説明

ヒューズ回路構成体

【課題】可溶体部の溶断時間のばらつきを抑制することができるヒューズ回路構成体を提供する。
【解決手段】入力部14から入力された電流が通電される連結プレート部11と、前記連結プレート部11の、前記入力部14から入力された電流の流れ方向に間隔をおいた箇所から所定の通電電流で溶断可能な各可溶体部12を介してそれぞれ連結された複数の端子部13とを有するヒューズ回路構成体1であって、前記連結プレート部11は、前記入力部14から前記流れ方向において遠ざかるにつれて幅狭となるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の通電電流で溶断する各可溶体部を介した端子部が連結されたヒューズ回路構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、移動体としての車両には、車両に搭載された様々な電子機器等に電力を供給する電源供給源としてのバッテリが搭載されている。バッテリと電子機器等に接続された電線とは、例えば、ヒュージブルリンクユニットを介して電気的に接続されて、バッテリからの電力が電子機器等に供給される。
【0003】
このようなヒュージブルリンクユニットとして、例えば、特開2004−127698号公報(特許文献1)に記載されたヒュージブルリンクユニットが提案されている。このヒュージブルリンクユニットは、ヒューズ回路構成体により、それぞれの電子機器等にバッテリからの電力を分配している。
【0004】
図3は、特許文献1に記載されたヒュージブルリンクユニットのヒューズ回路構成体を示す図である。図3に示すように、ヒューズ回路構成体100は、細長い長方形状の連結プレート部111と、所定値以上の電流が通電されると溶断する複数の可溶体部112と、各可溶体部112を介して連鎖状に連結された複数の雌端子部113a、ビス止め用端子部113bとから略構成されている。
【0005】
そして、このヒューズ回路構成体100は、ハウジング(図示省略)に装着して、バッテリと接続される入力部(図示省略)とオルタネータと接続される入力部114から入力される電力を、雌端子部113a、ビス止め用端子部113bと接続された電子機器等に供給する。
【0006】
また、可溶体部112に所定以上の電流が通電されると、可溶体部112が発熱によって溶断して、電子機器等に過度な電力が供給されることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−127698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した従来のヒューズ回路構成体100は、車両の走行中に入力部114から入力された電流が連結プレート部111を介して入力部114側の端子部113から順に分配される(図3の矢印Z参照)。
【0009】
この連結プレート部111は、幅が均一に形成されているため、連結プレート部111のいずれの箇所でも抵抗値が同となる。このため、入力部114から端子部113に分配される電流値は、入力部114から遠ざかるにつれて小さくなる。
【0010】
このように、端子部113に分配される電流値が入力部114から遠ざかるにつれて小さくなるため、各可溶体部の電流値に対する定格が同じであっても、入力部114に近い可溶体部112は遠い可溶体部112よりも早く溶断してしまうおそれがある。このため、各可溶体部の溶断特性のばらつきが及ぼす電子機器等への影響を抑制したい。
【0011】
そこで、本発明は、可溶体部の溶断時間のばらつきを抑制することができるヒューズ回路構成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載した本発明のヒューズ回路構成体は、入力部から入力された電流が通電される連結プレート部と、前記連結プレート部の、前記入力部から入力された電流の流れ方向に間隔をおいた箇所から所定の通電電流で溶断可能な各可溶体部を介してそれぞれ連結された複数の端子部とを有するヒューズ回路構成体であって、前記連結プレート部は、前記入力部から前記流れ方向において遠ざかるにつれて幅狭となるように形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載した本発明のヒューズ回路構成体は、請求項1に記載のヒューズ回路構成体であって、前記連結プレート部は、バッテリとオルタネータからの電流が通電され、前記入力部は、オルタネータに接続されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載した本発明のヒューズ回路構成体は、請求項1又は請求項2に記載のヒューズ回路構成体であって、前記連結プレート部は、内部を流れる電流値に対応して幅狭となるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載した本発明のヒューズ回路構成体によれば、入力部から入力された電流の流れ方向において遠ざかるにつれて幅狭となるように連結プレート部が形成されている。このため、連結プレート部が可溶体部の過負荷を均等にすることにより、可溶体部の溶断時間のばらつきを抑制する。
