説明

ヒドロキシアパタイト(hydropatite)上の多孔性生体材料

本発明は、表面自由エネルギーが19mJ/m以上である、23容量%以上の微小気孔率を有する合成非吸収性ケイ素含有リン酸カルシウム生体材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨誘導生体材料に関する。詳細には、本発明は、画定された細孔構造を有するケイ素含有リン酸カルシウム材料に関する。
【背景技術】
【0002】
骨置換材料が患者に植え込まれると、生きている骨の形成が、骨の表面で誘導されることがある。これは、骨伝導と呼ばれている。加えて、生きている骨は、特定の状況では、材料自体の内部で形成され、骨置換材料の構造に浸透することがある。これは、骨誘導と呼ばれる。
【0003】
骨誘導が起こると、骨は、非骨(すなわち、異所)部位に形成される。骨誘導は、時間が経つと、材料に浸透する骨の成長により、例えば、骨異常部位における既存の骨に骨置換材料のより弾性的な一体化が起こりうるため、有益であると考えられている。しかし、多くの骨伝導生体材料は、骨誘導性を有しない。
【0004】
骨誘導は、骨誘導材料によって促進及び/又は加速される。言い換えれば、骨誘導材料は、非骨組織中での骨成長及び骨形成を誘導することができる。患者に植え込まれると、骨誘導材料は、骨成長を促進及び加速するため、相当な治療価値がある。例えば、骨生物学的に障害がある患者では、骨修復の促進及び加速により、骨折修復時間の短縮及び偽関節又は偽関節症の発症率の低下がもたらされうる。
【0005】
これまで、生体材料中で骨誘導を達成する最も評判のよい方法は、治療形態の中に強力なサイトカインタンパク質を含めることであった。これらのタンパク質のうちで最もよく知られ最も広く使用されているものは、骨形成タンパク質(BMP)、特に、BMP−2及びBMP−7である。これらは、組換えヒトタンパク質(例えば、現在市販されている「インヒューズ(InFuse)」(登録商標)及び「OP−1」骨置換材料中に存在する)として、又は脱塩骨基質(DBM)と一般に呼ばれる高度に処理されたヒト死体の骨に由来するゲル、粉末、若しくは繊維として提供されてきた。
【0006】
これらのタンパク質を使用する不都合は周知である。骨形成タンパク質製品は、臨床前研究において急速な骨成長を促進する能力の点で確かに有効であるが、組換えヒト骨形成タンパク質製品の使用は、制御不能な骨吸収、制御がきかない骨形成、及び金銭的な面から見て極めて高い治療単位当たりのコストなどの重大なマイナスの副作用も起こりうる。多数の臨床有害事象が、これらの効力の高い療法を用いて記録されており、一部のケースでは、患者が大きな傷害を受けている。これらの有害事象の発生の背後にある機序は、現在は、十分には理解されていない。
【0007】
加えて、脱塩骨基質に由来する製品の性能は、非常にばらつきがあり、供与者に大きく依存することが知られている。これに対する1つの解決策は、様々な供与者からの製品をバッチ混合することである。しかし、すべての脱塩骨基質製品は、ロットトレーサビリティーを維持しなければならないため、バッチ混合は不可能である。加えて、骨形成タンパク質(これにより脱塩骨基質の骨誘導特性を引き出されると考えられる)のレベルが非常に低く、予測可能で再現可能な性能に対して確立された治療閾値よりも低い。これらの欠点の結果として、脱塩骨基質製品は、他の同等の整形外科及び神経外科分野で現在一般的に使用されている療法に対して同等の性能を実証していない。
【0008】
従来の骨形成タンパク質製品の別の不都合は、骨成長を支援する永続的な足場に局在しないことである。具体的には、骨形成タンパク質製品は、典型的には、準最適足場に吸着されなければならない液体として用意される。吸収プロセスの予測が不可能であることから、タンパク質の吸着が不十分となり、次いでインプラントの圧迫及び活性物質の神経空間内への押出しが起こり、骨形成が最終的に誘導されると重度の傷害又は障害が起こりうる。
【0009】
意図的に誘導された骨形成タンパク質に依存して骨誘導活性をもたらす代替のアプローチでは、固有の骨誘導性を有する材料を用意する。この材料は、典型的には、患者に植え込む前に骨形成タンパク質で処理しなくてもよい、それ自体が骨成長を促進及び加速する足場材料である。
【0010】
骨誘導材料を用意する1つのアプローチでは、吸収性である材料を選択する。例えば、リン酸カルシウム材料からのカルシウム及びリン酸の溶解は、一部の人々には、骨誘導材料を提供するための鍵であると考えられている。この方法は、例えば、リン酸カルシウム材料からの特定の微量元素の溶解が骨誘導をさらに促進することを提唱する国際出願PCT/NL2006/000210で述べられている。
【0011】
固有の骨誘導性を有すると言われている材料の別の例が、米国特許第6302913号に記載されている。この材料は、「生体不活性」であるが、米国特許第6302913号によると、骨形成を誘導するために循環流体から吸収した骨形成タンパク質を濃縮すると言われている一連の凹面を備えた表面構造を有する。しかし、これらのタイプの材料もまた、強力なin vivoでの骨成長の促進をもたらさない。
【0012】
