストリキニン感受性グリシン受容体を有する神経細胞の活性を低下させるのに用いることができる。非特許文献10Yaksh、Pain, 37, 111-123 (1989)。更に、脊髄内で、ストリキニン感受性グリシン受容体を介して、抑制性グリシン作動伝達を高めることを、筋肉機能亢進の低減に用いることができ、これは、痙性、ミオクロヌス(急激な筋肉痙攣に関係する)、てんかんなどの筋肉収縮の増大に関連する病気又は状態を治療するのに有用である(非特許文献11Truong 等、Movement Disorders, 3, 77-87 (1988);非特許文献12Becker、FASEB J., 4, 2767-2774 (1990))。グリシン受容体の変調によって治療することができる痙性は、てんかん、発作、頭部外傷、多発性硬化症、脊髄損傷、失調症及び神経系の病気、損傷のその他の状態と関係している。
【非特許文献1】Kanner 及び Schuldiner、CRC Critical Reviews in Biochemistry, 22, 1032 (1987)
【非特許文献2】Attwell 等、Neuron, 11, 401-407 (1993)
【非特許文献3】Johnson 及び Ascher、Nature, 325, 529-531 (1987)
【非特許文献4】Fletcher 等、Glycine Transmission,(Otterson 及び Storm-Mathisen、編者、1990)、193〜219頁
【非特許文献5】Smith 等、Neuron, 8, 927-935 (1992)
【非特許文献6】Liu 等、J. Biol. Chem., 268, 22802-22808 (1993)
【非特許文献7】Jursky 及び Nelson、J. Neurochem., 64, 1026-1033 (1995)
【非特許文献8】Uhl、Trends in Neuroscience, 15, 265-268 (1992)
【非特許文献9】Clark 及び Amara、BioEssays, 15, 323-332 (1993)
【非特許文献10】Yaksh、Pain, 111-123 (1989)
【非特許文献11】Truong 等、Movement Disorders, 3, 77-87 (1988)
【非特許文献12】Becker、FASEB J., 4, 2767-2774 (1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在その存在が判明している2種類のグリシン輸送体の内の1種である、GlyT2のヒトにおける遺伝子を発見、取得し、ヒトにおいてグリシンの関与する病気の解明、治療、予防に更に幅広く貢献することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要旨
第一の実施態様においては、本発明は、配列番号:27の蛋白質配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列と、少なくとも約96%の配列同一性を有するグリシン輸送体をコードする核酸を提供する。好ましくは、配列同一性は、少なくとも約97%であり、更に好ましくは、少なくとも約98%であり、更に一層好ましくは、少なくとも約99%であり、更に一層好ましくは、少なくとも約99.5%である。本発明の一実施態様では、配列同一性が100%である。好ましくは、コードされたグリシン輸送体は、基準蛋白質配列のアミノ酸200から797までの領域において、アミノ酸の相違が4つ以下であり、ここで、基準配列とは、配列番号:27、又は上記置換の1つを有することを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列である。より好ましくは、コードされたグリシン輸送体は、このような相違が2つ以下である。
本発明は、上記核酸を含むベクターを提供するものでもある。1つの実施態様においては、このベクターは、細菌細胞又は真核細胞の少なくとも1つにおいて、グリシン輸送体mRNAを発現するのに有効である。本発明の他の実施態様においては、このベクターは、酵母細胞、哺乳類細胞又は鳥類細胞の少なくとも1つにおいて、このmRNAを発現するのに有効である。
【0005】
更に、本発明は、本発明によって形質転換された細胞から誘導された単離グリシン輸送体を提供するものであり、該輸送体は、上記核酸によってコードされたアミノ酸配列、又はこのような核酸によってコードされたアミノ酸配列の1つ又は2つの近接部分からなり、ここで、蛋白質は、グリシン輸送体活性を有し、ラット輸送体配列の配列部分とは配列が異なるものである。“近接配列”という語句は、ここで用いられる場合、関連する基準核酸又はアミノ酸配列の連続部分を意味する。好ましくは、本発明のグリシン輸送体蛋白質は、ラット輸送体配列の配列部分とは、少なくとも2つのアミノ酸で配列が異なり、更に好ましくは、少なくとも4つのアミノ酸で異なる。好ましくは、近接配列は、少なくとも約600のアミノ酸からなり、更に好ましくは、少なくとも約700のアミノ酸からなり、更に好ましくは、少なくとも約750のアミノ酸からなる。1つの実施態様においては、輸送体蛋白質は、上記核酸によってコードされた蛋白質配列の全てを含む。好ましくは、輸送体蛋白質は、配列番号:27の蛋白質配列において述べたアミノ酸配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102に代えてSer、(2)Ser124に代えてPhe、(3)Ile279に代えてAsn、(4)Arg393に代えてGly、(5)Lys457に代えてAsn、(6)Asp463に代えてAsn、(7)Cys610に代えてTyr、(8)Ile611に代えてVal、(9)Phe733に代えてSer、(10)Ile735に代えてVal、(11)Phe245に代えてLeu、(12)Val305に代えてLeu、(13)Thr366に代えてIle、若しくは(14)Leu400に代えてProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列、又はこれらの配列の1〜2の近接部分からなるアミノ酸配列からなる。1つの好ましい実施態様においては、本発明は、グリシン輸送体並びに関連核酸、ベクター及び方法を提供し、ここで、蛋白質配列は、(1)Ser102、(2)Phe124、(3)Asn279、(4)Gly393、(5)Asn457、(6)Asn463、(7)Tyr610、(8)Val611、(9)Ser733、(10)Val735、(11)Leu245、(12)Leu305、(13)Ile366及び(14)Pro400の少なくとも1つを含む。好ましくは、この配列は、これらのアミノ酸残基の少なくとも2つを含み、更に好ましくは、少なくとも4つ、更に一層好ましくは、これらのアミノ酸残基の全てを含む。
【0006】
第二の実施態様においては、本発明は、配列番号:27のアミノ酸配列の全て若しくは1〜2の近接部分、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当するアミノ酸配列の1〜2の近接部分と、少なくとも約99.5%の配列同一性を有する輸送体蛋白質をコードする核酸を提供するものでもあり、ここで、コードされた蛋白質は、グリシン輸送体活性を有している。好ましくは、近接配列は、少なくとも約600のアミノ酸からなり、更に好ましくは、少なくとも約700のアミノ酸からなり、更に好ましくは、少なくとも約750のアミノ酸からなる。本発明は、この核酸を含むベクターを提供するものでもある。1つの実施態様においては、このベクターは、細菌細胞又は真核細胞などの原核細胞の少なくとも1つにおいて、グリシン輸送体mRNAを発現するのに有効である。本発明の他の実施態様においては、このベクターは、酵母細胞、哺乳類細胞又は鳥類細胞の少なくとも1つにおいて、このmRNAを発現するのに有効である。
【0007】
更に、本発明は、第一の実施態様による第一の外因的に誘導された核酸、又は配列番号:27の蛋白質配列の1〜2の近接部分、若しくは次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列の1〜2の近接部分と、少なくとも約99.5%の配列同一性を有する輸送体蛋白質をコードする第二の外因的に誘導された核酸を含む細胞を提供し、ここで、コードされた蛋白質は、グリシン輸送体活性を有している。1つの実施態様において、この細胞は、核酸からグリシン輸送体を発現する。本発明の一実施態様においては、プロモーターが誘発性プロモーターである。
本発明は、前のパラグラフで説明した細胞を成長させることからなるグリシン輸送体の製造方法を提供するものでもある。この方法は、更に、(a)グリシン輸送体を含む膜を該細胞から単離すること、又は(b)グリシン輸送体を含む蛋白質画分を該細胞から抽出することの少なくとも1つを含むことができる。
本発明の一実施態様は、神経系障害若しくは状態の治療用生理活性剤を確認又は同定する方法において、(a)(i)上述のような細胞、又は(ii)上述の第一又は第二の外因的に誘導された核酸によりコードされたアミノ酸配列からなる単離グリシン輸送体蛋白質を含む第一の測定組成物を与え、(b)その第一の測定組成物を生理活性剤又は予期される(prospective)生理活性剤と接触させ、その測定組成物によって示されたグリシン輸送の量を測定することからなる方法を提供する。好ましくは、この方法は、更に、第一の測定組成物によって示されたグリシン輸送の量を、生理活性剤又は期待される生理活性剤と接触させないこと以外は、第一の測定組成物と同じに処理された第二の測定組成物によって示されたグリシン輸送の量と比較することを含む。この方法は、神経系障害又は状態が、(a)痛み、(b)痙性、(c)ミオクロヌス、(d)筋痙攣、(e)筋機能亢進又は(f)てんかんからなる群の1つである生理活性剤を確認するのに用いることができる。好ましい実施態様においては、生理活性剤が確認される痙性は、発作、頭部外傷、神経細胞死、多発性硬化症、脊髄損傷、失調症、ハンチントン病又は筋萎縮性側索硬化症と関係している。
【0008】
更に、本発明は、(a)ラット若しくはマウスGlyT―2輸送体のための配列又は(b)哺乳類GlyT―1輸送体のための配列とのハイブリダイゼーションを排除するのに十分なストリンジェンシー(stringency)の条件下で、配列番号:26である基準核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、(n)A2203をGへ、(o)C342をGへ、(p)C352をTへ、(q)T733をCへ、(r)A777をGへ、(s)G913をCへ、(t)G951をAへ、(u)C1097をTへ、若しくは(v)T1199をCへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている配列と交雑する核酸を提供する。好ましくは、この核酸配列は、長さが少なくとも約18個のヌクレオチドであり、基準核酸配列にはめ込まれた配列と少なくとも約95%の配列同一性を有している。好ましくは、この核酸配列は、長さが少なくとも約40個のヌクレオチドであり、更に好ましくは、長さが少なくとも約100個のヌクレオチドである。好ましくは、この核酸配列は、上記基準配列と少なくとも約97%の配列同一性を有し、更に好ましくは、99%の配列同一性を有する。好ましくは、この核酸は、PCRプライマーであり、ストリンジェント(stringent)条件は、ヒトGlyT―2配列を増幅するのには有効であるが、(a)ラット若しくはマウスGlyT―2輸送体のための配列又は(b)哺乳類GlyT―1輸送体のための配列を増幅するには有効でないPCR条件である。
更に、本発明は、ヒトGlyT―2遺伝子又はcDNAのコーディング又は非コーディングストランドからの近接配列を含む、長さが少なくとも約18個のヌクレオチドの核酸を提供し、ここで、この近接配列は、この近接配列と並べたラットGlyT―2遺伝子配列と比較した場合、少なくとも1つの配列相違を有しているものである。好ましくは、この核酸配列は、長さが少なくとも約40個のヌクレオチドであり、更に好ましくは、長さが少なくとも約100個のヌクレオチドである。好ましくは、この近接配列は、この近接配列と並べたラットGlyT―2遺伝子配列と比較した場合、少なくとも2つ、更に好ましくは、3つの配列相違を有している。
【0009】
更に、本発明は、細胞、組織、器官又は動物に投与した場合、その細胞又はその組織、器官若しくは動物の細胞内でのGlyT―2の発現を低下させるのに有効なGlyT―2のためのヒト遺伝子又はcDNAのコーディング又は非コーディングストランドからの近接配列を含むアンチセンス分子を提供し、ここで、この近接配列は、該近接配列と並べたラットGlyT―2遺伝子配列と比較した場合、少なくとも1つの配列相違を有しているものである。好ましくは、この近接配列は、この近接配列と並べたラットGlyT―2遺伝子配列と比較した場合、少なくとも2つ、更に好ましくは、3つの配列相違を有している。“アンチセンス分子”という語句は、ゲノムDNA又はmRNAと結合して、mRNA安定性を妨げることを始め、転写又は翻訳を妨害するように設計された分子を意味するのに用いられる。好ましくは、この近接配列は、長さが少なくとも約15個のヌクレオチドである。近接伸長(contiguous stretch)は、基準核酸配列のコーディング又は非コーディングストランドに含まれていることが好ましい。好ましくは、近接伸長(contiguous stretch)は、配列番号:26の核酸配列のコーディング又は非コーディングストランド内にある。本発明は、更に、このようなアンチセンス分子を含む発現ベクターを提供する。