【0016】
従って、可溶体部の溶断時間のばらつきを抑制することができるヒューズ回路構成体を提供することができる。
【0017】
請求項2に記載した本発明のヒューズ回路構成体によれば、オルタネータに接続される入力部から電流の流れ方向において遠ざかるにつれて幅狭となるように連結プレート部が形成されている。このため、特に大きい電力を供給するオルタネータに接続される入力部からの電力に対して、連結プレート部が可溶体部の過負荷を均等にして、可溶体部の溶断時間のばらつきを抑制することができる。
【0018】
請求項3に記載した本発明のヒューズ回路構成体によれば、連結プレート部の内部を流れる電流値に対応して幅狭となるように連結プレート部が形成されている。このため、より確実に連結プレート部が可溶体部の過負荷を均等にすることができ、各可溶体部の溶断時間のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るヒューズ回路構成体を示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るヒューズ回路構成体の連結プレート部の幅を説明するための正面図である。
【図3】従来のヒュージブルリンクユニットのヒューズ回路構成体を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係るヒューズ回路構成体について図面を参照して説明する。はじめに、図1を参照して、本発明の実施形態に係るヒューズ回路構成体について詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るヒューズ回路構成体を示す正面図である。
【0021】
本発明の実施形態に係るヒューズ回路構成体は、バッテリとオルタネータからの電流を通電して電力を電子機器等に供給するとともに、所定の通電電流で可溶体部を溶断して電子機器等に過度な電力が供給されることを防止するヒューズ回路構成体である。
【0022】
図1に示すように、ヒューズ回路構成体(バスバ)1は、バッテリとオルタネータからの電流が通電される連結プレート部11(11a〜11c)と、所定の通電電流で溶断可能な複数の可溶体部12と、各可溶体部(ヒューズ)12を介して連結プレート部11と連結された複数の端子部13とから略構成されている。
【0023】
ヒューズ回路構成体1は、導電性を有する金属板を加工して形成されており、絶縁性を有する合成樹脂製のハウジング(図示省略)に装着されて、バッテリとオルタネータからの電力を車両に搭載された電子機器等に供給する。
【0024】
連結プレート部11(11a〜11c)は、バッテリと接続された入力部(図示省略)から入力された電流と、オルタネータと接続された入力部14から入力された電流が通電される。
【0025】
連結プレート部11は、入力部14から入力された電流の流れ方向Xにおいて遠ざかるにつれて幅狭となるように形成されている。つまり、連結プレート部11の幅方向の一側21は、連結プレート部11の内部を流れる電流値に対応して幅が狭くなるように他側22に対して傾斜する傾斜部23が形成されている。
【0026】
ところで、幅が均一の連結プレート部では、連結プレート部のいずれの箇所も抵抗値が同じとなる。このため、入力部14から分配される電流値は、入力部14から遠ざかるにつれて小さくなる。
【0027】
しかしながら、本発明の実施形態に係る連結プレート部11は、入力部14から入力された電流の流れ方向Xにおいて遠ざかるにつれて幅狭となるように連結プレート部11が形成されている。
【0028】
このため、入力部14から連結プレート部11の内部を流れて端子部13へ分配する電流値を略均等にすることにより、連結プレート部11が可溶体部の過負荷を均等にして、可溶体部の溶断時間のばらつきを抑制することができる。
【0029】
各可溶体部12は、連結プレート部11の、入力部14から入力された電流の流れ方向Xに間隔をおいた箇所から連結されている。
【0030】
