説明

ヒドロゲルコンタクトレンズの滅菌方法

本発明は、ヒドロゲル素材、好ましくは、ポリ(オキシアルキレン)含有ヒドロゲル素材から製造された眼科用装置、好ましくは、コンタクトレンズを滅菌及び保存するための水溶液を提供する。この溶液は、1つ又は複数の有機緩衝剤、例えば、Good緩衝液又はビス−アミノポリオール;約200〜約450mosm/lの浸透圧をもたらすために十分な量の複数のヒドロキシル基を有する有機張度調整剤を含み、この水溶液は、約5.5〜約8.5のpHを有し、この水溶液は、約15mM以下の濃度のリン酸緩衝液及び約5000ppmの塩化ナトリウムを含むことを条件とする。本発明は、本発明の水溶液を用いた眼科用装置の滅菌及び保存方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロゲル素材、特に、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材から成る眼科用装置の滅菌方法に関する。より具体的には、本発明は、オートクレーブにより引き起こされる眼科用装置の混濁を低減させることにより特徴付けられる、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材から製造された眼科用装置の滅菌方法に関する。さらに、本発明は、ヒドロゲル素材から製造された、好ましくは、ポリ(オキシアルキレン)含有素材から成る眼科用装置を滅菌及び保存するためのパッケージ溶液に関連し、該溶液は、オートクレーブにより引き起こされるポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材の混濁を低減し得る。
【0002】
発明の背景
ポリアルキルエーテル又はポリ(アルキレンオキシド)としても知られるポリ(アルキレングリコール)の生体適合性のため、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマーは、様々な分野において、特に、例えば、薬物送達のための担体、人工組織、デントリフィス(dentrifices)、コンタクトレンズ、眼内レンズ、及びその他の生物医学装置等の生物医学分野における用途を見出し得る。しかしながら、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマーは、酸化分解及び高温によって引き起こされる又はオートクレーブにより引き起こされる混濁を起こしやすい場合がある。酸化分解は、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマーから製造された物質の特性の変化を引き起こし得る。オートクレーブにより引き起こされる混濁は、ポリ(オキシアルキレン)含有素材から製造されたコンタクトレンズ又は眼内レンズ等の眼科用装置の光学的特性に悪影響を及ぼし得る。それらの起こしやすさは、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマーの用途、特に、眼科用装置を製造する場合における用途を制約し得る。
【0003】
米国特許出願公開第2004/0116564A1号は、ポリ(オキシアルキレン)含有素材を滅菌するための方法について記載している。そのような方法を用いることにより、酸化分解が有意に低減されるように、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材を滅菌することができる。そのようなものとして、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材は、用途を、特に、生物医学分野における用途を増大し得る。しかし、ポリ(オキシアルキレン)含有素材は、依然として、眼科用装置を製造するためには好適でない場合がある。なぜならば、眼科用装置は、通常、オートクレーブにより、滅菌しなければならないからである。オートクレーブにより引き起こされる混濁は、眼科用装置の光学的特性に、それによって視力不足矯正におけるそれらの主要な機能に、悪影響を及ぼす場合があり得る。
【0004】
したがって、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材に対するオートクレーブにより引き起こされる混濁の起こしやすさを低減又は排除するための方法は依然として必要とされている。
【0005】
発明の概要
一つの態様において、本発明は、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材から製造された眼科用装置を滅菌及び保存するための水溶液を提供する。本発明の水溶液は、以下:ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材の酸化分解の起こしやすさを低減させるために十分な量のα−オキソ−マルチ酸又はその塩;TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、2−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ビス−アミノポリオール、トリエタノールアミン、ACES(N−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS 3−[N−モルホリノ]−プロパンスルホン酸、PIPES(ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−アミノエタンスルホン酸)、及びそれらの塩からなる群より選択される1つ又は複数の緩衝剤;グリセロール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、プロピレングリコール、約400Da以下の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)、及びそれらの混合物からなる群より選択される、1000mlあたり約200〜約450ミリオスモルの浸透圧(単位:mosm/l)をもたらすために十分な量の有機張度調整剤を含み、該水溶液は、約5.5〜約8.5のpHを有し、該水溶液は、約15mM以下の濃度のリン酸緩衝液及び約5000ppmの塩化ナトリウムを含む。
【0006】
別の態様において、本発明は、以下の工程:容器に入った水溶液中に眼科用装置を入れる工程であって、該眼科用装置は、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材から製造され、該水溶液は、以下:ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材の酸化分解の起こしやすさを低減させるために十分な量のα−オキソ−マルチ酸又はその塩;TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、ビス−アミノポリオール、トリエタノールアミン、ACES(N−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS 3−[N−モルホリノ]−プロパンスルホン酸、PIPES(ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−アミノエタンスルホン酸)、及びそれらの塩からなる群より選択される1つ又は複数の緩衝剤;グリセロール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、プロピレングリコール、約400Da以下の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)、及びそれらの混合物からなる群より選択される、1000mlあたり約200〜約450ミリオスモルの浸透圧(単位:mosm/l)をもたらすために十分な量の有機張度調整剤を含み、該水溶液は、約5.5〜約8.5のpHを有し、該水溶液は、約15mM以下の濃度のリン酸緩衝液及び約5000ppmの塩化ナトリウムを含むことを条件とする、該工程;該容器を密閉する工程;及び該眼科用装置を含む密閉容器をオートクレーブする工程、を含む、眼科用装置を滅菌及び保存する方法を提供する。
【0007】