本発明は、組織又は細胞に、GlyT―2発現低減有効量のこのようなアンチセンス分子、又はGlyT―2発現低減有効量の、組織又は細胞内でこのようなアンチセンス分子を発現させる発現ベクターを適用することからなる、組織又は細胞内でのGlyT―2発現を低減させる方法を提供するものでもある。また、本発明は、ヒトの患者の組織又は細胞に、神経系障害若しくは状態治療有効量のこのようなアンチセンス分子、又は神経系障害若しくは状態治療有効量の、組織又は細胞内でこのようなアンチセンス分子を発現させる発現ベクターを適用することからなる、神経系障害又は状態を治療する方法を提供する。
【0010】
更に、本発明は、動物がグリシン輸送体に対する自己免疫抗体を持っているかどうかを検出する方法を提供し、この方法は、動物からの抗体試料又は動物からの体液を、グリシン輸送体を含むかあるいはグリシン輸送体から誘導されるポリペプチド抗原と接触させることからなる。ポリペプチド抗原は、配列番号:27の蛋白質配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列によりコードされた近接配列を含むことが好ましい。好ましくは、近接配列は、長さが少なくとも約6個のアミノ酸であり、更に好ましくは、長さが少なくとも約10個のアミノ酸であり、更に一層好ましくは、長さが少なくとも約15個のアミノ酸である。本発明の1つの実施態様においては、ペプチド抗原は、GlyT―1輸送体あるいはGlyT―2輸送体に対する抗原について選択的である。
【発明の効果】
【0011】
本発明で見出された新規なヒトGlyT2により、ヒトにおけるグリシンの関与する病気の解明、治療、予防に有効な生物活性剤の探索が可能となり、また動物がグリシン輸送体に対する自己免疫抗体を持っているかどうかを検出する方法を提供することに成功した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
定義
本出願のためには、次の用語は、以下に示す意味を有するものとする。
○生理活性剤
生理活性剤は、細胞、ウイルス、組織、器官又は生体に作用することができる化学薬品などの物質であり、細胞、ウイルス、器官又は生体の機能化に変化をもたらす薬剤(即ち、医薬)が挙げられるが、これに限定されるものではない。好ましくは、生体は哺乳動物であり、更に好ましくは、ヒトである。本発明の好ましい実施態様においては、本発明の生理活性剤を同定する方法は、分子量が約1500以下の有機分子に適用される。
○外因的に誘導された核酸
外因的に誘導された核酸は、細胞内に見出される核酸であって、その細胞、その細胞の親若しくは祖先、又はその細胞が組み換え技術によって誘導される遺伝子導入動物に導入されたものである。
○核酸と機能的に関連する外因性プロモーター
蛋白質をコードする核酸用の外因性プロモーターは、その蛋白質のための核酸を発現するのに現実に用いられるものとは別のプロモーターである。プロモーターと両立しうる細胞内で、プロモーターが作用して核酸を転写させることができれば、プロモーターは、核酸と機能的に関連する。
○核酸特異性
核酸特異性は、異なる核酸分子を区別するのに用いることができる性質である。このような性質には制限は無く、(i)分子の全て又は一部のヌクレオチド配列、(ii)例えば、電気泳動で求めた分子の大きさ、(iii)核酸を断片化する化学薬品での処理によって生ずるか、あるいはヌクレアーゼにより生ずる切断パターン、及び(iv)分子又はその断片が、特定の核酸プローブと交雑するか、あるいは特定のプライマーとアンプリコン(amplicon)を作る能力が挙げられる。
○予期される剤(prospective agent)
予期される剤は、グリシン輸送に影響を及ぼすかどうかを決定するために、本発明のスクリーニング法によって試験されている物質である。
○配列同一性
技術上知られているように、“同一性”とは、配列を比較することにより求められた場合、特にこのような配列のストリング(strings)間の合致により求められた場合、2つ以上のポリペプチド配列又は2つ以上のポリヌクレオチド配列の間の関係である。“同一性”は、公知の方法(A.M. Lesk 編、計算分子生物学、Oxford University Press, New York (1988)、D.W. Smith 編、バイオコンピューティング:情報科学及びゲノムプロジェクト、Academic Press, New York (1993)、A.M. Griffin 及び H.G. Griffin 編、配列データのコンピューター解析、第一部、Humana Press, New Jersey (1994)、G. von Heinje、分子生物学における配列解析、Academic Press (1987)、及び M. Gribskov 及び J. Dcvereux 編、配列解析プライマー、M. Stockton Press, New York (1991))により容易に計算される。2つの配列間の同一性を測定するには、多くの方法が存在するが、この用語は、当業者に周知である(例えば、分子生物学における配列解析、配列解析プライマー、及び H. Carillo 及び D. Lipman、SIAM J. Applied Math., 48,1073 (1988) 参照)。配列間の同一性を求めるのに一般に用いられる方法としては、H. Carillo 及び D. Lipman、SIAM J. Applied Math., 48,1073 (1988)、又は、好ましくは、Needleman 及び Wunsch、J. Mol. Biol., 48, 443-445 (1970) に記載されているものが挙げられ、そこでは、パラメーターがDNASIS(Hitachi Software Engineering Co., San Bruno, CA)のバージョン2にセットされているものであるが、これらに限定されるものではない。同一性を求めるためのコンピュータープログラムは、公然と入手可能である。2つの配列間の同一性を求める好ましいコンピュータープログラム方法としては、GCGプログラムパッケージ(J. Devereux 等、Nucleic Acids Research, 12(1), 387 (1984))、BLASTP、BLASTN及びFASTA(S.F. Altschul 等、J. Molec. Biol., 215, 403-410 (1990))が挙げられるが、これらに限定されるものではない。BLASTXプログラムは、NCBI(blast@ncbi.nlm.nih.gov.)及びその他の情報源(BLAST Manual, S. Altschul 等、NCBI NLM NIH Bethesda, MD 20894; S. Altschul 等、J. Molec. Biol., 215, 403-410 (1990))から公然と入手可能である。
【0013】
発明の詳細な説明
配列番号18及び26のGlyT―2核酸配列又は配列番号19及び27の対応するコードされた蛋白質配列は、Liu 等、J. Biol. Chem., 268, 22802-22808 (1992) に報告されているラットGlyT―2配列のヒト類縁である。配列番号:21、即ち、配列番号:20の核酸配列によりコードされたGlyT―2蛋白質配列は、配列番号:19及び27のアミノ酸配列とは異なり、おそらく、ヒトGlyT―2の変異体を示しているであろう。配列番号:1〜34に記載された他の配列は、更に変異を示すものである。これらの変異は、クローンを生成するためのいくつかのドナーについてプールされたmRNAからのcDNAの使用に主として起因する。全体で、単離された種々のヒトGlyT―2由来核酸が、下記の配列変異を示す。
【0014】
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【表1D】
【表1E】
この変異の源になるものとは無関係に、ペプチド配列における点変異は、停止コドンを除いて、GlyT―2の機能に悪影響を与えないものと信じられている。配列番号:19及び27のGlyT―2蛋白質配列が特に最も好ましく、配列番号:27が最も好ましい。配列番号:26の核酸配列は、大きいコンセンサス配列を提供するものと信じられている。
上記変異は、主にヒト個体間の配列変異を示すものである。上記核酸配列を生成させるのに用いられる物質は、特定の核酸配列に応じて、26又は92の個体からのプールを含んでいた。沈黙又は保存変異(silent or conservative substitutions)が優勢であることと共に、プールされた原料物質を使用することにより、変異が、増幅反応によって生ずる突然変異よりも、むしろヒト由来変異を反映するものであるという結論が支持される。
配列番号18のヒトヌクレオチド配列とGlyT―2のためのラットヌクレオチド配列との関係、及びそれらがコードする蛋白質配列の関係は、下記の表に示す通りである。これらの表に示された関連値(relatedness values)は、ピアソンとリップマン(Pearson and Lipman)によって記載されたFASTAコンピュータープログラム(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 2444-2448 (1988))を用いて求めた。
【0015】
【表2A】
【表2B】
【0016】
核酸−ググリシン輸送体をコードする核酸
グリシン輸送体をコードする天然に存在しない核酸を作るためには、未変性配列を出発点として用い、特定の要求に適するように変性することができる。例えば、配列を突然変異させて、有用な制限部位を取り入れることができる。Maniatis 等、分子クローニング、実験室マニュアル(Molecular Cloning, a Laboratory Manual)(Cold Spring Harbor Press, 1989)参照。このような制限部位は、“カセット”、即ち制限酵素と連結反応を用いて円滑に置換された核酸の領域を作るのに用いることができる。このカセットは、突然変異グリシン輸送体アミノ酸配列をコードする合成配列を置換するのに用いることができる。また、グリシン輸送体をコードする配列は、実質的又は完全に合成したものであることができる。例えば、Goeddel 等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76, 106-110 (1979)参照。組み換え発現のためには、このような核酸が発現されることになる生体へのコドン使用優先(codon usage preferences)を、グリシン輸送体をコードする合成核酸を設計する際に考慮するのが好都合である。例えば、原核コドン優先(prokaryotic codon preferences)を取り入れる核酸配列を、National Biosciences, Inc. (Plymouth, MN) から入手できるオリゴ―4(Oligo-4)などのソフトウエアプログラムを用いて、哺乳類由来の配列から設計することができる。
本発明の核酸配列実施態様は、好ましくはデオキシリボ核酸配列であり、好ましくは2本鎖デオキシリボ核酸配列である。しかし、それらは、リボ核酸配列であってもよい。
蛋白質をコードする核酸配列から配列を欠失させるか、あるいはその核酸配列を突然変異させ、これらの欠失又は突然変異した配列によってコードされた蛋白質の機能を確認するには、多数の方法が知られている。従って、本発明は、グリシンへ特異的に結合する能力及び膜を通してグリシンを輸送する能力を保持する蛋白質をコードするヒト核酸配列の突然変異又は欠失したものに関するものでもある。これらの類似体は、GlyT―2の機能が保持される限り、N末端、C末端又は内部欠失があってもよい。残っているヒトGlyT―2蛋白質配列は、配列番号:27の蛋白質配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列に関して、約4つ以下のアミノ酸配列変異を有することが好ましく、好ましくは2つ以下のアミノ酸配列変異、更に好ましくは1つ以下のアミノ酸変異を有するであろう。これらの変異は、配列番号:19又は27の蛋白質配列に関連していることが更に好ましく、配列番号:27が更に一層好ましい。1つの好ましい実施態様においては、本発明の蛋白質実施例が、配列番号:27の蛋白質配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、若しくは(10)Ile735をValへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列に関して、明らかにされている。点変異は、保存(conservative)点変異であることが好ましい。これらの類似体は、配列番号:27の蛋白質配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列と、好ましくは、少なくとも約96%の配列同一性、好ましくは、少なくとも約97%の配列同一性、更に好ましくは、少なくとも約98%の配列同一性、更に一層好ましくは、少なくとも約99%の配列同一性、更にもっと好ましくは、少なくとも約99.5%の配列同一性を有しているであろう。これらの変異は、配列番号:19又は27の蛋白質配列に関連していることが更に好ましく、配列番号:27が更に一層好ましい。突然変異又は欠失のアプローチは、ヒトGlyT―2蛋白質を発現する本発明の核酸配列の全てに適用されることができる。上で論じたように、保存(conservative)突然変異が好ましい。このような保存突然変異としては、下記の群の1つの範囲内で、1つのアミノ酸を他のアミノ酸に変換する突然変異が挙げられる。
1.小さい脂肪族非極性又はわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr、Pro及びGly