この各可溶体部12には、細幅のクランク状を有し、そのクランク形状の途中に低融点金属が加締め固定されており、それぞれに所定値以上の電流が通電されると溶断して電子機器等に過度な電力が供給されることを防止する。
【0031】
また、各可溶体部12は、連結プレート部11と各端子部13との間に介在し、連結プレート部11の他側22に対して傾斜することなく、連結プレート部11と同一平面状に配置されている。
【0032】
各端子部13は、連結プレート部の、入力部14から入力された電流の流れ方向Xに間隔をおいた箇所から各可溶体部12を介してそれぞれ連鎖状に連結されている。
【0033】
この各端子部13には、車両に搭載された電気機器の端子(図示省略)を接続する機器接続用貫通孔24が形成されている。この機器接続用貫通孔24は各端子部13の厚さ方向に貫通して形成されており、機器接続用貫通孔24にボルト(図示省略)を挿入してLA端子(図示省略)を介して電気機器の端子と接続する。
【0034】
入力部14には、オルタネータと接続するオルタネータ接続用貫通孔25が形成されている。このオルタネータ接続用貫通孔25は入力部14の厚さ方向に貫通して形成されており、オルタネータ接続用貫通孔25にボルト(図示省略)を挿入してオルタネータ用ケーブルのLA端子(図示省略)と接続する。
【0035】
上記のように構成にされたヒューズ回路構成体1は、バッテリやオルタネータからの電力がヒューズ回路構成体1を介して電子機器等に分配供給される。また、バッテリの電力が少なくなると、オルタネータよりバッテリに電力が供給される。
【0036】
このため、オルタネータから供給される電力はバッテリから供給される電力よりも相対的に大きくなる。従って、本発明の実施形態に係る連結プレート部11は、オルタネータに接続される入力部14から電流の流れ方向Xにおいて遠ざかるにつれて幅狭となるように傾斜部23が形成する。
【0037】
これにより、特に大きい電力を供給するオルタネータに接続される入力部からの電力に対して、連結プレート部11が可溶体部12の過負荷を均等にすることができ、可溶体部12の溶断時間のばらつきを抑制することができる。
【0038】
次に、図2を参照して、本発明の実施形態に係るヒューズ回路構成体の連結プレート部幅について詳細に説明する。図2は、本発明の実施形態に係るヒューズ回路構成体の連結プレート部の幅について説明するための正面図である。
【0039】
図2に示すように、幅が均一の連結プレート部では、入力部14から入力された電流は、連結プレート部を介して入力部14側の端子部13aから順に端子部13b、端子部13cへと分配され(図1の矢印Y参照)、端子部13a、13b、13cはそれぞれ異なる電流値の電流が分配される。
【0040】
このため、例えば、入力部14から入力された電流(矢印d参照)が120Aの場合、端子部13aには60A(矢印a参照)、端子部13bには40A(矢印b参照)、端子部13cには20A(矢印c参照)の電流がそれぞれ分配され、可溶体部12の溶断特性にばらつきが生じるおそれがある(溶断時間に差が生じるおそれがある)。
【0041】
そこで、本発明の実施形態に係る連結プレート部11は、端子部13a、13b、13cに分配される電流値に対応した幅となるように形成されている。つまり、端子部13aから端子部13cが連結されている連結プレート部11aの幅(矢印e参照)、11bの幅(矢印f参照)、11cの幅(矢印g参照)は、端子部13aから端子部13cに分配される電流値に対応した幅に形成されている。
【0042】
詳細には、連結プレート部11の幅が均一の連結プレート部によって端子部13aから端子部13cに分配される電流値の比が3:2:1(例えば、60A:40A:20A)の場合、連結プレート部11aから連結プレート部11cの幅(矢印e〜矢印g参照)の比が3:2:1になるように傾斜部23が形成されている。
【0043】
このため、入力部14から連結プレート部11の内部を流れて端子部13へ分配する電流値を略均等(例えば、40A:40A:40A)にすることができ、連結プレート部11が可溶体部12の過負荷を均等にして、可溶体部12の溶断時間のばらつきを抑制することができる。
【0044】
上述したように、連結プレート部11の内部を流れる電流値に対応して幅狭となるように連結プレート部11が形成されている。このため、より確実に連結プレート部11が可溶体部12の過負荷を均等にすることができ、各可溶体部12の溶断時間のばらつきを抑制することができる。
【0045】