先行技術の少なくともいくつかの欠点の結果として、本発明の発明者らは、固有の骨誘導性を有するが、骨誘導をもたらす、時に予測不可能な微量元素の溶解又は表面構造の操作に依存しない材料を提供することに着手した。
【0013】
欧州特許第0951441号に、高密度ケイ素置換ヒドロキシアパタイト材料の合成が記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、表面自由エネルギーが19mJ/m以上である、23容量%以上の微小気孔率(microporosity)を有する合成非吸収性ケイ素含有リン酸カルシウム生体材料を提供する。
【0015】
本発明は、23容量%以上の微小気孔率を有する合成非吸収性ケイ素含有リン酸カルシウム生体材料をさらに提供する。本発明は、23容量%以上の微小気孔率を有するケイ素含有焼結リン酸カルシウム生体材料をさらに提供する。本発明は、酸化カルシウム及び/又はリン酸三カルシウムの不純物相を実質的に含まない、23容量%以上の微小気孔率を有する合成ケイ素置換リン酸カルシウム生体材料をさらに提供する。
【0016】
本発明は、医学に使用するための、本明細書で定義する合成リン酸カルシウム生体材料をさらに提供する。本発明は、骨折を治療し、脊椎固定を達成し、骨腫瘍又は椎骨圧迫骨折を治療するための方法であって、本明細書で定義する生体材料を患者又は動物に植え込むステップを含む、方法をさらに提供する。
【0017】
本発明は、合成多孔性骨誘導生体材料を選択し、骨の骨誘導をもたらす方法であって、(a)17.5容量%以上に設定された微小気孔率及び19mJ/m以上に設定された表面自由エネルギーを有する骨誘導合成非吸収性ケイ素含有リン酸カルシウム生体材料を選択するステップと、(b)前記骨誘導生体材料を骨誘導のための置換骨材料として形成するステップとを含む、方法をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の例を示す図である。
【図2】本発明の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで、本発明をさらに説明する。以下の節では、本発明の様々な態様をより詳細に定義する。そのように定義する各態様は、反対のことが明確に記載されていない限り、1つ又は複数の任意の他の態様と組み合わせることができる。具体的には、好ましい又は有利であるとして示すいずれの特徴も、好ましい又は有利であるとして示す1つ又は複数の任意の他の特徴と組み合わせることができる。
【0020】
本発明者らは、純粋に骨伝導性の生体材料の上に骨誘導生体材料を設けることが患者にとって有利であることを認識している。
【0021】
一部の公知の足場材料は、足場の溶解に依存して骨誘導性を生じさせることから、骨誘導性を生じさせるためには生物学的条件下で溶解しなければならない。本発明者らは、有効な骨形成の前に、足場の体内への溶解が一部又は全体で起こりうることを認識している。さらに、本発明者らは、足場の溶解産物が、局所生化学環境が高濃度の外来イオン種で飽和されたとき、又は溶解中に生成される粒状破片が炎症反応を誘発したときに、骨形成速度を潜在的に妨げる又は低下させうることを見出した。
【0022】
本発明者らは、吸収性材料のこれらの欠点により、一貫性のない低レベルの骨形成が起こりうることを見出した。また、この一貫性のなさが、固有の骨誘導特性を有する材料のin vivoでの使用の原則の確認を困難にしている。
【0023】
また、本発明者らは、非吸収性部分及び吸収性部分の両方を含む部分的に吸収性の材料を提供する潜在的な不利点も認識している。例えば、米国特許出願公開第2007/0218098号に記載されているように、高溶解性材料に含められている低溶解性粒子が、食細胞によって運ばれて体のリンパ系に堆積されうる。
【0024】
次に、本発明者らは、驚くべきことに、骨誘導性であるが、骨誘導挙動がin vivoでその足場の吸収に依存しない生体材料を見出した。一方、本発明の骨誘導生体材料は、in vivoでのその吸収速度が低いため、少なくとも部分的に有効である。具体的には、本発明者らは、リン酸カルシウム材料の使用と、このリン酸カルシウム材料を少なくとも17.5容量%(より有利には、少なくとも23容量%)の微小気孔率を有する材料に加工することと、ケイ素を含めることによるリン酸カルシウムの表面エネルギーの変更との組合せにより、有利な骨誘導材料が得られることを見出した。
【0025】
したがって、本発明の生体材料は、骨誘導生体材料として記載することができる。
【0026】
リン酸カルシウム材料における多孔性とケイ素含有の組合せ効果を例として示す。具体的には、図1は、リン酸カルシウム材料中にケイ素を含めることによってリン酸カルシウム材料の表面エネルギーを変更して材料の骨誘導効果を高めることができることを示している。図1に示す2つの例の微小気孔率はほぼ同一であることに留意されたい。加えて、図2は、ケイ素含有リン酸カルシウム材料の微小気孔率の上昇の骨誘導効果を示している。
【0027】
生体材料は、in vivoでの使用に適した材料である。生体材料は、ISO 10993によると、生体材料が生物学的能を果たす、置換する、又は増強することを意味する生体適合性であると記載することができる。生体材料は、置換骨材料とすることができる。例えば、生体材料は、例えば、骨置換、インプラント、充填剤及びセメント、金属インプラントのコーティングに使用し、ヒドロキシアパタイト−ポリマー複合材料の生成に用いるための歯科材料を含む合成骨材料として用いることができる。