さらなる態様において、本発明は、オートクレーブによる滅菌に付された密閉容器を含む眼科用製品であって、該密閉容器は、水溶液及び該水溶液中に浸漬させた眼科用装置を含み、該眼科用装置はヒドロゲル素材から成り、該水溶液は、1000mlあたり約200〜約450ミリオスモルの浸透圧(単位:mosm/l)をもたらすために十分な量の有機張度調整剤並びにトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)(TRIS)、ビス−アミノポリオール、トリエタノールアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、3−[N−モルホリノ]−プロパンスルホン酸(MOPS)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、及びそれらの塩からなる群より選択される1つ又は複数の緩衝剤を含み、該有機張度調整剤は、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、プロピレングリコール、約400Da以下の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)、及びそれらの混合物からなる群より選択され、該水溶液は、約5.5〜約8.5のpHを有し、該水溶液は、約15mM以下の濃度のリン酸緩衝液及び約5000ppmの塩化ナトリウムを含み、その結果、該溶液は、該眼科用装置に対してオートクレーブにより引き起こされる混濁を低減させ、該オートクレーブにより引き起こされる混濁の低減が、オートクレーブにより引き起こされる400〜800nmの可視光線の範囲、通常は500nmで測定される光透過性の減少が約10%未満であることにより特徴付けられる、該製品を提供する。
【0008】
さらにさらなる態様において、本発明は、以下の工程:容器に入った水溶液中に眼科用装置を入れる工程であって、該眼科用装置は、ヒドロゲル素材から成り、該水溶液は、1000mlあたり約200〜約450ミリオスモルの浸透圧(単位:mosm/l)をもたらすために十分な量の有機張度調整剤並びにトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)(TRIS)、ビス−アミノポリオール、トリエタノールアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、3−[N−モルホリノ]−プロパンスルホン酸(MOPS)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、及びそれらの塩からなる群より選択される1つ又は複数の緩衝剤を含み、該有機張度調整剤は、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、プロピレングリコール、約400Da以下の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)、及びそれらの混合物からなる群より選択され、該水溶液は、約5.5〜約8.5のpHを有し、該水溶液は、約15mM以下の濃度のリン酸緩衝液及び約5000ppmの塩化ナトリウムを含み、その結果、該溶液は、該眼科用装置に対してオートクレーブにより引き起こされる混濁を低減させ、該オートクレーブにより引き起こされる混濁の低減が、オートクレーブにより引き起こされる500nmにおける光透過性の減少が約10%未満であることにより特徴付けられる、該工程を含む眼科用装置を滅菌及び保存するための方法を提供する。
【0009】
本発明のこれらの及びその他の態様が、好ましい実施形態の以下の記載から明らかとなるであろう。当業者には明らかであるように、本発明の多くの改変及び修飾が、開示の新規概念の精神及び範囲から逸脱することなく行い得る。
【0010】
好ましい実施形態の詳細な説明
以下、本発明の実施形態を詳細に参照する。本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、様々な修飾及び改変が本発明において行われ得ることは当業者に明らかであろう。例えば、一実施形態の部分として示される又は記載される特徴は、さらにさらなる実施形態を得るための別の実施形態で使用され得る。したがって、添付された特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲に該当するように、本発明がかかる修飾及び改変を網羅することが意図される。本発明のその他の目的、特徴及び態様は、以下の詳細な説明に記載されているか、そこから明らかである。以下の記載は例示的実施形態の記載に過ぎず、本発明のより広い局面を制約するものとして意図されていないことを、当業者は理解すべきである。
【0011】
特に指定されない限り、本明細書において使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者が通常理解しているものと同一の意味を有する。一般的に、本明細書において使用される命名法及び実験手順は、当技術分野において周知であり、通常使用されている。当技術分野及び各種一般文献に示されるもの等の従来からある方法がこれらの手順に使用される。ある用語が単数形で示される場合、発明者らはその用語の複数形も意図している。本明細書において使用される命名法及び以下に記載される実験手順は、周知であり、当技術分野において通常使用されている。
【0012】
本発明は、概して、ヒドロゲル素材から製造された、特に、ポリ(オキシアルキレン)含有ヒドロゲル素材から製造された眼科用装置を滅菌及び保存するための水溶液及び方法に関する。本発明は、生理学的pH(約5〜約9)を維持するために、無機緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液)の代わりに溶液中に有機緩衝剤を使用することにより、及び溶液の浸透圧を調整するために従来の等張剤(例えば、NaCl)の代わりに1つ又は複数の有機張度調整剤を使用することにより、ヒドロゲル素材、特に、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリウレアコンタクトレンズのオートクレーブにより引き起こされる混濁を実質的に低減し得るという発見に部分的に基づいている。ポリ(エチレングリコール)−ウレア(PEG−ウレア)レンズにおけるオートクレーブにより引き起こされる混濁は相分離により引き起こされ、この相分離はマイクロシネレシス(すなわち、加熱時におけるヒドロゲルからの水の排出)及び塩析現象(生理食塩水中の特定のイオン種によって引き起こされるPEG鎖の凝集)の組み合わせによって引き起こされ得ると信じられている。オートクレーブ中に分離された相は持続的なものとなり、それによって、PEG−ウレアレンズを持続的に混濁させ得るとも信じられている。さらに、特定のイオン、特に、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、塩化物を含む陰イオンは、ヒドロゲル素材、特に、ポリ(オキシアルキレン)含有ヒドロゲル素材の相分離を引き起こし得ると信じられている。ヒドロゲル素材、特に、ポリ(オキシアルキレン)含有ヒドロゲル素材から製造された眼科用装置を滅菌及び保存するために使用される溶液に生理学的浸透圧を提供するために、リン酸緩衝液を1つ又は複数の有機緩衝液と交換し、塩化ナトリウムの代わりに複数のヒドロキシ基を有する張度調整剤を使用することにより、ヒドロゲル素材のオートクレーブにより引き起こされる混濁を実質的に低減し得る。さらに、有機緩衝液、例えば、TRISは、温度が上昇するにつれて、溶液のpHは低下し得る。
【0013】
本明細書において使用される場合、「眼科用装置」とは、コンタクトレンズ(ハード又はソフト)、眼内レンズ、角膜オンレイ(corneal onlay)、眼又は眼周辺部又は人体において又はその周辺で使用されるその他の眼科用及び生物医学用装置(例えば、ステント等)のことをいう。
【0014】
「ヒドロゲル」とは、完全に水和した場合に、少なくとも10パーセント重量の水を吸収し得るポリマー素材のことをいう。通常、ヒドロゲル素材は、付加的なモノマー及び/又はマクロマーの存在下又は非存在下での、少なくとも1種の親水性モノマーのポリマー化又はコポリマー化により得られる。本発明によると、ヒドロゲルは、シリコーンヒドロゲルと非シリコーンヒドロゲルを含む。
【0015】
「シリコーンヒドロゲル」とは、少なくとも1種のシリコーンを含有するモノマー又は少なくとも1種のシリコーンを含有するマクロマーを含むポリマー化可能な組成物のコポリマー化により得られるヒドロゲルのことをいう。「非シリコーンヒドロゲル」とは、いずれのシリコーン含有モノマー又はマクロマーをも含まないポリマー化可能な組成物のコポリマー化により得られるヒドロゲルのことをいう。