このようにして、本発明の実施形態に係るヒューズ回路構成体1は、入力部14から入力された電流が通電される連結プレート部11と、連結プレート部11の、入力部14から入力された電流の流れ方向に間隔をおいた箇所から所定の通電電流で溶断可能な各可溶体部12を介してそれぞれ連結された複数の端子部13とを有するヒューズ回路構成体1であって、連結プレート部11は、入力部14から流れ方向において遠ざかるにつれて幅狭となるように形成されている。
【0046】
また、本発明の実施形態に係るヒューズ回路構成体1は、連結プレート部11は、バッテリとオルタネータからの電流が通電され、入力部14は、オルタネータに接続されている。
【0047】
さらに、本発明の実施形態に係るヒューズ回路構成体1は、連結プレート部11は、内部を流れる電流値に対応して幅狭となるように形成されている。
【0048】
そして、本発明の実施形態に係るヒューズ回路構成体1によれば、入力部14から入力された電流の流れ方向において遠ざかるにつれて幅狭となるように連結プレート部11が形成されている。このため、連結プレート部11が可溶体部12の過負荷を均等にすることにより、可溶体部12の溶断時間のばらつきを抑制することができる。
【0049】
従って、可溶体部12の溶断時間のばらつきを抑制することができるヒューズ回路構成体1を提供することができる。
【0050】
また、本発明の実施形態に係るヒューズ回路構成体1によれば、オルタネータに接続される入力部14から電流の流れ方向において遠ざかるにつれて幅狭となるように連結プレート部11が形成されている。このため、特に大きい電力を供給するオルタネータに接続される入力部14からの電力に対して、連結プレート部11が可溶体部12の過負荷を均等にして、可溶体部12の溶断時間のばらつきを抑制することができる。
【0051】
さらに、本発明の実施形態に係るヒューズ回路構成体1によれば、連結プレート部11の内部を流れる電流値に対応して幅狭となるように連結プレート部11が形成されている。このため、より確実に連結プレート部11が可溶体部12の過負荷を均等にすることができ、各可溶体部12の溶断時間のばらつきを抑制することができる。
【0052】
以上、本発明のヒューズ回路構成体を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0053】
上述した本発明の実施形態では、連結プレート部11は入力部から入力された電流の流れ方向Xにおいて遠ざかるにつれて幅狭となるように傾斜部23を形成する場合について説明したが、傾斜部23に限定されない。
【0054】
例えば、連結プレート部11の内部を流れる電流値に対応して幅狭となるように、例えば、連結プレート部11の幅方向の一側21が入力部14からの電流の流れ方向Xに対して位置をずらして階段状に形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、ヒューズ回路構成体を構成する可溶体部の溶断時間のばらつきを抑制する上で極めて有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 ヒューズ回路構成体
11 連結プレート部
12 可溶体部
13 端子部
14 入力部
21 一側
22 他側
23 傾斜部
24 機器接続用孔
25 オルタネータ接続用孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部から入力された電流が通電される連結プレート部と、前記連結プレート部の、前記入力部から入力された電流の流れ方向に間隔をおいた箇所から所定の通電電流で溶断可能な各可溶体部を介してそれぞれ連結された複数の端子部とを有するヒューズ回路構成体であって、
前記連結プレート部は、前記入力部から前記流れ方向において遠ざかるにつれて幅狭となるように形成されていることを特徴とするヒューズ回路構成体。
【請求項2】
請求項1に記載のヒューズ回路構成体であって、
前記連結プレート部は、バッテリとオルタネータからの電流が通電され、
前記入力部は、オルタネータに接続されていることを特徴とするヒューズ回路構成体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のヒューズ回路構成体であって、
前記連結プレート部は、内部を流れる電流値に対応して幅狭となるように形成されていることを特徴とするヒューズ回路構成体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−230856(P2012−230856A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99446(P2011−99446)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】