2.極性で、負に帯電した残基及びそれらのアミド類:Asp、Asn、Glu及びGln
3.極性で、正に帯電した残基:His、Arg及びLys
4.大きい脂肪族非極性残基:Met、Leu、Ile、Val及びCys
5.芳香族残基:Phe、Tyr及びTrp
保存変異の好ましいリスティングは、次の通りである。
【0017】
【表3】
【0018】
選択された変異の種類は、Schulz 等、Principles of Structure, Springer-Verlag (1978) によって開発された異なる種の同族蛋白質間のアミノ酸変異の頻度の解析、Chou 及び Fasman、Biochemistry, 13, 211 (1974) 並びに Adv. Enzymol, 47, 45-149 (1978) によって開発された構造形成ポテンシャルの解析、並びにEisenberg 等、Proc. Natl. Acad. USA, 81, 140-144 (1984)、Kyte & Doolittle、J. Molec. Biol., 157, 105-132 (1981) 及びGoldman 等、Ann. Rev. Biophys. Chem., 15, 321-353 (1986) によって開発された蛋白質における疎水性パターンの解析に基づけばよい。このパラグラフの参考文献は、全てそのまま、ここに参照のために記載する。
ここで同定された種々のヒトGlyT―2mRNA間にアミノ酸置換を生成する10の同定された点変異は、機能性GlyT―2を生成するのに有用であると信じられるので、これらの点変異の全ての組み合わせを取り込む蛋白質は、機能的であると信じられる。これらの変異は、本発明の範囲内である。
この適用のためには、本発明の核酸が、それが誘導される細胞又は組織の他の高分子から分離された場合は、その核酸が“単離”されたということである。この核酸を含む組成物は、もとの細胞の組成物よりも、核酸含有量に関して、少なくとも約10倍高いことが好ましい。この核酸は、実質的に純粋であることが好ましく、これは、他の核酸に関して、少なくとも約60%w/wの純度を意味し、更に好ましくは約80%、更に一層好ましくは約90%、更にもっと好ましくは約95%である。
【0019】
ハイブリダイゼーションプローブ
グリシン輸送体のための核酸配列の多くの欠失又は突然変異類似体は、グリシン輸送体をコードする核酸に有効なハイブリダイゼーションプローブであろうと認められるであろう。従って、本発明は、ストリンジェント(stringent)条件下で、このようなグリシン輸送体をコードする核酸配列と交雑する核酸配列に関するものである。好ましくは、この核酸配列は、配列番号:26の核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、(n)A2203をGへ、(o)C342をGへ、(p)C352をTへ、(q)T733をCへ、(r)A777をGへ、(s)G913をCへ、(t)G951をAへ、(u)C1097をTへ、若しくは(v)T1199をCへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている核酸配列と交雑する。1つの実施態様においては、本発明の核酸(又は機能的同等物)実施例が、配列番号:26の核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、若しくは(n)A2203をGへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている核酸配列に関して明らかにされている。
“ストリンジェント(stringent)条件”とは、実質的に関連する核酸配列のハイブリダイゼーションを許容する条件を意味する。例えば、このような条件下では、一般に、少なくとも約85%の配列同一性、好ましくは 少なくとも約90%の配列同一性、更に好ましくは少なくとも約95%の配列同一性で配列のハイブリダイゼーションが可能であろう。このようなハイブリダイゼーション条件は、Sambrook 等、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press (1989) により記載されている。ハイブリダイゼーション条件及びプローブを、十分に特徴のある方法で調整して、ヒト由来プローブの選択的ハイブリダイゼーションを行うことができる。
ストリンジェント(stringent)条件下で、グリシン輸送体をコードする核酸へ交雑する核酸分子は、上で略述した方法を用い、あるいは、例えば、Sambrook 等、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press (1989) で総説されているハイブリダイゼーション方式を使用することにより、機能的に同定されることができる。
ハイブリダイゼーションプローブへの用途の例としては、制限はなく、ヒトGlyT―2輸送体を発現する組織を同定することなどの組織化学的用途;mRNA濃度を測定して、例えばサンプルの組織の種類を同定するか、あるいは異常濃度のグリシン輸送体を発現する細胞を同定すること;及びグリシン輸送体遺伝子内の多形現象を検出することなどが挙げられる。RNAハイブリダイゼーション方法は、Maniatis 等、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press (1989))に記載されている。
【0020】
PCRプライマー
ポリメラーゼ連鎖反応(“PCR”)プライマーを設計する方式は、PCR Protocols, Cold Spring Harbor Press (1991) により総説されているように、現在、確立されている。変性(degenerate)プライマー、即ち、所定の配列場所で不均一なプライマー試料を、ヒトGlyT―2核酸と高度に類似しているが、同一ではない核酸配列を増幅するように設計することができる。必要とするプライマーのうちの1つだけを公知の配列と特異的に交雑させる方策は、現在、利用可能である。Froman 等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8998 (1988) 及び Loh 等、Science, 243, 217 (1989) 参照。例えば、適当な核酸プライマーを、増幅しようとする核酸に結合して、それらのプライマーのうちの1つのためのハイブリダイゼーションパートナーを提供することができる。この方法では、プライマーのうちの1つだけが、増幅しようとする核酸の配列に基づいていることが必要である。
核酸を増幅するPCR法は、少なくとも2つのプライマーを利用するであろう。これらのプライマーの一方は、増幅されるべき核酸の第一のストランドへ交雑することができ、酵素で行われる(enzyme-driven)核酸合成を第一の方向へ開始させる(prime)ことができるであろう。他方は、この第一のストランドの相互配列(もし、増幅されるべき配列が一本鎖のものであれば、この配列は、最初は仮定的であるが、第一の増幅サイクルで合成されるであろう)を交雑し、そのストランドから、第一の方向とは反対の方向で、第一のプライマーのためのハイブリダイゼーションの部位へ向かって、核酸合成を開始させることができるであろう。このような増幅を行うための条件、特に、好ましいストリンジェント(stringent)ハイブリダイゼーション条件は、よく知られている。例えば、PCR Protocols, Cold Spring Harbor Press (1991)参照。
【0021】
ベクター
適当な発現ベクターは、宿主細胞に含まれているGlyT―2コードDNAの発現を促進することができ、真核性、真菌性又は原核性であることができる。なかでも、適当な発現ベクターとしては、pRc/CMV(Invitrogen, San Diego, CA)、pRc/RSV(Invitrogen)、pcDNA3(Invitrogen)、Zap Express Vector(Stratagene Cloning Systems, LaJolla, CA)、pBk/CMV又はpBk−RSVベクター(Stratagene)、Bluescript II SK +/− Phagemid Vectors(Stratagene)、LacSwitch(Stratagene)、pMAM及びpMAM neo(Clontech, Palo Alto, CA)、pKSV10(Pharmacia, Piscataway, NJ)、pCRscript(Stratagene)及びpCR2.1(Invitrogen)が挙げられる。有用な酵素発現系としては、例えば、pYEUra3(Clontech)が挙げられる。有用なバキュロウイルスベクターとしては、pVL1393、pVL1392、pBluBac2、pBluBacHis A、B又はCなどの Invitrogen(San Diego, CA)からのウイルス性ベクターや、pbacPAC6(Clontech から)が挙げられる。
【0022】
細胞
本発明の1つの実施態様においては、輸送体は、哺乳類の細胞系内で発現されるのが好ましく、株化細胞培養履歴を有する形質転換細胞内で発現されるのが好ましい。この実施態様においては、特に好ましい細胞系としては、COS―1、COS―7、LM(tk−)、Hela、HEK293、CHO、Rat―1及びNIH3T3が挙げられる。他の好ましい細胞としては、QT―6細胞などの鳥類細胞が挙げられる。用いることのできる他の細胞としては、ショウジョウバエ細胞などの昆虫細胞、魚類細胞、両生類細胞及び爬虫類細胞が挙げられる。
他の実施態様においては、細菌細胞系や酵素細胞系などの、哺乳類細胞系よりも安価に維持され、成長する細胞系内で発現される。
【0023】
単離されたグリシン輸送体
本発明は、好ましくは、蛋白質に関して少なくとも約80%、好ましくは90%、更に好ましくは95%の純度で、本発明の核酸の任意のものによりコードされたヒトGlyT―2蛋白質を規定するものでもある。純度は、例えば、下記のような蛋白質精製方法を、本発明による組み換え細胞の溶解産物に適用することにより達成される。
上のパラグラフのヒトGlyT―2変異株は、ヒトGlyT―2活性を生ずる生体又は細胞を作るのに使用されることができる。関連分子生物学法を始めとする精製方法を次に述べる。
【0024】
グリシン輸送体を製造する方法
本発明の核酸の1つの指示(direction)のもとで生体により合成されたポリペプチドを単離する1つの単純化された方法は、融合パートナーが円滑にアフィニティ精製されている融合蛋白質を組み換え的に発現させることである。例えば、融合パートナーとしては、グルタチオンS―トランスフェラーゼを挙げることができ、これは、市販の発現ベクター(例えば、Pharmacia, Piscataway, NJ から入手できるベクターpGEX4T3)上でコードされる。次いで、この融合蛋白質を、グルタチオンアフィニティカラム(例えば、Pharmacia, Piscataway, NJ から入手できるもの)で精製することができる。その他の融合パートナーも、例えば、Invitrogen (Carlsbad, CA)で販売されている種々の発現ベクターにおいて使用できる。勿論、このような融合パートナー無しに、GlyT―2に結合する適当な抗体を用いて、組み換えポリペプチドをアフィニティ精製することができる。このような抗体を製造する方法は、GlyT―2発現系及び既知の抗体製造法のここでの十分な記載に照らしてみれば、当業者にとって利用できるものである。例えば、Ausubel 等、Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York (1992) 参照。融合蛋白質を使用する場合は、融合パートナーとGlyT―2との間のリンカーなどのような構造ができていない領域を優先的に攻撃する部分蛋白分解消化法により、融合パートナーを除去することができる。例えば、Chou 及び Fasman、Biochemistry, 13, 211 (1974) 並びに Chou 及び Fasman、Adv. in Enzymol., 47, 45-147 (1978) によって開発された二次構造形成ポテンシャルの方式を用いて、構造が存在しないようにリンカーを設計することができる。トリプシンにより切断された部位を規定するアミノ酸であるアルギニン及びリシン残基、又は、例えば、AspAspAspAspLysなどの、リシン残基の後で切断されたエンテロキナーゼ標的配列のような、プロテアーゼ標的アミノ酸を導入するように、リンカーを設計することもできる。リンカーを作るためには、標準サブクローニング方法論と共に、オリゴヌクレオチドを作る標準合成法を用いることができる。GST以外にも、他の融合パートナーを用いることができる。真核細胞、特に哺乳類細胞を利用する方法は、これらの細胞が蛋白質を翻訳後に改変して、天然蛋白質と高度に類似しているか、あるいはそれと機能的に同一である分子を作るので好ましい。
用いることができる他の精製技術としては、制限はなく、予備電気泳動、FPLC(Pharmacia, Uppsala, Sweden)、HPLC(例えば、ゲル濾過、逆相又は弱疎水性カラムを用いる)、ゲル濾過、分別沈殿(例えば、“塩析”沈殿)、イオン交換クロマトグラフィー及びアフィニティクロマトグラフィーが挙げられる。
GlyT―2は膜蛋白質であり、関連輸送体蛋白質との類似により12の膜内外配列を持っていいると信じられているため、単離方法では、洗浄剤、一般には非イオン性洗浄剤を用いて、蛋白質の適当な二次又は三次構造を維持することが多いであろう。例えば、Lopez-Corcuera 等、J. Biol. Chem., 266, 24809-24814 (1991) 参照。可溶化された輸送体を膜内に再統合する方法の記載については、Lopez-Corcuera 等、J. Biol. Chem., 266, 24809-24814 (1991) 参照。