【0016】
「モノマー」とは、ポリマー化し得る低分子量化合物を意味する。低分子量とは、通常、700ダルトン未満の平均分子量を意味する。
【0017】
「マクロマー」とは、さらなるポリマー化/架橋化反応が起こり得る官能基を含む中間及び高分子量の化合物又はポリマーのことをいう。中間及び高分子量とは通常、700ダルトンよりも多い平均分子量を意味する。
【0018】
「ポリマー」とは、1つ又は複数のモノマーのポリマー化/架橋化により形成される物質を意味する。
【0019】
「プレポリマー」とは、開始ポリマーよりも高い分子量を有する架橋化及び/又はポリマー化されたポリマーを得るために、化学線的又は熱的又は化学的に硬化(例えば、架橋化及び/又はポリマー化)され得る開始ポリマーのことをいう。
【0020】
本明細書において使用される場合、ポリマー化可能な組成物又は物質の硬化に関連して「化学線的に」とは、硬化(例えば、架橋化及び/又はポリマー化)が、例えば、UV及び可視光線照射、電離放射線(例えば、ガンマ線、電子線ビーム、又はX線照射)、及び超音波照射等の化学線照射によって行われることを意味する。
【0021】
本発明の一態様にしたがい、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材は、式(1):
−O−(R−O)−(R−O)−(R−O)− (1)
(式中、R、R、及びRは、互いに独立して、それぞれ直鎖状又は分枝鎖状のC−C−アルキレンであり、n、m及びpは、互いに独立してそれぞれ、(n+m+p)の合計が5〜100である、0〜100の数である)の少なくとも一単位を有する任意のポリマーであり得る。。
【0022】
少なくとも1つの式(1)の単位を含むポリマーの例は、(1)ヒドロキシ末端化されている(ジオール)を有するポリ(アルキレングリコール);(2)末端のジオールがアミンに変換されているポリ(アルキレングリコール)(すなわち、アミン末端化されているポリ(アルキレングリコール));(3)末端のジオールが、例えば、酢酸、アクリル酸、又はメタクリル酸等の有機酸によってエステル化されているポリ(アルキレングリコール);(4)例えば、グルタル酸又はアジピン酸等の有機一酸又は二酸による、ポリ(アルキレングリコール)の末端のジオールのエステル化により得られたポリエステル;(5)例えば、グルタル酸又はアジピン酸等の有機一酸又は二酸と、アミン末端化されているポリ(アルキレングリコール)を反応させることにより得られたポリアミド;(6)1つ又は複数のヒドロキシ末端化されたポリ(アルキレングリコール)及び1つ又は複数のジ−又はポリイソシアネートを含む混合物のコポリマー化生成物であるポリウレタン;(7)1つ又は複数のアミン末端化されたポリ(アルキレングリコール)及び1つ又は複数のジ−又はマルチ−イソシアネートを含む混合物のコポリマー化生成物であるポリウレア、を含むがそれらに限定されない。上記例は、本発明の局面を示す手段として与えられるものであり、決して限定されない。
【0023】
ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材は、相互侵入又は半相互侵入ポリマーネットワークでもあり得る。本明細書において使用される場合、「相互侵入ポリマーネットワーク」(IPN)とは、広義には、そのうちの少なくとも1つがその他のものの存在下で合成及び/又は架橋化された2以上のポリマーの密接したネットワークのことをいう。IPNを調製するための技術は当業者に公知である。一般的手順については、米国特許第4,536,554号、同第4,983,702号、同第5,087,392号、及び同第5,656,210号を参照のこと。これらの内容はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。ポリマー化は、通常、室温付近〜約200℃の範囲の温度にて実施される。
【0024】
例示的な相互侵入ポリマーネットワークは、欧州特許第0735097 B1号に開示されている相互侵入ポリウレア/ポリアクリルネットワークである。かかる相互侵入ポリウレア/ポリアクリルネットワークは、以下:(a)少なくとも1つのアミン末端化されたポリ(アルキレングリコール);(b)ポリウレアネットワークを形成させるために(a)と反応させる有機ジ−又はポリイソシアネート;(c)アクリルエステル;(d)ポリアクリルネットワークを形成させるために(c)をポリマー化させるためのフリーラジカル開始剤;及び(e)(a)を架橋させるためのトリアミン、を含む反応混合物のポリマー化により形成される。
【0025】
例示的なポリ(アルキレングリコール)は、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(1−プロピレングリコール)、ポリ(2−プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(プロピレングリコール)ブロックポリマー、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(プロピレングリコール)/ポリ(ブチレングリコール)ブロックポリマー、ポリテトラヒドロフラン、ポロキサマー等を含むがそれらに限定されない。
【0026】
好ましいポリ(オキシアルキレン)含有ヒドロゲル素材の例は、参照により本明細書にその全体が組み入れられる米国特許第6,479,587号及び米国特許出願第2005/0113549 A1号に記載されている架橋性ポリウレアポリマーを架橋することにより得られるものである。かかる架橋性ポリウレアポリマーは、少なくとも1つのアミン末端化ポリ(アルキレングリコール)及び有機ジ−又はポリイソシアネートを含む反応混合物のコポリマー化生成物であるポリウレアに、エチレン性不飽和基を導入することにより調製し得る。
【0027】
例示的なエチレン性不飽和基は、アクリロイル、メタクリロイル、アリル、ビニル、スチレニル、又はその他のC=C含有基を含むがそれらに限定されない。
【0028】
一態様において、本発明は、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材から製造された眼科用装置を滅菌及び保存するための水溶液を提供する。本発明の水溶液は、以下:ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材の酸化分解の起こしやすさを低減させるために十分な量のα−オキソ−マルチ酸又はその塩;TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、ビス−アミノポリオール、トリエタノールアミン、ACES(N−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS 3−[N−モルホリノ]−プロパンスルホン酸、PIPES(ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−アミノエタンスルホン酸)、及びそれらの塩からなる群より選択される1つ又は複数の緩衝剤;グリセロール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、プロピレングリコール、約400Da以下の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)、及びそれらの混合物からなる群より選択される、1000mlあたり約200〜約450ミリオスモルの浸透圧(単位:mosm/l)をもたらすために十分な量の有機張度調整剤を含み、該水溶液は、約5.5〜約8.5のpHを有し、該水溶液は、約15mM以下の濃度のリン酸緩衝液及び約5000ppmの塩化ナトリウムを含むことを条件とする。
【0029】
本発明によると、本発明の水溶液は眼科的に安全である。コンタクトレンズを滅菌及び保存するための水溶液に関し、用語「眼科的に安全」とは、その溶液中に保存されているコンタクトレンズが、すすぐことなく眼に直接装着することに関し安全であり、すなわち、その溶液が、毎日コンタクトレンズを介して眼と接触することに関し、安全で十分な快適性を有することを意味する。眼科的に安全な溶液は眼に適合可能な等張性及びpHを有し、細胞毒性のない国際ISO標準及び米国FDA規則に従う物質及びその量を含む。
【0030】
用語「眼に適合可能な」とは、顕著な眼の損傷及び顕著な使用者の不快感がなく、長時間眼と密着させておくことができる溶液を意味する。