【0028】
生体材料の気孔率(特に、相互連結直径の範囲)は、水銀圧入ポロシメトリー(mercury intrusion porosimetry)によって測定する。具体的には、この測定では、典型的には、140度の前進接触角、0.480mJ/mの水銀に対する液体−蒸気界面自由エネルギー、及び13.5335g/mlの水銀密度の条件が用いられる。測定は、周囲温度及び圧力(20℃及び1気圧)で行われる。相互連結直径の範囲内の全孔容積は、水銀圧入ポロシメトリー孔体積率によって測定することができる。
【0029】
本明細書において、用語「微小気孔率」は、微小孔からもたらされる気孔率を指す。微小孔とは、水銀圧入ポロシメトリー分析による測定で、50nm〜10μmの相互連結直径を有する孔のことである。隣接間の相互連結のほんの一部だけが円形であってもよいが、用語「相互連結直径」は、水銀圧入ポロシメトリーによって測定される孔の同等の円の直径を指す。
【0030】
本発明の多孔性本体の微小気孔率は、少なくとも17.5容量%、より有利には、少なくとも23容量%である。本発明者らは、これらのレベルよりも微小気孔率が低いと、骨誘導の速度が低下することを見出した。微小気孔率は、19容量%以上、例えば、20容量%以上、例えば、24容量%以上など、例えば、25容量%以上、例えば、30容量%以上など、例えば、35容量%以上とすることができる。微小気孔率は、60容量%以下、例えば、55容量%以下又は50容量%以下、例えば、40容量%以下など、例えば、35容量%以下、例えば、30容量%以下などとすることができる。例示的な一例では、微小気孔率は、好ましくは23〜60容量%、例えば、23〜50容量%又は30〜50容量%、例えば、23〜40容量%など、例えば、25〜35容量%、例えば、約26容量%とすることができる。特に、本発明者らは、骨誘導が微小気孔率と共に増大することを見出した。しかし、本発明者らは、孔が合体しないで、これにより潜在的に生体材料の毛細管圧が低下するように、最大レベルの微小気孔率が好ましいことを見出した。
【0031】
生体材料が、後に論じるような微小孔以外の孔(例えば、マクロ孔)を含む場合、微小気孔率は、以下の関係を満たす。
【0032】
【数1】

【0033】
式中、Vは、生体材料の全容積であり、Vmは、微小孔の全容積であり、Vは、微小孔以外の孔の全容積である。微小孔以外の孔が存在しない場合は、V=0である。
【0034】
好ましくは、10μm未満の相互連結直径を有する孔の総数の少なくとも90%が、50nm〜10μmの相互連結直径を有し、より好ましくは、10μm未満の相互連結直径を有する孔の総数の少なくとも90%が、0.1〜8μmの相互連結直径を有し、さらに好ましくは、10μm未満の相互連結直径を有する孔の総数の少なくとも90%が、0.1〜5μmの相互連結直径を有する。これらの範囲内にすると、生体材料の骨誘導特性が増大すると考えられる。したがって、多孔性本体は、微小孔の相互連結直径よりも小さい相互連結直径を有するいくつかの孔を有してもよいが、これらの孔は、多孔性本体の骨誘導特性に寄与するとは考えられない。したがって、好ましくは、本体は、50nm未満の相互連結直径を有する相当数の孔を含まない(すなわち、実質的にこのような孔を含まない)。好ましくは、これらの特定の範囲の相互連結直径を有する孔のこれらの数は、総数の95%、より好ましくは総数の98%、さらに好ましくは総数の99%である。
【0035】
微小気孔率は、好ましくは、開いた孔のネットワークを含む。これは、高い浸透性及び吸引能力に有利に働くと考えられる。したがって、微小孔は、好ましくは、90%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは99%以上の相互連結レベルを有する。相互連結レベル(容量/容量%)は、ヘリウムパイコノメトリー(Helium Pyconometry)測定及び同じ材料の理論密度によって測定する。
【0036】
好ましくは、微小孔(すなわち、50nm〜10μmの平均相互連結直径を有する孔)の平均相互連結直径は、0.5μm以上である。平均相互連結直径は、水銀圧入ポロシメトリーを用いて孔サイズ分布のプロット(すなわち、孔サイズに対するこの孔サイズを有する孔の数)を得ることによって測定し、結果を合計した値をプロットの統合された領域で除すことによって結果の平均を計算する。例えば、平均相互連結直径は、0.7μm以上、例えば、0.8μm以上、0.813μm以上、0.9μm以上など、又は0.94μm以上、例えば、1.0μm以上など、例えば、1.1μm以上、又は1.25μm以上、例えば、1.3μm以上などにすることができる。好ましくは、平均相互連結直径は、2.0μm以下、例えば、1.8μm以下など、例えば、1.7μm以下、例えば、1.6μm以下など、例えば、1.5μm以下、例えば、1.4μm以下である。例示的な実施形態を例にとると、孔の平均相互連結直径は、0.75〜1.8μm、例えば、0.813〜1.7μm、例えば、1.0〜1.5μmなど、例えば、1.3〜1.4μm、例えば、約1.3μmなどにすることができる。本発明者らは、平均相互連結直径の上限により、生物学的流体の生体材料の通過を可能にする有利な浸透性がもたらされうるが、より大きな平均相互連結直径は、低い毛細管圧の一因となりうることを見出した。本発明者らはまた、平均相互連結直径の下限により、生物学的流体の生体材料内への取り込みの推進力を高める有利な毛細管圧力差がもたらされうるが、より小さな平均相互連結直径は、低い浸透性の一因となりうることを見出した。したがって、最小及び最大平均相互連結直径は、微小孔から得られる好適な浸透性及び本明細書に記載する水中での好適な毛細管圧力差、例えば、0.206m以上の浸透性及び3.7kPa以上の毛細管圧力差が得られるように選択することができる。