GlyT―2の単離は、GlyT―2を発現するために形質転換された細胞から膜を単離することを含むことができる。このような細胞は、膜画分内のGlyT―2の量が、自然にGlyT―2を発現する細胞からの比較しうる膜に見られるものよりも少なくとも約10倍、更に好ましくは、その量が少なくとも約100倍高くなるような十分な複製数でGlyT―2を発現することが好ましい。
この蛋白質は、実質的に純粋であることが好ましく、これは、他の蛋白質に関して、少なくとも60%の純度を意味する。この適用のためには、GlyT―2が、それが誘導される細胞又は組織の他の高分子から分離された場合は、GlyT―2が“単離”されたということである。GlyT―2を含む組成物は、もとの細胞の組成物よりも、蛋白質含有量に関して、少なくとも約10倍、好ましくは少なくとも約100倍高いことが好ましい。
【0025】
RNA挿入によるGlyT―2の発現
mRNAを細胞に挿入するという簡単な方法で、ヒトGlyT―2を発現させることができるということが認められるであろう。GlyT―2活性を有する蛋白質をコードする核酸を、SP6又はT7RNAポリメラーゼプロモーターなどの、高効率生体外転写用プロモーターを含むベクターへサブクローニングすることにより、これらの用途のRNAを調製することができる。このベクターからのRNAの製造は、例えば、Ausubel 等、Short Protocols in Molecular Biology, pp. 10-63 から 10-65 まで、John Wiley & Sons, New York (1992) に記載されている方法で行うことができる。アフリカツメガエル由来の卵母細胞へのRNAの挿入が、例えば、Liu 等、FEBS Letters, 305, 110-114 (1992) 及び Bannon 等、J. Neurochem., 54, 706-708 (1990) に記載されている。
一方、mRNAを、膜含有翻訳系であってもよい生体外翻訳系に挿入するという簡単な方法で、ヒトGlyT―2を発現させることができるということが認められるであろう。生体外での蛋白質の発現は、例えば、Ausubel 等、Short Protocols in Molecular Biology, pp. 10-63 から 10-65 まで、John Wiley & Sons, New York (1992) に記載されている。Guastella 等、Science, 249, 1303-1306 (1990) (輸送体の生体外発現)も参照。生体外で膜蛋白質を製造するのに、細胞下膜様物質を使用することが、Walter 及び Blobel、Meth. Enzymol., 96, 84 (1983) (ウサギ網状赤血球翻訳系について)並びに Spiess 及び Lodish、Cell, 44, 177 (1986) (小麦胚芽翻訳系について)に記載されている。
【0026】
剤を確認又は同定する方法
神経系障害若しくは状態に関連する病気若しくは状態の治療用生理活性剤を分析又はスクリーニングする方法は、第一及び第二の細胞を別々に培養することからなり、ここで、その第一及び第二の細胞は、好ましくは同一種のもの、更に好ましくはその同一株のものであり、ここで述べられているようなグリシン輸送体をコードする外因性核酸を含んでいる。この剤を治療のために使用できる神経系障害又は状態としては、(a)痛み、(b)ミオクロヌス、(c)筋痙攣、(d)筋機能亢進、(e)てんかん又は(f)発作、頭部外傷、神経細胞死、多発性硬化症、脊髄損傷、失調症、ハンチントン病又は筋萎縮性側索硬化症と関係しているものなどの痙性が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この方法では、第一の細胞を、好ましくは3Hや14Cなどの放射性同位元素を取り入れているグリシンの存在下で、好ましくはペプチド又は有機化合物などの化合物である生理活性剤又は予期される剤(prospective agent)と接触させる。次いで、第一の細胞を、その化合物と接触させなかった第二の細胞(即ち、対照細胞)へのグリシン輸送と比較して、第一の細胞へのグリシン輸送の促進又は抑制について試験する。このような分析又はスクリーニングには、好ましくは所見、学習、発見、測定、同定又は確認の活性(activities of finding, learning, discovering, determining, identifying or ascertaining )が含まれる。
一方で、細胞の代わりに、単離されたGlyT―2輸送体を含む化合物を測定に用いることができる。このような単離された輸送体の試料は、好ましくは小胞内に膜又は脂質二重層を含むことが好ましく、その小胞は、内部と外部とを有し、その外部を横切って輸送を測定することができる。例えば、Kanner、Biochemistry, 17, 1207-1211 (1978) 参照。
試験の終わりにおいて、細胞内、小胞内又はその他に輸送されたグリシンの量が、剤と接触させなかった組成物よりも、剤と接触させた組成物の方が大きい場合は、生理活性剤はグリシン輸送取り込みの促進剤であり、逆に、細胞内又は小胞内グリシンの量が、他方と比較して、剤と接触させなかった組成物の方が大きい場合は、生理活性剤は、グリシン輸送の抑制剤である。試験される第一の組成物と対照の第二の組成物との間のグリシン取り込みの差は、好ましくは少なくとも約2倍、更に好ましくは少なくとも約5倍、最も好ましくは少なくとも約10倍以上である。
GlyT―2輸送体に関する抑制剤又は促進剤である生理活性剤は、GlyT―1輸送体の1つなどの他のグリシン輸送体については、中立又は反対の影響を有する。好ましい生理活性剤は、GlyT―2輸送体を促進又は抑制する特異性を有し、他のグリシン輸送体に及ぼす影響は、中立又は無視できるものである。生理活性剤は、第二のグリシン輸送体に及ぼすその影響と比較して、GlyT―2輸送体によって媒介されたグリシン取り込みを抑制又は促進する際に、IC50値などの濃度依存性パラメーターに反映して、大きさが少なくとも1オーダー大きい効力を持っていることが好ましい。より好ましい剤は、グリシン輸送体の1つについて、他のものと比較して、少なくとも約100倍大きい効力を有している。
生理活性剤は、輸送体と接触するように拡散することができる形でグリシン輸送体に供与できれば、どのような化合物、物質、組成物、混合物又は化学薬品であってもよい。このような生理活性剤としては、好ましくは長さが2から約25までのアミノ酸、より好ましくは2から約10まで、更に一層好ましくは長さが2から約5のアミノ酸のポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明に関連する他の適当な生理活性剤としては、好ましくは分子量が約100ダルトンから約5,000ダルトンまでの小さい有機化合物が挙げられ、アルキル、アリール、アルケン、アルキン、ハロ、シアノ及びその他の基のような機能性(functionalities)からなり、ヘテロ原子は含んでいても含まなくてもよい。このような有機化合物としては、単純糖(simple sugar)を始めとする炭水化物、アミノ又はイミノ酸、核酸、ステロイドなどを挙げることができる。予期される剤(prospective agent)として試験される化学薬品は、当該技術分野において知られている組み合わせ化学プロセス又は化学合成の従来からの手段を用いて、調製することができる。生理活性剤が、神経系障害又は状態の治療用薬剤として有用であることが好ましい。
GlyT―1又はGlyT―2媒介輸送を抑制するいくつかの化合物は、ストリキニン感受性受容体のグリシン結合部位又はNMDA受容体のグリシン結合部位へも結合する。ストリキニン感受性受容体へのこのような結合は、例えば、脊髄や脳幹組織からの膜画分から調製されることができるような、ストリキニン感受性受容体の試料と接触して、放射線標識ストリキニンを置くことによる結合測定法により同定することができる。膜画分は、例えば、均質化及び遠心分離の方法を含む通常の方法を用いて調製することができる。
NMDA受容体へのこのような結合は、例えば、神経細胞や脳組織からの膜画分から調製されることができるような、NMDA受容体の試料と接触して、放射線標識グリシンを置くことによる結合測定法により同定することができる。Grimwood 等、Molec. Pharmacol., 41, 923-930 (1992)。このような膜内に置かれたNMDA受容体は、約0.1%〜約0.5%サポニンなどの弱い洗浄剤で処理されて、どのような内因性グリシン又はグルタミン酸塩でも除去する。
このような結合測定法で用いられるリガンドは、炭素又は水素の放射性同位元素のような、任意の検出可能な同位元素で放射線標識されている。次いで、放射線標識リガンドの特異的結合を、放射線標識リガンドの全(即ち、特異的及び非特異的)結合による放射能から非特異的結合による放射能を引くことにより求める。非特異的結合による放射能は、放射線標識リガンド及び100倍過剰のように著しく過剰の非放射線標識リガンドの両方に接触したストリキニン感受性又はNMDA受容体含有膜画分と結合した放射線標識の量を測定することにより求められる。放射線標識リガンドの全結合による放射能は、非放射線標識リガンドの不存在下で、受容体試料に結合した放射線標識の量を測定することにより求められる。NMDA受容体については、例えば、ジクロロキヌレン酸又はL―689,560などのアミノ酸の標識類似体を用いて、受容体のグリシン部位への結合を測定することもできる。例えば、Grimwood 等、Molec. Pharmacol., 41, 923-930 (1992)参照。
カルシウムフラックス(NMDA受容体試料について)若しくは塩化物フラックス(ストリキニン感受性受容体試料について)を促進又は抑制することに関して、本発明によって同定された化合物の効果を測定するのに、機能性イオンフラックス測定法(functional ion-flux assay)が用いられる。この試験は、膜結合NMDA受容体又はストリキニン感受性受容体とグリシン輸送体を有する細胞培養で行われる。このような細胞は、神経細胞を含み、一般には、脳幹及び脊髄のもの、それらから誘導された細胞株及びNMDA受容体又はストリキニン感受性受容体を発現するように誘導又はトランスフェクトされた他の任意の細胞を含む。このような試験に用いられるカルシウムは、カルシウムキレーター(chelator)と結合した蛍光である、カルシウム結合蛍光などの他のカルシウム測定技術を同様に用いることもできるが、一般には、45Ca同位元素である。このような試験に用いられる塩化物は、通常、同位元素36Clが挙げられる。どの方法でカルシウム又は塩化物をモニターしても、本発明の生理活性剤を別に添加すれば、その結果、イオンフラックスを促進又は抑制することができる。この方式の利点は、受容体とグリシン輸送体の両方のグリシン部位に相互作用する化合物のNMDA受容体又はストリキニン感受性受容体機能に及ぼす正味の影響をモニターできるという点にある。
ストリキニン感受性受容体アゴニストでもあるGlyT―2抑制剤は、グリシン輸送体の抑制、そしてストリキニン感受性受容体活性を直接高めることで、ストリキニン感受性受容体発現シナプスにおけるグリシン濃度を増大させることにより、上記適応症(indications)において作用する。ストリキニン感受性受容体アンタゴニストでもあるグリシン輸送体抑制剤は、例えば、グリシン輸送体抑制によるグリシンの増加が、ストリキニン感受性受容体拮抗作用よりも優勢であれば、それにもかかわらず、これらの適応症を治療する際に活性を保持することができる。ストリキニン感受性受容体アンタゴニスト活性が、グリシン輸送体の抑制に起因する細胞外グリシン増加効果よりも優勢である場合は、これらの化合物は、重症筋無力症などの筋肉活性の低下に関連する状態を治療するのに有用である。
【0027】
上述のごとく、本発明の生理活性剤は、多数の薬理作用を持つことができる。これらの化合物の相対的有効性は、下記のものを含む多くの方法で評価することができる。
1.GlyT―1及びGlyT―2輸送体により媒介された活性を比較すること。この試験は、(a)GlyT―1輸送体に対してより活性であり、従って、精神分裂症を治療若しくは予防し、認識を増進し、記憶を増強するのにより有用な、又は(b)GlyT―2輸送体に対してより活性であり、従って、てんかん、痛み若しくは痙性を治療若しくは予防するのにより有用な生理活性剤を同定する。
2.ストリキニン感受性受容体又はNMDA受容体結合の試験。この試験は、このような結合の薬理学的効果を更に調べることを保証するのに十分な結合がこの部位にあるかどうかを決定する。
3.一次組織培養におけるイオンフラックス、例えば、ストリキニン感受性受容体により媒介された塩化物イオンフラックス若しくはNMDA受容体により媒介されたカルシウムイオンフラックスを促進又は低減させる際に、化合物の活性を試験する。イオンフラックスを増大させる生理活性剤は、(a)ストリキニン感受性受容体にアンタゴニストをほとんど持たないかあるいは全く持っておらず、GlyT―2輸送体抑制によるグリシン活性の増強におそらく影響を与えないものであるか、又は(b)ストリキニン感受性受容体との直接の相互作用がほとんどない比較GlyT―2抑制剤との結果に著しい増加が認められれば、その剤は、受容体アゴニストである。
本発明の剤分析法は、生理活性剤が、NMDA受容体とGlyT―2輸送体とが関係している適応症を治療するのに有用であるかどうかを確認するのに用いられることがあるであろう。この場合、一般に、ストリキニン感受性受容体とGlyT―2輸送体に関する活性の程度が低いほど、望ましい。