【0031】
例示的なα−オキソ−マルチ酸又はその生物学的適合可能な塩には、クエン酸、2−ケトグルタル酸、又はリンゴ酸又はその生物学的適合可能な(好ましくは眼科的に適合可能な)塩が含まれるが、それらに限定されない。より好ましくは、本発明のα−オキソ−マルチ酸は、クエン酸又はリンゴ酸あるいはその生物学的適合可能な(好ましくは眼科的に適合可能な)塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)である。
【0032】
「安定化されたポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材」とは、安定化剤を含む組成物から調製された及び/又は安定化剤を含む溶液中での滅菌処理に付された、酸化分解の起こしやすさの低い(すなわち、安定化されていないポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材中に検出される量の80%以下、好ましくは65%以下、より好ましくは50%以下である、安定化されたポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材中の検出可能なギ酸及び場合によりその他の分解副生成物の量によって特徴付けられる)ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材のことを意味する。「安定化されていないポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材」とは、安定化剤を含まない組成物から調製された及び/又は安定化剤を含まない溶液中での滅菌処理に付されたポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材のことを意味する。
【0033】
「ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材の安定性を向上する」とは、安定化剤を含む組成物から調製された及び/又は安定化剤を含む溶液中での滅菌処理に付された、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材の酸化分解の起こしやすさが低減される(安定化されていないポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材中に検出される量の80%以下、好ましくは65%以下、より好ましくは50%以下である、安定化されたポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材中の検出可能なギ酸及び場合によりその他の分解副生成物の量によって特徴付けられる)ことを意味する。
【0034】
本発明の水溶液中で滅菌及び保存されたコンタクトレンズは、酸化分解を起こしにくくなり得、コンタクトレンズ中に検出されるギ酸及び/又はその他の分解副生成物の量の低減によって特徴付けられる。それらは、より長い保存期間を有し得る。さらに、ギ酸又はギ酸塩の形成の低減のため、本発明にしたがって得られるコンタクトレンズは、装着者の眼に対して刺激を生じないかもしれない。
【0035】
当然、上記した全ての利点は、コンタクトレンズばかりでなく、本発明にしたがうその他の成形品、例えば、本発明にしたがって得られる移植可能な医療用装置にも当てはまる。本発明による成形品の製造時における様々な利点の総和が、この成形品の、特に、大量生産品としての、例えば、一日使用のための及び/又は一週間使用のための及び/又は連続装着のためのコンタクトレンズとしての適合性をもたらす。
【0036】
好ましくは、緩衝剤は、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)又はビス−アミノポリオールである。
【0037】
好ましいビス−アミノポリオールは、式(I):
【0038】
【化3】

【0039】
(式中、a、b、c、d、e、f、g、及びhは、独立して、整数1〜6であり;R及びR’は、−H、−CH、−(CH2−6−H、及び−(CH1−6−OHからなる群より独立して選択される)を有する。本発明において、式(I)によって記載される緩衝剤は、様々な水溶性の塩の形態で提供され得る。最も好ましいビス−アミノポリオールは、1,3−ビス(トリス[ヒドロキシメチル]メチルアミノ)プロパン(ビス−TRIS−プロパン)である。BIS−TRIS−プロパンは、Biochemicals and Reagents,Sigma-Aldrich Co.,2000-2001版中、生物学的緩衝液の項に記載されている。ビス−TRIS−プロパンの具体的な構造は、式(II):
【0040】
【化4】


で示される。
【0041】
この二塩基性化合物の解離定数は、PKa=6.8及びpKa=9.5であり、この化合物の水性溶液を約6.3〜9.3の広範なpH範囲における緩衝剤として有用なものにさせる。本発明で使用される濃度において、ビス−トリス−プロパンは眼に対し、及び公知のコンタクトレンズ素材に対して害がなく、従って、眼に適合可能である。
【0042】
好ましくは、本発明の溶液は、低濃度のリン酸イオンを有し、より好ましくは実質的にリン酸イオンを含まない。約15mM以下のリン酸イオン及び約5000ppmの塩化物イオンを有する溶液は、ヒドロゲル素材、特にポリ(オキシアルキレン)含有ヒドロゲル素材における、オートクレーブにより引き起こされる混濁を顕著に低減させ得る。先に知られた溶液は、溶液のpHを維持し、所望の浸透圧を維持するために、通常、非常に高濃度のリン酸イオン及び塩化物イオンの両方を有する。
【0043】
本発明に関し、約200〜約450mosm/l、好ましくは約250〜350mosm/lの浸透圧を有する水性溶液を提供するために十分な量の有機張度調整剤が存在する。好ましくは、有機張度調整剤の濃度は約0.1%〜約10%、より好ましくは約0.5%〜5%である。有機張度調整剤は、好ましくは、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、又はそれらの混合物である。
【0044】
眼科用装置における、オートクレーブにより引き起こされる混濁の低減は、500nm周辺の光透過性、好ましくは、オートクレーブ後の光散乱を、オートクレーブ前と比較することにより、特徴付けることができる。好ましくは、試験される眼科用装置は、典型的には+6ジオプトリ〜−10ジオプトリの屈折力を有するコンタクトレンズである。試験されるヒドロゲル素材は、好ましくは、厚さ約250μmのフィルムである。
【0045】
1実施形態において、本発明の溶液は、好ましくは、ヒドロゲル眼科用装置におけるオートクレーブにより引き起こされる混濁を低減させ、オートクレーブにより引き起こされる混濁の低減は、オートクレーブにより引き起こされる500nmにおける光透過性の減少が約10%未満、好ましくは約5%未満、さらにより好ましくは、約3%未満であることにより特徴付けられる。
【0046】
500nmにおける光透過性の、オートクレーブにより引き起こされる減少の割合(ΔT500nm/%)は、
【数1】


式中、T(500nm)及びT(500nm)はそれぞれ、オートクレーブ前及びオートクレーブ後の500nmにおける光透過性を表す、
として規定される。
【0047】
本発明の溶液はさらに、滑剤を含み得る。本明細書中で使用される「滑剤」とは、コンタクトレンズ及び/又は眼の表面の湿潤性を向上させ得る、あるいはコンタクトレンズ表面の摩擦係数を低減させ得る任意の化合物又は素材をいう。限定を伴わない滑剤の例には、ムチン様物質及び親水性ポリマーを含む。
【0048】
限定を伴わない例示的なムチン様物質としては、ポリグリコール酸、ポリラクチド、コラーゲン、及びゼラチンを含む。ムチン様物質は、ドライアイ症候群の緩和のために使用され得る。ムチン様物質は、好ましくは有効な量で存在する。
【0049】
例示的な親水性ポリマーには、限定するものではないが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリイミド、ポリラクトン、1以上の親水性ビニルコポリマー(例えば、分子量1,500,000までのモノマーのポリビニルピロリドン、その他のビニルモノマーを伴う分子量1,500,000までのポリビニルピロリドンのコポリマー)の存在下又は非存在下におけるビニルラクタムのホモポリマー又はコポリマー、アクリルアミド又はメタクリルアミドのホモポリマー、高分子量PEG(約50000Daより大きい分子量、1以上の親水性ビニルモノマーを伴うアクリルアミド又はメタクリルアミドのコポリマー、それらの混合物を含む。親水性ポリマーの数平均分子量Mは、少なくとも40000ダルトン、好ましくは少なくとも80000ダルトン、より好ましくは少なくとも100000ダルトン、さらにより好ましくは少なくとも250000ダルトンである。