【0037】
本発明の生体材料は、化学的に安定である。本明細書において、用語「非吸収性」は、化学的に安定な生体材料を指すために用いられる。この用語は、非溶解性材料を指すために定義されている。具体的には、この材料は、水に浸漬されても大きな構造的溶解を示さない。吸収性は、気孔率に依存しうるため、異なる材料の吸収性を比較するためには、吸収性のレベルを、バルク材料について、同じ表面積を有する試料に対して測定する。
【0038】
したがって、他の者は、特定の微量元素を放出することによって骨成長を促進しようとしたが、本発明者らは、生体材料の吸収特性に依存して骨成長を促進する不都合を認識している。非吸収性材料を提供することにより、生体材料及び生体材料が植え込まれる局所環境の両方に依存する予測不能な影響が回避される。
【0039】
したがって、本発明は、臨床前モデルにおいて異所で試験したときに相当なレベルの骨形成を確実且つ再現可能に誘発する骨材料用の非吸収性足場を提供する。このような骨形成は、足場に供給される又は関連するサイトカイン若しくは溶解産物のいずれかに関連しているのではなく、足場自体に密接に関連している。これにより、加速された骨形成が、吸着されたサイトカイン又は溶解産物を循環流体が輸送する部位でランダムに起こるのではなく、足場が植え込まれた部位のみで起こる。
【0040】
非吸収性リン酸カルシウム材料は、当技術分野で周知である。リン酸カルシウムは、カルシウム(Ca2+)及びリン酸塩(PO3−)の両方を含有する。形式電荷がこれら2つの単位に付与されているが、これは単に例示目的であり、リン酸カルシウムの格子内で、各単位における形式電荷が異なりうる、又は、例えば、リン酸塩がプロトン化されうることを理解されたい。好ましくは、カルシウムのリンに対するモル比は、1:1.1〜1:2.0、例えば、1:1.5〜1:2.0、例えば、1:1.6〜1:1.7など、例えば、約1:1.67である。
【0041】
好ましい非吸収性リン酸カルシウム材料の例は、ヒドロキシアパタイト材料である。ヒドロキシアパタイト材料は、当技術分野で周知である。ヒドロキシアパタイト自体は、化学式Ca10(PO)(OH)、すなわち1.67のカルシウム/リンの比を有する。ヒドロキシアパタイト材料は、置換ヒドロキシアパタイトを含みうる。例えば、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、銅、バリウム、ストロンチウム、及び/又は炭酸塩は、ヒドロキシアパタイト内で置換されうる。非吸収性ヒドロキシアパタイト材料は、1つ又は複数のヒドロキシアパタイト相及び1つ又は複数の他の非吸収性材料も含みうる。
【0042】
本発明のケイ素含有リン酸カルシウム材料では、ケイ素は、リン酸カルシウムの結晶格子内に含まれている。したがって、ケイ素は、非吸収性リン酸カルシウム相中に含まれている。好適な実施形態では、ケイ素は、結晶格子内で実際に置換される。この置換は、ケイ素とリンの価数が異なることから、リンの位置で起こりうる。結晶格子内での実際のケイ素の置換の結果として、ケイ素は、結晶格子に単に付加された場合よりも容易に吸収されにくくなり、これにより、ケイ素は、格子内で置換されないままであると考えられる。ケイ素の結晶格子内での置換は、例えば、欧州特許第0951441号に記載されている技術によって側定することができる。例えば、リン酸カルシウム材料の格子内での実際のケイ素の置換は、X線回折によって測定される格子パラメータにおける増大によって観察することができる。
【0043】
好ましくは、本発明のリン酸カルシウム材料は、吸収性である不純物相を実質的に有しない。具体的には、本発明のリン酸カルシウム材料は、好ましくは、酸化カルシウム及び/又はリン酸三カルシウムの不純物相を実質的に有しない。本発明者らは、これら2つの不純物相が吸収性でありうることを認識していた(例えば、リン酸三カルシウムについては、J.Eur.Ceramic Society、23巻、1039〜1045頁、2003年を参照)。したがって、好ましくは、この材料は、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、例えば、99%以上など、例えば、約100%の1つ又は複数の非吸収性相(例えば、10%未満、例えば、5%未満など、例えば、2%未満、例えば、1%未満などのリン酸三カルシウム)を含む(X線回折によって測定)。言い換えれば、好ましくは、不可避の不純物を無視すれば、この材料のすべてが、非吸収性である。