【0028】
アンチセンス治療法
本発明の1つの態様は、上で確認されたもののような神経性適応症を治療するための“アンチセンス”核酸の使用に関するものである。このアプローチは、GlyT―2をコードするmRNAに結合して、そのmRNAの翻訳を停止又は抑制するか、あるいはGlyT―2遺伝子に結合して、その転写を妨げるように設計されたアンチセンス分子の使用を含むものである。ゲノムDNAに結合して、転写を妨げるヌクレオチド配列の設計の議論については、Helene、Anti-Cancer Drug Design, 6, 569 (1991) 参照。結合されようとするmRNA配列が分かれば、ワトソン−クリック(Watson-Crick)塩基対合則によりセンスストランドに結合して、DNA二重らせんと類似の二重構造を形成するアンチセンス分子を設計することができる。Erikson 及び Ixzant 編、遺伝子調節:アンチセンスRNA及びDNAの生物学(Gene Regulation: Biology of Antisense RNA and DNA)、Raven Press, New York (1991);Helene、Anti-Cancer Drug Design, 6, 569 (1991);Crooke、Anti-Cancer Drug Design, 6, 609 (1991)。
アンチセンス技術を十分に利用することに対する重大な障害は、標的mRNAの翻訳又はDNAの機能を有効に妨げるのに十分な数のアンチセンス分子を細胞内に効率的に導入するという問題である。この問題を克服するのに用いられている1つの方法は、アンチセンスポリ核酸分子の5’又は3’末端を疎水性置換基により共有結合で変性することである。これらの変性核酸は、一般に、一層効率よく細胞内に入り込む。例えば、Boutorin 等、FEBS Lett., 23, 1382-1390 (1989);Shea 等、Nucleic Acids Res., 18, 3777-3783 (1990) 参照。更に、アンチセンス分子のリン酸塩バックボーンは、負の電荷を除去又は低減させるように変性されており(例えば、Agris 等、Biochemistry, 25, 6268 (1986);Mol 及び Van der Krol 編、アンチセンス核酸と蛋白質:基礎と応用(Antisense Nucleic Acids and Proteins: Fundamentals and Applications) における Cazenave 及び Helene、47頁以降、Marcel Dekker, New York (1991) 参照)、又はプリン若しくはピリミジン塩基が変性されている(例えば、Mol 及び Van der Krol 編、アンチセンス核酸と蛋白質:基礎と応用、47頁以降、Marcel Dekker, New York (1991);Huber 及び Laso 編、腫瘍疾患の遺伝子治療(Gene Therapy For Neoplastic Diseases)におけるMilligan 等、288頁以降、New York Academy of Sciences, New York (1994) 参照)。細胞透過障害を克服する他の方法としては、少ないコピー数で細胞内に挿入されることができるが、細胞内では、細胞機構(cellular machinery)を支配して、より多くの可成りの量のアンチセンスポリ核酸分子を合成することができる発現ベクターにアンチセンスポリ核酸配列を導入することが挙げられる。例えば、Farhood 等、Ann. N.Y. Acad. Sci., 716, 23 (1994) 参照。この方策は、アンチセンス配列が取り込まれた発現部位を有する組み換えウイルスを使用することを含むものである。例えば、Boris-Lawrie 及び Temin、Ann. N.Y. Acad. Sci., 716, 59 (1994) 参照。その他にも、アンチセンス分子又は他の核酸分子の負の電荷をポリカチオンで中和することにより、膜透過性を高めることが試みられている。例えば、Wu 及び Wu、Biochemistry, 27, 887-892 (1988);Behr 等、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 86, 6982-6986 (1989) 参照。
アンチセンス治療などの遺伝子治療に関しては、細胞からなくなっているか、あるいは更に大量に発現すれば細胞や生体にとって有用である蛋白質の合成を支配することができるDNAベクターを、1つ又はそれ以上の種類の生体に取り込もうとする試みが、医学研究者によってしばしば行われている。DNAを導入して、細胞が新しい蛋白質又はより多くの蛋白質を生成するようにさせる方法は、“トランスフェクション”法と呼ばれる。一般には、Huber 及び Lazo 編、腫瘍疾患(Neoplastic Diseases)、New York Academy of Science, New York (1994);Feinger、Adv. Drug Deliv. Rev., 5, 163 (1990);MacLachlin 等、Progr. Nucl. Acids Rev. Mol. Biol., 38, 91 (1990);Karlsson、S. Blood, 78, 2481 (1991);Einerhand 及び Valerio、Curr. Top Microbiol. Immunol., 177, 217-235 (1992);Makdisi 等、Prog. Liver Dis., 10, 1 (1992);Litzinger 及び Huang、Biochim. Biophys. Acta., 1113, 201 (1992);Morsy 等、J.A.M.A., 270, 2338 (1993);Dorudi 等、British J. Surgery, 80, 566 (1993) 参照。
核酸を細胞に取り込む他の一般的な方法としては、核酸のリン酸カルシウム沈殿及び標的細胞でのインキュベーション(Graham 及び Van der Eb、Virology, 52, 456 (1983))、核酸、DEAE―デキストラン及び細胞の混合インキュベーション(Sompayrac 及び Danna、Proc. Natl. Acad. Sci., 12, 7575 (1981))、核酸の存在下における細胞のエレクトロポレーション(Potter 等、Proc. Natl. Acad. Sci., 81, 7161-7165 (1984))、核酸をウイルス膜内に取り込んで、トランスフェクション小胞を作る方法(Gitman 等、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 82, 7309-7313 (1985))及びリポソームに取り込まれた核酸と共に細胞をインキュベートする方法(Wang 及び Huang、Proc. Natl. Acad. Sci., 84, 7851-7855 (1987))が挙げられる。遺伝子治療に対する1つのアプローチは、細胞内に導入しようとする遺伝子を、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス又はレトロウイルスなどのウイルスに取り込むことである。例えば、Akli 等、Nature Genetics, 3, 224 (1993) 参照。
【0029】
本発明の核酸組成物は、例えば、経口、局所、直腸、経鼻、経膣、例えば、エアロゾルの使用による吸引、又は、例えば、筋肉内、皮下、腹腔内、心室内若しくは静脈内などの非経口で投与される。この核酸組成物は、単独で投与されるか、あるいは標準的な医薬慣例に従って、薬理学的に許容されうる担体又は賦形剤と組み合わせられることができる。経口様式の投与では、核酸組成物は、錠剤、カプセル、ロゼンジ、トローチ、粉剤、シロップ、エリキシル、水溶液、懸濁液などの形で用いられる。錠剤の場合、用いられることができる担体としては、ラクトース、クエン酸ナトリウム及びリン酸の塩が挙げられる。澱粉などの種々の崩壊剤及びステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルクなどの滑沢剤が、一般に、錠剤に用いられる。カプセル形態での経口投与に関しては、有用な希釈剤は、ラクトース及び高分子量ポリエチレングリコールである。経口用に水性懸濁液が必要な場合は、核酸組成物を乳化及び懸濁剤と組み合わせることができる。所望であれば、ある種の甘味剤及び/又は着香剤を添加することができる。非経口投与に関しては、通常、接合体の無菌溶液を調製し、その溶液のpHを適当に調整、緩衝する。静脈使用については、溶質の全濃度を調節して、製剤を等張性にしなければならない。目への投与に関しては、塗布具又は点眼瓶などの公知の目搬送系(ocular delivery systems)により、軟膏又は点眼液を供給することができる。このような組成物としては、ヒアルロン酸、硫酸コンドロイチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルアルコールなどのムコミメチック(mucomimetics)、ソルビン酸、EDTA又は塩化ベンジルクロムなどの防腐剤、並びに通常量の希釈剤及び/又は担体を挙げることができる。肺投与については、エアロゾルを形成させるのに適当なように、希釈剤及び/又は担体を選択することになるであろう。
一般に、核酸組成物は、有効量で投与されるであろう。医薬用途については、有効量は、(1)治療しようとする適応症の症状を軽減するか、あるいは(2)治療しようとする適応症を治療又は予防するのに適切な薬理学的変化をもたらすのに有効な量である。
ウイルス遺伝子治療ベクターに関しては、投与量は、一般に、体重1kg当たり核酸が約1μgから約1mgまでであろう。非感染遺伝子治療ベクターについては、投与量は、一般に、体重1kg当たり核酸が約1μgから約100mgまでであろう。アンチセンスオリゴヌクレオチド投与量は、、一般に、体重1kg当たり核酸が約1μgから約100mgであろう。
【0030】
自己免疫異常
グリシン輸送体に対して抗体が作られる自己免疫異常は、病気の状態と関連していると予想することができる。例えば、GlyT―2輸送体については、このような異常が、筋肉活性の低下、例えば、臨床的には重症筋無力症とよく似た状態を示す筋肉活性の低下と関連しているか、あるいは痛み知覚の低下と関連している予想することができる。神経伝達に含まれる分子(グルタミン酸デカルボキシラーゼ)に対する自己抗体による病気の例については、Nathan 等、J. Neurosci. Res., 40, 134-137 (1995) 参照。
これらの抗体の存在は、ここに述べた核酸又は他のところで報告されている関連グリシン輸送体から得られる蛋白質配列を用いた、確立された免疫学的方法により、測定することができる。例えば、Kim 等、Mol. Pharmacol., 45, 608-617 (1994) 及び Liu 等、J. Biol. Chem., 268, 22802-22808 (1992) 参照。このような免疫学的方法は、例えば、Ausubel 等、分子生物学における簡単プロトコル(Short Protocols in Molecular Biology)、John Wiley & Sons, New York (1992) に記載されている。
次の実施例は、本発明を更に説明するものであるが、いずれにせよ、その範囲を限定するものと解釈されるべきでないことは勿論のことである。
【実施例】
【0031】
実施例1A−GlyT―2クローニング
ヒトGlyT―2をコードするcDNAを、逆転写PCR(RT―PCR)により2段階で生成した。第1段階では、ヒト脊髄ポリAmRNA(Clontech, Palo Alto, CA)からのcDNA合成を開始するのに、2540から2521まで(5’―GGRTCDATCATRTTYTTRTA)のラットGlyT―2ヌクレオチド配列に相当する変性プライマーを使用した。ラット配列についてここに列挙されたナンバーリングは、Liu 等、J. Biol. Chem., 268, 22802-22808 (1992) に報告されたナンバーリングによる。次いで、PCR反応に下記のプライマー対を使用した。
プライマーA1:5’―CCNAARGARATGAAYAARCCNCC
(配列番号:37;ラット配列のNT223−245に基づく)
プライマーA2:5’―GCNGTGAAGTACACCACTTTNCC
(配列番号:38;ラット配列のNT1490−1468に基づく)
プライマーB1:5’―CCNAARGARATGAAYAARCCNCC
(配列番号:39;ラット配列のNT223−245に基づく;プライマーA1と同じプライマー)
プライマーB2:5’―GGCYTCNGGGTAARCCACRAANGC
(配列番号:40;ラット配列のNT1872−1849に基づく)
“R”の表示は、オリゴヌクレオチド組成物が、示された位置において、アデノシンとグアノシンの混合物を有していることを示し“N”は、示された位置において、全部で4つの塩基の組み合わせを有する混合オリゴヌクレオチドに関するものであり、“Y”は、シトシンとチミジンの混合物に関するものであり、“K”は、グアノシンとチミジンの混合物に関するものであり、“D”は、アデノシン、グアノシン及びチミジンの混合物に関するものである。