【0050】
本発明の溶液は、好ましくは約60mN/m以下の表面張力を有する。それは、場合によりその表面張力を低下させるための界面活性剤を含む。水性溶液の表面張力を低下させることにより、その水性溶液及び眼科用装置を含む容器壁で、メニスカスの構造を最小化することができる。
【0051】
本発明において、任意の好適な公知の界面活性剤を用いることができる。好適な界面活性剤には、限定するものではないが、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドのブロックコポリマーからなる非イオン性界面活性剤である、BASF Corp.(Pluronic(商標)及びPluronic−R(商標))からPluronicの商品名で供給されるポロキサマー;エチレンジアミンと組み合わせたエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロックコポリマーポリマー誘導体であるポロキサマー;ホルムアルデヒド及びオキシランを伴う4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールポリマーであるチロキサポル;TRITON(Union Carbide, Tarrytown, N.Y., USA)及びIGEPAL(Rhone-Poulenc, Cranbury, N.J., USA)の商品名で市販されている各種界面活性剤等のエトキシル化アルキルフェノール;TWEEN(ICI Americas, Inc., Wilmington, Del., USA.)の商品名で市販されているポリソルベート界面活性剤を含むポリソルビタン20等のポリソルベート;PLANTAREN(Henkel Corp., Hoboken, NJ., USA)の商品名で市販されている製品等のアルキルグルコシド及びポリグルコシド;BASFからCREMAPHORの商品名で入手可能なポリエトキシル化ヒマシ油;及びPVPを含む。
【0052】
好ましい界面活性剤には、ポリエチレングリコール、又はポリエチレンオキシドのホモポリマー、及び、BASFからPLURONIC(登録商標)17R4、PLURONIC(登録商標)F−68NF、PLURONIC(登録商標)F68LF及びPLURONIC(登録商標)F127の商品名で入手可能な物質等の、最も好ましくはPLURONIC(登録商標)F−68NF(国民医薬品集グレード)と組み合わせた特定のホモポリマーを含む。より好ましくは、PLURONIC(登録商標)17R4及びPLURONIC(登録商標)F127の組み合わせが用いられる。存在する場合、ポロキサマーは、約0.001重量%〜約5重量%、好ましくは約0.005重量%〜約1重量%、より好ましくは約0.05重量%〜約0.6重量%で用いられ得る。
【0053】
本発明の溶液は、さらに、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、アルファ−デキストリン、マルトース、アミロース、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)からなる群より選択される1以上の物質を含み得る。
【0054】
別の態様において、本発明は、容器に入った水溶液中に眼科用装置を入れる工程であって、眼科用装置は、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材から製造され、水溶液は、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材の酸化分解の起こしやすさを低減させるために十分な量のα−オキソ−マルチ酸又はその塩;TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、ビス−アミノポリオール、トリエタノールアミン、ACES(N−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS(3−[N−モルホリノ]−プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−アミノエタンスルホン酸)、及びそれらの塩からなる群より選択される1つ又は複数の緩衝剤;グリセロール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、プロピレングリコール、約400Da以下の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)、及びそれらの混合物からなる群より選択される、1000mlあたり約200〜約450ミリオスモルの浸透圧(単位:mosm/l)をもたらすために十分な量の有機張度調整剤を含み、該水溶液は、約5.5〜約8.5のpHを有し、該水溶液は、約15mM以下の濃度のリン酸緩衝液及び約5000ppmの塩化ナトリウムを含むことを条件とする工程;その容器を密閉する工程;及び眼科用装置を含む密閉容器をオートクレーブにかける工程を含む、眼科用装置を滅菌及び保存する方法を提供する。
【0055】
本発明の水溶液における上述の各種の態様及び好ましい態様を、本発明のこの局面で使用することができる。
【0056】
さらなる態様において、本発明は、オートクレーブにより引き起こされる500nmにおける光透過性の減少が約10%未満であることにより特徴付けられる、眼科用装置におけるオートクレーブにより引き起こされる混濁の低減を、溶液によって与えるようにするための、オートクレーブによる滅菌に付された密封容器を含む眼科用製品を提供し、この密封容器は水溶液及びその水溶液中に浸した眼科用装置を含み、この眼科用装置はヒドロゲル素材からなり、水溶液は1000mlあたり約200〜約450ミリオスモルの浸透圧(単位:mosm/l)を与えるために十分な量の有機張度調整剤及びトリス−(ヒドロキシメチル)アミノメタン)(TRIS)、ビス−アミノポリオール、トリエタノールアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、3−[N−モルホリノ]−プロパンスルホン酸(MOPS)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)及びそれらの塩からなる群から選択される1以上の緩衝剤を含有し、有機張度調整剤はグリセロール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、プロピレングリコール、約400Da以下の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)及びそれらの混合物塩からなる群から選択され、水溶液が約15mM以下の濃度のリン酸緩衝液及び約5000ppmの塩化ナトリウムを含む水溶液である。
【0057】
本発明の水溶液における上述の各種の実施形態及び好ましい実施形態を、本発明のこの態様で使用することができる。
【0058】
更にさらなる態様において、本発明は、オートクレーブにより引き起こされる500nmにおける光透過性の減少が約10%未満であることにより特徴付けられる、ヒドロゲル素材からなる眼科用装置に、眼科用装置におけるオートクレーブにより引き起こされる混濁の低減を行わせるための、水溶液が1000mlあたり約200〜約450ミリオスモルの浸透圧(単位:mosm/l)を与えるために十分な量の有機張度調整剤及びトリス−(ヒドロキシメチル)アミノメタン)(TRIS)、ビス−アミノポリオール、トリエタノールアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、3−[N−モルホリノ]−プロパンスルホン酸(MOPS)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)及びそれらの塩からなる群から選択される1以上の緩衝剤を含有し、有機張度調整剤はグリセロール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、プロピレングリコール、約400Da以下の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)及びそれらの混合物塩からなる群から選択され、水溶液のpHが約5.5〜約8.5であって、水溶液が約15mM以下の濃度のリン酸緩衝液及び約5000ppmの塩化ナトリウムを含む水溶液である容器中の水溶液中に置く工程;容器を密封する工程;及び前記眼科用装置を入れた密封された容器をオートクレーブにかける工程を含む、眼科用装置の滅菌及び保存方法を提供する。