【0044】
吸収性である実質的な不純物相が全く存在しないことを反映して、好ましくは、非吸収性リン酸カルシウム材料の相純度は、X線回折による測定で90%以上である。より好ましくは、リン酸カルシウム材料の相純度は、95%以上、さらに好ましくは、98%以上、例えば、99%以上など、例えば、約100%である。したがって、この材料は、好ましくは、本質的に単一相純材料と不可避の不純物である。
【0045】
本発明者らは、リン酸カルシウム材料の表面自由エネルギーが、リン酸カルシウム材料にケイ素を添加することによって変更できることを見出した。具体的には、本発明者らは、表面自由エネルギーが、リン酸カルシウム材料に添加されるケイ素の量とともに増大することを見出した。本発明者らは、骨誘導性が、本明細書に記載する他の因子と組み合わせたときの表面自由エネルギーとともに増大することをさらに見出した。
【0046】
したがって、好ましくは、ケイ素は、リン酸カルシウム材料が19mJ/m以上の表面自由エネルギーを有する量で、リン酸カルシウム結晶格子内に含められる。
【0047】
表面自由エネルギー、mJ/mは、同じ材料の化学的性質の完全に密な表面に対する公知の液体−蒸気界面自由エネルギーを用いて液体(例えば、水)接触角のクルス点滴分析(Kruss Drop Analysis)によって測定する。
【0048】
好ましくは、ケイ素は、表面自由エネルギーを、20mJ/m以上、例えば、30mJ/m以上、例えば、35mJ/m以上など、例えば、40mJ/m以上、例えば、50mJ/m以上などに変更する。好ましくは、最大自由エネルギーは、57mJ/m、例えば、50mJ/m、例えば、45mJ/mなどである。表面自由エネルギーの好ましい範囲の例示的な例は、30〜57mJ/m、例えば、40〜57mJ/mなど、より好ましくは、35〜50mJ/m、さらにより好ましくは、35〜45mJ/mである。本発明者らは、骨誘導挙動が表面自由エネルギーと共に増大することを見出したが、本発明者らは、生体材料の表面特性が、表面自由エネルギーが57mJ/mに近づくと変化しうることも見出した。
【0049】
特定の一例として、ケイ素置換ヒドロキシアパタイトでは、本発明者らは、この材料の表面自由エネルギーの変更において、ケイ素が特に万能であることを見出した。
【0050】
また、当技術分野で公知の他の技術を用いて、この材料の表面自由エネルギー及びケイ素置換もさらに変更することができる。例えば、基質の表面自由エネルギーは、化学組成、ナノスケール構造、ドーピング、置換、汚染の変更、又はこの材料に熱を加える若しくは化学処理を施すことによって制御することができる。
【0051】
好ましくは、ケイ素は、0.1〜5.0質量%の量で、リン酸カルシウム結晶格子内に含められる。より好ましくは、ケイ素は、0.5〜1.6質量%、例えば、0.5〜1.0質量%など、例えば、約0.8質量%の量、置換される。結晶格子内で置換される場合、ケイ素は、例えば、ケイ素イオン又はケイ酸イオンなどの形態で存在することができる。本発明者らは、微小気孔率とこれらの範囲のケイ素含有量の組合せが、骨誘導の促進をもたらしうることを見出した。
【0052】
ケイ素置換ヒドロキシアパタイト材料を形成するのに適した方法であって、ケイ素が結晶格子内で置換され、この材料が、酸化カルシウム及び/又はリン酸三カルシウムの不純物相を実質的に有しておらず、且つX線回折の測定で少なくとも98%の相純度を有する、方法が、参照によりその内容が本明細書に組み入れられる欧州特許第0951441号に記載されている。
【0053】
誤解を避けるために、本明細書で用いる用語「ケイ素置換」は、「ケイ酸置換」も包含する。同様に、本明細書で用いる用語「ケイ酸置換」は、「ケイ素置換」も包含する。
【0054】
好ましくは、本発明のリン酸カルシウム材料は、焼結材料である。この材料が、焼結されていないが、例えば、サンゴなどの供給源に由来する場合は、この材料は、吸収性でありうる(例えば、米国特許出願公開第2004/0078087号に記載されている)。焼結は、個々の粒子の合体をもたらす加熱処理として当技術分野で周知である。この粒子の合体は、得られる材料の非吸収性に寄与しうる。
【0055】
リン酸カルシウム材料の場合、焼結温度は、この材料自体に依存する。典型的には、焼結は、500〜1400℃の範囲のいずれの温度、例えば、900〜1250℃、例えば、約1200℃で行うことができる。焼結は、例えば、20分〜24時間、例えば、1〜12時間など、例えば、約4時間、行うことができる。焼結は、例えば、窒素下で行うことができる。
【0056】
本発明の生体材料は、マクロ孔を含んでもよい。本明細書で用いる用語「マクロ孔」は、10μmを超える平均相互連結直径を有する孔を指す。必ずしも必要ではないが、この大きい孔のネットワークは、生体材料内での循環及び生物学的流体の輸送を促進すると考えられる。これにより、生物学的流体及びタンパク質が小さい孔(微小孔)内に吸収され、生体材料の表面に吸着される速度を上昇させることができる。好ましくは、大きい孔(マクロ孔)の少なくとも90%(より好ましくは、95%、さらに好ましくは98%)は、50μm以上の相互連結直径を有する。
【0057】