A1+A2プライマー及びB1+B2プライマーにより生成した断片を、pCRscript(Stratagene, La Jolla, CA)又はpCR2.1(Invitrogen, San Diego, CA)の中に別々にクローン化し、得られたクローンから、オートリード(AutoRead)配列決定(sequencing)キット(Pgarmacia, Piscataway, NJ)を用いて配列決定された(sequenced)。リップマン―ピアソン(Lipman-Pearson)FASTAアルゴリズムを用いて、これらの配列をラットGlyT―2と比較したところ、89%の同一性であることが分かり、これらの配列がヒトGlyT―2をコードしていることを確認した。A1+A2プライマー対は、クローンphG2―1を作り、それは、その挿入物として、配列番号:5の核酸配列を有している。B1+B2プライマー対は、クローンphG2―2を作り、それは、その挿入物として、配列番号:7の核酸配列を有している。
第2段階については、ランダム6量体(Promega, Madison, WI)を用いて、ヒト脊髄又は小脳mRNA(Clontech, Palo Alto, CA)からcDNAを合成し、PCR用クローンphG2―1及びphG2―2の配列に基づいて、更に追加のプライマーを設計した。ヒトGlyT―2cDNAの5’及び3’末端を増幅するのに、次のプライマー対を用いた。
プライマーC1:5’―CGGTTCAATCTGTTGTCCGCATCAGACATG
(配列番号:41;ラット配列のNT181−210に基づく)
プライマーC2:5’―GCAGGCTCGCGCGTCCGCTG
(配列番号:42;ヒト配列のNT210−191に基づく)
プライマーD1:5’―CCCGTATGTCGTACTCGTGATCCTCCTCATCCG
(配列番号:43;ヒト配列のNT1284−1316に基づく)
プライマーD2:5’―CCNCCRTGNGTDATCATNGGRAANCCC
(配列番号:44;ラット配列のNT2087−2061に基づく)
プライマーE1:5’―CCCGTATGTCGTACTCGTGATCCTCCTCATCCG
(配列番号:43;ヒト配列のNT1284−1316に基づく)
プライマーE2:5’―CCATCCACACTACTGGAYYARCAYTGNGTNCC
(配列番号:45;ラット配列のNT2624−2593に基づく)
プライマーF1:5’―CAGATTTCCTTCTCTTTATCTGCTGCATGG
(配列番号:46;ヒト配列のNT1417−1446に基づく)
プライマーF2:5’―GGRTCDATCATRTTYTTRTANCKYTCNCC
(配列番号:47;ラット配列のNT2540−2512に基づく)
プライマーG1:5’―CCTGCACCAACAGTGCCACAAGC
(配列番号:48;ヒト配列のNT1517−1539に基づく)
プライマーG2:5’―CCATCCACACTACTGGAYYARCAYTGNGTNCC
(配列番号:45;ラット配列のNT2624−2593に基づく)
プライマーH1:5’―CCAAGTACCTACGCACACACAAGCC
(配列番号:49;ヒト配列のNT1784−1808に基づく)
プライマーH2:5’―GGATTAATACGGGACCATCCACACTACT
(配列番号:50;ラット配列のNT2638−2611に基づく)
C1+C2プライマー対は、それらの挿入物として、配列番号1及び3の核酸配列をそれぞれ有するクローンphG2―3―a及びphG2―3―bを作った。D1+D2プライマー対は、それらの挿入物として、配列番号10及び12の核酸配列をそれぞれ有するクローンphG2―4―a及びphG2―4―bを作った。E1+E2プライマー対は、ヌクレオチド1317−2379を包含すると信じられるクローンを作った。F1+F2プライマー対は、ヌクレオチド1447−2298を包含すると信じられるクローンを作った。G1+G2プライマー対は、クローンphG2―7―aを作り、それは、その挿入物として、配列番号:14の核酸配列を有しており、また、クローンphG2―7―bを作り、それは、その挿入物として、配列番号:16の核酸配列を有している。H1+H2プライマー対は、それらの挿入物として、配列番号22及び24の核酸配列をそれぞれ有するクローンphG2―8―a及びphG2―8―bを作った。
PCR断片をpCR2.1(Invitrogen)の中にクローン化した。図1は、ヒトGlyT―2配列全体に関するクローン化されたcDNAのそれぞれの場所を示す。クローンphG2―3及びphG2―8bは、ヒト小脳mRNAから得られ、一方、残りは、脊髄から得られた。cDNA挿入物は、オートリード配列決定キット(Pgarmacia)及びアルフェックスプレス(ALFexpress)TM自動配列決定装置(Pharmacia)を用いて配列決定した。これらの配列は、アミノ酸配列において、10点の変異を示した。配列番号:18のヒトGlyT―2DNA配列をラットGlyT―2配列と比較すると、FASTAアルゴリズムを用いて、89%の核酸同一性及び94.4%のアミノ酸同一性があることが分かった。
【0032】
実施例1A−更なるGlyT―2クローニング
次のプライマーも使用した。
プライマーI1:5’―AGCTCTGCGGGACTTGAGAG
(配列番号:51;ヒト配列のNT276−295に基づく)
プライマーI2:5’―GTACACCACTTTTCCTGAAGTCTTG
(配列番号:52;ヒト配列のNT1245−1269に基づく)
プライマーJ1:5’―AGCTCTGCGGGACTTGAGAG
(配列番号:51;ヒト配列のNT276−295に基づく)
プライマーJ1:5’―CCTTGGTCTGCCACATTCTCAATGTTG
(配列番号:53;ヒト配列のNT1599−1625に基づく)
I1+I2プライマー対は、それらの挿入物として、配列番号29、31及び33の核酸配列をそれぞれ有するクローンphG2―9―a、phG2―9―b及びphG2―8―cを作った。J1+J2プライマー対は、配列番号:35の核酸配列を有するクローンphG2―10を作った。
【0033】
実施例2−全長クローン
次いで、ヒトGlyT―2cDNAを用いて、全長ヒトGlyT―2コーディング配列を作り、それをpcDNA3ベクター(Invitrogen)の中へクローン化した。このクローンは、配列番号:20の核酸配列を取り込み、pHGT2―aと表示された。354bpのHindIII―NarI断片を、クローンphG2―3から予めHindIIIとNarIで消化されたクローンphG2―1へ挿入することによって、cDNAの5’末端を作った。HindIII―HincII断片をphG2―2から、HincII―XbaI断片をクローンphG2―7から、予めHindIII及びXbaIで消化されたpcDNA3ベクターへ挿入することによって、cDNAの3’末端を作った。最後に、5’末端クローンからのHindIII―NruI断片及び3’末端クローンからのNruI―XbaI断片を、HindIII及びXbaIで消化されたpcDNA3ベクター(Invitrogen)の中へクローン化した。このようにして得られたpHGT2―a発現クローンは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下で、1から2397までのヒトGlyT―2の配列を含んでいる。この発現クローンにおいては、nts1−173がクローンphG2―3から誘導され、nts174−823がクローンphG2―1から誘導され、nts824−1599がクローンphG2―2から誘導され、nts1600−2397がクローンphG2―7から誘導された(図2参照)。
【0034】
実施例3A−第二の全長クローン
配列番号:18の核酸配列を含む発現クローンは、NT304をGからAへ変え、NT371をTからCへ変え、NT836をAからTへ変え、NT1116をGからAへ変え、NT1831をGからAへ変え、NT2382をTからCへ変え、NT2388をAからGへ変え、NT2391をTからCへ変え、NT2394をAからGへ変える特定部位の突然変異誘発により、配列番号:20を含む発現クローンから作られる。突然変異誘発は、Ausubel 等、分子生物学における現代のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、pp. 8.1.1-8.1.6., John Wiley and Sons, New York (1995) により記載されているオリゴヌクレオチド指向方法論(oligonucleotide-directed methodology)によって行われる。
実施例3B−第三の全長クローン
ヒトGlyT―2cDNAを用いて、他の全長ヒトGlyT―2コーディング配列を作り、それをpcDNA3ベクター(Invitrogen)の中へクローン化した。pHGT2―bで表されるクローンが、配列番号:28の核酸配列を取り込み、配列番号:27をコードした。まず、phG2―3a(配列番号:1)からの254bpのHindIII―NarI断片を、予め、HindIII―NarIで消化したクローンphG2―2(配列番号:7)へ挿入して、中間体1を作った。中間体1からの1.6kbのHindIII―HincII断片及びクローンphG2―7bからの800bpのHincII―XbaI断片を、HindIII―XbaIで消化しておいたpcDNA内に結合して、中間体2を作った。
中間体2からのNdeI―MscI断片(1kb)及びBsmI―NdeI断片(6.9kb、pcDNA3含有)を、phG2―1(配列番号:5)からの434bpのMscI―BsmI断片に結合して、中間体3を作った。中間体3からの3.8kbのBssHII断片をクローンpHGT2―a(実施例2参照)の4.0kpのBssHII断片に結合して、pHGT2―bを作った。pHGT2―bにおいては、nts1−173がクローンphG2―3a(配列番号:1)から誘導され、nts174−523及び962−1599がクローンphG2―2(配列番号:7)から誘導され、nts524−961がクローンphG2―1(配列番号:5)から誘導され、nts1600−2397がクローンphG2―7b(配列番号:16)から誘導された。
【0035】
実施例4−GlyT―2発現
実施例2及び3Bのクローンを、実施例5に述べる方法を用いて、QT―6細胞(アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)、受付番号ATCC CRL―1708から)内にトランスフェクトした。実施例6に述べるグリシン輸送体測定法を用いて、グリシン輸送活性が、トランスフェクションによりこの細胞へ与えられたことを確認した。
【0036】
実施例5−トランスフェクション
この実施例は、QT―6細胞を成長及びトランスフェクトさせる方法並びに材料を述べるものであり、その細胞は、ウズラ由来の鳥線維芽細胞である。pHGT2―aによるトランスフェクションを、GlyT―1ベクターによるトランスフェクションと同様にして行った。なお、この後者のトランスフェクションは、別の時点で行った。
QT―6細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(受付番号ATCC CRL―1708)から入手した。QT―6を成長させるための完全QT―6培地は、培地199(Sigma Chemical Company, St. Louis, MO、以下、“Sigma”という)であり、10%リン酸トリプトース(tryptose phosphate)、5%ウシ胎児血清(Sigma)、1%ペニシリン―ストレプトマイシン(Sigma)及び1%無菌ジメチルスルホキシド(DMSO;Sigma)を含有している。QT―6細胞を成長又はトランスフェクトさせるのに必要な他の溶液としては、次のものが挙げられる。
DNA/DEAE混合物:TBS450μl、DEAEデキストラン(Sigma)450μl、DNA(4μg)のTE溶液100μl、ここで、DNAは、適当な発現ベクター中に、DNAをコードするGlyT―1a、GlyT―1b、GlyT―1c又はGlyT―2を含んでいた。使用されるDNAは、次に定義される通りである。
PBS:標準リン酸緩衝食塩水、pH7.4、1mMCaCl2及び1mMMgCl2含有、0.2μmフィルターで滅菌。
TBS:溶液B1ml、溶液A10ml;蒸留水で100mlとする;濾過滅菌して4℃で保存。
TE:0.01Mのトリス、0.001MのEDTA、pH8.0。
DEAEデキストラン:Sigma、#C―9885。DEAEデキストランの1%(1mg/ml)TBS溶液からなる原液を調製した。この原液を濾過滅菌して、1mlずつ凍結した。
クロロキン:Sigma、#C―6628。100mMクロロキン水溶液からなる原液を調製した。この原液を濾過滅菌して、0.5mlずつ凍結して保存した。
溶液A(10×)
NaCl 8.00g
KCl 0.38g
Na2HPO4 0.20g
トリス塩基 3.00g
この溶液をHClでpH7.5に調整し、蒸留水で100.0mlとし、濾過滅菌して、室温で保存した。
溶液B(100×)
CaCl2―2H2O 1.5g
MgCl2―6H2O 1.0g
この溶液を蒸留水で100mlとして、濾過滅菌した;次いで、この溶液を室温で保存した。
HBSS:150mMNaCl、20mMHEPES、1mMCaCl2、10mMグルコース、5mMKCl、1mMMgCl2―H2O;NaOHでpH7.4に調整。
使用した成長及び継代(passaging)方法は、次の通りであった。細胞は、225mlのフラスコ内で成長させた。継代については、細胞を温HBSSで2度洗浄した(各洗浄5mlずつ)。2mlの0.05%トリプシン/EDTA溶液を加え、培養液をかき混ぜ、次いで、トリプシン/EDTA溶液を速やかに吸引した。次いで、培養液を約2分間(細胞が持ち上がる(lift offする)まで)インキュベートし、その後、10mlのQT―6培地を加え、フラスコをかき混ぜ、その底をこつこつ叩くことにより、細胞を更に取り外した。その細胞を取り除き、15mlの三角チューブに移し、1000×gで10分間遠心分離して、10mlのQT―6培地に再懸濁させた。計数のためにサンプルを取り除き、次いで、QT―6培地を用いて、細胞を更に1×105個/mlの濃度に希釈し、継代細胞(passaged cells)の225mlフラスコ当たり65mlの培養液を加えた。