【0059】
本発明における水溶液の上述の各種の実施形態及び好ましい実施形態を、本発明のこの態様に用いることができる。
【0060】
先の開示は、当業者が本発明を実践することを可能にするであろう。読み手がその具体的な実施形態及び利点をよりよく理解することができるように、以下の非限定的な例が示される。しかし、以下の実施例は、本発明の範囲を限定するものと理解されるべきではない。
【0061】
実施例1
PEG−尿素プレポリマーの調製。400gのテトラヒドロフラン(THF)、250gの水、84アミン基ミリ当量(meq)のJeffamine(登録商標)XTJ501(Hunstman Chemicals)、50アミン基meqのJeffamine(登録商標)XTJ502(Hunstman Chemicals)及び26.8アミン基meqのビス−ヘキサメチレントリアミン(Aldrich Chemicals)を、ジャケット付きの1L容反応器の中に入れ、攪拌しながら、内部温度を0〜5℃に冷却する。約80gのTHF中に100イソシアネート基meqのイソホロンジイソシアネート(Aldrich Chemicals)及び26.8イソシアネート基meqのVESTANAT(登録商標)T1890/100(Degussa Chemicals)を含む溶液を、撹拌しながら、約30分間にわたって滴下添加する。内部温度を0〜5℃に維持しながら、さらに30分間、反応混合物を撹拌する。21.5gの炭酸ナトリウム(20%水溶液)の3回の添加と、続く3.4gのアクリロイルクロリド(Aldrich Chemicals)の添加を、各添加の間に約30分間、内部温度を10℃を下回るように維持して行う。反応混合物をさらに30分間撹拌し、内部温度を周囲温度に到達させる。反応混合物を、17μm焼結ガラスフィルターにて濾過する。生成物を次いでロータリーエバポレーターで濃縮し、実質的にTHFを含まない溶液を得る。溶液を、1kDaの膜にて、通過液の伝導度が50μS/cmを下回るまで限外濾過する。加圧下で0.45μmのテフロン膜を通過させることにより、溶液をさらに精製する。20〜200ppmのヒドロキシル−TEMPOを用いて、溶液を安定化する。
【0062】
実施例2
PEG−尿素プレポリマーの調製。500gのテトラヒドロフラン(THF)、250gの水、88アミン基ミリ当量(meq)のJeffamine(登録商標)XTJ501(Hunstman Chemicals)、8アミン基meqのJeffamine(登録商標)XTJ502(Hunstman Chemicals)及び64アミン基meqの2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール(AEAE)、および12アミン基meqのビス−ヘキサメチレントリアミン(HMTA)(Aldrich Chemicals)を、ジャケット付きの1L容反応器の中に入れ、攪拌しながら、内部温度を0〜5℃に冷却する。THF中に155イソシアネート基meqのイソホロンジイソシアネート(Aldrich Chemicals)を含む溶液を、撹拌しながら、約30分間にわたって滴下添加する。内部温度を0〜5℃に維持しながら、さらに30分間、反応混合物を撹拌する。21.5gの炭酸ナトリウム(20%水溶液)の3回の添加と、続く3mlのアクリロイルクロリド(Aldrich Chemicals)の添加を、各添加の間に約30分間、内部温度を10℃を下回るように維持して行う。反応混合物をさらに30分間撹拌し、内部温度を周囲温度に到達させる。反応混合物を、17μm焼結ガラスフィルターにて濾過する。生成物を次いでロータリーエバポレーターで濃縮し、実質的にTHFを含まない溶液を得る。溶液を、1kDaの膜にて、通過液の伝導度が30μS/cmを下回るまで限外濾過する。加圧下で0.45μmの孔径の疎水性ポリエーテルスルホン膜を通過させることにより、溶液をさらに精製する。20〜200ppmのヒドロキシル−TEMPOを用いて、溶液を安定化する。
【0063】
実施例3
約44%の、実施例2において調製したPEG−尿素プレポリマー、0.125重量%のIrgacure2959及び水を含有する水性の処方から、厚さ約250ミクロンのフィルムを調製した。ポリマー化は、適当なスペーサーリングを用いて、ガラス/石英製の平坦な型の対の中で行い、厚さ250ミクロンの平坦なディスクを得る。
【0064】
型の配置の上に紫外線をあてる。光源は、Phillips HPA−400/30Sバルブを備えた、Dr. Groebel UV Electronic GmbH製のUV−IQ400である。光源からの光は、光ガイドを下方に向かい、Schott Glass製のWG305カットオフフィルターを通過する。この光学的配置を通過する光の強度を、Dr. Groebel Electronic GmbH製で、製造者の標準により較正されたRM−12放射計を用いて測定する。照射線量は、固定された光強度の使用により調節され、自動化シャッターの配置を用いることにより、露光時間は調節される。測定された硬化エネルギー密度(mJ/cm2)は、各PEG−尿素ポリマーそれぞれの処方を硬化させるために用いられる。
【0065】
実施例4
それぞれ約32%又は44%の、実施例1又は2において調製されたPEG−尿素プレポリマー、適当な量の離型剤、0.125〜0.15重量%(プレポリマーに対し)のIrgacure2959及び水を含有する水性の処方から、コンタクトレンズを調製する。
【0066】
コンタクトレンズの調製。典型的には、40〜65mgの上記の調製された処方を雌半型の穴に入れ、雄半型を雌半型の上において、米国特許6,203,909B1号(その全文を参照により本明細書中に組み入れるものとする)に詳細を開示している型アセンブリを形成する。Focus(登録商標)DAILIES(登録商標)を作製するための型を使用する。
【0067】
型の配置の上に紫外線をあてる。光源は、PHillips HPA−400/30Sバルブを備えた、Dr. Groebel UV Electronic GmbH製のUV−IQ400である。光源からの光は、光ガイドを下方に向かい、Schott Glass製のWG305カットオフフィルターを通過する。この光学的配置を通過する光の強度を、Dr. Groebel Electronic GmbH製で、製造者の標準により較正されたRM−12放射計を用いて測定する。照射線量は、固定された光強度の使用により調節され、自動化シャッターの配置を用いることにより、露光時間は調節される。
【0068】
型を開き、コンタクトレンズを取り出して、脱イオン水で洗浄し、過剰な未反応の処方を除去する。
【0069】
実施例5
表1に示すような各種組成を有するように、水溶液を調製する。
【0070】
【表1】


リン酸緩衝液。1. 0% ポロキサマー含有;2. 0.1重量% PluronicF127含有、1回のオートクレーブ前後にアメリカ薬局方(USP)の溶出テストに供し、生物学的活性を示さない溶液;3. 0.5mM EDTA含有;4. 0.1%PluronicF127及び0.5mM EDTA含有;5. 0.1重量% pluronic及び0.5mM EDTA含有;6. 0.0045重量% ポロキサマー108及び0.5mM EDTA含有;7. 0.0045重量% ポロキサマー108含有;8. 0.5mM EDTA含有;9. 0.0045重量% ポロキサマー108含有;10. 5mM Mg(NO及び0.0045% ポロキサマー108含有;11. 20mM Mg(NO及び00045% ポロキサマー108含有;12. 50mM Mg(NO及び0.0045% ポロキサマー108含有;13. 101mM NHCl及び0.0045重量% ポロキサマー108含有;14. 50mM NHCl及び0.0045重量% ポロキサマー108含有;15. 20mM NHCl及び0.0045重量% ポロキサマー108含有;16. 100mM NHNO及び0.0045重量% ポロキサマー108含有;17. 50mM NHNO及び0.0045重量% ポロキサマー108含有;18. 20mM NHNO及び0.0045重量% ポロキサマー108含有;19. 50mM Mg(NO含有;20. 100mM KNO及び0.0045重量% ポロキサマー108含有;21. 50mM KNO及び0.0045重量% ポロキサマー108含有;22. 20mM KNO及び0.0045重量% ポロキサマー108含有;23. 125mM KNO及び0.0045重量% ポロキサマー108含有;24. 55mM KNO含有。