好ましくは、マクロ気孔率(すなわち、マクロ孔からもたらされる気孔率)は、20容量%以上、例えば、30%以上、例えば、40%以上などである。マクロ気孔率は、70容量%以下、例えば、60%以下、例えば、50%以下などとすることができる。例示的な一実施形態では、マクロ気孔率は、好ましくは、20〜60容量%である。これらの範囲内で、マクロ孔に対する循環生物学的流体及びタンパク質の有益な効果が増大しうる。
【0058】
好ましくは、本体が、マクロ孔と微小孔の両方を含む場合、本発明の本体の全気孔率は、水を用いるアルキメデスの密度測定による測定で、45容量%以上、例えば、50容量%以上など、例えば、60容量%以上、例えば、70容量%以上などである。本発明者らは、これらの下限が、有益な骨誘導効果に寄与しうることを見出した。好ましくは、全気孔率は、95容量%以下、例えば、90容量%以下など、例えば、85容量%以下である。本発明者らは、これらの上限よりも上では、孔の合体が起こり、骨誘導からの利益の減少がもたらされうることを見出した。したがって、全気孔率の好ましい範囲の例示的な例は、50〜90容量%である。
【0059】
理論に拘泥するものではないが、本発明の材料の微小気孔率は、多孔性本体が、生物学的流体から液体を吸着する高い毛細管作用を有することを可能にすると考えられる。高い毛細管作用により、拘禁環境内で生物学的流体中に天然に存在する骨成長促進タンパク質の濃度が上昇しうる。加えて、リン酸カルシウム材料中にケイ素を含めることにより、骨成長促進タンパク質の付着及び吸収を助け、且つ本体の毛細管作用を促進する表面環境がもたらされると考えられる。これらの2つの因子の組合せからもたらされる多孔性本体による生物学的流体及びタンパク質の取り込みは、生体材料の骨誘導特性に寄与しうる。
【0060】
したがって、好ましくは、微小相互連結孔(すなわち、微小孔からもたらされる)を通る本発明の生体材料の浸透性は、0.206nm以上である。
【0061】
浸透性(nm)は、孔の相互連結直径の分布に依存し、水銀圧入ポロシメトリーによって決定することができる。水銀圧入ポロシメトリーの結果から、浸透性を以下のように決定する。
【0062】
【数2】

【0063】
式中、Kは、微小孔からもたらされる浸透性であり、dは、相互連結サイズの水銀圧入ポロシメトリー測定から計算した微小孔相互連結の平均相互連結直径である。Φは、水銀で満たされた孔の体積分率である。
【0064】
好ましくは、浸透性は、0.8nm以上、より好ましくは、浸透性は、1.0nm以上である。浸透性は、10nm以下、例えば、5nm以下など、例えば、3nm以下とすることができる。例えば、一実施形態では、浸透性は、0.8nm〜5nmとすることができる。本発明者らは、骨成長がこれらの範囲内で有利に達成されることを見出した。
【0065】
好ましくは、生物学的流体から生体材料への骨成長促進因子の吸収を促進するために、材料の毛細管圧力差を、水中で測定したときに3.7kPa以上とすることができる。毛細管圧力差は、水(例えば、超純水)中で測定され、表面自由エネルギーと相互連結直径との間の以下の関係から決定される。
【0066】
【数3】

【0067】
式中、ΔPは、毛細管圧力差であり、γLV(mJ/m)は、同じ材料と接触している液体の液体−蒸気界面自由エネルギーであり、θは、同じ材料に対する液体の接触角であり、r(m)は、水銀ポロシメトリーによって測定される微小孔の平均相互連結直径である。
【0068】
この式では、液体−蒸気界面自由エネルギーは、液体(例えば、水)の液滴が材料の表面に形成されるときの液体、蒸気、及び固体との間の境界におけるエネルギーを示すヤングの式によって測定することができる。
【0069】
【数4】

【0070】
式中、γSVは、固体−蒸気界面エネルギー(mJ/mで測定)であり、θは、接触角であり、λSLは、固体−液体界面エネルギーである。すべての界面測定は、本明細書に記載するクルス点滴分析法を用いて行った。
【0071】
好ましくは、毛細管圧力差は、3.9kPa以上、例えば、3.97kPa以上など、例えば、15kPa以上など、例えば、25kPa以上、又は36kPa以上、例えば、40kPa以上など、より好ましくは、毛細管圧力差は、50kPa以上である。毛細管圧力差は、150kPa以下、例えば、100kPa以下など、例えば、85kPa以下、例えば、70kPa以下などとすることができる。したがって、例示的な一例では、生体材料の毛細管圧力差は、好ましくは、3.7kPa〜100kPa、例えば、20kPa〜100kPaなどである。本発明者らは、骨成長がこれらの範囲内で有利に達成されることを見出した。
【0072】
好ましくは、生体材料内での循環及び生物学的流体の迅速な輸送を可能にし、且つ生物学的媒体から吸収される骨成長促進材料の有利な蓄積を可能にするために、生体材料は、好ましくは、400容量%以上の全吸引能力(容量/容量%)を有する(微小孔及び任意選択のマクロ孔の両方が、全吸引能力に寄与する)。全吸引能力は、生体材料における全孔容積(微小孔及びマクロ孔の両方)及び生体材料中の孔の相互連結レベルを変更することによって制御することができる。
【0073】
全孔サイズ範囲に渡る単一材料の全吸引能力(容量/容量%)は、水を用いるアルキメデスの密度測定によって得られる。測定の再現性を高めるために、血液などの生物学的媒質ではなく水が用いられる。