次のようにして調製したcDNAを用いて、トランスフェクションを行った。
ヒトGlyT―2発現に関しては、上に述べたpHGT2―aクローンを用いた。
ヒトGlyT―1a(hGlyT―1a)クローンは、Kim 等、Mol. Pharmacol., 45, 608-617 (1994) に記載されたようなHindIII―XbaI断片として、pRc/CMVベクター(Invitrogen, San Diego, CA)中にクローン化されたヌクレオチド位置183〜2108のhGlyT―1aの配列を含んでいた。この Kim 等の論文に報告されているGlyT―1a配列の最初の17個のヌクレオチド(最初の6個のアミノ酸に対応する)は、実際には、ラット配列に基づくものである。ヒトGlyT―1aの配列がこの領域で異なっているかどうかを求めるために、ヌクレオチド1から212までのhGlyT―1aの5’領域を、Gibco BRL (Gaithersburg, MD) により供給されている5’RACE方法を用いて、cDNA末端の迅速増幅(rapid amplification)により得た。GlyT―1aのこの5’領域の配列決定から、コーディング配列の最初の17個のヌクレオチドが、ヒト及びラットGlyT―1aにおいて同一であることが確認された。
ヒトGlyT―1b(hGlyT―1b)クローンは、Kim 等、上記に記載されたようなHindIII―XbaI断片として、pRc/CMVベクター中にクローン化されたヌクレオチド位置213〜2274のhGlyT―1bの配列を含んでいた。
ヒトGlyT―1c(hGlyT―1c)クローンは、Kim 等、上記に記載されたようなHindIII―XbaI断片として、pRc/CMVベクター(Invitrogen)中にクローン化されたヌクレオチド位置213〜2336のhGlyT―1cの配列を含んでいた。このクローンからのhGlyT―1cのHindIII―Xba断片が、pRc/RSVベクター中に更にクローン化された。pRc/RSV及びpRc/CMV発現ベクターの両者中で、GlyT―1cによりトランスフェクション実験をおこなった。
トランスフェクションには、下記の4日法を用いた。
1日目は、100mmの皿の中に、完全QT―6培地10ml当たり1×106個の細胞密度で、QT―6細胞をプレートした。
2日目は、培地を吸引し、10mlのPBSで洗浄し、次いで10mlのTBSで洗浄した。TBSを吸引し、次いで、1mlのDEAE/DNA混合物をプレートへ添加した。このプレートをフード内で5分毎にかき混ぜた。30分後、80μMクロロキンのQT―6培地液8mlを加え、培養液を37℃、5%CO2で2.5時間インキュベートした。次いで、培地を吸引し、細胞を完全QT―6培地で2回洗浄し、その後、100mlの完全QT―6培地を加えて、細胞をインキュベーターへ戻した。
3日目は、上述のように、トリプシン/EDTAで細胞を除去し、96ウエルの測定プレートのウエル内に、約2×105細胞/ウエルでプレートした。
4日目に、実施例6で述べるようにしてグリシン輸送体を測定した。
【0037】
実施例6−グリシン取り込み
この実施例は、トランスフェクトされた培養細胞によるグリシン取り込みを測定する方法を説明するものである。
実施例5に従って成長させた一過性のGlyTでトランスフェクトされた細胞又は対照細胞を、HEPES緩衝食塩水(HBS)で3回洗浄した。トランスフェクション操作で、cDNAを省略したこと以外は、GlyTでトランスフェクトされた細胞と厳密に同様にして、対照細胞を処理した。この細胞を、37℃で10分間インキュベートし、その後、50nM[3H]グリシン(17.5Ci/mmol)及び(a)非潜在的拮抗剤(no potential competitor)、(b)10mM非放射性グリシン又は(c)ある濃度の予期される剤(prospective agent)を含む溶液を添加した。予期される剤(prospective agent)の濃度範囲は、50%の効果(例えば、グリシン取り込みを50%だけ抑制する剤の濃度であるIC50)となる濃度を計算するためのデータを作るのに用いられる。次いで、細胞を37℃で更に20分間インキュベートし、その後、細胞を氷冷HBSで3回洗浄した。この細胞に閃光体(scintillant)を加え、この細胞を30分間振とうし、シンチレーヨンカウンターをもちいて、細胞中の放射能を計数した。予期される剤(prospective agent)と接触した細胞と接触しなかった細胞との間でデータを比較し、用いられる測定法に応じて、適切なところで、GlyT―1活性を有する細胞をGlyT―2活性を有する細胞と対比して、データを比較した。
ヒトGlyT―2クローン、pHGT2―a、でトランスフェクトされたQT―6細胞におけるグリシン輸送体活性の発現を図5に示し、ここでは、[3H]グリシン取り込みを、模擬(mock)とpHGT2―aでトランスフェクトされた細胞とについて示す。pHGT2―aでトランスフェクトされたQT―6細胞は、模擬トランスフェクトされた対照細胞に比較して、グリシン輸送に顕著な増加を示す。結果は、3回行われた代表的な実験の平均値±SEMとして示されている。pHGT2―bと実質的に同様な結果が得られた。
pHGT2―aでトランスフェクトされた細胞におけるグリシン輸送の濃度依存性を、図6に示す。pHGT2―bと実質的に同様な結果が得られた。ヒトGlyT―2でトランスフェクトされたQT―6細胞を、50nM[3H]グリシン及び表示濃度の非標識グリシンで20分間インキュベートし、細胞に取り込まれた放射能をシンチレーション計数によって求めた。データポイントは、4回行われた実験からの平均値±SEMを示すものである。結果は、40μMのIC50を示した。
【0038】
実施例7−カルシウムフラックス
この実施例は、細胞内でのカルシウムフラックスを測定するプロトコルを説明するものである。
カルシウムフラックス測定は、無菌解離器具(dissecting equipment)、顕微鏡及び特定の培地を必要とする操作及び技術を用いて調製した一次細胞培養液において、一般に行った。用いたプロトコルは、わずかな変更はあるが、Lu 等、Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA, 88, 6289-6292 (1991) によって記載されたものと実質的に同じであった。
実施例8−ストリキニン感受性受容体への結合
ストリキニン感受性受容体へのストリキニンの結合は、White 等、J. Neurochem, 35, 503-512 (1989) 及び Becker 等、J. Neurosci., 6, 1358-1364 に記載されているようにして、これにわずかな変更を加えて測定した。
配列番号によってここに表される核酸(N.A.)又はアミノ酸配列は、以下に示す通りである。
要約すると、配列リスチング(Sequence Listing)の配列は、次の通りである。
【0039】
【表4A】
【表4B】
【0040】
** 配列番号:28は、若干のコドン使用の違いはあるが、配列番号:26と同じ蛋白質をコードする。
ここに述べた核酸配列、及びその結果、それらから誘導された蛋白質配列を注意深く配列決定した。しかし、核酸配列決定技術が多少の誤差を受けやすいことは、当業者の認めるところであろう。当業者は、当の核酸配列を単離する方法のここでの十分な記載に基づいて、これらの配列を確認し、補正することができ、本開示によって容易に利用できるような変更は、本発明に含まれるものである。更に、後からの明確化研究によって配列決定の誤りが確認されようがされまいが、ここに報告されたこれらの配列は、本発明内のものである。
本発明は、好ましい実施態様を強調して説明しているが、好ましい装置及び方法を変更したものを用いてもよいこと、及びここで特定的に記載されているのとは別のようにして本発明を実施しようとすることは、当業者にとって自明であろう。従って、本発明は、次の実施態様によって限定されている本発明の精神及び範囲内に包含される全ての変更を含むものである。
【0041】
本発明の実施態様として次のものが挙げられる。
1.配列番号:27の蛋白質配列である基準配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列と、少なくとも約96%の配列同一性を有するグリシン輸送体をコードする組み換え核酸。
2.基準配列が、配列番号:27の蛋白質配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、若しくは(10)Ile735をValへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列である上記1の核酸。
3.該配列同一性が、少なくとも約97%である上記1の核酸。
4.該配列同一性が、少なくとも約98%である上記1の核酸。
5.核酸が、基準配列を有するグリシン輸送体をコードする上記1の核酸。
6.配列番号:26の核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、(n)A2203をGへ、(o)C342をGへ、(p)C352をTへ、(q)T733をCへ、(r)A777をGへ、(s)G913をCへ、(t)G951をAへ、(u)C1097をTへ、若しくは(v)T1199をCへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている配列を含む上記1の核酸。
7.配列番号:26の核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、若しくは(n)A2203をGへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている配列を含む上記1の核酸。
8.上記1の核酸及び機能的にこれと関連する外因性プロモーターを含むベクター。
9.基準アミノ酸配列の全て若しくは1〜2の近接部分と、少なくとも約99.5%の配列同一性を有するグリシン輸送体蛋白質をコードする核酸において、その基準配列が、配列番号:27のアミノ酸配列、又は次のアミノ酸置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列である核酸。
10.1〜2の近接配列部分が、少なくとも約600のアミノ酸からなる上記9の核酸。
11.下記の細胞:
(a)上記8による第一のベクターで形質転換され、該核酸を含むか、又は
(b)第二のベクターで形質転換され、配列番号:27である基準蛋白質配列、若しくは次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列に相当する配列の1〜2の近接部分と、少なくとも約99.5%の配列同一性を有する輸送体蛋白質をコードする第二の核酸を含み、ここで、コードされた蛋白質は、グリシン輸送体活性を有している。
12.上記11の細胞を成長させることからなるグリシン輸送体の製造方法。
13.(a)グリシン輸送体を含む膜を該細胞から単離すること、又は(b)グリシン輸送体を含む蛋白質画分を該細胞から抽出することの少なくとも1つを更に含む上記12の方法。
14.上記11による細胞から単離され、第一又は第二の外因的に誘導された核酸により発現されたグリシン輸送体。
15.神経系障害若しくは状態の治療用生理活性剤を確認又は同定する方法において、(a)(i)上記10による細胞、又は(ii)該第一又は第二の外因的に誘導された核酸によりコードされたアミノ酸配列からなる単離グリシン輸送体蛋白質を含む第一の測定組成物を与え、(b)その第一の測定組成物を生理活性剤又は予期される(prospective)生理活性剤と接触させ、その測定組成物によって示されたグリシン輸送の量を測定することからなる方法。
16.第一の測定組成物によって示されたグリシン輸送の量を、生理活性剤又は期待される生理活性剤と接触させないこと以外は、第一の測定組成物と同じに処理された第二の測定組成物によって示されたグリシン輸送の量と比較することを更に含む上記15の方法。
17.は、神経系障害又は状態が、(a)痛み、(b)痙性、(c)ミオクロヌス、(d)筋痙攣、(e)筋機能亢進又は(f)てんかんからなる群の1つである上記15の方法。
18.痙性が、発作、頭部外傷、神経細胞死、多発性硬化症、脊髄損傷、失調症、ハンチントン病又は筋萎縮性側索硬化症である上記17の方法。
19.(a)ラット若しくはマウスGlyT―2輸送体のための配列又は(b)哺乳類GlyT―1輸送体のための配列とのハイブリダイゼーションを排除するのに十分なストリンジェンシー(stringency)の条件下で、配列番号:26である基準核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、(n)A2203をGへ、(o)C342をGへ、(p)C352をTへ、(q)T733をCへ、(r)A777をGへ、(s)G913をCへ、(t)G951をAへ、(u)C1097をTへ、若しくは(v)T1199をCへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている配列と交雑する核酸。
20.この核酸は、PCRプライマーであり、ストリンジェント(stringent)条件は、ヒトGlyT―2配列を増幅するのには有効であるが、(a)ラット若しくはマウスGlyT―2輸送体のための配列又は(b)哺乳類GlyT―1輸送体のための配列を増幅するには有効でないPCR条件である上記19の核酸配列。