【0071】
上記の調製された溶液を、実施例3で調製されるフィルムにおける、オートクレーブ(AC)により引き起こされる混濁に及ぼす効果を調べるために試験する。結果を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
結果は、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、及び/又は塩化ナトリウムの濃度を低減させることにより、及び、その溶液中にグリセロール又はソルビトール等を添加することにより、PEG−ポリ尿素ヒドロゲル素材のオートクレーブにより引き起こされる混濁を低減させ得ることを示す。クエン酸塩は、PEG−ポリ尿素ヒドロゲル中の相分離を促進し得るように見える。しかし、クエン酸塩は、PEG−ポリ尿素の酸化分解の起こしやすさを低減するために必要とされるため、相分離を回避するためにグリセロール又はソルビトール等の添加が必要とされ得、また、リン酸塩及び塩化物の濃度を低減(あるいは、なくす)ことが必要とされ得る。NO及びNH4等の特定のイオンが溶液中に非常に高濃度で存在する場合にも、PEG−ポリ尿素ヒドロゲル素材の、オートクレーブ(AC)により引き起こされる混濁は低減され得る。
【0074】
溶液9及び14の表面張力は、それぞれ約56.6mN/m及び50.1mN/mと測定される。0.0045重量%のポロキサマー108を含有するリン酸緩衝生理食塩溶液の表面張力測定値は54.4mN/mと測定される。これらの結果は、グリセロールが溶液の表面張力を低減させ得ること、及び、グリセロールの存在で、溶液は、ポリプロピレンレンズパッケージ中のメニスカス形成を最小化するために表面張力をさらにいくらか低減するための界面活性剤を必要としないであろうことを示した。
【0075】
実施例6
PEGを含有するポリ尿素コンタクトレンズの、オートクレーブにより引き起こされる混濁を評価するために、暗視野光学顕微鏡法(DFLM)を以下のように使用する。リングランプを備えた高さ調整可能なDFLMスタンド上に置かれた、石英製のペトリ皿中で、0.2μmのフィルターを通過させたリン酸緩衝生理食塩溶液中にレンズを浸漬する。Pulnix CCDを用いて、デジタルの黒色及び白色のDFLM画像を撮影する。光源はFostec又は同程度の強度調整可能な光源である。プラスチック製のカバースリップを重ねた標準を用いて、レンズを画像化する毎に光源強度の較正を行う。カバースリップの重なり領域は、様々な異なる密度/光散乱範囲をもたらし、それは、光源を点灯する毎に光強度を同じレベルへと調整するために用いられる。光源を試験されるサンプルに対し適当なレベルに調整する(通常の設定はちょうど最大電圧(赤マーク)の70%、及び、Fostec光源の開口(aperture)5である)。標準的ヒストグラムの各ピークの中央値を記録した。試験されたレンズのDFLM画像を解析するために、イメージプロプラス画像解析ソフトウェア(Image Pro Plus image analysis software)、v.4.5.0.19を用いる。ソフトウェアの設定:明るさ35;コントラスト35;色調0;彩度32;上部電圧0;及び下部電圧0、とする。8ビットデータグレースケール取得チェックボックス(8-bit data Gray-Scale Acquisition check box)をチェックする。ソフトウェアの設定を、.vpfファイルとして保存する。取得されたデジタルイメージにおいて、各ピクセルはグレースケールナンバーを有する。混濁度は、ある領域(例えば、レンズ全体又は水晶体領域又はレンズの光学領域)中の全ピクセルのグレースケールナンバーを平均することにより表される。暗視野の設定は光散乱に関与するため、暗視野のデータは、混濁における最悪の場合の評価を提供するであろうことが信じられている。
【0076】
実施例1又は2に従って、PEG−ポリ尿素プレポリマーのいくつかのバッチを調製した。レンズ処方のいくつかには、離型剤のPVPを含む。実施例4に記載の方法に従って、屈折力−10ジオプターのコンタクトレンズを、PEG−ポリ尿素プレポリマーから調製する。調製されたレンズの、オートクレーブにより引き起こされる混濁を、市販のいくつかのコンタクトレンズを用いたものと共に、表3(混濁の値は平均値;眼球領域は中央周辺の直径8mmまでであり、残りの部分は水晶体領域である)に記載する。
【0077】
【表3】


CPBSは、10mM クエン酸塩、20mM リン酸緩衝液、及び0.7重量% NaClを含有し;CPTGは、10mM クエン酸塩、14mM リン酸緩衝液、29mM TRIS、及び2.1重量%のグリセロールを含有し;PBSは、リン酸緩衝生理食塩溶液である。
レンズAのみが、実施例1で調製されたPEG−ポリ尿素プレポリマーから調製される。
1. レンズの処方は、離型剤として2% PVPを含有する。
2. OOPTIX Toricに類似のデザインの円環コンタクトレンズ。
3. 大きさ約2〜2.5mmの、約55%の混濁度を有するいくつかのスポットが存在する。
【0078】
結果は、オートクレーブにより引き起こされる混濁が、クエン酸塩/リン酸塩/TRIS/グリセロール溶液(実施例5における溶液7)を用いることにより低減され得る、またはなくなり得ることを示す。レンズの処方中に存在する離型剤は、PEG−ポリ尿素レンズの混濁をわずかに増加させ得ることが見出された。
【0079】
実施例7
実施例2で調製されたPEG−ポリ尿素プレポリマー溶液の混濁点に及ぼすそれらの効果を調べるために、各種の溶液(表1の溶液3〜10)が試験される。結果を表4に示す。表1の溶液3〜10はまた、実施例3で調製されたフィルムの、オートクレーブ(AC)により引き起こされる混濁に及ぼすそれらの効果を調べるためにも試験される。
【0080】
【表4】


試験溶液中に溶解したPEG−ポリ尿素プレポリマーの混濁点
【0081】
高濃度のクエン酸塩(溶液4)又はリン酸塩(溶液3)を含む溶液が、PEG−ポリ尿素プレポリマーの混濁点を低下させ得るのみならず、PEG−ポリ尿素プレポリマーから作られたフィルムの混濁をも増加させる(すなわち、550nmにおけるT%を低下させる)ことが見出された。クエン酸塩の濃度を10mMへと低下させ、リン酸塩の濃度を15mMを下回る濃度に低下させることにより、相対的に高い混濁点、及び、フィルムにおける最小の混濁又は混濁なし(T%>98%)が得られる。2.1% グリセロールを含む10mM クエン酸塩−14mM リン酸塩−29mM TRIS緩衝液系で、良い結果が観察される。
【0082】
本発明の各種の実施形態を、具体的な用語、装置、及び方法を用いて記述してきたが、これらの記述は、説明目的のみのためのものである。使用される語は、限定よりむしろ記述の語である。以下の特許請求の範囲で説明される、本発明の精神又は範囲を逸脱しない変更及びバリエーションが当業者によりなされ得ることが、理解される。さらに、各種の実施形態の態様が、全体又は部分的のいずれかにおいて置換可能であることが理解されるべきである。従って、添付される特許請求の範囲の精神及び範囲は、本明細書中に含まれる好ましいバージョンに関する記述に限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用装置を滅菌及び保存するための水溶液であって、該眼科用装置は、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材から製造され、該溶液は、以下:
ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材の酸化分解の起こしやすさを低減させるために十分な量のα−オキソ−マルチ酸又はその塩;
TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、ビス−アミノポリオール、トリエタノールアミン、ACES(N−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS 3−[N−モルホリノ]−プロパンスルホン酸、PIPES(ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−アミノエタンスルホン酸)、及びそれらの塩からなる群より選択される1つ又は複数の緩衝剤;