【0074】
好ましくは、全吸引能力は、420容量%以上、より好ましくは、全吸引能力は、430容量%以上である。この吸引能力は、800容量%以下、例えば、600容量%以下など、例えば、500容量%以下とすることができる。例示的な一例では、全吸引能力は、好ましくは、400%〜600%、例えば、420%〜500%とすることができる。本発明者らは、骨成長がこれらの範囲内で有利に達成されることを見出した。
【0075】
好ましくは、微小孔に起因する全吸引能力を最大化することができる。微小孔の吸引能力は、微小孔の浸透性及び毛細管圧力差による影響を受ける。しかし、足場の構造的利点を維持するために、吸引能力に対して上限を設定することができる。
【0076】
本明細書に記載する合成生体材料は、医学に用いることができる。具体的には、合成生体材料は、治療又は外科手術に用いることができる。一実施形態では、合成生体材料は、骨置換材料として用いられる。
【0077】
したがって、この生体材料は、例えば、骨折を治療し、脊椎固定を達成し、骨腫瘍又は椎骨圧迫骨折を治療するために用いることができる。これらの使用では、この生体材料は、患者又は動物に植え込まれる。これは、当技術分野で公知の技術を用いて達成することができる。本発明はまた、本明細書に記載する組成物を含む合成骨材料、骨インプラント、整形外科インプラント、組織インプラント、骨移植片、骨代用物、骨足場、充填剤、コーティング、又はセメントも提供する。本発明はまた、これらの用途における本明細書に記載する組成物の使用も提供する。本発明はまた、患者を治療する方法であって、本明細書に記載するバイオセラミック組成物を、治療する患者のある部位に送達するステップを含む、方法も提供する。本発明はまた、生物医学的インプラント用として本明細書に記載するバイオセラミック組成物も提供する。本発明はまた、治療に用いられる、本明細書に記載するバイオセラミック組成物も提供する。本発明はまた、再建又は置換手術に用いられる、本明細書に記載するバイオセラミック組成物も提供する。
【0078】
本明細書に記載するバイオセラミック組成物は、これらの生物医学的用途で、単独で、又は生体適合性ポリマー、他の種類のセラミック、ガラス、及び/若しくはガラス−セラミック材料の1つ又は複数とともに用いることができることを理解されたい。
【0079】
この生体材料は、例えば、乾燥顆粒剤として、結合剤中の溶媒(例えば、水や血液)に溶かしたペーストとして、又は固体の予備成形された予備整形インプラントとして任意の公知の形態で提供することができる。
【0080】
本発明は、合成多孔性骨誘導生体材料を選択し、骨の骨誘導をもたらす方法であって、(a)17.5容量%以上に設定された微小気孔率及び19mJ/m以上に設定された表面自由エネルギーを有する骨誘導合成非吸収性ケイ素含有リン酸カルシウム生体材料を選択するステップと、(b)前記骨誘導生体材料を骨誘導のための置換骨材料として形成するステップとを含む、方法をさらに提供する。
【0081】
本発明は、合成非吸収性リン酸カルシウム生体材料に骨誘導特性を付与するための、ケイ素、19mJ/mの表面自由エネルギー、及び17.5容量%以上(より有利には、23容量%以上)の微小気孔率の使用をさらに提供する。骨誘導特性は、骨誘導を有する生体材料の固有の能力を指す。
【0082】
本明細書に記載するすべての測定は、特に記載がない限り、室温(20℃)及び大気圧(1気圧)で行われる。
【実施例】
【0083】
いくつかの試料を、欧州特許第0951441号に記載されている方法に従って合成された材料から用意した。次いで、この材料を、国際公開第0020353号パンフレットに記載されている発泡方法を用いて本発明による多孔性生体材料に加工した。国際公開第0020353号パンフレットの全容は、参照により本明細書に組み入れられる。この技術を用いて、セラミックスリップ内の成分の相対的比率、セラミック微粒子の物理特性、粉砕発泡の際に加えられる粉砕メディアの量を変更することによって、及び追加として焼結処置によって、孔サイズ及び多孔性を制御して、望ましい孔サイズ及び気孔率を達成した。
【0084】
次いで、これらの試料を動物に植え込み、その骨誘導性を測定した。結果を表1に示す。試料の骨誘導性を測定するために、リン酸カルシウム生体材料を、年齢が2歳を超え、体重が65kg〜80kg、骨格が成熟した商業的に交雑されたメスのヒツジの右及び左の仙棘筋内に植え込んだ。動物を、12週間目に安楽死させた。屠殺後、筋肉の層によって取り囲まれたインプラントを取り出し、組織学のために固定した。X線撮影を行って、筋肉中のインプラントの位置を求めた。最大70μm厚の薄い切片を、近位遠位方向において、超薄切片法によって用意した。画像解析及び組織形態計測を薄い切片に対して行って、インプラント内の骨形成を評価した。骨領域、軟組織領域、及び試験材料によって占有された領域のパーセンテージを計算した。加えて、リン酸カルシウム表面に付着された骨の量のパーセンテージを測定した。また、走査電子顕微鏡法(SEM)及びEDAXを行い、骨形成の質及びインプラント内に存在する元素を評価した。
【0085】
【表1】

【0086】