21.ヒトGlyT―2遺伝子又はcDNAのコーディング又は非コーディングストランドからの近接配列を含む、長さが少なくとも約18個のヌクレオチドの核酸であり、ここで、この近接配列は、この近接配列と並べたラットGlyT―2遺伝子配列と比較した場合、少なくとも1つの配列相違を有しているものである核酸。
22.細胞、組織、器官又は動物に投与した場合、その細胞又はその組織、器官若しくは動物の細胞内でのGlyT―2の発現を低下させるのに有効なGlyT―2のためのヒト遺伝子又はcDNAのコーディング又は非コーディングストランドからの近接配列を含むアンチセンス分子であり、ここで、この近接配列は、該近接配列と並べたラットGlyT―2遺伝子配列と比較した場合、少なくとも1つの配列相違を有しているアンチセンス分子。
23.配列番号:26の核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、(n)A2203をGへ、(o)C342をGへ、(p)C352をTへ、(q)T733をCへ、(r)A777をGへ、(s)G913をCへ、(t)G951をAへ、(u)C1097をTへ、若しくは(v)T1199をCへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている配列のコーディング又は非コーディングストランド内に、近接伸長(contiguous stretch)が含まれている上記22のアンチセンス分子。
24.上記22の核酸を含む発現ベクター。
25.(a)GlyT―2発現低減有効量の上記22の核酸、又は(b)GlyT―2発現低減有効量の、該組織又は細胞内で該核酸を発現させる発現ベクターを、組織又は細胞に適用することからなる、組織又は細胞内でのGlyT―2発現を低減させる方法。
26.ヒトの患者の組織又は細胞に、神経系障害若しくは状態治療有効量の上記22の核酸、又は神経系障害若しくは状態治療有効量の、該組織又は細胞内で該核酸を発現させる発現ベクターを適用することからなる、神経系障害又は状態を治療する方法。
27.動物がグリシン輸送体に対する自己免疫抗体を持っているかどうかを検出する方法であり、動物からの抗体試料又は動物からの体液を、グリシン輸送体を含むかあるいはグリシン輸送体から誘導されるポリペプチド抗原と接触させることからなる方法。
【0042】
本発明の更なる実施態様として次のものが挙げられる。
1.配列番号:27の蛋白質配列である基準配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列と同一の配列と、少なくとも96%の配列同一性を有するグリシン輸送体をコードする組み換え核酸。
2.配列番号:27の蛋白質配列である基準配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、若しくは(10)Ile735をValへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列と同一の配列である上記1の核酸。
3.該配列同一性が、少なくとも97%である上記1の核酸。
4.該配列同一性が、少なくとも98%である上記1の核酸。
5.核酸が、配列番号:27の蛋白質配列である基準配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列と同一の配列を有するグリシン輸送体をコードする上記1、2、3または4の核酸。
6.配列番号:26の核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、(n)A2203をGへ、(o)C342をGへ、(p)C352をTへ、(q)T733をCへ、(r)A777をGへ、(s)G913をCへ、(t)G951をAへ、(u)C1097をTへ、若しくは(v)T1199をCへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている配列を含む上記1、2、3、4または5の核酸。
7.配列番号:26の核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、若しくは(n)A2203をGへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている配列を含む上記1、2、3、4または5の核酸。
8.上記1、2、3、4、5、6または7の核酸及び機能的にこれと関連する外因性プロモーターを含むベクター。
9.基準アミノ酸配列の全て若しくは基準アミノ酸配列中の連続した少なくとも600のアミノ酸からなる配列部分と、少なくとも99.5%の配列同一性を有するグリシン輸送体蛋白質をコードする核酸において、その基準配列が、配列番号:27のアミノ酸配列、又は次のアミノ酸置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列である核酸。
10.下記の細胞:
(a)上記8による第一のベクターで形質転換され、該核酸を含むか、又は
(b)第二のベクターで形質転換され、配列番号:27である基準蛋白質配列、若しくは次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列と同一の配列のアミノ酸配列中の連続した少なくとも600のアミノ酸からなる配列部分と、少なくとも99.5%の配列同一性を有する輸送体蛋白質をコードする第二の核酸を含み、ここで、コードされた蛋白質は、グリシン輸送体活性を有している。
11.上記10の細胞を成長させることからなるグリシン輸送体の製造方法。
12.(a)グリシン輸送体を含む膜を該細胞から単離すること、又は(b)グリシン輸送体を含む蛋白質画分を該細胞から抽出することの少なくとも1つを更に含む上記11の方法。
13.上記10による細胞から単離され、第一又は第二のベクターにより発現されたグリシン輸送体。
14.神経系障害若しくは状態の治療用生理活性剤を確認又は同定する方法において、(a)(i)上記10による細胞、又は(ii)該第一又は第二の外因的に誘導された核酸によりコードされたアミノ酸配列からなる単離グリシン輸送体蛋白質を含む第一の測定組成物を提供し、(b)その第一の測定組成物を生理活性剤又は予期される(prospective)生理活性剤と接触させ、(c)その測定組成物によって示されたグリシン輸送の量を測定することからなる方法。
15.第一の測定組成物によって示されたグリシン輸送の量を、生理活性剤又は期待される生理活性剤と接触させないこと以外は、第一の測定組成物と同じに処理された第二の測定組成物によって示されたグリシン輸送の量と比較することを更に含む上記14の方法。
16.神経系障害又は状態が、(a)痛み、(b)痙性、(c)ミオクロヌス、(d)筋痙攣、(e)筋機能亢進又は(f)てんかんからなる群の1つである上記14または15の方法。
17.痙性が、発作、頭部外傷、神経細胞死、多発性硬化症、脊髄損傷、失調症、ハンチントン病又は筋萎縮性側索硬化症である上記16の方法。
18.配列番号:26である基準核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、(n)A2203をGへ、(o)C342をGへ、(p)C352をTへ、(q)T733をCへ、(r)A777をGへ、(s)G913をCへ、(t)G951をAへ、(u)C1097をTへ、若しくは(v)T1199をCへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている配列とハイブリダイズする、配列番号:42,43,46,48,49,51〜53のいずれか1つのPCRプライマーである核酸。
19.動物がヒトグリシンT−2輸送体に対する自己免疫抗体を持っているかどうかを検出する方法であり、動物からの抗体試料又は動物からの体液を、ヒトグリシンT−2輸送体を含むかあるいは該グリシン輸送体から誘導されるポリペプチド抗原と接触させることからなる方法。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ヒトGlyT―2遺伝子のいくつかの遺伝子断片の配列を示す。
【図2】配列番号:20の核酸配列を取り込むクローン、ヒトGlyT―2遺伝子の全長クローン、を作るのにどの断片クローンを用いたかを説明するものである。
【図3A】配列番号:18の核酸配列とラットGlyT―2配列との比較を示す。
【図3B】配列番号:18の核酸配列とラットGlyT―2配列との比較を示す。
【図3C】配列番号:18の核酸配列とラットGlyT―2配列との比較を示す。
【図3D】配列番号:18の核酸配列とラットGlyT―2配列との比較を示す。
【図3E】配列番号:18の核酸配列とラットGlyT―2配列との比較を示す。
【図4A】配列番号:19のアミノ酸配列とラットGlyT―2配列との比較を示す。
【図4B】配列番号:19のアミノ酸配列とラットGlyT―2配列との比較を示す。
【図5】ヒトGlyT―2発現ベクターでトランスフェクトされるか、あるいは模擬トランスフェクトされたQT―6細胞内でのグリシン輸送体の測定を示す。
【図6】ヒトGlyT―2でトランスフェクトされたQT―6細胞内でのグリシン輸送体の濃度依存性を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物がヒトグリシンT−2輸送体に対する自己免疫抗体を持っているかどうかを検出する方法であり、動物からの抗体試料又は動物からの体液を、ヒトグリシンT−2輸送体を含むかあるいは該グリシン輸送体から誘導されるポリペプチド抗原と接触させることからなる方法。
【請求項2】
ヒトグリシンT−2輸送体が、配列番号:27の蛋白質配列である基準配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列と同一の配列と、少なくとも96%の配列同一性を有するものである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ヒトグリシンT−2輸送体が、配列番号:26の核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、(n)A2203をGへ、(o)C342をGへ、(p)C352をTへ、(q)T733をCへ、(r)A777をGへ、(s)G913をCへ、(t)G951をAへ、(u)C1097をTへ、若しくは(v)T1199をCへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている配列でコードされるものである、請求項1記載の方法。
【請求項1】
動物がヒトグリシンT−2輸送体に対する自己免疫抗体を持っているかどうかを検出する方法であり、動物からの抗体試料又は動物からの体液を、ヒトグリシンT−2輸送体を含むかあるいは該グリシン輸送体から誘導されるポリペプチド抗原と接触させることからなる方法。
【請求項2】
ヒトグリシンT−2輸送体が、配列番号:27の蛋白質配列である基準配列、又は次の置換、即ち(1)Gly102をSerへ、(2)Ser124をPheへ、(3)Ile279をAsnへ、(4)Arg393をGlyへ、(5)Lys457をAsnへ、(6)Asp463をAsnへ、(7)Cys610をTyrへ、(8)Ile611をValへ、(9)Phe733をSerへ、(10)Ile735をValへ、(11)Phe245をLeuへ、(12)Val305をLeuへ、(13)Thr366をIleへ、若しくは(14)Leu400をProへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることを除いて、配列番号:27の蛋白質配列と同一の配列と、少なくとも96%の配列同一性を有するものである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ヒトグリシンT−2輸送体が、配列番号:26の核酸配列、又は次の置換、即ち(a)T6をCへ、(b)G304をAへ、(c)C371をTへ、(d)C571をTへ、(e)T836をAへ、(f)A1116をGへ、(g)A1117をGへ、(h)G1371をCへ、(i)G1387をAへ、(j)G1829をAへ、(k)A1831をGへ、(l)G2103をAへ、(m)T2198をCへ、(n)A2203をGへ、(o)C342をGへ、(p)C352をTへ、(q)T733をCへ、(r)A777をGへ、(s)G913をCへ、(t)G951をAへ、(u)C1097をTへ、若しくは(v)T1199をCへ置換することの1つ若しくはそれ以上が行われていることで、配列番号:26の核酸配列と異なっている配列でコードされるものである、請求項1記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2008−281545(P2008−281545A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327145(P2007−327145)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【分割の表示】特願平10−510920の分割
【原出願日】平成9年8月20日(1997.8.20)
【出願人】(507373379)エヌピーエス アレリックス コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【分割の表示】特願平10−510920の分割
【原出願日】平成9年8月20日(1997.8.20)
【出願人】(507373379)エヌピーエス アレリックス コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】
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