グリセロール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、プロピレングリコール、約400Da以下の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)、及びそれらの混合物からなる群より選択される、1000mlあたり約200〜約450ミリオスモルの浸透圧(単位:mosm/l)をもたらすために十分な量の有機張度調整剤を含み、
該水溶液は、約5.5〜約8.5のpHを有し、該水溶液は、約15mM以下の濃度のリン酸緩衝液及び約5000ppmの塩化ナトリウムを含むことを条件とする、
該水溶液。
【請求項2】
前記1つ又は複数の緩衝剤が、TRIS、ビス−アミノポリオール、及びそれらの塩からなる群より選択され、該ビス−アミノポリオールは、式(I):
【化1】


(式中、a、b、c、d、e、f、g、及びhは、独立して、整数1〜6であり;R及びR’は、独立して、−H、−CH、−(CH2−6−H、及び−(CH1−6−OHからなる群より選択される)を有する、請求項1記載の溶液。
【請求項3】
前記1つ又は複数の緩衝剤がトリス及びその塩である、請求項2記載の溶液。
【請求項4】
前記1つ又は複数の緩衝剤が1,3−ビス(トリス[ヒドロキシメチル]メチルアミノ)プロパン及びその塩である、請求項2記載の溶液。
【請求項5】
前記α−オキソ−マルチ酸がクエン酸又はリンゴ酸である、請求項2記載の溶液。
【請求項6】
前記眼科用装置が、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリウレア素材から成るヒドロゲルコンタクトレンズである、請求項2記載の溶液。
【請求項7】
前記溶液が約1000ppm未満の塩素イオンを含む、請求項2記載の溶液。
【請求項8】
前記溶液が約10mM以下のリン酸緩衝液を含む、請求項2記載の溶液。
【請求項9】
前記溶液が、前記眼科用装置に対してオートクレーブにより引き起こされる混濁を低減させ、該オートクレーブにより引き起こされる混濁の低減が、オートクレーブにより引き起こされる500nmにおける光透過性の減少が約10%未満であることにより特徴付けられる、請求項2記載の溶液。
【請求項10】
前記溶液が、前記眼科用装置に対してオートクレーブにより引き起こされる混濁を低減させ、該オートクレーブにより引き起こされる混濁の低減が、オートクレーブにより引き起こされる500nmにおける光透過性の減少が約5%未満であることにより特徴付けられる、請求項2記載の溶液。
【請求項11】
前記溶液が約50mN/m又はそれよりも低い表面張力を有する、請求項2記載の溶液。
【請求項12】
容器に入った水溶液中に眼科用装置を入れる工程;該眼科用装置を含む密閉した該容器をオートクレーブする工程;及び該容器を密閉する工程を含む、眼科用装置を滅菌及び保存する方法であって、
該眼科用装置は、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材から製造され、
該水溶液は、以下:
ポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー素材の酸化分解の起こしやすさを低減させるために十分な量のα−オキソ−マルチ酸又はその塩;
TRIS、ビス−アミノポリオール、トリエタノールアミン、ACES、BES、HEPES、MES、MOPS、PIPES、TES、及びそれらの塩からなる群より選択される1つ又は複数の緩衝剤;並びに
グリセロール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、プロピレングリコール、約400Da以下の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)、及びそれらの混合物からなる群より選択される、1000mlあたり約200〜約450ミリオスモルの浸透圧(単位:mosm/l)をもたらすために十分な量の有機張度調整剤、を含み
該水溶液は、約5.5〜約8.5のpHを有し、該水溶液は、約15mM以下の濃度のリン酸緩衝液及び約5000ppmの塩化ナトリウムを含むことを条件とする、
該方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数の緩衝剤が、TRIS、ビス−アミノポリオール、及びそれらの塩からなる群より選択され、該ビス−アミノポリオールは、式(I):
【化2】


(式中、a、b、c、d、e、f、g、及びhは、独立して、整数1〜6であり;R及びR’は、独立して、−H、−CH、−(CH2−6−H、及び−(CH1−6−OHからなる群より選択される)を有する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記1つ又は複数の緩衝剤がTRIS及びその塩である、請求項13記載の溶液。
【請求項15】
前記1つ又は複数の緩衝剤が1,3−ビス(トリス[ヒドロキシメチル]メチルアミノ)プロパン及びその塩である、請求項13記載の溶液。
【請求項16】
前記α−オキソ−マルチ酸がクエン酸又はリンゴ酸である、請求項13記載の溶液。
【請求項17】
前記眼科用装置が、ポリ(オキシアルキレン)含有ポリウレア素材から成るヒドロゲルコンタクトレンズである、請求項13記載の溶液。
【請求項18】
前記溶液が約1000ppm未満の塩素イオンを含む、請求項13記載の溶液。
【請求項19】
前記溶液が約10mM以下のリン酸緩衝液を含む、請求項13記載の溶液。
【請求項20】
前記溶液が、前記眼科用装置のオートクレーブにより引き起こされる混濁を低減させ、該オートクレーブにより引き起こされる混濁の低減が、オートクレーブにより引き起こされる500nmにおける光透過性の減少が約10%未満であることにより特徴付けられる、請求項13記載の溶液。
【請求項21】
前記溶液が約50dyne/cm又はそれよりも低い表面張力を有している、請求項13記載の溶液。
【請求項22】
オートクレーブによる滅菌に付された密閉容器を含む眼科用製品であって、該密閉容器は、水溶液及び該水溶液中に浸漬させた眼科用装置を含み、該眼科用装置はヒドロゲル素材から成り、該水溶液は、1000mlあたり約200〜約450ミリオスモルの浸透圧(単位:mosm/l)をもたらすために十分な量の有機張度調整剤並びにトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、ビス−アミノポリオール、トリエタノールアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、3−[N−モルホリノ]−プロパンスルホン酸(MOPS)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、及びそれらの塩からなる群より選択される1つ又は複数の緩衝剤を含み、ここで、該有機張度調整剤は、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、プロピレングリコール、約400Da以下の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)、及びそれらの混合物からなる群より選択され、該水溶液は、約5.5〜約8.5のpHを有し、該水溶液は、約15mM以下の濃度のリン酸緩衝液及び約5000ppmの塩化ナトリウムを含み、その結果、該溶液は、該眼科用装置に対してオートクレーブにより引き起こされる混濁を低減させ、該オートクレーブにより引き起こされる混濁の低減が、オートクレーブにより引き起こされる500nmにおける光透過性の減少が約5%未満であることにより特徴付けられる、該製品。

【公表番号】特表2009−527273(P2009−527273A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555386(P2008−555386)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/004155
【国際公開番号】WO2007/098040
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】