SiHAは、ケイ素置換ヒドロキシアパタイト(実施例1〜5では、0.8質量%のケイ素が使用された)である。C1〜C3は、ヒドロキシアパタイト(ケイ素を含有しない)の比較例である。
【0087】
これらの結果の一部を図1及び図2に例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面自由エネルギーが19mJ/m以上である、23容量%以上の微小気孔率を有する合成非吸収性ケイ素含有リン酸カルシウム生体材料。
【請求項2】
ヒドロキシアパタイト材料を含む、請求項1に記載のケイ素含有リン酸カルシウム生体材料。
【請求項3】
ケイ素が、前記リン酸カルシウム材料の結晶格子内で置換されている、請求項1又は2に記載のケイ素含有リン酸カルシウム生体材料。
【請求項4】
前記リン酸カルシウム材料を形成するリン酸カルシウムが、酸化カルシウム及び/又はリン酸三カルシウムの不純物相を実質的に有しない、請求項1〜3のいずれか一項に記載のケイ素含有リン酸カルシウム生体材料。
【請求項5】
前記リン酸カルシウム材料を形成するリン酸カルシウムの相純度が、X線回折の測定で、少なくとも90%である、請求項4に記載のケイ素含有リン酸カルシウム生体材料。
【請求項6】
前記微小気孔率をもたらす微小孔の平均相互連結直径が、2.0μm以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のケイ素含有リン酸カルシウム生体材料。
【請求項7】
前記微小気孔率をもたらす微小孔の平均相互連結直径が、0.5μm以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のケイ素含有リン酸カルシウム生体材料。
【請求項8】
前記微小気孔率が25〜40容量%である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のケイ素含有リン酸カルシウム生体材料。
【請求項9】
0.1〜1.6質量%のケイ素を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のケイ素含有リン酸カルシウム生体材料。
【請求項10】
微小気孔率からもたらされる0.206m以上の浸透性を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のケイ素含有リン酸カルシウム生体材料。
【請求項11】
3.7kPa以上の水中での毛細管圧力を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載のケイ素含有リン酸カルシウム生体材料。
【請求項12】
表面自由エネルギーが35mJ/m以上である、請求項1〜11のいずれか一項に記載のケイ素含有リン酸カルシウム生体材料。
【請求項13】
マクロ孔も含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のケイ素含有リン酸カルシウム生体材料。
【請求項14】
全吸引能力(容量/容量%)が400容量%以上である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の生体材料。
【請求項15】
23容量%以上の微小気孔率を有する合成非吸収性ケイ素含有リン酸カルシウム生体材料。
【請求項16】
23容量%以上の微小気孔率を有するケイ素含有焼結リン酸カルシウム生体材料。
【請求項17】
酸化カルシウム及び/又はリン酸三カルシウムの不純物相を実質的に含まない、23容量%以上の微小気孔率を有する合成ケイ素置換リン酸カルシウム生体材料。
【請求項18】
医学に使用するための、請求項1〜17のいずれか一項に記載の合成リン酸カルシウム生体材料。
【請求項19】
骨折を治療し、脊椎固定を達成し、骨腫瘍又は椎骨圧迫骨折を治療するための方法であって、請求項1〜18のいずれか一項に記載の生体材料を患者又は動物に植え込むステップを含む、方法。
【請求項20】
合成多孔性骨誘導生体材料を選択し、骨の骨誘導をもたらす方法であって、
(a)17.5容量%以上に設定された微小気孔率及び19mJ/m以上に設定された表面自由エネルギーを有する骨誘導合成非吸収性ケイ素含有リン酸カルシウム生体材料を選択するステップと、
(b)前記骨誘導生体材料を骨誘導のための置換骨材料として形成するステップとを含む、方法。
【請求項21】
合成非吸収性リン酸カルシウム生体材料に骨誘導特性を付与するための、ケイ素、19mJ/mの表面自由エネルギー、及び17.5容量%以上の微小気孔率の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−510724(P2011−510724A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544784(P2010−544784)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【国際出願番号】PCT/GB2009/000308
【国際公開番号】WO2009/095703
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(508004557)アパテック リミテッド (6)
【Fターム(参考)】